JP4054668B2 - 金属ホルダ、光学部品複合体およびその製造方法 - Google Patents
金属ホルダ、光学部品複合体およびその製造方法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光学フィルタまたは波長板等に用いられる光学ガラスあるいは光学結晶などからなる光学部品を半田あるいは低融点ガラスの溶融接合により固定する金属ホルダ、この金属ホルダに光学部品が固定された光学部品複合体およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、光学フィルターまたは波長板等に光学ガラスあるいはルチル(酸化チタン)、ガーネット、アルミナ、LiNbO3、YVO4、α−BBO、方解石、CaF2、MgF2等の光学結晶などが用いられている。これらの光学結晶などからなる光学部品を金属ホルダに接合、一体化して光学部品複合体とすることが、赤外光学系あるいは紫外光学系で広く行われている。そして、これらの光学部品を金属ホルダに接合するに際しては、低温半田、高温半田、蝋あるいは低融点ガラスが使用される。この場合、一般的には金属ホルダは比較的熱膨張率が小さい鉄−ニッケル合金あるいは鉄−ニッケル−コバルト合金(商品名:コバール(Kovar))、あるいはSUS304,SUS316,SUS450、SUS430F、インバー等のステンレス鋼が使用される。
【0003】
ところで、この種の光学部品と金属ホルダを低温半田、高温半田、蝋あるいは低融点ガラスで接合すると、これらの材質の熱膨張係数の差に起因する熱応力が接合後に光学部品に発生する。この熱応力が光学部品に発生すると、光学部品の光学特性を劣化させたり、場合によっては光学部品が損傷するという問題が生じた。そこで、光学部品と金属ホルダとを接合しても光学部品に熱応力が発生しないようにしたものが、例えば、特許文献1(特開平12−106407号公報)にて提案されるようになった。
【0004】
この特開平12−106407号公報にて提案されたものにおいては、ホウケイ酸系の非晶質ガラスからなる光透過性部材(光学部品)の外周面全体を、これと熱膨張係数が近似する鉄−ニッケル合金からなる固定部材(金属ホルダ)にロウ付けにより接合して一体化するようにしている。これにより、両者の熱膨張係数の差に起因する熱応力が光透過性部材に発生することが防止できるようになって、光透過性部材の光学特性の劣化を防止できるようになる。
【特許文献1】
特開平12−106407号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した特開平12−106407号公報にて提案された方法により、光学部品の外周面全体とこれと熱膨張係数が近似する金属ホルダとをロウ付けにより接合して一体化しても、接合後に光学部品に歪みが生じて、光学部品に割れやクラックが発生して、光学部品が損傷するという問題を生じた。
【0006】
そこで、本発明者等が、接合後に光学部品に割れやクラックが発生する原因を調査した結果、これらの光学部品は熱膨張係数が大きいものがあったり、あるいは特定方向(例えば、結晶軸の方向)に熱膨張係数が大きいものがあって、熱膨張係数の差に起因する熱応力が金属ホルダとの接合後に光学部品に生じたことが明らかになった。また、これらの光学部品は端縁が切断された切断縁を有するものがあって、切断縁を有するものにあっては、切断縁に存在する微少なクラックやひび割れに接合後に熱応力が作用して、微少なクラックやひび割れが成長し、光学部品が損傷することが明らかになった。
【0007】
本発明は上述したような問題点を解消するためになされものであって、金属ホルダに光学部品を接合しても、光学部品に損傷を生じない光学部品複合体を得られるようにすることを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の金属ホルダは、複数の光学部品を接合、固定する取付部を備えるとともに、この取付部に光学部品の光の入射面あるいは出射面の一端部を一面のみで接合、固定するための串歯状に形成された複数の突出部が該取付部の根本側より突出して配設されていて該突出部の一表面が接合面となされている。このように、串歯状に配設された複数の突出部の一表面が光学部品の一端部の一面との接合面となされていると、光学部品の光の入射面あるいは出射面の残りの端部は金属ホルダに固定されないことになる。このため、金属ホルダとの接合後に光学部品の接合面以外の端縁に熱応力に起因する歪みが生じることはない。この結果、熱応力に起因する歪みの発生を未然に防止することが可能な金属ホルダを提供できるようになる。
【0009】
また、本発明の金属ホルダとしては、光学部品を接合、固定する取付部を備えるとともに、この取付部に光学部品の光の入射面あるいは出射面の一端部を一面のみで接合、固定するための突出部が該取付部の根本側より突出して配設されているとともに、該突出部の一表面に光学部品を接合するための段部が配設されていて該段部の一表面が接合面となされていてもよい。また、複数の光学部品を接合、固定する取付部を備えるとともに、この取付部に光学部品の光の入射面あるいは出射面の一端部を一面のみで接合、固定するための串歯状に形成された複数の突出部が該取付部の根本側より突出して配設されているとともに、該突出部の一表面に光学部品を接合するための段部が配設されていて該段部の一表面が接合面となされていてもよい。
【0010】
この場合、突出部の接合面の一部が光学部品の一端部の端縁にあって、この一端部との間に空隙を有して接合される取付部を備えるようにすると、金属ホルダとの接合後に光学部品の一端部の端縁に生じる熱応力に起因する歪みの発生をさらに減少させることが可能になる。そして、接合面の一部にこの接合面より微少に突出する段部が設けられていると、接合面と段部との間に空間部が生じることとなる。このため、この段部に光学部品を半田付けした際に、空間部が半田の逃げ部を形成することが可能となる。これにより、逃げ部に洩れた半田と光学部品の端部とが接合することを未然に防止することができるようになる。そして、このような金属ホルダとしては、熱膨張係数が光学部品と近似するFeとNiを主成分とする合金、FeとNiとCoを主成分とする合金、あるいはステンレス鋼から構成するのが望ましい。
【0011】
