JP4047107B2 - 発泡体射出成形用スクリュ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、可塑化溶融した樹脂材料に高圧ガスを溶解させて金型に射出し発泡体を成形するスクリュ式射出成形機のスクリュに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
樹脂製の発泡成形体は、軽く、比較的低コストで作製出来、色付けが容易である等の理由から適用性に優れ、電気電子製品の筐体や自動車部品等、種々の用途に重用されている。樹脂製発泡成形体は、通常、熱可塑性樹脂を用い、樹脂を溶融し金型キャビティに射出充填する射出成形法により作製され、多くの場合、スクリュ式射出成形機を用いて製造される。そして、樹脂製発泡成形体の製造方法においては、溶融樹脂の流動性が重要な因子となる。流動性は、金型形状の転写に影響を与え、成形品の寸法精度、外観を左右するからである。しかしながら、一般に、原料として多用される熱可塑性樹脂は、溶融粘度が高く成形材料として流動性に劣るので金型キャビティ内への充填に時間がかかり、金型からの冷却が進行するので転写不良を起こし易いという問題があった。
【0003】
そこで、従来、スクリュ式射出成形機のバレル内で熱可塑性樹脂を溶融し、その樹脂中に、例えば超臨界状態の二酸化炭素等の不活性ガスを、混合・浸透溶解させる手段が用いられている。樹脂に溶解した不活性ガスは、樹脂の可塑剤として働き、樹脂の流動性を向上させ、金型形状の転写性を良好にし、成形品の寸法、外観を、より優れたものにするだけでなく、樹脂流動圧力が低減される結果、成形サイクルタイムの短縮(スループット向上)、型締圧力の低減(電気コストの削減)をもたらす効果を奏することが知られている。
【0004】
ところが、一般的に用いられているフルフライト(1重)スクリュを備える射出成形機を上記手段に適用しようとすると、以下のような不都合を生じてしまう。即ち、不活性ガスを溶融樹脂に溶解させるためには、加圧状態の不活性ガスをバレル内に注入するとともに、このガス圧力に対してシール出来る構造を有するスクリュ式射出成形機であることが求められるが、例えば二酸化炭素を超臨界状態にするに必要な臨界圧力は、概ね7.5MPaであり、このような高圧のガスに対するシール性を確保することが困難なのである。
【0005】
通常のフルフライトスクリュは、図5に模式図として示すスクリュ50の如く、フライト59間の溝が深い材料供給部51と、フライト59間の溝が徐々に浅くなる圧縮部52と、フライト59間の溝が浅い可塑化部53を備えるフルフライトスクリュである。図示しないが、スクリュを収めるバレルの外周面全体に加熱ヒータが設置されていて、原料として通常ペレット状の樹脂材料が、スクリュ後端側から材料供給部51に入れられ、スクリュの回転とともにスクリュの溝に沿って搬送されつつ加熱される。そして、圧縮部52で徐々に圧力が高められるとともに剪断力や摩擦力を受け、可塑化部53において更に高圧になり可塑化が進み、計量されてスクリュ前端部に溜り、射出装置を動作させてスクリュ前端のノズル部から図示しない金型へ射出充填される。
【0006】
このようなフルフライトのスクリュ50では、フライト59の外径とバレル(スクリュを収めるシリンダ、図示しない)の内径とのクリアランスを小さくしてもスクリュ溝が深いため、注入された高圧ガスはスクリュ溝中の溶融樹脂の中を通過して材料供給部へ流出する。このスクリュ溝を浅くすると樹脂の搬送能力が低下し、生産性を低下せしめるという問題が生じる。更に、高圧の不活性ガスを溶融樹脂に溶解させるためには、被溶解物である溶融樹脂の圧力を、そのガス圧力以下にした上に、ガスと溶融樹脂との接触時間を一定以上確保するとともに接触面積を広くしなければならない。そのためには、樹脂を溶融状態にした後に樹脂圧力を下げ、そこへガスを加圧して溶解させ、射出されるまで溶融樹脂とガスとを接触・混合させることが必要になるが、図5から明らかなように、従来のスクリュ50では、高圧ガスを、材料供給部51〜可塑化部53の何れの場所に注入しても実現は困難であった。
【0007】
