JP4040584B2 - インクジェット記録方法 - Google Patents

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本発明は、インクジェット記録方法に関し、とりわけ普通紙に対して定着性が高く、高画質なカラー画像が得られるインクジェット記録方法に関する。
インクジェット記録方法は、インクの小滴を飛翔させ、紙等の被記録媒体に付着させて記録を行うものである。吐出エネルギー供給手段として電気熱変換体を用い熱エネルギーをインクに与えて気泡を発生させることにより液滴を吐出させる方法(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)によれば、記録ヘッドの高密度マルチオリフィス化が容易に実現でき、高解像度、高品質の画像を高速で記録できる。
しかしながら、従来のインクジェット記録に用いられるインクは、一般に水を主成分とし、これに乾燥防止、目詰まり防止等の目的でグリコール等の水溶性高沸点溶剤を含有したものが一般的であるが、このようなインクを用いて普通紙に記録を行った場合に、十分な定着性が得られなかったり、記録紙表面の填料やサイズ剤の不均一な分布によると推定される不均一画像が発生することがあった。特に、カラー画像を得ようとした場合には、複数の色のインクが紙に定着する以前に次々と重ねられることから、異色の画像の境界部分では色が滲んだり、不均一に混ざり合ったりして(以下、この現象をブリーディングと呼ぶことにする)満足すべき画像が得られなかった。
これに対して、ブリーディングを改善する手段として、インク中に界面活性剤等の浸透性を高める化合物を添加することが開示されている(例えば、特許文献4参照)。しかし、この方法ではインクの記録紙への浸透性が高まる結果、ブリーディングについてはある程度抑制できるものの、インクの着色剤が記録紙の奥深くまで浸透してしまうために、画像濃度が低下したり、画像の鮮明性が低下したり、被記録媒体の裏面に画像が裏抜けて見える等の不都合があった。又、記録紙表面に対する濡れ性が向上するため、インクが広がり易く、解像性の低下をきたしたり、滲みが発生したり、好ましくないものであった。
更に、上述した問題点を改善するために、記録インクの噴射に先立って被記録媒体上に、画像を良好にせしめる液体を付着させる種々の方法が提案されている。例えば、被記録媒体上に予め、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル等のポリマーの溶液を噴射してから、印字する方法が提案されているが(例えば、特許文献5参照)、ブリーディングは改善されるものの、溶液自体の乾燥性が悪く、定着性が低くなるという問題が懸念される。そして、これを改善するために、例えば、1分子当り2個以上のカチオン性基を有する有機化合物を含有する液体を付着させた後、アニオン染料を含有したインクを記録する方法(例えば、特許文献6参照)や、コハク酸等含有した酸性液体を付着させた後、インクを記録する方法(例えば、特許文献7参照)、更に、染料を不溶化する液体を記録前に付着させる方法(例えば、特許文献8参照)、が開示されている。
しかしながら、上記いずれの方法もブリーディングはある程度抑えられるものの、上記いずれの方法においても、被記録媒体内に反応液が浸透して、被記録媒体中に存在し、且つ媒体表面から反応液がなくなった後の段階で着色インクを付与しており、ほとんどの反応は被記録媒体中で起こるために、得られる画像の発色性が向上しないという問題と、被記録媒体の裏面で着色剤が視認される裏抜けの問題があった。以上のように、反応液が被記録媒体上にあるときに着色インクと反応させると画像の定着性が悪くなる一方、上記した方法のように、反応液が被記録媒体中にあるときに着色インクと反応させると発色性が悪くなる、といった問題の発生が懸念される。
又、多価金属イオンとカルボキシル基の反応を利用してブリーディングを防止することの提案がなされているが(例えば、特許文献9参照)、この場合においても、多価金属イオンを含有した液体を被記録媒体に含浸させてから着色インクと反応させているために、ブリーディングはある程度抑えられるものの、着色インクが被記録媒体に対して浸透性が高いものである場合は、発色性の低下及び裏抜けの問題が懸念され、逆に、浸透性が低いものである場合は、定着に時間がかかるという問題が懸念される。更に又、顔料と樹脂エマルジョンと多価金属塩による反応によってブリーディングを改善する方法の提案もあるが(例えば、特許文献10参照)、基本的な概念は、上記特許文献9とほぼ同じである。