また、本発明の光学部品複合体は、金属ホルダは串歯状に形成された複数の突出部が根本側より突出して配設されていて該突出部の一表面が接合面となされた取付部を備え、この突出部の接合面の各々に光学部品の光の入射面あるいは出射面の一端部の一面のみが半田あるいは低融点ガラスの溶融接合により固定されている。このように、串歯状に形成された複数の突出部が根本側より突出して配設されていて該突出部の一表面が接合面となされていると、光学部品の光の入射面あるいは出射面の残りの端部は金属ホルダに固定されないことになる。このため、金属ホルダとの接合後に光学部品の接合面以外の端縁に熱応力に起因する歪みが生じることはない。この結果、熱応力に起因する歪みの発生を未然に防止することが可能な光学部品複合体を提供できるようになる。また、金属ホルダは本体部から突出する突出部が根本側より突出して配設されているとともに、この突出部の一表面に光学部品を接合するための段部が配設されていて該段部の一表面が接合面となされた取付部を備え、この段部の接合面に光学部品の光の入射面あるいは出射面の一端部の一面のみが半田あるいは低融点ガラスの溶融接合により固定されているような構成の光学部品複合体としてもよい。
【0012】
さらに、金属ホルダは串歯状に形成された複数の突出部が根本側より突出して配設されていて該突出部の一表面が接合面となされた取付部を備え、この突出部の接合面の各々に光学部品の光の入射面あるいは出射面の一端部の一面のみが前記半田あるいは低融点ガラスの溶融接合により固定されているとともに、該一端部の端縁は突出部の接合面との間に空隙(非接合部)を有しているようにするのが望ましい。このように、光学部品の光の入射面あるいは出射面の少なくとも一方の一端部の端縁が金属ホルダに固定されていないと、金属ホルダとの接合後に光学部品の一端部の端縁に生じる熱応力に起因する歪みの発生を未然に防止することが可能になる。これにより、光学部品に割れやクラックが発生するのを防止できるようになる。
【0013】
この場合、光学部品の半田あるいは低融点ガラスの溶融接合により固定された部位の最縁部の位置が端縁に近すぎると、熱応力に基づく歪みの発生を防止する効果が小さくなるが、この最縁部の位置が端縁から20μm以上離れた位置であれば充分に歪みの発生を防止する効果があることが実験により確認できた。このことから、光学部品の半田あるいは低融点ガラスの溶融接合により固定された部位の最縁部は、光学部品の光の入射面あるいは出射面の少なくとも一方の一端部の端縁から少なくとも20μm以上離れた位置に形成するのが望ましいということができる。また、その上限値については特に限定する必要はなく、光学特性に悪影響を及ぼさない範囲にするのが望ましい。また、光学部品はアルミナ、LiNbO3またはYVO4等の結晶から構成するのが望ましい。
【0014】
そして、上述のように金属ホルダに接合された光学部品としては、特に、結晶性の光学レンズあるいは光学フィルターであって、これらの端縁が切断縁となっているものであると、接合後の熱応力に基づく歪みの発生を効果的に防止できるようになる。これは、端縁が切断縁となっている結晶性の光学レンズあるいは光学フィルターにあっては、切断時に端縁に微少なクラックや歪みが生じて、これらが熱応力により成長することにより、接合後に割れやクラックが発生すると考えられるが、本発明のように端縁から20μm以上離れた位置までは金属ホルダに接合されない非接合部となるため、この非接合部(この場合、この非接合部は予め微少なクラックや歪みが生じている部分となる)には熱応力が作用しにくくなるためと考えられる。
【0015】
また、結晶性の光学レンズあるいは光学フィルターからなる光学部品は半田で接合できないため、金属ホルダに光学部品を半田により接合するためには、少なくとも光学部品が金属ホルダに接合される面は接合性が良好な金属からなるメタライズ層を備えるようにするのが望ましい。この場合、光学部品との接合強度が大きい金属のメタライズ層とするためには、最表面層との間に接合強度を高める複数の金属を積層した積層構造とするのが望ましい。なお、光学部品を低融点ガラスで金属ホルダに接合する場合は、低融点ガラスは光学部品に直接、良好に接合するため、光学部品が金属ホルダに接合される面にメタライズ層を設けなくてもよい。
【0016】
一方、金属ホルダにあっては、光学部品と熱膨張係数が近似する材質により構成する必要があるが、FeとNiを主成分とする合金、FeとNiとCoを主成分とする合金あるいはステンレス鋼などは光学部品と熱膨張係数がほぼ近似するので望ましい。そして、FeとNiを主成分とする合金、FeとNiとCoを主成分とする合金あるいはステンレス鋼などが腐食などにより劣化する恐れがある場合あるいは半田との接合性を良好にするためには、この金属ホルダの少なくとも接合面は耐食性に優れ、かつ接合部での接合強度が大きい複数の金属のメッキ層を備えるのが望ましい。なお、低融点ガラスを用いる場合は、低融点ガラスは金属ホルダに直接、良好に接合するため、メッキ層を設ける必要がないが、金属ホルダの腐食が懸念される場合は、最表面にAuメッキを施すようにすれば良い。
【0017】
さらに、上述のように金属ホルダに光学部品を接合する半田としては、これらの両部材を強固に接合する半田を用いるのが望ましいが、AuSn合金、AuAgCu合金、SnAg合金あるいはPbSn合金からなる半田は、金属ホルダと光学部品とを強固に接合するとともに信頼性に優れた半田であるので、これらのAuSn合金、AuAgCu合金、SnAg合金あるいはPbSn合金からなる半田を用いるのが望ましい。
【0018】
そして、上述のような光学部品複合体を製造するに際しては、光学部品の光の入射面あるいは出射面の一端部の一面のみとの接合面となる段部を有する突出部が根本側より突出して配設された取付部を備えた金属ホルダを治具内に配置する配置工程と、光学部品の光の入射面あるいは出射面の少なくとも一方の一端部の一面と突出部の表面に形成された段部の接合面との間に前記半田あるいは低融点ガラスを狭持させる狭持工程と、半田あるいは低融点ガラスを溶融させる溶融工程とを備えたり、あるいは、複数の光学部品の光の入射面あるいは出射面の一端部の一面のみとの接合面となる複数の突出部が根本側より突出して串歯状に配設された取付部を備えた金属ホルダを治具内に配置する配置工程と、複数の光学部品の光の入射面あるいは出射面の少なくとも一方の一端部の端縁は接合面に接合されないように半田あるいは低融点ガラスを該端縁からずらして光学部品の一面と突出部の接合面との間に狭持させる狭持工程と、半田あるいは低融点ガラスを溶融させる溶融工程とを備えるようにすればよい。このような各工程を備えることにより、光学部品の光の入射面あるいは出射面の少なくとも一方の一端部は半田あるいは低融点ガラスを介して金属ホルダに固定され、かつこの一端部の端縁は金属ホルダに固定されなくすることが可能となる。
