JP4052378B2 - 熱式流量計測装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、周囲温度の変化にかかわることなく、且つ広い流量範囲で高精度な流量計測を行い得る熱式流量計測装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
熱式流量計測装置を構成する流量センサは、たとえば図5に示すようにシリコン基板B上に設けた発熱抵抗体からなるヒータ素子Rhを間にして、流体の通流方向Fに測温抵抗体からなる一対の温度センサRu、Rdを設けた素子構造を有する。この熱式流量計測装置は、上記ヒータ素子Rhに供給される電流によって発せられる熱で生じる前記流体の通流方向Fにおける温度分布(以下「ヒータ周辺温度分布」という)が前記流体の流速によって変化することを利用し、温度センサRu,Rdの温度による抵抗値変化から、前記流体の流量を検出するように構成される。
【0003】
具体的なヒータ周辺温度分布は、流体の流量Qがゼロの場合には、通流方向下流側の温度は通流方向上流側の温度と同一となり、流体の流量Qがゼロでない場合には、下流側の温度が上流側の温度よりも高くなる。そこで熱式流量計測装置は、通流下流側の温度センサRdと通流上流側の温度センサRuとの測温結果から、下流側と上流側との温度差を流量センサの出力として検出し流量Qを計測するものである。なお、図5中Rrは前記ヒータ素子Rhから離れた位置に設けられた周囲温度測温抵抗素子をなす温度センサであり、周囲温度(計測対象である流体の温度)の計測に用いられる。
【0004】
こうした熱式流量計測装置では、ヒータ素子Rhと周囲温度との温度差((ヒータ素子Rhの温度)−(周囲温度)、以下「(ヒータ温度−周囲温度)DT」と表示する)を常に一定に保つようにヒータ素子Rhを駆動・制御するものがある。
しかし、こうした熱式流量計測装置では、図6の流量計測特性に示すように、周囲温度が高くなるほど、流量センサの出力は低下する(流量センサの感度は低下する)ことが知られている(図6中の温度は周囲温度を示す)。また、流量Qの増加と共に、ヒータ素子Rhの発した熱が流体と共に流量センサ外に流出する。このため、流量Qの増加と共に、上記温度センサRd、Ru間の温度差の増加率は減少し、流量計測特性を表す曲線は流量Qの増加と共にその傾斜が小さくなり、ついには飽和する。そうすると高流量領域における流量計測の精度が低下することのみならず、熱式流量計測装置の流量計測範囲が狭くなる。
【0005】
他方、(ヒータ温度−周囲温度)DTを大きくするほど、ヒータ周辺温度分布の通流方向Fに対する変化は大きくなり、流量センサの感度が向上する。
そこで実公平7−51618号公報に開示されるように、周囲温度が高くなるほど、図7(a)の実線に示すように、(ヒータ温度−周囲温度)DTを大きくし、流量センサの感度が温度上昇で低下することを軽減する熱式流量計測装置が提供されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、周囲温度が高くなるほど(ヒータ温度−周囲温度)DTを大きくしても、周囲温度の上昇に伴う流量センサの感度低下を軽減できるだけであり、流量Qの増加に伴って流量計測特性曲線の傾斜が小さくなることを軽減することはできない。
【0007】
そのため、上述の熱式流量計測装置は、広い流量計測範囲で温度変化に対して流量センサの感度の変化を減少することができず、図7(b)に示すように、たとえば上記流量Qxにおいてのみ各温度の流量計測特性曲線を重ね得るにすぎないのであり、広い流量範囲で周囲温度の影響を軽減して高精度な流量計測を行うことができない、という問題がある。そして、図7(b)に示すように、上記流量Qxを境界点とし、流量がQxより多いときには温度上昇によるセンサ感度の変化が低下し、流量がQxより少ないときには温度上昇によるセンサ感度の変化が増加するような流量計測特性曲線の温度補償は、一般に複雑化して困難か或いはコストアップを招来する、という問題もある。
