JP4054707B2 - スピーカ用エッジ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、振動板の支持系であるエッジの弾性変形の範囲を広くしたスピーカ用エッジに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の一般的なスピーカの構造を示す断面図を図1に示す。このスピーカは、振動板1、エッジ2、ダンパー3、ボイスコイルボビン4、マグネット5、センターポール6、プレート7、ボイスコイル8、フレーム10を含んで構成される。マグネット5、センターポール6、プレート7、磁気ギャップ9で構成される磁束の磁路を磁気回路Mという。
【0003】
振動板1の特定の半径方向をX軸とし、中心軸をZ軸とする。エッジ2は+Z軸方向から見ると環状構造の弾性部材である。エッジ2は貼りシロ2a、貼りシロ2b、湾曲部2cを有している。エッジ2はその内周に設けられた貼りシロ2aにより振動板1の外周部に固着され、外周に設けられた貼りシロ2bによりフレーム10の外周部に固着される。X軸とZ軸を含む平面でエッジ2を切断した場合、湾曲部2cの断面形状は、一般的に中空で半円状に湾曲したものが多い。
【0004】
磁気回路Mによる磁束は磁気ギャップ9の部分でボイスコイル8を横切る。ボイスコイル8にオーディオ信号に対応した駆動電流が印加されると、フレミングの法則により電磁力が発生し、ボイスコイルボビン4と振動板1は一体となってZ軸方向に振動する。こうしてドーム部を含む振動板1から音が放射される。
【0005】
図中に示すA1はスピーカの有効振動径であり、180 °対称位置にある左右の湾曲部2cの中心位置間の距離に等しい。従ってエッジ2の湾曲部2cの中心は、振動板1の中心からA1/2のところに位置する。一般的にスピーカの音圧特性に寄与する振動板の有効面積は、有効振動径A1により決定される。
【0006】
ダンパー3とエッジ2は、振動板1を所定の位置決め精度でZ方向及び半径方向に弾性的に保持すると共に、振動板1とボイスコイルボビン4の上下振動の振幅を規制する支持系である。エッジ2の外周は貼りシロ2bを用いてフレーム10に固着される。振動板1の上下振動の振幅最大値と振幅線形性は、ダンパー3とエッジ2の特性である弾性特性と粘性特性(ダンピング特性)で決まる。
【0007】
スピーカの能率は有効振動径A1が大きいほど高くなる。スピーカの能率向上のために、同じ外径のスピーカのままで振動板の口径を拡大するには、エッジ2の湾曲部2cにおいて、その半径方向の幅(以下、断面幅という)を狭くする必要がある。
【0008】
【特許文献1】
特開昭61−276499号
【特許文献2】
特許第3127669号
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
湾曲部の断面形状が半円状のエッジ2において、その湾曲部の曲率半径を小さくすることにより、エッジの幅を狭くすることができる。しかしながらこの方法では、振動板1とボイスコイルボビン4の上下振動の振幅に対してエッジ2が追従して変形しにくくなる。この場合、エッジ2及び振動板1の振幅の最大値が小さくなり、エッジの弾性変形における振幅線形性が著しく損なわれる。これと同時に、エッジ2のスティフネスも増加するため、スピーカの最大音圧は大きくならず、スピーカの最低共振周波数が高くなる。このため低域部分の再生が困難になり、音質が劣化する。
【0011】
本発明はこのような従来の問題点に鑑みてなされたものであって、振動板の外径やエッジの断面幅を拡大せずに、振動板の支持系であるエッジの弾性変形の範囲を広くしたスピーカ用エッジを実現することを目的とする。
【0012】
【課題を解決する手段】
本願の請求項1記載の発明は、振動板及びフレームを有するスピーカに用いられ、エッジ外周が前記フレームに固着され、エッジ内周が前記振動板の外周に固着され、前記振動板の外周に沿って湾曲部が一周する環状構造のスピーカ用エッジであって、