更に、反応液の付与量を、着色インクの付与量の重量比で規定することによって最適化された画質が得られるインクジェット記録方法の提案がある(例えば、特許文献11参照)。ここでは、実質、反応液と着色インクの表面張力により条件は変えているものの、反応液の1ドットが着色インクの1ドットよりも小さくなるようにすることを提案している。しかし、この方法では、2次色、3次色になるに従って反応液の付与量も増加させなければならないため、結果として、2次色及び3次色の印字領域は、大量の溶媒が存在することになり定着に時間がかかることになる。
特公昭61−59911号公報 特公昭61−59912号公報 特公昭61−59914号公報 特開昭55−65269号公報 特開昭56−89595号公報 特開昭63−29971号公報 特開昭64−9279号公報 特開昭64−63185号公報 特開平5−202328号公報 特開平9−207424号公報 国際公開第98/30398号パンフレット
以上、述べてきたように、ブリーディングを改善する手段の一つとして、着色インクと反応液を用いた提案は種々されているが、いずれの場合においてもブリーディングはある程度は改善されるものの、定着性を重視した場合は発色性や裏抜けが低下し、発色性や裏抜けを重視した場合は定着性が低下してしまう。つまり、ブリーディングを軽減するとともに、定着性と発色性・裏抜けを同時に満足できる方法が提案されていないのが現状である。又、反応液の付与量を規定する提案は、着色インクの付与量との比をとる提案になっており、記録方法・条件によっては必ずしも最適な提案とは言い切れない。
本発明は、この点を鑑みてなされたものであり、その目的は、インクジェット記録方法で普通紙等の被記録媒体に印字を行う際の大きな課題であるブリーディングを改善しつつ、定着性と発色性のどちらも犠牲にすることなく、又、被記録媒体における着色インクの裏抜けの課題も改善したインクジェット記録方法を提供することである。
上記の目的は、下記の本発明によって達成される。即ち、本発明の実施態様は、[]顔料インクと、当該顔料インクよりも高い表面張力を有し且つ多価金属塩を含む反応液とを吐出するための記録部を被記録媒体に対し相対的に走査させながら、前記記録部から顔料インク及び反応液を前記被記録媒体に吐出して記録を行うインクジェット記録方法であって、前記記録部から前記反応液を前記被記録媒体に吐出する工程と、前記被記録媒体上に液状で存在している反応液に対して前記記録部から前記顔料インクを吐出して、前記反応液と前記顔料インクとの接触により生成される顔料凝集物が集合してなる膜状の凝集体を前記液状で存在している反応液の表面上に形成する工程とを有し、前記形成工程では、(A)前記液状で存在している反応液と前記被記録媒体との境界に向かって前記顔料凝集物が反応液の表面上を移動し、(B)当該顔料凝集物の移動によって反応液の表面に沿って前記顔料凝集物が連なり、(C)これにより、前記膜状の凝集体が前記反応液の表面上に形成され、前記反応液の1ドットあたりの吐出体積をVd(pl)、前記相対走査の方向の記録解像度をRx(dpi)、前記相対走査の方向と直交する方向の記録解像度をRy(dpi)、前記反応液の記録デューティーをduty(%)とした場合、前記反応液の吐出条件が、
Figure 0004040584
なる関係を満たすことを特徴とするインクジェット記録方法である。
本発明の別の実施態様は、[]顔料インクと、当該顔料インクよりも高い表面張力を有し且つ多価金属塩を含む反応液とを吐出するための記録部を被記録媒体に対し相対的に走査させながら、前記記録部から顔料インク及び反応液を前記被記録媒体に吐出して記録を行うインクジェット記録方法であって、前記記録部から前記反応液を前記被記録媒体の所定領域に吐出する工程と、前記被記録媒体の所定領域に液状で存在している反応液に対して前記記録部から前記顔料インクを吐出して、前記反応液と前記顔料インクとの接触により生成される顔料凝集物が集合してなる膜状の凝集体を前記液状で存在している反応液の表面上に形成する工程とを有し、前記形成工程では、(A)前記液状で存在している反応液と前記被記録媒体との境界に向かって前記顔料凝集物が反応液の表面上を移動し、(B)当該顔料凝集物の移動によって反応液の表面に沿って前記顔料凝集物が連なり、(C)これにより、前記膜状の凝集体が前記反応液の表面上に形成され、少なくとも、前記所定領域におけるインクの記録デューティーが100%の場合、前記所定領域に対する反応液の吐出条件が、
Figure 0004040584
(但し、
Vd(pl):反応液の1ドットあたりの吐出体積、Rx(dpi):相対走査の方向の記録解像度、Ry(dpi):相対走査の方向と直交する方向の記録解像度、duty(%):反応液の記録デューティー)なる関係を満たすことを特徴とするインクジェット記録方法である。
本発明によれば、定着性及び発色性に優れ、裏抜け及びブリーディングを低減した記録方法、特にインクジェット記録方法を実現することができる。
