JP4049600B2 - 造膜助剤及びこれを含有する水性組成物 - Google Patents

造膜助剤及びこれを含有する水性組成物 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、生体への毒性、臭気が少なく、安全性が高く、低粘度で、水性組成物との相溶性等を兼ね備えた、水性組成物用の造膜助剤に関する。
また、造膜助剤を含有する、顔料混和性、造膜性、凍結融解安定性、貯蔵安定性、及び得られる皮膜の優れた特性等を兼ね備えた水性組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、塗料、コーティング剤、シーリング剤等は有機溶剤型が主流であったが、塗装時の火災や爆発の危険性、労働安全衛生、環境汚染の低減、省資源化等の観点から水性への移行が強く望まれている。この塗料の水系化に伴い、溶剤系では必要のない造膜助剤が必要となり、塗料分野ではイソ酪酸エステル、ブチルセロソルブ、セロソルブアセテート等が使用されてきたが、これらの造膜助剤は加水分解性、臭気、毒性等について改善が求められており、その代替化が望まれている。これらの代替物質への要求性能としては、造膜性、顔料混和性、耐加水分解性が良く、低毒性、安全性(不燃性又は高引火点)、低臭気性であることが挙げられる。
【0003】
このような代替物質としては、特開平4−55479号公報に見られるようなジプロピレングリコール誘導体があるが、これらの物質は毒性及び安全性と低臭気性は良好とはいえ、造膜性について改善が求められている。
また造膜性において極めて高い性能を有する代替物質としてはコハク酸やアジピン酸等のメチルエステルがあるが、アクリル水性分散体に添加後、エステルの加水分解により著しいpH低下を引き起こし、組成物の貯蔵安定性を損なうため使用されていない。
【0004】
コハク酸やアジピン酸のメチルエステルの加水分解を抑制する方法としては、特開昭57−34166号公報やPoly.Mater.Sci.Eng.,Vol.58,1125〜1132(1988)に見られるように、エステル部分を分岐アルキルにする方法があるが、充分な改良は得られていない。
特開平8−157757号公報には、生体への毒性が少ない造膜助剤としてpHを調整したグルタル酸エステルが提案されており、これを配合したラテックスは造膜性能及び貯蔵安定性に優れるとされている。
【0005】
また、特開平6−80904号公報には、安全性及び水性エマルジョンとの相溶性に優れた造膜助剤としてアルキレンオキシドのモノエーテルが提案されており、これを配合した樹脂エマルジョンは凍結融解安定性、造膜性、及び皮膜特性に優れるとされている。
しかし、生体への毒性、臭気が少なく、安全性が高く、低粘度で、水性組成物との相溶性等を兼ね備えた造膜助剤は未だ提案されていない。また、造膜助剤を含有する、顔料混和性、造膜性、凍結融解安定性、貯蔵安定性、及び得られる皮膜の優れた特性等を兼ね備えた水性組成物は未だ提案されていない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、生体への毒性、臭気が少なく、安全性が高く、低粘度で、水性組成物との相溶性等を兼ね備えた、水性組成物用の造膜助剤を提供することを目的とする。また、造膜助剤を含有する、顔料混和性、造膜性、凍結融解安定性、貯蔵安定性、及び得られる皮膜の優れた特性等を兼ね備えた水性組成物を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定の構造を持つトリカルボン酸エステルが、その目的に適合することを見い出し、この知見に基づいて本発明を完成した。
即ち、本発明の第1は、式(1)で表される、水性組成物用の造膜助剤である。
【0008】
【化2】
Figure 0004049600
【0009】
〔式中、R1、R2及びR3はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、置換されていないか或いは炭素数1〜18のアルキル基又は炭素数1〜8のアルコキシ基で置換されている炭素数5〜20のシクロアルキル基、もしくは置換されていないか或いは炭素数1〜8のアルコキシ基で置換されている炭素数6〜28のアリール基を表す。上記のアルキル基及びアルコキシ基のアルキル部は、直鎖状でもよいし分枝状でもよい。p,r,sは0〜9の整数、qは1〜9の整数で、1≦p+q+r+s≦9かつ{r<sまたは(r=sかつp≦q)}〕
【0010】
本発明の第2は、p+q+r+s=3である本発明第1の水性組成物用の造膜助剤である。
本発明の第3は、p=1、q=2、r=s=0である本発明第1の水性組成物用の造膜助剤である。
また、本発明の第4は、水溶性及び/又は水分散性組成物の固形分100質量部に対し、本発明第1〜3のいずれかの造膜助剤1種以上を0.1〜30質量部含有する水性組成物である。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明の水性組成物用の造膜助剤は、(1)式で表される。
【0012】
【化3】
Figure 0004049600
【0013】
〔式中、R1、R2及びR3はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、置換されていないか或いは炭素数1〜18のアルキル基又は炭素数1〜8のアルコキシ基で置換されている炭素数5〜20のシクロアルキル基、もしくは置換されていないか或いは炭素数1〜8のアルコキシ基で置換されている炭素数6〜28のアリール基を表す。上記のアルキル基及びアルコキシ基のアルキル部は、直鎖状でもよいし分枝状でもよい。p,r,sは0〜9の整数、qは1〜9の整数で、1≦p+q+r+s≦9かつ{r<sまたは(r=sかつp≦q)}〕
