JP4052938B2 - 中間ストッパ機構を有するスライドドア - Google Patents
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Description
【０００１】
【技術分野】
本発明は、車両のスライドドアの窓ガラスが開いているときに該スライドドアの開方向への移動を制限する中間ストッパ機構に関する。
【０００２】
【従来技術及びその問題点】
車両のスライドドアの窓ガラスが開いているとき、該スライドドアを全開にすると、窓開口から出ていた物がスライドドアの窓枠と車両ボディのピラーとで挟まれてしまうおそれがある。スライドドアの中間ストッパ機構は、このような状態が生じないように、窓ガラスが開いているときにはスライドドアの開方向移動を制限する（全開になるのを防ぐ）機構として用いられている。
【０００３】
このような中間ストッパ機構として従来、スライドドアに、該窓ガラスが一定以上の開位置に達したとき駆動ワイヤを牽引する窓ガラス連動ワイヤ牽引機構を設け、駆動ワイヤが牽引されたとき中間ストッパ機構を作動させるようにした装置が知られている。
【０００４】
しかし従来機構は、窓ガラスが中間開放位置に達したときに揺動レバーを回動させて駆動ワイヤを引いた後は、ばね力によって該揺動レバーを駆動ワイヤ牽引位置に保持する構造であった。このため、駆動ワイヤを牽引位置に保持する力が弱く、例えば振動などにより、揺動レバーが駆動ワイヤ牽引位置から非牽引位置に回転してしまう可能性があった。スライドドアの全閉状態で窓ガラスを開けた状態で揺動レバーが非牽引位置に回動してしまうと、中間ストッパ機構が働かなくなって危険である。
【０００５】
【特許文献】
特開２００１-２８８９６０号公報
特開２００１-１７３２９６号公報
【０００６】
【発明の目的】
本発明は従って、窓ガラスが中間開放位置を超えて開いているときには、確実に中間ストッパ機構を作動させることができる、構造が簡単なスライドドアの中間ストッパ機構を得ることを目的とする。
【０００７】
【発明の概要】
本発明は、窓ガラスを開閉可能に支持した車両のスライドドアに、該窓ガラスが一定以上の開位置に達したとき駆動ワイヤを牽引する窓ガラス連動ワイヤ牽引機構と、この窓ガラス連動ワイヤ牽引機構により上記駆動ワイヤが牽引されたとき該スライドドアの全開移動を防止する中間ストッパ機構とを設けたスライドドアにおいて、窓ガラス連動ワイヤ牽引機構は、窓ガラスと一体に移動するスライダ部材と、このスライダ部材の移動方向に沿って配設された第一リンクと第二リンクとを有し、スライドドア内に枢着された上記第一リンクには、該第一リンクの揺動に伴い上記駆動ワイヤが牽引されるように結合されており、第二リンクは、第一リンクに一端部が枢着されており、スライダ部材は、窓ガラスが全閉位置から中間開位置に達したとき上記第一リンクに係合して該第一リンクを回動させて駆動ワイヤを牽引し、さらに、同窓ガラスが上記中間開位置から全開位置に至るまで上記第二リンクに係合し該第二リンク及び第一リンクを拘束して駆動ワイヤの牽引状態を維持することを特徴としている。
【０００８】
この構成によれば、窓ガラスが中間開位置から全開位置に至るまで、スライダ部材が第二リンクに係合するので、確実に駆動ワイヤの牽引状態を維持することができ、不用意に中間ストッパ機構が解除されるおそれがない。
【０００９】
窓ガラスを開閉可能に支持する開閉機構の構成には自由度があるが、例えばワイヤ式ウィンドレギュレータを適用できる。すなわち、窓ガラスをスライドドア内に上下方向又は左右方向に向けて固定したガイドレールに移動可能に支持し、開閉ワイヤを介して昇降させる。第一リンクと第二リンクの下端部とは、このガイドレールに支持することができる。勿論、ガイドレールとは別体で該ガイドレールに一体に設けた上部ブラケットと下部ブラケットにそれぞれ支持してもよい。
【００１０】
また、中間ストッパ機構は、駆動ワイヤが牽引されたときに作動してスライドドアの全開移動を防止する機能を有するものであればよい。具体的には例えば、駆動ワイヤによって回動移動するフック部材と、中間ストライカに対する係合位置と非係合位置とに移動可能で常時係合位置方向に回動付勢されているポールとを備え、このフック部材が、駆動ワイヤによって引かれる前はポールをその回動付勢力に抗して非係合位置に保持する機構を用いることができる。
【００１１】