以下に発明を実施するための最良の形態を挙げて、本発明を更に詳細に説明する。先ず、本発明の前提となるインクジェット記録方法について、図12〜図15を用いて説明していく。
図12は、本発明の前提となる基本的なインクジェット記録方法の概念を模式的に示したものである。図12(a)は、被記録媒体10の上面で反応液20と顔料インク30を接触させる工程を表しており、予め反応液20を付与してある被記録媒体10に、顔料インク30を付与して反応液20と接触させた瞬間を示している。尚、ここでは、反応液と顔料インクを液状で接触させるという観点及び膜状の凝集体を速やかに定着させるという観点から、反応液の浸透性よりも顔料インクの浸透性を高くしている。詳しくは、反応液の表面張力よりも顔料インクの表面張力を低くしている。この表面表力の関係は、例えば、反応液と顔料インク中の界面活性剤の含有比率を変えることにより調整可能である。
反応液20の付与方法は、周知技術であるインクジェット法による付与が好適に使用できる。又、被記録媒体10の上面で反応液20と顔料インク30を接触させるためには、被記録媒体10に付与される反応液20が被記録媒体10に浸透しきる前に顔料インク30を付与する必要がある。言い換えれば、被記録媒体の上面にて反応液が液状で存在している間に顔料インクを接触させる。これを実現するためには、低浸透性の反応液20を用いることが好ましい。反応液20が被記録媒体10に対して低い浸透性を有していれば、顔料インク30を付与するまでの時間をある程度置くことができるため好適な記録条件を設定しやすい。
次いで、図12(b)、(c)及び(d)は、反応液と顔料インクが接触した界面で膜状の凝集体31cを形成させる工程を表している。この工程は、前の工程の直後、顔料の凝集物31bが集合してなる膜状の凝集体31cを形成することにある。尚、凝集物31bが集合して膜状の凝集体31cが形成されていく様子は、下記図13にて詳細に説明する。
膜状の凝集体31cを構成する凝集物31bを形成するには、顔料インク30中に含有されている成分と反応して顔料に凝集を起こさせる必要がある。その最適な手法は、反応液中に多価金属イオンを含有させて顔料を凝集させる方法であって、この方法に、反応液を低pHにして酸析現象を利用する方法、カチオン性有機物質を含有させて凝集させる方法等を併用することもできる。
反応液に含有される多価金属イオン21は、顔料インク30中のカルボン酸イオン、スルホン酸イオン、リン酸イオン等と衝突することによって反応を起こし、これにより顔料の分散性を低下させ、結果的に、顔料の凝集を生じさせる。この顔料の凝集は、上記衝突の確率を高める程生じ易い。従って、反応液20に含有される多価金属イオン21は、顔料インク30中の多価金属イオン21と反応する逆極性イオンの総電荷濃度より多く含有させることが好ましい。ここでの総電荷濃度とは、反応液では単位質量当たりにおける多価金属イオンの数を、顔料インクでは単位質量当たりにおけるカルボン酸イオン、スルホン酸イオン、リン酸イオン等の逆極性イオンの数で定義している。
そして、このような反応液が被記録媒体の上面にて液状で存在している間に顔料インクを接触させると、図12(b)で示すように、高い衝突確率のために瞬時に顔料インク30中のカルボン酸イオン、スルホン酸イオン、リン酸イオン等と多価金属イオンの結合が起こり、分散状態にある顔料粒子31の電気的斥力を消失させた顔料粒子31aが生成される。そして、図12(c)及び(d)で示すように、顔料粒子31a同士の間に働くファンデルワールス引力により、急速に顔料粒子31a同士による凝集物31bが形成され、これら凝集物31bが集合することによって膜状の凝集体31cが形成される。
ここで、凝集物31bの集合体である膜状の凝集体31cを形成するメカニズムについて、図13を用いてより詳細に説明する。図13は、図12(b)〜(d)の破線枠で示した部位を拡大した図である。先ず、図13(a)に示されるように、顔料インク30が反応液20に接触した直後形成される凝集物31bは、反応液20の表面を界面活性剤32と共に移動していく。反応液20の表面を凝集物31bと界面活性剤32が移動するのは、顔料インク30中の界面活性剤32の含有率を高くしたことにより、顔料インク30中の界面活性剤32が反応液20と接触したときに、反応液20の表面を配向移動するからであり、この界面活性剤の流れに伴って凝集物31bも移動するからである。その後、図12(b)に示されるように、凝集物31bは反応液20と被記録媒体10の境界で止まり、又、後続の凝集物31bも移動してくる。そして、図12(c)に示されるように、次々と形成される凝集物31bが反応液20の表面に配向していく。最終的には、図12(d)に示されるように、凝集物31bの密度が高まり、反応液20の表面で凝集物31bが集合してなる膜状の凝集体31cが形成される。