【0014】
この化合物において、脂肪族直鎖状炭素鎖に結合する3つのエステル基が3つの隣接する炭素原子に結合することはない。従って、この化合物の製造方法はどんな方法でもよいが、例えばトリカルボン酸とアルコールから直接エステル化により製造する場合においても、立体障害が小さく、3つのカルボキシル基の反応性の差が小さいため、3ヶ所でエステル化反応が進行し、トリエステルが容易に得られる。
【0015】
p+q+r+sの値は、9以下で水溶性及び/又は水分散性組成物との相溶性が良い。水溶性及び/又は水分散性組成物との相溶性の観点から、1〜5であることが好ましく、3であることがより好ましい。また、水性組成物から得られる皮膜の特性(ヒビ割れ、平滑性)の観点から、p=1、q=2、r=s=0であることが更に好ましい。
1、R2及びR3はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、置換されていないか或いは炭素数1〜18のアルキル基又は炭素数1〜8のアルコキシ基で置換されている炭素数5〜20のシクロアルキル基、もしくは置換されていないか或いは炭素数1〜8のアルコキシ基で置換されている炭素数6〜28のアリール基を表す。上記のアルキル基及びアルコキシ基のアルキル部は、直鎖状でもよいし分枝状でもよい。
【0016】
アルキル基としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、s−ブチル、イソブチル、t−ブチル、ヘキシル、2−エチルヘキシル、イソデシル等、シクロアルキル基としては、シクロペンチル、シクロヘキシル、メチルシクロヘキシル等、またアリール基としては、フェニル等が挙げられる。水性組成物の造膜性の観点から、アルキル基が好ましく、炭素数1〜12のアルキル基が更に好ましい。
【0017】
本発明の造膜助剤の製造方法としては、三塩基酸とアルコールとのエステル化反応、三塩基酸クロライドとアルコールとの反応、及び三塩基酸エステルとアルコールとのエステル交換反応等が挙げられる。
本発明の造膜助剤は、pH調整することなくそのまま使用してもよいが、その1質量%水溶液(または懸濁液)のpHを有機アミンまたは無機アルカリで調整して使用することもできる。この場合pHは、水性組成物の貯蔵安定性の観点から3.5以上12以下に調整することが好ましく、5以上9以下がより好ましい。
【0018】
pH調整に使用する有機アミンとしては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、ピリジン、置換ピリジン、エチレンジアミン等が挙げられ、水性組成物の乾燥性の観点から、特に低沸点のアミンが好ましい。無機アルカリとしては、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の水酸化物、酸化物、炭酸塩等であり、具体例として、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム等を挙げることができる。又、陰イオン交換樹脂等の固体塩基を用いても良い。
【0019】
有機アミン、無機アルカリの使用量は、水性組成物の貯蔵安定性の観点から本発明の造膜助剤に対し質量で0.01%から10%の範囲で用いることが好ましい。処理温度と処理時間は処理前のpHと有機アミン、無機アルカリの使用量により異なるが、10℃から100℃の範囲で1分から数時間で行う。
有機アミン又は無機アルカリによる処理方法としては、回分式、半回分式、連続式のいずれもが可能であるが、固体塩基を管型反応器に充填し、連続的に処理することが効率的である。
【0020】
本発明においてこの造膜助剤の使用量は、水溶性及び/又は水分散性組成物の粘度、MFT(最低成膜温度)等の性質により異なるが、水溶性及び/又は水分散性組成物の固形分に対し0.1〜30質量%の範囲である。使用量が0.1質量%以上で造膜助剤としての効果が十分であり、また30質量%以下で、水溶性及び/又は水分散性組成物の粘度上昇が低く、皮膜形成速度も高い。
また本発明の造膜助剤の添加は、水溶性及び/又は水分散性組成物の重合前でも重合後でも可能である。
【0021】
また、本発明の造膜助剤を主成分としてその性能を損なわない範囲で、アジピン酸エステル、コハク酸エステル、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート等の他のエステル類、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールブチルエーテル、ジプロピレングリコールブチルエーテル等のエーテル類、ベンジルアルコール等のアルコール類、ヘキサン、トルエン、ベンゼン等の炭化水素類を、40質量%以下の範囲で添加して使用することも可能である。
【0022】
本発明の水溶性及び/又は水分散性組成物には、水溶性組成物、水分散性組成物、及び水溶性組成物と水分散性組成物との混合物が含まれ、ビニル系モノマーを重合したものや、 粉末樹脂を水ないしは少量の水性アルコールとの混合物等からなる水性媒体に乳化分散させたもの等の通常使用されているものが挙げられる。
【0023】
