JP4045631B2 - 点火コイル及びその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は点火コイル及びその製造方法に係り、詳しくは、筒状の内側巻線体及び外側巻線体が同心状に配設され、これら両巻線体間に絶縁樹脂層が配設されてなる点火コイル及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より内燃機関のプラグホール内に収納するようにした点火コイルが知られている(例えば、特開平8−293418号公報、特開平9−167709号公報に記載された「内燃機関用点火装置」)。図8に示すように、この種の点火コイル100ではケース101の中心部にインナコア102が配設され、更にこのインナコア102の外周を囲むようにして略円筒状の1次コイル103及び2次コイル104が同心円状に配設されている。これら1次コイル103及び2次コイル104はいずれもボビン103a,104aにエナメル線103b,104bが巻装された構成を有している。また、点火コイル100においては点火プラグに供給される高電圧が発生することから、ケース101内に液状の絶縁樹脂を充填して硬化させることにより絶縁層105を形成し、この絶縁層105によって各部材間における絶縁性を確保するようにしている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、一般に点火コイルにおいてその小型化を図るうえでは、上記のような絶縁層の厚さを絶縁性が確保できる範囲内で薄く設定することが望まれる。特に、上記のようなプラグホール内に収納される点火コイル100にあっては、プラグホール径によってその外径が制限されることから、両コイル103,104の間や2次コイル104の外周側に位置する絶縁層105の厚さを極力薄く設定することが必要になる。
【0004】
しかしながら、このように絶縁層105の厚さを薄く設定した構成にあっては以下のような問題が生じる。
即ち、ケース101内に絶縁樹脂を充填する際に、周囲の空気が巻き込まれて絶縁樹脂の内部に気泡となって混入することがある。また、絶縁樹脂をケース101内に充填する際には通常、真空注入法が採用されるため、エナメル線103b,104bの絶縁被膜中に含まれる揮発性物質が沸点降下により揮発し、その揮発成分が気泡となって絶縁樹脂の内部に混入することもある。このように絶縁樹脂の内部に気泡が混入したとしても通常はその気泡は徐々に外部に抜けるため、気泡が残留したまま絶縁樹脂が硬化してしまう場合は少ない。
【0005】
ところが、上記のように絶縁層105の厚さが薄く設定されていると、換言すれば絶縁樹脂を充填する際にその流路が狭くなっていると、絶縁樹脂中の気泡が抜け難くなるため、気泡が十分に抜けきらないまま絶縁樹脂が硬化してしまうことがある。その結果、絶縁層105には気泡によって誘電率が極めて大きくなった微少空間、即ち部分欠陥が形成されることとなる。そして、このような部分欠陥が電位勾配が極めて大きくなる両コイル103,104間の絶縁層105中に形成されると、その部分欠陥内で放電が繰り返し発生するようになる。その結果、絶縁層105が部分的に焼損してしまい、点火コイル100における信頼性及び耐久性の低下を招くおそれがあった。
【0006】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであり、その目的は上記1次コイル及び2次コイルのような二つの巻線体間の絶縁樹脂層における部分欠陥の発生を抑制して点火コイルの信頼性及び耐久性を向上させることにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1に記載した発明は、筒状をなす内側巻線体と、同内側巻線体の外側に同心状に配設された外側巻線体と、両巻線体の間に配設された絶縁樹脂層と、両巻線体及び絶縁樹脂層を収容するケースとを備えた点火コイルにおいて、外側巻線体はボビンに巻装されないボビンレス構造を有するものであり、外側巻線体の両端側に同外側巻線体と同心状にそれぞれ配設されるとともに外側巻線体の両端側に位置する一部の線材のみが巻装されるリング状部材を備えることをその要旨としている。
【0008】
一般に上記構成を備えた点火コイルを製造する際には、まず、上記内側巻線体及び外側巻線体をケース内に同心状に配設する。そして、ケース内に液状の絶縁樹脂を注入し、同絶縁樹脂を両巻線体の間に充填して硬化させることにより絶縁樹脂層を形成する。
【0009】
ここで、上記構成においては外側巻線体をボビンレス構造としており、そのボビンの分だけ内側巻線体及び外側巻線体間の間隔が拡大されているため、両巻線体間に充填された絶縁樹脂に混入している気泡はその内部から抜け易くなる。その結果、両巻線体間に充填された絶縁樹脂が気泡を含んだまま硬化してしまうことが少なくなり、同絶縁樹脂層における部分欠陥の発生が抑制される。
また、一般に上記外側巻線体や内側巻線体は線材を巻線機の巻取軸によって巻き取ることにより形成される。ここで、外側巻線体をボビンレス構造とした場合、同外側巻線体を巻線機の巻取軸から抜き取る際やケース内に収容する際に外側巻線体には巻崩れが発生し易い。特に、外側巻線体の両側部分ではその中央部分と比較して巻崩れが発生し易くなる。こうした巻崩れが発生すると、外側巻線体と内側巻線体との絶縁距離が十分に確保されなくなり点火コイルの信頼性を低下させるおそれがある。