前記振動板の径方向に沿った前記湾曲部の断面形状が中空の略半楕円状であり、前記楕円の短径に沿った幅と長径に沿った高さとの比が1.0:1.14以上であり、前記楕円の長径が前記振動板の中心軸と平行で、前記楕円の短径が前記振動板の中心軸と直交する向きに設定され、前記湾曲部は、断面幅が5mm以上20mm以下であり、ゴムシート、ゴムが充填された布材のシート材、樹脂によるフィルム材、及び溶融射出成型用樹脂からなる粘弾性材料のいずれか一つから構成され、前記湾曲部の内周の点を内周点とし、前記内周点と所定の中心角をなす位置であって前記湾曲部の外周の点を外周点とするとき、前記一対の内周点及び外周点を結ぶ溝を前記湾曲部の環状位置に沿って等間隔に複数個形成し、前記振動板の中心及び前記内周点を結ぶ第1の直線と、前記中心及び前記外周点を結ぶ第2の直線との中心角が0°以上、40°以下の範囲にあり、前記溝は、その断面形状がV字状及びU字状のいずれかになるよう前記エッジの素材の塑性変形により形成され、その断面形の底部及び角部の内径の曲率半径が0.1(mm)〜0.3(mm)の範囲内にあることを特徴とするものである。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態におけるスピーカ用エッジについて、図2〜図18を参照しながら説明する。なお、図1に示した従来のスピーカと同じ構成部品には同じ名称を付して説明は省略する。
【0017】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1におけるスピーカ用エッジについて、図面を参照しつつ説明する。図2は本発明の実施の形態1におけるスピーカ用エッジ及び振動板の平面構造を示す平面図であり、図3はスピーカ用エッジの要部構造を示す断面図である。図4は本実施の形態のスピーカ用エッジが用いられるスピーカの要部構造を示す断面図である。図4においてエッジ22以外のスピーカの構成要素は図1に示すものと同一であるので、それらの説明を省略する。
【0018】
図4に示すスピーカは、図1に示す構成部材のうち、エッジの構造を変更したことを特徴とする。図3に示すようにエッジ22は、内側の貼りシロ22a、湾曲部22c、外側の貼りシロ22bが環状に一体成形されたものである。図中のA2はスピーカの有効振動径を示す。有効振動径A2とはエッジ22の180°対称位置にある湾曲部22cの中心位置間の距離である。従って湾曲部22cの頂点は、振動板21の中心からA2/2のところに位置する。図中のBを湾曲部22cの断面幅と呼ぶ。なお、Zは振動板21の振動方向を示す。
【0019】
本実施の形態のエッジ22は、振動板21の外周に沿って湾曲部22cが一周する環状構造を有している。また湾曲部22cの振動板21の径方向に沿った断面形状は中空の略半楕円状であり、楕円の長径が振動板21の中心軸と平行で、楕円の短径に沿った幅が振動板21の中心軸と直交する向きに設定されることを特徴とする。このようなエッジを楕円エッジと呼ぶ。この長径に沿った高さ、即ち頂点から貼りシロ22bの下面までを高さFとし、短径に沿った幅、即ち頂点から貼りシロ22bの左端までの幅をGとする。貼りシロ22aが振動板21の外周部に固着され、貼りシロ22bがフレームに固着されることにより、振動板21は振動自在に保持される。
【0020】
このような楕円エッジを持つスピーカの動作について説明する。このスピーカのボイスコイルに対してオーディオ信号に対応した駆動電流を印加すると、ボイスコイルボビンに固着された振動板21がZ方向に振動する。エッジ22は振動板21の外周部に貼りシロ22aを介して固着され、エッジ22の貼りシロ22bがフレーム10を支持することにより、振動板21の振動を規制する。即ちエッジ22がなければ、振動板21はZ方向に正規の姿勢で振動するとは限らない。
【0021】
ボイスコイル8の駆動電流を大きくしていくと、振動板21の振動振幅は大きくなる。このとき、湾曲部22cの伸びにより、楕円エッジの変形量も大きくなる。湾曲部22cの変形量が限界に達すると、振動板21はそれ以上の振幅で振動できなくなる。このとき振動板21のZ方向の振幅を振幅最大値と呼ぶ。
【0022】
湾曲部22cの断面形状を中空の略楕円形状にすることにより、弾性変形の限界を超えることなく、且つエッジ22の外径(A2+B)を変更しないで、湾曲部22cの断面幅Bを縮小し、スピーカの有効振動径A2を拡大することができる。スピーカの能率は有効振動面積に比例するので、有効振動径A2を拡大することによってスピーカとしての能率を向上させることができる。
