JP4051253B2 - 木質感に優れた塩化ビニル樹脂成形品及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、木質感に優れた塩化ビニル樹脂成形品及びその製造方法に関するものであり、より詳細には、塩化ビニル樹脂成形体表面に、粗面の表面層を形成することにより木質感を発現させた塩化ビニル樹脂成形品及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
木目模様などの木質感を与える外観を有する合成樹脂成形品として、成形品上に印刷シートをラミネートしたり、或いは木目模様を直接印刷したものが、従来より知られている。
また、合成樹脂の基材上に、着色ペレットを混合した木目模様層を積層した成形品が提案されている(特許文献1参照)。
さらに、エンボス加工、サンドプラス加工或いはサンディング研削加工によって合成樹脂成形品表面に凹凸を形成しているものもある(特許文献2〜5参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開2000−94595号公報(特許請求の範囲、図1)
【特許文献2】
特開平10−272695号公報(特許請求の範囲、図1)
【特許文献3】
特開2001−96514号公報(請求項5、実施例)
【特許文献4】
特開昭62−82019号公報(特許請求の範囲)
【特許文献5】
特開2000−141326号公報(請求項16、図1)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、印刷シートのラミネート或いは直接印刷により木目模様が表面に形成された成形品、及び特許文献1のように、着色ペレットが混合された木目模様層を表面に有する成形品では、成形品表面は平滑面となり、木質感という点で未だ満足し得るものではない。
また、特許文献2〜5に記載の方法では、成形品表面が手触り感、風合いが天然木に近いものとなるものの、何れも後加工によるため、高価な特別の装置が必要となり、コスト高を招くという問題がある。
【0005】
従って本発明の目的は、後加工によらず、格別の装置を用いることなく、成形と同時に、手触り、風合いなど天然木に近い外観及び触感、即ち木質感を有する合成樹脂成形品を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、塩化ビニル樹脂からなる基材と、該基材表面に形成された表面層とからなる塩化ビニル樹脂成形品において、
前記表面層は、塩化ビニル樹脂に加えて、数平均分子量が30万〜500万のポリ(メタ)アクリル酸エステルを塩化ビニル樹脂100重量部当り5乃至30重量部の量で含有し且つ2.0μm以上の平均表面粗さRa(JIS−B0601)を有していることを特徴とする木質感に優れた塩化ビニル樹脂成形品が提供される。
【0007】
本発明の上記塩化ビニル樹脂成形品は、
1.前記表面層は、2.0乃至4.0μmの平均表面粗さRaを有していること、
2.前記表面層は50乃至500μmの厚みを有していること、
3.前記表面層は、塩化ビニル樹脂100重量部当り3乃至50重量部の量で充填材を含有していること、
4.共押出成形によって製造されること、
が好ましい。
【0008】
上記塩化ビニル樹脂成形品は、基材となる塩化ビニル樹脂と、塩化ビニル樹脂及び数平均分子量が30万〜500万のポリ(メタ)アクリル酸エステルを塩化ビニル樹脂100重量部当り5乃至30重量部の量で含有する表面層形成用の樹脂組成物とを、共押出成形することにより、塩化ビニル樹脂からなる基材表面に2.0μm以上の平均表面粗さRaを有する表面層を形成することによって製造することができる。
【0009】
上記の製造方法においては、
A.表面層の厚みが50乃至500μmとなるように共押出成形を行うこと、
B.前記表面層形成用樹脂組成物中に、塩化ビニル樹脂100重量部当り3乃至50重量部の量で充填材を配合すること、
C.前記表面層形成用樹脂組成物中に、着色ペレットを配合すること、
が好適である。
【0010】
本発明においては、塩化ビニル樹脂製の基材表面に形成される表面層中に、塩化ビニル樹脂に加えて、数平均分子量が30万〜500万のポリ(メタ)アクリル酸エステルを塩化ビニル樹脂100重量部当り5乃至30重量部の量で配合したことが重要な特徴である。
