JP4048998B2 - ランプ及び紫外光照射装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、主に波長190nm以下の紫外光を放射するランプ或いはこのランプからの紫外線を照射する紫外線照射装置に関する。特に、キセノン(Xe)エキシマ光を利用するエキシマランプ或いはランプの放電容器の近傍に窓部材が配置された紫外線照射装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
Xeエキシマ光は中心波長を172nmに有し、およそ150〜200nmの範囲で発光している。このXeエキシマ光を利用したキセノンエキシマランプでは、放電容器の石英ガラスを透過した光、主に中心波長の172nmの紫外線が放射され、短波長側の光は石英ガラスの吸収端に吸収される。
【0003】
石英ガラスにおける紫外線の透過性は、含まれるOH基の存在量により影響を受ける。石英ガラス中のOH基は短波長の光を吸収するため、含まれるOH基の濃度が高い石英ガラスは短波長の透過率が低く、これが低いものは短波長の透過率が高い。よって、エキシマランプから短波長の光を効率よく取り出すためには、放電容器を構成する石英ガラスに含まれるOH基濃度が低いほうがよい。
一方、放電容器の耐久性即ち、石英ガラスの耐久性を増すためにはOH基の濃度が高いほうが良い。
特に上述した技術分野で使用される石英ガラスにおいては、OH基の濃度が100wt.ppm以上であるのが望ましい。係る事項は、例えば特許第3252513号公報等に記載されている。
【0004】
以上のように、エキシマランプ用に使用される石英ガラスではOH基の濃度が高すぎると所望の紫外線が透過できず効率が低下し、これが低すぎるとガラスの耐久性が乏しくなる。このためエキシマランプ用の石英ガラスでは、双方のバランスを勘案した結果、透過率がそこそこあり耐久性もそこそこある、110〜500wt.ppmのOH基を含んだものがよいとされている。なお、OH基濃度が500wt.ppm以下というのは、石英ガラスがランプ内部で発光したXeエキシマ光が(分光分布、分光透過率を考慮すると)、およそ8割以上透過する範囲である。
【0005】
而して、従来技術に係る石英ガラスにおいては、エキシマランプを点灯開始して比較的短い期間に紫外線の透過率が著しく低下する。
【0006】
これは、以下の理由によると考えられる。エキシマランプに使用される石英ガラスにおいては、OHは、≡Si−OHなどの網目構造の終端部(以下、簡単に「終端部」ともいう。)となり、石英ガラスの網目構造(≡Si−O−Si≡)の歪みを緩和する。しかし、わずかに歪んだ≡Si−O−Si≡は、エネルギーの高い(即ち、波長が短い)光によって結合が切れ、≡Si・,≡Si−O・,≡Si−Si≡などの構造欠陥を形成する。また、≡Si−OH自身も光によって結合が切れる。切れてフリーになったOHまたはHは、原子半径が小さいのでガラスの網目構造の間をすり抜け、別の構造欠陥が発生した場所で再び結合して≡Si−Hや≡Si−OHとなる。
即ち、OHを含んだガラスでは欠陥の生成と修復とが同時に行なわれている。
よって、ランプ点灯直後から比較的短時間(0〜100時間)の間においては欠陥の生成の速度の方が高く、その後(100〜1000時間)は欠陥の生成と修復の速度が等しくなって安定するものと考えられる。
【0007】
近時、エキシマランプではいっそうの長寿命化、高効率化が要求されている。そして更には、寿命末期まで大幅な光出力変化の少ないランプが要求されており、初期に生じる光出力の低下は極めて致命的である。
短時間での照度の低下を防止するためにはガラスの網目構造の終端部を多く作り、歪んだ≡Si−O−Si≡を少なくすることがポイントである。しかるに、OH基濃度を増すと短波長の透過率が低下するため短波長の光を放射するエキシマランプ用のガラスには適さない。
【0008】
近年、エキシマレーザー用の光学ガラス材にFをドープしたガラスが用いられている。FをドープすることでOHと同様、ガラスの網目構造の終端部として働かせる。そしてSi−FはSi−OHより結合エネルギーが高いうえ、Si−Fは短波長の吸収がないため、耐久性と短波長の透過率を兼ね備えた光学ガラス材として知られている。
【0009】
[1]