これに対して、上記構成によれば、外側巻線体の両端部分に位置する一部の線材がリング状部材によって支持されるようになるため、上記のような巻崩れの発生が抑制される。
【0010】
請求項2に記載した発明では、請求項1記載の点火コイルにおいて、内側巻線体と外側巻線体との間に絶縁樹脂層のみを介在させるようにしている。
例えば、本発明とは異なり、内側巻線体と外側巻線体との間に介在物が存在する構成にあっては、その両巻線体間に密着性の悪い異種材料による界面が存在するようになるため、その界面近傍に微少な隙間が生じてこれが部分欠陥となるおそれがある。
【0011】
これに対して、本発明に係る構成によれば、請求項1に記載した発明の作用に加えて、上記のような部分欠陥が発生し易い異種材料による界面が存在しないため、両巻線体間における部分欠陥の発生がより確実に抑制される。
【0015】
請求項に記載した発明では、請求項1又は2記載の点火コイルにおいて、リング状部材は外側巻線体の両端部が接触可能なフランジを有することをその要旨としている。
【0016】
上記構成によれば、請求項1又は2に記載した発明の作用に加えて、特に外側巻線体の軸方向における巻崩れの発生がフランジによって抑制される。
請求項に記載した発明は筒状をなす内側巻線体と、同内側巻線体の外側に同心状に配設された外側巻線体と、両巻線体の間に配設された絶縁樹脂層と、両巻線体及び絶縁樹脂層を収容するケースとを備えた点火コイルにおいて、外側巻線体はボビンに巻装されないボビンレス構造を有するものであり、外側巻線体の線材は外側に接着面を有するテープの当該接着面上に巻装されていることをその要旨としている。
【0017】
上記構成においては外側巻線体をボビンレス構造としており、そのボビンの分だけ内側巻線体及び外側巻線体間の間隔が拡大されているため、両巻線体間に充填された絶縁樹脂に混入している気泡はその内部から抜け易くなる。その結果、両巻線体間に充填された絶縁樹脂が気泡を含んだまま硬化してしまうことが少なくなり、同絶縁樹脂層における部分欠陥の発生が抑制される。
また、上記構成によれば、外側巻線体の線材はテープの接着面に対して接着されるため、同外側巻線体における巻崩れが抑制される。また、一般に、上記外側巻線体は巻線機の巻取軸に線材を巻装することにより形成されるが、上記構成によれば、外側巻線体を上記巻取軸から抜き取る際に、その内周面がテープによって保護されるようになる。
【0018】
請求項に記載した発明では、請求項記載の点火コイルにおいて、テープは螺旋状に巻回されて所定形状に形成されていることをその要旨としている。
上記構成によれば、テープの形状変化が抑制され、その形状が安定して維持されるようになる。
【0021】
請求項に記載した発明では、点火コイルの製造方法において、巻線機の巻取軸に所定間隔を隔てて一対のリング状部材を外嵌する工程と、リング状部材と各リング状部材の間に位置する巻取軸とに対し線材を巻装して外側巻線体を形成する工程と、巻取軸からリング状部材及び外側巻線体を一体に抜き取る工程と、抜き取られたリング状部材及び外側巻線体を筒状の内側巻線体とともにケース内に同心状に配設する工程と、ケース内に液状の絶縁樹脂を注入して両巻線体間に同絶縁樹脂を充填するとともに、当該充填された絶縁樹脂を硬化させて絶縁樹脂層を形成する工程とを有することをその要旨としている。
【0022】
上記製造方法では、線材をボビンではなく巻線機の巻取軸に対して直接巻装するとともに、外側巻線体の両側部分に位置する一部の線材のみをリング状部材に対して巻装することにより外側巻線体が形成される。そして、このようにして得られたボビンレス構造の外側巻線体を用いるようにしているため、同外側巻線体と内側巻線体との間の間隔が大きく確保できる。従って、両巻線体の間に充填された絶縁樹脂に気泡が混入していても、その気泡は絶縁樹脂の内部から外部へ速やかに抜けていくようになる。その結果、絶縁樹脂が気泡を含んだまま硬化してしまうことが少なくなり、両巻線体の間には部分欠陥の少ない絶縁樹脂層が形成されるようになる。
【0023】
更に、外側巻線体の両端部分に位置する線材はリング状部材によって支持されているため、外側巻線体を巻取軸から抜き取る際やケース内に配設する際に、同外側巻線体における巻崩れの発生が抑制される。
【0024】
請求項に記載した発明では、請求項記載の点火コイルの製造方法において、リング状部材として外側巻線体の両端部が接触可能なフランジを有したものを用いるようにしている。
【0025】
上記製造方法によれば、請求項に記載した発明の作用に加えて、外側巻線体を巻取軸から抜き取る際やケース内に配設する際に、特に外側巻線体の軸方向における巻崩れの発生がフランジによって抑制される。
【0026】
