上述したように、アクチュエータサーボ技術は、トラックキング方向およびフォーカス方向への制御を安定して行うために、可動する対物レンズを保持する部分の重心を調整する必要がある。
しかしながら、上述した光ピックアップ装置には、それぞれ以下の問題がある。
特許文献1および特許文献2に記載の技術では、バランスウエイトまたは重心調整手段を用いることにより重心調整を行っているが、これらの技術は、重心調整を一方向しか行うことができない構成になっている。すなわち、特許文献1および特許文献2に記載の技術は、対物レンズ側にある重心を、バランスウエイトまたは重心調整手段を、対物レンズが設けられた面とは反対側に設けることによって、重心を調整し、トラックキング方向およびフォーカス方向への駆動力を重心に対して働くようにしたものである。したがって、その調整方向は、常に対物レンズ側とは反対側の一方向となる。
また、特許文献3の光ピックアップ装置は、対物レンズと光学素子とを一体化し、駆動しているが、この駆動している部分であるアクチュエータにおける重心の調整は、特に行われていない。
上記アクチュエータに備えられた対物レンズおよび光学素子は重量の違いや、それらの接着方法の違いや、接着材料の重量の違いを生じる。すなわち、上記アクチュエータの重心は、対物レンズと光学素子との中心に位置するのではなく、対物レンズ側または光学素子側のどちらかに位置している可能性が高い。したがって、上記アクチュエータをトラックキング方向およびフォーカス方向へ駆動させる力を、例えば対物レンズと光学素子との中心に作用させた場合、上記アクチュエータの重心に対して働いていない可能性がある。
さらに、上記対物レンズおよび上記光学素子を組み立てる工程において、接着剤量の誤差や、組み立て精度の誤差が生じる可能性があり、予期せず上記アクチュエータの重心が、駆動力が作用する作用点に対してずれる可能性がある。
駆動させる力が上記アクチュエータの重心に対応していない場合においては、駆動時における駆動電流の特定周波数において不要な共振や位相の乱れが発生する。このため、安定、かつ、正確なトラッキング制御及びフォーカシング制御を行うことができない。
そこで本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、コマ収差の発生により特性の劣化が起こらない、対物レンズと光学素子とが一体化した光ピックアップ装置において、トラッキング制御及びフォーカシング制御の安定性を向上させた光ピックアップ装置を提供することにある。
本発明に係る光ピックアップ装置は、上述した課題を解決するために、対物レンズおよび光学素子を備えたホルダーと、対物レンズにより光レーザを照射する光ディスクとの相対的な位置関係を、上記ホルダーを備えた可動部を駆動することによって制御する制御機構を備えている光ピックアップ装置であって、上記ホルダーは、上記制御機構による駆動力が作用する作用点の中心に上記可動部の重心を近づけるバランサを備えていることを特徴としている。
上述した構成を備えることにより、上記ホルダーの重心を容易に調節し、上記制御機構による駆動力が作用する作用点の中心に近づけることができる。そのため、上記ホルダーと上記光ディスクとの相対的な位置関係を、安定、かつ、正確に制御することが可能となる。具体的に説明すると、以下の通りである。
上記ホルダーを備えた上記可動部を駆動することにより、上記対物レンズおよび光学素子を備えた当該ホルダーと光ディスクとの相対的な位置を制御する制御機構を備えている光ピックアップ装置は、光ディスクの記録面上に照射されたスポット光をフォーカス方向または上記光ディスクのトラックキング方向に制御する。上記制御機構は、フォーカス方向およびトラックキング方向への高い制御能が要求される。この高い制御能を可能にするためには、少なくとも上記可動部の重心が、当該可動部を駆動する力の作用点の中心に近い位置にある必要がある。ここで、可動部を駆動するために働く力は、後述するホルダーに備えられるコイルのあらゆる箇所から働いているが、この全ての力を一つの力として考えた場合、その力は上記可動部の中心から働いていると考えることができる。これを上述した「作用点の中心」としている。また、重心が「作用点の中心に近い位置にある」とは、この作用点の中心を含む、光軸に垂直な仮想面上に、上記可動部の重心が位置しているということである。
しかしながら、上記可動部は、上記ホルダーに備えられる対物レンズおよび光学素子の重量の違いや、それらの接着方法の違いや、接着材料の重量の違いを生じる。そのため、上記可動部の重心は、対物レンズ側に位置したり、光学素子側に位置する場合がある。
したがって、本発明の光ピックアップ装置は、上記ホルダーにバランサを設けることによって、上記可動部の重心を上記制御機構による駆動力が作用する作用点に容易に調整することができる。これにより、上記可動部を通過した光レーザによって光ディスクの記録面上に照射されたスポット光を、フォーカス方向およびトラックキング方向に安定、かつ、正確に制御することが可能となる。
また、本発明に係る光ピックアップ装置は、上記対物レンズが、上記ホルダーの重心を基準として、上記光ディスク側に設けられており、上記光学素子が、上記ホルダーの重心を基準として、上記光ディスクの反対側に設けられており、上記バランサが、少なくとも上記光ディスクの反対側に設けられていることを特徴としている。
