JP4052853B2 - ケーブル式ステアリング装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ステアリングハンドルとステアリングギヤボックスとをボーデンケーブル等の撓み易い操作ケーブルで接続したケーブル式ステアリング装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
かかるケーブル式ステアリング装置は、例えば特開2000−25623号公報、特開平10−59197号公報、特開平8−2431号公報により公知である。
【0003】
従来のケーブル式ステアリング装置は駆動プーリの直径と従動プーリの直径とが同じに設定されており、ステアリングハンドルに接続された駆動プーリのトルクは、ステアリングギヤボックスに接続された従動プーリに増加あるいは減少することなく伝達されるようになっていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、従動プーリを収納する従動プーリケーシングおよびステアリングギヤボックスは車室とエンジンとの間の狭い空間に配置されるため、その寸法をできるだけ小さくして他部材との干渉を回避することが必要となる。特に、ケーブル式ステアリング装置に、ドライバーのステアリング操作による操舵トルクをアシストする電動式のパワーステアリング装置を付加した場合には、それらの操舵系を小型化することが一層必要となる。
【0005】
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、ケーブル式ステアリング装置の従動側の寸法を小型化することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明によれば、ステアリングハンドルに連結されて回転する駆動プーリと車輪を転舵するステアリングギヤボックスに連結されて回転する従動プーリとを操作ケーブルで接続し、ステアリングハンドルに入力される操舵トルクを操作ケーブルを介してステアリングギヤボックスに伝達するケーブル式ステアリング装置において、従動プーリの直径を駆動プーリの直径よりも小さく設定し、その設定によってもステアリングハンドルの操舵角に対する車輪の転舵角の比率が、両プーリを同一径としたものと比べて変化しないように、両プーリの直径差に応じてステアリングギヤボックスのギヤ比を設定したことを特徴とするケーブル式ステアリング装置が提案される。
【0007】
上記構成によれば、従動プーリの直径を駆動プーリの直径よりも小さくしたので、従動プーリが配置されるケーブル式ステアリング装置の従動側の寸法を小型化して車両への搭載を容易にすることができる。また従動プーリおよび駆動プーリの直径差により、駆動プーリの回転数に対して従動プーリの回転数が大きくなるが、ステアリングギヤボックスのギヤ比を前記直径差に応じて設定して、ステアリングハンドルの操舵角に対する車輪の転舵角の比率が変化しないようにすることができる。
【0008】
また請求項2に記載された発明によれば、請求項1の構成に加えて、ステアリングハンドルに連結されて回転する駆動プーリと車輪を転舵するステアリングギヤボックスに連結されて回転する従動プーリとを操作ケーブルで接続し、ステアリングハンドルに入力される操舵トルクを操作ケーブルを介してステアリングギヤボックスに伝達するとともに、ステアリングハンドルに入力される操舵トルクに応じてアクチュエータの駆動力をステアリングギヤボックスに伝達するケーブル式ステアリング装置において、従動プーリの直径を駆動プーリの直径よりも小さく設定し、その設定によってもステアリングハンドルの操舵角に対する車輪の転舵角の比率が、両プーリを同一径としたものと比べて変化しないように、両プーリの直径差に応じてステアリングギヤボックスのギヤ比を設定したことを特徴とするケーブル式ステアリング装置が提案される。
【0009】
上記構成によれば、従動プーリの直径を駆動プーリの直径よりも小さくしたので、従動プーリが配置されるケーブル式ステアリング装置の従動側の寸法を小型化して車両への搭載を容易にすることができる。また従動プーリおよび駆動プーリの直径差により、駆動プーリの回転数に対して従動プーリの回転数が大きくなるが、ステアリングギヤボックスのギヤ比を前記直径差に応じて設定して、ステアリングハンドルの操舵角に対する車輪の転舵角の比率が変化しないようにすることができる。また前記ステアリングギヤボックスのギヤ比の、前記直径差に応じた設定により、必要なアシスト力を発生させるためにアクチュエータからステアリングギヤボックスに入力するトルクが小さくて済み、アクチュエータを小型化してケーブル式ステアリング装置の従動側の寸法を一層小型化できる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を、添付図面に示した本発明の実施例に基づいて説明する。