請求項に記載した発明では、点火コイルの製造方法において、巻線機の巻取軸に対して片面が接着面であるテープを当該接着面が外周面となるように巻装する工程と、巻装されたテープの外周面に線材を巻装して外側巻線体を形成する工程と、巻取軸からテープ及び外側巻線体を一体に抜き取る工程と、テープ及び外側巻線体を筒状の内側巻線体とともにケース内に同心状に配設する工程と、ケース内に液状の絶縁樹脂を注入してテープ及び内側巻線体間に同絶縁樹脂を充填するとともに、当該充填された絶縁樹脂を硬化させて絶縁樹脂層を形成する工程とを有することをその要旨としている。
【0027】
上記製造方法では、線材をボビンではなく巻線機の巻取軸に対して片面が接着面であるテープを当該接着面が外周面となるように巻装し、そのテープの外周面に線材を巻装して外側巻線体を形成するようにしている。そして、このようにして得られたボビンレス構造の外側巻線体を用いるようにしているため、テープと内側巻線体との間の間隔が大きく確保でき、同テープと内側巻線体との間には部分欠陥の少ない絶縁樹脂層が形成されるようになる。
【0028】
更に、外側巻線体の線材をテープに接着面上に巻装するようにしたため、外側巻線体を巻線機の巻取軸から抜き取る際に、その内周面がテープによって保護される。また、外側巻線体の巻線はテープの接着面に接着されているため、外側巻線体を巻取軸から抜き取る際やケース内に配設する際に、同外側巻線体における巻崩れの発生が抑制される。
【0029】
請求項に記載した発明では、請求項記載の点火コイルの製造方法において、テープを巻線機の巻取軸に対して螺旋状に巻装するようにしている。
上記製造方法によれば、請求項に記載した発明の作用に加えて、テープの形状変化が抑制され、その形状が安定して維持されるようになる。
【0030】
【発明の実施の形態】
[第1の実施形態]
以下、本発明を具体化した第1の実施形態について図1〜4を参照して説明する。図1は本実施形態における点火コイル10を断面を示し、図2は図1の一部分を拡大して示している。
【0031】
この点火コイル10はインナコア12、2次コイル13、1次コイル14、及びアウタコア15等と、これら各部材を収容するケース11とを備えている。また、ケース11には1次コイル14に流れる1次電流を断続制御するためのイグナイタ20が内蔵されている。
【0032】
ケース11内に収容された各部材間の隙間は絶縁性に優れた熱硬化性樹脂(例えばエポキシ樹脂)からなる絶縁層16によって封止されている。この絶縁層16によってケース11内の各部材間における絶縁性が確保されている。
【0033】
ケース11はPBT(ポリブチレンテレフタレート)樹脂等の樹脂材料によって略円筒状に形成されている。このケース11の上端部にはエンジンの制御装置(いずれも図示略)からのハーネス(図示略)が接続される接続部11aや、点火コイル10をエンジンのシリンダヘッド(図示略)にボルト固定するための取付部11bが一体形成されている。
【0034】
また、ケース11の下端部にはPBT樹脂等の樹脂材料からなる円筒部材18が内嵌されている。この円筒部材18の内部には金属製の高圧部材21が固定されており、この高圧部材21には点火プラグ(図示略)と電気的に接続されるスプリング22の上端部が固定されている。また、円筒部材18の下端部にはシリコンゴム等からなる円筒状のゴムブーツ23が被嵌されている。
【0035】
インナコア12は複数の珪素鋼板を積層することにより円柱状に形成されており、上下方向に延びるようにしてケース11内の中心部に配置されている。インナコア12の上下両端部には磁石25,26が固着されており、この磁石25,26及びインナコア12はシリコンゴム等からなるゴム層27によってその全体が被覆されている。
【0036】
上記のようにゴム層27によって被覆された磁石25,26及びインナコア12には略円筒状をなす2次ボビン30が外嵌されている。この2次ボビン30はPPE(ポリフェニレンエーテル)樹脂等の樹脂材料からなり、その外周には軸方向に所定間隔を隔てて複数のリブ31が形成されている。これら各リブ31間には線径が0.03〜0.1mmのエナメル線等からなる絶縁被膜線32が積層して巻回されている。この絶縁被膜線32における高電圧側の端末部分(図示略)は2次ボビン30の下端部に固定されたターミナル33に接続されている。このターミナル33は前述した高圧部材21に接触している。これら絶縁被膜線32及び2次ボビン30により点火用高電圧を発生する2次コイル13が構成されている。
【0037】
2次コイル13の外周側にはその径方向に所定間隔を隔てて円筒状の1次コイル14が外嵌されている。この1次コイル14は2次コイル13と異なり、ボビンを有しないボビンレス構造のコイルであり、巻線体35と、同巻線体35の上下両端部に配置された一対のスリーブ37,38とによって構成されている。この巻線体35は線径が0.3〜1.0mmのエナメル線等からなる絶縁被膜線34を円筒状をなすように二層に巻回することによって形成されている。
【0038】
上記各スリーブ37,38の外周面上には巻線体35の上下両端側に位置する絶縁被膜線34の一部が巻装されている。更に、これら各スリーブ37,38にはその外周に延びるフランジ37a,38aがそれぞれ形成されており、そのフランジ37a,38aには巻線体35の上下両端部がそれぞれ当接されている。
【0039】