このようにして形成された膜状の凝集体31cの特徴は、顔料粒子同士が凝集したものであることから、完全に何も通さない膜ではなく、これらの顔料粒子間を通って、顔料粒子より小さい顔料インク30中の界面活性剤32、溶媒、そして反応液中の多価金属イオン21、溶媒は少なくとも通すことができる。
次に、図12(e)及び(f)について説明する。図12(e)及び(f)は、被記録媒体10に対する反応液20の浸透性を促進させるプロセスと、膜状の凝集体31cを被記録媒体10の表面に定着させるプロセスをほぼ同時に進行させる工程を時系列的に表したものである。
顔料インク30中に含有される界面活性剤32に代表される浸透促進剤と溶媒は反応液20中に拡散していき、この拡散に伴って、反応液の浸透性が高まり、反応液20中の溶媒成分及び顔料インク30中の溶媒成分が被記録媒体10に速やかに浸透していく。
そして、このプロセスが進行した状態が図12(e)であり、最終的には図12(f)で示すように、膜状の凝集体31cが被記録媒体10(例えば、複数の繊維で構成される普通紙)の表面に覆い被さるように定着して凝集膜31dを形成する。実際には、普通紙の表面は繊維の凹凸による起伏があるため、図14(a)で示されるように、膜状の凝集体31cが形成された後、反応液20中の溶媒成分及び顔料インク30中の溶媒成分が被記録媒体10に速やかに浸透して、図14(b)で示されるような繊維の凹凸からなる起伏に沿って膜状の凝集体31cは覆い被さり、最終的には凝集膜31dとなって定着する。このときの凝集膜31dの特徴として、繊維間の谷部(凹部)を跨いで被覆するようなブリッジ状の凝集膜31dとなっていたり、また凝集膜31dにクラックが入ることが見られることもある。
そして、この工程により、定着性と発色性の両立が図れる。即ち、反応液20と顔料インク30の混合液体成分が被記録媒体10に速やかに浸透していき、膜状の凝集体31cを被記録媒体の表面に速やかに定着させることで、速い定着が達成できる。又、被記録媒体の表面に覆い被さるように定着された凝集膜31dにより高い発色性が達成できる。
一方、前述した背景技術(前記特許文献1〜11に記載の技術)には、顔料インクと反応液との接触界面において凝集物31bが集合してなる膜状の凝集体31cを形成することの知見は存在せず、これら従来技術では膜状の凝集体31cを形成することはできない。そして、これら従来技術では、膜状の凝集体31cの形成がなされていないため、最終的な被記録媒体表面には図15に示されるような凝集物31bが形成されるに過ぎず、凝集膜31dが形成されるときのような高発色性を得ることはできない。
さて、今述べてきた前提条件となるインクジェット記録方法において、それぞれの条件が欠落した場合について下記に説明する。先ず、被記録媒体10の上面でないところで反応液とインクとを接触させた場合について説明する。反応液20を被記録媒体10に含浸させて顔料インク30と接触させると、殆どの反応は被記録媒体10中で起こるため、顔料粒子の分布は被記録媒体10の表面よりも内部で多くなり、このことにより高発色性を得ることができない。又、反応液の界面での凝集物31bの生成が起こらないことから、凝集物31bの集合体である膜状の凝集体31cが形成されるはずもなく、この理由からも高発色性を得ることができない。更に、被記録媒体の裏面から着色剤が透けてみえる裏抜け問題も発生する。
又、被記録媒体10に対して反応液20の浸透性が高い場合は、顔料インクを付与するまでの時間を短くしなければならない。このことは、記録条件の条件設定範囲を狭くすることを意味している。例えば、反応液20を付与した後に黒色顔料インク、カラー顔料インクを順次付与させていく記録方法において、黒色顔料インクと複数のカラー顔料インクの全てを短い時間に付与しなければならなくなるので、記録装置の駆動を高速に行わなければならない等の不都合が生じてくる。更に、反応液20の浸透性は、被記録媒体10の種類により異なるため、異なる被記録媒体10では被記録媒体10に依存した画像が形成される可能性があり、安定した記録物が得られないことが懸念される。更に、黒色顔料インク、カラー顔料インクとの反応速度の違いにより、被記録媒体10の上面で接触させたとしても、被記録媒体10の表面ではなく、被記録媒体に浸透してから反応が終了する可能性もあり、この場合にもまた、安定した記録物を得られない可能性がある。
次に、膜状の凝集体31cが形成されない場合について説明する。顔料粒子が電気的斥力を消失して凝集しても膜状にならず、いくつかの顔料粒子同士が集まった細かい凝集物を形成する場合がある。本発明者らの検討では、この凝集物31bの大きさは10μm以下の場合が多く、このように形成された細かい凝集物は、反応液20と顔料インク30の液体成分が浸透するに伴って、ほとんどの凝集物が液体成分と一緒に被記録媒体10の繊維間に流れていくことが分かっている。このため定着性は優れていても、発色性の低い記録物になってしまう恐れがある。