更に具体的には、水溶性媒体中で水溶性開始剤及び/又は油溶性開始剤を使用してラジカル重合、アニオン重合、又はカチオン重合されるが、ラジカル重合が好ましい。この際、水溶性還元剤及び/又は油溶性還元剤を使用してもよい。この重合により得られる化合物には、従来公知のポリ(メタ)アクリレート系、ポリビニルアセテート系、酢酸ビニル−アクリル系、酢酸ビニル−VeoVa(混合トリアルキル酢酸ビニルエステル)系、エチレン酢ビ系、シリコーン系、ポリブタジエン系、スチレンブタジエン系、NBR系、ポリ塩化ビニル系、塩素化ポリプロピレン系、ポリエチレン系、ポリスチレン系、塩化ビニリデン系、ポリスチレン−(メタ)アクリレート系、スチレン−無水マレイン酸系等の共重合体等の化合物が挙げられ、シリコーン変性アクリル系、フッ素−アクリル系、アクリルシリコン系、エポキシ−アクリル系等の変性共重合体、架橋性樹脂、コアが架橋しているコア・シェル型樹脂等も含まれ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0024】
これらの重合体粒子径は、造膜性の観点から、0.01μ〜100μが好ましく、0.05μ〜10μが更に好ましい。樹脂固形分は、一般には30〜60質量%である。
水溶性及び/又は水分散性組成物を得るために使用できる単量体は、具体的には、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミド系単量体、シアン化ビニル類等が挙げられる。(メタ)アクリル酸エステルの例としては、アルキル部の炭素数が1〜18の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、アルキル部の炭素数が1〜18の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、エチレンオキサイド基の数が1〜100個の(ポリ)オキシエチレン(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド基の数が1〜100個の(ポリ)オキシプロピレン(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド基の数が1〜100個の(ポリ)オキシエチレンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0025】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸メチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられる。(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシドデシル等が挙げられる。
【0026】
(ポリ)オキシエチレン(メタ)アクリレートの具体例としては、(メタ)アクリル酸エチレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸エチレングリコール、(メタ)アクリル酸ジエチレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸ジエチレングリコール、(メタ)アクリル酸テトラエチレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸テトラエチレングリコール等が挙げられる。(ポリ)オキシプロピレン(メタ)アクリレートの具体例としては、(メタ)アクリル酸プロピレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸プロピレングリコール、(メタ)アクリル酸ジプロピレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸ジプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸テトラプロピレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸テトラプロピレングリコール等が挙げられる。
【0027】
(ポリ)オキシエチレンジ(メタ)アクリレートの具体例としては、ジ(メタ)アクリル酸エチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸ジエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸トリエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸テトラエチレングリコール等が挙げられる。(メタ)アクリルアミド系単量体としては、例えば(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等があり、シアン化ビニル類としては、例えば(メタ)アクリロニトリル等がある。
【0028】
更にその他の(メタ)アクリル酸エステルの例としては、ジ(メタ)アクリル酸ピロピレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸1,3−ブチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸1,4−ブチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸1,6−ヘキサングリコール、トリ(メタ)アクリル酸ペンタエリスリトール、トリ(メタ)アクリル酸トリメチロールプロパン等がある。