【0019】
なお、溶融工程により半田あるいは低融点ガラスを溶融させた際に、溶融した半田あるいは低融点ガラスが光学部品の一端部の端縁側に垂れて、光学部品の一端部の端縁側の表面あるいは光学部品の一端部の端縁側に対向する金属ホルダの表面を薄く覆う場合も生じるが、このように光学部品あるいは金属ホルダの表面を覆った半田あるいは低融点ガラスは、光学部品と金属ホルダとを接合するようには作用しないため、この部分で光学部品が金属ホルダに固定されることはない。即ち、本明細書において使用する「接合」あるいは「固定」なる用語は、半田あるいは低融点ガラスが接合材料の機能を充分に発揮して、光学部品が金属ホルダに充分に接合して、かつ強固に固定されたことを意味する。
【0020】
【発明の実施の形態】
ついで、本発明の実施の形態を図1〜図5に基づいて説明する。なお、図1は本発明の金属ホルダを模式的に示す斜視図である。図2は、図1に示す金属ホルダに光学部品が接合された光学部品複合体を模式的に示す正面図である。図3は、接合用の治具内に金属ホルダと光学部品を装着した状態を模式的に示す上面図である。図4は金属ホルダと光学部品の接合状態を模式的に示す断面図である。図5は光学部品の表面にメタライズ層を形成した状態を模式的に示す斜視図である。
【0021】
1.金属ホルダ
(1)串歯状金属ホルダ
本発明の金属ホルダ10は、熱膨張係数が光学部品と近似するFeとNiを主成分とする合金、FeとNiとCoを主成分とする合金、あるいはステンレス鋼などの金属の焼結体あるいはこれらの金属を機械加工により、図1(a)に示すような所定形状になるように形成して構成されている。この金属ホルダ10は、平板状に形成された本体部15と、この本体部15から一方側に突出する取付部14と、本体部15の他方側からL字状に屈曲させた把持部15aとを備えている。
【0022】
そして、取付部14は、複数の突出部11,12,13が串歯状に形成されているとともに、これらの各突出部11,12,13の間隔が所定の間隔(例えば、1550nm以上)になるように配設されている。そして、串歯状に配設された複数の突出部11,12,13の上面は、後述する光学部品との接合面11a,12a,13aとされている。この場合、L字状に屈曲させた把持部15aをピンセットなどで掴むようにすれば、微少部品となる金属ホルダ10の取り扱いが容易になる。
【0023】
また、図1(b)(なお、図1(b)においては、要部のみを拡大して示している)に示すように、各突出部11,12,13の接合面11a,12a,13a(図1(b)の各突出部11,12,13の上面)における根本側に、この金属ホルダに接合される各光学部品21,22,23(図2(b)参照)との間に空隙11c,12c,13cが形成されるように、段部11b,12b,13bを設けた金属ホルダ10aとしてもよい。
【0024】
この場合は、各接合面11a,12a,13aと各段部11b,12b,13bとの間に空間部y(図2(b)参照)が生じることとなる。このため、後述のように、各段部11b,12b,13bにそれぞれ光学部品21,22,23を半田付けした際に、各空間部yが半田の逃げ部を形成することが可能となる。これにより、逃げ部に洩れた半田zと各光学部品21,22,23とが接合することを未然に防止することができるようになる。
【0025】
(2)単歯状金属ホルダ
また、図1(c)に示すように、単歯状金属ホルダ10bとしてもよい。この単歯状金属ホルダ10bにおいては、平板状に形成された本体部17と、この本体部17から一方側に突出する突出部(取付部)16と、本体部17の他方側からL字状に屈曲させた把持部17aとを備えている。この場合、突出部(取付部)16の上面には段部16aが形成されていて、この段部16aにより、金属ホルダ10bに接合された光学部品24(図2(c)参照)と突出部(取付部)16の根本側との間に空隙16bが形成されるようになる。
【0026】
2.金属ホルダの製造方法
ついで、上述のような構成となる金属ホルダ10(10a,10b)の製造方法の一例について、以下に説明する。まず、アトマイズ法、破砕法、電解法、還元法などにより得られた粒径が20μm以下(平均粒径10μm)の球状のFeNiCo合金(コバール)粉末を用意する。ついで、このFeNiCo合金(コバール)粉末にポリエチレン、各種ワックスからなるバインダを添加し、混練して成形用組成物とした。この成形用組成物をペレタイザーによりペレット化した。ついで、得られたペレットを射出成型機のホッパに投入し、射出温度160℃、金型温度35℃で射出成形した後、金型を水冷して射出物を固化させて、グリーン体からなる金属ホルダ10(10a,10b)を作製した。
【0027】
このグリーン体からなる金属ホルダ10(10a,10b)を図示しない脱バインダ装置内に配置し、所定の温度に加熱して脱バインダ化、即ち、バインダを揮散(除去)させてブラウン体とした。これを焼結炉に入れ、昇温速度が5℃/hで、1300℃まで昇温した後、この温度を2時間保持することにより焼結して、FeNiCo合金(コバール)の焼結体からなる金属ホルダ10(10a,10b)を作製した。なお、金属ホルダ10(10a,10b)を作製する他の方法としては、FeNiCo合金(コバール)の板材を圧延して圧延材とした後、この圧延材を機械加工もしくはプレス加工により所定の形状に作製する方法を用いるようにしてもよい。
【0028】
3.光学部品複合体(光学フィルタ装置)
ついで、上述のように構成される金属ホルダ10(10a,10b)に、光学部品を接合した光学部品複合体A(図2(a)に示すもの)、光学部品複合体B(図2(b)に示すもの)および光学部品複合体C(図2(c)に示すもの)について説明する。
【0029】
(1)光学部品複合体A