上記対物レンズおよび上記光学素子は、上記ホルダーの重心が両者の間に位置するように設けられている。そのため、上記可動部の重心は、上記対物レンズおよび上記光学素子の重量の違いや、それらの接着方法の違いや、接着材料の重量の違いによって、上記対物レンズ側または上記光学素子側に位置する場合がある。
上記重心が上記対物レンズ側または上記光学素子側に位置し、上記制御機構による駆動力が作用する作用点とずれている場合、光ピックアップ装置は、安定、かつ、正確なフォーカス方向またはトラックキング方向への制御を行うことができない。
したがって、上述したようなバランサを上記光ディスク側または上記光ディスクの反対側に設けることにより、上記可動部の重心を上記制御機構による駆動力が作用する作用点に容易に調整することが可能となる。
これにより、本発明の光ピックアップ装置は、安定、かつ、正確なフォーカス方向またはトラックキング方向への制御を行うことが可能となる。
なおここで、「上記対物レンズ側」とは、具体的には、上記ホルダーに保持された対物レンズの、光ディスクから反射された光レーザ(反射光)が入射する側のことである。また同じく「上記光学素子側」とは、具体的には、上記ホルダーに備えられた上記光学素子の、光源から照射される光レーザが入射する側のことである。
また、本発明に係る光ピックアップ装置は、上記対物レンズが、上記ホルダーの重心を基準として、上記光ディスク側に設けられており、上記光学素子が、上記ホルダーの重心を基準として、上記光ディスクの反対側に設けられており、上記バランサが、上記光ディスク側および上記光ディスクの反対側に設けられていることを特徴としている。
これにより、本発明に係る光ピックアップ装置は、上記可動部の重心調整の方向が一方向に限定されることがなく、対物レンズ側および光学素子側双方向に調整することが出来る。
すなわち、上述したように上記対物レンズおよび上記光学素子の重量等の違いは上記制御機構の製造前に予め分かっているため、これらの違いから、製造後の制御機構の重心の位置を予測し、算出することにより、重心の調整方向、調整量を求めることは可能である。しかしながら、組み立てる過程で、例えば接着剤のばらつきであったり、組み立て精度のばらつきなどにより、予期しないずれを生じる場合がある。そのような場合、最終的な重心調整の方向が予想していた方向と必ずしも同方向であるとは限らない。そのため、重心調整の方向は、対物レンズ側および光学素子側双方向に調整できる必要がある。
したがって、本発明の光ピックアップ装置は、バランサを上記ホルダーの上記対物レンズ側および上記光学素子側に設けることで、対物レンズ側および光学素子側双方向に重心を調整することができる。そのため、上記可動部の重心を上記制御機構による駆動力が作用する作用点に正確に調整することができる。これにより、安定、かつ、正確なフォーカス方向およびトラックキング方向への制御が可能となる。
また、本発明に係る光ピックアップ装置は、上記バランサの材質が、非磁性体であることを特徴としている。
これにより、マグネット等の磁気回路が作る磁場を乱すことがないため、磁場乱れによる感度の低下や可動部の発生推力の低下を防ぐことができる。
したがって、本発明の光ピックアップ装置は、上述したような制御機構を備えることから、安定したフォーカス方向およびトラックキング方向への制御が可能となる。
また、本発明に係る光ピックアップ装置は、少なくとも上記光ディスクの反対側に設けられた上記バランサが、透光性材料であり、かつ、平板であることを特徴としている。
上記光学素子側に設けられたバランサが平板で透光性材料であるため、情報の記録および/または再生を行うための光レーザの光路は妨げられることがない。そのため、上記バランサには、その中心部に貫通した穴を設ける必要がない。したがって、上記バランサに上記貫通した穴を設けるための工程を必要とせず、穴を設けたバランサを設けた制御機構を製造する場合と比較し、その製造効率を向上することが可能となる。
また、同じバランサの重量を有するために必要となる透光性材料のバランサの大きさは、バランサに穴を設けていないため、穴を設けているバランサの大きさと比べ、縮小することが可能となる。したがって、上記可動部の光学素子側にわずかなスペースしかない場合であっても、上述したバランサを備えることが可能となる。
また、本発明に係る光ピックアップ装置は、上記の光ピックアップ装置において、上記バランサが、光学素子表面に装着されていることを特徴としている。
これにより、上記光学素子側に設けられたバランサは、平行光束中に設置されるため、上記バランサの中心部に穴を設けていなくても、情報の記録および/または再生を行うための光レーザの光路を妨げることがなく、かつ、波面の乱れが発生せず、上記可動部の重心調整を行うことが可能となる。
また、本発明に係る光ピックアップ装置は、上記制御機構が、上記可動部を駆動するためのコイルを備えており、上記ホルダーが弾性支持部によって支持されており、当該弾性支持部が上記コイルに電源を供給するための供給経路であることを特徴としている。
上記可動部を駆動させるための給電経路を新たに設けた場合、上記可動部のスムーズな駆動を妨げる可能性が生じる。したがって、上述した構成とすることにより、上記可動部はスムーズに駆動することが可能となる。
また、本発明に係る光ピックアップ装置は、上記ホルダーと上記光学素子との間に、1/4波長板が備えられていることを特徴としている。
これにより、通常光学素子に入射する光の偏光状態として望ましい直線偏光を可動部に入射したとしても、光ディスクには円偏光で入射・反射できるため、高い光の利用効率を得ることが可能となる。
