JP4053284B2 - プレーナー型太陽電池セルの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、人工衛星などに用いられるプレーナー型太陽電池セルの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、人工衛星では大型化や消費電力の増大が問題となっている。そのため、人工衛星には、薄型軽量であって低価格であるシリコンを基板材料としたプレーナー型太陽電池セルが用いられ、プレーナー型太陽電池セルの高出力化が進められている。
【0003】
また、特に宇宙環境特有の放射線を受けることによるプレーナー型太陽電池セルの劣化をどのようにして抑えるかという対策も進められている。この放射線によるプレーナー型太陽電池セルの劣化の原因は、主に放射線が照射されることで誘起される欠陥によりキャリアライフタイムが縮まり、その結果、出力電流の低下が起こることにある。このプレーナー型太陽電池セルの劣化を抑制するには、キャリアの電極へ到達する確率をあげる必要があり、そのために基板を薄くする必要がある。
【0004】
この問題に取り組み、開発されたプレーナー型太陽電池セルがある。このプレーナー型太陽電池セルは、基板にP型シリコン基板を用いたプレーナー型太陽電池セルであり、受光面にテクスチャー構造が形成されている。このテクスチャー構造とは光の反射を低減させるものであり、異方性エッチングにより複数の逆ピラミッド状の凹凸が受光面に形成される。
【0005】
次に、このプレーナー型太陽電池セルの製造工程を、図5を用いて以下に詳説する。なお、図5(a)、(b)、(c)、(d)、(e)および(f)は順に、プレーナー型太陽電池セルの製造工程における、基板にN+ 拡散層及びP+ 拡散層を形成する工程図である。また、この工程で行われる酸化膜の生成にはCVD(Chemical Vapor Deposition)法を用いている。
【0006】
受光面911の裏面913にP+ 拡散を行い、P+ 拡散層94を生成する(図5(a))。P+ 拡散層94を生成した後に裏面913に酸化膜96を生成し(図5(b))、続けて受光面911に酸化膜96を生成する(図5(c))。受光面911及びその裏面913に酸化膜96を生成した後にフォトリソグラフィーを行いフォトレジスト97を塗布するとともに、受光面911に塗布したフォトレジスト97に開口部971を形成する(図5(d))。形成した開口部971から露出した酸化膜96をエッチングして除去し逆ピラミッド912状の凹凸を露出させて、その後にフォトレジスト97を除去する(図5(e))。フォトレジスト97を除去した後に、露出させた逆ピラミッド912状の凹凸にN+ 拡散を行ってN+ 拡散層92を生成する。N+ 拡散層92を生成した後に酸化膜96を除去して(図5(f))、N+ 拡散層92及びP+ 拡散層94を生成した基板91が製造される。
【0007】
そして、前記P+ 拡散層94裏面の任意部分に酸化膜96を生成し、これらP+ 拡散層94及び酸化膜96を被覆するように裏面913一面にP側電極95を形成する。P側電極を形成した後に、リフトオフ技術により前記N+ 拡散層92表面に櫛形のN側電極を形成する。N側電極とP側電極を形成した後にダイシングを行い、プレーナー型太陽電池セルが製造される。
【0008】
上述したように製造されたプレーナー型太陽電池セルを用いることで、高出力化および放射線によるプレーナー型太陽電池セルの劣化の抑制を行うことができる。
【0009】
さらに、上述したプレーナー型太陽電池セルの製造工程では、酸化膜96の生成に高温を要する酸化膜生成法、例えば熱酸化法を用いないで、低温下で酸化膜96を生成することが可能なCVD法を用いている。そのため、高温を要する酸化膜生成法が原因となってプレーナー型太陽電池セルのキャリアライフタイムを縮めることはない。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、CVD法を用いて上述したような製造工程で酸化膜96を生成すると、図6に示すように基板91が反るという新たな問題が発生する。この基板91の反り量は、図7に示すように基板91の厚みが薄くなるほど増す。なお、図6は、酸化膜生成時におけるプレーナー型太陽電池セルの側面図であり、図7は、基板91の厚さと、基板91の反り量との関係を示したグラフである。
