JP4052383B2 - ソリッドステートアクチュエーターの補償器用圧力応答弁 - Google Patents
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Description
【優先権】
本願は、2000年10月11日付け米国仮出願第60/239,290号の優先権を主張するものであり、その出願全体を本願の一部として引用する。
【0002】
【発明の分野】
本発明は、一般的に、電気歪み、磁気歪みまたはソリッドステートアクチュエーターのような長さが変化するソリッドステートアクチュエーターに関し、詳細には、長さが変化するアクチュエーター用の補償器組立体、さらに詳細には、内燃機関のソリッドステート作動式高圧燃料噴射器を液圧補償する装置及び方法に関する。
【0003】
【発明の背景】
ソリッドステートアクチュエーターとして、軸方向長さが動作電圧の印加により変化するセラミック構造体が知られている。典型的な用途では、この軸方向長さを、例えば、約0.12%変化させることができる。ソリッドステートアクチュエーターの圧電素子積層構造では、軸方向長さの変化はアクチュエーターの素子の数に応じて増大すると思われる。ソリッドステートアクチュエーターの性質により、電圧を印加すると、アクチュエーターが瞬時に伸張し、アクチュエーターに接続された任意の構造体を瞬時に移動させると思われる。自動車技術、特に、内燃機関の分野では、燃料の霧化及び燃焼を最適化するために噴射器の弁要素を精密に開閉しなければならないと思われる。従って、内燃機関では現在、ソリッドステートアクチュエーターが噴射器の弁要素を精密に開閉するために使用されると思われる。
【0004】
動作時、内燃機関のコンポーネントは有意な熱的変動を経験するため、エンジンコンポーネントが熱膨張または熱収縮を起こすと思われる。例えば、燃料噴射器組立体の弁本体は、動作時にエンジンが発生する熱により膨張する。さらに、弁本体内で作動する弁要素は比較的低温の燃料と接触して収縮すると思われる。ソリッドステートアクチュエーターを噴射器の弁要素の開閉に用いる場合、これらの熱的変動に起因して、不十分な開放ストロークまたは不十分な密封ストロークとして特徴付けられる弁要素の運動が発生することがあると思われる。これは、ソリッドステートアクチュエーターの熱膨張特性が他の燃料噴射器またはエンジンコンポーネントの熱膨張特性と比べて小さいからであると思われる。例えば、ハウジングとアクチュエーター積層体との熱膨張の差はアクチュエーター積層体のストロークよりも大きい場合があると思われる。従って、弁要素の収縮または膨張が燃料噴射器の動作に有意な影響を及ぼすことがあると思われる。
【0005】
従来の方法の問題点を解消する熱的補償法が求められていると思われる。
【0006】
【発明の概要】
本発明は、例えば、電気歪み、磁気歪みまたはソリッドステートアクチュエーターのような長さが変化するソリッドステートアクチュエーターに熱的歪み、摩耗及び取付け歪みを補償する補償器組立体を備えた燃料噴射器を提供する。この燃料噴射器は、縦方向軸に沿って延び、第1及び第2の端部と、第1の端部と第2の端部との間に位置する端部部材とを有するハウジングと、縦方向軸に沿って設けられ、長さが変化するアクチュエーターと、長さが変化するアクチュエーターに結合され、燃料噴射を許容する第1の位置と、燃料噴射を阻止する第2の位置との間で可動の閉鎖部材と、長さが変化するアクチュエーターを温度変化に応答してハウジングに対して移動させる補償器組立体とより成り、補償器組立体は、第1の端部と第2の端部との間において縦方向軸に沿って延びる本体と、本体内の第1の端部の近くに設けられた第1のピストンと、第1のピストンに結合され、本体の内側表面と接触する第1の密封部材と、本体内の第2の端部の近くに設けられた第2のピストンと、第2のピストンに結合され、本体の内側表面と接触する第2の密封部材と、第1のピストンと第2のピストンとの間に位置し、第1のピストンに対向して本体内に第1の流体溜めを画定する