JP4051604B2 - 感光性印刷用原版 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、コンピュータ製版技術により、例えば凸版印刷版を製造するために使用される感光性印刷用原版であって、画像再現性の優れた感光性印刷用原版に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
現在、凸版やフレキソ印刷の分野において、デジタル画像形成技術としても知られているコンピュータ製版技術(CTP技術)は、極めて一般的なものとなってきている。CTP技術では、感光性印刷版の重合すべきでない領域を覆うために従来から使用されている写真マスク(フォトマスクやネガフィルムともいう)は、印刷版内で形成統合されるマスクに取って代わられている。このような統合マスクを得るためには幾つかの可能な方法はあるが、市場には2つの技術が存在する。即ち、感光性印刷版上にインクジェットプリンターでマスクを印刷するか、又は感光性層上に、化学線に対して実質的に不透明(即ち化学線を実質的に通さない)層(IRアブレーション層又は赤外融除層ともいう)を設け、IRレーザでこのようなマスクに画像形成することである。このようなIRアブレーション層には、IR吸収材料として、通常カーボンブラックを含有する。このIRアブレーション層を有する感光性印刷用原版は、例えばEP−A654150又はEP−A767406号公報に開示されている。IRレーザで照射することより、黒色層は、その部分で喪失し、下層の感光性層が露出する。レーザ装置はレイアウトコンピュータシステムに直接つながれている。この技術を用いて、画像は一般に版上に直接形成され、次の工程で活性光線が照射される。
【0003】
CTP技術は、別にフォトマスクを作製することを回避させるだけでなく、遙かに高い解像度を与えるものである。CTP技術の従来技術に対する優位性の詳細な議論は、例えば"Deutsher Drucker, Nr. 21/3.6.99,w12-w16頁"に記載されている。
【0004】
IRアブレーション層を有する感光性印刷用原版を用いて印刷版を製造する方法における重要な工程は、IRレーザを照射し画像を形成したのち、その画像を通して感光性樹脂層に化学線を照射し潜像を形成する工程である。この化学線の照射は減圧シートを介さないで行なうことにより、酸素の存在下での露光障害効果によるシャープなレリーフ画像を得られることが特徴である。
【0005】
一方、従来の感光性樹脂層は成型時に所定の樹脂厚みにあわせるために感光性樹脂の溶融時の流動性を良くする目的で、感光性樹脂層の残存溶剤量が一定量以上必要であった。また感光性樹脂層の現像性を良くするためにも残存溶剤量は多い方が好ましい。ところがIRアブレーション後に減圧シートを介さずに活性光線を照射すると、感光性樹脂硬度の高いものや支持体が曲がりやすいフイルムベースのものは活性光線照射中に版がカールしてしまい版面に均一な活性光線を照射することが困難であった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような問題点がなく、カールの少ない感光性印刷用原版を提供することで均一な活性光線照射を可能とし、画像再現性の優れた感光性CTP印刷用原版を得ることを課題とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは感光性印刷版について、前記課題を解決するために鋭意、研究、検討した結果、遂に本発明を完成するに至った。すなわち本発明は、(1)(A)支持体、(B)アンモニウム塩型三級窒素原子含有ポリアミド又はアミド結合を有しないジアミンと有機ジイソシアネート化合物の付加重合体をポリマー成分とする感光性樹脂層、(C)カーボンブラックを赤外線吸収物質とするIRアブレーション層を有する感光性凸版印刷用原版であって、濃縮・溶融成型した前記(B)感光性樹脂層に含まれる水とメチルアルコールからなる残存溶剤含有率が4〜7%の範囲であることを特徴とする感光性凸版印刷用原版。(2)(B)感光性樹脂層に含まれる残存溶剤が、 水とメチルアルコールからなり、メチルアルコールと水の比率が2/8〜8/2である前記(1)記載の感光性凸版印刷用原版である。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明における感光性樹脂層の残存溶剤とは、主として水と低級脂肪族アルコールからなるものであり、後述する方法により、その含有量が測定されるものである。
なお、前記低級脂肪族アルコールとしては、具体例としてメチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテルなど、またはそれらの混合物が挙げられるが、生産時の取扱い性などからメチルアルコールやエチルアルコールが好ましく用いられる。
【0009】