特開平8−67530号公報では、OH基濃度が10ppm以上、かつフッ素が1重量%以上含まれた合成石英ガラスが提案されている。これは、OH基やフッ素を大量にドープして歪んだガラスの網目構造を極力少なくすることで耐久性を得るというものであり、OH基とフッ素をそれぞれ単独でドープするよりも両方ともドープすると耐久性の良いガラスが得られるというものである。そして更に、H分子をドープしている。H分子をドープした理由は、この技術に係る用途が主にエキシマレーザー用であるからと推測できる。エキシマレーザーは短時間(nsオーダー)に密度が高い光を放射するため、2光子によって石英ガラスにダメージを与える。2光子によるダメージは石英ガラスのバンドギャップを超えたエネルギーをもつので、前述のようにFやOHをドープして安定なガラスの網目構造を作ったとしてもそのガラスの網目構造を壊すことは可能である。このため、H分子をドープして出来た欠陥を瞬時に修復させている。
【0010】
[2]
特開平8−75901号公報では、フッ素を100ppm以上,Hを1×1017molecules/cm以上含んだガラスが提案されている。この公報に記載の技術は、フッ素をドープして歪んだガラスの網目構造を少なくして(つまり、酸素欠乏欠陥(Si−Si結合)をなくして)、初期透過率を得て、更にHをドープすることでレーザー光の照射によって生じた欠陥を修復させて耐久性を得てこれによりレーザーに対する耐久性の良好なガラスを得る、というものである。
【0011】
[3]
特開平10−67521号公報では、OH基100wt.ppm以上,Hを1×1017molecules/cm以上,フッ素を0.01wt.%以上0.5wt.%以下を含んだガラスについて提案されている。この公報の記載によると、過剰なフッ素はガラス製造時にFの状態でガラス中に取り込まれ、その結果、紫外線の初期透過率が低下して耐久性が悪くなるとして、フッ素のドープ量が規定されている。なお、3つのドープ材による相乗効果によってガラスの耐久性を得ている点については先に挙げた公報に記載のものと同様の作用による。
【0012】
以上の公報に記載のものは、何れもエキシマレーザー用の石英ガラスであり、従ってガラスは2光子によってダメージを受けているものと考えられる。
一方、エキシマランプの場合は、単位面積、時間あたりのエネルギー密度はレーザーに比較して格段に低いので、石英ガラスは1光子によってダメージを受けるものと考えられる。しかしながら、Xeエキシマランプは、光子エネルギーの高い短波長の光、即ち150〜200nmの範囲の光を放出するため、このような発光に曝される放電容器は、極めて大きなダメージを受けているものと考えられる。
【0013】
[4]
特許第3069562号公報では、フッ素レーザー(157nm)やXeエキシマランプ(172nm)を光源とする光学材料にOH基を1〜100wt.ppm,フッ素を50〜10000wt.ppm,Hを5×1016〜1×1019分子/cm含有したガラスが提案されている。
即ち、短波長の透過率を高くするために、OH基濃度を少なくすると共にフッ素を特定範囲量ドープして、歪んだ≡Si−O−Si≡を少なくしている。更に耐久性を上げるためにHをドープしている。
この公報に記載の技術によれば、レーザー装置から放射された光或いはエキシマランプからの光を照射した場合、耐久性が良好な石英ガラスを得ることができるとしている。
【0014】
【特許文献1】
特許第3252513号公報
【特許文献2】
特開平8−67530号公報
【特許文献3】
特開平8−75901号公報
【特許文献4】
特開平10−67521号公報
【特許文献5】
特許第3069562号公報
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、エキシマランプの放電容器を構成する石英ガラスは、放電容器自体も100℃以上、例えば200℃〜300℃更には500℃まで上昇することがあり、このような比較的高温のもとで紫外線が照射されると、≡Si−O−Si≡は歪んでいなくとも結合は非常に切れやすく、欠陥の生成量が増して耐久性が著しく低下してしまう。しかも、レーザーのような単一波長の光ではなく、ランプ点灯時に放電容器内部に発生するXeエキシマの発光(即ち、およそ150〜200nmの発光)が当該放電容器を直接照射しているので、ガラスに与えるダメージは大きいものと考えられる。
また更に、ランプの構造によってはプラズマに曝されることがあり、係る場合ガラス耐久性の低下は特に顕著である。
しかも、上記公報に記載のものではOH基濃度が低い(110wt.ppm以下である)ため、OHによる修復現象を期待できず、長期間において大幅な透過率の低下が考えられる。
【0016】