次に、顔料インク中の界面活性剤32に代表される浸透促進剤が反応液20中に拡散することによる反応液の浸透性の変化であるが、もし、浸透促進剤が反応液20中に拡散しなかった場合は、反応液の浸透性が変化せず、顔料インク30の液体成分は膜状の凝集体31c上に保持される。そのため、印字部は長時間かけて溶媒を乾燥させることになり、定着性が低くなってしまう問題が発生する。又、顔料インクに浸透促進剤がない場合も同様で、反応液20の浸透性は変化しないために、印字部は長時間に渡って液体を保持することになり定着性が低下する問題が発生する。
次に、本発明を特徴づける反応液の付与形態について述べる。本発明者らは、印字物の、発色性、定着性、ブリーディング、色の裏抜け問題の諸問題を同時に解決するための手法を鋭意検討した。その結果、被記録媒体への反応液の付与形態を、下記式(1)となるように制御すれば上記諸問題の解決を達成できる、ということを見出した。
Figure 0004040584
上記式(1)で、Vd(pl)は、反応液の1ドットあたりの吐出体積である。Rx(dpi)は、記録方向の解像度である。記録方向とは、反応液の吐出動作を伴う、記録ヘッドと被記録媒体との相対走査の方向である。尚、dpiとは、dot/inchの略であり、1インチあたりのドット数を表した単位である。Ry(dpi)は、記録ヘッドの相対走査の方向と直交する方向の解像度である。ノズル配列方向は、上記した相対走査による記録方向と略直交する。duty(%)は、反応液の記録ディーティー(duty)を表している。
ここで、「記録デューティー(duty)」とは、記録解像度(Rx、Ry)によって定まる画素数に対する実際の吐出ドット数の割合のことである。例えば、記録解像度(Rx×Ry)を1,200dpi×1,200dpiとした場合、1/1,200inch×1/1,200inchの単位領域が1画素と定義され、これに伴い被記録媒体上の所定領域における画素の数Nも定義される。そして、所定領域における反応液の記録デューティー(duty)は、所定領域に実際に吐出されるドット数M÷所定領域における画素数N×100により算出される。尚、ここで、所定領域とは、被記録媒体上の全域に対応した領域であってもよいし、記録ヘッドの1回の走査に対応した1バンド領域であってもよいし、この1バンド領域を更に分割してなる分割領域であってもよい。
このように記録デュ−ティー(duty)は、記録解像度(Rx、Ry)によって定まる画素に対して平均M/N発のドットが打ち込まれることを意味し、例えば、記録デュ−ティー100%とは、画素に対して平均1発のドットが打ち込まれることを意味し、記録デュ−ティー25%とは、画素に対して平均0.25発のドットが打ち込まれることを意味する。
さて、上記式(1)は、本発明者らの検討によって導き出されたものであり、後述する表1に示される実施例と比較例の結果を元に、本発明の目的を満足する複数のデータ値から吐出体積Vd(pl)と印字dutyの関係を累乗近似し、これに記録解像度(Rx、Ry)に対して反比例するように補正して得た式である。
図16〜図18は、後述する表1の実施例及び比較例に示される反応液の吐出条件(吐出体積Vd、記録デューティー(duty))を、記録解像度(Rx、Ry)毎にプロットしたグラフである。図16は、記録解像度(Rx、Ry)がRx=1,200、Ry=1,200であるときの反応液の吐出体積Vd(pl)と印字dutyの関係を表したものである。図17は、記録解像度(Rx、Ry)がRx=600、Ry=1,200であるときの反応液の吐出体積Vd(pl)と印字dutyの関係を表したものである。図18は、記録解像度(Rx、Ry)がRx=600、Ry=600であるときの反応液の吐出体積Vd(pl)と印字dutyの関係を表したものである。
図16〜図18において、上側の線と下側の線に挟まれた領域が、発色性・定着性・ブリーディング・色の裏抜けを満足する条件に対応した領域(OK領域)である。そして、これら3つのグラフのOK領域を満たすよう、累乗近似により導いた式に、記録解像度(Rx、Ry)に対して反比例するように補正した式が上記式(1)である。
ところで、後述するように、上記式(1)は、インクの記録デューティー(以下、インクデューティーという)が100%のときの最適な反応液吐出条件を規定したものである。従って、インクデューティーが100%のときには、上記式(1)を満たしている必要がある。しかし、インクデューティーが100%以外のときまでは、上記式(1)を満たしている必要はない。本発明は、少なくともインクデューティーが100%のときに上記式(1)を満たすような形態であればよく、インクデューティーが100%である所定領域に対する反応液の吐出条件が、上記式(1)の関係を満たしさえすれば十分である。勿論、インクデューティーに関係なく、常に上記式(1)を満たす形態であってもよい。