本発明において、前記残存溶剤含有率は3〜10%、好ましくは4〜7%からなるものである。残存溶剤含有率が3%未満になると成型時の流動性が低くなり濃縮機の中から吐出することができなかったり、所望の厚みに均一に成型できない。また残存溶剤含有率が10%を超えると、感光性印刷用原版を減圧なしに活性光線を照射すると露光中にインカールが生じて均一な照射が行なうことができないので好ましくない。
【0010】
また本発明の感光性樹脂層の残存溶剤成分は低級脂肪族アルコールと水の比率が2/8〜8/2であることが好ましく、望ましくは3/7〜7/3の範囲である。水の比率が8割を超えると濃縮に時間を費やし生産性が悪くなり、一方2割未満になると可溶性合成高分子化合物の溶解性が悪く溶解時間が長くなるという傾向があるので好ましくない。
【0011】
本発明感光性印刷用原版に好適な(A)支持体は、可撓性で、しかし寸法安定性に優れた材料が好ましく用いられ、例えばスチール、アルミニウム、銅、ニッケルなどの金属製またはポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、或いはポリカーボネートを挙げることができ、これらは寸法安定性に優れた支持体材料として使用可能な充分に高い粘弾性を有している。なかでもポリエチレンテレフタレートフイルムが寸法安定性に優れ、かつ可撓性に優れた支持体材料として使用される。ここで使用される支持体の厚みは50〜350μm、好ましくは100〜250μmが機械的特性、形状安定化あるいは印刷版製版時の取り扱い性等から望ましい。また、必要により、支持体と感光性樹脂層との接着を向上させるために、一般に用いられる接着剤を設けても良い。
【0012】
本発明感光性印刷用原版に用いられる(B)感光性樹脂層は、公知の可溶性合成高分子化合物、光重合性不飽和化合物および光重合開始剤を含んでいる。さらに添加剤、例えば可塑剤、熱重合防止剤、染料、顔料、紫外線吸収剤、香料又は酸化防止剤を含んでも良い。
【0013】
本発明において、可溶性合成高分子化合物としては公知の可溶性合成高分子化合物を使用できる。例えばポリエーテルアミド(例えば特開昭55−79437号公報等)、ポリエーテルエステルアミド(例えば特開昭58−113537号公報等)、三級窒素含有ポリアミド(例えば特開昭50−76055公報等)、アンモニウム塩型三級窒素原子含有ポリアミド(例えば特開昭53−36555公報等)、アミド結合を1つ以上有するアミド化合物と有機ジイソシアネート化合物の付加重合体(例えば特開昭58−140737号公報等)、アミド結合を有しないジアミンと有機ジイソシアネート化合物の付加重合体(例えば特開平4-97154号公報等)などが挙げられ、そのなかでも三級窒素原子含有ポリアミドおよびアンモニウム塩型三級窒素原子含有ポリアミドが好ましい。
【0014】
また、好適に用いられる光重合性不飽和化合物としては、多価アルコールのポリグリシジルエーテルとメタアクリル酸およびアクリル酸との開環付加反応生成物であり、前記多価アルコールとして、ジペンタエリスリトール、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、フタル酸のエチレンオキサイド付加物などが挙げられ、そのなかでもトリメチロールプロパンが好ましい。
【0015】
光開始剤の例としては、ベンゾフェノン類、ベンゾイン類、アセトフェノン類、ベンジル類、ベンゾインアルキルエーテル類、ベンジルアルキルケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類などが挙げられる。具体的には、ベンゾフェノン、クロロベンゾフェノン、ベンゾイン、アセトフェノン、ベンジル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、ベンジルジエチルケタール、ベンジルジイソプロピルケタール、アントラキノン、2−エチルアントラキノン、2―メチルアントラキノン、2−アリルアントラキノン、2−クロロアントラキノン、チオキサントン、2−クロロチオキサントンなどが挙げられる。
【0016】
本発明感光性印刷用原版における構成成分は、(B)感光性樹脂層の上に設けられる(C)IRアブレーション層であり、実質的に化学線を通さず(即ち化学線に対して不透明である)、一般に、化学線に対する光学濃度は、2.5を超える値であり、好ましくは3.5を超える値である。光学濃度は、画像を形成したIRアブレーション層を介して、感光性組成物の全露光に使用される化学線の波長又は波長範囲で得られる。
【0017】
(C)IRアブレーション層における高分子バインダは、IRアブレーション層がIRレーザ照射に曝された際に、IR吸収材料より発生した熱により効果的に除去することができるものである。なお用語「熱−可燃性」とは、前段の溶融段階無しに、バインダが分解、解重合、又は蒸発することを意味する。このため、画像の各画素は、極めて急なエッジを有し、高解像度をもたらすのである。