【0008】
また、上述の熱式流量計測装置の例として家庭用のガスメータがあるが、家庭用のガスメータでは、ガス料金の公平性の観点から、如何なる時間帯で如何なる量のガスが消費されても、消費されたガスの真の量(真のガス流量に対応)に応じた真のガス料金を基準として、消費者が支払った実際の料金の誤差を所定の誤差範囲(百分率)内におさめることが要求されている。
【0009】
しかし、一般の流量計では流量計測のフルスパンを基準として、流量計測の精度を規定するので(以下「%FS」という)、フルスパン以下の流量では、真の流量に対する許容誤差が増加する。たとえば1%FSの精度の流量計で、フルスパンの10%の流量において許容される誤差はフルスパンの流量の1%、すなわち(1%)/(10%)=10%の誤差が許容されることになる。そうすると、家庭用ガスメータでは、少量のガスを長時間にわたって消費する消費者のガス消費量計測の精度が低下し、上記ガス料金の公平性維持から好ましくない。
【0010】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、周囲温度の変化にかかわることなく、且つ広い流量範囲で高精度な流量計測を行い得る熱式流量計測装置を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1に記載の熱式流量計測装置は、流量センサ、ヒータ制御手段、および流量計測手段を備え、流量センサは、ヒータ素子、このヒータ素子を間にして流体の通流方向の上流側に設けられた第1の測温抵抗素子(上流側温度センサ)および通流方向の下流側に設けられた第2の測温抵抗素子(下流側温度センサ)、並びに該流量センサの周囲温度を検出する周囲温度測温抵抗素子を備え、ヒータ制御手段は、第1および第2の測温抵抗素子の測温温度の平均値に対応する電位と、周囲温度測温抵抗素子の電位とが等しくなるようにヒータ素子の温度を制御し、流量計測手段は、第1および第2の測温抵抗素子の測温温度差から流量センサを通流する流体の流量を計測し、周囲温度測温抵抗素子は第1および第2の測温抵抗素子の温度係数よりも大きい温度係数を有して、ヒータ制御手段がヒータ素子の温度と周囲温度との差、すなわち(ヒータ温度−周囲温度)DTが周囲温度測温抵抗素子による測温温度(周囲温度)の上昇よりも大きくなるようにヒータ素子の温度を上昇させることができるから、第1および第2の測温抵抗素子による測温温度の平均値の温度上昇を、周囲温度測温抵抗素子による測温温度の上昇よりもさらに大きくすることができるのである。
【0012】
上記ヒータ制御手段は、周囲温度測温抵抗素子による周囲温度の測温結果に基づき、(ヒータ温度−周囲温度)DTを周囲温度の上昇よりも大きくすることによって、温度上昇に伴う流量センサの感度低下を軽減することができる。
また、上記ヒータ制御手段は、第1および第2の測温抵抗素子の測温温度の平均値の計測結果から、周囲温度が一定の場合に、通流する流体の流量が増加しても、ヒータ素子の駆動を制御することによって、第1および第2の測温抵抗素子の測温温度の平均値を一定値に維持することができる。したがって、周囲温度が一定の場合に、流量Qの増加に伴い流量センサから流出する熱量が増加しても、第1の測温抵抗素子および第2の測温抵抗素子に与える上記熱量流出の影響が軽減される。そうすると、流量Qの増加と共に、ヒータ素子Rhの発した熱が流体と共に流量センサ外に流出するために生じる温度センサRd、Ru間の温度差の増加率の減少が軽減されて、流量Qの増加に伴って流量計測特性曲線の傾斜が小さくなることが改善され、高流量領域における流量計測特性を表す曲線の飽和も軽減される。