【0029】
また上記以外の具体例として、例えばエチレン、プロピレン、イソブチレン等のオレフィン類、ブタジエン等のジエン類、塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロオレフィン類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、n−酪酸ビニル、安息香酸ビニル、p−t−ブチル安息香酸ビニル、ピバリン酸ビニル、2−エチルヘキサン酸ビニル、バーサチック酸ビニル(混合トリアルキル酢酸ビニルエステル)、ラウリン酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル類、酢酸イソプロペニル、プロピオン酸イソプロペニル等のカルボン酸イソプロペニルエステル類、エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等のビニルエーテル類、スチレン、α−クロロスチレン、α−メチルスチレン等のα−アルキルスチレン、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、ビニルトルエン等の芳香族ビニル化合物、酢酸アリル、安息香酸アリル等のアリルエステル類、アリルエチルエーテル、アリルグリシジルエーテル、アリルフェニルエーテル等のアリルエーテル類、さらにγ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルジメチルエトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、パーフルオロメチル(メタ)アクリレート、パーフルオロプロピル(メタ)アクリレート、パーフルオロプロピルメチル(メタ)アクリレート、ビニルピロリドン、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸2,3−シクロヘキセンオキサイド、(メタ)アクリル酸アリル、メタクリル酸アシッドホスホオキシエチル、メタクリル酸3−クロロ−2−アシッドホスホオキシプロピル、メチルプロパンスルホン酸アクリルアミド、ジビニルベンゼン等が挙げられる。
【0030】
これらの単量体は1種又は2種以上を用いることができる。また、終始同一組成で重合することも、組成を連続的に変化させて重合することも可能であり、更に異なる組成で数段に分割して重合することも可能である。水溶性組成物と水分散性組成物の混合物の場合には、別々に重合した水溶性組成物と水分散性組成物を混合してもよいし、水溶性組成物の重合に引き続き同じ反応器で水分散性組成物を重合してもよいし、また、水分散性組成物の重合に引き続き同じ反応器で水溶性組成物を重合してもよい。
【0031】
水溶性組成物及び/又は水分散性組成物は、アニオン性、カチオン性、ノニオン性、及び両性の何れであっても良いが、アニオン性又はカチオン性が好ましく、アニオン性であることが更に好ましい。又、特にカルボン酸基を含むことが水溶性を高める観点から好ましい。水溶性組成物及び/又は水分散性組成物にカルボン酸基を持たせるには、重合時に使用する単量体混合物にエチレン性不飽和カルボン酸単量体を混合する。具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、α−クロロアクリル酸、イタコン酸、フマール酸、マレイン酸、無水マレイン酸、クロトン酸、シトラコン酸、メサコン酸及びイタコン酸、フマール酸、マレイン酸の半エステル等が挙げられる。
【0032】
水溶性組成物及び/又は水分散性組成物がカチオン性である場合は、重合に使用する単量体混合物にカチオン基を持つエチレン性不飽和単量体を混合する。カチオン基を持つエチレン性不飽和単量体としては、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル及びその塩、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル及びその塩、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノプロピル及びその塩、ジメチルアミノメチル(メタ)アクリルアミド及びその塩、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド及びその塩、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド及びその塩、ビニルピリジン、ジメチルアミノメチル(メタ)アクリルアミドエピクロルヒドリン付加物のハロゲン化物、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドエピクロルヒドリン付加物のハロゲン化物及びそのアルキルスルホン酸塩、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノメチルエピクロルヒドリン付加物のハロゲン化物、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノプロピルエピクロルヒドリン付加物のハロゲン化物及びそのアルキルスルホン酸塩等が挙げられる。
【0033】
カチオン基を持つエチレン性不飽和単量体は、得られる水溶性組成物及び/又は水分散性組成物の水中での安定性の観点から単量体混合物中0.5質量%〜30質量%で使用されることが好ましく、単量体混合物中1質量%〜20質量%で使用されることが更に好ましい。1質量%以上で水性組成物の下地基材への浸透性がさらに良好となる。