【0018】
高分子バインダは上述の要求を満たすバインダであれば、どのような種類でも本発明の範囲内において使用することができるが、水系現像型感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂層の場合に対しては、水溶性ポリマーが好ましく使用できる。具体的には、ポリビニルアルコールおよびその誘導体、セルロース系、水溶性ブチラール、分子中に水酸基を有する化合物が挙げられるが、酸素遮断性、皮膜形成性、耐温湿度、塗工性より少なくとも1種のポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリエチレンオキシドなどを含むことが好ましい。なかでも重合度500〜4000、好ましくは1000〜3000、ケン化度70%以上、好ましくは80〜99%、さらに好ましくは80〜90%のポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコールが望ましい。
【0019】
本発明におけるIRアブレーション層は、前記バインダー以外に、別の成分として、多価アルコールおよび/またはアミン化合物を含有しても良い。具体的にはエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、プロピレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキシレングリコール、ヘキサメチレングリコールなどの低分子量のアルキレングリコール類、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール#200、ポリエチレングリコール#300、ポリエチレングリコール#400,ポリエチレングリコール#600などの低分子量ポリアルキレングリコール類、2,3ブタンジオール、1,3ブタンジオールなどのブタンジオール類、グリセリン、ソルビトール、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパンなど3価以上のアルコール類などの多価アルコール類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのエタノールアミン類やN−メチルピロリドン、シクロヘキシルアミン、尿素などのアミン化合物が挙げられる。また2種以上の混合物も使用することができる。
【0020】
IRアブレーション層は、少なくとも1種のIR吸収材料を含み、これは750〜20000nmの範囲で強い吸収を有し、層内に均一に分散されている。好適なIR吸収材料としては、IR吸収染料(例、フタロシアニン及び置換フタロシアニン誘導体、シアニン染料、メロシアニン染料及びポリメチン染料)或いは濃色の無機顔料(例、カーボンブラック、グラファイト、酸化鉄又は酸化クロム)を挙げることができる。本発明においては、カーボンブラックの使用が好ましい。カーボンブラックは、IRアブレーション層が化学線に対して不透明になり、これにより他のUV−吸収染料の添加を絶対的に不要にすることを保証する。最大カラー強度のためには小粒径を使用することが望ましい。特に、60nm未満の平均粒径をもつ微細カーボンブラックの銘柄を使用することが望ましい。好適な銘柄の例としては、PrintexR U(プリンテックス(商標登録)U)、PrintexR L6、Spezialschwarz 4(スペチアールシュバルツ(商標登録)4)又はSpezialschwarz 250(Degussa社製)、BONJET CW-1(オリエント化学社製)を挙げることができる。
【0021】
また金属と合金も赤外吸収物質と活性光線不透明材料の両方として作用するのでIRアブレーション層として採用することができる。金属の例にはアルミニウム、銅および亜鉛が含まれ、そしてビスマス、スカンジウム、インジウムなどの合金が含まれる。本発明においてはアルミニウムが好ましい。
【0022】
一般に、IRアブレーション層中のIR吸収材料の配合量は、IRアブレーション層の全成分の合計量に対して1〜60重量%であり、さらに10〜50重量%が好ましく、特に25〜50重量%が好ましい。1重量%未満では、IRアブレーション層の化学線に対する光学濃度が2.0未満になって、レリーフ画像にカブリが発生してしまう。また60重量%を超えると、IRアブレーション層の機械的強度が不足したり、後工程の現像で現像液の汚染や劣化を早めてしまうので好ましくない。
【0023】