【0023】
図5はエッジに加える力と変位との関係を示す特性図である。横軸をZ方向の力〔N〕とし、縦軸をZ方向の変位〔m〕としている。本図では湾曲部22cの断面幅Bを同じとし、湾曲部の断面形状が半円の従来のエッジ(以下、半円エッジJ0という)、及び本実施の形態による楕円エッジJ1の力と変位との関係を図に示す。
【0024】
半円エッジJ0に比べ、楕円エッジJ1の振幅最大値は著しく大きくなる。これは湾曲部が楕円形状の場合、湾曲部の素材面に沿った断面長さが長くなるため、変形時の伸張量が大きくなり得るからである。
【0025】
湾曲部の断面形状を半円形状とする場合、前述したようにスピーカの能率を向上させるために湾曲部の断面幅Bを更に狭くすると、振幅最大値が抑えられてしまう。これでは最大音圧を損なうことになり、スピーカとしての性能は劣化する。湾曲部の断面形状を楕円形状とすることにより、最大振幅及び最大音圧を損なうことなく、スピーカの能率を向上させることができる。
【0026】
図6はエッジ及びダンパーのスティフネス特性を示した説明図である。横軸はエッジ又はダンパーのZ方向変位〔m〕を示し、縦軸はスティフネス〔N/m〕を示している。本図に、楕円エッジJ1のスティフネス特性、同じ断面幅を持つ半円エッジJ0のスティフネス特性、ごく一般的な波型形状のダンパーD0のスティフネス特性を夫々示す。
【0027】
半円エッジJ0とダンパーD0では、振動振幅が大きくなるにつれてスティフネスが大きくなる。即ち、半円エッジJ0とダンパーD0は、振動板の支持部材として動きにくくなり、振動振幅が規制される。
【0028】
しかし、楕円エッジJ1の特性では、半円エッジJ0の特性やダンパーD0の特性と逆であり、振動振幅が小さいときの方が動きにくくなり、振動振幅の最大値に向かってスティフネスが小さくなる傾向がある。即ち楕円エッジJ1は振動振幅が大きい領域で動き易くなる。振動系全体のスティフネス特性は、エッジとダンパーの総合特性で決定される。従って、ダンパーと逆のスティフネス特性を持つ楕円エッジJ1を用いれば、全体のスティフネスの線形性を向上させることができる。このことにより、スピーカの振幅線形性の向上と低歪化が実現できる。従って有効振動径を許容範囲内に保持した状態で、スピーカとして音質を向上させる効果が得られる。
【0029】
図7は湾曲部22cの長径に沿った高さをFとし、短径に沿った幅をGとしたときの楕円エッジのスティフネス特性を示す説明図である。図7の縦軸はスティフネス〔N/m〕を示し、横軸はエッジのZ方向の変位〔m〕を示す。湾曲部が同じ断面幅Bの楕円エッジにおいて、短径に沿った幅Gと長径に沿った高さFの比率を変更した場合のスティフネス特性が示されている。図中のH1はG:Fが3.5 :3.8 の場合、H2はG:Fが3.5 :4.0 の場合、H3はG:Fが3.5 :4.5 の場合、H4はG:Fが3.5 :5.0 の場合のスティフネス特性を示す。
【0030】
スピーカ全体の振幅線形性を改善するという観点では、楕円エッジのスティフネス特性は、ダンパーのスティフネス特性と逆転している必要がある。そのような特性を持つのは、H2の3.5 :4.0 以上の場合、即ちH2、H3、H4の場合である。従って、幅Gと高さFとの比が3.5 :4.0 以上、即ち1.0 :1.14以上が有効な範囲となる。
【0031】
以上のような構造のスピーカ用エッジによれば、同じ口径のスピーカにおいて湾曲部の断面幅を狭くして有効振動径を拡大し、スピーカの能率を向上させることができる。これにより、振幅の最大値を損なうことがなく、スピーカの振幅の線形性を改善して音質を向上させることができる。
【0032】
(実施の形態2)
次に本発明の実施の形態2におけるスピーカ用エッジについて説明する。図8は本実施の形態2におけるスピーカ用エッジ及び振動板の構造を示す平面図である。図9は本実施の形態におけるスピーカ用エッジの要部構造を示し、溝に沿った断面図である。図10は溝と直角方向に切断した場合のスピーカ用エッジの断面図である。本実施の形態のスピーカ用エッジでは、実施の形態1の楕円エッジに加えて、湾曲部に多数の溝を振動板のタンジェンシャル方向に設けたことを特徴とする。その他の構成は実施の形態1と同様である。