即ち、表面層中には、該表面層を塩化ビニル樹脂基材と一体化させるために、塩化ビニル樹脂が配合されているが、このような塩化ビニル樹脂に加えて、分子量が一定範囲のポリ(メタ)アクリル酸エステル(例えばポリメタクリル酸メチル)を配合しておくことにより、共押出成形によって、該表面層の表面を平均表面粗さRaが2.0μm以上、特に2.0乃至4.0μmの粗面にすることができる。例えば、ヒノキ、スギなどの木材成形品の平均表面粗さRaは、2.4215〜6.8964μmであり、上記表面層は、このような木材と同等の粗面となっており、木質様の外観及び触感を有している。
【0011】
本発明において、上記のようなポリ(メタ)アクリル酸エステルを一定の範囲で配合することにより、上記のような粗面が形成されるのは、このようなポリマーが塩化ビニル樹脂に比して高い溶融粘度を有しており、この結果、共押出によって表面層を形成する際に高いずりせん断力が発生し、メルトフラクチュア(溶融破断)が生じるためである。即ち、本発明は、ポリ(メタ)アクリル酸エステルの使用により、共押出成形に際して積極的にメルトフラクチュアを発生させ、これによって、天然木材と同等の粗面を有する表面層を形成し、優れた木質感を発現させたものである。
従って本発明では、共押出成形後に、格別の後処理を行わずに、木質感を発現させることが可能となる。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の塩化ビニル樹脂成形品の断面構造を示す図1において、この成形品は、塩化ビニル樹脂製の基材1と、表面層2とからなっている。
【0013】
基材1を構成する塩化ビニル樹脂としては、特に限定されるものではないが、一般に、公知の硬質塩化ビニル樹脂や発泡塩化ビニル樹脂が使用される。発泡塩化ビニル樹脂としては、例えばアゾジカーボンアミドや4,4−オキシビス(ベンゼンスルホニル)ヒドラジド等の発泡剤を塩化ビニル樹脂に配合し、押出発泡されるものが好適である。
勿論、上記塩化ビニル樹脂には、必要により、それ自体公知の樹脂配合剤、例えば熱安定剤、充填剤、滑剤、耐候剤、酸化防止剤、着色剤等が配合されていてもよい。
【0014】
上記の塩化ビニル樹脂製基材1の厚みは、用途等によっても異なるが、一般的には、0.5〜20mm程度である。
【0015】
表面層2は、塩化ビニル樹脂及びポリ(メタ)アクリル酸エステルを含有する。
かかる表面層形成用の塩化ビニル樹脂としては、特に制限はないが、これに配合される各種成分に対する分散性、成形性等を考慮すると、重合度が500乃至1300程度のものが好適である。
【0016】
またポリ(メタ)アクリル酸エステルは、既に述べた通り、共押出成形時にメルトフラクチュアを発生させ、所定の粗面を形成させるために使用されるものである。このような観点から、このポリ(メタ)アクリル酸エステルは、30万〜500万の範囲にあることが必要である。このような分子量のポリ(メタ)アクリル酸エステルを配合することにより、表面層の溶融粘度が基材1の塩化ビニル樹脂に対してかなり高いレベルに上昇し、共押出成形時に高いずり応力が発生し、メルトフラクチュアによる粗面形成が行われる。例えば、分子量が上記範囲よりも小さいと、表面層の溶融粘度が十分に上昇せず、目的とする粗面の形成が困難となる。一方、分子量が 上記範囲よりも大きくなると、溶融粘度の上昇が顕著となり、表面粗さが大きくなりすぎて木材との差が大きくなりすぎ、目的とする木質感を発現させることができなくなってしまう。また、場合によっては成形困難となってしまう。
【0017】
ポリ(メタ)アクリル酸エステルとしては、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチルなどのポリアクリル酸アルキルや、ポリメタクリル酸メチルやポリメタクリル酸エチルなどのポリメタクリル酸アルキルを例示することができるが、本発明において、最も好適に使用されるのは、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)である。
【0018】
さらに、ポリ(メタ)アクリル酸エステルは、塩化ビニル樹脂100重量部当り、5乃至30重量部、特に10乃至20重量部の量で表面層2中に存在していることが必要である。即ち、ポリ(メタ)アクリル酸エステルの量が上記範囲よりも少ないと、表面層の溶融粘度が十分に上昇せず、表面層1の表面は平滑面もしくはそれに近い面となってしまい、木質感を発現させることができない。また、ポリ(メタ)アクリル酸エステルの量が上記範囲よりも多いと、さほど効果はなく、むしろコスト高になってしまう。また場合によっては、天然木材との表面粗さの差が大きくなりすぎ、木質感が損なわれてしまうこともある。