この問題を解決するための提案がなされている。特許文献1又は特許文献2に開示された熱可塑性樹脂発泡体成形用可塑化装置によれば、図3に模式的に示すような2ステージ構造のスクリュが提案されている。スクリュ30は、後端側から先端側にかけて、後方寄りが材料供給部31となり、その先方が第1メタリング(可塑化溶融部)33となっている第1ステージと、同様にその先方が第2メタリング35となり、そしてその後方寄りがスクリュ溝が深くなった低圧部34となっている第2ステージと、先端部のスクリュヘッド部(図示しない)とに選定され、第2ステージの低圧部34に対応した位置において、図中示すようにガスが注入される。そして、ガスの注入が第1メタリング33の先方即ち下流側に設けられているので、超臨界ガス圧以上の不活性ガスを注入しても、第1メタリングにおいて完全に溶融されている樹脂材料のシール作用により、注入されるガスが材料供給部31の方へ逆流しないとしている。
【0008】
しかしながら、一般的に射出成形機のメタリング部は、比較的小型のスクリュであってもフライト間の溝の深さは2.5〜3.0mmとなっている。このような溝ではシールのための第1メタリング33部分が短いとシール性が不十分になり、上記した例えば二酸化炭素を超臨界状態にするに必要な臨界圧力7.5MPaを維持することは困難であることが予想される。一方、このような高圧ガスをシールすべく第1メタリング33部分を長くすると、スクリュ全体が長くなり特殊仕様になることでコストアップになる他、設置面積も大きくなってしまい、好ましくない。
【0009】
又、特許文献1又は特許文献2には、図4(a)に模式的に示すような2ステージ構造の他のスクリュが開示されている。スクリュ40は、スクリュ30と同様に後端側から先端側にかけて、後方寄りが材料供給部41となり先方が第1メタリング43となっている第1ステージと、先方が第2メタリング45となり後方寄りが低圧部44となっている第2ステージと、先端部のスクリュヘッド部(図示しない)とに選定され、第2ステージの低圧部44に対応した位置において、図中示すようにガスが注入される。スクリュ40は、第1メタリング43の低圧部44寄りにミキシングピース46が設けられている点で、スクリュ30とは異なる。ミキシングピース46を設けることにより、ガスが溶融樹脂に、より短時間で浸透・混合し、しかも均一に分散されるとしている。図4(b)は、図4(a)におけるミキシングピース46を含む第1メタリング43部分を拡大した模式図である。この態様の場合、ミキシングピース46の外径とバレル内径とのクリアランスが大きいと上記スクリュ30とは、シール作用の点で何ら変わらないが、ミキシングピース46の外径とバレル内径とのクリアランスが(例えばマトック式ミキシングピース、特許文献2の図3(ロ)参照)小さい場合には、そこが堰となり、溶融樹脂が流れるとともにガスシール性は向上し、超臨界ガス圧以上の不活性ガスを注入しても、材料供給部41の方へ逆流しなくなると予想される。
【0010】
しかしながら、溶融樹脂が流れる通路が狭くなることから、樹脂の可塑化能力が低下し、生産性に劣る。成形サイクルが長くなりスループットが低下し、得られる発泡成形体のコスト高を招来し、好ましいものではない。
【0011】
【特許文献1】
特開2001−1379公報
【0012】
【特許文献2】
特開2001−113574公報
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、従来の問題点を解決した発泡体射出成形用のスクリュを提供することを目的とする。より具体的には、発泡体を成形する射出成形機の構成要素であるスクリュであって、樹脂材料を充分に可塑化する能力が確保され優れた生産性を有し、高圧ガスを溶融樹脂に均一に浸透させ混合させることが出来るとともに、高圧ガスが材料供給部側へ逆流しないように充分なシール性が確保され、尚且つ、全長が抑えられたスクリュを提供することを目的としている。
【0014】
【課題を解決するための手段】
研究を重ねた結果、以下に示す手段によって、上記目的を達成し得ることが見出された。即ち、本発明により提供されるスクリュは、熱可塑性樹脂材料にガスを溶解させて金型に射出充填する発泡体成形用のスクリュであって、後端側から、材料供給部、圧縮部、可塑化部からなる第1ゾーンと、ガス供給部、圧縮部、送出部からなる第2ゾーンと、を有してなり、第1ゾーンと第2ゾーンとの間にダブルフライトを有する遷移ゾーンを備え、第1ゾーンの可塑化部で溶融した樹脂材料とガスとを共存させるとともにガスをシールする機能を有することを特徴とする発泡体射出成形用スクリュである。
【0015】