第1の端部、第2のピストンに対向して本体内に第2の流体溜めを画定する第2の端部、及び第1の端部と第2の端部との間で流体を連通させる流体通路を有する離隔部材と、第1のピストンと離隔部材の第1の端部との間に設けられ、第1の流体溜めの流体圧力及び第2の流体溜めの流体圧力に応答して第1の流体溜めと第2の流体溜めとの間に圧力差がある時は第1の流体溜めと第2の流体溜めとの間で流体の流れを許容し、長さが変化するアクチュエーターの作動時は逆止弁として作用することにより第1の流体溜めから第2の流体溜めへの流体の流れを阻止する弁と、第2のピストンを離隔部材の方へ偏倚して第2の流体溜めの流体圧力を第1の流体溜めの流体圧力に対して増加させることにより、長さが変化するアクチュエーターが作動中でない時は第2の流体溜めから第1の流体溜めへ流体が流れるようにする偏倚手段とより成り、補償器組立体は、流体として、所定の体積及び所定の熱膨張率を有する液圧流体を選択することにより、燃料噴射器のハウジングと長さが変化するアクチュエーターとの熱膨張率の差が第1の流体溜めの液圧流体の膨張により補償されるように構成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明は、例えば、電気歪み、磁気歪みまたはソリッドステートアクチュエーターのような長さが変化するアクチュエーターに使用してアクチュエーターの熱的歪み、摩耗及び取付け歪みを補償する液圧補償器を提供する。好ましい実施例によると、長さが変化するアクチュエーターは第1及び第2の端部を有する。この液圧補償器は、ハウジングを有する燃料噴射器の長さが変化するアクチュエーターのための液圧補償器であって、第1の端部と第2の端部との間において縦方向軸に沿って延びる本体と、本体内の第1の端部の近くに設けられた第1のピストンと、第1のピストンに結合され、本体の内側表面と接触する第1の密封部材と、本体内の第2の端部の近くに設けられた第2のピストンと、第2のピストンに結合され、本体の内側表面と接触する第2の密封部材と、第1のピストンと第2のピストンとの間に位置し、第1のピストンに対向して本体内に第1の流体溜めを画定する第1の端部、第2のピストンに対向して本体内に第2の流体溜めを画定する第2の端部、及び第1の端部と第2の端部との間で流体を連通させる流体通路を有する離隔部材と、第1のピストンと離隔部材の第1の端部との間に設けられ、第1の流体溜めの流体圧力及び第2の流体溜めの流体圧力に応答して第1の流体溜めと第2の流体溜めとの間に圧力差がある時は第1の流体溜めと第2の流体溜めとの間で流体の流れを許容し、長さが変化するアクチュエーターの作動時は逆止弁として作用することにより第1の流体溜めから第2の流体溜めへの流体の流れを阻止する弁と、第2のピストンを離隔部材の方へ偏倚して第2の流体溜めの流体圧力を第1の流体溜めの流体圧力に対して増加させることにより、長さが変化するアクチュエーターが作動中でない時は第2の流体溜めから第1の流体溜めへ流体が流れるようにする偏倚手段とより成り、流体として、所定の体積及び所定の熱膨張率を有する液圧流体を選択することにより、燃料噴射器のハウジングと長さが変化するアクチュエーターとの熱膨張率の差が第1の流体溜めの液圧流体の膨張により補償されるように構成されていることを特徴とする。
【0009】
【好ましい実施例の詳細な説明】
図1乃至2を参照して、該図は、好ましい実施例を示す。図1は、長さが変化するアクチュエーター積層体100及び補償器組立体200を備えた燃料噴射器組立体10の好ましい実施例を示す。燃料噴射器組立体10は、入口取付け具12、ばね予荷重調整手段13、噴射器ハウジング14及び弁本体16を有する。入口取付け具12は、燃料フィルター11、燃料流路18、20、22及び燃料供給源(図示せず)に接続された燃料入口24を有する。入口取付け具12は、ばね予荷重調整手段13に結合された入口端部部材28を有する。補償器組立体200は、流体36が充填される2つの流体溜めを有する。流体36は、温度変化に応答してその体積を変化させる実質的に非圧縮性の流体でよい。好ましくは、流体36は、噴射器の入口取付け具12、ハウジング14または他のコンポーネントよりも大きい熱膨張率を有するシリコンまたは他の種類の液圧流体である。