光学部品複合体Aは、図2(a)に示すように、金属ホルダ10の取付部14の突出部11の接合面11aにYVO4からなる光学結晶21が半田31により接合され、接合面12aにLiNbO3からなる光学結晶22が半田31により接合され、接合面13aに銀を含有するガラスからなる光学結晶(例えば、偏光子)23が半田31により接合されて形成されている。半田31はAuSn合金、AuAgCu合金、SnAg合金あるいはPbSn合金のいずれかを用いる。なお、PbSn合金は半田応力を緩和するために好適である。
【0030】
(2)光学部品複合体B
また、光学部品複合体Bは、図2(b)に示すように、金属ホルダ10aの取付部14の突出部11の段部11bにYVO4からなる光学結晶21が半田31により接合され、段部12bにLiNbO3からなる光学結晶22が半田31により接合され、段部13bに銀を含有するガラスからなる光学結晶23が半田31により接合されて形成されている。半田31はAuSn合金、AuAgCu合金、SnAg合金あるいはPbSn合金のいずれかを用いる。なお、PbSn合金は半田応力を緩和するために好適である。
【0031】
そして、これらの光学部品複合体A,Bの特徴的な点は、図4に示すように、各光学結晶21,22,23の下端部の端縁からt1μmの部位までは金属ホルダ10(10a)の各接合面11a,12a,13aあるいは段部11b,12b,13bに接合しない非接合部(非固定部)xを有することにある。ここで、各光学結晶21,22,23は、平板状で平面形状が四角形状、長方形状、円形状等の所定形状になるように切断して形成されている。そして、3枚の光学結晶21,22,23はそれぞれ平行に配列されるように各接合面11a,12a,13aあるいは段部11b,12b,13bに接合されている。
【0032】
これにより、光学部品複合体A,Bは、光学結晶21,22,23にレーザ光が順次入射すると、通過したレーザ光の光学特性を変化させる光学フィルタ装置となる。例えば、光学結晶21,22は入射光の位相をずらして偏光状態を変化(偏光方向を回転)させる波長板として機能する。このため、レーザ光が光学結晶21を通過することによって、通過後のレーザ光の偏光状態が変化し、この通過光が光学結晶22を通過することによって、通過後のレーザ光の偏光状態が変化する。このような波長板としては、例えば、1/2波長板、1/4波長板等が知られている。
【0033】
(3)光学部品複合体C
光学部品複合体Cは、串歯状金属ホルダではなく、複数の単歯状金属ホルダを用いる点で上述した光学部品複合体A,Bとは異なる。この場合、図2(c)に示すように、金属ホルダ10bの突出部(取付部)16の段部16aにYVO4からなる光学結晶24が低融点ガラス33により接合されている。なお、LiNbO3からなる光学結晶25あるいは銀を含有するガラスからなる光学結晶26を接合するようにしてもよい。これにより、この光学部品複合体Cにそれぞれ異なる光学結晶24,25,26を取り付け、3枚の光学結晶24,25,26がそれぞれ平行になるように配列するようにすると、上述した光学部品複合体A,Bと同様な光学フィルタ装置となる。
【0034】
4.光学部品複合体の製造方法
(1)実施例1
ついで、上述のような非接合部(非固定部)xを有する実施例1の光学部品複合体A,Bの製造工程について説明する。まず、光学結晶21(22,23)を所定の部分(図5(a)において、21a(22a,23a)が形成される部分)が成膜されるようなマスクあるいは治具に取り付けた。これを図示しないスパッタ蒸着装置にセットした後、光学結晶21(22,23)の一端部の端縁からT1μmまでの部位に、膜厚が0.01μmになるまでチタン(Ti)を蒸着してTi層を成膜した。
【0035】
この後、膜厚が0.2μmになるまでニッケル(Ni)を蒸着してNi層を成膜した。ついで、膜厚が0.5μmになるまで金(Au)を蒸着してAu層を成膜し、最後に、マスクあるいは治具を除去して、光学結晶21(22,23)の一端部の端縁からT1μmの部位に接合性が良好で、接合部での接合強度が大きい複数の金属からなる3層構造のメタライズ層21a(22a,23a)を形成した。なお、メタライズ層21a(22a,23a)は、光学結晶21(22,23)への接着強度、光学結晶21(22,23)の光学特性への影響等を考慮して、各膜の膜厚、材質、成膜法を適宜選択するようにすればよい。
【0036】
一方、金属ホルダ10(10a)を図示しないメッキ槽に浸漬して、電解メッキ法により、まず、膜厚が5.0μmになるようにニッケル(Ni)メッキを施した後、膜厚が1.0μmになるように金(Au)メッキを施して、金属ホルダ10(10a)の各接合面11a,12a,13a(あるいは段部11b,12b,13b)がAu−Sn合金からなる半田31により接合されやすくした。なお、このメッキ処理による膜厚、メッキ金属の材質はこれに限られることはなく、金属ホルダ10(10a)の各接合面11a,12a,13a(11b,12b,13b)への接合強度等を考慮して適宜選択するようにすればよい。
【0037】
ついで、図3に示すように、セラミック製治具30に金属ホルダ10(10a)と光学結晶21,22,23とを載置するとともに、これらの間に幅が(T1−t1)μmで薄板状のAuSn合金からなる半田31を介在させた。なお、このとき、光学結晶21,22,23の端縁からt1μmの部位まではAuSn合金からなる半田31が存在しないように、光学結晶21,22,23の端縁からt1μmだけずらして半田31を配置した。
【0038】
この後、この治具30を40%の水素(H2)を含む窒素(N2)ガスの雰囲気のリフロー炉中で、移動速度が100mm/分のベルト上に配置し、最高温度が300℃で10分間加熱されるようなリフロー条件(昇温プロファイル)で加熱処理して、AuSn合金からなる半田31を溶解した。これにより、金属ホルダ10(10a)の各接合面11a,12a,13a(11b,12b,13b)に光学結晶21,22,23の端部が接合され、かつ光学結晶21,22,23の端縁に非接合部(非固定部)xを有する光学部品複合体A(B)を作製した。
【0039】
なお、半田31により金属ホルダ10(10a)の各接合面11a,12a,13aに光学結晶21,22,23を溶融接合するに際して、溶融した半田31が、接合部から光学結晶21,22,23の端縁に向けて(非接合部xの部位まで)垂れて広がらないような半田31の使用量にするのが望ましい。