遷移ゾーンに設けたダブルフライトによる可塑化ゾーン(第1ゾーン)とガス溶解ゾーン(第2ゾーン)とを振り分ける構造によって、上記従来例にあるような溶融樹脂の通路が狭いという問題は生じず、換言すれば、充分な可塑化能力が確保される。又、メインフライトの間にサブフライトを設けることにより、材料供給側と繋がる溝に存在する可塑化された溶融樹脂はサブフライトの外径とバレル内径との間の隙間(クリアランス)を通過しなければ、ガス供給側と繋がっている溝に流入することが出来ない。このサブフライトの外径とバレル内径とのクリアランスを調整することにより、高圧ガスを遮断し、材料供給部側への逆流を防止する。加えて、遷移ゾーンにおいてはメインフライト間に存在しているサブフライトを挟んでガス供給側と繋がっている溝は深く、溶融樹脂はかなりのスターブ(飢餓)状態になっており、溶融樹脂と高圧ガスが共存するので、溶融樹脂と高圧ガスとの接触面積及び接触時間を、より長く確保出来る。従って、溶融樹脂表面への高圧ガスの浸透に関し、同じ効果を得る条件では、よりスクリュ全長を短くすることが可能である。
【0016】
尚、特許文献1又は特許文献2においても、ミキシングピースとしてダブルフライトが採用されている(例えば特許文献2の図3(ニ)参照)が、それら特許文献によればフルフライトスクリュでもよいとの記載があり、又、名称からもミキシング機能の追加が目的であることが伺え、ダブルフライトが必須条件でありシール機能の付与を目的とする本発明とは、技術的思想を異にするものである。
【0017】
このように、本発明のスクリュは、遷移ゾーンのダブルフライト部分により、可塑化能力を確保しつつ、高圧ガスのシールと、ガスの溶融樹脂へのより均一な浸透と、を図ることが出来、発泡体を成形する射出成形機のスクリュとして好適なものであり、その他の条件により限定されるものではない。尚、より好ましい発泡体を得るため、より生産性を向上(サイクルタイム短縮、スループット向上)するため、等の理由により、より好ましい態様が挙げられるので、以下にそれらを記す。
【0018】
即ち、本発明においては、第1ゾーン可塑化部の搬送能力と第2ゾーン送出部の搬送能力との比は、1:1.2〜1:1.5であることが好ましい。溶融樹脂への高圧ガスの浸透を、より良好にするためである。第2ゾーンの搬送能力が第1ゾーンの搬送能力に対し1.2倍より小さいと、第1ゾーンからの樹脂の供給が多すぎて、第2ゾーンのガス供給部において溶融樹脂が充満しベントアップを起こし易く、ガス注入孔を閉塞することになる。又、溶融樹脂に高圧ガスが均一に混合し難く、発泡不良を生じ、成形された発泡体に粗大セルが生じ易いので好ましくない。又、第2ゾーンの搬送能力が第1ゾーンの搬送能力に対し1.5倍より大きいと、第1ゾーンからの樹脂の供給が少なすぎ、第2ゾーンのガス供給部においてガスの存在比率が大きくなりスターブ状態(飢餓状態)が極端になって、スクリュ先端部の樹脂溜り部にガスが流入してガスの溜りが出来るので、成形された発泡体に粗大セルが生じ易いので好ましくない。
【0019】
又、同様にスクリュ前端部にガスが流入するのを防止する(脱泡能力を高める)ためには、第2ゾーンの圧縮部の圧縮比が、2.5〜3.5であることが好ましい。圧縮比が2.5未満では、ガスの脱泡が悪く、成形された発泡体に粗大セルが生じ易いので好ましくない。圧縮比が3.5より大きいと、この圧縮部において溶融樹脂が糞詰まり状態になって、ガス供給部においてベントアップが生じ、運転出来なくなるためである。
【0020】
更に、本発明においては、遷移ゾーンのダブルフライトのうちサブフライトは、メインフライトよりも外径寸法が小さく、スクリュを収めるバレルの内径とのクリアランスが0.2〜2.0mmであることが好ましい。より好ましくは、クリアランスは0.4〜1.5mmである。これは、サブフライトをのり越える溶融樹脂の通過量のバランスをとり、可塑化能力とサブフライト部でのガスシール能力を両立させるのに好都合であることによる。クリアランスが0.2mm未満であると、可塑化能力が低下し、生産性が低下するので好ましくない。又、クリアランスが2.0mmより大きいと、後述するサブフライト数にもよるがガスシール能力が低下し、高圧ガスが材料供給部側へ逆流するので好ましくない。
【0021】