(C)IRアブレーション層は、必要により追加の成分及び添加剤を含むこともできる。このような成分の例としては、熱−可燃性である必要のない高分子バインダ、顔料分散剤、フィラー、界面活性剤又は塗布助剤を挙げることができる。このような添加剤は、層に対する所望の性質に従い当業者が選択することができるが、それらがIRアブレーション層の画像形成性に悪影響を与えないことが条件となる。添加剤として、UV−吸収材料、又はUVに吸収のある染料を使用することもできる。UV−吸収材料を使用するのは、IR吸収剤としてカーボンブラックと一緒でも有利であり、他のIR吸収剤と共には避けた方がよい。その数は限定されないが、このような添加剤の量はIRアブレーション層の全成分の合計量に対して20重量%以下、特に10重量%以下が好ましい。
【0024】
(C)IRアブレーション層の成分は、IRアブレーション層が感光性樹脂層の現像溶液に溶解又は少なくとも膨潤する様に選択されることが好ましい。但し、本発明のはこの態様に限定されるものではない。
【0025】
(C)IRアブレーション層上において剥離可能な可撓性カバーシートで感光性印刷版を覆うことが有利である。好適な剥離可能な可撓性カバーシートとしては、例えばポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルムを挙げることができる。しかしながら、このような保護カバーシートは絶対に必要というものではない。
【0026】
さらに、IRアブレーション層を損傷せずにカバーシートの除去を容易にする剥離改良ポリマーとして、前記追加のバインダの少なくとも1種を使用することも、必須ではないが、有利である。
【0027】
本発明感光性印刷用原版は、また、必要に応じて前記の層の間に1層以上の層を有していても良い。このような層の例としては、当該技術分野では公知であり、接着層、特に支持体と感光性層との間のもの、モノマー又は他の低分子の、ある層から他の層への拡散を防止するための感光性層とIRアブレーション層の間の中間層、或いは非粘着層を挙げることができる。
【0028】
次に本発明感光性印刷用原版を製造する方法を具体的に説明する。
まず、IRアブレーション層の全成分を、適当な溶媒に溶解させるか、或いはカーボンブラック等の顔料を用いるときは、適当な溶媒中の顔料及びその他の成分との分散液を作製する。後者の場合、分散型カーボンブラックの使用が推奨される。このような溶液又は分散液は、感光層の上に直接塗布され、その後溶剤を蒸発させる。或いは、このような溶液又は分散液を支持体(例、PETシート)上に塗布し、その後溶剤を蒸発させる。その後、塗布支持体を、圧力及び/又は加熱下に、印刷版の感光層と共に、感光層がIRアブレーション層に隣接するようにラミネートする。なお、IRアブレーション層用支持体は、感光性印刷用原版表面の保護フィルムとして機能している。
【0029】
次に本発明感光性印刷用原版から印刷版を製造する方法としては、存在する場合には、保護フィルムを感光性印刷版から除去する工程も包含する。その後、IRアブレーション層をIRレーザにより画像用に照射して、感光性樹脂層上にマスクを形成する。適当なIRレーザの例としては、ND/YAGレーザ(1064nm)又はダイオードレーザ(例、830nm)を挙げることができる。コンピュータ製版技術に適当なレーザシステムとは、市販されており、例えばダイオードレーザシステムCDI Spark(バルコグラフィックス社)を挙げることができ、これは回転円筒ドラム、及びその上の取り付けられたIRアブレーション層を有する感光性印刷版からなる。画像情報は、レイアウトコンピュータからレーザ装置に直接移される。
【0030】
マスクをIRアブレーション層に書き込んだ後、感光性印刷用原版にマスクを介して活性光線を全面照射する。これはレーザシリンダ上において直接行うことも可能であるが、版はレーザ装置から除去し、慣用の平板な照射ユニットで照射するほうが規格外の版サイズに対応可能な点で有利であり一般的である。活性光線としては、150〜500nm、特に300〜400nmの波長を有する紫外線の照射により硬化させる。その光源としては、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ジルコニウムランプ、カーボンアーク灯、紫外線用蛍光灯等が使用できる。照射工程の間、感光性層は前のアブレーション工程で露出した領域において重合し、一方照射光を通さないIRアブレーション層によりなお被覆されているIRアブレーション層領域では重合は起こらない。EP−A767407号公報に記載されているように、化学線の照射は、慣用の真空フレームで酸素を除去して行うことも可能であるが、減圧なしに大気酸素の存在下に行うことが有利である。
【0031】
その後、照射された版は現像され、印刷版を得る。現像工程は、慣用の現像ユニットで実施することができる。感光性樹脂層が水現像タイプの場合の現像液としては、水または水/アルコール混合物を用い、界面活性剤等を含有しても良い。。なお現像液は25〜40℃で用いられることが好ましい。現像の間に、感光性層の非重合領域及びIRアブレーション層の残留部は除去される。IRアブレーション層を1種の溶剤又は溶剤混合物でまず除去し、別の現像剤で感光性層を現像することも可能である。現像工程後、得られた印刷版は乾燥させる。PETベースフィルム付き刷版の典型的な条件は、60〜70℃で15〜60分間である。PETベースフィルム付き印刷版は65℃を超える温度でさえ、寸法安定性の損失無く乾燥させることができ、乾燥時間を短縮できる。幾つかの後処理操作をさらに行うことができる。