【0019】
また、上記表面層2中には、ポリ(メタ)アクリル酸エステル以外に充填材、例えば炭酸カルシウム、タルク、クレー、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ウォラストナイト等が配合されていることが好ましい。このような充填材の配合により、共押出成形時のメルトフラクチュアによって生じる表面の凹凸が配向し易くなり、表面層2の表面全体にわたって均一に凹凸が配向した粗面を形成することができるからである。このような充填剤の量は、塩化ビニル樹脂100重量部当り3乃至50重量部、特に10乃至20重量部の範囲とするのがよい。
【0020】
さらに、上記表面層2に木目模様を現出させるために、着色ペレットを配合しておくこともできる。このような着色ペレットとしては、前述した塩化ビニル樹脂を、二酸化チタン、カーボンブラック、ベンガラ、オーカー等の着色顔料や、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、焼成クレイ等の体質顔料(これらは充填材としても使用できる)で着色したものを用いることができる。このような着色ペレットは、塩化ビニル樹脂100重量部当り1乃至20重量部、1乃至10重量部の量で配合することができる。
【0021】
また、上記表面層2には、ポリ(メタ)アクリル酸エステルによる粗面形成作用を損なわない範囲において、木粉や塩化ビニル樹脂以外の他の熱可塑性樹脂を配合しておくことも可能である。
【0022】
本発明において、表面層2は、塩化ビニル樹脂製基材1の全面に形成されていてもよいし、その表面の一部にのみ形成されていてもよい。更に図1では、基材1の片面にのみ表面層2が形成されているが、勿論、基材1の両面に表面層2が形成されていてもよい。
【0023】
上記のような組成を有している結果、後述するような共押出成形により形成される表面層2の表面(外部に露出している面)は、平均表面粗さRaが2.0μm以上、特に2.0乃至4.0μmの粗面となっている。既に述べた通り、ヒノキ、スギなどの平均表面粗さRaは、2.4215〜6.8964μmであり、上記表面層2は、このような木材に近い粗面となっており、したがって、優れた木質感が発現しているものである。
【0024】
本発明において、表面層2の厚みは、50乃至500μmの範囲となっていることが好ましい。即ち、表面層2の厚みが上記範囲よりも厚いと、メルトフラクチュアによる凹凸発生現象が内部に移行してしまい、表面に好適な粗面が形成されにくくなってしまう。また、表面層2の厚みが上記範囲よりも薄いと、成形が困難となったり、表面に形成される凹部によって基材1の表面が見えてしまい、この結果、木質感が損なわれてしまうおそれがある。
【0025】
上述した構造を有する本発明の塩化ビニル樹脂成形品は、表面層形成用の樹脂組成物中に、塩化ビニル樹脂に加えて特定の分子量のポリ(メタ)アクリル酸エステルを一定量加えておくことを除けば、それ自体公知の共押出成形法によって製造することができる。
【0026】
即ち、基材形成用の塩化ビニル樹脂と、前述した組成を有する表面層形成用の樹脂組成物とを、それぞれ別の押出機で溶融混練し、次いで、多層多重ダイを通して、金型内に共押出しすることにより、本発明の塩化ビニル樹脂成形品を得ることができる。
即ち、上記の共押出成形により、成形と同時に表面層には、木材に近い粗面が形成されるため、木質感を発現するために、格別の後加工を行う必要は全くないのである。
【0027】
また、既に述べた通り、表面層形成用の樹脂組成物中に、所定量の充填材を配合しておくことにより、凹凸が均一に配向した粗面を形成することができ、着色ペレットを配合しておくことにより、表面層に木目模様を現出させることができる。
さらに、表面層の厚みが50乃至500μmの範囲になるように共押出を行うことにより、確実に木材に近い粗面を形成することができる。
【0028】
【実施例】
(実験例1)
下記の処方により、基材層形成用の塩化ビニル樹脂組成物及び表面層形成用の樹脂組成物を調製した。
基材層
塩化ビニル樹脂(分子量1000) 100重量部
安定剤(Ca/Zn、ワンパック品) 4.1重量部
加工助剤(PMMA) 1重量部