フッ素は、≡Si−Fの結合力は≡Si−OHに比べると高く比較的結合が切れにくいが、温度が上がると結合が切れるものも生じる。しかしながらFは、フリーになったとしても原子半径が大きく、ガラスネットワークの中を自由に動くことができないため、別の場所で発生した構造欠陥を修復することはできない。即ち、修復機能がないと推測される。そして、Fの濃度が高すぎるときには≡Si−F F−Si≡が接近するため、結合の切れたFがあるとFの安定な状態になる確率が増大する。Fのように結合すると欠陥の修復はほとんど不可能であり、結果的に≡Si−Si≡の欠陥を生じさせてしまう。
よって、F濃度が高いと、石英ガラスは透過率が初期の低下だけでなく長期間の透過率低下があると考えられる。
【0017】
分子は、≡Si−OHなどの網目構造の終端部となる可能性も有するが、温度が高いとガラス中を拡散して外部に放出されるため、点灯時間が増すと欠陥を修復することはできなくなって、透過率低下を起こすと考えられる。特に、ランプに使用した場合、外部に放出されたH2ガスは放電空間に入って発光効率の低下や不安定な放電や短寿命化など、種々の悪影響を及ぼすことがある。
【0018】
本発明の目的は、ランプの放電容器等、比較的高温となるような使用条件で利用される場合でも、紫外線に対する耐久性を具備し、かつ、短波長の紫外線の透過率も良好な、紫外線透過性の石英ガラスを提供することにある。
【0019】
【課題を解決するための手段】
上記目的に鑑み、本発明は、石英ガラス製の放電容器を具備し、当該放電容器から波長190nm以下の紫外光を放射するランプであって、前記放電容器は、OH基を120〜450wt.ppm、Fを1〜1500wt.ppm含んだ石英ガラスからなることを特徴とする。
【0020】
また、波長190nmの紫外光を放射するランプと、該ランプを収納し、不活性ガスが充填されるケーシングと、該ケーシングの一部に開口が設けられ、該開口を塞ぐ石英ガラス製の窓部材と、を具備してなる紫外光照射装置において、前記窓部材は、OH基を120〜450wt.ppm、Fを1〜1500wt.ppm含んだ石英ガラスからなることを特徴とする。
【0023】
このエキシマランプは、放電容器を構成する石英ガラスに水素(H)分子,炭素(C)を実質的に含まないものである。実質的にとは、各種測定装置による検出限界値以下であることを示す。水素(H)分子は Journal of Non-Crystalline Solids 139(1992)35-46“analysis of gas release from vitreous silica" に記載の手法で測定した場合、検出限界値は3×1016個/1cm以下とされる。また、炭素(C)はX線光電子分光法によって測定した場合、C/Siが1atm%以下である。H分子の具体的な測定は、ランプから試料となる石英ガラス片を約1cm〜5cmの程度切り出し、前述の測定装置で測定する。炭素の具体的な測定は、ランプ表面に付着している炭素の影響、また大気中に浮遊している炭素の付着によって、ガラス中の炭素の検出感度が損なわれるのを防ぐために、真空チェンバーの中でガラス試料を破断し、大気に曝さずにその破断面を測定する。
ランプ放電容器のガラス中にHや炭素が取り込まれる原因は、材料となる石英ガラス製造工程中の熱処理や炭素冶具を使った(管や板への)成型だけでなく、ランプ製造工程中の熱処理や炭素冶具を使った加工などが考えられる。
がガラスの内部から放電容器の内部に出てくると、前述のように発光効率の低下等の問題が生じる。炭素がCOやCOの状態で石英ガラス内部から放電空間に出てくると、発光効率の低下や放電空間のプラズマによって分解され、炭素がガラス表面に付着して透過率を低下させる等の問題が生じる。よって、ランプ放電容器を構成する石英ガラスに水素(H)分子,炭素(C)が実質的に含まれないことで、発光効率の低下やガラスの透過率の低下等の不具合を防止することができる。
【0024】
本発明において、石英ガラス中のOH基濃度は110〜500wt.ppm、更に好ましくは、120〜450wt.ppmとされる。図4に放電容器を構成するOH濃度とランプの放射照度維持率の関係を示す。同図は、放電容器にFをドープせずOHのみをドープしたガラスにより構成したランプの、1000時間点灯後におけるランプの放射照度維持率である。このように110wt.ppm以上で高い放射照度維持率を示す。これは、OH基による修復機能により、エキシマランプの長時間(100〜1000時間)透過率の低下を抑えることができるからである。