巻線体35の外周側にはその径方向(図2の左右方向)に所定間隔を隔てて円筒状のアウタコア15が外嵌されている。このアウタコア15は珪素鋼板からなる円筒管を重合させた二重管構造を有しており、その外周面はケース11の内周面に対して接触している。このアウタコア15の内周面は同アウタコア15と巻線体35との間に形成された絶縁層16に接触している。また、図2に示すように、1次コイル14と2次コイル13との間の間隔G1は2次コイル13とアウタコア15との間の間隔G2よりも大きく設定されている。
【0040】
以上のように構成された点火コイル10はエンジンのシリンダヘッド(図示略)に形成されたプラグホール内に挿入され、取付部11bにおいてシリンダヘッドに対しボルト固定される。このように点火コイル10がシリンダヘッドに固定されると、スプリング22は点火プラグの上部端子(図示略)に接触するとともに、同点火プラグの上端部外周はゴムブーツ23によって覆われる。そして、2次コイル13に発生する点火用高電圧は高圧部材21及びスプリング22を介して点火プラグに供給される。
【0041】
次に上記点火コイル10の製造方法について概略的に説明する。
まず、図3(a)に示すように、巻線機の巻取軸51に対し、巻線体35の軸方向における長さと同じ間隔を隔ててスリーブ37,38をそれぞれ外嵌固定する。そして、図3(b)に示すように、巻取軸51を回転させながら一方のスリーブ37のフランジ37aから他方のスリーブ38のフランジ38aにまで絶縁被膜線34を2層に積層して巻装することにより巻線体35を形成する。その後、これら巻線体35及び各スリーブ37,38を一体にして巻取軸51から抜き取る。
【0042】
また、図示しないが、2次コイル13も同様に巻線機を用いて形成される。即ち、巻取軸51に2次ボビン30を外嵌固定した後、巻取軸51を回転させながら2次ボビン30のリブ31間に絶縁被膜線32を積層して巻装することにより2次コイル13を形成する。そして、この2次コイル13を巻取軸51から抜き取った後、2次ボビン30の内部にゴム層27にて被覆された磁石25,26及びインナコア12を挿入する。
【0043】
次に、2次コイル13を円筒部材18及びゴムブーツ23が取り付けられたケース11の中心部に配設する。この際、2次ボビン30に固定されたターミナル33を前記高圧部材21に接触させる。更に、ケース11内において2次コイル13の外周側に1次コイル14及びアウタコア15を順に同心円状となるようにそれぞれ配設するとともに、前記イグナイタ20を配設する。そして、ケース11を真空室(図示略)内に配置した後、同ケース11内に液状の熱硬化性樹脂を注入し、2次コイル13及び1次コイル14間の隙間を含む、同ケース11内の隙間に熱硬化性樹脂を充填する。その後、ケース11を所定温度にまで加熱し、同ケース11内の熱硬化性樹脂を硬化させることによって絶縁層16を形成する。
【0044】
以上説明したように、本実施形態では1次コイル14をボビンレス構造としており、同1次コイル14は絶縁被膜線34が巻装されるボビンを有していない。従って、ボビンを有する構成と比較して、そのボビンの分だけ1次コイル14と2次コイル13との間の間隔G1、即ち、1次コイル14の絶縁被膜線34と2次コイル13の絶縁被膜線32との間の間隔が大きくなる。このため、熱硬化性樹脂の流路が拡大され、両コイル13,14間に充填された熱硬化性樹脂に混入している気泡は外部へ抜け易くなる。このため、熱硬化性樹脂が気泡を含んだまま硬化してしまうことが少なくなり、両コイル13,14間の絶縁層16における部分欠陥の発生が抑制される。その結果、本実施形態によれば、点火コイル10の信頼性及び耐久性を向上させることができる。
【0045】
また、本実施形態に係る構成とは異なり、絶縁被膜線34が巻装されるボビンを有する構成では両コイル13,14間の間隔G1が狭くなり、両コイル13,14間を流れる熱硬化性樹脂の速度が必然的に低下するようになる。従って、ケース11内に熱硬化性樹脂を一度に注入することが困難となり、その注入作業を複数回に分けて行う必要が生じることとなる。その結果、点火コイル10の製造工数が増加するとともに、熱硬化性樹脂を複数回に分けて注入することによって絶縁層16の均質性が損なわれるおそれがある。
【0046】
この点、本実施形態によれば、両コイル13,14間の間隔G1を大きく確保することができるため、上記のように製造工数を増加させてしまったり、絶縁層16の均質性を損なうようなことがない。
【0047】
更に本実施形態では、2次コイル13の絶縁被膜線32と1次コイル14の絶縁被膜線34との間に絶縁層16のみを介在させるようにしている。例えば、本実施形態とは異なり、両絶縁被膜線32,34の間に何らかの介在物が存在する構成にあっては、これら絶縁被膜線32,34の間に異種材料による界面が存在することとなる。そして、こうした異種材料による界面は通常、密着性が悪いことから、同界面間に微少な隙間が生じてこれが部分欠陥となるおそれがある。
【0048】
この点、本実施形態では、上記のような部分欠陥が発生し易い異種材料による界面が存在していないため、両コイル13,14間の絶縁層16における部分欠陥の発生が確実に抑制される。その結果、点火コイル10の信頼性及び耐久性を一層向上させることができる。
