JP4050864B2 - 塩化カルシウム水溶液の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は高濃度の塩化カルシウム水溶液を効率よく製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来塩化カルシウムは、アンモニア・ソーダ工程における重曹分離母液に含まれる塩化アンモニウムと石灰乳を反応させる方法、または重曹分離母液に塩化ナトリウムを加えることによって、固形物として取り出した塩化アンモニウムケークと石灰乳を反応させる方法、あるいは塩酸と石灰石とを反応させる方法で製造されている。
【0003】
塩化アンモニウムと反応させる石灰乳は、一般的に生石灰をスレーカーもしくは粉砕機などで消和用水と反応させることにより製造される。製造される石灰乳は、石灰乳製造工程で濃度を上げると粘度が高くなり、石灰乳製造工程での取り扱いが難しくなる為、一般的には粘度を考慮した濃度で制御されており、その固形物濃度は通常20〜23wt%程度である。その為、石灰乳と塩化アンモニウムとの反応後に得られる塩化カルシウム水溶液は濃度が薄く、一般に市場で流通している約35wt%の液状製品とする為には後工程で更に濃縮する必要があった。よって、石灰乳と塩化アンモニウムとの反応後に得られる塩化カルシウム水溶液の濃度は、後工程で濃縮する加熱用蒸気などの熱源使用量に大きな影響を与えるため、より高濃度にすることが望まれていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
これを解決する有効な手段として、▲1▼生石灰と塩化アンモニウムとを粉砕しながら反応させる方法(特開昭60−5023号公報)や、▲2▼生石灰の消和用水として塩化カルシウムを含む工程液を使用する方法(特開昭52−101694号公報)などが報告されている。しかし、▲1▼の方法では粉砕動力がかかる。また、製造される石灰乳は一般に塩化カルシウム水溶液の製造のみでなく、排煙脱硫等他の用途にも使用されることが多いが、▲2▼の方法では石灰乳に塩素イオンが含まれることになる。上記用途に使用される石灰乳には、塩素イオンが含まれていないことが望ましく、塩化カルシウム水溶液の製造以外に石灰乳を使用している場合には、塩化カルシウム水溶液製造用の石灰乳製造ラインとそれ以外の用途用の石灰乳製造ラインとが必要になり、多大な設備投資が必要となるなどの課題があった。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決する為、鋭意努力した結果、塩化アンモニウムと反応させる前に石灰乳を濃縮することにより、石灰乳製造工程での粘度の上昇による取り扱いの悪化を防止し、製造コストの低減及び生産効率の向上を達成し、且つ多大な設備投資を要することなく高濃度の塩化カルシウム水溶液を製造できることを見出した。
【0006】
即ち、本発明は石灰乳と塩化アンモニウムを反応させる塩化カルシウム水溶液の製造方法において、該石灰乳として固形物濃度を25wt%以上に濃縮した石灰乳を用い、反応後の塩化カルシウム水溶液として、濃度25wt%以上の塩化カルシウム水溶液を得ることを特徴とする塩化カルシウム水溶液の製造方法である。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明では塩化アンモニウムと反応させる前に石灰乳を濃縮し、反応系内に持ち込む水分を減少させることを特徴としている。反応系内に持ち込む水分を減少させることにより、反応後に得られる塩化カルシウム水溶液の濃度を上げることができ、塩化カルシウム水溶液の濃縮に必要な加熱蒸気などの使用量を抑えることができると共に、濃縮装置での生産性が向上できる。
【0008】
また、この方法によれば、石灰乳を製造した後、塩化アンモニウムと反応させる直前に石灰乳を濃縮させる為、既存の石灰乳製造工程を変更することなく使用することが出来、石灰乳製造工程での粘度の上昇による取り扱いの悪化を防ぐ事が出来る。
【0009】
濃縮前の石灰乳は、生石灰をスレーカーもしくは粉砕機などで消和用水と反応させる等の一般的な方法で製造すればよい。
【0010】
石灰乳の濃縮は、スラリーの濃縮方法として公知の方法により行うことができ、石灰乳の濃縮に使用する装置等により本発明が限定されるものではないが、濃縮効率などからフィルタープレスなどのろ過装置や、デカンターなどの遠心沈降機などが好ましい。更には、コスト面、石灰乳の固形物濃度の制御の容易さの点から、特にデカンターなどの遠心沈降機を使用することが好ましい。
【0011】
本発明で使用する濃縮した石灰乳は、濃縮後の固形物濃度が25wt%以上であることが好ましい。固形物濃度が薄いと得られる塩化カルシウム水溶液の濃縮に必要な加熱蒸気などの使用量低減の効果が少なくなる。また、固形物濃度が高すぎると反応液中での石灰乳の分散が困難となり、塩化アンモニウムとの反応に時間がかかり、単位時間当りの塩化カルシウム水溶液の生産性が低下することなどから、固形物濃度は25〜65wt%であることがより好ましく、更には30〜60wt%の濃度範囲が望ましい。
【0012】
塩化アンモニウムと濃縮した石灰乳の反応は、塩化アンモニウムとしてアンモニア・ソーダ工程における塩化アンモニウムを含んだ重曹分離母液、または重曹分離母液に塩化ナトリウムを加えることによって固形物として取り出した塩化アンモニウムケークを用い、反応容器中で攪拌しつつ行えばよい。このとき、塩化アンモニウムが完全に反応するよう、過剰量の石灰乳、好ましくは塩化アンモニウム1molに対し、水酸化カルシウムが0.5molを超え1.0mol以下となる範囲、を用いることが好ましい。塩化アンモニウムとしては、反応系内に持ち込まれる水分量が少ないことから、重曹分離母液から固形物として取出した塩化アンモニウムケークを用いることが好ましい。また反応温度は、60〜90℃の範囲であることが好ましい。