【0011】
この図7に示すように、基板91の厚さが略75μm以下から急激に基板91の反り量が増加している。これには、基板91であるシリコンと、CVD法により生成された酸化膜96との熱膨張係数の差(熱膨張係数 Si=2.6〜3.5*10-6/K-1、SiO2 =8〜10*10-6/K-1)が関係している。また、基板を薄くし厚さを60μmにして上述した製造工程を行うと、基板91の反りがCVDヘッドの高さを越えてしまい、基板91がCVDヘッドと接触する。そのため、基板91に生成させる酸化膜96の膜厚が不均一になるだけでなく、プレーナー型太陽電池セルの製造自体も中止せざるを得ない。
【0012】
そこで、上記課題を解決するために本発明は、プレーナー型太陽電池セルのキャリアライフタイムを縮めることなく、かつ、基板を反らせることなく薄型のプレーナー型太陽電池セルを製造する方法を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため本発明に係るプレーナー型太陽電池 セルの製造方法は、基板の表面及び裏面に酸化膜を生成する工程を含み、前記表面がテクスチャー構造の受光面とされたプレーナー型太陽電池セルの製造方法であって、前記基板の熱膨張係数より前記酸化膜の熱膨張係数が高く、前記酸化膜を生成する工程は、低温下で酸化膜を生成することができる酸化膜生成法により、酸化膜を前記受光面に生成し、その後、酸化膜を前記裏面に生成することを特徴とする。
【0014】
この発明によれば、前記基板の熱膨張係数より前記酸化膜の熱膨張係数が高く、前記酸化膜を生成する工程は、低温下で酸化膜を生成することができる酸化膜生成法により、酸化膜を前記受光面に生成し、その後、酸化膜を前記裏面に生成するので、受光面及びその裏面に酸化膜を生成することで起こる基板の反りを防止することが可能となる。
【0015】
上記酸化膜を生成する工程には、CVD法が用いられてもよい。
【0016】
この場合、酸化膜を生成する工程に低温下で酸化膜を生成することが可能なCVD法が用いられているので、高温を要する酸化膜生成法を用いる場合とは異なり、プレーナー型太陽電池セルのキャリアライフタイムが縮まるおそれがない。
【0017】
上記基板には厚さが75μm以下であるシリコンが用いられ、上記テクスチャー構造の開口面が、一辺長が略40μmである正方形に形成され、上記酸化膜を生成する時の生成温度が略430℃であってもよい。
【0018】
この場合、酸化膜を生成する時の生成温度が略430℃であるので、高温を要する酸化膜生成法を用いる場合とは異なり、プレーナー型太陽電池セルのキャリアライフタイムが縮まるおそれがないだけでなく、基板には厚さが75μm以下であるシリコンが用いられ、上記テクスチャー構造の開口面が、一辺長が略40μmである正方形に形成されているので、薄型のプレーナー型太陽電池セルを製造することが可能となる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図1を参照して説明する。なお、図1は、受光面に複数の逆ピラミッド状の凹凸を形成したプレーナー型太陽電池セルの斜視図である。
【0020】
図1に示されたプレーナー型太陽電池セル1は、基板11にP型シリコン基板を用いたプレーナ型太陽電池セルであり、受光面111にテクスチャー構造が形成されている。なお、符号12はN+ 拡散層であり、このN+ 拡散層12表面には、櫛形のN側電極13が形成されている。また、符号14はP+ 拡散層であり、このP+ 拡散層14裏面の任意部分に酸化膜16が生成され、これらP+ 拡散層14及び酸化膜16を被覆するように基板11の裏面113一面にP側電極15が形成されている。
