JP4055996B2 - エンジンの異常吹き上がり防止装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、エンジンブレーキである圧縮圧開放式ブレーキを備えた車両用エンジンの異常吹き上がり防止装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
ブローバイガス分離装置の異常でブローバイガス中のオイルが分離できない場合、エンジンのシリンダ内にオイルが還流してしまい、ドライバの意思とは無関係にエンジン回転数が異常に上昇してしまう、所謂「吹き上がり」現象が生じる。
【0003】
一方、エンジン内部のブローバイガスとオイル分とを分離して処理するエンジンのブローバイガス処理装置に関し、ブローバイガスを吸気管路に還流させて再燃焼処理しても異常燃焼を防止することが出来るブローバイガス処理装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
然るに、そのような従来技術を以ってしても、尚、ブローバイガス分離装置に異常が発生した場合には、エンジンの異常吹き上がりを阻止することは困難である。
【0005】
【特許文献1】
特開2002−295224号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、ブローバイガス分離装置の異常でブローバイガス中のオイルが分離出来ない場合にも、エンジンの「異常吹き上がり」を未然に防止する車両用エンジンの異常吹き上がり防止装置の提供を目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明のエンジン異常吹き上がり防止装置は、ブローバイガスを吸気系に還元するブローバイ処理装置を有し、圧縮圧開放式ブレーキ(B)を備えた車両用エンジンの異常吹き上がり防止装置において、前記圧縮圧開放式ブレーキ(B)は排気側ロッカアーム(5)とロッカシャフト(6)との間に設けられた偏芯ブッシュ(20)を切替え弁(V)の制御で作動する油圧アクチュエータ(9)によって回動し排気弁(4)を僅かに開弁して圧縮圧を開放するブレーキであり、燃料噴射量検出手段(11)と、吸入空気量検出手段及び/又は吸気圧検出手段(12)と、排気温度検出手段(13)と、エンジン回転センサ(14)と、制御手段(10)とを有し、該制御手段(10)は、前記燃料噴射量検出手段(11)が検出した燃料噴射量が所定値以下であって、前記吸入空気量検出手段及び/又は吸気圧検出手段(12)の検出した吸入空気流量及び/又は吸気圧が所定値以上、且つ前記排気温度検出手段(13)の検出した排気温度が所定値以上であり、そしてエンジン回転センサ(14)が検出したエンジン回転数が所定値以上で且つ所定時間以上継続して運転された場合に、切替え弁(V)を制御し前記圧縮圧開放式ブレーキ(B)を作動させて圧縮行程中に排気弁(4)を僅かに開き、且つ燃料噴射を強制的に停止する機能を有する。
【0009】
ここで、前記圧縮圧開放式ブレーキ(B)の構成については、本出願人によって提案された補助ブレーキ技術、所謂「EEB(日産ディーゼル工業社製商品名で、エンジンの圧縮行程から膨張行程にかけて排気バルブを僅かに開き、圧縮された空気を燃焼室外に排出し、膨張行程でのピストンの加速力を減少させることによりエンジンブレーキを効果的に引き出す動弁機構)機構」を利用することが出来る。
【0010】
かかる構成及び制御方法を具備した本発明のエンジンの異常吹き上がり防止装置とその制御方法によれば、ブローバイガス分離装置に異常が生じ、ブローバイガス中のオイルが分離出来ない場合でも、かかる状況を迅速に把握し、エンジンが「異常吹き上がり」を生ずる前に、強制的にエンジンを停止させ、未然に重大事故の誘発を防止することが出来る。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。
先ず、エンジンブレーキの1種である圧縮圧開放形ブレーキBの構成について説明する。図1において、シリンダヘッド1のシリンダ2側に開口するエキゾーストポート3はエキゾーストバルブ4の下降によって開き、エキゾーストバルブ4の上昇によって閉じられる。
【0012】
又、エキゾーストバルブ4の動弁機構は、前記排気バルブ4と、図示しないリターンスプリングと、ロッカアーム5と、ロッカシャフト6と、プッシュロッド7と、カム8と、エキゾーストバルブを開弁させるエキゾーストバルブ開弁手段である油圧アクチュエータ9、とで構成される。
【0013】