【0033】
図8に示すように、このスピーカの振動板31の外周部に、溝つきのエッジ32が接合される。本実施の形態のエッジ32は実施の形態1と同様に、貼りシロ32a、貼りシロ32b、湾曲部32cを有し、振動板31の径方向に沿った湾曲部32cの断面形状が中空の略半楕円状のものである。そして楕円の長径が振動板31の中心軸と平行で、楕円の短径が振動板31の中心軸と直交する向きに設定される。
【0034】
図8に示すように、振動板31の中心をOとし、湾曲部32cの内周の一点をP1(第1の点)とし、湾曲部32cの外周の一点をP2(第2の点)とする。また中心Oと点P1を結ぶ直線をL1とし、中心Oと点P2を結ぶ直線をL2とし、直線L1とL2とのなす角度をαとする。次に点P1とP2とを結ぶ直線L3上に、エッジの素材を塑性変形させることにより溝33を形成する。この溝33は振動板31の外周部に沿うように、好ましくは等間隔に複数個配置される。溝33の向きを示す角度αは、振動板の外径寸法や溝33の配置数によって異なるが、0°以上、40°以下の範囲とする。直線L3と直交する法線L4で切断した場合の溝33の断面形状は、図10に示すようにU字状、又はV字状とする。溝33を図8の直線L3に沿って切断したとき、図9に示すように溝33の角部33aは、エッジ32の湾曲部32cの輪郭と一致する。また底部33bは溝33の谷である。
【0035】
図10に示すエッジ32の断面図において、溝33の断面形状をU字状とした場合、溝32の角部33a及び底部33bの内径の曲率半径を記号Rで示す。溝33の底部33bの曲率半径をR1とし、角部33aの曲率半径をR2、R3とする。溝33はエッジ32の素材の塑性変形により湾曲部32cと同時に一体に成形される。この成形方法は素材により異なる。例えばゴムシート、ゴムが充填された布材等のシート材、又は樹脂によるフィルム材の場合は、金型による加圧成形を用いる。エッジの素材が樹脂の場合は溶融射出成形を用いる。これらの曲率半径は素材の局所的な応力の繰り返しにより弾性疲労が発生し、この部分で破断するのを防止できる値に設定される。曲率半径R1、R2、R3の値は湾曲部の断面幅と素材の厚みを考慮して、例えば0.1(mm)〜0.3(mm ) の範囲内に設定される。このようなR部分を面取りともいう。
【0036】
実施の形態1の場合と同様にして、エッジ32の湾曲部の断面形状を中空の略楕円とすることにより、弾性変形の限界を超えることなく、エッジの外径を変更しないで湾曲部の断面幅Bを縮小し、振動板の有効振動径A2を拡大することができる。スピーカの能率は有効振動径によって決定される有効振動面積に比例するので、スピーカとしての能率が向上する。
【0037】
図11は楕円エッジにおいて、溝がある場合と溝がない場合のスティフネス特性を比較した説明図である。横軸はZ方向変位〔m〕を表し、縦軸はスティフネス〔N/m〕を表す。K1は溝がない場合の楕円エッジの特性である。K2は溝がある場合の楕円エッジの特性である。領域Lは溝がない楕円エッジにおいて、スティフネス特性が急激に変化する範囲を示している。この急激な変化は、Z方向の力Nを増加させたとき、湾曲部の変形量が限界に達し、遂にはエッジの内周部に固着された振動板自身が変形することによって生じる。従って、振幅の最大値は、領域Lの左端の点M1における値で表され、この例では振幅の最大値は0.002 mである。
【0038】
このような構造の溝33を設けることにより、溝33の素材が溝の法線L4の方向に拡がり、湾曲部32cの弾性変形量を大きくすることができる。このため、突っ張り現象を緩和でき、図11に示すように振幅の最大値を点M1から点M2に拡大できる。この例では点M2での変位量は0.003 mに近い値になる。即ち片振幅が更に1mm程度増加する。
【0039】
一方、有効振動径を拡大するために図3のような溝なし楕円エッジを用いると、スピーカの最低共振周波数が高くなる。最低共振周波数を低下させるために、楕円エッジに溝33を設けることによって、エッジ32のスティフネスの増加を抑制することができる。
【0040】