また、本発明に係る光ピックアップ装置は、上記の光ピックアップ装置において、上記光学素子が、液晶素子であってもよい。
また、本発明に係る光ピックアップ装置は、上記の光ピックアップ装置において、上記弾性支持部を構成する複数の支持部材のうち、いくつかの上記支持部材が、光学素子に駆動信号を供給するための導電性の材料から構成されていることを特徴としている。
これにより、上記ホルダーに備えられた光学素子が、駆動信号供給が必要な光学素子である場合に、別途の駆動信号供給手段を設ける必要がない。上記光学素子は、上記対物レンズと一体可動するため、上記駆動信号供給手段が別途設けられている光学素子が備えられているとスムーズな可動を妨げる可能性が生じる。
したがって、上述した構成の支持部材を含む支持部材から構成される上記弾性支持部を用いることにより、駆動信号供給が必要な光学素子を備えた場合であっても、上記可動部のスムーズな可動を実現することができる。
また、本発明に係る光ピックアップ装置を備えた光ディスク記録再生装置は、上記光ピックアップ装置が、フォーカス方向およびトラックキング方向への高い制御能を備えていることから、本発明に係る光ディスク記録再生装置は、光ディスクに対する良好な情報の記録および/または再生を実現できる。
また、本発明の参考に係る光ピックアップ装置は、上記バランサが、貫通した穴を備えていることを特徴としている。
これにより、情報の記録および/または再生を行うための光レーザの光路を妨げることなく、上記可動部の重心を上記制御機構による駆動力が作用する作用点に調整することが可能である。
したがって、本発明の参考に係る光ピックアップ装置は、上記ホルダーに上述した構造のバランサを備えることから、記録再生信号の劣化を起こさず、安定、かつ、正確なフォーカス方向およびトラックキング方向への制御が可能となる。
また、本発明に係る光ピックアップ装置は、上記バランサが、中心対称のドーナツ形状であることを特徴としている。
これにより、バランサは中心対称であるため、上記可動部のトラッキング方向への重心ずれを生じることなく、フォーカス方向の重心位置を調整することが可能である。
また、本発明の参考に係る光ピックアップ装置の製造方法は、対物レンズ及び光学素子を備えたホルダーと、対物レンズにより光レーザを照射する光ディスクとの相対的な位置関係を、上記ホルダーを備える可動部を駆動することによって制御する制御機構を備えている光ピックアップ装置の製造方法であって、上記対物レンズおよび上記光学素子を上記ホルダーに載置した後に、上記ホルダーにバランサを載置することを特徴としている。
これにより、上記対物レンズおよび光学素子を組み立てる過程での接着剤や半田のばらつきであったり、組み立て精度のばらつきなどから生じる上記可動部の重心のずれに対応することができ、上記重心を上記制御機構による駆動力が作用する作用点に近づくように調整することが可能となる。
本発明に係る光ピックアップ装置は、以上のように、対物レンズおよび光学素子を備えたホルダーと、対物レンズにより光レーザを照射する光ディスクとの相対的な位置関係を、上記ホルダーを備える可動部を駆動することによって制御する制御機構を備えている光ピックアップ装置であって、上記ホルダーは、上記制御機構による駆動力が作用する作用点の中心に上記可動部の重心を近づけるためのバランサを備えていることを特徴としている。
上述した構成を備えることにより、上記可動部の重心を容易に調節し、上記制御機構による駆動力が作用する作用点に近づけることができる。そのため、上記可動部と上記光ディスクとの相対的な位置関係を、安定、かつ、正確に制御することが可能となる。
より具体的には、上記対物レンズは、上記ホルダーの重心を基準として上記光ディスク側に、光軸に対して略垂直になるように設けられており、上記光学素子は、上記ホルダーの重心を基準として上記光ディスクの反対側に、光軸に対して略垂直となるように設けられており、上記バランサが、少なくとも上記光ディスクの反対側に設けられていることを特徴としている。
上記ホルダーを備えた上記可動部を駆動することにより、上記対物レンズおよび光学素子を備えた当該ホルダーと光ディスクとの相対的な位置を制御する制御機構を備えている光ピックアップ装置は、光ディスクの記録面上に照射されたスポット光を、フォーカス方向または上記光ディスクのトラックキング方向に、安定、かつ、正確な制御能が要求される。この高い制御能を可能にするためには、少なくとも上記可動部の重心が、当該可動部を駆動する力の作用点の中心に近い位置にある必要がある。
しかしながら、上記可動部は、上記ホルダーに備えられる対物レンズおよび光学素子の重量の違いや、それらの接着方法の違いや、接着材料の重量の違いを生じる。そのため、上記可動部の重心は、対物レンズ側に位置したり、光学素子側に位置する場合がある。
したがって、本発明の光ピックアップ装置は、上記ホルダーにバランサを設けることによって、上記可動部の重心を上記制御機構による駆動力が作用する作用点の中心に容易に調整することができる。これにより、上記可動部を通過した光レーザによって光ディスクの記録面上に照射されたスポット光を、フォーカス方向またはトラックキング方向に安定、かつ、正確に制御することが可能となる。