【0049】
ところで、一般に、上記1次コイル14や2次コイル13をボビンレス構造とした場合、これらコイル13,14を巻取軸51から抜き取る際やケース11内に配設する際に、コイル13,14には特にその両端側部分において巻崩れが発生し易い。こうした巻崩れが発生すると各コイル13,14間における絶縁距離が減少して点火コイル10の信頼性低下を招くおそれがあるため、これらコイル13,14における形状の安定化を図ることが望ましい。
【0050】
この点、本実施形態では、相対的に絶縁被膜線34の線径が太い1次コイル14をボビンレス構造としているため、2次コイル13をボビンレス構造とした構成と比較して1次コイル14の形状をより安定化させることができる。従って、1次コイル14を巻取軸51から抜き取る際やケース11内に収容する際に、同1次コイル14における巻崩れの発生が抑制される。その結果、各コイル13,14間における絶縁距離を安定させ、点火コイル10の信頼性低下を回避することができる。
【0051】
また、こうした1次コイル14の形状を安定化させる方法としては、例えば絶縁被膜線34として自己融着線(例えば外周面にエポキシ系樹脂からなる融着層が形成された銅線)を用い、その融着層を溶融させることにより自己融着線同士を接着させることが考えられる。
【0052】
しかしながら、本実施形態のように、1次コイル14を2次コイル13の外周側に配設するようにした構成においては、上記のように自己融着線を用いて1次コイル14を形成すると以下のような問題が生じる。即ち、図4(a)に示すように、自己融着線60を巻線機の巻取軸51に巻装した後、同自己融着線60の融着層61を加熱して溶融させた場合、溶融した樹脂が巻取軸51の表面に沿って流れ、図4(b)に示すように自己融着線60の間に微少な空間62が形成されることがある。
【0053】
このような空間62は巻線体35をケース11内に配設した場合に2次コイル13側に面して位置することになるため、この空間62が部分欠陥となって巻線体35の損傷を招くおそれがあり、特に線径の大きい1次コイル14を自己融着線によって形成するようにした場合には、こうした部分欠陥の発生がより顕著になる。従って、上記のように自己融着線を用いる方法は、本実施形態のようにボビンレス構造を有した1次コイル14を2次コイル13の外周側に配設する構成に対しては適していない。
【0054】
この点、本実施形態によれば、巻線体35の両端側に位置する絶縁被膜線34がスリーブ37,38によって支持されるようになるため、自己融着線を用いた場合と異なり、巻線体35における部分欠陥を招くことなく巻崩れの発生を抑制することができる。その結果、巻崩れの発生に起因した点火コイル10の信頼性低下を回避することができる。
【0055】
特に、本実施形態ではスリーブ37,38にフランジ37a,38aをそれぞれ形成し、このフランジ37a,38aに対して巻線体35の上下両端部をそれぞれ当接させるようにしている。このため、巻線体35の軸方向における巻崩れの発生をこれらフランジ37a,38aによって確実に抑制することができ、点火コイル10の信頼性低下をより確実に回避することができる。
【0056】
また、本実施形態では両コイル13,14間の間隔G1を1次コイル14とアウタコア15との間の間隔G2よりも相対的に大きく設定するようにしている。このため、ケース11内に注入された熱硬化性樹脂は、両コイル13,14間の隙間により早く充填され、図2に矢印で示すように、その隙間から巻線体35の内部を通過して1次コイル14とアウタコア15との間の隙間へと流れるようになる。こうした熱硬化性樹脂の流れが形成されることにより、同熱硬化性樹脂中に気泡が混入していても、その気泡は巻線体35の内部やその外周側に移動するようになるため、両コイル13,14間に残留することが極めて少なくなる。その結果、本実施形態によれば、この点においても両コイル13,14間の絶縁層16に部分欠陥が発生してしまうことを更に抑制することができ、点火コイル10の信頼性及び耐久性を向上させることができる。
【0057】
更に、本実施形態のようにプラグホール内に収容される点火コイル10は、その形状、特にその径が制限され、両コイル13,14間の絶縁層16における電位勾配が極めて大きくなるため、その絶縁層16に部分欠陥が発生した場合には耐久性及び信頼性が大きく低下する傾向がある。この点、本実施形態に係る構成はこのような絶縁層16における部分欠陥の発生を抑制することができるため、上記のような傾向にある点火コイル10に対して好適である。
【0058】
[第2の実施形態]
次に本発明を具体化した第2の実施形態について図5〜7を参照して説明する。尚、上記第1の実施形態と同等の構成については同一の符号を付すことによりその説明を省略するとともに、それら同等の構成に基づいて奏せられる作用効果についても説明を省略する。
【0059】