溝付きの楕円エッジは、図11の特性K2で示すように、スティネスが変化しない範囲が広くなる。このために、極めて線形性に優れたエッジが得られる。このように溝付き楕円エッジを用いたスピーカ全体のスティフネス特性は、従来の半円エッジを用いたスピーカより著しく向上する。
【0041】
なお、溝33の数は図8では36個として図示しているが、溝の数は任意でよい。スピーカの設計者又は製造者が成形のし易さ、振幅線形性、振幅最大値、スピーカの最低共振周波数を考慮して、溝の数及びその形状並びに溝の配置方法を選択することができる。
【0042】
図12は角度α、湾曲部の内径N1、湾曲部の外径N2の関係を示した説明図である。αが最も大きくなる条件は、湾曲部の内周に溝33の中心線が接する場合である。この状態ではαは次の(1)式のように示される。
α=cos -1(N1/N2) ・・・(1)
【0043】
口径が80mm〜300 mmの一般的なスピーカにおいては、湾曲部の断面幅Bは20mm以下である。図13は湾曲部の断面幅(エッジ幅と表記)を5 〜20mmとして、湾曲部の内径(エッジ内径と表記)N1と、湾曲部の外径(エッジ外径と表記)N2を変化させたときの角度αの値とエッジ幅との関係を示したものである。
【0044】
αが40°を超えるようなスピーカは、エッジ幅が極端に大きい特殊なものとなり、有効振動径を拡大して能率を上げるという本発明の目的の対象からはずれる。従って、溝を構成するための角度αの範囲は0°以上、40°以下の範囲とする。
【0045】
図14は溝の各部において、面取りの曲率半径Rを0.0mm 〜0.4mm まで変化させた場合と、溝のない場合との振動板とエッジによる最低共振周波数の変化の例を示した図である。この図によれば、面取りの曲率半径Rが0mm(面取り無し)のときは、溝がない場合よりも最低共振周波数が高くなっている。即ち面取り無しでは、湾曲部のスティフネスが増加し、動きにくくなり、振幅の最大値が抑えられる。
【0046】
面取りの曲率半径Rが0.2mm のときに、最低共振周波数は図14中で最も低くなる。即ち、エッジにおける湾曲部のスティフネスが最も小さくなり、湾曲部が動き易くなる。面取りの曲率半径Rが0.4mm では、再び溝がない場合よりも最低共振周波数が上がり、湾曲部が動きにくくなる。溝33を設ける目的は、振幅の最大値の拡大とスティフネスの低減にあるので、曲率半径Rを0.1mm 〜0.3mm の範囲としたときにその効果が得られる。
【0047】
また、実際のエッジの成形では、柔らかい布やゴムなどの複合素材が使われることが多いため、面取り無しで溝33を形成することは実質的に難しい。このような条件からも面取りが必然的に形成される。
【0048】
(実施の形態3)
次に本発明の実施の形態3におけるスピーカ用エッジについて説明する。図15は本実施の形態3におけるスピーカ用エッジ及び振動板の構造を示す平面図である。本実施の形態のスピーカ用エッジは、実施の形態1の楕円エッジに加えて、エッジに多数の溝を設け、これらの溝を放射状に配置したことを特徴とする。その他の構成は実施の形態1と同様である。
【0049】
図16は本実施の形態におけるスピーカ用エッジの要部構造を示し、溝に沿って切断した場合の断面図である。図17は溝と直角方向に切断した場合のスピーカ用エッジの断面図である。このスピーカは、図4に示す構成部材のうち、エッジの形状を更に変更したものである。
【0050】
図15に示すように、振動板41の外周部に対して溝つきのエッジ42が接合される。エッジ42は図16に示すように、貼りシロ42a、貼りシロ42b、湾曲部42cを有し、実施の形態1、2と同様に振動板41の径方向に沿って湾曲部42cの断面形状が中空の略半楕円状に成形されたものである。そして楕円の長径が振動板41の中心軸と平行で、楕円の短径が振動板41の中心軸と直交する向きに設定される。
【0051】
図15に示すように、振動板41の中心をOとし、中心Oから振動板41の外側に向かう半径線が湾曲部42cの内周と交差する点をQ1(内周点)とし、湾曲部42cの外周と交差する点をQ2(外周点)とする。次に直線Q1−Q2に沿って、エッジの素材の塑性変形により溝43を形成する。この溝43は振動板41の外周部に沿うよう放射状に、好ましくは等間隔に配置される。