しかしながら、非接合部xの光学結晶21,22,23の表面あるいは金属ホルダ10(10a)の各接合面11a,12a,13aの表面が溶融して垂れた半田31により薄く覆われたしても、このように表面を覆った半田31は、光学結晶21,22,23と金属ホルダの各接合面11a,12a,13aとを接合するような作用を生じない。
【0040】
このため、この部分で光学結晶21,22,23が金属ホルダの各接合面11a,12a,13aに固定されることはない。また、接合面11a,12a,13aに段部11b,12b,13bを設けた金属ホルダ10aにおいては、図2(b)に示すように、各接合面11a,12a,13aと各段部11b,12b,13bとの間に空間部yが生じて半田の逃げ部を形成することが可能となる。これにより、逃げ部に洩れた半田zと各光学結晶21,22,23が接合することを防止できるようになる。
【0041】
ここで、非接合部(非固定部)xの部位(光学結晶21,22,23の半田31の溶融接合により固定された部位の最縁部)が光学結晶21,22,23の端縁から10μm(t1=10μm)になるように接合した光学部品複合体A(B)を複合体A1(B1)とした。同様に、20μm(t1=20μm)になるように接合したものを複合体A2(B2)とし、30μm(t1=30μm)になるように接合したものを複合体A3(B3)とし、50μm(t1=50μm)になるように接合したものを複合体A4(B4)とした。また、比較のために、光学結晶21,22,23の端縁まで(t1=0μm)接合した光学部品複合体A(B,C)を作製し、これを複合体A5(B5)とした。
【0042】
(2)実施例2
ついで、非接合部(非固定部)xを有する実施例2の光学部品複合体A(B)の製造工程について説明する。本実施例2の光学部品複合体A(B)は、光学結晶21,22,23の端縁からt1μmの部位までは非接合部(非固定部)xを有するが、この非接合部xに対向する光学結晶21,22,23の表面にはメタラズ層21a,22a,23aがないことに特徴がある。ついで、このような非接合部(非固定部)xを有する光学部品複合体A(B)の製造工程について説明する。
【0043】
まず、光学結晶21,22,23を所定の部分(図5(b)において、21a,22a,23aが形成される部分)が成膜されるようなマスクあるいは治具に取り付け、これを図示しないスパッタ蒸着装置にセットした後、光学結晶21,22,23の端縁からt1μmの部位からT2μmまでの部位に、膜厚が0.01μmになるまでチタン(Ti)を蒸着してTi層を成膜した。この後、膜厚が0.2μmになるまでニッケル(Ni)を蒸着してNi層を成膜した。
ついで、膜厚が0.5μmになるまで金(Au)を蒸着してAu層を成膜し、最後に、マスクあるいは治具を除去した。これにより、光学結晶21,22,23の下端部の端縁からt1μmの部位からT2μmまでの部位に接合性が良好で、接合部での接合強度が大きい複数の金属からなる3層構造のメタライズ層21a,22a,23aを形成した。なお、メタライズ層21a,22a,23aは、光学結晶21,22,23への接着強度、光学結晶21,22,23の光学特性への影響等を考慮して、各膜の膜厚、材質、成膜法を適宜選択するようにすればよい。
【0044】
一方、金属ホルダ10(10a)を図示しないメッキ槽に浸漬して、電解メッキ法により、まず、膜厚が5.0μmになるようにニッケル(Ni)メッキを施した後、膜厚が1.0μmになるように金(Au)メッキを施して、金属ホルダ10(10a)の各接合面11a,12a,13a(11b,12b,13b)がAuSn系半田31により接合されやすくした。なお、このメッキによる膜厚、メッキ金属の材質はこれに限ることはなく、金属ホルダ10(10a)への接合強度等を考慮して適宜選択するようにすればよい。
【0045】
ついで、図3に示すように、セラミック製治具30に金属ホルダ10(10a)と光学結晶21,22,23とを載置するとともに、これらの間に幅がT2μmで薄板状のAuSn合金からなる半田31を介在させた。このとき、光学結晶21,22,23の端縁からt1μmまでの部分はAuSn合金からなる半田31が存在しないように、光学結晶21,22,23の端縁からt1μmだけずらして半田31を配置した。
【0046】
この後、この治具30を40%の水素(H2)を含む窒素(N2)ガスの雰囲気のリフロー炉中で、移動速度が100mm/分のベルト上に配置し、最高温度が300℃で10分間加熱されるようなリフロー条件(昇温プロファイル)で加熱処理して、AuSn合金からなる半田31を溶解した。これにより、光学結晶21,22,23の端部が金属ホルダ10(10a)の各接合面11a,12a,13a(11b,12b,13b)に接合され、かつ光学結晶21,22,23の端縁に非接合部(非固定部)xを有する光学部品複合体A(B)を作製した。
【0047】
ここで、メタライズ層21a,22a,23aの非形成部および非接合部(非固定部)xの部位(光学結晶21,22,23の半田31の溶融接合により固定された部位の最縁部)が10μm(t1=10μm)になるように接合した光学部品複合体A(B)を複合体A6(B6)とした。同様に、20μm(t1=20μm)になるように接合したものを複合体A7(B7)とし、30μm(t1=30μm)になるように接合したものを複合体A8(B8)とし、50μm(t1=50μm)になるように接合したものを複合体A9(B9)とした。また、比較のために、光学結晶21,22,23の端縁までメタライズ層21a,22a,23aを形成し(t1=0μm)、かつ光学結晶21,22,23の端縁まで(t1=0μm)接合した光学部品複合体A(B)を作製し、これを複合体A10(B10)とした。
【0048】
(3)実施例3
ついで、非接合部(非固定部)xを有する実施例3の光学部品複合体A(B)の製造工程について説明する。本実施例3の光学部品複合体A(B)の特徴的な点は、光学結晶21,22,23にメタライズ層を、金属ホルダ10(10a)にメッキ層をそれぞれ形成することなく、光学結晶21,22,23が金属ホルダ10(10a)の各接合面11a,12a,13a(11b,12b,13b)に低融点ガラス32により接合されていることと、光学結晶21,22,23の端縁からt1μmの部位までは10(10a)の各接合面11a,12a,13a(11b,12b,13b)に接合しない非接合部(非固定部)xを有することにある。但し、金属ホルダ10(10a)の腐食が懸念される場合は金(Au)を最表面とするメッキを施すようにすればよい。