前記排気バルブ4は図示しない前記リターンスプリングの反力によって上方に押し上げられている(図示の実線の状態)。
前記カム8の凸部が図示の上方に位置する場合は、プッシュロッド7をカム8が押上げ、更にプッシュロッド7は前記ロッカシャフト6の周りを回動する前記ロッカアームの図示右端5aを押し上げる。
右端5aを押し上げられた(図示破線の状態)前記ロッカアーム5は前記ロッカシャフト6周りに回動してロッカアーム5の左端5bは下降するため、該左端5bに当接する前記エキゾーストバルブ4は押し下げられ、排気ポート3を開く。
【0014】
一方、前記排気側ロッカアーム5とロッカシャフト6の間には該ロッカシャフト6の軸心に対して外周の中心が偏芯した偏芯ブッシュ20が設けられている。該偏芯ブッシュ20にはレバー20aが固定されており、該レバー20aの先端に前記油圧アクチュエータ9の連接ロッド9aの先端が回動自在に接続されている。
【0015】
そして、前記油圧アクチュエータ9は22油圧ポンプから切換弁Vを介装した油圧配管24を介して油圧を受け、作動する構成となっている。
又、切換弁Vは制御手段であるエンジンコントローラ(請求項1、2では制御手段:以降、制御手段をエンジンコントローラと言う)10の指令信号を信号ラインLoを介して受け、作動を制御される。
【0016】
即ち、作動の場合には、エンジンコントローラ10は切換え弁Vに油圧アクチュエータ9側に油圧が作用するように回路を切換える(図示の状態)制御信号を発信する。
【0017】
油圧アクチュエータ9に油圧が作用すると、油圧アクチュエータ9は連接ロッド9aを押し出し、連接ロッド9aに連接されたレバー20a及びレバー20aと一体の偏芯ブッシュ20がロッカシャフト6の周りで回転する。
【0018】
したがって、偏芯ブッシュ20の外周周りで回動するロッカアーム5はロッカアームの右端5aに係止されたボールスタッド5abのボールの先端を支点に下向き(反時計回り)に図中破線で示す位置まで回転し、エキゾーストバルブ4を破線に示す様に下方に押し下げる。その結果、エキゾーストバルブ4とエキゾーストポート3には隙間が生じるように構成されている。
【0019】
そして、その結果としてエンジンブレーキが作動する仕組みである。
尚、図1中、符号Aはエアクリーナを、Tは過給機を示す。
【0020】
一方、制御系のセンサ類は、インジェクションポンプIPに介装された燃料噴射量検出手段であるラックセンサ11と、吸気系(吸気管)30に介装された吸入空気量検出手段であるエアフローメータ12と、排気系40に介装された排気温度センサ13と、エンジン回転センサ14と、が入力信号ラインLiによって前記エンジンコントローラ10に接続されている。
なお、インジェクションポンプIPとしてはインラインポンプシステムでも、コモンレールシステムでも、ユニットインジェクターシステムでもよい。
【0021】
次は図2を用い、図1をも参照して、実施形態の制御方法について説明する。
【0022】
先ず、エンジンコントローラ10は通常制御を行っており(ステップS1)、ラックセンサ11によって燃料噴射量が検出されている(ステップS2)。
【0023】
エンジンコントローラ10は燃料噴射量(q)が所定値以下となったか否かを絶えずチェックしており(ステップS3からステップS2のループ)、燃料噴射量(q)が所定値以下となった場合(ステップS3のYES)に次のステップS4に進む。
【0024】
ステップS4では、エアフローメータ12によって吸気圧を検出しており、エンジンコントローラ10は、吸気圧が所定値以上に達したか否かを常時判断しており(ステップS5〜ステップS4のループ)、吸気圧が所定値以上に達した場合(ステップS5のYES)に次のステップS6に進む。
【0025】
ステップS6では、排気温度センサ13によって排気温度を検出しており、エンジンコントローラ10は、排気温度が所定値以上に達したか否かを常時判断しており(ステップS7〜ステップS6のループ)、排気温度が所定値以上に達した場合(ステップS7のYES)に次のステップS8に進む。
【0026】
ステップS8では、エンジン回転センサ14によってエンジン回転数を検出しており、エンジンコントローラ10は、エンジン回転数が所定値以上の状態で且つ所定時間以上が経過したか否かを常時判断しており(ステップS9〜ステップS8のループ)、エンジン回転数が所定値以上の状態で且つ所定時間以上が経過した場合(ステップS9のYES)に次のステップS10に進む。
【0027】