【0034】
本発明の水溶性組成物及び/又は水分散性組成物は、アミノ樹脂を加えることによりアミノ樹脂と架橋させて使用することができる。アミノ樹脂の具体例としては、ジ−、トリ−、テトラ−、ペンタ−、ヘキサ−メチロールメラミン及びそれらのアルキルエーテル化物(アルキルは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル等)、尿素−ホルムアルデヒド縮合物、尿素−メラミン共縮合物等を挙げることができる。これらのうちメラミン樹脂が好ましく、具体的には、三井サイテック(株)製マイコート212(商標)、サイメル254(商標)、サイメル202(商標)、サイメル303(商標)、サイメル325(商標)、サイメル1156(商標)等、三井化学(株)製ユーバン20N(商標)、ユーバン20SB(商標)、ユーバン128(商標)等、住友化学(株)製スミマールM−50W(商標)、スミマールM−40N(商標)、スミマールM−30W(商標)等が適している。
【0035】
本発明の水溶性組成物及び/又は水分散性組成物をアミノ樹脂と架橋させて使用する場合には、充分な架橋強度を得るために、水溶性組成物及び/又は水分散性組成物に水酸基価20mgKOH/g以上の水酸基を含むことが好ましく、25mgKOH/g以上がより好ましく、25mgKOH/g以上、かつ250mgKOH/g以下が更に好ましい。水溶性組成物及び/又は水分散性組成物に水酸基を持たせるには、重合時に使用する単量体混合物に上述の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル等の水酸基を含有する単量体を混合する。なお、水酸基価は、乾燥樹脂のg質量に対する、水酸基と等モルのKOHの固形分質量で示した。
【0036】
水溶性組成物及び/又は水分散性組成物の数平均分子量は1000〜1000000であり、粘度と得られる皮膜の機械的物性の観点から1000〜500000であることが好ましく、4000〜500000であることがさらに好ましい。
本発明の水溶性及び/又は水分散性組成物は、水性媒体中で、懸濁重合、ミクロ懸濁重合、乳化重合、マイクロエマルション重合またはミニエマルション重合により得られる。反応速度を速めるため、重合の際、単量体混合物を水性媒体中へ、乳化剤の存在下、ホモジナイザー等の乳化機により前もって乳化しておくことが好ましい。
【0037】
油溶性開始剤及び油溶性還元剤の重合反応系への添加は、特に制限はなく、通常行われる重合反応における、重合開始剤の添加方法に準じて行うことができるが、特に、前述した、重合の際、単量体混合物を水性媒体中へ、乳化剤の存在下、ホモジナイザー等の乳化機により前もって乳化しておく場合には、この油溶性開始剤及び油溶性還元剤も併用して乳化しておくことが好ましい。
【0038】
本発明で使用する水溶性開始剤としては、水溶性の過硫酸塩、過酸化物、アゾビス化合物等が使用できる。その例として、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素、クメンヒドロペルオキシド、t−ブチルパーオキシマレイン酸、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ニ塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ニ塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ニ塩酸塩、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミド)ジハイドレート等が挙げられる。その使用量は、単量体の総量100質量部に対して通常0.1〜10質量部である。
【0039】
本発明で使用する油溶性開始剤は、ラジカル重合触媒として熱または還元性物質などによってラジカル分解してエチレン性不飽和単量体の付加重合を起こさせるもので、具体的には、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2−シアノ−2−プロピラゾホルムアミド、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、2,2’−アゾビス(2−ヒドロキシメチルプロピオニトリル)、1,1’−アゾビス(1−アセトキシ−1−フェニルエタン)等のアゾ系開始剤や、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイドといった過酸化物系開始剤が挙げられる。