【0021】
前記テクスチャー構造とは光の反射を低減させるものであり、異方性エッチングにより複数の逆ピラミッド112状の凹凸が受光面111に形成されている。この逆ピラミッド112状の凹凸は以下のようにして形成される。
【0022】
P形Siウエハ(基板径105mmφ、基板厚300μm)を100℃のNaOH溶液(50%濃度)で30分エッチングして、厚さを60μmまで薄型化させた基板11を形成する。この形成した基板11にフォトリソグラフィーを行って、マスクパターンを形成し、その後、85℃のKOH溶液(10%濃度)でエッチングすることで、逆ピラミッド112状の凹凸が形成される。なお、この凹凸の開口面112aは、一辺長が略40μmである正方形に形成されている。
【0023】
また、本実施の形態では、受光面111が複数の逆ピラミッド112状の凹凸に形成されているが、これに限定されるものではなく、テクスチャー構造であれば図2に示すように複数のピラミッド114状の凹凸に形成されているものでもよい。なお、図2は、受光面に複数のピラミッド114状の凹凸を形成したプレーナー型太陽電池セルの斜視図である。
【0024】
次に、このプレーナー型太陽電池セル1の製造工程を、図3を用いて以下に詳説する。なお、図3(a)、(b)、(c)、(d)、(e)および(f)は順に、プレーナー型太陽電池セル1の製造工程における、基板11にN+ 拡散層12及びP+ 拡散層14を生成する工程を示した、図1記載の円Aで囲む部分の拡大図である。また、この工程で行われる酸化膜の生成にはCVD法を用い、生成温度を430℃に設定している。
【0025】
受光面111の裏面113に1000℃のB(boron)を用いて30分P+ 拡散を行い、P+ 拡散層14を生成する(図3(a))。P+ 拡散層14を生成した後に、N+ 拡散層をセルエッジから35μm内側の領域に限定するために受光面111に5000Åの酸化膜16を生成し(図3(b))、続けて裏面113に5000Åの酸化膜16を生成する(図3(c))。受光面111及びその裏面113に酸化膜16を生成した後に、フォトリソグラフィーを行いフォトレジスト17を塗布するとともに、受光面111に塗布したフォトレジスト17に開口部171を形成する(図3(d))。形成した開口部171から露出した酸化膜16をエッチングして除去し逆ピラミッド112状の凹凸を露出させ、その後にフォトレジスト17を除去する(図3(e))。フォトレジスト17を除去した後に、露出させた逆ピラミッド112状の凹凸に800℃のP(phosphorus)を用いて20分N+ 拡散を行い、N+ 拡散層12を生成する。N+ 拡散層12を生成した後に、酸化膜16を除去して(図3(f))、N+ 拡散層12及びP+ 拡散層14を生成した基板11が製造される。
【0026】
そして、リフトオフ技術により前記N+ 拡散層12表面に、Ti(Titanium)、Pd(Palladium)およびAg(Argentum)を順に積層蒸着して櫛形のN側電極13を形成する。N側電極13を形成した後に、前記P+ 拡散層14裏面の任意部分に酸化膜16を生成し、これらP+ 拡散層14及び酸化膜16を被覆するように裏面113一面に、Al(Aluminium)、Ti、PdおよびAgを順に積層蒸着してP側電極15を形成する。N側電極13とP側電極15を形成した後にダイシングを行い、40mm*70mmに形成したプレーナー型太陽電池セル1が製造される。
【0027】
また、本実施の形態では、酸化膜の生成にCVD法を用いているが、これに限定されるものではなく、低温下で酸化膜を生成することができる酸化膜生成法であればよい。
【0028】
上述したように製造されたプレーナー型太陽電池セル1の効率は、初期効率η=16.8%、電子線照射(1E+15e/cm2 )後効率η=13.5%を達成した。すなわち、従来のプレーナー型太陽電池セルの効率が、初期効率η=17.6%、電子線照射後効率η=12.5%であるため、本実施の形態にかかるプレーナー型太陽電池セル1によれば、高出力と耐放射線特性の両方を達成することができる。