【0010】
好ましい実施例において、噴射器ハウジング14は、長さが変化するアクチュエーター積層体100及び補償器組立体200を取囲んでいる。弁本体16は、噴射器ハウジング14に固着され、弁閉鎖部材40を取囲んでいる。長さが変化するアクチュエーター積層体100は複数の長さが変化するアクチュエーター素子より成り、これらは電圧源に電気的に接続された接点ピン(図示せず)を介して作動可能である。接点ピン(図示せず)間に電圧を印加すると、長さが変化するアクチュエーター積層体100は長さ方向において膨張する。長さが変化するアクチュエーター積層体100の荷重下における膨張の典型的な大きさは、例えば、約30−50ミクロンのオーダーである。この長さ方向の膨張を利用すると、燃料噴射器組立体10の弁閉鎖部材40を作動させることができる。
【0011】
長さが変化するアクチュエーター積層体100は、ハウジング14に沿って案内部材110により案内される。長さが変化するアクチュエーター積層体100は、底部44が弁閉鎖部材40の閉鎖端部42と作動的接触関係にある第1の端部と、頂部46が補償器組立体200に作動的に接続された第2の端部とを有する。
【0012】
燃料噴射器組立体10はさらに、ばね48、ばね座金50、キーパー52、ブッシング54、弁閉鎖部材の弁座56、ベローズ58及びOリング60を有する。Oリング60は、周囲温度が低くても(−40℃またはそれ以下)及び動作温度が高くても(140℃またはそれ以上)作動性を維持し燃料に適合するOリングであるのが好ましい。
【0013】
図2を参照して、補償器組立体200は、第1のピストン220、ピストン離隔部材または離隔部材230、第2のピストン240及び弾性部材またはばね260を取囲む本体210を有する。この本体210は、例えば、卵形、正方形、矩形または任意の適当な多角形のような、第1及び第2のピストンと嵌合する任意適当な断面形状でよい。本体の断面は円形であるのが好ましく、それにより円筒形の本体が形成される。
【0014】
第1のピストン220は第1の表面222を有し、この表面は離隔部材230と対向関係に位置して第1の流体溜め32を画定する。第1の表面222は、円錐形、円錐台形または第1の表面積を有する平坦な表面であるのが好ましい。
【0015】
第1のピストン220の外周面228は、本体の内側表面212と精密公差嵌合部を形成するような寸法を有する。第1のピストンは、好ましくは第1のピストン220の外周面の溝229に取付けられて流体36の漏洩を阻止するエラストマー214である密封部材を有する。このエラストマー214は、好ましくはOリングである。あるいは、エラストマー214は非円形断面のOリングでよい。エラストマーシールの他の種類、例えば、ラビリンスシールのようなものを使用できる。さらに、外周面228の上ではなくて本体の内側表面212上に溝を形成してもよい。
【0016】
離隔部材230は、第1の表面232、第2の表面234、及び第1の流体溜め32と第2の流体溜め34との間の流体の連通を許容する狭い通路237に接続された流路236を有する。好ましい実施例では狭い通路237が第1の流体溜めに流入する流体の圧力を減少させるが、この狭い通路237は、流路236を離隔部材230の全長に沿って延ばすことによりなくすことができる。
【0017】
離隔部材の第1の表面232は、縦方向軸A−Aに関して好ましくは横方向の表面上に形成した複数のポケットまたはチャンネル238a、238bを有する。これらのポケットまたはチャンネルは、円筒形、正方形または矩形のような適当な形状でよい。ポケットまたはチャンネル238a、238bは円筒形であるのが好ましい。
【0018】