強化剤(アクリル系ゴム) 6重量部
炭酸カルシウム 15重量部
表面層
塩化ビニル樹脂(分子量1000) 100重量部
安定剤(Ca/Zn、ワンパック品) 4.2重量部
PMMA(分子量:200万) 表1に示す量
強化剤(アクリル系ゴム) 4重量部
炭酸カルシウム 10重量部
【0029】
上記で調製された各組成物を、それぞれ別の押出機で溶融混練し、共押し出しを行って、基材層厚みが1.7mm、及び表面層厚みが300μmの成形品を製造した。尚、表面層形成用組成物については、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)の量を表1に示すように種々変更した。
得られた成形品の表面層における平均表面粗さRaを、JIS−B0601に準じて表面粗さ計を用いて測定した。また表面層の外観が木質感を有するか否かを目視で評価し、その結果を表1に示した。
【0030】
【表1】
【0031】
(実験例2)
下記処方で調製された表面層形成用樹脂組成物を用いた以外は、実験例1と同様にして、基材層厚みが1.7mm、及び表面層厚みが300μmの成形品を製造し、その外観及び表面粗さを評価した。その結果を表2に示す。
表面層
塩化ビニル樹脂(分子量1000) 100重量部
安定剤(Ca/Zn、ワンパック品) 4.2重量部
PMMA(分子量:200万) 表2に示す量
強化剤(アクリル系ゴム) 4重量部
表2に示す充填材 10重量部
【0032】
【表2】
【0033】
(実験例3)
下記処方で調製された表面層形成用樹脂組成物を用いた以外は、実験例1と同様にして、基材層厚みが1.7mm、及び表3に示す厚みの表面層を有する成形品を製造し、その外観及び表面粗さを評価した。その結果を表3に示す。
表面層
塩化ビニル樹脂(分子量1000) 100重量部
安定剤(Ca/Zn、ワンパック品) 4.2重量部
PMMA(分子量:200万) 5重量部
強化剤(アクリル系ゴム) 4重量部
充填材(炭酸カルシウム) 10重量部
【0034】
【表3】
【0035】
【発明の効果】
本発明によれば、表面層形成用の樹脂組成物中に、塩化ビニル樹脂に加えて、一定の分子量を有するポリ(メタ)アクリル酸エステルを適当量配合しておくことにより、塩化ビニル樹脂成形品の表面に、後加工を行うことなく、共押出成形と同時に、木質感に優れた粗面を形成することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の塩化ビニル樹脂成形品の層構造を示す断面図。
【符号の説明】
1:塩化ビニル樹脂製基材層
2:表面層
Claims (9)
- 塩化ビニル樹脂からなる基材と、該基材表面に形成された表面層とからなる塩化ビニル樹脂成形品において、
前記表面層は、塩化ビニル樹脂に加えて、数平均分子量が30万〜500万のポリ(メタ)アクリル酸エステルを塩化ビニル樹脂100重量部当り5乃至30重量部の量で含有し且つ2.0μm以上の平均表面粗さRa(JIS−B0601)を有していることを特徴とする木質感に優れた塩化ビニル樹脂成形品。 - 前記表面層は、2.0乃至4.0μmの平均表面粗さRaを有している請求項1に記載の塩化ビニル樹脂成形品。
- 前記表面層は50乃至500μmの厚みを有している請求項1に記載の塩化ビニル樹脂成形品。
- 前記表面層は、塩化ビニル樹脂100重量部当り3乃至50重量部の量で充填材を含有している請求項1に記載の塩化ビニル樹脂成形品。
- 共押出成形により得られたものである請求項1に記載の塩化ビニル樹脂成形品。
- 基材となる塩化ビニル樹脂と、塩化ビニル樹脂及び数平均分子量が30万〜500万のポリ(メタ)アクリル酸エステルを塩化ビニル樹脂100重量部当り5乃至30重量部の量で含有する表面層形成用の樹脂組成物とを、共押出成形することにより、塩化ビニル樹脂からなる基材表面に2.0μm以上の平均表面粗さRaを有する表面層を形成することを特徴とする木質感に優れた塩化ビニル樹脂成形品の製造方法。
- 表面層の厚みが50乃至500μmとなるように共押出成形を行う請求項6に記載の製造方法。
- 前記表面層形成用樹脂組成物中に、塩化ビニル樹脂100重量部当り3乃至50重量部の量で充填材を配合する請求項6に記載の製造方法。
- 前記表面層形成用樹脂組成物中に、着色ペレットを配合する請求項6に記載の製造方法。
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