図5は本実施形態における点火コイル10を断面を示し、図6は図5の一部分を拡大して示している。これら各図に示すように、本実施形態における点火コイル10は巻線体35の内周面を被覆するテープ40を備えている点が上記第1の実施形態と相違している。このテープ40は厚さが0.3〜0.5mmのガラスクロスからなり、その片面はシリコン系接着剤が塗布されることによって接着面となっている。テープ40はその接着面が外周側に位置するようにして筒状に形成されており、その接着面に対して巻線体35の内周面が接着されている。また、図6に示すように、テープ40の内周面と2次コイル14との間の隙間には熱硬化性樹脂が充填硬化されることによって絶縁層16が形成されている。
【0060】
以下、1次コイル14を形成する工程について図7を参照して説明する。
まず、同図(a)に示すように、巻線機の巻取軸51に対して巻線体35の軸方向における長さと同じ間隔を隔ててスリーブ37,38をそれぞれ外嵌固定する。次に、同図(b)に示すように、巻取軸51を回転させながら一方のスリーブ37のフランジ37aから他方のスリーブ38のフランジ38aにまでその接着面が外周側に位置するようにしてテープ40を部分的に重合させつつ螺旋状に巻装する。更に、同図(c)に示すように、、巻取軸51を回転させながら一方のスリーブ37のフランジ37aから他方のスリーブ38のフランジ38aにまで、テープ40の接着面に対して絶縁被膜線34を2層に積層して巻装することにより巻線体35を形成する。その後、これら巻線体35、テープ40及び各スリーブ37,38を一体にして巻取軸51から抜き取る。
【0061】
このように形成された1次コイル14は、第1の実施形態と同様、2次コイル13とともにケース11内に同心円状に配設される。そして、ケース11内には熱硬化性樹脂が注入され硬化されることによって絶縁層16が形成される。
【0062】
以上説明したように、本実施形態では1次コイル14を形成する際に、巻線機の巻取軸51に対してテープ40を巻装し、そのテープ40に絶縁被膜線34を巻装するようにしている。従って、絶縁被膜線34は図6に示すようにテープ40の柔軟性によってその外周面に若干めり込むようになるるため、絶縁被膜線34をテープ40に安定して巻装することができるようになる。その結果、巻線体35における巻線密度の安定化を図ることができるとともに、巻線体35の形状を安定化させることができる。
【0063】
更に、本実施形態によれば、絶縁被膜線34がテープ40の接着面に接着されているため、巻線体35の形状を更に安定化させることができる。従って、巻線体35を巻取軸51から抜き取る際やケース11内に配設する際に、同巻線体35を巻崩れを確実に抑制することができる。その結果、巻崩れに起因した点火コイル10の信頼性低下を未然に防止することができる。
【0064】
ところで、上記のように巻線体35を巻取軸51から抜き取る際には、絶縁被膜線34と巻取軸51とが擦れることにより、同絶縁被膜線34の絶縁被覆が剥がれてしまうことが懸念される。このように絶縁被膜線34の絶縁被覆が剥がれてしまうと、巻線体35に部分的な短絡が発生してその巻数が実質的に変化する結果、点火コイル10において所定の点火用高電圧を発生させることができなくなる。
【0065】
この点、本実施形態によれば、巻線体35を巻取軸51から抜き取る際に、その内周面がテープ40によって保護されるようになる。その結果、巻線体35の損傷を未然に防止することができ、その損傷に起因した点火コイル10の性能低下を防止することができる。
【0066】
以上説明した実施形態は以下のように構成を変更して実施することもできる。・上記各実施形態では、ケース11内において2次コイル13を内周側に、1次コイル14を外周側に配置するようにしたが、これら各コイル13,14の配置位置を逆に設定するようにしてもよい。
【0067】
・上記各実施形態では点火コイル10のケース11内にイグナイタ20を内蔵するようにしたが、同イグナイタ20は点火コイル10の外部に設けられるものであってもよい。
【0068】
・上記各実施形態において、アウタコア15をケース11内に収容せず同ケース11に外嵌する構成を採用してもよい。
・第2の実施形態ではガラスクロスからなるテープ40を用いるようにしたが、このテープ40の材質はガラスクロスに限定されず、例えば絶縁油を含浸させた紙材や膜状の樹脂材であってもよい。
【0069】
・上記各実施形態では、スリーブ37,38によって巻線体35の形状を安定化させるようにしたが、これらスリーブ37,38を省略することもできる。
・上記各実施形態の点火コイル10はいずれもプラグホール内に収容されるものであるが、同点火コイル10は、例えば、シリンダヘッド上に配設されるものであってもよい。
【0070】
上記各実施形態から把握できる技術的思想についてその効果とともに以下に記載する。
(1)請求項1乃至6記載の発明において、前記内側巻線体は点火用高電圧を発生する2次コイルであり、前記外側巻線体は1次コイルであることを特徴とする。
【0071】
このように構成すれば、2次コイルと比較して1次コイルの巻線の線径は相対的に太いため、ボビンレス構造とした外側巻線体の形状を安定化させることができる。従って、例えば、巻線機により形成された外側巻線体を巻取軸から抜き取る際やケース内に配設する際には、その外側巻線体における巻崩れの発生が抑制される。その結果、こうした巻崩れに起因した点火コイルの信頼性低下を回避することができる。
【0072】