また、上記バランサを上記対物レンズ側および上記光学素子側の両方に設けることで、重心調整の方向が一方向に限定されることがなく、対物レンズ側および光学素子側双方向に調整することが出来る。すなわち、上述したように上記対物レンズおよび上記光学素子の重量等の違いは上記制御機構の製造前に予め分かっているため、これらの違いから、製造後の制御機構の重心の位置を予測し、算出することにより、重心の調整方向、調整量を求めることは可能である。しかしながら、組み立てる過程で、例えば接着剤のばらつきであったり、組み立て精度のばらつきなどにより、予期しないずれを生じる場合がある。そのような場合、重心調整の方向が必ずしも一方向とは限らず、対物レンズ側および光学素子側双方向に調整する必要がある。
したがって、バランサを上記対物レンズおよび上記光学素子に設けた場合、本発明の上記制御機構は、対物レンズ側および光学素子側双方向に重心を調整することができるため、このような制御機構を備えた本発明に係る光ピックアップ装置は、安定、かつ、正確なフォーカス方向およびトラックキング方向への制御が可能となる。
〔参考の形態〕
本発明の参考の形態について図1および図2に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、以下に記載する本参考の形態では、本発明の参考に係る光ピックアップ装置に備えられる制御機構について説明する。
図1は、本発明の参考に係る光ピックアップ装置に備えられた制御機構50の構造を示す構造図である。図1に示す上記制御機構50は、例えば光ディスク記録再生装置などに備えられ、その光ディスク記録再生装置に備えられた光源からの光レーザが対物レンズ等を介して光ディスクの所定の位置に正確にフォーカスされたり、正確にトラッキングされるように、対物レンズ等の位置を制御する機能をもつ。
上記制御機構50は、大きく分けて可動部、弾性支持部、固定部の3つに分かれている。以下にそれぞれの構成について説明する。
上記可動部は、対物レンズ1、ホルダー2、フォーカスコイル3、トラッキングコイル4aおよび4b、可動部基板5aおよび5b、光学素子6、第1のバランサ7、第2のバランサ8、1/4波長板13から構成されている。上記弾性支持部は、板バネ9a〜9dから構成されている。上記固定部は、マグネット10aおよび10b、ダンパーブロック11、固定部基板12から構成されている。
上記可動部の構成については、図2を用いてより詳細に説明する。
図2は、図1に示した上記制御機構50の上記可動部の構成のみを抽出して示した構成図である。
上記対物レンズ1は、その周縁部において上記ホルダー2に保持されている。
上記ホルダー2には、その側面に、上記フォーカスコイル3と、上記トラッキングコイル4aおよび4bと、上記可動部基板5aおよび5bとが、適宜配置されている。また上記ホルダー2の図示しない光ディスクが配置される側には、上記対物レンズ1を保持することができ、他方の側、すなわち上記ホルダー2の重心を基準として上記光ディスクの反対側には、上記光学素子6が配置できる。また上記ホルダー2の対物レンズ1側および光学素子6側に、それぞれ第1のバランサ7および第2のバランサ8が配置可能となっている。
上記フォーカスコイル3は、上述したように、上記対物レンズ1がフォーカス方向に制御されるための推進力を板バネ9a〜9dに与えるものである。また、上記トラッキングコイル4aおよび4bは、上記対物レンズ1がディスクのトラッキング方向に制御されるための推進力を板バネ9a〜9dに与えるものである。上記可動部基板5aおよび5bは、上記弾性支持部と上記可動部とを中継する。
上記光学素子6は、例えば、可動部への入射光束に対し、波面上に球面収差やコマ収差といった収差に相当する位相分布を付与したり、あるいは発散や収束を作用させるものである。また、上記光学素子6の数は1つに限定されるものではなく、複数でも可能である。そのため、異種の光学素子を組み合わせたものであってもよい。
なお、上記光学素子6の設置方法としては、例えば紫外線硬化樹脂を用いることができる。
上記第1のバランサ7は、上記対物レンズ1の図示しない光ディスクが配置される側の対物レンズ1周縁部に配置される。上記第1のバランサ7が、上述した位置に配置されることにより、上記可動部の重心は、上記対物レンズ1側へ調整される。上記可動部は、例えば対物レンズ1と光学素子6との重量の違いや、それらの接着方法の違いや、接着材料の重量の違い等により、その重心が、上記光学素子6の側に位置する場合がある。上記可動部の重心が、上記フォーカスコイル3と、上記トラッキングコイル4aおよび4bとのそれぞれに発生する力の作用点に対応していない場合、正確にフォーカス方向およびトラッキング方向への制御を行うことが困難となる。したがって、このように上記可動部の重心が、上記光学素子6の側に位置している場合に、上記第1のバランサ7を設けることで、その重心を、上記フォーカスコイル3と、上記トラッキングコイル4aおよび4bとに発生する力の作用点に対応させることが可能となる。これにより、上記制御機構50は、フォーカス方向への制御およびトラッキング方向への制御を正確に行うことが可能となる。
具体的には、上記フォーカスコイル3と、上記トラッキングコイル4aおよび4bとに発生する力の作用点が、上記可動部の重心に対応していない場合、フォーカス方向およびトラッキング方向へ上記可動部を駆動しようとする力は、可動部の重心とは異なる位置、すなわち重心からずれた位置に対して働く。例えば、重心からずれた位置に対してトラッキング方向への制御を行おうとする力が働いてしまうと、可動部の光軸が光ディスクの記録面に対して垂直ではなくなり、可動部が傾いた状態になる。