【0052】
直線Q1−Q2で切断した場合の溝43の断面形状は図16のようになり、溝43の底部を42dで示し、エッジ42の角部を42eで示す。なお、貼りシロ42aは湾曲部42cの内周部の貼りシロであり、貼りシロ42bは湾曲部42cの外周部の貼りシロである。次に図15の直線Q1−Q2と直交する直線L5で切断した場合の溝43の断面を含むエッジ42の側面図を図17に示す。溝43の断面形状はU字状又はV字状となる。
【0053】
図17の断面図において、溝43の断面形状をU字状とした場合の溝43の角部及び底部の内径の曲率半径が示されている。溝43の底部の曲率半径をR3とし、溝43の角部の曲率半径をR4、R5とする。このような曲率半径を有する面取り部は、実施の形態2と同様に素材の局所的な応力の繰り返しにより、弾性疲労を発生し、この部分で破断するのを防止するために設定される。曲率半径R3、R4、R5の値は湾曲部の断面幅と素材の厚みを考慮して、図10に示すものと同様に0.1(mm)〜0.3(mm)の範囲内に設定される。
【0054】
このような構造のスピーカにおいても、エッジ42における湾曲部の断面形状を中空の略楕円状とすることにより、エッジの外径を変更することなく湾曲部の断面幅Bを縮小し、振動板の有効振動径A2を拡大することができる。スピーカの能率は有効振動径で決定される有効振動面積に比例するので、スピーカとしての能率が向上する。以上の効果は実施の形態1と同等の効果である。
【0055】
更に溝43を設けることにより、エッジ42の変形量が大きくなるにつれて溝43の部分が円周方向に拡がることができる。このため、突っ張り現象を緩和でき、楕円エッジの振幅の最大値を拡大できる。
【0056】
また前述したように有効振動径を拡大するために、溝なし楕円エッジを用いると、スピーカの最低共振周波数が高くなる。楕円エッジにこのような溝43を設けることによって、楕円エッジのスティフネスを著しく小さくすることができる。このため溝43は、振動系の最低共振周波数を低下させるのに有効な方法となる。以上の効果は実施の形態2と同等の効果である。
【0057】
図18は各エッジのスティフネス特性を比較した説明図である。横軸はZ方向の変位〔m〕を表し、縦軸はスティフネス〔N/m〕を表す。本図において溝無しの楕円エッジJ1のスティフネス特性、実施の形態2の溝付き楕円エッジJ2のスティフネス特性(角度α=10°)、本実施の形態3における溝付き楕円エッジJ3のスティフネス特性が夫々示されている。これらの特性より同じ楕円形状で溝を放射状に設けた本実施の形態のエッジにおけるスティフネス特性と、他の楕円エッジのスティフネス特性との違いが判る。
【0058】
図18によると、溝付き楕円エッジJ3のように放射状に溝43を設けたエッジ42では、振幅最大値が更に増大する。この方法は、楕円エッジにおける振幅の最大値の拡大を重視したときに有効な方法と言える。
【0059】
なお、図15において放射状に設けた溝43の数は36個としたが、任意の数でよい。さらに図16において、溝43の底部42dの断面形状は略半楕円状としているが、この部分は半円状であってもよい。スピーカの設計者や製造者が素材の成形のし易さ、振幅線形性、振幅最大値、スピーカの最低共振周波数を考慮して、溝の形状や配置を自由に選択することができる。
【0060】
以上のように溝付き楕円エッジによれば、溝無し楕円エッジよりも大振幅時におけるエッジのスティフィネスを低減し、振動板の軸方向の弾性変形範囲を更に拡大することができる。こうすることで湾曲部の断面幅の狭いエッジにおいて、振幅線形性を改善し、スピーカの能率を向上しつつ、最低共振周波数を低下させ、低域再生能力を高め、最大音圧も拡大することができる。
【0061】
【発明の効果】
本発明のスピーカ用エッジによれば、同じ口径のスピーカにおいて、エッジの断面幅を狭くして、有効振動径を拡大し、スピーカの能率を向上させることができる。これにより、振幅の最大値を損なうことがなく、スピーカの振幅の線形性を改善して音質を向上させることができる。
【0062】