より好ましくは、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、3,5,5−トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、メチルアセトアセテートパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、n−ブチル4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、t−ヘキシルハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンビスハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、イソブチルパーオキサイド、ラウロリルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、コハク酸パーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、n−トルオイルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシジカーボネート、ジ−3−メトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、(a,a−ビスネオデカノイルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシピバレート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ビス(t−ブチルパーオキシ)イソフタレート等の過酸化物系開始剤が好ましい。また、これらの2種以上を組み合わせて使用することもできる。その使用量は、単量体の総量100質量部に対して通常0〜10質量部である。
【0040】
本発明に使用する水溶性還元剤としては、鉄(II)やクロムイオン、亜硫酸塩、次亜硫酸塩、ヒドロキシルアミン、ヒドラジン、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート等を挙げることができる。また、これらの2種以上を組み合わせて使用することもできる。その使用量は、単量体の総量100質量部に対して通常0〜10質量部である。
【0041】
本発明に使用する油溶性還元剤としては、n−ブタンチオール、n−ペンタンチオール、n−ヘキサンチオール、n−へプタンチオール、n−オクタンチオール、2−エチルヘキサンチオール、n−ノナンチオール、n−デカンチオール、n−ウンデカンチオール、n−ドデカンチオール、t−ドデカンチオール、ベンゼンチオール、α−トルエンチオール等のチオール類が好ましく、この他に、−SO2H、−NHNH2、−COCH(OH)−等の基を含む油溶性化合物を挙げることができる。また、これらの2種以上を組み合わせて使用することもできる。その使用量は、単量体の総量100質量部に対して通常0〜10質量部である。
【0042】
本発明の水溶性及び/又は水分散性組成物の懸濁重合、ミクロ懸濁重合、乳化重合、マイクロエマルション重合又はミニエマルション重合では重合用乳化剤を利用することが好ましい。水溶性及び/又は水分散性組成物がアニオン性の場合には、アニオン性界面活性剤及び/又はノニオン性界面活性剤を使用する。
【0043】
アニオン性界面活性剤としては、例えば、脂肪酸石鹸、脂肪族又は芳香族アルキルスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルアリール硫酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、リン酸エステル塩等を挙げることができる。また、例えば、三洋化成(株)製エレミノールJS−2、JS−5(商標)、花王(株)製ラテムルS−120、S−180A、S−180(商標)、第一工業製薬(株)製アクアロンHS−10(商標)、旭電化工業(株)製アデカリアソープSE−1025N(商標)、メタクリル酸スルホアルキルエステルの塩、p−スチレンスルホン酸の塩、旭電化工業(株)製アデカリアソープSDX−730、SDX−731、SDX−334(商品名)等のリン酸エステル基を有するアンモニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等の反応性乳化剤を用いることもできる。
【0044】
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、オキシエチレンオキシプロピレンプロックコポリマー、ジエタノールアミン誘導体等を挙げることができる。
また水溶性及び/又は水分散性組成物がカチオン性の場合には、カチオン性界面活性剤及び/又はノニオン性界面活性剤を使用する。カチオン性界面活性剤としては、例えば、ラウリルアミン塩酸塩、アルキルベンジルジメチルアンモニウムクロライド、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、アルキルアンモニウムハイドロオキサイド、ポリオキシエチレンアルキルアミン等を挙げることができる。また、ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、オキシエチレンオキシプロピレンプロックコポリマー等を挙げることができる。
【0045】
これらの界面活性剤の使用量は、水溶性及び/又は水分散性組成物の固形分に対して0.05〜20質量%であることが好ましい。また、上記界面活性剤の中では、反応性乳化剤を使用することが好ましく、この場合その使用量は、乳化力と水溶性及び/又は水分散性組成物から得られる塗膜の強度の観点から水溶性及び/又は水分散性組成物の固形分の0.5〜5質量%が好ましく、1〜3質量%が更に好ましい。
【0046】