【0013】
すなわち、上記ヒータ制御手段は、温度上昇に伴う流量センサの感度低下を軽減すると共に、流量Qの増加に伴って流量計測特性曲線の傾斜が小さくなることを軽減するので、周囲温度の変化にかかわることなく、且つ広い流量範囲で高精度な流量計測を行い得る熱式流量計測装置が実現される。また、特定の流量を境界点として行う複雑或いはコストアップを招来する温度補償を必要としない。
【0014】
請求項2に記載の熱式流量計測装置は、さらに、第1および第2の測温抵抗素子との直列回路、並びに/または周囲温度測温抵抗素子に並列接続された抵抗温度係数設定用の抵抗素子を備える。したがって、周囲温度測温抵抗素子とこの周囲温度測温抵抗素子に並列接続される抵抗温度係数設定用の抵抗素子(以下「第1の抵抗素子」)との合成抵抗の抵抗温度係数、および/または第1および第2の測温抵抗素子との直列回路とこれら測温抵抗素子に並列接続される抵抗温度係数設定用の抵抗素子(以下「第2の抵抗素子」)との合成抵抗の抵抗温度係数を、それぞれ任意に設定することができる。ここで、周囲温度測温抵抗素子と第1の抵抗素子との合成抵抗の抵抗温度係数は、第1および第2の測温抵抗素子の直列回路と第2の抵抗素子との合成抵抗の抵抗温度係数よりも大きい値に設定されるのである。
したがって、上記各抵抗素子の抵抗温度係数を正の値とすれば、周囲温度が上昇すると、直列接続された第1および第2の測温抵抗素子側の抵抗値増加に対して、周囲温度測温抵抗素子側の抵抗値増加の方が大きくなる。これら抵抗値増加の相違(周囲温度測温抵抗素子側の抵抗値増加の方が大きいこと)を電圧として検出することにより、ヒータ制御手段は、上記ヒータ素子に印加される電圧を増加することができるから、周囲温度が上昇した場合に、(ヒータ温度−周囲温度)DTを周囲温度の上昇よりも大きくすることができて、温度上昇にともなう流量センサの感度低下を軽減することができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る熱式流量計測装置を説明する。
図1は本発明に係る熱式流量計測装置の一実施形態の概略要部構成図である。この熱式流量計測装置1は、図5に示す構造を有する流量センサ10と、ヒータ制御手段をなす増幅器11およびトランジスタ12と、流量計測手段をなす第1のブリッジ回路を有しており、この第1のブリッジ回路は上流側の温度センサRu(流量センサ10が備える第1の測温抵抗素子)、下流側の温度センサRd(流量センサ10が備える第2の測温抵抗素子)、抵抗Raおよび抵抗Rbからなる。
【0018】
上記流量計測手段をなす第1のブリッジ回路は、温度センサRu、Rdの直列回路と、抵抗Ra、Rbの直列回路とを並列接続してなり、温度センサRdと抵抗Rbが接続された該第1のブリッジ回路の一端側は接地され、該第1のブリッジ回路の他端側は抵抗R1を介して電源線Vcに接続されている。
そして、抵抗Raと抵抗Rbとの接続点N1および温度センサRuと温度センサRdとの接続点N2が該第1のブリッジ回路の出力となっている。接続点N1の電位は抵抗Ra、Rbの分圧比で決定され、一方接続点N2の電位は各温度センサRu、Rdの各抵抗値によって決定される。
【0019】
たとえば抵抗Ra、Rbの抵抗値を等しく設定した場合、温度センサRu、Rdの抵抗値が等しいときには、該第1のブリッジ回路は平衡して、接続点N1、N2間の電位差はゼロ(V)となる。他方、温度センサRu、Rdの抵抗値が等しくないときには、該第1のブリッジ回路は平衡せず、接続点N1、N2間に電位差が生じる。こうして接続点N1、N2間の電位差から温度センサRu、Rdの各測温温度の差を検出でき、接続点N1、N2は流量センサ出力端子となる。