【0013】
図1〜図7は本発明の一実施例を示すもので、図1はケーブル式ステアリング装置の全体斜視図、図2は図1の2−2線拡大断面図、図3は図2の3−3線断面図、図4は操舵トルクセンサの斜視図、図5は操舵トルクセンサの差動トランスの回路図、図6は操舵トルクセンサの作用説明図、図7は図1の7−7線拡大断面図である。
【0014】
図1に示すように、自動車のステアリングハンドル11の前方に設けた駆動プーリケーシング12と、ステアリングギヤボックス13の上方に設けた従動プーリケーシング14とが、ボーデンケーブルよりなる2本の操作ケーブル15,16によって接続される。ステアリングギヤボックス13の両端部から車体左右方向に延びるタイロッド17L,17Rが、左右の車輪WL,WRを支持するナックル(図示せず)に接続される。駆動プーリケ−シング12の内部にはステアリングハンドル11に入力される操舵トルクを検出する操舵トルクセンサが内蔵されており、検出した操舵トルクが入力される制御装置18からの司令で従動プーリケーシング14と一体のギヤケーシング19に設けたアクチュエータ20が作動し、ドライバーのステアリング操作をアシストする。
【0015】
図2に示すように、駆動プーリケーシング12は、リヤハウジング21、センターハウジング22およびフロントハウジング23をボルト24…で結合してなり、フロントハウジング23の前面に図示せぬボルトでフロントカバー25が結合される。駆動プーリケーシング12は、リヤハウジング21に設けたブラケット21aが取付ステー26にピン27で固定され、フロントハウジング23に設けたブラケット23aが取付ステー26にボルト28で固定される。
【0016】
ステアリングハンドル11に接続される中空のステアリングシャフト29は、2個のボールベアリング30,31でリヤハウジング21に回転自在に支持される。ステアリングハンドル11と同軸に配置される中空のプーリシャフト32の外周に金属製のプーリボス33が固定されており、このプーリボス33の外周に形成したセレーション部33aを覆うように合成樹脂製の駆動プーリ本体34が一体にモールドされる。プーリボス33の両端部が2個のボールベアリング35,36でそれぞれフロントハウジング23およびフロントカバー25に回転自在に支持されるとともに、プーリシャフト32がボールベアリング37でセンターハウジング22に回転自在に支持される。プーリボス33および駆動プーリ本体34は本発明の駆動プーリ59を構成する。
【0017】
プーリシャフト32の後端部外周にステアリングシャフト29の前端部内周が相対回転自在に嵌合しており、ステアリングシャフト29の中空部とプーリシャフト32の中空部とに、トーションバー38の両端部が嵌合して各々ピン39,40で結合される。従って、ステアリングシャフト29に入力された操舵トルクは、ステアリングシャフト29からトーションバー38を介してプーリシャフト32に伝達されることになり、センターハウジング22の内部に設けられた操舵トルクセンサ41がトーションバー38の捩れ量に基づいて操舵トルクを検出する。
【0018】
図2および図4から明らかなように、操舵トルクセンサ41は、プーリシャフト32の外周に相対回転不能、かつ軸方向スライド可能に支持された円筒状のスライダ42と、ステアリングシャフト29に固定されてスライダ42に形成した傾斜溝42aに嵌合するガイドピン43と、合成樹脂製のスライダ42の外周に固定した磁性体リング44と、センターハウジング22の内周に固定されて磁性体リング44に対向する差動トランス45と、ガイドピン43および傾斜溝42a間のガタを防止すべくスライダ42を前方に付勢するコイルばね46とを備える。
【0019】
図5に示すように、操舵トルクセンサ41の差動トランス45は、交流電源47に接続された一次コイル48と、第1二次コイル49と、第2二次コイル50とを備えており、磁性体リング44は第1、第2二次コイル49,50間に配置された可動鉄心を構成する。
【0020】