本発明の水溶性及び/又は水分散性組成物は、アニオン性であればアルカリ及び/又は有機溶剤の添加によって、カチオン性であれば酸及び/又は有機溶剤の添加によって、重合物の少なくとも一部を可溶化することによって得ることもできる。このような可溶化処理に使用されるアルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸水素ナトリウム、有機アミン類、アンモニア等が挙げられ、特に乾燥後の塗膜の耐水性を向上せしめる観点から、モノエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、N−n−ブチルジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、及びモルホリン、4−モルホリノエタノール等のモルホリン類等が好ましい。この中で揮発性のアルカリ成分としてはアンモニアが好ましい。酸としては、塩酸、硫酸、硝酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、酢酸、乳酸、ヒドロキシ酢酸等が挙げられる。アルカリ又は酸の添加は重合前でも、重合中でも、重合後であっても良い。また可溶化処理において有機溶剤は、アルカリ又は酸の添加だけでは水溶化が不充分であるときに補助的に使用しても良いし、有機溶剤だけで可溶化させても良い。
【0047】
使用される有機溶剤としては、例えばCS−12(チッソ(株)製)、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ベンジルアルコール、グルタル酸ジメチル、グルタル酸イソプロピル等が挙げられる。有機溶剤の添加は、アルカリ又は酸の添加と同様、重合前でも、重合中でも、重合後であっても良い。とくに長期の分散安定性を保つ目的から水溶性及び/又は水分散性組成物を上記のアルカリ成分または酸成分を使用してpHを3〜10の範囲に調整することが好ましい。
【0048】
本発明の水性組成物は、塗料、コーティング剤、シーリング剤等に利用される。具体的には、建築内外装、鋼構造物、建材、モルタル、軽量気泡コンクリートを含む各種コンクリート、プラスチック、自動車・船舶等の金属加工製品等への塗料の下塗り、中塗り、及び上塗り、又は建築仕上げ塗材等の下塗り、中塗り、及び上塗りとして利用されるかあるいは、建材、モルタル、コンクリート、鋼材、自動車、船舶、プラスチック等へ直接塗装されるクリアコート剤、トップコート剤、塗料等として各種用途に利用される。
【0049】
自動車の塗装においては、下塗り及び中塗りを施した塗装板上に、上塗りとして水性メタリックベースを塗装した後、これを硬化せずにウェットオンウェットでクリヤーを重ね塗りし、ベースとクリヤーを合わせて硬化させる、いわゆる2コート1ベーク方式の上塗りベースとして、あるいは、下塗りを施した塗装板上に水性中塗り塗料を塗装し、これを硬化させる前に水性ベース塗料を塗装し、更にその硬化前にクリヤー塗料を塗装し、水性中塗り、水性ベース、及びクリヤーを同時に焼きつける、いわゆる3コート1ベーク方式の中塗り、および上塗りベースとしても利用される。
【0050】
本発明の水性組成物は、そのままで、木材、金属、コンクリート、プラスチック、ペイント塗膜、感熱紙またはその他の種類の基材に、透明で光沢があり、かつ耐汚染性、耐久性、耐摩耗性に優れた皮膜を与えるものである。
また、本発明の水性組成物は、顔料混和性も良好であり、必要に応じて炭酸カルシウム、タルク、クレー、酸化チタン、マイカ粉、パライト等の無機顔料又は着色顔料と混合して使用することができる。
【0051】
更に、本発明の水性組成物には通常塗料等に添加配合される成分、例えば粘性調整剤、pH調整剤、消泡剤(ポリグリコール、脂肪酸エステル、リン酸エステル、シリコンオイル等)、充填剤、分散剤(ピロリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム等)、染料、レベリング剤(ロート油、ジシアンジアミド、尿素等)、耐水化剤(ホルマリン、ヘキサミン、メラミン樹脂、尿素樹脂、グリオキサル等)、離型剤(ステアリン酸カルシウム、パラフィンエマルジョン等)、防腐剤、界面活性剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、難燃剤、有機溶剤、湿潤剤、増粘剤、可塑剤、防錆剤等を配合することは任意である。これらは、例えばアトライター、サンドミルなどの練肉機を使用して分散を行い、所定の粘度になるよう調整を行う。
本発明の水性組成物の塗装には、ロール塗装、カーテンフロー塗装、スプレー塗装、静電塗装等の通常行われている塗装方法が用いられる。
【0052】
次に、実施例及び比較例によって本発明を説明する。実施例及び比較例中の部は質量部を意味する。実施例及び比較例において各種の評価は以下に示す方法で行った。
(1)固形分 :105℃、3時間での不揮発分(質量%)を測定した。
(2)粘度 :B型粘度計((株)トキメック製、モデルBM)を用い、6rpmで測定した。
(3)造膜助剤と水性組成物との相溶性(表中では、「相溶性」と記載):水性組成物について、目視により、下記基準で評価した。
○:均一に混合している。
×:造膜助剤の分離がみられる。
(4)造膜性 :水性組成物について、高林理化(株)製最低成膜温度測定装置を用いてMFTを測定し造膜性を評価した。
(5)低温造膜性:水性組成物を湿潤状態の膜厚250μmでガラス板上に塗布し、直ちに3℃の恒温乾燥器に入れ、造膜状態を下記基準で判定した。
○:均一に造膜、△:一部にひび割れあり、×:全面にひび割れあり
【0053】
(6)塗膜外観 :水性組成物をガラス板上に塗布し室温成膜した塗膜の外観を目視により、下記基準で評価した。
◎:均一で表面平滑性に優れた塗膜を形成している、
○:ひび割れのない均一な塗膜を形成している、
△:わずかにひび割れがおこっている、
×:ひび割れて塗膜にならない