【0020】
熱式流量計測装置1はさらに第2のブリッジ回路によって、前記第1および第2の測温抵抗素子の測温温度の平均値と前記周囲温度測温抵抗素子の測温温度との差を測定し、この測定結果に基づきヒータ制御手段が(ヒータ温度−周囲温度)DTを制御すべくヒータ素子Rhを駆動するものとなっている。
上記第2のブリッジ回路は、第1のブリッジ回路(なお該第1のブリッジ回路には後述する抵抗Rxが並列接続される)と抵抗R1との直列回路が、周囲温度測温抵抗素子Rr(なお周囲温度測温抵抗素子Rrには後述する抵抗Ryが並列接続される)と抵抗R2との直列回路に並列接続されてなり、周囲温度測温抵抗素子Rrと前記第1のブリッジ回路の一端側が接続される該第2のブリッジ回路の一端側は接地され、抵抗R1およびR2が接続される該第2のブリッジ回路の他端側は電源線Vcに接続されている。
【0021】
第1のブリッジ回路と抵抗R1との接続点N3、および周囲温度測温抵抗素子Rrと抵抗R2との接続点N4が第2のブリッジ回路の出力であり、接続点N3は増幅器11の非反転入力端子に接続され、接続点N4は増幅器11の反転入力端子に接続されている。増幅器11はエミッタが電源線Vcに接続されたトランジスタ12(PNPトランジスタ)を介してヒータ素子Rhを駆動する。該第2のブリッジは接続点N3、N4の電位が等しいときに平衡する(この平衡状態が維持されるように増幅器11とトランジスタ12がヒータ素子Rhを駆動する)。
【0022】
ここで接続点N3は、温度センサRu、Rdの測温温度の合計値に対応した抵抗値により電位が定まり、この電位が増幅器11の非反転入力端子に入力される。この場合、温度センサRu、Rdの測温温度の合計値は温度センサRu、Rdの測温温度の平均値の2倍であり、増幅器11の非反転入力端子側の利得と増幅器11の反転入力端子側の利得との関係を適宜設定することで、温度センサRu、Rdの測温温度の合計値を温度センサRu、Rdの測温温度の平均値として扱うことができる。
【0023】
なおヒータ制御手段はコンデンサCによる負帰還でその動作の安定化が計られ、増幅器11の出力端子とトランジスタ12のベース間には、抵抗R3が直列に介在してトランジスタ12のベース電流を制限している。
そして、第2のブリッジ回路においては、(ヒータ温度−周囲温度)DTを周囲温度の上昇よりも大きく増加させるため、周囲温度測温抵抗素子Rrと抵抗Ryとを並列接続した該並列接続の合成抵抗の抵抗温度係数(以下「Rr側温度係数」と表示する)は、温度センサRu、Rdの直列回路と抵抗Rxとを並列接続した該並列接続の合成抵抗の抵抗温度係数(以下「Rud側温度係数」と表示する)よりも、大きな抵抗温度係数を有している。
【0024】
たとえば、20℃における周囲温度測温抵抗素子Rrの抵抗値と抵抗Ryの抵抗値が等しく、周囲温度測温抵抗素子Rrの抵抗温度係数がα1であり抵抗Ryの抵抗温度係数がゼロならば、Rr側温度係数は(α1)/2になるが如くに、Rr側温度係数とRud側温度係数とを任意に設定することができる。なお抵抗Ra、Rbの抵抗値は、いずれも温度センサRu、Rdの抵抗値よりも充分高い抵抗値であり、Rud側温度係数に影響を与えないものとする。
【0025】
次に流量Qの増加に伴い流量計測特性曲線の傾斜減少を軽減する作用について説明する。
流量Qがゼロでたとえば周囲温度が20℃の場合には、図2(a)に示すように、ヒータ素子Rhが発する熱によるヒータ周辺温度分布は、ヒータ素子Rhが配置された位置(図中Hと表示する)を中心に対象に分布し、温度センサRu、Rdが配置された位置(図中それぞれU、Dと表示する)の温度は等しく、たとえば30℃で同一となるとする。そしてこのとき(ヒータ温度−周囲温度)DTは45℃で上記位置U,Dの温度を30℃に維持しており、位置Hの温度は65℃であるとする。