図2から明らかなように、プーリシャフト32の前端部とプーリボス33とはセレーション結合部51において結合されるとともに、プーリシャフト32の前端部に向かって先細になったテーパー結合部52を介して結合される。プーリシャフト32の前端にナット53がねじ込まれており、ナット53からの荷重でプーリボス33をプーリシャフト32に沿って後方に付勢することにより、テーパー結合部52を充分な面圧で密着させてプーリシャフト32およびプーリボス33を強固に一体化することができる。これにより、セレーション結合部51に存在する微小なガタの影響を解消し、騒音の発生を抑制することができるだけでなく操舵フィーリングを向上させることができる。ナット53を締め付けるとき、駆動プーリ59が軸方向に移動可能であるため、駆動プーリケーシング12に無理な荷重が加わることが防止される。
【0021】
図2および図3から明らかなように、2本の操作ケーブル15,16は、断面略矩形のコイルばねをモールドした合成樹脂製のアウターチューブ15o,16oと、その内部にスライド自在に収納される金属縒り線よりなるインナーケーブル15i,16iとから構成される。2本のインナーケーブル15i,16iの端部に固定した短円柱状のピン54,54が駆動プーリ本体34の両端面に形成したピン孔34a,34aに嵌合し、ピン54,54から延びる2本のインナーケーブル15i,16iは駆動プーリ本体34の外周に形成した1本の螺旋溝34bに沿って相互に接近する方向に巻き付けられた後、プーリシャフト32の軸線に直交する方向に引き出される。
【0022】
合成樹脂製の駆動プーリ本体34のピン孔34a,34aの底部はプーリボス33のセレーション部33aと駆動プーリ本体34との境界部に達しており、ピン54,54を外した状態では、前記境界部を容易に目視することができる。従って、プーリボス33にセレーション部33aが形成されていない不適切な状態で駆動プーリ本体34がモールドされたような加工ミスを確実に発見することができる。
【0023】
図3から明らかなように、駆動プーリケーシング14のフロントハウジング23の内部に収納された張力調整機構92は、ピン93に中央部を支持された捩じりばね94と、捩じりばね94の両端に支持された2個のローラ95,95とを備えており、2個のローラ95,95は捩じりばね94の弾発力で操作ケーブル15,16の2本のインナーケーブル15i,16iにそれぞれ押し付けられる。
【0024】
フロントハウジング23には円筒状をなす2個の接続部23b,23bが形成されており、それらの内部にアウターチューブ結合部材56,56のボス部56a,56aが固定される。ボス部56a,56aから接続部23b,23bの外部に延びるパイプ部56b,56bがアウターチューブ15o,16oの外周に嵌合し、かしめ部56c,56cをかしめることでアウターチューブ15o,16oの端部がフロントハウジング23に固定される。アウターチューブ結合部材56,56のボス部56a,56aの内周には、インナーケーブル15i,16iとボス部56a,56aとが直接擦れるのを防止すべく、滑りの良い合成樹脂製のガイドブッシュ57,57が保持される。
【0025】
フロントハウジング23の接続部23b,23bの外周から操作ケーブル15,16のアウターチューブ15o,16oの所定位置まで(例えば、アウターチューブ結合部材56,56のパイプ部56b,56bから露出する部分まで)がゴム製カバー58,58で覆われる。弾性を有するゴム製カバー58,58はフロントハウジング23の接続部23b,23bの外周と、アウターチューブ15o,16oの外周とに密着してシールするため、アウターチューブ15o,16oをフロントハウジング23に結合するアウターチューブ結合部材56,56のかしめ部56c,56cや、アウターチューブ結合部材56,56のボス部56a,56aと接続部23b,23bとの隙間から水分が浸入するのを防止することができる。
【0026】
駆動プーリ59を収納するフロントハウジング23およびフロントカバー25の内部は、プーリボス33を支持する2個のボールベアリング35,36が防水タイプであるため駆動プーリ59が水濡れする虞もない、このように駆動プーリ59からアウターチューブ15o,16oの所定位置までが密閉された空間に収納されるので、駆動プーリケーシング12が車室に配置されていて乗員が零した飲料水が掛かったような場合でも、アウターチューブ15o,16oおよびインナーケーブル15i,16iのスライド部に水分が付着し、その水分が低温時に凍結して操作ケーブル15,16のスムーズな動きが阻害されたり、インナーケーブル15i,16iが錆びて操作ケーブル15,16の耐久性が低下したりするのを防止することができる。