なお、本願発明においては、先述した理由と同様の理由、つまり石英ガラスがランプ内部で発光したXeエキシマ光が(分光分布、分光透過率を考慮すると)、8割以上透過するといわれる500wt.ppm以下とされる。
【0025】
更に、Fがドープされることにより、終端部の効果が具備され、短時間(0〜100時間)における透過率低下が抑制される。
Fをドープすることにより、従来品に係るOH基のみドープされたガラスの初期の低下を抑制でき、結果的に長期間に亘って放射照度維持率が改善されるようになる。3000wt.ppm以上になると、従来品よりも放射照度維持率が低下するため、F濃度の上限値としては1500wt.ppmである。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を実施例に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態を示すエキシマランプの図である。同図において、エキシマランプ20の放電容器23は、円筒状の外側管21と、この外側管21内にその筒軸に沿って配置された、外側管21の内径より小さい外径を有する石英ガラスよりなる内側管22と、外側管21および内側管22の各々の両端部が封止壁部24によって接合され、一方の壁材21と他方の壁材22との間に円筒状の放電空間Sを形成する放電容器を具備している。この放電容器の内部放電空間にはキセノンガスが封入されている。
放電容器23における外側管21には、その外周面25に密接して、例えば金網などの導電性材料よりなる網状の一方の電極26が設けられ、放電容器23における他方の壁材22には、その外周面27を覆うようアルミニウムよりなる膜状の他方の電極28が設けられている。そして、一方の電極26および他方の電極28は、それぞれ電流供給用のコード29,29によって適宜の電源装置(図示省略)に接続されている。
【0027】
上記放電容器23は、OH基濃度110〜500wt.ppmである石英ガラスであって、更にF濃度が1〜1500wt.ppmのものである。この石英ガラスは、Fを1〜1500wt.ppmの範囲で含んでいるためOH基のみをドープした従来の石英ガラスよりも、ランプ点灯初期(〜100時間)に生じる構造欠陥の生成が抑制される。そして、ランプ点灯後100時間程度経過した後は、≡Si−OHから光によって結合が切れてフリーになったOHが、別の構造欠陥が発生した場所で再び結合して≡Si−OHとなってOHによる構造欠陥の修復が行われる。
【0028】
図2は、本発明の紫外線照射装置の一例における構成を示す説明用断面図である。この紫外線照射装置は、複数のエキシマランプ20と、このエキシマランプ20が収納される例えば矩形の箱型のケーシング10とを具えてなるものである。
ケーシング10は、下面に開口12を有する全体が矩形の箱型の枠材11と、この枠材11の開口12を気密に塞ぐよう設けられた、石英ガラスからなる窓部材13とにより構成されている。エキシマランプ20は、ケーシング10の内部に、冷却ブロックBを介して固定状態に取り付けられる。なお、ワークは、紙面上窓部材13の下方に配置される。
【0029】
上記窓部材は、OH基濃度110〜500wt.ppmであって、F濃度が1〜1500wt.ppmの石英ガラスである。この石英ガラスは、Fを1〜1500wt.ppmの範囲で含んでいるためOH基のみをドープした従来の石英ガラスよりも、ランプ点灯初期(〜100時間)に生じる構造欠陥の生成が抑制される。なおこの窓部材は、エキシマランプからの紫外線の消失を極力少なくして外部に放出させるために、例えばランプの外表面から約20mmという近接した場所に配置されている。このため、ランプの点灯時には当該ランプからの輻射熱により当該窓も100℃以上の高温になる。
本実施形態によれば、窓を構成する石英ガラスが、OH基濃度110〜500wt.ppmであって、F濃度が1〜1500wt.ppmであるので上記ランプと同様の作用により、ガラスの耐久性を格段に向上させることがでできる。
【0030】
【実験例】
図1で示した構成に係るエキシマランプをドープ材の含有量が異なった石英ガラスを用いて合計21本のランプを製作し、ランプの放射照度維持率を測定した。
図3は、上記エキシマランプの1000時間点灯後の放射照度維持率を示す図である。同図は点灯直後の放射照度を100としてランプ点灯後1000時間経過したとき放射照度を相対値で示している。なお、同図OH基濃度によって、△は140±30wt.ppm、□は360±30wt.ppm、◇は470±30wt.ppmのものをそれぞれ示している。また、Fの濃度は<0.5、1、100、1000、3000wt.ppmであった。なお、Fの濃度は±10%程度のばらつきがある。