【0026】
上記ヒータ周辺温度分布が維持されるとき、周囲温度測温抵抗素子Rrは20℃に対応した抵抗値であり、温度センサRu、Rdの直列抵抗が、温度センサRu、Rdの合計温度が60℃(平均値は30℃)に対応した抵抗値において、第2のブリッジ回路は平衡し、この平衡状態が維持されるようにヒータ素子Rhは増幅器11とトランジスタ12で駆動されている。
【0027】
上述のように流量Qがゼロの状態では、温度センサRu、Rdの各抵抗値は等しいので第1のブリッジ回路は平衡し、流量センサ出力端子(接続点N1と接続点N2間)の電位差がゼロになり、熱式流量計測装置1は、流量Qがゼロであることを計測することになる。
次に、周囲温度が上述20℃で一定の場合において、流量がQ1に増加したときのヒータ制御手段の作用について説明する。
【0028】
このとき、仮に(ヒータ温度−周囲温度)DTが上述の45℃で一定であるとすると、ヒータが発する熱は通流する流体によってセンサ素子外部に流出する。そうすると、図2(b)に示すように位置U、Dの合計温度が低下する。たとえば位置Uの温度は27℃となり位置Dの温度は29℃となって、温度センサRd,Ruの測温温度の合計値は56℃で平均値は28℃となるが如きである。
【0029】
上記位置U、Dの合計値の低下(平均値の低下)は接続点N3の電位を低下させ、増幅器11の出力電圧が低下してトランジスタ12のコレクタ電流を増加させヒータ素子Rhの発熱が増加する。
そして、図2(c)に示すように、たとえば位置Uの温度は28℃となり位置Dの温度は32℃となって位置U、Dの温度の合計値が60℃(平均値30℃)に上昇することで接続点N3に生じる電位と、周囲温度測温抵抗素子Rrの測温温度20℃に対応して接続点N4に生じる電位とが一致して、前記第2のブリッジ回路が平衡する。すなわち、流体の流量Qの変化に対して、位置U、Dの温度の平均値を一定値に維持すべく(ヒータ温度−周囲温度)DTを制御している。
【0030】
かくして、熱式流量計測装置1では、流量センサ10における位置U、Dの温度の平均値が30℃に維持される。そうすると、流量Qの増加と共に、ヒータ素子Rhの発した熱が流体と共に流量センサ外に流出するために生じる温度センサRd、Ru間の温度差の増加率の減少が軽減されるので、図3(a)に示すように高流量領域において、流量計測特性曲線の傾斜が小さくなることが軽減され、且つ高流量領域における流量計測特性を表す曲線の飽和も軽減される。
【0031】
次に、周囲温度が上昇した場合における、流量センサの感度低下を軽減する作用について説明する。
ここで、第2のブリッジ回路は、前述のようにRr側温度係数がRud側温度係数よりも、大きく設定されている。
仮に図1に示す熱式流量計測装置1で、Rr側温度係数とRud側温度係数とが等しい場合には、周囲温度上昇に対する第2のブリッジ回路の接続点N3の電位上昇と、温度センサRu、Rdの測温温度の平均値上昇による接続点N4の電位上昇とが等しくなるように第2のブリッジ回路が平衡する。したがって周囲温度の上昇によって、温度センサRu、Rdの測温温度の平均値を、周囲温度の上昇に等しくするように、ヒータ制御手段がヒータ素子Rhを駆動する。すなわち、(ヒータ温度−周囲温度)DTは周囲温度の上昇に等しくなる。
【0032】