離隔部材230は、例えば、スプライン結合のような適当な結合法により本体に結合可能である。1つの好ましい実施例において、離隔部材230と本体210の内側表面249には、離隔部材を本体に螺着できるように相補的な螺設部が形成されている。また、離隔部材の第1の表面232上には、12個のポケットまたはチャンネルを形成するのが好ましい。
【0019】
第2のピストン240は、第2の流体溜め34を形成するように離隔部材の第2の表面234と対向するように配置された第2の表面242を有する。第2の表面242は、円錐形、円錐台形表面あるいは、好ましくは第1のピストンの第1の表面の表面積と同じ第2の表面積を有する平坦な表面でよい。第2のピストン240はまた、密封部材、好ましくは流体36が第2の流体溜め34から漏洩するのを一般的に阻止するように第2のピストン240の外周部上の溝248に設けたエラストマー246を有する。好ましくは、このエラストマー246はOリングである。あるいは、エラストマー246は非円形断面を有するOリングでよい。例えば、ラビリンスシールのような他の種類のエラストマー密封部材を使用できる。あるいは、溝を本体の内側表面212に形成して密封部材をその中に設けてもよい。
【0020】
ばね260は、第2のピストン240を噴射器の出口端部の方へ偏位させる。ピストン240は、流体36の本体210内への導入を可能にする充填プラグ38に結合されている。好ましくは、この充填プラグ38は、第2のピストン240及び充填プラグ38上の相補的な螺旋形螺設部239により第2のピストン240に結合される。
【0021】
第1の流体溜め32には圧力感知弁を設けるが、この弁は圧力感知弁にかかる圧力降下に応じて1つの方向に流体が流れるようにする。圧力感知弁は、例えば、逆止弁または単方向弁でよい。圧力感知弁は、第1の面222の上方に滑らかな面がある可撓性の薄いディスクプレート270であるのが好ましい。
【0022】
プレート270は、離隔部材230と本体210のボス部分311との間に設けられている。プレート270は、例えば、接合、クリンピング、スポット溶接またはレーザー溶接のような適当な結合方法により離隔部材230の表面232に固着可能である。離隔部材230の表面232を利用し、離隔部材230を本体210に螺着してプレート270が保持されるようにすることにより、プレート270を表面232と本体210のボス部分311との間に保持するのが好ましい。
【0023】
プレート270を参照して、第1のピストン220に接触する側の面を滑らかにして離隔部材の第1の面232に対する密封表面を形成することにより、プレート270は、第1の流体溜め32の圧力が第2の流体溜め34の圧力よりも低い時は必ず流体が第1の流体溜め32と第2の流体溜め34との間を流れるようにする圧力感知弁として働く。即ち、流体溜め間に圧力差がある時は必ずプレート270の滑らかな表面が持ち上げられて流体がチャンネルまたはポケット238a、238bへ流入できるようにする。このプレートは、玉形逆止弁におけるように流体圧力とばね力の組合せではなくて、圧力差に応じて流れを阻止するシールを形成して、逆止弁を閉位置に保持するように働くことに注意されたい。圧力感知弁またはプレート270には、表面を貫通するオリフィス278a、278bが形成されている。このオリフィスは、例えば、正方形、円形または任意適当な形状でよい。好ましくは、このプレートには、各々の直径が約1.0ミリメートルの12個のオリフィスが形成されている。また、各チャンネルまたはポケット238a、238bに各オリフィス278a、278bとほぼ同じ形状及び断面積の開口を設けてもよい。
【0024】
プレート270は非常に小さい質量と可撓性とを有するため、流体が流入すると非常に迅速に応答して第1のピストン220の方へ持ち上げられ、プレートを通過していなかった流体が液圧シムの体積を増加させる。プレート270は、開位置において(図示せず)、プレート270の下方及び通路226内にある流体を吸引すると、球形の一部に近いものとなる。この増加した体積がシムの体積に加算されるが、その体積増加分は依然として密封表面の第1の流体溜め側にある。プレート270の多数の利点のうちの1つは、圧力の脈動が第1の流体溜めの液圧シムに追加される流体の体積増加分により迅速に減衰されることである。これは、噴射器の作動が非常に動的な事象であり、非作動状態、作動状態及び非作動状態間の移行により液圧シムに圧力変動を発生させる慣性力が生じるからである。液圧シムは、流体が自由に流入するが流出が制限されるため、振動を迅速に減衰させる。