先に述べた前提となる記録方法において、印字物の、発色性、定着性、ブリーディング、色の裏抜け問題の諸問題の解決に対する最適な記録条件は、反応液の付与量と顔料インク(着色インク)の付与量との相関関係によって定められるのではなく、反応液の付与量によって決定づけられているのが特徴である。その理由は、前提となるインクジェット記録方法は、反応液と顔料インクが接触した界面で瞬時に膜状の凝集体を形成することに特徴があり、接触する界面は顔料インクの付与量に依存するものではなく、付与される位置の面積に依存すると推定されるからである。そのため反応液の付与量は、顔料インクの2次色、3次色の付与量に関係なく一定であり、1次色と同じ付与量でよいことになる。
ところで、上記式(1)の右辺を超えた場合、反応液の液滴はドット形状を維持せず、被記録媒体の表面一面が反応液で濡れた状態となっている。反応液が被記録媒体の表面を覆う割合である被覆率で概算すると100%に近い状態となっている。このとき、先に述べた前提となる記録方法では、反応液と顔料インクが接触したことで生じた顔料の凝集物は、顔料インク中の界面活性剤が反応液界面を移動していく流れに沿って一緒に移動していくため、隣接に異なる色のドットが配置されると一見ブリーディングのような印刷物となってしまう。又、反応液の量が多いため、定着に要する時間も長くなってしまい、定着性にも難がある。
一方、上記式(1)の左辺を下回った場合、反応液の液滴はドット形状を維持し、隣接するドットとは接触せずに孤立して存在しているが、反応液の存在しないところでも顔料インクによる画像形成が為されることから、反応しない顔料インクが多量に発生してしまう。このことによって、発色性は低下し、ブリーディングは悪くなり、色の裏抜けが発生してしまう。
次に、本発明において使用する反応液について説明する。本発明における反応液に含有させる顔料インクと反応する反応剤としては、最も好適なものとして多価金属塩を挙げることができる。多価金属塩は、二価以上の多価金属イオンとこれら多価金属イオンに結合する陰イオンとから構成される。多価金属イオンの具体例としては、Ca2+、Cu2+、Ni2+、Mg2+、Zn2+等の二価金属イオン、そしてFe3+、Al3+等の三価金属イオンが挙げられる。又、陰イオンとしては、Cl-、NO3 -、SO4 2-等が挙げられる。反応液と顔料インクが接触した界面で瞬時に凝集膜を形成させるためには、両者が瞬時に反応するように構成することを要するが、例えば、反応液中の多価金属イオンの総電荷濃度を、顔料インク中の逆極性イオンの総電荷濃度の2倍以上となるようにすることが望ましい。
本発明において使用する反応液は、上記したような反応剤を含有し、被記録媒体に付与され、後から付与されてくる顔料インクによって良好な画像を形成できるものであればいずれのものであってもよい。例えば、上記した反応剤を、水或いは水と水溶性有機溶剤とからなる水性液媒体に溶解したものが好ましい。使用できる水溶性有機溶剤としては、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類、アセトン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオジグリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール等のアルキレングリコール類、エチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール等の1価アルコール類の他、グリセリン、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−イミダゾリジノン、トリエタノールアミン、スルホラン、ジメチルサルホキサイド等が挙げられる。本発明における反応液中における上記水溶性有機溶剤の含有量については特に制限はないが、反応液全質量の5〜60質量%、更に好ましくは、5〜40質量%が好適な範囲である。
又、本発明で使用する反応液には、更にこの他、必要に応じて、粘度調整剤、pH調整剤、防腐剤、酸化防止剤等の添加剤を適宜に配合しても構わないが、浸透促進剤として機能する界面活性剤の選択と添加量は、被記録媒体に対する反応液の浸透性を適宜なものに抑制する上で、注意が必要である。更に、本発明で使用する反応液は、無色であることがより好ましいが、被記録媒体上でインクと混合された際に、各色インクの色調を変えない範囲の淡色のものでもよい。更に、本発明で使用する反応液は、25℃付近での粘度が1〜30cps.(mPa・s)の範囲となるように調整されたものが好ましい。