特に請求項3乃至6記載の点火コイルにおいて上記特徴的構成を備えるようにすれば、外側巻線体の線材として自己融着線を用いるようにした構成とは異なり、同外側巻線体における部分欠陥の発生を招くことなくその形状を更に安定化させることができる。
【0073】
(2)請求項7乃至11記載の発明において、点火用高電圧を発生する2次コイルを前記内側巻線体として、1次コイルを前記外側巻線体としてそれぞれ前記ケース内に同心状に配設するようにしたことを特徴とする。
【0074】
上記製造方法によれば、2次コイルと比較して1次コイルの巻線の線径は相対的に太いため、ボビンレス構造とした外側巻線体の形状を安定化させることができる。従って、外側巻線体をケース内に配設する際や巻線機の巻取軸から外側巻線体を抜き取る際には、同外側巻線体における巻崩れが抑制される。その結果、外側巻線体の巻崩れに起因した点火コイルの信頼性低下を回避することができる。
【0075】
特に請求項8乃至11記載の点火コイルにおいて上記特徴的構成を備えるようにすれば、外側巻線体の線材として自己融着線を用いるようにした製造方法とは異なり、同外側巻線体における部分欠陥の発生を招くことなくその形状を更に安定化させることができる。
【0076】
【発明の効果】
請求項1に記載した発明では、点火コイルの外側巻線体をボビンに巻装されないボビンレス構造とし、外側巻線体の両端側に同外側巻線体と同心状にそれぞれ配設されるとともに外側巻線体の両端側に位置する一部の線材のみが巻装されるリング状部材を備えるようにしている。従って、内側巻線体及び外側巻線体間の間隔が拡大され、両巻線体間に充填された絶縁樹脂に混入している気泡は抜け易くなる。このため、両巻線体間に充填された絶縁樹脂が気泡を含んだまま硬化することが少なくなり、同絶縁樹脂層における部分欠陥の発生が抑制される。また、外側巻線体の両端側に位置する線材はリング状部材によって支持されるようになり、外側巻線体における巻崩れの発生が抑制される。その結果、本発明によれば、巻崩れに起因した信頼性の低下を回避することができる。
【0077】
請求項2に記載した発明では、内側巻線体と外側巻線体との間に絶縁樹脂層のみを介在させるようにしている。従って、両巻線体の間には部分欠陥が発生し易い異種材料の界面が存在しなくなるため、両巻線体間における部分欠陥の発生がより確実に抑制される。その結果、請求項1に記載した発明の効果に加えて、両巻線体の間における部分欠陥の発生を更に確実に抑制して点火コイルの信頼性及び耐久性を一層向上させることができる。
【0079】
請求項に記載した発明では、リング状部材を外側巻線体の両端部が接触可能なフランジを有するものとしている。従って、このフランジによって外側巻線体の軸方向における巻崩れの発生が抑制される。その結果、本発明によれば、請求項1又は2に記載した発明の効果に加えて、巻崩れに起因した信頼性の低下を更に確実に回避することができる。
【0080】
請求項に記載した発明では、点火コイルの外側巻線体をボビンに巻装されないボビンレス構造としている。従って、内側巻線体及び外側巻線体間の間隔が拡大され、両巻線体間に充填された絶縁樹脂に混入している気泡は抜け易くなる。このため、両巻線体間に充填された絶縁樹脂が気泡を含んだまま硬化することが少なくなり、同絶縁樹脂層における部分欠陥の発生が抑制される。また、外側巻線体の線材を外周面が接着性を有する筒状のテープに巻装するようにしている。従って、外側巻線体の線材はテープの接着面に対し接着され、同外側巻線体における巻崩れが抑制される。更に、巻線機によって形成された外側巻線体を同巻線機の巻取軸から抜き取る際には、その内周面がテープにより保護される。その結果、本発明によれば、外側巻線体の巻崩れに起因した点火コイルの信頼性低下、及び巻線機の巻取軸から外側巻線体を抜き取る際における外側巻線体の損傷を未然に防止することができる。
【0081】
請求項に記載した発明では、テープは螺旋状に巻回されて所定形状に形成されているため、テープの形状変化が抑制され、その形状が安定して維持されるようになる。その結果、外側巻線体における形状の安定化を図ることができ、同外側巻線体の巻崩れに起因した信頼性の低下を更に確実に回避することができる。
【0083】
請求項に記載した発明では、ボビンレス構造の外側巻線体を用いているため、両巻線体の間には部分欠陥の少ない絶縁樹脂層が形成され、また、リング状部材に対し外側巻線体の両端側に位置する一部の線材を巻装するようにしたため、外側巻線体を巻取軸から抜き取る際やケース内に配設する際に、同外側巻線体の巻崩れの発生が抑制される。その結果、本発明によれば、部分欠陥や外側巻線体の巻崩れの発生に起因した信頼性及び耐久性低下を回避することができる。
【0084】
請求項に記載した発明では、リング状部材として外側巻線体の両端部が接触可能なフランジを有したものを用いるようにしている。従って、このフランジにより、外側巻線体を巻取軸から抜き取る際やケース内に配設する際に、特に外側巻線体の軸方向における巻崩れの発生が抑制される。その結果、請求項に記載した発明の効果に加えて、巻崩れに起因した信頼性の低下を更に確実に回避することができる。
【0085】