【0032】
本発明感光性印刷用原版は優れた可撓性を示す。これはIRアブレーション層において皺、クラッキングの発生無く、曲げ、伸ばしすることができる。このことは問題を起こさずにレーザドラムに版を取り付けたり、はずしたりすることができることを意味する。さらに、この版は、従来の印刷版に比較してIRレーザ照射に遙かに高感度である。
【0033】
【発明の実施の形態】
本 発明の感光性印刷用原版を得るための一実施態様としては、例えば125μm厚みからなるポリエステル系フィルムを準備し、前述に記載のアブレーション層用コート液を105℃3分でコート・乾燥処理しアブレーション層厚み約4μmの薄層を有するカバーフィルムを作成する。次に250μm厚みのポリエチレンテレフタレートフィルムにポリエステル系接着剤が塗布された支持体を準備し、本発明の感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂層を例えば熱プレス、注型、溶融押出しなど任意の方法により所望厚みの感光性樹脂積層体を得ることができる。次にこの原版を用いて評価パターンのデジタルデータをアブレーション層に記録し、露光・硬化および現像し印刷版を得て、印刷する。
これらの作業で本発明感光性印刷用原版は、従来のものに比べ減圧なしに均一な活性光線露光を行ない、優れた画像再現性を示す印刷用原版を得ることができる。
【0034】
【実施例】
以下、本発明を実施例を用いて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお実施例中、部とあるのは重量部を意味する。また、実施例中における評価方法は、次に述べる方法による。
1)感光性樹脂の流動性の評価:濃縮機より吐出された樹脂の流動性を肉眼で観察した。
2)印刷版の作成:照度20〜30w/m2のランプ(三菱電器(株)製)を有する露光機(日本電子精機(株)製)を用いて露光4分、平台式現像機(日本電子精機社製)を用いて液温25℃で現像し印刷版を作成した。
3)感光性樹脂層の残存溶剤含有率は水分含有率と低級脂肪族アルコール含有率の和で表わされ、実施例中の測定は以下の装置・条件で行なった。
▲1▼水分含有率 :
水分気化装置(平沼産業株式会社製EV−6型)N2 0.3L/min
自動水分測定装置(平沼産業株式会社製AQV−1型)
試料;400mg〜500mg
▲2▼低級脂肪族アルコール含有率:
ガスクロマトグラフ(柳本製作所G−180型)He1.0kg/cm2
カラム;Tenax−GC(ジーエルサイエンス(株)製)カラム温度70℃設定
試料;適当な溶媒に溶かしてガスクロマトグラフ分析の試料とする。溶媒には測定成分を含まない適性なものを使用する。以下の実施例中のメタノール量の分析にはエタノールを溶媒とし、測定をおこなった。
【0035】
参考例1<IRアブレーション層(I)の作製>
純水829部にゴーセノールGH−23(日本合成化学工業(株)製ケン化度87〜88%)を25部添加し、90℃で1時間撹拌した。次に室温まで冷却した後、この水溶液にカーボンブラック BONJET CW-1を28部、ポリエチレングリコール#600を20部とSE−270(三洋化成工業(株)製ポリエチレンソルビトール純分85%)10部とエパン740(第1工業製薬(株)製)0.06部をゆっくり撹拌下に添加し、更に30分間撹拌した。次にこの溶液を毎分6mの速度で100μm厚のケミカルマットフィルム(東洋クロス(株)製 TC−5002)上にリバースロールでコートし、風速0.5m/分の乾燥機で105℃×3分乾燥させた。このようにして得られたIRアブレーション層は、4μmの厚みであった。
【0036】
実施例1
ε−カプロラクタム500重量部、N,N’−ビスアミノプロピルピペラジンとアジピン酸とのナイロン塩450重量部、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンとアジピン酸のナイロン塩50部とを重合せしめて、比粘度2.40の3級窒素原子を有するポリアミドを得た。このようにして得られたポリアミド55部をメタノール200部、水24部に溶解し、この溶液にメタクリル酸3部、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルとアクリル酸35モル%及びメタクリル酸65モル%との反応物36部、N−エチル−P−トルエンスルホンアミド5部、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.1部、ベンジルジメチルケタール1部を加え、感光性樹脂組成物溶液を得た。