上記第1のバランサ7の構造としては、光レーザが通過するための貫通した穴を備えていることが好ましい。貫通した穴を設けた構造とすることで、情報の記録および/または再生を行うための光レーザの光路を妨げることなく、上記可動部のバランスをとることができる。さらに、上記第1のバランサ7の構造として、中心対称のドーナツ形状であることが好ましい。上記第1のバランサ7を中心対称とすることで、第1のバランサ7を設けたことによるトラッキング方向への可動部の重心のずれの発生を防ぐことができる。なお、上記第1のバランサ7の構造としては、図1または図2に示したような円形に限られるものではなく、少なくとも光レーザが通過するための貫通した穴や切り欠きなどを備えている構造であればよい。
さらに、上記第1のバランサ7の材質としては、非磁性体であることが好ましく、例えばBeCuのような非磁性の金属が望ましい。上記第1のバランサ7の材質を上述したようなBeCuとすることで、上記マグネット10aおよび10b等の磁気回路が作る磁場を乱すことがないため、磁場乱れによる感度の低下や可動部の発生推力の低下を防ぐことができる。
なお、上記第1のバランサ7の材質としては、BeCuのような非磁性の金属に限定されるものではなく、非磁性体であればそれ以外の材質であってもよい。
上記第2のバランサ8は、上記可動部の上記光学素子6側に配置される。なおここで、上記可動部の上記光学素子6側とは、具体的に、ホルダー2に設けられた上記光学素子6の、図示しない光源から照射される光レーザが入射する側のことである。上記第2のバランサ8が、上述した位置に配置されることにより、上記可動部の重心は、上記光学素子6側へ調整される。上記可動部は、例えば対物レンズ1と光学素子6との重量の違いや、それらの接着方法の違いや、接着材料の重量の違いにより、その重心が、上記対物レンズ1の側に位置する場合がある。上記可動部の重心が、上記フォーカスコイル3と、上記トラッキングコイル4aおよび4bとに発生する力の作用点に対応していない場合、正確にフォーカス方向およびトラッキング方向への制御を行うことが困難となる。したがって、このように上記可動部の重心が、上記対物レンズ1の側に位置している場合に、上記第2のバランサ8を設けることで、その重心を、上記フォーカスコイル3と、上記トラッキングコイル4aおよび4bとに発生する力の作用点に対応させることが可能となる。これにより、上記制御機構50は、フォーカス方向への制御およびトラッキング方向への制御を正確に行うことが可能となる。
上記第1のバランサ7と同じく、本参考形態の上記第2のバランサ8の構造としては、光レーザが通過するための貫通した穴を備えていることが好ましい。貫通した穴を設けた構造とすることで、情報の記録および/または再生を行うための光レーザの光路を妨げることなく、上記可動部のバランスをとることができる。さらに、上記第2のバランサ8の構造として、中心対称のドーナツ形状であることが好ましい。上記第2のバランサ8を中心対称とすることで、第2のバランサ8を設けたことによるトラッキング方向への可動部の重心のずれの発生を防ぐことができる。なお、上記第2のバランサ8の構造としては、図1または図2に示したような円形に限られるものではなく、少なくとも光レーザが通過するための貫通した穴を備えている構造であれば後述する本発明の実施形態において説明するような正方形の構造であってもよく、他の構造であってもよい。
さらに、上記第2のバランサ8の材質としては、非磁性体であることが好ましく、例えばBeCuのような非磁性の金属が望ましい。しかしながら、それ以外の材質であってもよい。上記第2のバランサ8の材質を上述したような非磁性体とすることで、上記マグネット10aおよび10b等の磁気回路が作る磁場を乱すことがないため、磁場乱れによる感度の低下や可動部の発生推力の低下を防ぐことができる。
なお、上記第2のバランサ8の材質は、上述したものに限定されるものではなく、非磁性体であればそれ以外の材質であってもよい。
また、本参考形態では、上記可動部のバランサとして、上述したように、第1のバランサ7、第2のバランサ8の2つを用いて行っている。上記ホルダー2の対物レンズ1側および光学素子6側の両方にそれぞれ上記第1のバランサ7および上記第2のバランサ8を設けることにより、バランサを対物レンズ1側または光学素子6側の一方に設けた場合と比較し、上記可動部の重心位置領域を広げることができる。またバランサを両側に設けることにより、フォーカス方向重心のずれを広範囲で解消することが可能となる。
しかしながら、上述に限定されるものではなく、上記可動部の重心を、上記フォーカスコイル3と、上記トラッキングコイル4aおよび4bとに発生する力の作用点に近づけることが可能であるならば、バランサは、上記対物レンズ側または上記光学素子側のどちらか一方にのみ設けたものであってもよい。すなわち、上記制御機構50は、第1のバランサ7または第2のバランサ8のどちらか一方を用いて構成されたものであってもよい。
また、第1のバランサ7および第2のバランサ8は、適宜その厚みや数量を設定することも可能である。
上記1/4波長板13は、上記ホルダーと上記光学素子6との間に備えられており、上記光学素子6を通過した光レーザを円偏向とし、次に図示しない光ディスクから反射して対物レンズを通過した反射光を直線偏向に変換する。上記1/4波長板13の設置方法としては、上記光学素子6と同じく、例えば紫外線硬化樹脂を用いることができる。
上記弾性支持部は、上記板バネ9a〜9dから構成されており、上記可動部を支持している。上記板バネ9a〜9dはそれぞれ、その一端が、上記固定部の上記固定部基板12に固定されており、他端は上記可動部の上記可動部基板5aおよび5bに固定されている。