次に、本発明における顔料インクについて説明する。本発明で使用される顔料インクの顔料は、顔料インクの全質量に対して、質量比で1〜20質量%、好ましくは2〜12質量%の範囲で用いる。本発明において使用される顔料としては、具体的には、黒色の顔料としてはカーボンブラックが挙げられ、例えば、ファーネス法、チャネル法で製造されたカーボンブラックであって、一次粒子径が15〜40mμ(nm)、BET法による比表面積が50〜300m2/g、DBP吸油量が40〜150ml/100g、揮発分が0.5〜10%、pH値が2〜9等の特性を有するものが好ましく用いられる。このような特性を有する市販品としては、例えば、No.2300、No.900、MCF88、No.33、No.40、No.45、No.52、MA7、MA8、No.2200B(以上、三菱化成製)、RAVEN1255(以上、コロンビア製)、REGAL400R、REGAL330R、REGAL660R、MOGUL L(以上キャボット製)、Color Black FWl、Color Black FW18、Color Black S170、Color Black S150、Printex 35、Printex U(以上、デグッサ製)等があり、いずれも好ましく使用することができる。
又、イエローの顔料としては、例えば、C.I.Pigment Yellow 1、C.I.Pigment Yellow 2、C.I.Pigment Yellow 3、C.I.Pigment Yellow 13、C.I.Pigment Yellow 16、C.I.Pigment Yellow 83等が挙げられ、マゼンタの顔料としては、例えば、C.I.Pigment Red 5、C.I.Pigment Red 7、C.I.Pigment Red 12、C.I.Pigment Red 48(Ca)、C.I.Pigment Red 48(Mn)、C.I.Pigment Red 57(Ca)、C.I.Pigment Red 112、C.I.Pigment Red 122等が挙げられ、シアンの顔料としては、例えば、C.I.Pigment Blue 1、C.I.Pigment Blue 2、C.I.Pigment Blue 3、C.I.Pigment Blue 15:3、C.I.Pigment Blue 16、C.I.Pigment Blue 22、C.I.Vat Blue 4、C.I.Vat Blue 6等が挙げられる。勿論、本発明は、これらに限られるものではない。又、以上の他、自己分散型顔料等、新たに製造された顔料も、勿論、使用することが可能である。
又、本発明で使用する顔料インクは、上記したような顔料の分散剤を含有するものであってもよい。この際に使用する分散剤としては、水溶性樹脂ならどのようなものでもよいが、重量平均分子量が1,000〜30,000の範囲のものが好ましく、更に好ましくは、3,000〜15,000の範囲のものを使用する。このような分散剤としては、具体的には、例えば、スチレン、スチレン誘導体、ビニルナフタレン、ビニルナフタレン誘導体、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸の脂肪族アルコールエステル等、アクリル酸、アクリル酸誘導体、マレイン酸、マレイン酸誘導体、イタコン酸、イタコン酸誘導体、フマール酸、フマール酸誘導体、酢酸ビニル、ビニルピロリドン、アクリルアミド、及びその誘導体等から選ばれた少なくとも2つの単量体(このうち少なくとも1つは親水性の重合性単量体)からなるブロック共重合体、或いは、ランダム共重合体、グラフト共重合体、又はこれらの塩等が挙げられる。或いは、ロジン、シェラック、デンプン等の天然樹脂も好ましく使用することができる。これらの樹脂は、塩基を溶解させた水溶液に可溶であり、アルカリ可溶型樹脂である。尚、これらの顔料分散剤として用いられる水溶性樹脂は、顔料インクの全質量に対して0.1〜5質量%の範囲で含有させるのが好ましい。
特に、上記に列挙したような顔料が含有されている顔料インクの場合には、顔料インクの全体が中性又はアルカリ性に調整されていることが好ましい。このようなものとすれば、顔料分散剤として使用される水溶性樹脂の溶解性を向上させ、長期保存性に一層優れた顔料インクとすることができるので好ましい。但し、この場合、インクジェット記録装置に使われている種々の部材の腐食の原因となる場合があるので、好ましくは、7〜10のpH範囲とするのが望ましい。この際に使用されるpH調整剤としては、例えば、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の各種有機アミン、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物等の無機アルカリ剤、有機酸や鉱酸等が挙げられる。上記したような顔料及び分散剤である水溶性樹脂は、水性液媒体中に分散又は溶解される。