放電容器がF<0.5wt.ppm(即ちドープ等の処理をしていない)石英ガラスからなるエキシマランプに比較して、Fが1〜1500wt.ppmの範囲でドープされたものからなるエキシマランプは放射照度維持率が改善されると確認された。なお、Fが100、1000wt.ppmドープされた石英ガラスからなる放電容器を具備したエキシマランプは1000時間点灯後も90%以上を維持し、放射照度維持率が飛躍的に向上することが確認された。特に好ましいF濃度は100〜1000wt.ppmの範囲である。
Fを3000wt.ppmドープしたものは従来技術に係る(F<0.5wt.ppm)エキシマランプよりも維持率が低下した。この理由は、前述のように≡Si−Fが分解してF分子ができて≡Si−Si≡の欠陥ができたためと推察される。
【0031】
図2の構成に基づいてエキシマランプを搭載した紫外線照射装置を製作した。下記の実施例1〜3は、ランプにおける放電容器を構成する石英ガラス及び紫外線照射装置における窓部材を構成する石英ガラスについてOH濃度とFの濃度を変えて構成した。
〔実施例1〕
実施例1に係るエキシマランプの放電容器は、全長が300mm、外側管の外径φ26.5(肉厚1mm)であり、OH濃度が440wt.ppm、F濃度が100wt.ppmの石英ガラスであった。このエキシマランプを複数用意し、OH基濃度が320wt.ppm、F濃度が900wt.ppmの石英ガラスからなる厚み5mmの平板状の窓部材を設けた紫外線照射装置に搭載して入力電力60Wで点灯した。
〔実施例2〕
実施例2に係るエキシマランプの放電容器は、全長が800mm、外側管の外径φ26.5(肉厚1mm)であり、OH濃度が440wt.ppm、F濃度が100wt.ppmの石英ガラスであった。このエキシマランプを複数用意し、OH基濃度が150wt.ppm、F濃度が150wt.ppmの石英ガラスからなる厚み5mmの平板状の窓部材を設けた紫外線照射装置に搭載した。実施例2に係る紫外線照射装置においては窓部材の表面に導電性発熱ペーストをスクリーン印刷し、形成し、ランプ点灯中通電して加熱した。ランプ入力電力160Wで点灯した。
〔実施例3〕
実施例3に係るエキシマランプの放電容器は、全長が1000mm、外側管の外径φ40(肉厚1mm)であり、OH濃度が190wt.ppm、F濃度が100wt.ppmの石英ガラスであった。このエキシマランプを、OH基濃度が130wt.ppm、F濃度が1400wt.ppmの石英ガラスからなる厚み5mmの平板状の窓部材を設けた紫外線照射装置に搭載して点灯した
〔比較例〕
比較例に係るエキシマランプの放電容器は、全長が300mm、外側管の外径φ26.5(肉厚1mm)であり、OH濃度が480wt.ppm、F濃度が0.5wt.ppm未満(測定限界)の石英ガラスであった。このエキシマランプを、OH基濃度が480wt.ppm、F濃度が0.5wt.ppm未満(測定限界)石英ガラスからなる厚み5mmの平板状の窓部材を設けた紫外線照射装置に搭載して、入力電力60Wで点灯した。
【0032】
上記実施例1〜3及び比較例に係るそれぞれの装置で3000時間まで点灯した。ランプの1000時間後の放射照度維持率及び3000時間後の窓部材のXeエキシマ光の透過率を調べた。また、ランプ点灯中の放電容器及び窓部材の温度を測定した。
下記の表1は、各ランプの放電容器を構成する石英ガラスのOH基及びFの濃度、ランプ点灯時の放電容器温度及びランプ1000時間点灯後における放射照度維持率をまとめたものである。また表2は、各装置の窓部材を構成する石英ガラスのOH基及びFの濃度、装置駆動時の窓部材温度、装置動作前(即ち光照射前)のXeエキシマ光の透過率及び3000時間動作後におけるエキシマ光の透過率をまとめたものである。なお、ここでいうXeエキシマ光の透過率とは、あるXeエキシマランプから出てくる光出力を、窓部材を透過させた場合と窓部材を透過させていない場合とで測定し、その出力比から求めたものである。
【表1】
Figure 0004048998
【表2】
Figure 0004048998
【0033】
実施例1においてランプは1000時間点灯後の放射照度維持率が96%であり、高い維持率を示した。窓部材のXeエキシマ光の透過率も84%→83%でほとんど低下しなかった。ガラスの温度が100℃以上の場合だけではなく、100℃以下においても効果があることがわかった。