本発明においては、遷移ゾーンにおけるサブフライト数は、2〜4であることが好ましい。ここで、サブフライト数について説明する。サブフライト数とは、サブフライトを有する領域(長さ)をサブフライト部のピッチで除した数値である。又、一般的にサブフライト部のピッチはメインフライト部のピッチより大きな値となるため、サブフライト形成部分の長さをメインフライトのピッチで除した数値より小さくなる。本発明では、サブフライト部のフライト部長さ(フライト頂部の展開長さ)を長く出来るので、同じガスシール能力を確保した条件では溶融樹脂がのり越えるための隙間(サブフライト外径とバレル内径とのクリアランス)を大きく出来る。このようにして、ガスシール性を確保しつつ、可塑化能力を確保出来ることになる。遷移ゾーンにおけるサブフライトの山数が2未満であると、ガスシール能力が低下するので好ましくない。又、遷移ゾーンにおけるサブフライトの山数が4より多くても、ガスシール性、溶融樹脂表面への高圧ガスの浸透性に関し大きな向上は見られなく、又、スクリュ全長が長くなるのでコスト面で不利である。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のスクリュについて、図面を参照しながら実施形態を説明するが、本発明はこれらに限定されて解釈されるべきものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々の変更、修正、改良を加え得るものである。尚、本明細書にいう可塑化能力とは、当該可塑化部の搬送能力と同義である。又、高圧ガスとは、概ね2MPa以上の圧力のガスを指しガスを超臨界状態にする圧力に限定されず、本明細書において特に定める場合を除いてこの高圧ガスを単にガスともいう。
【0023】
図2(a)は、本発明のスクリュの側面を示す模式図であり、図2(b)は図2(a)における本発明の特徴部分を拡大した図である。本発明に係るスクリュ10は、2ゾーン構造を呈し、熱可塑性樹脂材料にガスを溶解させて金型に射出充填する発泡体成形用のスクリュである。スクリュ10は、後端側から、材料供給部11、圧縮部12、可塑化部13からなる第1ゾーンと、ガス供給部14、圧縮部22、送出部15からなる第2ゾーンと、を有している。
【0024】
そして、第1ゾーンと第2ゾーンとの間には、メインフライト19とサブフライト29とからなるダブルフライトを有する遷移ゾーン16を備えている。尚、スクリュ10においてサブフライト29の山数は例えば3である。又、メインフライト19は、遷移ゾーン16以外では通常のフライトとして備わるものである(以下、メインフライトを単にフライトともいう)。
【0025】
第1ゾーンにおいて、ペレット状の樹脂材料は、スクリュ10の回転に伴って、材料供給部11において図示しないバレル中に入り、スクリュ10の溝の中を搬送される。フライト19間の溝17の深さが徐々に浅くなる圧縮部12で圧縮されて剪断力を受けるとともに図示しない加熱ヒータにより昇温されて可塑化される。可塑化部13では、樹脂は完全に可塑化され溶融状態になっている(このときの樹脂圧力は可塑化部の流路抵抗により決まる)。
【0026】
次の第2ゾーンのガス供給部14で注入された高圧ガスは、スターブ状態になっている遷移ゾーン16の空間に広がる。この遷移ゾーン16においては、第1ゾーンの可塑化部13で溶融した樹脂材料が、引き続き可塑化されつつスクリュ溝17a(材料供給部に繋がっている)からサブフライト29をのり越えてスクリュ溝17b(ガス供給部に繋がっている)へと移動する。このスクリュ溝17aは前方へいく程、溝幅は狭くなっている。逆に、スクリュ溝17bは前方へいく程、溝幅は広くなっている。ガス供給部に繋がっているスクリュ溝17bは溝深さが深く、溝幅も先端(前方)にいくほど広くなっており、成形材料(溶融樹脂)はスターブ(飢餓)状態にある(図2(c)参照)。又、この部分の樹脂材料のガスと接触出来る表面積が大きく、且つ、スクリュ溝17bはガス注入孔よりも後方(材料供給側)まで延在している。従って、樹脂とガスとの接触面積の増大と接触時間の延長が図れる。
【0027】
第2ゾーンでは、ガス供給部14においては溝17が深くて、溶融樹脂はスターブ状態になっているので、容易にここへ高圧ガスを注入出来る。溶融樹脂は、ガス供給部14においてもガスと接触しつつガスを溶解(浸透)させながら、スクリュ10の溝の中を搬送される。そして、再度、フライト19間の溝17の深さが徐々に浅くなる圧縮部22で昇圧される。一方、バレルは全長に渡って温度調整されており、成形材料に応じて適正に温調されている。圧縮部22で昇圧された溶融樹脂は送出部で計量されてスクリュ先端部に所定の量だけ貯留される。計量された溶融樹脂は射出装置により図示しない金型へ射出充填される。