この溶液を濃縮機に送り感光性樹脂層の残存溶剤含有率が7%、メタノールと水の比率が6:4になるよう110℃で濃縮し、接着剤を20μコートした250μのペットフィルムと参考例1のIRアブレーション層を設けたフイルムで挟み込み、110℃で溶融成型して感光性樹脂層の厚みが680μの感光性樹脂原版を作成した。次いでこの原版よりカバーフィルムを剥離し、IRアブレーション層に画像を記録後減圧なしに活性光線照射をおこなった。感光性印刷原版はインカールなく均一に露光することができた。25℃の中性水で1分30秒間現像し、70℃で10分間乾燥した。得られた感光性樹脂の感度は15段、樹脂硬度はショアーDで60であり、満足できるものであった。
【0037】
比較例1
実施例1において感光性樹脂層の残存溶剤含有率が12%、メタノールと水の比率が6:4になるよう110℃で濃縮した以外はすべて同様にして溶融成型した。得られた感光性印刷用原版を減圧なしに活性光線照射を行なったところインカールをおこし均一に露光できなかった。
【0038】
比較例2
実施例1において感光性樹脂層の残存溶剤含有率が2%、メタノールと水の比率が3:7になるよう110℃で濃縮した以外はすべて同様にして溶融成型しようとしたが流動性が低く、濃縮機から感光性樹脂が出てこなかった。
【0039】
実施例2
実施例1において光硬化性不飽和化合物としてトリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテルとアクリル酸65モル%及びメタクリル酸35モル%との反応物を用いた。感光性樹脂層の残存溶剤含有率が6%、メタノールと水の比率が6:4になるよう110℃で濃縮した以外は全て実施例1と同様にして感光性樹脂組成物を作成し、レリーフを作成した。得られた感光性印刷原版はインカールがなく現像時間は1分30秒であった。感度は14段で樹脂硬度はショアーDで55°であり、満足できるものであった。
【0040】
実施例3
2−メチルペンタメチレンジアミン 4部、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)ピペラジン14部をメタノールに溶解し、ポリエチレングリコール(平均分子量600)600部とヘキサメチレンジイソシアネート370部と反応させて末端に実質的に両末端にイソシアネート基を有するウレタンオリゴマーを82部をジアミンの溶液に攪拌下に徐々に添加した。両者の反応は10分間で完了した。この溶液をメタノールを蒸発除去後、減圧乾燥して得られた重合体は、主鎖にポリエチレングリコール鎖を50%含有し、比粘度が1.55であった。得られた重合体55部をメタノール200部、水36部に溶解し、アジピン酸3.1部を加えて溶解した。この溶液に実施例2で使用したトリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテルとアクリル酸25モル%及びメタクリル酸75モル%との反応物34部、N−エチル−P−トルエンスルホンアミド5部、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.1部、ベンジルジメチルケタール1部を加えて感光性樹脂組成物を作成した。この溶液を濃縮機に送り感光性樹脂層の残存溶剤含有率が4%、メタノールと水の比率が6:4になるよう110℃で濃縮した以外は実施例1と同様にしてレリーフを作成した。得られた感光性印刷原版はインカールがなく現像時間は3分であった。得られた感光性樹脂の感度は15段、樹脂硬度はショアーDで30°であり、満足できるものであった。
【0041】
【発明の効果】
以上、かかる構成よりなる本発明感光性印刷用原版は、感光性樹脂の含有残存溶剤により成型時の感光性樹脂の流動性が良く、同時に活性光線照射時のインカールのない感光性印刷用原版が得ることが可能となる。これにより画像再現性の優れたCTP版を得ることができるので、産業界に寄与すること大である。
Claims (2)
- 少なくとも(A)支持体、(B)アンモニウム塩型三級窒素原子含有ポリアミド又はアミド結合を有しないジアミンと有機ジイソシアネート化合物の付加重合体をポリマー成分とする感光性樹脂層、(C)カーボンブラックを赤外線吸収物質とするIRアブレーション層を有する感光性凸版印刷用原版であって、濃縮・溶融成型した前記(B)感光性樹脂層に含まれる水とメチルアルコールからなる残存溶剤含率が4〜7%の範囲であることを特徴とする感光性凸版印刷用原版。
- (B)感光性樹脂層に含まれる残存溶剤が、 水とメチルアルコールからなり、メチルアルコールと水の比率が2/8〜8/2である請求項1記載の感光性凸版印刷用原版。
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