本発明は、窓ガラスの開閉方向が上下方向であると左右方向であるとを問わずに適用できる。本発明の中間ストッパ機構を有するスライドドアは、窓ガラスの開閉方向が上下方向の態様では、窓ガラスを昇降可能に支持した車両のスライドドアに、該窓ガラスが一定以上の開位置に達したとき駆動ワイヤを牽引する窓ガラス連動ワイヤ牽引機構と、この窓ガラス連動ワイヤ牽引機構により上記駆動ワイヤが牽引されたとき該スライドドアの全開移動を防止する中間ストッパ機構とを設けたスライドドアにおいて、スライドドア内に揺動自在に枢着された第一リンク；この第一リンクの自由端部に上端部が枢着された第二リンク；第一リンクに、該第一リンクの揺動に伴い牽引されるように結合された上記駆動ワイヤ；及び窓ガラスと一体に移動し、該窓ガラスが全閉位置から中間開位置に達したとき第一リンクに係合して該第一リンクを回動させて駆動ワイヤを牽引し、さらに、同窓ガラスが上記中間開位置から全開位置に至るまで第二リンクに係合し該第一リンク及び第二リンクを拘束して駆動ワイヤの牽引状態を維持するスライダ部材；によって窓ガラス連動ワイヤ牽引機構を構成したことを特徴としている。
【００１２】
【発明の実施の形態】
図６に示すように、車両１０の側面に開閉可能に設けられたスライドドア１１は、その上部に窓開口１２が形成されている。スライドドア１１内には、図１に示すように、この窓開口１２を開閉する窓ガラス１３を開閉させるワイヤ式ウィンドレギュレータ２０が設けられている。この実施形態は、窓ガラス１３が上下に移動するタイプであり、ワイヤ式ウィンドレギュレータ２０は、上下方向（縦方向）のガイドレール２１を有し、このガイドレール２１には、その長手方向に摺動自在にして窓ガラス１３を固定したスライダベース２２が案内されている。
【００１３】
ガイドレール２１の上端部には、軸２３ａでガイドプーリ２３が回動自在に支持されており、下端部にはワイヤガイド部材２４が固定されている。スライドドア１１内には、巻取ドラム２５ａとその駆動モータ２５ｂを有する正逆巻取駆動ユニット２５が固定されている。巻取ドラム２５ａには、開閉ワイヤ２６が巻回されており、巻取ドラム２５ａから出た一対の開閉ワイヤ２６の一方は、ガイドプーリ２３を経てスライダベース２２に結合され、他方はワイヤガイド部材２４を経てスライダベース２２に結合されている。従って、駆動モータ２５ｂにより巻取ドラム２５ａを正逆に回転駆動し、開閉ワイヤ２６を一方で巻取ドラム２５ａに巻き取り、他方で巻取ドラム２５ａから繰り出すと、スライダベース２２（窓ガラス１３）が昇降する。このスライダベース２２には、スライダ部材２８が固定されている。
【００１４】
図３に示すように、ガイドレール２１には、上部ブラケット２９と下部ブラケット３０が溶接固定されており、上部ブラケット２９には、駆動ワイヤ３１のアウタケーシング３１ａ端部が固定されている。上部ブラケット２９にはまた、スライダ部材２８と駆動ワイヤ３１の間に位置する軸３２ａで第一リンク３２の中間部が枢着されていて、第一リンク３２の一端部には、駆動ワイヤ３１の一端部が結合されている。この第一リンク３２は、軸３２ａ回りに設けたトーションばね３２ｂにより、図３の時計方向、すなわち、駆動ワイヤ３１を牽引しない方向に回動付勢されている。
【００１５】
第一リンク３２の他端部には、軸３３ａで第二リンク３３の上端部が枢着されている。この第二リンク３３は、略上下方向に延びていて、その下端部は、第三リンク３４の一端部に軸３４ａで枢着されている。第三リンク３４の他端部は、下部ブラケット３０に軸３４ｂで枢着されており、第一リンク３２の軸３２ａと３３ａの間、第二リンク３３、及び第三リンク３４（軸３４ａと３４ｂの間）は平行リンク機構を構成している。また、軸３２ａと３４ｂを結ぶ直線は、ガイドレール２１と平行である。従って、第一リンク３２が軸３２ａを中心に揺動すると、第二リンク３３はガイドレール２１との平行を保ちながら、該ガイドレール２１に対して接離移動する。
【００１６】
第二リンク３３の一側面には、スライダ部材２８との摺動面３３ｂが形成されている。スライダ部材２８と、第一リンク３２及び第二リンク３３との位置関係は次のように設定されている。図３に示す時計方向への回動端に位置する第一リンク３２は、昇降するスライダ部材２８との干渉位置にあり、スライダ部材２８が窓ガラス１３の全閉位置から中間開放位置に向けて下降すると、第一リンク３２の第二リンク３３側の端部に当接して該第一リンク３２を反時計方向に回動させる。駆動ワイヤ３１はこの第一リンク３２の反時計方向への回動により牽引される。そして、第二リンク３３は、窓ガラス１３が中間開位置から全開位置に至るまでは、その摺動面３３ｂをスライダ部材２８に係合させ、第二リンク３３の反時計方向への回動位置を保持する。すなわち、駆動ワイヤ３１の牽引状態を維持する（図２）。
【００１７】