【0027】
図7に示すように、従動プーリケーシング14は図示せぬボルトで結合されたアッパーハウジング61とロアハウジング62とから構成され、ギヤケーシング19はギヤケーシング本体63と、ギヤケーシング本体63の上面に図示せぬボルトで結合されたアッパーカバー64とから構成され、ロアハウジング62とアッパーカバー64とが複数本のボルト65…で結合される。
【0028】
アッパーハウジング61に設けたボールベアリング66と、ロアハウジング62に設けたボールベアリング67と、ギヤケーシング本体63に設けた2個のボールベアリング68,69とにプーリシャフト70が回転自在に支持される。上側の2個のボールベアリング66,67は、プーリシャフト70を直接支持しておらず、プーリシャフト70の外周に固定したプーリボス71を支持している。アッパーハウジング61に設けたボールベアリング66は環状のナット72で抜け止めされ、ギヤケーシング本体63に設けた下側のボールベアリング69は袋状のナット73で抜け止めされる。
【0029】
プーリシャフト70の上端部とプーリボス71とはセレーション結合部74において結合されるとともに、プーリシャフト70の上端部に向かって先細になったテーパー結合部75を介して結合される。プーリシャフト70の上端にナット76がねじ込まれており、ナット76からの荷重でプーリボス71をプーリシャフト70に沿って下方に付勢することにより、テーパー結合部75を充分な面圧で密着させてプーリシャフト70およびプーリボス71を強固に一体化することで、セレーション結合部74に存在する微小なガタの影響を解消して騒音の発生を抑制し、また操舵フィーリングを向上させることができる。ナット76を締め付けるとき、従動プーリ60が軸方向に移動可能であるため、従動プーリケーシング14やギヤケーシング19に無理な荷重が加わることが防止される。
【0030】
プーリボス71の外周のセレーション部71aに合成樹脂製の従動プーリ本体77が一体にモールドされており、2本の操作ケーブル15,16のインナーケーブル15i,16iの端部に固定した短円柱状のピン78,78が従動プーリ本体77の両端面に形成したピン孔77a,77aに嵌合し、ピン78,78から延びる2本のインナーケーブル15i,16iは従動プーリ本体77の外周に形成した1本の螺旋溝77bに沿って相互に接近する方向に巻き付けられた後、プーリシャフト70の軸線に直交する方向に引き出される。プーリボス71および従動プーリ本体77は本発明の従動プーリ60を構成する。
【0031】
合成樹脂製の従動プーリ本体77のピン孔77a,77aの底部はプーリボス71のセレーション部71aと従動プーリ本体77との境界部に達しており、ピン78,78を外した状態では、前記境界部を容易に目視することができる。従って、プーリボス71にセレーション部71aが形成されていない状態で従動プーリ本体77がモールドされたような加工ミスを確実に発見することができる。
【0032】
従動プーリケーシング14には円筒状をなす2個の接続部14a,14aが形成されており、それらの内部にアウターチューブ結合部材79,79のボス部79a,79aが固定される。ボス部79a,79aから接続部14a,14aの外部に延びるパイプ部79b,79bがアウターチューブ15o,16oの外周に嵌合し、かしめ部79c,79cをかしめることでアウターチューブ15o,16oの端部が従動プーリケーシング14に固定される。アウターチューブ結合部材79,79のボス部79a,79aの内周には、インナーケーブル15i,16iとボス部79a,79aとが直接擦れるのを防止すべく、滑りの良い合成樹脂製のガイドブッシュ80,80が保持される。
【0033】
従動プーリケーシング14のほぼ全体から、接続部14a,14aを経て操作ケーブル15,16のアウターチューブ15o,16oの所定位置まで(例えば、アウターチューブ結合部材79,79のパイプ部79b,79bから露出する部分まで)が単一のゴム製カバー81で覆われる。このゴム製カバー81によって、水分が最も浸入し易いアウターチューブ結合部材79,79のかしめ部79c,79cを確実にシールできるだけでなく、従動プーリケーシング14のアッパーハウジング61およびロアハウジング62の割り面や、プーリシャフト70の上端を支持するボールベアリング66からの水分の浸入をも阻止することができる。
【0034】