【0029】
このように、高温を要する酸化膜生成法が原因となってプレーナー型太陽電池セル1のキャリアライフタイムを縮めることをCVD法を用いることで防止するだけでなく、本発明によれば、酸化膜16を受光面111に生成した後、裏面113に生成するので、図4に示すように、基板11の少なくとも受光面111及びその裏面113に酸化膜16を生成することで起こる基板11の反りを防止することができる。なお、図4は、酸化膜生成時におけるプレーナー型太陽電池セル1の側面図である。
【0030】
また、本実施の形態では、受光面111が複数の逆ピラミッド112状の凹凸に形成されているので、光の反射を低減させ、かつ、酸化膜16を受光面に生成した際に基板11を反らせる力を抑制することができる。
【0031】
さらに、基板11には厚さが75μm以下であるシリコンが用いられ、上記開口面112aが、一辺長が略40μmである正方形に形成されているので、薄型のプレーナー型太陽電池セル1を製造することができる。
【0032】
【発明の効果】
以上、説明したように、本発明によれば、プレーナー型太陽電池セルのキャリアライフタイムを縮めることなく、かつ、基板を反らせることなく薄型のプレーナー型太陽電池セルを製造することができる。
【0033】
すなわち、高温を要する酸化膜生成法ではプレーナー型太陽電池セルのキャリアライフタイムを縮めてしまうといった問題があったが、この問題をCVD法を用いることで解消できるだけでなく、酸化膜を、受光面に生成した後裏面に生成するので、基板の受光面及びその裏面に同時に酸化膜を生成することで起きていた基板の反りを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態にかかる、受光面に複数の逆ピラミッドの凹凸を形成したプレーナー型太陽電池セルの斜視図である。
【図2】本実施の形態にかかる、受光面に複数のピラミッドの凹凸を形成したプレーナー型太陽電池セルの斜視図である。
【図3】(a)、(b)、(c)、(d)、(e)および(f)は順に、本実施の形態にかかるプレーナー型太陽電池セルの製造工程における、基板にN+ 拡散層及びP+ 拡散層を形成する工程を示した、図1記載の円Aで囲む部分の拡大図である。
【図4】本実施の形態にかかる、酸化膜生成時におけるプレーナー型太陽電池セルの側面図である。
【図5】(a)、(b)、(c)、(d)、(e)および(f)は順に、他の従来のプレーナー型太陽電池セルの製造工程における、基板にN+ 拡散層及びP+ 拡散層を形成する工程図である。
【図6】他の従来の、酸化膜生成時におけるプレーナー型太陽電池セルの側面図である。
【図7】従来のプレーナー型太陽電池セルの基板厚さと、基板の反り量との関係を示したグラフである。
【符号の説明】
プレーナー型太陽電池セル 1
基板 11
受光面 111
逆ピラミッド 112
開口面 112a
裏面 113
ピラミッド 114
酸化膜 16
Claims (3)
- 基板の表面及び裏面に酸化膜を生成する工程を含み、前記表面がテクスチャー構造の受光面とされたプレーナー型太陽電池セルの製造方法であって、
前記基板の熱膨張係数より前記酸化膜の熱膨張係数が高く、
前記酸化膜を生成する工程は、低温下で酸化膜を生成することができる酸化膜生成法により、酸化膜を前記受光面に生成し、その後、酸化膜を前記裏面に生成することを特徴とするプレーナー型太陽電池セルの製造方法。 - 前記酸化膜を生成する工程にCVD法が用いられることを特徴とする請求項1記載のプレーナー型太陽電池セルの製造方法。
- 前記基板には厚さが75μm以下であるシリコンが用いられ、前記テクスチャー構造の開口面が、一辺長が略40μmである正方形に形成され、前記酸化膜を生成する時の生成温度が略430℃であることを特徴とする請求項1または2記載のプレーナー型太陽電池セルの製造方法。
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