駆動ワイヤ３１の他端部は、図４に示す中間ストッパ機構に導かれている。スライドドア１１内には、ベースプレート１５が固定されており、このベースプレート１５の下方延長部に、ローラ１５ａが回動自在に支持されている。このローラ１５ａは、車両１０のボディ１６側に固定したガイドレール１６ａに転動自在に係合し、スライドドア１１の開閉抵抗を減じている。
【００１８】
ベースプレート１５には、軸１７ａでフック部材１７が枢着され、軸１８ａでポール１８が枢着されている。フック部材１７には、その一方の腕１７ｂに、駆動ワイヤ３１の他端部が結合されており、また、図示しないばね手段により、駆動ワイヤ３１を引き込む方向（第一リンク３２を図３に示す時計方向への回動端に回動させる方向）に回動付勢されている。ポール１８は、軸１８ａを中心に、ボディ１６に固定した中間ストライカ１６ｂとの非係合位置（図４実線）と、係合位置（同鎖線）との間を回動可能であり、かつ図示しないばね手段により、係合位置方向に回動付勢されている。フック部材１７には、ポール１８のロック部１８ｂに係合して、この付勢力に抗してポール１８を非係合位置に保持するフック部１７ｃが設けられている。
【００１９】
図４は、スライドドア１１の閉状態を示しており、矢印Ａは、スライドドア１１の開方向を示している。ボディ１６には、中間ストライカ１６ｂとポール押し戻し部材１６ｃとが固定されており、このポール押し戻し部材１６ｃは、スライドドア１１が開位置から閉位置に移動されるとき、中間ストライカ１６ｂとの係合位置にあるポール１８に当接してポール１８を中間ストライカ１６ｂとの非係合位置に回動させる。ポール１８が中間ストライカ１６ｂとの係合位置から非係合位置に回動すると、ロック部１８ｂとフック部１７ｃとが係合してポール１８が非係合位置に保持される。
【００２０】
なお、ベースプレート１５には、ボディ１６に固定した全開ストライカ１６ｄに係合してスライドドア１１を全開位置に係止する全開ストッパ機構１９が設けられているが、この全開ストッパ機構１９及びスライドドア１１を全閉位置にロックするロック機構は本発明の要旨に関係がないので、説明を省略する。
【００２１】
上記構成の本中間ストッパ機構を有するスライドドアは次のように動作する。スライドドア１１が閉じ窓ガラス１３が全閉の状態において、正逆巻取駆動ユニット２５を介して窓ガラス１３を開いていくと、図３に示すように、中間開放位置でスライダ部材２８が第一リンク３２の一端部に当接し、第一リンク３２が軸３２ａを中心に反時計方向に回動する。すると、駆動ワイヤ３１が牽引され、フック部材１７が図４の反時計方向に回動して、フック部１７ｃとロック部１８ｂの係合が外れる。このフック部材１７の反時計方向への回動位置は、スライダ部材２８が第一リンク３２を最初に回動させたときは勿論、スライダ部材２８が窓ガラス１３の中間開放位置から全開位置に移動するまで確実に保持される。すなわち、スライダ部材２８がさらに下方に移動すると（窓ガラス１３がさらに開放されていくと）、スライダ部材２８は、第二リンク３３の摺動面３３ｂに当接して第二リンク３３及び第一リンク３２を拘束するので、第一リンク３２及びフック部材１７の回動位置が不用意に変化することがない。
【００２２】
ポール１８はばね手段により図４の時計方向に回動付勢されているが、スライドドア１１の全閉状態では、ポール押し戻し部材１６ｃがその回動を防いでいる。この状態において、スライドドア１１を開いていくと、やがてポール押し戻し部材１６ｃとポール１８との係合が外れ、ポール１８は中間ストライカ１６ｂとの係合位置に回動する。よってスライドドア１１をさらに開くと、ポール１８が中間ストライカ１６ｂに当接して中間ストッパ機構が働く。このように、本実施形態によれば、窓ガラス１３が予め定めた中間開放位置より大きく開いている状態でスライドドア１１を開けば、確実に中間ストッパ機構を動作させることができる。
【００２３】
なお、上述のように、フック部材１７は駆動ワイヤ３１を引き込む方向に回動付勢されており、第一リンク３２は、この駆動ワイヤ３１により図２の時計方向に回動付勢されることとなる。よって、第一リンク３２を同方向に回動付勢するトーションばね３２ｂは省略することが可能であるが、スライドレール２１側の機構単体として第一リンク３２を駆動ワイヤ非牽引方向に回動付勢しておくことが好ましい。
【００２４】
図５は、本発明の別の実施形態を示している。この実施形態では、第二リンク３３の下端部を第一リンク３２の揺動に伴って上下に移動させるため、下部ブラケット３０に上下方向穴３０ａを設け、この上下方向穴３０ａに、第二リンク３３の下端ローラ３３ｃを移動可能に支持している。
【００２５】