【0025】
少なくとも1つのオリフィスの貫通孔またはオリフィス278a、278bの直径は、プレート270が離隔部材の第1の面232から持ち上げられると球形の一部に似た形になるため、プレート270の上昇距離でなくてプレートのオリフィス実効直径として考えることができる。さらに、オリフィスの数及び各オリフィスの直径は、プレート270の圧力降下の決定にとって重要なプレート270の剛性を決定する。好ましくは、圧力降下は補償器の第1の流体溜め32における圧力脈動に比べて小さいものでなければならない。プレート270が約0.1mm持ち上げられると、プレート270は、大きく開放した状態で第1の流体溜め32への流れを制限しないと考えることができる。液圧シム内への流れは制限されないため、流体の有意な圧力降下が防止される。これは、有意な圧力降下が存在すると流体に溶解されたガスが表に出て泡を形成するため重要である。これは、ガスの蒸気圧が減少した流体圧を超えることによる(即ち、ある特定の種類の流体は、スポンジが水を吸収するように空気を吸収するため、流体が圧縮可能な流体のように振舞う)。泡が形成されると、小さなばねのように作用して補償器を「ソフト」または「スポンジ」のようにする。一旦泡が形成されると、これらを流体内に再び溶解させるのは困難である。補償器は、好ましくは設計により、約2乃至7バールの圧力で作動するが、液圧シムの圧力は大気圧よりも有意に低下しないと思われる。従って、流体及び補償器通路からガス抜きを行うのは、プレート270がない場合ほど重要ではない。好ましくは、プレート270の厚さは約0.1ミリメートルであり、その表面積は約88平方ミリメートル(mm2)である。さらに、プレート270の可撓性を所望の値に維持するためには、各々が約0.8平方ミリメートル(mm2)の開口を有する約12個のオリフィスより成るアレイを設けるのが好ましく、プレートの厚さは表面積の平方根を約94で割算した値であるのが好ましい。
【0026】
ばね260は、螺着された調整器13(そして端部部材28)に対して反作用して第2のピストン240を噴射器の出口の方へ押圧することができる。ばねの力により流体36の圧力が上昇して、第2のピストン240の第2の表面242に対して作用する。最初の位置では、液圧流体36は、ばね260のばね力と第2の表面242の第2の表面積との関数として加圧される。加圧された流体は、第1の流体溜めの圧力が第2の流体溜めの圧力よりも低い時は第1の流体溜め32へ流入し、第2の流体溜め34から流出する傾向がある。最初の位置のように、第1の流体溜め32の圧力が第2の流体溜め圧力より低いと、フラッパーまたはプレート270は、流体36が第1の流体溜め32へ流入できるように動作する。第1の流体溜め32において液圧シムを形成する流体36は、補償器内またはその周りの温度の上昇により膨張する傾向がある。第1の流体溜め32の流体が膨張する前に、第1の流体溜めには、第2の表面242及びばね260のばね力により、液圧シムを形成するように予荷重が与えられる。ばね260のばね力は、約30ニュートン乃至約70ニュートンであるのが好ましい。
【0027】
積層体の方へ移動する第1のピストン220の力ベクトルFout(即ち、方向及び大きさを有する)は下記のように定義される。
【0028】
Fout=(Fspring±Fseal246)*(Ashim32/A2ndreservoir34)±Fseal214
上式において、
Fout=圧電積層体に印加される力;
Fspring=ばね力(30乃至70ニュートン);
Ashim32=ピストン上方の面積(液圧シム流体溜め32);