(7)貯蔵安定性:水性組成物を50℃で1ヶ月間保管し、その間の経時的なpH変化を東亜電波工業(株)製pHメーターHM−205により測定し評価した。
(8)凍結安定性:水性組成物をポリ瓶に入れ、−30℃の恒温槽に16時間放置した後、室温に戻した時の水性組成物の外観を観察し、下記基準で評価した。○:凍結して融解した後、もとの状態にもどったもの
×:凍結後室温に戻しても凝固してもとの状態にもどらなかったもの
(9)顔料混和性:水性組成物を目視と触感にて以下の判定基準に従って評価した。
○:つぶが見られない。
△:小さなつぶが見られる。
×:大きなつぶが見られる。
【0054】
【実施例1】
反応容器に、1,3,6−ヘキサントリカルボン酸400部、イソデカノール1044部、及び触媒としてテトライソプロピルチタネート0.4部を仕込み、窒素気流中、140〜230℃で、生成する水を留去しながら6時間攪拌を続けた。
次いで、190〜200℃で最大665Paの減圧下、過剰のアルコールを留去し、100℃で12部の水酸化アルミナマグネシウムにより吸着処理を行った。この後、ろ過して1,3,6−ヘキサントリカルボン酸トリイソデシルを得た。粘度44mPa・s/25℃。イソ酪酸アミル、ブチルセロソルブ、及びセロソルブアセテートに比べ臭気は少なかった。
【0055】
【実施例2】
反応容器に、1,3,6−ヘキサントリカルボン酸400部、2−エチルヘキサノール859部、及び触媒としてテトライソプロピルチタネート0.3部を仕込み、窒素気流中、140〜230℃で、生成する水を留去しながら6時間攪拌を続けた。
次いで、180〜190℃で最大665Paの減圧下、過剰のアルコールを留去し、100℃で10部の水酸化アルミナマグネシウムにより吸着処理を行った。この後、ろ過して1,3,6−ヘキサントリカルボン酸トリ2−エチルヘキシルを得た。粘度42mPa・s/25℃。イソ酪酸アミル、ブチルセロソルブ、及びセロソルブアセテートに比べ臭気は少なかった。
【0056】
【実施例3〜6、比較例1,2】
実施例1の1,3,6−ヘキサントリカルボン酸トリイソデシル、実施例2の1,3,6−ヘキサントリカルボン酸トリ2−エチルヘキシル、又はブチルセロソルブ(水との1:1(質量比)混合物)をアクリル水分散体A(アクリル−スチレン系、MFT50℃、pH8.0、固形分46.0%)の固形分に対し、表1に示した量を添加し、水性組成物を得た。この水性組成物についての評価結果を表1に示した。
【0057】
【実施例7〜10、比較例3,4】
実施例1の1,3,6−ヘキサントリカルボン酸トリイソデシル、実施例2の1,3,6−ヘキサントリカルボン酸トリ2−エチルヘキシル、又はブチルセロソルブ(水との1:1(質量比)混合物)をアクリル水分散体B(アクリル系、MFT22℃、pH8.0、固形分47.5%)の固形分に対し、表2に示した量を添加し、水性組成物を得た。この水性組成物についての評価結果を表2に示した。
【0058】
【実施例11〜14、比較例5,6】
アクリル水分散体A(アクリル−スチレン系、MFT50℃、pH8.0、固形分46.0%)にチタン白を最終水性組成物の顔料質量割合(PWC)が40%になるように加え、次いで所定量のガラスビーズを加え振とう機にかけて顔料分散を行い、その後ガラスビーズを除去した。得られた分散液に対して実施例1の1,3,6−ヘキサントリカルボン酸トリイソデシル、実施例2の1,3,6−ヘキサントリカルボン酸トリ2−エチルヘキシル、又はブチルセロソルブ(水との1:1(質量比)混合物)をアクリル水分散体Aの固形分に対し、表3に示した量になるように添加し、水性組成物を得た。この水性組成物についての評価結果を表3に示した。
【0059】
【表1】
Figure 0004049600
【0060】
【表2】
Figure 0004049600
【0061】
【表3】
Figure 0004049600
【0062】
【発明の効果】
本発明の造膜助剤は、水性組成物の調製に用いられ、生体への毒性、臭気が少なく、安全性が高く、低粘度で、水性組成物との相溶性等を兼ね備えている。
また、本発明の水性組成物は、造膜助剤を含有し、顔料混和性、造膜性、凍結融解安定性、貯蔵安定性、及び得られる皮膜の優れた特性等を兼ね備えている。

Claims (4)

  1. 式(1)で表される水性組成物用の造膜助剤。
    Figure 0004049600
    〔式中、R1、R2及びR3はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、置換されていないか或いは炭素数1〜18のアルキル基又は炭素数1〜8のアルコキシ基で置換されている炭素数5〜20のシクロアルキル基、もしくは置換されていないか或いは炭素数1〜8のアルコキシ基で置換されている炭素数6〜28のアリール基を表す。上記のアルキル基及びアルコキシ基のアルキル部は、直鎖状でもよいし分枝状でもよい。p,r,sは0〜9の整数、qは1〜9の整数で、1≦p+q+r+s≦9かつ{r<sまたは(r=sかつp≦q)}〕
  2. p+q+r+s=3である請求項1に記載の水性組成物用の造膜助剤。
  3. p=1、q=2、r=s=0である請求項1に記載の水性組成物用の造膜助剤。
  4. 水溶性及び/又は水分散性組成物の固形分100質量部に対し、請求項1〜3のいずれか一項記載の造膜助剤1種以上を0.1〜30質量部含有することを特徴とする水性組成物。
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