【0028】
金型に射出充填された樹脂にスキン層が形成された後に、金型を所定の量だけ開放することにより、溶融樹脂中に浸透したガスが発泡し、発泡体が成形される。例えば、ガスとして超臨界状態の二酸化炭素(注入圧力は概ね7.5MPa以上、バレル内で温度200℃以上に加熱されて超臨界状態になる)等の不活性ガスを使用し溶融樹脂中に浸透させることにより、樹脂の粘度を低下させることが出来るため射出圧力はより低くなり、射出時間が短くなって、サイクルタイムを向上させることが出来る。
【0029】
図1は、本発明のスクリュを採用した射出成形機の断面を示す図面である。以下、図2(a)、図2(b)に加えて、図1を参酌しながら、より詳細に説明する。
【0030】
射出成形機100は、バレル1と、バレル1内に駆動可能に設けられているスクリュ10と、スクリュを回転駆動する駆動装置8と、スクリュを前後進させる図示しない射出装置と、金型101とを主構成機器としている。ホッパ4からバレル1内に供給される原料としての樹脂材料3は固体のペレット状であるが、バレル1内で高温、高圧になり、可塑化され、金型101へ射出される。バレル1には、その一方の後端寄りに材料供給孔7が、先端には射出ノズル5が、そしてスクリュ10のガス供給部14相当の位置には高圧ガスを供給するためのガス供給孔2が設けられている。
【0031】
ガス供給孔2から注入されるガス6として例えば二酸化炭素を採用する場合、バレル内で超臨界状態になるように調整されたガス圧力でバレル1内に注入する。ホッパ4から材料供給孔7を介しバレル1内に供給される原料としての樹脂材料3は固体のペレット状であるが、可塑化ゾーン13において溶融状態の樹脂になり、遷移ゾーン16において引き続き可塑化されながら、遷移ゾーン16の前方の第2ゾーンのガス供給部14(低圧)において注入されるガス6をシールする。ガス6は、例えば図示しないガス管をガス供給孔2に接続して供給し、図示しない圧縮機、圧力制御弁等によりバレル1内に注入することが出来る。
【0032】
スクリュ10を駆動するスクリュ駆動装置8は、従来知られたものを採用すればよい。例えば回転油圧モータとピストンユニット等を備え、回転油圧モータの出力軸とスクリュ10の後端に位置するスクリュ軸は、スプライン軸等の機械的手段により接続され、スクリュ10を回転するとともに軸方向に移動可能とする駆動装置を挙げることが出来る。あるいはサーボモータとボールネジを組合せた電動式の駆動装置を使用することも出来る。又、バレル1及び射出ノズル5の外周部には、温度制御される加熱ヒータ9が設けられ、樹脂材料を加熱し温調する。
【0033】
スクリュ10は、可塑化計量時及び射出時には軸方向に移動するが、バレル1に対応して遷移ゾーン16を挟んで第1ゾーンと第2ゾーンとに分けられる。第1ゾーンは、後端側から材料供給部11、圧縮部12、可塑化部13となっている。第1ゾーンにおけるフライト19間の溝17は、材料供給部11では深く、圧縮部12で徐々に浅くなり、可塑化部13では浅い。遷移ゾーン16ではフライト19に加えて、このフライトより外径のやや小さなサブフライト29が形成され、サブフライト29によりフライト19間の溝17は2つに分離されている(図2(b)に示す溝17a及び溝17b)。第2ゾーンは、後端側からガス供給部14、圧縮部22、送出部15となっている。第2ゾーンにおけるフライト19間の溝17は、ガス供給部14では深く、圧縮部22で徐々に浅くなり、送出部15では浅い。第2ゾーンのガス供給部14のフライト19の溝17が深くなっていることから、容易にガスをバレル1内へ注入することが出来る。
【0034】
以下に、本発明に係るスクリュ10を用いた図1に示す射出成形機100による発泡体の成形過程について説明する。尚、図1では、ガス6の注入場所(図1においてガス供給孔2)とダブルフライトを有する遷移ゾーンとの位置関係は、後述する射出・充填完了時における状態を表しており、図2(a)において示した計量完了時(後述する)におけるガスの注入場所と遷移ゾーンとの位置関係とは異なっている。