また、エッジの湾曲部に、断面がV字状又はU字状の溝を多数設けることにより、大振幅時におけるエッジのスティフィネスを低減し、振動板の軸方向の弾性変形範囲を更に拡大することができる。こうすることで、断面幅の狭いエッジにおいて、振幅の線形性を改善し、スピーカの能率を向上しつつ、最低共振周波数を低下させ、低域再生能力を高め、最大音圧も拡大することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来例のスピーカの要部構造を示す断面図である。
【図2】本発明の実施の形態1におけるスピーカ用エッジの平面図である。
【図3】実施の形態1におけるスピーカ用エッジの要部断面図である。
【図4】実施の形態1の楕円エッジが用いられるスピーカの要部構造を示す断面図である。
【図5】実施の形態1の楕円エッジと従来の半円エッジにおいて、力と変位との関係を示す特性図である。
【図6】実施の形態1における楕円エッジ、従来例の半円エッジ、及び一般的なダンパーにおける変位とスティフネスとの関係を示す特性図である。
【図7】実施の形態1の楕円エッジにおいて、長径と短径の比率を変化させたときの変位とスティフネスとの関係を示す特性図である。
【図8】本発明の実施の形態2におけるスピーカ用エッジの平面図である。
【図9】実施の形態2におけるスピーカ用エッジの要部構造を示す断面図である。
【図10】実施の形態2におけるスピーカ用エッジの要部構造を示す断面図である。
【図11】実施の形態2のスピーカ用エッジにおいて、溝の有無による変位とスティフネスとの関係を示す特性図である。
【図12】実施の形態2のスピーカ用エッジにおいて、中心角αと湾曲部の内径、外径との関係を示す説明図である。
【図13】エッジ内径とエッジ外径を変化させたときの角度αの値を示した図である。
【図14】溝の面取りの曲率半径Rを変化させた場合と、溝のない場合と、エッジのエッジの溝における曲率半径をパラメータとする最低共振周波数の変化を示す説明図である。
【図15】本発明の実施の形態3におけるスピーカ用エッジの平面図である。
【図16】実施の形態3におけるスピーカ用エッジの要部構造を示す断面図である。
【図17】実施の形態3におけるスピーカ用エッジの要部構造を示す断面図である。
【図18】各実施の形態におけるエッジの変位とスティフネスとの関係を示す特性図である。
【符号の説明】
1,21,31,41 振動板
2,22,32,42 エッジ
3 ダンパー
4 ボスコイルボビン
5 マグネット
6 センターポール
7 プレート
8 ボイスコイル
9 磁気ギャップ
10 フレーム
22a,22b,32a,32b,42a,42b 貼りシロ
22c,32c,42c 湾曲部
33,43 溝
33b,42e 底部
33a,42d 角部
M 磁気回路

Claims (1)

  1. 振動板及びフレームを有するスピーカに用いられ、エッジ外周が前記フレームに固着され、エッジ内周が前記振動板の外周に固着され、前記振動板の外周に沿って湾曲部が一周する環状構造のスピーカ用エッジであって、
    前記振動板の径方向に沿った前記湾曲部の断面形状が中空の略半楕円状であり、前記楕円の短径に沿った幅と長径に沿った高さとの比が1.0:1.14以上であり、前記楕円の長径が前記振動板の中心軸と平行で、前記楕円の短径が前記振動板の中心軸と直交する向きに設定され、
    前記湾曲部は、断面幅が5mm以上20mm以下であり、ゴムシート、ゴムが充填された布材のシート材、樹脂によるフィルム材、及び溶融射出成型用樹脂からなる粘弾性材料のいずれか一つから構成され、
    前記湾曲部の内周の点を内周点とし、前記内周点と所定の中心角をなす位置であって前記湾曲部の外周の点を外周点とするとき、前記一対の内周点及び外周点を結ぶ溝を前記湾曲部の環状位置に沿って等間隔に複数個形成し、
    前記振動板の中心及び前記内周点を結ぶ第1の直線と、前記中心及び前記外周点を結ぶ第2の直線との中心角が0°以上、40°以下の範囲にあり、
    前記溝は、その断面形状がV字状及びU字状のいずれかになるよう前記エッジの素材の塑性変形により形成され、その断面形の底部及び角部の内径の曲率半径が0.1(mm)〜0.3(mm)の範囲内にあることを特徴とするスピーカ用エッジ。
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