これにより、エンジンルームの下部に配置されていて前記駆動プーリケーシング12よりも水に濡れ易い従動プーリケーシング14の防水性を高めることができ、アウターチューブ15o,16oおよびインナーケーブル15i,16iのスライド部に付着した水分が低温時に凍結して操作ケーブル15,16のスムーズな動きが阻害されたり、インナーケーブル15i,16iが錆びて操作ケーブル15,16の耐久性が低下したりするのを防止することができる。
【0035】
シール部材91を介して従動プーリケーシング14との間をシールされたギヤケーシング19の上部において、プーリシャフト70に固定されたウオームホイール82と、電気モータよりなるアクチュエータ20(図1参照)の出力軸20aに固定したウオーム83とが噛み合っている。プーリシャフト70の下部に形成したピニオン84に、ステアリングギヤボックス13(図1参照)のラック85が噛み合っており、その噛み合い部においてラック85がピニオン84に向けて付勢される。
【0036】
即ち、ギヤケーシング本体63に形成した貫通孔63aにスライド部材86がOリング87を介してスライド可能に嵌合しており、貫通孔63aにねじ結合したばね座88とスライド部材86との間に配置したコイルばね89の弾発力で、スライド部材86に設けた低摩擦部材90がラック85の背面に当接する。これにより、プーリシャフト70の回転がピニオン84を介してラック85に伝達されて車輪WL,WRが転舵される際に、ラック85は大きな摺動抵抗を受けることなくガタや撓みの発生を防止されてスムーズに作動することができる。
【0037】
図2および図7に示すように、駆動プーリ59の直径D1よりも従動プーリ60の直径D2が小さく設定される。またピニオン84の直径D3は、従来のピニオンの直径に対して小さく設定される。
【0038】
次に、上記構成を備えた本発明の実施例の作用について説明する。
【0039】
操舵トルクセンサ41で検出した操舵トルクは制御装置18に入力され、制御装置18は操舵トルクに基づいてアクチュエータ20の作動を制御する。即ち、車両を旋回させるべくステアリングハンドル11を操作すると、図2に示すように、操舵トルクがステアリングシャフト29およびトーションバー38を介してプーリシャフト32に伝達され、駆動プーリ本体34に巻き付けられた操作ケーブル15,16の一方のインナーケーブル15i,16iが引かれ、他方のインナーケーブル15i,16iが弛められることにより、駆動プーリ59の回転が従動プーリ60に伝達される。その結果、図7に示すプーリシャフト70が回転し、ステアリングギヤボックス13内のピニオン84、ラック85およびタイロッド17L,17Rを介して車輪WL,WRに操舵トルクが伝達される。
【0040】
ステアリングハンドル11に操舵トルクが入力されていないとき、トーションバー38は捩れ変形せずにステアリングシャフト29およびプーリシャフト32は同位相に保持され、図6(B)に示すように、ステアリングシャフト29のガイドピン43は傾斜溝42aの中央にあってスライダ42は上下方向中央位置に保持される。このとき、図5に示すように、スライダ42に設けた磁性体リング44は第1二次コイル49および第2二次コイル50の中間位置にあり、両二次コイル49,50の出力電圧が等しくなって操舵トルクがゼロであることが検出される。
【0041】
またステアリングハンドル11が右方向に操作されてステアリングシャフト29に図6(A)の矢印a方向の操舵トルクが入力されると、トーションバー38が捩じれ変形してステアリングシャフト29とプーリシャフト32(即ち、プーリシャフト32に対して相対回転不能なスライダ42)との間に位相差が発生するため、ステアリングシャフト29のガイドピン43に傾斜溝42aを押されたスライダ42が上方にスライドする。その結果、上側の第1二次コイル49の出力電圧が増加するとともに下側の第2二次コイル50の出力電圧が減少し、その電圧差に基づいて右転舵方向の操舵トルクが検出される。同様に、ステアリングハンドル11が左方向に操作されてステアリングシャフト29に図6(C)の矢印b方向に操舵トルクが入力されると、トーションバー38が捩じれ変形してステアリングシャフト29とプーリシャフト32(即ち、スライダ42)との間に位相差が発生するため、ステアリングシャフト29のガイドピン43に傾斜溝42aを押されたスライダ42が下方にスライドする。その結果、上側の第1二次コイル49の出力電圧が減少するとともに下側の第2二次コイル50の出力電圧が増加し、その電圧差に基づいて左転舵方向の操舵トルクが検出される。