ここで、ガス注入位置とスクリュとの相対関係について説明する。スクリュは計量値によって後退移動量が異なってくるので、ガス注入位置はこの計量値に応じて位置を決める必要がある。例えば、図1は計量値が大きい場合を示しており、計量完了時点ではガス注入位置がダブルフライト先端部(金型側)もしくはダブルフライトの先端部より1ピッチ前(金型側)の位置になるように決める。このようにして、ガス注入位置は射出完了位置から計量完了位置の間において溶融樹脂がスターブ(飢餓)状態になるようにしておく。
【0035】
先ず、ホッパ4に熱可塑性でペレット状の樹脂材料3を入れる。そして、予め加熱ヒータ9の温度、スクリュ10の回転速度、等を設定しておく。次いで、スクリュ駆動装置8によりスクリュ10を回転駆動して原料たる樹脂材料3の受入を行う。樹脂材料3は材料供給孔7からバレル1内へ入り、スクリュ10の第1ゾーンの材料供給部11に供給される。スクリュ10の回転によりバレル1内を搬送される樹脂材料3は、加熱ヒータ9から加えられる熱と、スクリュ10の回転による摩擦作用・剪断作用を受けるとともに、徐々に溝17が浅くなり圧縮されることにより、完全に溶融され、遷移ゾーン16、第2ゾーンへと送られる。
【0036】
第2ゾーンのガス供給部14において、例えば二酸化炭素ガスが注入される。上記したようにガス供給部14のフライト19の溝は深く、溶融した樹脂材料3はスターブ状態であり、超臨界ガスを容易に注入出来る。注入された二酸化炭素ガスは、バレル1内の温度が概ね200℃以上の高温になっているので超臨界状態のガスとなり、溶融した樹脂材料3に浸透する。
【0037】
このとき、注入した高圧の二酸化炭素ガスは、スクリュ10中を逆流しようとするが、第1ゾーンの可塑化部13で、既に完全に溶融されている樹脂材料3のシール作用により、遷移ゾーン16のダブルフライト部分において押さえられ、材料供給部11の方へ逆流することはない。
【0038】
次いで、ガスが浸透した溶融樹脂材料3は、第2ゾーンの圧縮部22、送出部15へ搬送されて計量される。計量工程が完了すると、射出装置によりスクリュを前進させ、射出ノズル5を介して、金型101へ射出・充填される。そして、発泡のための型開き動作を行った後、冷却固化を待って金型101を開くと、極小さなセルが均一に分布した発泡成形体が得られる。
【0039】
【実施例】
以下に、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0040】
(実施例1)
【0041】
図2(a)に示すスクリュ10と同型のスクリュを用いた射出成形機により、ガスシール試験、可塑化能力試験、発泡性能試験を行った。試験結果を表1に示す。尚、バレルの内径は52mmφ、スクリュ回転数は100rpm(背圧は樹脂圧換算で5MPa)である。第1ゾーンにおいてスクリュのピッチ(メインフライトの間隔)は45mm、可塑化部の溝深さは2.8mmであり、第2ゾーンにおいてスクリュのピッチは52mm、送出部の溝深さは3.3mmである(搬送能力比1:1.36)。又、第2ゾーンの圧縮部の圧縮比は3である。サブフライト数は3、サブフライト外径とバレル内径とのクリアランスは0.8mmである。原料として用いた樹脂材料は宇部興産製1013B(ナイロン6)、樹脂加熱温度は250℃であり、使用したガスは炭酸ガスである。
【0042】
(ガスシール試験) バレルに樹脂を充填した後に、炭酸ガスをガス供給孔から封入し、射出計量を繰り返して、ガスの材料供給側への逆流が起こらない最高のガス注入圧力を測定した。
【0043】
(可塑化能力試験) 樹脂を可塑化して所定量だけ計量するのに要した時間Tを計測し、この間に計量した量を射出して、この射出樹脂量Qを測定して、単位時間あたりに可塑化出来る樹脂量(Q/T)を求めた。
【0044】
(発泡性能試験) 可塑化しガスを浸透させた樹脂を金型に射出・充填した後、キャビティ厚み1mmの金型を1mm開き発泡させて成形して、縦200mm×横200mm×厚さ2mmの平板を得た。そして平板断面の発泡セルの平均径を測定した。上記の発泡セル径は次のようにして測定した。即ち、得られたナイロン6樹脂の発泡成形品をトリミングナイフなどで断面カットし、断面に白金蒸着を行った後、走査電子顕微鏡で断面拡大写真を撮影した。この写真から約300個のセルのセル径をディジタイザーで計測し、平均セル径を算出した。
【0045】
【表1】
【0046】
(実施例2)
【0047】
サブフライト外径とバレル内径とのクリアランスを0.5mmとした以外は、実施例1と同様の条件で、同様の試験を実施した。結果を表1に示す。