以上の実施形態では、押圧スライド部材２８を第二リンク３３の側部摺動面３３ｂに当接させたが、押圧面と摺動面に代えて、係合突起と係合溝等を用いることができるのは勿論である。また、以上の実施形態では窓ガラス１３を昇降させるウィンドレギュレータをワイヤ式としたが、スライダ部材２８が窓ガラス１３に連動して昇降する構成であれば、レギュレータの構成を問うことなく、本発明は実施できる。
【００２６】
また、以上の実施形態は、スライドドア１１の窓ガラス１３の移動方向が上下方向であったが、窓ガラスの移動方向が左右方向であるスライドドアにも本発明は同様に適用できる。図７はその実施形態であり、スライドドア１１の窓開口１２は、その左右方向の略半分が固定窓ガラス１３Ｆによって覆われ、残部に左右方向に移動可能な窓ガラス１３’が設けられている。そしてこのスライドドア１１内には、横方向にガイドレール２１’が固定され、このガイドレール２１’に沿って窓ガラス１３’が移動して窓開口１２が開閉される。この実施形態は、図１、図２の上下方向を左右方向に置き換えることで理解できる。
【００２７】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、窓ガラスが中間開放位置を超えて開いているときには、確実に中間ストッパ機構を作動させることができる、構造が簡単な中間ストッパ機構を有するスライドドアを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図１】ワイヤ式ウィンドレギュレータの一例を示す正面図である。
【図２】図１のワイヤ式ウィンドレギュレータを有するスライドドアに本発明を適用した実施形態を示す正面図である。
【図３】図２とは異なる状態を示す、図２の部分拡大正面図である。
【図４】スライドドアの中間ストッパ機構の一例を示す正面図である。
【図５】本発明の別の実施形態を示す第二リンクの下端部の支持構造を示す正面図である。
【図６】スライドドアを有する車両の側面図である。
【図７】スライドドアを有する車両であって、窓ガラスの開閉方向が左右方向である車両の側面図である。
【符号の説明】
１０ 車両
１１ スライドドア
１２ 窓開口
１３ 窓ガラス
１５ ベースプレート
１５ａ ローラ
１６ ボディ
１６ａ ガイドレール
１６ｂ 中間ストライカ
１６ｃ ポール押し戻し部材
１６ｄ 全開ストライカ
１７ フック部材
１７ａ 軸
１７ｂ 腕
１７ｃ フック部
１８ ポール
１８ａ 軸
１８ｂ ロック部
１９ 全開ストッパ機構
２０ ワイヤ式ウィンドレギュレータ
２１ ガイドレール
２２ スライダベース
２３ ガイドプーリ
２４ ワイヤガイド部材
２５ 正逆巻取駆動ユニット
２５ａ 巻取ドラム
２５ｂ 駆動モータ
２６ 開閉ワイヤ
２８ スライダ部材
２９ 上部ブラケット
３０ 下部ブラケット
３１ 駆動ワイヤ
３２ 第一リンク
３２ａ 軸
３２ｂ トーションばね
３３ 第二リンク
３３ａ 軸
３３ｂ 摺動面
３４ 第三リンク
【技術分野】
本発明は、車両のスライドドアの窓ガラスが開いているときに該スライドドアの開方向への移動を制限する中間ストッパ機構に関する。
【０００２】
【従来技術及びその問題点】
車両のスライドドアの窓ガラスが開いているとき、該スライドドアを全開にすると、窓開口から出ていた物がスライドドアの窓枠と車両ボディのピラーとで挟まれてしまうおそれがある。スライドドアの中間ストッパ機構は、このような状態が生じないように、窓ガラスが開いているときにはスライドドアの開方向移動を制限する（全開になるのを防ぐ）機構として用いられている。
【０００３】
このような中間ストッパ機構として従来、スライドドアに、該窓ガラスが一定以上の開位置に達したとき駆動ワイヤを牽引する窓ガラス連動ワイヤ牽引機構を設け、駆動ワイヤが牽引されたとき中間ストッパ機構を作動させるようにした装置が知られている。
【０００４】
しかし従来機構は、窓ガラスが中間開放位置に達したときに揺動レバーを回動させて駆動ワイヤを引いた後は、ばね力によって該揺動レバーを駆動ワイヤ牽引位置に保持する構造であった。このため、駆動ワイヤを牽引位置に保持する力が弱く、例えば振動などにより、揺動レバーが駆動ワイヤ牽引位置から非牽引位置に回転してしまう可能性があった。スライドドアの全閉状態で窓ガラスを開けた状態で揺動レバーが非牽引位置に回動してしまうと、中間ストッパ機構が働かなくなって危険である。
【０００５】
【特許文献】
特開２００１-２８８９６０号公報
特開２００１-１７３２９６号公報
【０００６】
【発明の目的】
本発明は従って、窓ガラスが中間開放位置を超えて開いているときには、確実に中間ストッパ機構を作動させることができる、構造が簡単なスライドドアの中間ストッパ機構を得ることを目的とする。