すなわち、エンジンコントローラ10は、燃料噴射量(q)が所定値以下の状態であり、吸入空気流量が所定値以上であり及び/又は吸気圧が所定値以上であり、排気温度が所定値以上であり、且つエンジン回転数が所定値以上で所定時間以上継続して運転された場合に、前記圧縮圧開放式ブレーキBを作動させるべく切替え弁Vに信号ラインLoを介して制御信号を送り、圧縮工程中に排気弁を僅かに開き、インジェクションポンプIPに対して燃料噴射を強制的に停止するように信号ラインLoを介して制御信号を発信する。
【0028】
かかる構成及び制御方法を具備する本実施形態のエンジンの異常吹き上がり防止装置とその制御方法によれば、図示しないブローバイガス分離装置に異常が生じ、ブローバイガス中のオイルが分離出来ない場合でも、各種センサからの情報によってかかる状況を迅速に把握し、エンジンが「異常吹き上がり」を生ずる前に、強制的にエンジンを停止させ、未然に重大事故の誘発を防止することが出来る。
【0029】
また、圧縮圧開放式ブレーキBの構成は、本出願人によって提案された補助ブレーキ技術、所謂「EEB(日産ディーゼル工業社製商品名で、エンジンの圧縮工程から膨張工程にかけて排気バルブを僅かに開き、圧縮された空気を燃焼室外に排出し、膨張工程でのピストンの加速力を減少させることによりエンジンブレーキを効果的に引き出す動弁機構)機構」を利用することが出来るので新な開発費は発生しない。
【0030】
また、エンジンの復帰(運転開始)はイグニションをONすることで簡単に行うことが出来る。
【0031】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、実施形態の前記ラックセンサの代わりに、例えば圧力センサを用いても良い。また、過給機付エンジンの場合はエアフローメータの代わりにブースト圧センサを用いても良い。
【0032】
【発明の効果】
本発明の作用効果を、以下に記す。
(a) ブローバイガス分離装置に異常が生じ、ブローバイガス中のオイルが分離出来ない場合でも、各種センサからの情報によってかかる状況を迅速に把握し、エンジンが「異常吹き上がり」を生ずる前に、強制的にエンジンを停止させるため、未然に重大事故の誘発を防止することが出来る。
(b) 構成は、既存の、例えば本出願人によって提案された補助ブレーキ技術、所謂「EEB機構」を利用することが出来るので新な開発費は発生しない。
(c) エンジンの復帰はイグニションをONすることで簡単に行うことが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態の構成を示すブロック図。
【図2】本発明の第1実施形態の制御方法を示す制御フローチャート。
【符号の説明】
1・・・シリンダヘッド
3・・・排気ポート
4・・・エキゾーストバルブ
5・・・ロッカアーム
6・・・ロッカシャフト
7・・・プッシュロッド
8・・・カム
9・・・油圧アクチュエータ
10・・・エンジンコントローラ
11・・・ラックセンサ
12・・・エアフローメータ
13・・・排気温度センサ
14・・・エンジン回転センサ
20・・・偏芯ブッシュ
B・・・圧縮圧開放式ブレーキ
IP・・・インジェクションポンプ(インラインポンプ)

Claims (1)

  1. ブローバイガスを吸気系に還元するブローバイ処理装置を有し、圧縮圧開放式ブレーキ(B)を備えた車両用エンジンの異常吹き上がり防止装置において、前記圧縮圧開放式ブレーキ(B)は排気側ロッカアーム(5)とロッカシャフト(6)との間に設けられた偏芯ブッシュ(20)を切替え弁(V)の制御で作動する油圧アクチュエータ(9)によって回動し排気弁(4)を僅かに開弁して圧縮圧を開放するブレーキであり、燃料噴射量検出手段(11)と、吸入空気量検出手段及び/又は吸気圧検出手段(12)と、排気温度検出手段(13)と、エンジン回転センサ(14)と、制御手段(10)とを有し、該制御手段(10)は、前記燃料噴射量検出手段(11)が検出した燃料噴射量が所定値以下であって、前記吸入空気量検出手段及び/又は吸気圧検出手段(12)の検出した吸入空気流量及び/又は吸気圧が所定値以上、且つ前記排気温度検出手段(13)の検出した排気温度が所定値以上であり、そしてエンジン回転センサ(14)が検出したエンジン回転数が所定値以上で且つ所定時間以上継続して運転された場合に、切替え弁(V)を制御し前記圧縮圧開放式ブレーキ(B)を作動させて圧縮行程中に排気弁(4)を僅かに開き、且つ燃料噴射を強制的に停止する機能を有することを特徴とするエンジン異常吹き上がり防止装置。
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