【0049】
ついで、このような非接合部(非固定部)xを有する光学部品複合体A(B)の製造工程について説明する。まず、図3に示すように、セラミック製治具30に金属ホルダ10(10a)と光学結晶21,22,23とを載置するとともに、これらの間に幅がT2μmで薄板状のPbO系低融点ガラス32を介在させた。このとき、光学結晶21,22,23の端縁からt1μmの部位まではPbO系低融点ガラス32が存在しないように、光学結晶21,22,23の端縁からt1μmだけずらしてPbO系低融点ガラス32を配置した。
【0050】
この後、この治具を100%の窒素(N2)ガス雰囲気のリフロー炉中で、移動速度が100mm/分のベルト上に配置し、最高温度が480℃で10分間加熱されるようなリフロー条件(昇温プロファイル)で加熱処理して、PbO系低融点ガラス32を溶解した。これにより、光学結晶21,22,23が金属ホルダ10(10a)の各接合面11a,12a,13a(11b,12b,13b)に接合され、かつ光学結晶21,22,23の端縁に非接合部(非固定部)Xを有する光学部品複合体A(B)を作製した。
【0051】
なお、PbO系低融点ガラス32で光学結晶21,22,23と金属ホルダ10(10a,10b)の各接合面11a,12a,13aとを接合するに際して、溶融したPbO系低融点ガラス32が、接合部から光学結晶21,22,23の端縁に向けて(非接合部zの部位まで)垂れて広がらないような低融点ガラス32の使用量にするのが望ましい。しかしながら、非接合部xの光学結晶21,22,23の表面あるいは10(10a)の各接合面11a,12a,13aの表面が溶融して垂れた低融点ガラス32により薄く覆われたとしても、このように表面を覆った低融点ガラス32は接合作用を生じないため、この部分で光学結晶21,22,23が金属ホルダ10(10a)の各接合面11a,12a,13aに固定されることはない。
【0052】
そして、非接合部xの部位(低融点ガラス32の溶融接合により固定された部位の最縁部)を光学結晶21,22,23の端縁から10μm(t1=10μm)になるように接合した光学部品複合体A(B)を複合体A11(B11)とした。同様に、20μm(t1=20μm)になるように接合したものを複合体A12(B12)とし、30μm(t1=30μm)になるように接合した光学部品複合体30を複合体A13(B13)とし、50μm(t1=50μm)になるように接合したものを複合体A14(B14)とした。また、比較のために、光学結晶21,22,23の端縁(t1=0μm)まで接合した光学部品複合体A(B)を作製し、これを複合体A15(B15)とした。
【0053】
(4)実施例4
ついで、光学部品複合体Cの製造工程について説明する。この場合は、串歯状金属ホルダではなく、複数の単歯状金属ホルダを用いる点で上述した各実施例と異なる。そして、光学結晶24(25,26)が金属ホルダ10bの段部16aの表面(接合面)に低融点ガラス33により接合されている。なお、接合方法については上述した光学部品複合体A,Bの場合と同様である。
【0054】
このような光学部品複合体Cの製造工程においては、図3(b)に示すように、セラミック製治具30aに金属ホルダ10bと光学結晶24(25,26)とを載置するとともに、これらの間に段部16aの幅を有する薄板状のPbO系低融点ガラス33を介在させた。この後、この治具を100%の窒素(N2)ガス雰囲気のリフロー炉中で、移動速度が100mm/分のベルト上に配置し、最高温度が480℃で10分間加熱されるようなリフロー条件(昇温プロファイル)で加熱処理して、PbO系低融点ガラス33を溶解した。これにより、光学結晶24(25,26)が金属ホルダ10bの段部16aに接合された光学部品複合体Cが作製されることとなる。
【0055】
4.熱冷試験
ついで、上述のように作製した各光学部品複合体A(A1〜A12),B(B1〜B12)を100個づつ用いて、これらを−40℃に冷却してこの状態を30分間維持し、さらに+85℃まで加熱してこの状態を30分間維持するというサイクルを繰り返す熱冷試験を行った。そして、各複合体A(A1〜A12),B(B1〜B12)に割れが発生した割合(割れの発生率(%))を測定すると下記の表1に示すような結果となった。
【0056】
【表1】
【0057】
上記表1の結果から明らかなように、光学部品複合体A,Bを実施例1〜3のいずれの方法により作製しても、光学結晶21,22,23と金属ホルダ10(10a)との非接合部x(y,z)が光学結晶21,22,23の端縁から0μm(t1=0μm)、即ち非接合部xがない複合体A5(B5),A10(B10),A15(B15)においては、光学結晶21,22,23の割れの発生率が92%、95%、98%と高率であることが分かる。これは、光学結晶21,22,23と金属ホルダ10(10a)が接合されたときに、光学結晶21,22,23に熱応力に起因する歪みが生じ、この歪みが加熱、冷却を繰り返す毎に拡大して、やがては光学結晶21,22,23に割れが生じたためであると考えられる。なお、光学結晶22は光学結晶23よりも厚みの薄い光学結晶を用いているため、光学結晶22の方が光学結晶23よりもより割れが生じやすかった。
【0058】
一方、複合体A1〜A4(B1〜B4)、複合体A6〜A9(B6〜B9)、複合体A11〜A14(B11〜B14)のように、光学結晶21,22,23が金属ホルダ10(10a)に接合されない非接合部xが、光学結晶21,22,23の端縁からt1μmだけ離れていると、光学結晶21,22,23の割れの発生率が減少することが分かる。これは、非接合部xが光学結晶21,22,23の端縁からt1μmだけ離れていることにより、光学結晶21,22,23が金属ホルダ10(10a)に接合されたときに、光学結晶21,22,23に生じる熱応力に起因する歪みの発生を効果的に防止できるようになったためと考えられる。
【0059】