【０００７】
【発明の概要】
本発明は、窓ガラスを開閉可能に支持した車両のスライドドアに、該窓ガラスが一定以上の開位置に達したとき駆動ワイヤを牽引する窓ガラス連動ワイヤ牽引機構と、この窓ガラス連動ワイヤ牽引機構により上記駆動ワイヤが牽引されたとき該スライドドアの全開移動を防止する中間ストッパ機構とを設けたスライドドアにおいて、窓ガラス連動ワイヤ牽引機構は、窓ガラスと一体に移動するスライダ部材と、このスライダ部材の移動方向に沿って配設された第一リンクと第二リンクとを有し、スライドドア内に枢着された上記第一リンクには、該第一リンクの揺動に伴い上記駆動ワイヤが牽引されるように結合されており、第二リンクは、第一リンクに一端部が枢着されており、スライダ部材は、窓ガラスが全閉位置から中間開位置に達したとき上記第一リンクに係合して該第一リンクを回動させて駆動ワイヤを牽引し、さらに、同窓ガラスが上記中間開位置から全開位置に至るまで上記第二リンクに係合し該第二リンク及び第一リンクを拘束して駆動ワイヤの牽引状態を維持することを特徴としている。
【０００８】
この構成によれば、窓ガラスが中間開位置から全開位置に至るまで、スライダ部材が第二リンクに係合するので、確実に駆動ワイヤの牽引状態を維持することができ、不用意に中間ストッパ機構が解除されるおそれがない。
【０００９】
窓ガラスを開閉可能に支持する開閉機構の構成には自由度があるが、例えばワイヤ式ウィンドレギュレータを適用できる。すなわち、窓ガラスをスライドドア内に上下方向又は左右方向に向けて固定したガイドレールに移動可能に支持し、開閉ワイヤを介して昇降させる。第一リンクと第二リンクの下端部とは、このガイドレールに支持することができる。勿論、ガイドレールとは別体で該ガイドレールに一体に設けた上部ブラケットと下部ブラケットにそれぞれ支持してもよい。
【００１０】
また、中間ストッパ機構は、駆動ワイヤが牽引されたときに作動してスライドドアの全開移動を防止する機能を有するものであればよい。具体的には例えば、駆動ワイヤによって回動移動するフック部材と、中間ストライカに対する係合位置と非係合位置とに移動可能で常時係合位置方向に回動付勢されているポールとを備え、このフック部材が、駆動ワイヤによって引かれる前はポールをその回動付勢力に抗して非係合位置に保持する機構を用いることができる。
【００１１】
本発明は、窓ガラスの開閉方向が上下方向であると左右方向であるとを問わずに適用できる。本発明の中間ストッパ機構を有するスライドドアは、窓ガラスの開閉方向が上下方向の態様では、窓ガラスを昇降可能に支持した車両のスライドドアに、該窓ガラスが一定以上の開位置に達したとき駆動ワイヤを牽引する窓ガラス連動ワイヤ牽引機構と、この窓ガラス連動ワイヤ牽引機構により上記駆動ワイヤが牽引されたとき該スライドドアの全開移動を防止する中間ストッパ機構とを設けたスライドドアにおいて、スライドドア内に揺動自在に枢着された第一リンク；この第一リンクの自由端部に上端部が枢着された第二リンク；第一リンクに、該第一リンクの揺動に伴い牽引されるように結合された上記駆動ワイヤ；及び窓ガラスと一体に移動し、該窓ガラスが全閉位置から中間開位置に達したとき第一リンクに係合して該第一リンクを回動させて駆動ワイヤを牽引し、さらに、同窓ガラスが上記中間開位置から全開位置に至るまで第二リンクに係合し該第一リンク及び第二リンクを拘束して駆動ワイヤの牽引状態を維持するスライダ部材；によって窓ガラス連動ワイヤ牽引機構を構成したことを特徴としている。
【００１２】
【発明の実施の形態】
図６に示すように、車両１０の側面に開閉可能に設けられたスライドドア１１は、その上部に窓開口１２が形成されている。スライドドア１１内には、図１に示すように、この窓開口１２を開閉する窓ガラス１３を開閉させるワイヤ式ウィンドレギュレータ２０が設けられている。この実施形態は、窓ガラス１３が上下に移動するタイプであり、ワイヤ式ウィンドレギュレータ２０は、上下方向（縦方向）のガイドレール２１を有し、このガイドレール２１には、その長手方向に摺動自在にして窓ガラス１３を固定したスライダベース２２が案内されている。
【００１３】