【0042】
このように、操舵トルクセンサ41で操舵トルクが検出されると、制御装置18は操舵トルクセンサ41で検出した操舵トルクが予め設定した所定値に保持されるように、アクチュエータ20を駆動する。これにより、アクチュエータ20のトルクがウオーム83およびウオームホイール82を介してプーリシャフト70に伝達され、ドライバーによるハンドル操作がアシストされる。差動トランス45を有する操舵トルクセンサ41とアクチュエータ20とを組み合わせたことにより、電気的な制御だけでアクチュエータ20を作動させることが可能となり、制御系の構造が簡素化される。
【0043】
さて、本実施例では駆動プーリ59の直径D1に対して従動プーリ60の直径D2が小さく設定されているので、駆動プーリ59の回転数に対して従動プーリ60の回転数が増速される。回転数とトルクとは反比例の関係にあるため、回転数の小さい駆動プーリ59のトルクに対して回転数の大きい従動プーリ60のトルクは小さくなる。ピニオン84およびラック85のギヤ比(即ち、ピニオン84の直径D3)が従来と同じであれば、従動プーリ60と一体に回転するピニオン84の回転数が大きくなってラック85の移動量が大きくなり、ステアリングハンドル11からラック58に伝達される駆動力は小さくなる。つまり、ピニオン84およびラック85のギヤ比を従来と同じにしたまま、駆動プーリ59の直径D1に対して従動プーリ60の直径D2を小さく設定すれば、ステアリングハンドル11の操舵角に対する車輪WL,WRの転舵角の比率は増加するが、車輪WL,WRの転舵力は減少する。
【0044】
そこで、本実施例の如くピニオン84の直径D3を従来よりも小さくすれば、ステアリングハンドル11を操舵角に対する車輪WL,WRの転舵角の比率を従来と同じにし、車輪WL,WRの転舵力も従来と同じにすることができる。例えば、駆動プーリ59の直径D1に対して従動プーリ60の直径D2を2分の1にすれば、ピニオン84の直径D3を従来の2分の1にすることで、ステアリングハンドル11の操舵角に対する車輪WL,WRの転舵角の比率と、車輪WL,WRの転舵力とを従来と同じにすることができる。
【0045】
このようにして、従動プーリ60の直径D2を小さくし、かつピニオン84の直径D3を小さくしたことにより、従動プーリケーシング14およびステアリングギヤボックス13のギヤケーシング19を小型化し、車室およびエンジン間の狭いスペースへの搭載を容易化することができる。
【0046】
またピニオン84の直径D3を小さくしたことにより、車輪WL,WRを所定の転舵力で転舵するのに必要なプーリシャフト70のトルクも小さくなる。従って、ウオーム83およびウオームホイール82を介してプーリシャフト70を駆動するアクチュエータ20の出力トルクを小さくすることができ、その分だけアクチュエータ20を小型軽量化することができる。但し、同じ転舵速度を得るためのアクチュエータ20の回転数は大きくなる。
【0047】
また駆動プーリケーシング12のフロントハウジング23の内部に収納された張力調整機構92によって操作ケーブル15,16の2本のインナーケーブル15i,16iに所定の張力が与えられ、インナーケーブル15i,16iの弛みが防止される。張力調整機構92を従動プーリ60側でなく駆動プーリ59側 に設けたことにより、以下のような効果を得ることができる。即ち、小径の従動プーリ60に巻き付いた部分ではインナーケーブル15i,16iが強く曲げられるため、従動プーリ60の近傍でインナーケーブル15i,16iの剛性が高くなる。従って、仮に従動プーリ60の近傍に張力調整機構92を設けると、インナーケーブル15i,16iに所定の張力を発生させるのに必要なローラ95,95の押し付け力が増加してしまい、結果としてインナーケーブル15i,16iの摩擦抵抗が増加してしまう問題がある。
【0048】
一方、大径の駆動プーリ59に巻き付いた部分ではインナーケーブル15i,16iがさほど強く曲げられないため、駆動プーリ59の近傍でインナーケーブル15i,16iの剛性はあまり高くならない。従って、本実施例の如く駆動プーリ59の近傍に張力調整機構92を設けると、インナーケーブル15i,16iに所定の張力を発生させるのに必要なローラ95,95の押し付け力を減少させることができ、結果として、前記押し付け力によるインナーケーブル15i,16iの摩擦抵抗の増加を最小限に抑えて操舵フィーリングを向上させることができる。
【0049】