A2ndreservoir34=第2のピストン下方の面積(流体溜め34);
Fseal246=密封部246摩擦力;
Fseal214=密封部214の摩擦力;
【0029】
ばね260はコイルばねであるのが好ましい。流体溜めの圧力は各コイルばねの少なくとも1つのばね特性と関連がある。本明細書中において、少なくとも1つのばね特性は、例えば、ばね定数、ばね自由長、螺着された調整器13による予荷重の大きさ及びばねの弾性率を含むことができる。各ばね特性は、他のばね特性との種々の組合せで変化させることにより、補償器組立体200の所望の応答が得られるようにすることができる。
【0030】
再び図1を参照して、燃料噴射器10の動作時、燃料が燃料供給源(図示せず)から燃料入口24へ供給される。燃料入口24の所の燃料は、弁閉鎖部材40が開位置に移動しておれば、燃料フィルター11、通路18、通路20、燃料管22を介して燃料出口62から流出する。
【0031】
燃料を燃料出口62から流出させるために、長さが変化するアクチュエーター積層体100へ電圧を印加してその積層体を膨張させる。長さが変化するアクチュエーター積層体100が膨張すると、底部44が弁閉鎖部材40を押圧し、このため燃料が燃料出口62から出る。燃料が燃料出口62から噴射されると、長さが変化するアクチュエーター積層体100への給電が停止されるため、ばね48の偏倚力が弁閉鎖部材40を復帰させて、燃料出口62を閉じる。詳述すると、長さが変化するアクチュエーター積層体100は、給電停止により収縮するため、弁閉鎖部材40を底部44に常に接触状態に保持するばね48の偏倚力が弁閉鎖部材40を閉位置に偏位させる。
【0032】
エンジン動作時において、エンジン温度が上昇すると、入口取付け具12、噴射器ハウジング14及び弁本体17は温度の上昇によって熱膨張するが、長さが変化するアクチュエーター積層体の熱膨張は一般的に有意でない大きさである。同時に、アクチュエーター100が作動状態でない時、燃料管22を流れて燃料出口62から流出する燃料は、燃料噴射器組立体10の内部コンポーネントを冷却するため、弁閉鎖部材40を熱的に収縮させる。
図1を参照して、弁閉鎖部材40が収縮すると、底部44は弁閉鎖部材40との接触点から離れる傾向がある。第1のピストン220の底面に作動的に接続された長さが変化するアクチュエーター積層体100は、力Foutで第2のピストンに作用するばね260による流体の加圧により最初は下方に押圧される。燃料噴射器コンポーネントの体積熱膨張率βはアクチュエーター積層体100よりも一般的に大きいため、温度が上昇すると、入口取付け具12、噴射器ハウジング14及び弁本体17は、アクチュエーター積層体100に対して相対的に膨張する。第1のピストンのこの移動は、頂部46によりアクチュエーター積層体100へ伝達される。好ましい実施例において、液圧流体36の熱膨張率βはアクチュエーター積層体の熱膨張率βよりも大きいことに注意されたい。ここでは、補償器組立体は、少なくとも、所望の膨張率βを有する液圧流体を選択し、また第1の流体溜めの流体の所定の体積を選択することにより、燃料噴射器のハウジングとアクチュエーター積層体100の熱膨張率の差が第1の流体溜め内の液圧流体36の膨張により補償されるように構成することができる。
【0033】
アクチュエーター100が作動されると、第1の流体溜め32の圧力が急速に増加するため、プレート270が離隔部材の第1の面232に緊密に封止される。これにより、液圧流体36の第1の液体溜めから狭い通路237及び通路236への流出が阻止される。液体は事実上非圧縮性であるため、第1の流体溜め32の液体36は剛性的な反作用ベース、即ち、アクチュエーター100が反作用するシムに近似される。シムの剛性は、部分的に、流体が事実上非圧縮性であること及び流体がプレート270より第1の流体溜め32から流出できないことによると考えられる。アクチュエーター積層体100が未荷重状態で作動されると、積層体は約60ミクロン伸張する。好ましい実施例では、この伸張量の半分(約30ミクロン)は燃料噴射器の種々のコンポーネントにより吸収される。積層体100の全伸張量の残りの半分(約30ミクロン)は、閉鎖部材40を変位させるために使用される。従って、閉鎖部材40の変位は繰返し付勢される度に一定であると考えられ、それにより燃料噴射器の開度を一定に維持することが可能になる。