ガイドレール２１の上端部には、軸２３ａでガイドプーリ２３が回動自在に支持されており、下端部にはワイヤガイド部材２４が固定されている。スライドドア１１内には、巻取ドラム２５ａとその駆動モータ２５ｂを有する正逆巻取駆動ユニット２５が固定されている。巻取ドラム２５ａには、開閉ワイヤ２６が巻回されており、巻取ドラム２５ａから出た一対の開閉ワイヤ２６の一方は、ガイドプーリ２３を経てスライダベース２２に結合され、他方はワイヤガイド部材２４を経てスライダベース２２に結合されている。従って、駆動モータ２５ｂにより巻取ドラム２５ａを正逆に回転駆動し、開閉ワイヤ２６を一方で巻取ドラム２５ａに巻き取り、他方で巻取ドラム２５ａから繰り出すと、スライダベース２２（窓ガラス１３）が昇降する。このスライダベース２２には、スライダ部材２８が固定されている。
【００１４】
図３に示すように、ガイドレール２１には、上部ブラケット２９と下部ブラケット３０が溶接固定されており、上部ブラケット２９には、駆動ワイヤ３１のアウタケーシング３１ａ端部が固定されている。上部ブラケット２９にはまた、スライダ部材２８と駆動ワイヤ３１の間に位置する軸３２ａで第一リンク３２の中間部が枢着されていて、第一リンク３２の一端部には、駆動ワイヤ３１の一端部が結合されている。この第一リンク３２は、軸３２ａ回りに設けたトーションばね３２ｂにより、図３の時計方向、すなわち、駆動ワイヤ３１を牽引しない方向に回動付勢されている。
【００１５】
第一リンク３２の他端部には、軸３３ａで第二リンク３３の上端部が枢着されている。この第二リンク３３は、略上下方向に延びていて、その下端部は、第三リンク３４の一端部に軸３４ａで枢着されている。第三リンク３４の他端部は、下部ブラケット３０に軸３４ｂで枢着されており、第一リンク３２の軸３２ａと３３ａの間、第二リンク３３、及び第三リンク３４（軸３４ａと３４ｂの間）は平行リンク機構を構成している。また、軸３２ａと３４ｂを結ぶ直線は、ガイドレール２１と平行である。従って、第一リンク３２が軸３２ａを中心に揺動すると、第二リンク３３はガイドレール２１との平行を保ちながら、該ガイドレール２１に対して接離移動する。
【００１６】
第二リンク３３の一側面には、スライダ部材２８との摺動面３３ｂが形成されている。スライダ部材２８と、第一リンク３２及び第二リンク３３との位置関係は次のように設定されている。図３に示す時計方向への回動端に位置する第一リンク３２は、昇降するスライダ部材２８との干渉位置にあり、スライダ部材２８が窓ガラス１３の全閉位置から中間開放位置に向けて下降すると、第一リンク３２の第二リンク３３側の端部に当接して該第一リンク３２を反時計方向に回動させる。駆動ワイヤ３１はこの第一リンク３２の反時計方向への回動により牽引される。そして、第二リンク３３は、窓ガラス１３が中間開位置から全開位置に至るまでは、その摺動面３３ｂをスライダ部材２８に係合させ、第二リンク３３の反時計方向への回動位置を保持する。すなわち、駆動ワイヤ３１の牽引状態を維持する（図２）。
【００１７】
駆動ワイヤ３１の他端部は、図４に示す中間ストッパ機構に導かれている。スライドドア１１内には、ベースプレート１５が固定されており、このベースプレート１５の下方延長部に、ローラ１５ａが回動自在に支持されている。このローラ１５ａは、車両１０のボディ１６側に固定したガイドレール１６ａに転動自在に係合し、スライドドア１１の開閉抵抗を減じている。
【００１８】
ベースプレート１５には、軸１７ａでフック部材１７が枢着され、軸１８ａでポール１８が枢着されている。フック部材１７には、その一方の腕１７ｂに、駆動ワイヤ３１の他端部が結合されており、また、図示しないばね手段により、駆動ワイヤ３１を引き込む方向（第一リンク３２を図３に示す時計方向への回動端に回動させる方向）に回動付勢されている。ポール１８は、軸１８ａを中心に、ボディ１６に固定した中間ストライカ１６ｂとの非係合位置（図４実線）と、係合位置（同鎖線）との間を回動可能であり、かつ図示しないばね手段により、係合位置方向に回動付勢されている。フック部材１７には、ポール１８のロック部１８ｂに係合して、この付勢力に抗してポール１８を非係合位置に保持するフック部１７ｃが設けられている。
【００１９】
図４は、スライドドア１１の閉状態を示しており、矢印Ａは、スライドドア１１の開方向を示している。ボディ１６には、中間ストライカ１６ｂとポール押し戻し部材１６ｃとが固定されており、このポール押し戻し部材１６ｃは、スライドドア１１が開位置から閉位置に移動されるとき、中間ストライカ１６ｂとの係合位置にあるポール１８に当接してポール１８を中間ストライカ１６ｂとの非係合位置に回動させる。ポール１８が中間ストライカ１６ｂとの係合位置から非係合位置に回動すると、ロック部１８ｂとフック部１７ｃとが係合してポール１８が非係合位置に保持される。
【００２０】
なお、ベースプレート１５には、ボディ１６に固定した全開ストライカ１６ｄに係合してスライドドア１１を全開位置に係止する全開ストッパ機構１９が設けられているが、この全開ストッパ機構１９及びスライドドア１１を全閉位置にロックするロック機構は本発明の要旨に関係がないので、説明を省略する。