実施例2では、紫外線照射装置における窓部材を加熱し100℃に保持した。ランプは窓部材があるため、温度138℃に上昇した。ランプの1000時間後の放射照度維持率は95%であり高い維持率を示した。窓部材のXeエキシマ光の透過率は、3000時間照射しても86%→84%であり、ほとんど劣化しなかった。
実施例3では、ランプへの入力が高いため、ランプの温度は315℃に上昇した。窓ガラスの温度はランプからの熱で加熱され220℃であった。ランプの1000時間後の放射照度維持率は93%であり高い維持率を示した。窓部材のXeエキシマ光の透過率は3000時間照射しても87%→85%であり、石英ガラスほとんど劣化していないことが分かった。
比較例では、ランプは1000時間点灯後の放射照度維持率が74%であった。また窓部材のXeエキシマ光の透過率は80%→69%に低下した。
【0034】
〔実施例4〕
放電容器OH濃度が440wt.ppm、F濃度が100wt.ppmの石英ガラスを用いて、外径φ18mm(肉厚1mm)、形状がU字型の低圧水銀灯を製作した。この低圧水銀灯の発光部長さは455mmであった。係る低圧水銀灯は点灯時、波長254nm、185nmのラインスペクトルが発光しているため、波長185nmの光がガラスの透過率を低下させると考えられる。
上記実施例4の低圧水銀灯を入力電力450Wで点灯したところ、放電容器の温度は180℃になった。3000時間点灯後の放射照度維持率は85%であった。
放電容器のガラスの構成をF<0.5vol.ppm以下としたことを除いて、実施例4と同仕様としたの従来技術に係る低圧水銀灯では、放射照度維持率が70%であった。よって、低圧水銀灯においても本願発明を適用することでランプの放射照度維持率を改善できることが判明した。
なお、上記エキシマランプの場合よりも劇的な放射照度維持率の改善が無かった理由は、エキシマランプの寿命特性はガラスの劣化が支配的であるのに対し、低圧水銀灯は電極を放電容器の内部に配置していることから、係る電極の消耗等による発光効率の低下や電極のスパッタ等による放電容器内面の汚れ付着などが生じるからである。
【0035】
【発明の効果】
以上のように本願発明によれば、放電容器が、OH基を110〜500wt.ppm、Fを1〜1500wt.ppm含んだ石英ガラスからなるので、ランプ点灯初期の照度低下が無くかつ長時間にわたって耐久性のあるランプを提供できる。
また上記ランプにおいて、放電容器を構成する石英ガラス中の水素分子を3×1016個/cm以下とすることにより、ランプ放射特性の変化を損なうことが防止される。
また更に石英ガラスに含まれる炭素(C)の量が、C/Siの比で0.1atm%以下である、即ち、炭素(C)が実質的に含まれないことでガラスの透過率の低下を防止することができる。
【0036】
また、波長190nm以下の光を放射するランプを搭載した紫外線照射装置においては、OH基を110〜500wt.ppm、Fを1〜1500wt.ppm含んだ石英ガラスで、窓部材を構成することにより、紫外線の放射効率低下が少ない紫外線照射装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を示すエキシマランプの図である。
【図2】本発明の紫外線照射装置の一例における構成を示す説明用断面図である。
【図3】エキシマランプの1000時間点灯後の照度維持率を示す図である。
【図4】放電容器を構成するOH濃度とランプの放射照度維持率の関係を示す図である。
【符号の説明】
20 エキシマランプ
21 外側管
22 内側管
23 放電容器
24 封止壁部
25 外周面
26 一方の電極
27 外周面
28 他方の電極
29 電流供給用コード
10 ケーシング
11 枠材
12 開口
13 窓部材
B 冷却ブロック
W ワーク

Claims (2)

  1. 石英ガラス製の放電容器を具備し、当該放電容器から波長190nm以下の紫外光を放射するランプであって、
    前記放電容器は、OH基を120〜450wt.ppm、Fを1〜1500wt.ppm含んだ石英ガラスからなることを特徴とするランプ。
  2. 波長190nmの紫外光を放射するランプと、該ランプを収納し、不活性ガスが充填されるケーシングと、該ケーシングの一部に開口が設けられ、該開口を塞ぐ石英ガラス製の窓部材と、を具備してなる紫外光照射装置において、
    前記窓部材は、OH基を120〜450wt.ppm、Fを1〜1500wt.ppm含んだ石英ガラスからなることを特徴とする紫外光照射装置。
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