【0034】
アクチュエーター100が作動されない場合、流体36は第1の流体溜めと第2の流体溜めの間を流れるが、同じ予荷重力Foutが維持される。力Foutは、ばね260、シール214、246及び各ピストンの表面積の関数である。従って、アクチュエーター積層体100の底部44は、燃料噴射器コンポーネントが膨張するかまたは収縮するかに拘らず、弁閉鎖端部42の接触表面と常に接触状態に維持されると思われる。
【0035】
補償器組立体200を燃料噴射器用の長さが変化するアクチュエーターと共に図示したが、例えば電気歪み、磁気歪みまたはソリッドステートアクチュエーターのような長さの変化するアクチュエーターを補償器組立体200と共用できることを理解されたい。ここでは、長さが変化するアクチュエーターは、アクチュエーターが付勢されると長さが延びる、常態では作動されないアクチュエーターを包含することができる。逆に、長さが変化するアクチュエーターは、アクチュエーターが常態では作動されるが、非作動状態にすると長さが収縮(膨張でなく)する場合にも適用可能である。さらに、補償器組立体200及び長さが変化するアクチュエーターは燃料噴射器に関連の用途に限定されず、例示すると、スイッチ、光学的読み取り/書き込みアクチュエーターまたは医学用流体給送装置のような適度に精密なアクチュエーターを必要とする他の用途にも利用できることを強調したい。
【0036】
本発明をある特定の好ましい実施例に関連して説明したが、図示説明した実施例に対する変形例及び設計変更は、頭書の特許請求の範囲に規定される範囲から逸脱することなく可能である。従って、本発明は図示説明した実施例に限定されず、特許請求の範囲の文言及びその均等物により規定される全幅を享受するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、長さが変化するアクチュエーター積層体及び好ましい実施例による補償器組立体を備えた燃料噴射器組立体の断面図である。
【図2】 図2は、図1の補償器組立体の拡大図である。
Claims (12)
- 縦方向軸に沿って延び、第1及び第2の端部と、第1の端部と第2の端部との間に位置する端部部材とを有するハウジングと、
縦方向軸に沿って設けられ、長さが変化するアクチュエーターと、
長さが変化するアクチュエーターに結合され、燃料噴射を許容する第1の位置と、燃料噴射を阻止する第2の位置との間で可動の閉鎖部材と、
長さが変化するアクチュエーターを温度変化に応答してハウジングに対して移動させる補償器組立体とより成り、
補償器組立体は、
第1の端部と第2の端部との間において縦方向軸に沿って延びる本体と、
本体内の第1の端部の近くに設けられた第1のピストンと、
第1のピストンに結合され、本体の内側表面と接触する第1の密封部材と、
本体内の第2の端部の近くに設けられた第2のピストンと、
第2のピストンに結合され、本体の内側表面と接触する第2の密封部材と、
第1のピストンと第2のピストンとの間に位置し、第1のピストンに対向して本体内に第1の流体溜めを画定する第1の端部、第2のピストンに対向して本体内に第2の流体溜めを画定する第2の端部、及び第1の端部と第2の端部との間で流体を連通させる流体通路を有する離隔部材と、
第1のピストンと離隔部材の第1の端部との間に設けられ、第1の流体溜めの流体圧力及び第2の流体溜めの流体圧力に応答して第1の流体溜めと第2の流体溜めとの間に圧力差がある時は第1の流体溜めと第2の流体溜めとの間で流体の流れを許容し、長さが変化するアクチュエーターの作動時は逆止弁として作用することにより第1の流体溜めから第2の流体溜めへの流体の流れを阻止する弁と、