以上、本発明の実施例を詳述したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
【0050】
例えば、実施例ではアクチュエータ20でドライバーのステアリング操作をアシストしているが、本発明はアクチュエータ20を備えていないマニュル操舵のケーブル式ステアリング装置に対しても適用することができる。
【0051】
【発明の効果】
以上のように請求項1に記載された発明によれば、従動プーリの直径を駆動プーリの直径よりも小さくしたので、従動プーリが配置されるケーブル式ステアリング装置の従動側の寸法を小型化して車両への搭載を容易にすることができる。また従動プーリおよび駆動プーリの直径差により、駆動プーリの回転数に対して従動プーリの回転数が大きくなるが、ステアリングギヤボックスのギヤ比を前記直径差に応じて設定して、ステアリングハンドルの操舵角に対する車輪の転舵角の比率が変化しないようにすることができる。
【0052】
また請求項2に記載された発明によれば、従動プーリの直径を駆動プーリの直径よりも小さくしたので、従動プーリが配置されるケーブル式ステアリング装置の従動側の寸法を小型化して車両への搭載を容易にすることができる。また従動プーリおよび駆動プーリの直径差により、駆動プーリの回転数に対して従動プーリの回転数が大きくなるが、ステアリングギヤボックスのギヤ比を前記直径差に応じて設定して、ステアリングハンドルの操舵角に対する車輪の転舵角の比率が変化しないようにすることができる。また前記ステアリングギヤボックスのギヤ比の、前記直径差に応じた設定により、必要なアシスト力を発生させるためにアクチュエータからステアリングギヤボックスに入力するトルクが小さくて済み、アクチュエータを小型化してケーブル式ステアリング装置の従動側の寸法を一層小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 ケーブル式ステアリング装置の全体斜視図
【図2】 図1の2−2線拡大断面図
【図3】 図2の3−3線断面図
【図4】 操舵トルクセンサの斜視図
【図5】 操舵トルクセンサの差動トランスの回路図
【図6】 操舵トルクセンサの作用説明図
【図7】 図1の7−7線拡大断面図
【符号の説明】
11 ステアリングハンドル
13 ステアリングギヤボックス
15 操作ケーブル
16 操作ケーブル
20 アクチュエータ
59 駆動プーリ
60 従動プーリ
92 張力調整機構
WL 車輪
WR 車輪
Claims (2)
- ステアリングハンドル(11)に連結されて回転する駆動プーリ(59)と車輪(WL,WR)を転舵するステアリングギヤボックス(13)に連結されて回転する従動プーリ(60)とを操作ケーブル(15,16)で接続し、ステアリングハンドル(11)に入力される操舵トルクを操作ケーブル(15,16)を介してステアリングギヤボックス(13)に伝達するケーブル式ステアリング装置において、
従動プーリ(60)の直径を駆動プーリ(59)の直径よりも小さく設定し、その設定によってもステアリングハンドル(11)の操舵角に対する車輪(WL,WR)の転舵角の比率が、両プーリ(60,59)を同一径としたものと比べて変化しないように、両プーリ(60,59)の直径差に応じてステアリングギヤボックス(13)のギヤ比を設定したことを特徴とするケーブル式ステアリング装置。 - ステアリングハンドル(11)に連結されて回転する駆動プーリ(59)と車輪(WL,WR)を転舵するステアリングギヤボックス(13)に連結されて回転する従動プーリ(60)とを操作ケーブル(15,16)で接続し、ステアリングハンドル(11)に入力される操舵トルクを操作ケーブル(15,16)を介してステアリングギヤボックス(13)に伝達するとともに、ステアリングハンドル(11)に入力される操舵トルクに応じてアクチュエータ(20)の駆動力をステアリングギヤボックス(13)に伝達するケーブル式ステアリング装置において、
従動プーリ(60)の直径を駆動プーリ(59)の直径よりも小さく設定し、その設定によってもステアリングハンドル(11)の操舵角に対する車輪(WL,WR)の転舵角の比率が、両プーリ(60,59)を同一径としたものと比べて変化しないように、両プーリ(60,59)の直径差に応じてステアリングギヤボックス(13)のギヤ比を設定したことを特徴とするケーブル式ステアリング装置。
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