【００２１】
上記構成の本中間ストッパ機構を有するスライドドアは次のように動作する。スライドドア１１が閉じ窓ガラス１３が全閉の状態において、正逆巻取駆動ユニット２５を介して窓ガラス１３を開いていくと、図３に示すように、中間開放位置でスライダ部材２８が第一リンク３２の一端部に当接し、第一リンク３２が軸３２ａを中心に反時計方向に回動する。すると、駆動ワイヤ３１が牽引され、フック部材１７が図４の反時計方向に回動して、フック部１７ｃとロック部１８ｂの係合が外れる。このフック部材１７の反時計方向への回動位置は、スライダ部材２８が第一リンク３２を最初に回動させたときは勿論、スライダ部材２８が窓ガラス１３の中間開放位置から全開位置に移動するまで確実に保持される。すなわち、スライダ部材２８がさらに下方に移動すると（窓ガラス１３がさらに開放されていくと）、スライダ部材２８は、第二リンク３３の摺動面３３ｂに当接して第二リンク３３及び第一リンク３２を拘束するので、第一リンク３２及びフック部材１７の回動位置が不用意に変化することがない。
【００２２】
ポール１８はばね手段により図４の時計方向に回動付勢されているが、スライドドア１１の全閉状態では、ポール押し戻し部材１６ｃがその回動を防いでいる。この状態において、スライドドア１１を開いていくと、やがてポール押し戻し部材１６ｃとポール１８との係合が外れ、ポール１８は中間ストライカ１６ｂとの係合位置に回動する。よってスライドドア１１をさらに開くと、ポール１８が中間ストライカ１６ｂに当接して中間ストッパ機構が働く。このように、本実施形態によれば、窓ガラス１３が予め定めた中間開放位置より大きく開いている状態でスライドドア１１を開けば、確実に中間ストッパ機構を動作させることができる。
【００２３】
なお、上述のように、フック部材１７は駆動ワイヤ３１を引き込む方向に回動付勢されており、第一リンク３２は、この駆動ワイヤ３１により図２の時計方向に回動付勢されることとなる。よって、第一リンク３２を同方向に回動付勢するトーションばね３２ｂは省略することが可能であるが、スライドレール２１側の機構単体として第一リンク３２を駆動ワイヤ非牽引方向に回動付勢しておくことが好ましい。
【００２４】
図５は、本発明の別の実施形態を示している。この実施形態では、第二リンク３３の下端部を第一リンク３２の揺動に伴って上下に移動させるため、下部ブラケット３０に上下方向穴３０ａを設け、この上下方向穴３０ａに、第二リンク３３の下端ローラ３３ｃを移動可能に支持している。
【００２５】
以上の実施形態では、押圧スライド部材２８を第二リンク３３の側部摺動面３３ｂに当接させたが、押圧面と摺動面に代えて、係合突起と係合溝等を用いることができるのは勿論である。また、以上の実施形態では窓ガラス１３を昇降させるウィンドレギュレータをワイヤ式としたが、スライダ部材２８が窓ガラス１３に連動して昇降する構成であれば、レギュレータの構成を問うことなく、本発明は実施できる。
【００２６】
また、以上の実施形態は、スライドドア１１の窓ガラス１３の移動方向が上下方向であったが、窓ガラスの移動方向が左右方向であるスライドドアにも本発明は同様に適用できる。図７はその実施形態であり、スライドドア１１の窓開口１２は、その左右方向の略半分が固定窓ガラス１３Ｆによって覆われ、残部に左右方向に移動可能な窓ガラス１３’が設けられている。そしてこのスライドドア１１内には、横方向にガイドレール２１’が固定され、このガイドレール２１’に沿って窓ガラス１３’が移動して窓開口１２が開閉される。この実施形態は、図１、図２の上下方向を左右方向に置き換えることで理解できる。
【００２７】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、窓ガラスが中間開放位置を超えて開いているときには、確実に中間ストッパ機構を作動させることができる、構造が簡単な中間ストッパ機構を有するスライドドアを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図１】ワイヤ式ウィンドレギュレータの一例を示す正面図である。
【図２】図１のワイヤ式ウィンドレギュレータを有するスライドドアに本発明を適用した実施形態を示す正面図である。
【図３】図２とは異なる状態を示す、図２の部分拡大正面図である。
【図４】スライドドアの中間ストッパ機構の一例を示す正面図である。
【図５】本発明の別の実施形態を示す第二リンクの下端部の支持構造を示す正面図である。