しかしながら、非接合部xを設けるようにしても、複合体A1(B1),A6(B6),A11(B11)のように、非接合部xが光学結晶21,22,23の端縁から10μm(t1=10μm)と小さいと、光学結晶21,22,23の割れの発生率が50%、62%、71%と大きくなることが分かる。これは、特に、端縁が切断縁となる光学結晶21,22,23にあっては、切断時に切断縁に微少なクラックや歪みが生じているため、非接合部xが光学結晶21,22,23の端縁から短すぎると、金属ホルダ10(10a)に接合したときに、これらの微少なクラックや歪みに熱応力が作用して成長し、これが加熱、冷却を繰り返す毎に拡大して、割れの発生率が増大したと考えられる。
【0060】
一方、複合体A2〜A4(B2〜B4)、複合体A7〜A8(B7〜B8)、複合体A12〜A14(B12〜B14)のように、非接合部xが光学結晶21,22,23の端縁から20μm(t1=20μm)以上になると、割れの発生率が5%,7%,3%あるいは0%に減少することが分かる。これは、光学結晶21,22,23の端縁から20μm以上にわたって非接合部が存在すると、金属ホルダ10(10a)に光学結晶21,22,23が接合したときに、切断時に切断縁に生じた微少なクラックや歪みに熱応力が作用しにくくなっためと考えられる。このことから、非接合部の距離(光学結晶21,22,23が半田31あるいは低融点ガラス32の溶融接合により固定された部位の最縁部までの距離)は光学結晶21,22,23の端縁から20μm以上にするのが望ましいということができる。
【0061】
【発明の効果】
以上に詳述したように、本発明においては、光学結晶21,22,23(24(25,26))が半田31あるいは低融点ガラス32(33)で金属ホルダ10(10a,10b)の突出部11,12,13(16)に接合されて固定されており、かつ光学結晶21,22,23(24(25,26))端部の端縁に非接合部xあるいは空隙部11c,12c,13c(16b)を有して取付部14(16)に接合されている。このため、光学結晶21,22,23(24(25,26))が金属ホルダ10(10a,10b)に接合された際の熱応力に起因する光学結晶21,22,23(24(25,26))の歪みによる影響を軽減することが可能となる。また、これによって、光学結晶21,22,23(24(25,26))の端部に割れやクラックが発生するのを防止できるようになる。
【0062】
なお、上述した各実施例においては、3個の突出部11,12,13が串歯状に形成された取付部14を備えた金属ホルダ10(10a)を用いる例、あるいは1個の突出部16が単歯状に形成された本体部17を備えた金属ホルダ10bについて説明したが、突出部の個数は3個あるいは1個に限らず、2個あるいは4個もしくは5個以上設けるようにしてもよい。この場合、光学部品複合体の用途に応じて、組み合わされる光学結晶の個数に対応して設けるようにする必要がある。そして、2個の突出部が配設された場合であっても串歯状ということとする。
【0063】
また、上述した各実施例においては、平面形状が四角形状で板状の光学結晶を用いて、この光学結晶の端部を金属ホルダの突出部の接合面に接合するに際して、光学結晶の端部の端縁から所定の距離だけ非接合部を設ける例について説明したが、本発明はこれに限らず各種の変形が可能である。例えば、図5(c)に示すように、光学結晶21,22,23の端縁からt1μmの部位からT2μmまでの部位で両端部からt2μmまでの部位を除いてメタライズ層21a,22a,23aを形成するようにして、光学結晶の一端部の端縁から所定の距離で両端部の部分に非接合部を設けるようにしてもよい。
【0064】
また、平面形状が円形状の光学フィルタを用いる場合には、円周部の一部を金属ホルダに接合するとともに、周端縁から所定の距離だけ非接合部を設けるようにすればよい。要するに、光学フィルタの少なくとも端部を金属ホルダに接合するとともに、端縁から所定の距離だけ非接合部を設けるようにすればよい。さらに、光学フィルタの平面形状としては四角形状、円形状に限らず、各種の平面形状のものを用いることができる。また、平板状で球面あるいは凹面を有するものを用いることができる。さらに、平板状に限らず、柱状、三角錐状、円錐状、球状などの各種形状のものを用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の金属ホルダを模式的に示す斜視図である。
【図2】 図1に示す金属ホルダに光学部品が接合された光学部品複合体を模式的に示す正面図である。
【図3】 接合用の治具内に金属ホルダと光学部品を装着した状態を模式的に示す上面図である。
【図4】 金属ホルダと光学部品の接合状態を模式的に示す断面図である。
【図5】 光学部品の表面にメタライズ層を形成した状態を模式的に示す斜視図である。
【符号の説明】
10,10a…金属ホルダ、11,12,13…突出部、11a,12a,13a…接合面、11b,12b,13b…段部、11c,12c,13c…空隙、14…取付部、15…本体部、15a…把持部、16…突出部(取付部)、16a…段部、16b…空隙、17…本体部、21,22,23…光学部品、24(25,26)…光学部品、31…半田、21a,22a,23a…メタライズ層、31…半田、32,33…低融点ガラス、A,B,C…光学部品複合体(光学フィルタ装置)
Claims (18)
- 光が入射する複数の光学部品を半田あるいは低融点ガラスの溶融接合により固定する金属ホルダであって、
前記複数の光学部品を接合、固定する取付部を備えるとともに、
前記取付部に前記光学部品の光の入射面あるいは出射面の一端部を一面のみで接合、固定するための串歯状に形成された複数の突出部が該取付部の根本側より突出して配設されていて該突出部の一表面が接合面となされていることを特徴とする金属ホルダ。 - 光が入射する光学部品を半田あるいは低融点ガラスの溶融接合により固定する金属ホルダであって、
前記光学部品を接合、固定する取付部を備えるとともに、
前記取付部に前記光学部品の光の入射面あるいは出射面の一端部を一面のみで接合、固定するための突出部が該取付部の根本側より突出して配設されているとともに、該突出部の一表面に前記光学部品を接合するための段部が配設されていて該段部の一表面が接合面となされていることを特徴とする金属ホルダ。 - 光が入射する複数の光学部品を半田あるいは低融点ガラスの溶融接合により固定する金属ホルダであって、
前記複数の光学部品を接合、固定する取付部を備えるとともに、