【0013】
反応容器としては通常の攪拌機付きのタンク、あるいは粉砕機能を有した反応器などが使用できる。
【0014】
また、塩化アンモニウムと濃縮した石灰乳の反応はバッチ法、または連続法の何れによってもよい。
【0015】
反応後の液はこれまでの塩化カルシウム水溶液の製造方法と同様に、過剰の石灰乳を沈降分離・遠心分離・ろ過等により分離し、発生したアンモニアを蒸留等で除去後、希望する塩化カルシウムの濃度まで濃縮または希釈すれば良い。
【0016】
反応後の塩化カルシウム水溶液の濃度は25wt%以上であることが好ましい。塩化カルシウム水溶液の濃度が薄いと、得られる塩化カルシウム水溶液の濃縮に必要な加熱蒸気などの使用量低減の効果が少なくなる。また、濃度が高すぎると、温度低下時に凝固してしまうことなどから、反応後の塩化カルシウム水溶液の濃度は25〜40wt%であることがより好ましい。
【0017】
反応後の塩化カルシウム水溶液の濃度は、反応に用いる石灰乳の固形物濃度を変えることにより任意に変える事が出来る。
【0018】
石灰乳の固形物濃度は、必要に応じて、石灰乳の濃縮度を調整すること、高濃度に濃縮した石灰乳を濃縮前の石灰乳や水または石灰乳を濃縮した際のろ液と混合することなどにより変えればよい。
【0019】
【実施例】
本発明を更に具体的に説明する為、以下に実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0020】
実施例1
固形物濃度約22wt%の石灰乳を2000Gの遠心効果のデカンターで濃縮し、固形物濃度約52wt%の石灰乳を得た。
【0021】
この濃縮した石灰乳170gと濃縮前の石灰乳450gを邪魔板付きの2Lの反応器に入れ、固形物濃度約30wt%の石灰乳とした。これにアンモニア・ソーダ法から得られる水分約18wt%の塩化アンモニウムケーク290gを投入し、65℃で10分攪拌した結果、塩化カルシウム濃度が約28wt%の上澄液が得られた。
【0022】
これを、300kPa蒸気を熱源とした蒸発缶で塩化カルシウムの濃度を40wt%まで濃縮した所、蒸気の使用量は、40wt%塩化カルシウム水溶液1Lに対し0.7kgであった。
【0023】
比較例1
実施例1と同様の条件で、濃縮前の固形物濃度約22wt%の石灰乳840gとアンモニア・ソーダ法から得られる水分約18wt%の塩化アンモニウムケーク290gを反応させた所、塩化カルシウム濃度が約22wt%の上澄液が得られた。
【0024】
これを実施例1と同様に、蒸発缶で塩化カルシウムの濃度を40wt%まで濃縮した所、蒸気の使用量は、40wt%塩化カルシウム水溶液1Lに対し1.5kgであった。
【0025】
実施例2
固形物濃度約23wt%の石灰乳を2500Gの遠心効果のデカンターで濃縮し、固形物濃度約58wt%の石灰乳を得た。
【0026】
この濃縮した石灰乳を邪魔板付きの2Lの反応器に370g、アンモニア・ソーダ法から得られる水分約18wt%の塩化アンモニウムケーク300gを投入し、65℃で30分攪拌した。その結果、塩化カルシウム濃度が約40wt%の上澄液が得られた。
【0027】
この塩化カルシウム水溶液は濃縮する必要がなく、濃縮用の蒸気の使用量は0kgである。
【0028】
実施例3
固形物濃度約20wt%の石灰乳をフィルタープレスで処理し、固形物濃度約60wt%の石灰乳を得た。
【0029】
この濃縮した石灰乳210gと濃縮前の石灰乳300gを容量3Lのボールミルに入れ10分間混合解砕し、固形物濃度約37wt%の石灰乳とした。これにアンモニア・ソーダ法から得られる水分約18wt%の塩化アンモニウムケーク290gを投入し、65℃で20分反応させた。その結果、塩化カルシウム濃度が約32wt%の上澄液が得られた。
【0030】
これを実施例1と同様に、蒸発缶で塩化カルシウムの濃度を40wt%まで濃縮した所、300kPa蒸気の使用量は、40wt%塩化カルシウム水溶液1Lに対し0.4kgであった。
【0031】
【発明の効果】
本発明の塩化カルシウム溶液の製造方法により、石灰乳製造工程での粘度の上昇による取り扱いの悪化の防止、塩化カルシウムの濃縮にかかる加熱蒸気などの使用量の削減、生産効率の向上及び製造コストの低減が可能となった。
【0032】
また、製造される石灰乳を他の用途に使用する場合においても、塩化カルシウム水溶液製造用以外の用途用の石灰乳製造ラインを設ける必要がなく、多大な設備投資が不要である。
Claims (4)
- 石灰乳と塩化アンモニウムを反応させる塩化カルシウム水溶液の製造方法において、該石灰乳として固形物濃度を25wt%以上に濃縮した石灰乳を用い、反応後の塩化カルシウム水溶液として、濃度25wt%以上の塩化カルシウム水溶液を得ることを特徴とする塩化カルシウム水溶液の製造方法。
- 濃縮した石灰乳の固形物濃度が25〜65wt%である請求項1記載の製造方法。
- 反応後の塩化カルシウム水溶液の濃度が25〜40wt%となるように行う請求項1又は2記載の製造方法。
- 生石灰と水を反応させて得られた固形物濃度が20〜23wt%の石灰乳を濃縮して固形物濃度25wt%以上とし、該濃縮された石灰乳と塩化アンモニウムを反応させて、濃度25wt%以上の塩化カルシウム水溶液を得ることを特徴とする塩化カルシウム水溶液の製造方法。
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