しかし、図1に示す熱式流量計測装置1では、Rr側温度係数がRud側温度係数よりも大きい。そうすると、上記の場合に比べて、周囲温度が上昇したときに、接続点N4の電位上昇が接続点N3の電位上昇よりも大きくなる。このとき、第2のブリッジ回路が平衡するためには、周囲温度上昇よりも温度センサRu、Rdの測温温度の平均値の上昇が大きくなければならず、ヒータ制御手段が周囲温度の上昇よりもさらに(ヒータ温度−周囲温度)DTを増加させるように作用することになる。こうして(ヒータ温度−周囲温度)DTが周囲温度の上昇よりも大きくなるので、周囲温度の上昇に伴う流量センサ10の感度低下が軽減される。
【0033】
かくして、示す熱式流量計測装置1は、流量Qの増加に伴って流量計測特性曲線の傾斜が小さくなることが軽減され、高流量領域における流量計測特性を表す曲線の飽和も軽減され、且つ図3(b)に示すように、周囲温度の上昇に伴う流量センサ10の感度低下が軽減されるので、周囲温度の変化にかかわることなく、且つ広い流量範囲で高精度な流量計測を行うことができる。
【0034】
なお図4は熱式流量計測装置1の流速に対する感度(流速計測特性)の実測例を示すものであり、流速が0〜16m/秒の範囲で良好な感度が得られ、且つ(−20℃〜60℃)の温度範囲で上記流速範囲で感度誤差が良好に軽減されている。ここで流体の流量は、流量計測部位における流体通流部の断面積と流速の積であるので、流速計測範囲が広いことは流量計測範囲が広いことと同意義である。
【0035】
なお、周囲温度測温抵抗素子側の抵抗温度係数設定用の抵抗素子と第1および第2の測温抵抗素子側の抵抗温度係数設定用の抵抗素子は、必ずしも2つとも使用する必要はなく、何れか一方の使用により、第2のブリッジ回路出力に基づき、ヒータ制御手段が、周囲温度の上昇よりもさらに(ヒータ温度−周囲温度)DTを増加させるように制御できるものであればよい。
【0036】
また、第1および第2の測温抵抗素子の直列回路並びに周囲温度測温抵抗素子と、増幅器の入力端子(非反転入力端子、反転入力端子)との接続を、上述した実施形態と逆の関係に接続し、第1および第2の測温抵抗素子の直列回路側の抵抗温度係数を、周囲温度測温抵抗素子側の抵抗温度係数よりも大きくしても同様の作用効果が得られる。
【0037】
さらに、ヒータ制御手段をマイクロプロセッサ等で構成することもできる。たとえば、第2のブリッジ回路の出力(接続点N3,N4間のアナログ電圧出力)をアナログ・ディジタル変換し、上記第2のブリッジ回路の出力をゼロ(V)にするように、マイクロプロセッサ等が所定のプログラムに従ってディジタル・アナログ変換器を介しヒータ素子Rhを駆動するが如くである。
【0038】
このように、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で変形して実施することができる。
【0039】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の請求項1に記載の熱式流量計測装置によれば、流量センサの上流側温度センサと下流側温度センサの測温温度の平均値を維持するように上記各センサの間に配置されたヒータ素子の発熱を制御するので、流量Qの増加に伴って流量計測特性曲線の傾斜が小さくなることが軽減され、高流量領域における流量計測特性を表す曲線の飽和も軽減される。
【0040】
またヒータ制御手段が、上流側温度センサと下流側温度センサの測温温度の平均値と周囲温度測温抵抗素子の測温温度との温度差に応じてヒータ素子の駆動を制御するので、(ヒータ温度−周囲温度)DTを周囲温度の上昇よりも大きくすることができ、周囲温度上昇による流量センサの感度低下が軽減される。
すなわち周囲温度の変化にかかわることなく、且つ広い流量範囲で高精度な流量計測が可能となり、また、特定の流量を境界点として行う複雑或いはコストアップを招来する温度補償を必要としない。さらに、家庭用ガスメータにおいては、如何なる流量でも高精度でガスの流量を計測でき、ガス料金の公平性が容易に維持される、といった効果が発揮される。