上記板バネ9a〜9dは、上記可動部を駆動させるための給電経路として用いられることが好ましい。上記可動部を駆動させるための給電経路を新たに設けた場合、上記可動部のスムーズな駆動を妨げる可能性が生じる。したがって、上述した構成とすることにより、上記可動部はスムーズに駆動することが可能となる。
上記板バネ9a〜9dの材質としては、非磁性の金属であることが好ましく、例えばBeCuが該当する。しかしながら、上記板バネ9a〜9dは、これに限定されるものではなく、非磁性の金属であればよい。また上記板バネ9a〜9dの構造としては、上述したような板バネの構造に限定されることはなく、断面が同心円形状のものであればワイヤーであってもよい。
なお、本参考形態の弾性支持部は、その設置箇所が上述したように4箇所に限定されるものではない。すなわち、上記の弾性支持部は、少なくとも4箇所に設置されていればよく、後述する本発明の実施形態で説明するように6箇所に設置されるものであってもよい。少なくとも4箇所で設置する理由としては、可動部の安定性を考慮するためである。
上記固定部には、上記マグネット10aおよび10bが上記可動部を挟む形で構成されている。なお、上記マグネット10aおよび10bとは、磁気回路を構成するものである。上記マグネット10aおよび10bの外側には、上記ヨーク13が構成されている。さらに、上記固定部には、上記固定部基板12が、図1に示すように上記マグネット10bの外側に構成された上記ダンパーブロック11の外側に構成されている。上記固定部基板12には、上記板バネ9a〜9dのそれぞれの一端が固定されている。また、上記ダンパーブロック11における板バネ9a〜9dの貫通部には、図示しないがダンパー剤が注入される。
上述したように、安定、かつ、正確なトラッキング方向およびフォーカス方向への制御を行うためには、トラッキング方向への駆動力の作用点の中心が上記可動部の重心に働く必要がある。具体的には、安定したトラッキング方向への制御を行うためには、トラッキング方向への駆動力の中心点を含む、光レーザの光軸に対して垂直な仮想面上に、上記可動部の重心が位置する必要がある。
すなわち、本参考形態における制御機構50は、上述したように上記バランサ7および上記バランサ8を上記可動部に備えることにより、上記可動部の重心を上記仮想面上に位置させることが可能となる。したがって、上記制御機構50を備える光ピックアップ装置は、正確で安定したトラッキング方向への制御が可能となる。
すなわち、本参考形態における制御機構50は、上記バランサ7および上記バランサ8を上記可動部に備えることにより、上記可動部における上記中心点、上記重心が光軸上に存在することになる。したがって、上記制御機構50を備える光ピックアップ装置は、正確で安定したトラッキング方向への制御が可能となる。
なお、本発明の参考に係る光ピックアップ装置に備えられる制御機構は、上記可動部が、上記弾性支持部材によって上記固定部に固定された構造に限定されるものではない。すなわち、バランサを備えることによって、安定し、かつ、正確なフォーカス方向およびトラックキング方向への制御が可能な可動部であれば、種々の手段によって制御装置に備えられたものであってもよい。
また、上記制御機構50の上記可動部は、上記ホルダー2に対物レンズ1および光学素子6が備えられた後に、上記バランサ7および上記バランサ8が備えられることが好ましい。これにより、上述したように、上記可動部の組み立て工程における、接着剤や半田のばらつきや、組み立て精度のばらつきなどから生じる上記ホルダーの重心のずれに対応することができ、上記可動部の重心を駆動力が作用する作用点に近づくように調整することが可能となる。
以上の構成をもつ上記制御機構50の動作について、以下に説明する。
磁気回路である上記マグネット10aおよび10bで発生する磁界中に配置された上記フォーカスコイル3および、上記トラッキングコイル4aおよび4bに、上記板バネ9a〜9dを介して、図示しない電流発生手段を用いて電流を流すことにより、上記フォーカスコイル3および、上記トラッキングコイル4aおよび4bそれぞれに力が発生し、上記可動部が駆動する。
具体的には、後述する制御信号生成回路65(図5)から出力されたトラッキングエラー信号(TE)をうけ、同じく後述するトラッキング制御回路66(図5)が上記トラッキングコイル4aおよび4bに電流を供給し、上記制御機構50をトラッキング方向へ駆動する。これにより、光ディスクの正確なトラッキングを行うことが可能となる。また、後述する制御信号生成回路65(図5)から出力されたフォーカスエラー信号(FA)をうけ、同じく後述するフォーカス制御回路67(図5)が、上記フォーカスコイル3に電流を供給し、上記制御機構50をフォーカス方向へ駆動する。これにより、光ディスクの正確なフォーカシングを行うことが可能となる。
次に上述した制御機構を備えた光ディスク記録再生装置について、図5に基づいて説明する。
図5は、本発明の参考形態および後述する実施形態に係る制御機構50が適用される光ディスク記録再生装置の一例を示す構成図である。上記光ディスク記録再生装置60は、光源61と、スピンドルモータ62と、スピンドルモータ駆動回路63と、光ピックアップ装置64と、制御信号生成回路65と、トラッキング制御回路66と、フォーカス制御回路67と、再生信号生成回路68とを備えている。本発明に係る制御機構50は、上記光ピックアップ装置64内に構成されている。