請求項に記載した発明によれば、ボビンレス構造の外側巻線体を用いているため、テープと内側巻線体との間に部分欠陥の少ない絶縁樹脂層が形成される。また、外側巻線体の線材をテープに巻装するようにているため、外側巻線体を巻線機の巻取軸から抜き取る際に、その内周面がテープによって保護される。更に、外側巻線体の巻線はテープの接着面に接着されているため、外側巻線体を巻取軸から抜き取る際、或いはケース内に配設する際において同外側巻線体における巻崩れが抑制される。その結果、本発明によれば、部分欠陥の発生に起因した点火コイルの信頼性及び耐久性低下を回避することができることに加え、外側巻線体の巻崩れに起因した点火コイルの信頼性低下、及び巻線機の巻取軸から外側巻線体を抜き取る際における外側巻線体の損傷を未然に防止することができる。
【0086】
請求項に記載した発明では、テープを巻線機の巻取軸に対して螺旋状に巻装するようにしているため、テープの形状変化が抑制され、その形状が安定して維持されるようになる。その結果、請求項に記載した発明の効果に加えて、テープ及び外側巻線体を巻取軸から抜き取る際やそれらをケース内に配設する際における外側巻線体の形状安定化を図ることができ、同外側巻線体の巻崩れに起因した信頼性低下をより確実に回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施形態における点火コイルの断面図。
【図2】図1の部分拡大図。
【図3】第1の実施形態における1次コイルの形成工程を説明する説明図。
【図4】巻線機の巻取軸に巻装された巻線体の部分断面図。
【図5】第2の実施形態における点火コイルの断面図。
【図6】図5の部分拡大図。
【図7】第2の実施形態における1次コイルの形成工程を説明する説明図。
【図8】従来の点火コイルの断面図。
【符号の説明】
10…点火コイル、11…ケース、13…2次コイル、14…1次コイル、16…絶縁層、30…2次ボビン、32,34…絶縁被膜線、35…巻線体、37,38…スリーブ、37a,38a…フランジ、40…テープ、51…巻取軸。

Claims (9)

  1. 筒状をなす内側巻線体と、同内側巻線体の外側に同心状に配設された外側巻線体と、前記両巻線体の間に配設された絶縁樹脂層と、前記両巻線体及び前記絶縁樹脂層を収容するケースとを備えた点火コイルにおいて、
    前記外側巻線体はボビンに巻装されないボビンレス構造を有するものであり、前記外側巻線体の両端側に同外側巻線体と同心状にそれぞれ配設されるとともに前記外側巻線体の両端側に位置する一部の線材のみが巻装されるリング状部材を備えたことを特徴とする点火コイル。
  2. 請求項1記載の点火コイルにおいて、前記内側巻線体と前記外側巻線体との間に前記絶縁樹脂層のみを介在させるようにしたことを特徴とする点火コイル。
  3. 前記リング状部材は外側巻線体の両端部が接触可能なフランジを有することを特徴とする請求項1又は2記載の点火コイル。
  4. 筒状をなす内側巻線体と、同内側巻線体の外側に同心状に配設された外側巻線体と、前記両巻線体の間に配設された絶縁樹脂層と、前記両巻線体及び前記絶縁樹脂層を収容するケースとを備えた点火コイルにおいて、
    前記外側巻線体はボビンに巻装されないボビンレス構造を有するものであり、前記外側巻線体の線材は外側に接着面を有するテープの当該接着面上に巻装されていることを特徴とする点火コイル。
  5. 請求項4記載の点火コイルにおいて、前記テープは螺旋状に巻回されて所定形状に形成されていることを特徴とする点火コイル。
  6. 巻線機の巻取軸に所定間隔を隔てて一対のリング状部材を外嵌する工程と、前記リング状部材と各リング状部材の間に位置する巻取軸とに対し線材を巻装して外側巻線体を形成する工程と、前記巻取軸から前記リング状部材及び前記外側巻線体を一体に抜き取る工程と、抜き取られた前記リング状部材及び前記外側巻線体を筒状の内側巻線体とともにケース内に同心状に配設する工程と、前記ケース内に液状の絶縁樹脂を注入して前記両巻線体間に同絶縁樹脂を充填するとともに、当該充填された絶縁樹脂を硬化させて絶縁樹脂層を形成する工程とを有する点火コイルの製造方法。
  7. 前記リング状部材として外側巻線体の両端部が接触可能なフランジを有したものを用いることを特徴とする請求項6記載の点火コイルの製造方法。
  8. 巻線機の巻取軸に対して片面が接着面であるテープを当該接着面が外周面となるように巻装する工程と、前記巻装されたテープの外周面に線材を巻装して外側巻線体を形成する工程と、前記巻取軸から前記テープ及び前記外側巻線体を一体に抜き取る工程と、前記テープ及び前記外側巻線体を筒状の内側巻線体とともにケース内に同心状に配設する工程と、前記ケース内に液状の絶縁樹脂を注入して前記テープ及び前記内側巻線体間に同絶縁樹脂を充填するとともに、当該充填された絶縁樹脂を硬化させて絶縁樹脂層を形成する工程とを有する点火コイルの製造方法。
  9. 請求項8記載の点火コイルの製造方法において、前記テープを前記巻線機の巻取軸に対して螺旋状に巻装するようにしたことを特徴とする点火コイルの製造方法。
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