【図６】スライドドアを有する車両の側面図である。
【図７】スライドドアを有する車両であって、窓ガラスの開閉方向が左右方向である車両の側面図である。
【符号の説明】
１０ 車両
１１ スライドドア
１２ 窓開口
１３ 窓ガラス
１５ ベースプレート
１５ａ ローラ
１６ ボディ
１６ａ ガイドレール
１６ｂ 中間ストライカ
１６ｃ ポール押し戻し部材
１６ｄ 全開ストライカ
１７ フック部材
１７ａ 軸
１７ｂ 腕
１７ｃ フック部
１８ ポール
１８ａ 軸
１８ｂ ロック部
１９ 全開ストッパ機構
２０ ワイヤ式ウィンドレギュレータ
２１ ガイドレール
２２ スライダベース
２３ ガイドプーリ
２４ ワイヤガイド部材
２５ 正逆巻取駆動ユニット
２５ａ 巻取ドラム
２５ｂ 駆動モータ
２６ 開閉ワイヤ
２８ スライダ部材
２９ 上部ブラケット
３０ 下部ブラケット
３１ 駆動ワイヤ
３２ 第一リンク
３２ａ 軸
３２ｂ トーションばね
３３ 第二リンク
３３ａ 軸
３３ｂ 摺動面
３４ 第三リンク
Claims (6)
- 窓ガラスを開閉可能に支持した車両のスライドドアに、該窓ガラスが一定以上の開位置に達したとき駆動ワイヤを牽引する窓ガラス連動ワイヤ牽引機構と、この窓ガラス連動ワイヤ牽引機構により上記駆動ワイヤが牽引されたとき該スライドドアの全開移動を防止する中間ストッパ機構とを設けたスライドドアにおいて、
上記窓ガラス連動ワイヤ牽引機構は、窓ガラスと一体に移動するスライダ部材と、このスライダ部材の移動方向に沿って配設された第一リンクと第二リンクとを有し、
スライドドア内に枢着された上記第一リンクには、該第一リンクの揺動に伴い上記駆動ワイヤが牽引されるように結合されており、
上記第二リンクは、第一リンクに一端部が枢着されており、
上記スライダ部材は、窓ガラスが全閉位置から中間開位置に達したとき上記第一リンクに係合して該第一リンクを回動させて駆動ワイヤを牽引し、さらに、同窓ガラスが上記中間開位置から全開位置に至るまで上記第二リンクに係合し該第二リンク及び第一リンクを拘束して駆動ワイヤの牽引状態を維持することを特徴とする中間ストッパ機構を有するスライドドア。 - 請求項１記載の中間ストッパ機構を有するスライドドアにおいて、上記窓ガラスは、スライドドア内に上下方向又は左右方向に向けて固定したガイドレールに移動可能に支持されており、上記第二リンクの他端部と第一リンクとは、このガイドレールにそれぞれ支持されている中間ストッパ機構を有するスライドドア。
- 請求項２記載の中間ストッパ機構を有するスライドドアにおいて、上記第二リンクの他端部と第一リンクとは、ガイドレールとは別体で該ガイドレールに一体に固定した上部ブラケットと下部ブラケットに支持されている中間ストッパ機構を有するスライドドア。
- 請求項１乃至３のいずれか１項記載の中間ストッパ機構を有するスライドドアにおいて、上記中間ストッパ機構は、上記駆動ワイヤによって回動移動するフック部材と、上記中間ストライカに対する係合位置と非係合位置とに移動可能で常時係合位置方向に回動付勢されているポールとを備え、このフック部材は、駆動ワイヤによって引かれる前はポールをその回動付勢力に抗して上記非係合位置に保持する中間ストッパ機構を有するスライドドア。
- 窓ガラスを昇降可能に支持した車両のスライドドアに、該窓ガラスが一定以上の開位置に達したとき駆動ワイヤを牽引する窓ガラス連動ワイヤ牽引機構と、この窓ガラス連動ワイヤ牽引機構により上記駆動ワイヤが牽引されたとき該スライドドアの全開移動を防止する中間ストッパ機構とを設けたスライドドアにおいて、
上記窓ガラス連動ワイヤ牽引機構が、
スライドドア内に揺動自在に枢着された第一リンク；
この第一リンクの自由端部に上端部が枢着された第二リンク；
上記第一リンクに、該第一リンクの揺動に伴い牽引されるように結合された上記駆動ワイヤ；及び
上記窓ガラスと一体に移動し、該窓ガラスが全閉位置から中間開位置に達したとき上記第一リンクに係合して該第一リンクを回動させて駆動ワイヤを牽引し、さらに、同窓ガラスが上記中間開位置から全開位置に至るまで上記第二リンクに係合し該第一リンク及び第二リンクを拘束して駆動ワイヤの牽引状態を維持するスライダ部材；
を有することを特徴とする中間ストッパ機構を有するスライドドア。 - 請求項１乃至５のいずれか１項記載の中間ストッパ機構を有するスライドドアにおいて、上記第二リンクは、窓ガラス移動方向に沿って延びるガイドレールとの平行を保ちなが ら該ガイドレールに対して接離移動する中間ストッパ機構を有するスライドドア。
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