上記光源61は、半導体レーザを上記光ピックアップ64へ出射する装置であり、例えば波長405nmの青紫色の光レーザを出射するものを用いることができる。
上記スピンドルモータ駆動回路63は、後述するスピンドルモータ制御信号を受け、上記スピンドルモータ62の駆動を制御する。
上記光ピックアップ装置64には、上記制御機構50と、図示しないサーボ信号検出光学系、コリメータレンズおよび、反射ミラーから構成されている。上記コリメータレンズは、上記光源61から出射した直線偏光である光レーザを平行光にする。上記コリメータレンズを通過した光レーザを、その光路を上記反射ミラーによって90°屈折させる。90°屈折した光レーザは、上述した制御機構50に入射する。具体的には、光レーザは制御機構50の上記可動部へ入射し、上記光学素子6、1/4波長板13の層を順に経由し、上記対物レンズ1を経て図示しないディスク69上に集光される。光ディスク69からの反射光は、再び、上記対物レンズ1を経て、上記1/4波長板13および上記光学素子6を通過し、再度反射ミラーによって90°屈折し、図示しないサーボ信号検出光学系に導かれる。
上記制御信号生成回路65は、上記サーボ信号検出光学系で検出されたサーボ信号を受け、所定の処理を行うことにより、各制御信号を生成する。なお、所定の処理とは、差動プッシュプル法によるトラッキングエラー信号(TE)の生成と、非点収差法によるフォーカスエラー信号(FA)の生成を行う。さらに、上記制御信号生成回路65では、スピンドルモータ制御信号も生成する。
上記トラッキング制御回路66は、上記制御信号生成回路65によって生成されたトラッキングエラー信号を受け、上述したようなトラッキング方向への制御を行う。具体的には、上記トラッキング制御回路66が、上述したトラッキングコイル4aおよび4bに光スポットのトラッキングのずれた量に相当する大きさの電流を与えることで制御する。
上記フォーカス制御回路67は、上記制御信号生成回路65によって生成されたフォーカスエラー信号を受け、上述したようなトラッキング方向への制御を行う。具体的には、上記トラッキング制御回路66が、上述したフォーカスコイル3に光スポットのトラッキングのずれた量に相当する大きさの電流を与えることで制御する。
上記再生信号生成回路68は、サーボ信号検出光学系で検出されたサーボ信号から再生信号を生成し、出力する。
〔実施の形態1〕
本発明に係る実施の形態について、図3に基づいて説明すれば、以下の通りである。本実施形態では、上記参考の形態との相違点について説明するため、説明の便宜上、参考の形態で説明した部材と同様の機能を有する部材には同一の番号を付し、その説明を省略する。
図3は、本発明に係る実施形態の制御機構の可動部の構成を示す図である。図3に示す制御機構の可動部は、上述した参考の形態にて説明した制御機構50(図2)の可動部に備えられた第2のバランサ8に代えて、平板バランサ14を備えている。
上記平板バランサ14は、上記可動部のホルダー2に備えられた上記光学素子6側に配置される。上記平板バランサ14が、上述した位置に配置されることにより、上記可動部の重心は、上記光学素子6側へ調整される。なおここで、上記可動部の上記光学素子6側とは、具体的に、ホルダー2に設けられた上記光学素子6の、図示しない光源から照射される光レーザが入射する側のことである。
上記可動部は、例えば対物レンズ1と光学素子6との重量の違いや、それらの接着方法の違いや、接着材料の重量の違いにより、その重心が、上記対物レンズ1の側に位置する場合がある。上記可動部の重心が、上記フォーカスコイル3と、上記トラッキングコイル4aおよび4bとに発生する力の作用点に対応していない場合、対物レンズ1を備える可動部を正確にフォーカス方向およびトラッキング方向へ制御することが困難となる。
したがって、上記可動部の重心が、上記対物レンズ1の側に位置している場合に、上述したように上記平板バランサ14を上記可動部の上記光学素子6側に設けることで、その重心を、上記フォーカスコイル3と、上記トラッキングコイル4aおよび4bとに発生する力の作用点に対応させることが可能となる。
これにより、上記制御機構50が、フォーカス方向およびトラッキング方向への制御を正確に行うことができる。
また、上述した参考の形態で説明した上記第2のバランサ8と同じく、本実施形態の上記平板バランサ14の構造としては、中心対称であることが好ましい。上記平板バランサ14を中心対称とすることで、トラッキング方向への重心のずれが生じることを防ぐことができる。しかしながら、上記第2のバランサ8とは異なり、図3に示すように、上記平板バランサ14は、中心部に穴を設けない。その代わり、上記平板バランサ14には、透光性の材料を用いる。これにより、上記平板バランサ14は、その中心部に穴が設けられていなくても、情報の記録および/または再生を行うための光レーザの光路を妨げることはない。また、本実施形態における上記制御機構の製造工程には上記平板バランサ14に、その中心部に穴を形成するための工程を設ける必要がない。そのため、製造効率の向上が図れる。また、上記平板バランサ14は、その中心部に穴を設けていないことから、上述した実施の形態1における第2のバランサ8の直径よりも小さなバランサを提供することができる。これにより、設置スペースを低減することが可能となる。上記平板バランサ14を構成する透光性の材料とは、光路を妨げるものでなければ、特に限定されるものではないが、例えばガラスが挙げられる。