【0048】
(比較例1)
【0049】
図5に示すフルフライトのスクリュ50と同型のスクリュを用いた射出成形機により、実施例1と同様の試験を行った。結果を表1に示す。尚、スクリュはピッチが52mm、溝深さは材料供給部で7.5mm、メタリング部で3.3mmであり、圧縮比は2.3である。尚、スクリュ回転数は実施例1と同様である又、原料として用いた樹脂材料、樹脂加熱温度、及び、使用したガスは実施例1と同様である。
【0050】
(比較例2)
【0051】
図3に示す従来の2ステージスクリュ30と同型のスクリュを用いた射出成形機により、実施例1と同様の試験を行った。結果を表1に示す。尚、スクリュのピッチは全長に渡って同じであり、52mm、ガスシールを行う第1メタリング部の溝深さ2.5mmであり、第2メタリング部の溝深さは3.3mmである。尚、スクリュ回転数は実施例1と同様である。又、原料として用いた樹脂材料、樹脂加熱温度、及び、使用したガスは実施例1と同様である。
【0052】
(比較例3)
【0053】
図4(a)に示すミキシングピース付き2ステージのスクリュ40と同型のスクリュを用いた射出成形機により、実施例1と同様の試験を行った。結果を表1に示す。尚、スクリュのピッチと溝深さ及びスクリュ回転数は比較例2と同様である。又、ミキシングピースはマトック式を用い、ミキシングピース部外径とバレル内径とのクリアランスは0.4mmである。又、原料として用いた樹脂材料、樹脂加熱温度、及び、使用したガスは実施例1と同様である。
【0054】
(比較例4)
【0055】
ミキシングピース部におけるミキシングピース外径とバレル内径とのクリアランスを0.8mmとした以外は、比較例3と同様の条件で、実施例1と同様の試験を実施した。結果を表1に示す。
【0056】
(比較例5)
【0057】
サブフライト数を1とした以外は、実施例1と同様の条件で、同様の試験を実施した。結果を表1に示す。
【0058】
(比較例6)
【0059】
サブフライト外径とのバレル内径とのクリアランスを2.5mmとした以外は、実施例1と同様の条件で、同様の試験を実施した。結果を表1に示す。
【0060】
(比較例7)
【0061】
第2ゾーンにおけるスクリュのピッチを45mmとし、第1ゾーンと第2ゾーンとの搬送能力比を1:1.17とした以外は、実施例1と同様の条件で、同様の試験を実施した。結果を表1に示す。
【0062】
(比較例8)
【0063】
第1ゾーンにおけるスクリュのピッチを40mm、可塑化部の溝深さを2.5mmとし、第1ゾーンと第2ゾーンとの搬送能力比を1:1.71とした以外は、実施例1と同様の条件で、同様の試験を実施した。結果を表1に示す。
【0064】
(比較例9)
【0065】
ガス供給部の溝深さを6.6mmとし、第2ゾーンの圧縮部の圧縮比を2にした以外は、実施例1と同様の条件で、同様の試験を実施した。結果を表1に示す。
【0066】
(比較例10)
【0067】
ガス供給部の溝深さを13.2mmとし、第2ゾーンの圧縮部の圧縮比を4にした以外は、実施例1と同様の条件で、同様の試験を実施した。結果を表1に示す。
【0068】
(試験結果について)
【0069】
実施例1及び2については、ガスシール能力と可塑化能力の違いはあるが、発泡性能は同じとなり、評価項目は全て満足出来る結果となった。比較例1は従来の1ステージのスクリュであり、ガス注入位置がスクリュの圧縮部にあり、樹脂のベントアップ等によりガスシールテストは出来なかった。従って、溶融樹脂へのガス浸透・溶解は期待出来ない。比較例2は従来の2ステージのスクリュであり、ガスシール能力は最悪であり、発泡性能も比較的粗大なセルとなった。比較例3はミキシングピース付の2ステージのスクリュであり、このミキシングピースのクリアランスが小さいため可塑化能力が極端に低下している。比較例4は比較例3のミキシングピースのクリアランスを大きくしたものであり、ガスシール能力の低下と発泡セルが粗大化していた。比較例5はダブルフライト部の山数が少ないために、ガスシール性が大きく低下し、比較例4と同じ程度になっていた。比較例6はサブフライトのクリアランスを大きくしたものであり、ガスシール性能の低下と発泡セルの粗大化が見られた。
【0070】