前記取付部に前記光学部品の光の入射面あるいは出射面の一端部を一面のみで接合、固定するための串歯状に形成された複数の突出部が該取付部の根本側より突出して配設されているとともに、該突出部の一表面に前記光学部品を接合するための段部が配設されていて該段部の一表面が接合面となされていることを特徴とする金属ホルダ。 - 前記金属ホルダは熱膨張係数が前記光学部品と近似するFeとNiを主成分とする合金、FeとNiとCoを主成分とする合金、あるいはステンレス鋼からなることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の金属ホルダ。
- 光が入射する複数の光学部品が半田あるいは低融点ガラスの溶融接合により金属ホルダに固定された光学部品複合体であって、
前記金属ホルダは串歯状に形成された複数の突出部が根本側より突出して配設されていて該突出部の一表面が接合面となされた取付部を備え、
前記突出部の接合面の各々に前記光学部品の光の入射面あるいは出射面の一端部の一面のみが半田あるいは低融点ガラスの溶融接合により固定されていることを特徴とする光学部品複合体。 - 光が入射する光学部品が半田あるいは低融点ガラスの溶融接合により金属ホルダに固定された光学部品複合体であって、
前記金属ホルダは本体部から突出する突出部が根本側より突出して配設されているとともに、該突出部の一表面に前記光学部品を接合するための段部が配設されていて該段部の一表面が接合面となされた取付部を備え、
前記段部の接合面に前記光学部品の光の入射面あるいは出射面の一端部の一面のみが前記半田あるいは低融点ガラスの溶融接合により固定されていることを特徴とする光学部品複合体。 - 光が入射する複数の光学部品が半田あるいは低融点ガラスの溶融接合により金属ホルダに固定された光学部品複合体であって、
前記金属ホルダは串歯状に形成された複数の突出部が根本側より突出して配設されていて該突出部の一表面が接合面となされた取付部を備え、
前記突出部の接合面の各々に前記光学部品の光の入射面あるいは出射面の一端部の一面のみが前記半田あるいは低融点ガラスの溶融接合により固定されているとともに、該一端部の端縁は前記突出部の接合面との間に空隙を有していることを特徴とする光学部品複合体。 - 光が入射する複数の光学部品が半田あるいは低融点ガラスの溶融接合により金属ホルダに固定された光学部品複合体であって、
前記金属ホルダは串歯状に形成された複数の突出部が根本側より突出して配設されているとともに、該突出部の一表面に前記光学部品を接合するための段部が配設されていて該段部の一表面が接合面となされた取付部を備え、
前記段部の接合面の各々に前記光学部品の光の入射面あるいは出射面の一端部の端縁の一面のみが前記半田あるいは低融点ガラスの溶融接合により固定されていることを特徴とする光学部品複合体。 - 前記光学部品の前記半田あるいは低融点ガラスの溶融接合により固定された部位の最縁部は前記光学部品の端縁から少なくとも20μm以上離れた位置であることを特徴とする請求項5から請求項8のいずれかに記載の光学部品複合体。
- 前記光学部品はアルミナ、LiNbO3またはYVO4からなることを特徴とする請求項5から請求項9のいずれかに記載の光学部品複合体。
- 前記光学部品の少なくとも前記半田あるいは低融点ガラスの溶融により接合される部位の表面は該光学部品と接合性が良好で接合強度が大きい複数の金属からなるメタライズ層を備えたことを特徴とする請求項5から請求項10のいずれかに記載の光学部品複合体。
- 前記金属ホルダは熱膨張係数が前記光学部品と近似するFeNiを主成分とする合金、FeNiCoを主成分とする合金、あるいはステンレス鋼からなることを特徴とする請求項5から請求項11のいずれかに記載の光学部品複合体。
- 前記金属ホルダの少なくとも前記半田あるいは低融点ガラスに接合される部位の表面は耐食性が良好で接合強度が大きい複数の金属からなるメッキ層を備えたことを特徴とする請求項5から請求項11のいずれかに記載の光学部品複合体。
- 前記半田はAuSn合金、AuAgCu合金、SnAg合金あるいはPbSn合金であることを特徴とする請求項5から請求項13のいずれかに記載の光学部品複合体。
- 光が入射する光学部品を半田あるいは低融点ガラスの溶融接合により金属ホルダに固定させた光学部品複合体の製造方法であって、
前記光学部品の光の入射面あるいは出射面の一端部の一面のみとの接合面となる段部を有する突出部が根本側より突出して配設された取付部を備えた金属ホルダを治具内に配置する配置工程と、
前記光学部品の光の入射面あるいは出射面の少なくとも一方の一端部の一面と前記突出部の表面に形成された段部の接合面との間に前記半田あるいは低融点ガラスを狭持させる狭持工程と、
前記半田あるいは低融点ガラスを溶融させる溶融工程とを備えたことを特徴とする光学部品複合体の製造方法。 - 光が入射する複数の光学部品を半田あるいは低融点ガラスの溶融接合により金属ホルダに固定させた光学部品複合体の製造方法であって、
前記複数の光学部品の前記光の入射面あるいは出射面の一端部の一面のみとの接合面となる複数の突出部が根本側より突出して串歯状に配設された取付部を備えた金属ホルダを治具内に配置する配置工程と、
前記複数の光学部品の光の入射面あるいは出射面の少なくとも一方の一端部の端縁は前記接合面に接合されないように前記半田あるいは低融点ガラスを該端縁からずらして前記光学部品の一面と前記突出部の接合面との間に狭持させる狭持工程と、
前記半田あるいは低融点ガラスを溶融させる溶融工程とを備えたことを特徴とする光学部品複合体の製造方法。 - 前記光学部品の少なくとも前記半田あるいは低融点ガラスの溶融により接合される部位の表面に、予め該光学部品と接合性が良好で接合強度が大きい複数の金属からなるメタライズ層を形成するメタライズ工程を備えるようにしたことを特徴とする請求項16に記載の光学部品複合体の製造方法。
- 前記金属ホルダの少なくとも前記半田あるいは低融点ガラスの溶融により接合される部位の表面に、予め耐食性が良好で接合強度が大きい複数の金属からなるメッキ層を形成するメッキ工程を備えるようにしたことを特徴とする請求項16または請求項17に記載の光学部品複合体の製造方法。
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