また、上記平板バランサ14の材質を上述したようなものとすることで、上述した参考の形態で説明した第2のバランサ8と同じく、上記マグネット10aおよび10b等の磁気回路が作る磁場を乱すことがないため、磁場乱れによる感度の低下や可動部の発生推力の低下を防ぐことができる。
したがって、上記平板バランサ14の構造および材質は、上述したものに限定されるものではない。上記平板バランサ14は、トラッキング方向への重心ずれを生じないように中心対称となっているものであればよく、正方形に限定されるものではない。
また、本実施形態の制御機構は、参考の形態で説明した制御機構50と同じく、上記可動部のバランサとして、第1のバランサ7、平板バランサ14の2つを用いた場合に基づいて記載している。上記ホルダー2の対物レンズ1側および光学素子6側の両方にそれぞれ上記第1のバランサ7および上記平板バランサ14を設けることにより、バランサを対物レンズ1側または光学素子6側の一方に設けた場合と比較し、上記可動部の重心位置領域を広げることができる。またバランサを両側に設けることにより、フォーカス方向のみならず、トラッキング方向の重心のずれを広範囲で解消することが可能となる。
しかしながら、本実施形態においても、上述に限定されるものではなく、上記可動部の重心を、上記フォーカスコイル3と、上記トラッキングコイル4aおよび4bとに発生する力の作用点に対応させることが可能であるならば、バランサが1つであってもよい。すなわち、本実施形態の上記制御機構は、バランサを上記第1のバランサ7または上記平板バランサ14のどちらか一方を用いて構成されたものであってもよい。また、第1のバランサ7および平板バランサ14は、適宜その厚みや数量を設定することも可能である。
また、本実施形態における制御機構の可動部も上述した参考の形態と同じく、上記ホルダー2に対物レンズ1および光学素子6が備えられた後に、上記平板バランサ14が備えられることが好ましい。これにより、上述したように、上記可動部の組み立て工程における、接着剤のばらつきや、組み立て精度のばらつきなどから生じる上記ホルダーの重心のずれに対応することができ、上記可動部の重心を駆動力が作用する作用点に近づくように調整することが可能となる。
また、上述した参考の形態における第1のバランサ7と同様に、本実施の形態における第1のバランサ7についても、その具体的な設置位置は、上記ホルダー2に保持された対物レンズ1の光ディスク設置側における周縁部であること好ましい。
したがって、本実施の形態における制御機構も、上述した位置に上記平板バランサ14および第1のバランサ7を設けることにより、可動部の重心の調整を容易に行うことが可能となる。
〔実施の形態2〕
本発明に係る他の実施の形態について、図4に基づいて説明すれば、以下の通りである。本実施形態では、上記参考の形態および上記実施の形態1との相違点について説明するため、説明の便宜上、参考の形態および上記実施の形態1で説明した部材と同様の機能を有する部材には同一の番号を付し、その説明を省略する。
図4は、本発明に係る他の実施形態の制御機構の構成を示す構成図である。図に示す第2の制御機構51は、上述した実施の形態1および実施の形態2にて説明した制御機構の可動部と固定部との弾性支持部として備えられた4本の板バネ9a〜9dに代えて、6本の第2の板バネ23a〜23fを備えており、さらに可動部の光学素子6に代えて、第2の光学素子20を備えている。
上記第2の板バネ23a〜23fはそれぞれ、その一端が、固定部の上記固定部基板12に固定されており、他端は上記可動部の上記可動部基板5aおよび5bに固定されている。
上記第2の板バネ23a〜23fの材質としては、非磁性の金属であることが好ましく、例えばBeCuが該当する。しかしながら、上記第2の板バネ23a〜23fは、これに限定されるものではなく、非磁性の金属であればよい。
また上記第2の板バネ23a〜23fの構造としては、上述したような板バネの構造に限定されることはなく、上記の実施の形態1におけると板バネ9a〜9d同じく、断面が同心円形状のものであればワイヤーであってもよい。
上記第2の光学素子20は、透過光の波面を補正して球面収差やコマ収差を補正するために液晶を封止した液晶素子を用いることが好ましい。
なお、この液晶素子は、印加する駆動電圧によって透過光の波面の補正量を制御するために給電が必要である。そこで、本実施の形態における上記第2の板バネ23a〜23fには、以下の特徴をそなえるものである。
すなわち、本実施の形態における上記第2の板バネ23a〜23fのうち、4本は可動部を駆動させるための給電経路として、残り2本は第2の光学素子20への給電経路として使用される。
上記可動部を駆動させるための給電経路を新たに設けた場合、上記可動部のスムーズな駆動を妨げる可能性が生じる。したがって、上述した構成とすることにより、上記可動部はスムーズに駆動することが可能となる。
なお、本実施形態における第2の板バネ23a〜23fも、上述した他の実施の形態における板バネ9a〜9dと同じく、その設置箇所数(設置本数)は、上記に限定されるものではなく、上記可動部を安定して固定できる数であればよい。したがって、上述したように、その設置箇所数は、少なくとも4箇所であることが好ましい。また、上記可動部の駆動用の給電経路および光学素子への給電経路に相当する本数も上記に限定されるものではなく、適宜設定することが可能である。
なお、本実施の形態におけるバランサ22としては、上記実施の形態1で説明した平板バランサの構成を備えたものでよい。