第2のピストンを離隔部材の方へ偏倚して第2の流体溜めの流体圧力を第1の流体溜めの流体圧力に対して増加させることにより、長さが変化するアクチュエーターが作動中でない時は第2の流体溜めから第1の流体溜めへ流体が流れるようにする偏倚手段とより成り、
補償器組立体は、流体として、所定の体積及び所定の熱膨張率を有する液圧流体を選択することにより、燃料噴射器のハウジングと長さが変化するアクチュエーターとの熱膨張率の差が第1の流体溜めの液圧流体の膨張により補償されるように構成されていることを特徴とする燃料噴射器。 - 前記弁は複数のオリフィスが形成されたプレートより成り、プレートは第1の流体溜めの流体圧力の作用を受ける請求項1の燃料噴射器。
- 離隔部材は補償器組立体の本体に固定されている請求項1の燃料噴射器。
- 第1の密封部材は、第1のピストンの周面に形成された溝に設けられ本体の内側表面と接触するOリングである請求項1の燃料噴射器。
- 第2の密封部材は、第2のピストンの周面に形成された溝に設けられ本体の内側表面と接触するOリングである請求項1の燃料噴射器。
- 第1のピストンは流体と接触する第1の表面積を有し、第2のピストンは流体と接触する第2の表面積を有し、その結果、第1のピストンには、偏倚部材の偏倚力、第1及び第2のピストンと本体の内側表面との間の摩擦力及び第1及び第2の表面積の比率の関数である力がかかる請求項1の燃料噴射器。
- ハウジングを有する燃料噴射器の長さが変化するアクチュエーターのための液圧補償器であって、
第1の端部と第2の端部との間において縦方向軸に沿って延びる本体と、
本体内の第1の端部の近くに設けられた第1のピストンと、
第1のピストンに結合され、本体の内側表面と接触する第1の密封部材と、
本体内の第2の端部の近くに設けられた第2のピストンと、
第2のピストンに結合され、本体の内側表面と接触する第2の密封部材と、
第1のピストンと第2のピストンとの間に位置し、第1のピストンに対向して本体内に第1の流体溜めを画定する第1の端部、第2のピストンに対向して本体内に第2の流体溜めを画定する第2の端部、及び第1の端部と第2の端部との間で流体を連通させる流体通路を有する離隔部材と、
第1のピストンと離隔部材の第1の端部との間に設けられ、第1の流体溜めの流体圧力及び第2の流体溜めの流体圧力に応答して第1の流体溜めと第2の流体溜めとの間に圧力差がある時は第1の流体溜めと第2の流体溜めとの間で流体の流れを許容し、長さが変化するアクチュエーターの作動時は逆止弁として作用することにより第1の流体溜めから第2の流体溜めへの流体の流れを阻止する弁と、
第2のピストンを離隔部材の方へ偏倚して第2の流体溜めの流体圧力を第1の流体溜めの流体圧力に対して増加させることにより、長さが変化するアクチュエーターが作動中でない時は第2の流体溜めから第1の流体溜めへ流体が流れるようにする偏倚手段とより成り、
流体として、所定の体積及び所定の熱膨張率を有する液圧流体を選択することにより、燃料噴射器のハウジングと長さが変化するアクチュエーターとの熱膨張率の差が第1の流体溜めの液圧流体の膨張により補償されるように構成されていることを特徴とする液圧補償器。 - 前記弁は複数のオリフィスが形成されたプレートより成り、プレートは第1の流体溜めの流体圧力の作用を受ける請求項7の液圧補償器。
- 離隔部材は本体に固定されている請求項7の液圧補償器。
- 第1の密封部材は、第1のピストンの周面に形成された溝に設けられ本体の内側表面と接触するOリングである請求項7の液圧補償器。
- 第2の密封部材は、第2のピストンの周面に形成された溝に設けられ本体の内側表面と接触するOリングである請求項7の液圧補償器。
- 第1のピストンは流体と接触する第1の表面積を有し、第2のピストンは流体と接触する第2の表面積を有し、その結果、第1のピストンには、偏倚部材の偏倚力、第1及び第2のピストンと本体の内側表面との間の摩擦力及び第1及び第2の表面積の比率の関数である力がかかる請求項7の液圧補償器。
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