比較例7〜10は圧縮比と送り能力を変えたものであり、フライトクリアランスは変えていないので、ガスシール性は同等で良好であるが、発泡性能が悪い。具体的には、比較例7では、第2ゾーン送出部の樹脂送り能力が低く、ガス供給部でのベントアップが発生した。又、均一にガスが溶解しないため、発泡不良状態となった。比較例8は、第1ステージ可塑化部の可塑化能力が低いため、ガス供給部において、過度のスターブとなり、ガスがスクリュ前方の樹脂溜りに流入して、粗大な発泡セルとなった。比較例9は第2ゾーンの圧縮比が小さいので脱泡性が悪く、ガスの塊が溶融樹脂中に混入して、発泡セルが粗大化した。比較例10は、第2ゾーンの圧縮比が大きく、脱気能力が高すぎる。このため、送出部での流路抵抗が大きくなり、樹脂が圧縮部で糞詰まりの状態となり、ガス供給部でベントアップが発生した。更に、溶融樹脂へのガスの浸透も良くなかった(発泡不良)。
【0071】
【発明の効果】
以上、説明したように、本発明の発泡体射出成形用スクリュによれば、スクリュ式射出成形機を用いた発泡体の成形にかかる従来の問題点を解決することが出来る。即ち、高圧ガスのシール性能と樹脂材料の可塑化能力とを両立し、尚且つ、高圧ガスと溶融した樹脂材料との充分な接触面積乃至接触時間を確保していることから、スクリュの全長を、より短くすることが出来るとともに、例えば二酸化炭素等のガスを超臨界圧力で、溶融樹脂に均一に浸透させ混合させることが可能である。
【0072】
その結果、溶融樹脂の粘度を低下させることにより流動性が向上し、微細な発泡核(ガス)が溶融樹脂に均一に分散した粗大ガス溜りのない成形原料が得られ、この成形原料を、より低圧力で、且つ、短時間で金型に射出・充填することが出来、転写不良及び発泡セル不良の存在ない優れた品質の発泡体を、より低コストで製造することが可能となる、といった優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の発泡体射出成形用スクリュを用いたスクリュ式射出成形機の実施形態を模式的に示す側面から見た断面図であり、射出・充填完了時における状態を表している。
【図2】 図2(a)は、本発明の発泡体射出成形用スクリュを模式的に示す側面図であり、図2(b)は、図2(a)における遷移ゾーン部分を拡大して示す断面図であり、図2(c)は、図2(a)における遷移ゾーン部分において溶融樹脂がスターブ状態になっていることを表す断面図である。
【図3】 従来の2ステージのスクリュを模式的に示す側面図である。
【図4】 図4(a)は、従来のミキシングピース付きの2ステージのスクリュを模式的に示す側面図であり、図4(b)は、図4(a)におけるミキシングピース部分を拡大して示す断面図である。
【図5】 従来の1ステージのスクリュを模式的に示す側面図である。
【符号の説明】
1…バレル、2…ガス供給孔、3…樹脂材料、4…ホッパ、5…射出ノズル、6…ガス、7…材料供給孔、8…スクリュ駆動装置、9…加熱ヒータ、10,30,40,50…スクリュ、11…材料供給部、12,22…圧縮部、13…可塑化部、14…ガス供給部、15…送出部、16…遷移ゾーン、17,17a,17b…溝、19…メインフライト(フライト)、29…サブフライト、31,41,51…材料供給部、33,43…第1メタリング、34,44…低圧部、35,45…第2メタリング、39,49,59…フライト、46…ミキシングピース、52…圧縮部、53…可塑化部、100…射出成形機、101…金型。
Claims (1)
- 熱可塑性樹脂材料にガスを溶解させて金型キャビティに射出充填する発泡体成形用のスクリュであって、
後端側から、材料供給部、圧縮部、可塑化部からなる第1ゾーンと、ガス供給部、圧縮部、送出部からなる第2ゾーンと、を有してなり、
前記第1ゾーンと第2ゾーンとの間にダブルフライトを有する遷移ゾーンを備え、前記第1ゾーンの可塑化部で溶融した樹脂材料とガスとを共存させるとともにガスをシールする機能を有し、
前記第1ゾーンの可塑化部の搬送能力と前記第2ゾーンの送出部の搬送能力との比が、1:1.2乃至1:1.5であり、
前記第2ゾーンの圧縮部の圧縮比が、2.5乃至3.5であり、
前記遷移ゾーンのダブルフライトのうちサブフライトの外径とスクリュを収めるバレル内径とのクリアランスが0.2乃至2.0mmであり、
前記遷移ゾーンのダブルフライトにおけるサブフライト数が、2乃至4である発泡体射出成形用スクリュ。
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