【0042】
請求項2の熱式流量計測装置によれば、周囲温度測温抵抗素子と第1の抵抗素子との合成抵抗の抵抗温度係数が、上流側温度センサと下流側温度センサと第2の抵抗素子との合成抵抗の抵抗温度係数よりも任意且つ大きく設定される。したがって、周囲温度が上昇したとき、周囲温度測温抵抗素子側は、上流側温度センサと下流側温度センサとの直列抵抗側に対し抵抗値変化が大きくなって、ヒータ制御手段は、(ヒータ温度−周囲温度)DTを周囲温度の上昇よりも大きくすることができて、流量センサの感度低下を軽減する熱式流量計測装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る熱式流量計測装置の一実施形態の概略要部構成図である。
【図2】熱式流量計測装置におけるヒータ周辺温度分布の例を示すグラフである。
【図3】図1の熱式流量計測装置における流量計測特性の例を示すグラフである。
【図4】本発明に係る熱式流量計測装置の流速計測特性の実測例を示すグラフである。
【図5】流量センサの要部概略構成を示す図である。
【図6】(ヒータ温度−周囲温度)DTを一定に制御する従来の熱式流量計測装置における流量計測特性の例を示すグラフである。
【図7】周囲温度が高くなるほど(ヒータ温度−周囲温度)DTを大きくする従来の熱式流量計測装置における流量計測特性の例を示すグラフである。
【符号の説明】
1 熱式流量計測装置
10 流量センサ
11 増幅器(ヒータ制御手段)
12 トランジスタ(ヒータ制御手段)
Rh ヒータ素子
Rr 周囲温度測温抵抗素子
Ru 温度センサ(第1の測温抵抗素子)
Rd 温度センサ(第2の測温抵抗素子)
Rx 抵抗(抵抗温度係数設定用の抵抗素子)
Ry 抵抗(抵抗温度係数設定用の抵抗素子)
Claims (2)
- 流量センサ、ヒータ制御手段、および流量計測手段を備えた熱式流量計測装置であって、
前記流量センサは、ヒータ素子、このヒータ素子を間にして流体の通流方向の上流側に設けられた第1の測温抵抗素子および前記通流方向の下流側に設けられた第2の測温抵抗素子、並びに該流量センサの周囲温度を検出する周囲温度測温抵抗素子を備え、
前記ヒータ制御手段は、前記第1および第2の測温抵抗素子の測温温度の平均値に対応する電位と、前記周囲温度測温抵抗素子の電位とが等しくなるように前記ヒータ素子の温度を制御し、
前記流量計測手段は、前記第1および第2の測温抵抗素子の測温温度差から前記流量センサを通流する前記流体の流量を計測し、
前記周囲温度測温抵抗素子は前記第1および第2の測温抵抗素子の温度係数よりも大きい温度係数を有して、前記ヒータ制御手段が前記ヒータ素子の温度と周囲温度との差が前記周囲温度測温抵抗素子の測温温度の上昇よりも大きくなるように前記ヒータ素子の温度を上昇させて、前記第1および第2の測温抵抗素子による測温温度の平均値の温度上昇を前記周囲温度測温抵抗素子による測温温度上昇よりもさらに大きくすることを特徴とする熱式流量計測装置。 - 請求項1に記載の熱式流量計測装置において、
さらに、前記第1および第2の測温抵抗素子との直列回路に並列接続された抵抗温度係数設定用の抵抗素子、並びに/または前記周囲温度測温抵抗素子に並列接続された抵抗温度係数設定用の抵抗素子を備えて、
前記周囲温度測温抵抗素子とこの前記周囲温度測温抵抗素子に並列接続された前記抵抗温度係数設定用の抵抗素子との合成抵抗の抵抗温度係数が、前記第1および第2の測温抵抗素子の直列回路とこの直列回路に並列接続された前記抵抗温度係数設定用の抵抗素子との合成抵抗の抵抗温度係数よりも大きいことを特徴とする熱式流量計測装置。
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