本発明で使用される顔料インクは、顔料及び必要に応じて使用される分散剤を水性液媒体に分散或いは溶解してなるが、水性液媒体として好適なものは、水及び水溶性有機溶剤の混合溶媒であり、水としては種々のイオンを含有する一般の水ではなく、イオン交換水(脱イオン水)を使用するのが好ましい。
水と混合して使用される水溶性有機溶剤としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール等の炭素数1〜4のアルキルアルコール類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;アセトン、ジアセトンアルコール等のケトン又はケトアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオジグリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール等のアルキレン基が2〜6個の炭素原子を含むアルキレングリコール類;グリセリン;エチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、ジエチレングリコールメチル(又はエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類;N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等が挙げられる。これらの多くの水溶性有機溶剤の中でも、特に、ジエチレングリコール等の多価アルコール、トリエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテルが好ましい。
上記したような水溶性有機溶剤の顔料インク中の含有量は、一般的には、顔料インクの全質量の3〜50質量%の範囲、より好ましくは3〜40質量%の範囲で使用する。又、使用される水の含有量としては、顔料インクの全質量の10〜90質量%、好ましくは30〜80質量%の範囲とする。
又、本発明における顔料インクとしては、上記の成分の他に、必要に応じて所望の物性値を持つ顔料インクとするために、界面活性剤、消泡剤、防腐剤等を適宜に添加することができる。特に、浸透促進剤として機能する界面活性剤は、第3ステップで、被記録媒体に反応液や顔料インクの液体成分を速やかに浸透させる役割を担うため、かかる役割を果たすことのできる適量を添加する必要がある。添加量の例としては、顔料インク中に0.05〜10質量%、好ましくは0.5〜5質量%が好適である。アニオン性界面活性剤の例としては、カルボン酸塩型、硫酸エステル型、スルホン酸塩型、燐酸エステル型等、一般に使用されているものをいずれも好ましく使用することができる。
上記したような成分からなる顔料インクの作製方法としては、初めに、分散剤としての水溶性樹脂と、水とが少なくとも含有された水性媒体に顔料を添加し、混合撹拌した後、後述の分散手段を用いて分散を行い、必要に応じて遠心分離処理を行って所望の分散液を得る。次に、この分散液にサイズ剤、及び、上記で挙げたような適宜に選択された添加剤成分を加え、撹拌して本発明で使用する顔料インクとする。
尚、分散剤として前記したようなアルカリ可溶型樹脂を使用する場合には、樹脂を溶解させるために塩基を添加することが必要であるが、この際の塩基類としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、アミンメチルプロパノール、アンモニア等の有機アミン、或いは水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等の無機塩基が好ましく使用される。
又、顔料インクの作製方法においては、顔料を含む水性媒体を攪拌し、分散処理する前に、プレミキシングを30分間以上行うのが効果的である。即ち、このようなプレミキシング操作は、顔料表面の濡れ性を改善し、顔料表面への分散剤の吸着を促進することができるため好ましい。
上記した顔料の分散処理の際に使用される分散機は、一般に使用される分散機なら、如何なるものでもよいが、例えば、ボールミル、ロールミル及びサンドミル等が挙げられる。その中でも、高速型のサンドミルが好ましく使用される。このようなものとしては、例えば、スーパーミル、サンドグラインダー、ビーズミル、アジテータミル、グレンミル、ダイノーミル、パールミル及びコボルミル(いずれも商品名)等が挙げられる。
又、顔料インクをインクジェット記録方法に適用する場合には、耐目詰り性等の要請から、最適な粒度分布を有する顔料を用いるが、所望の粒度分布を有する顔料を得る方法としては、分散機の粉砕メディアのサイズを小さくすること、粉砕メディアの充填率を大きくすること、処理時間を長くすること、吐出速度を遅くすること、粉砕後フィルタや遠心分離機等で分級すること、及びこれらの手法の組合せ等の手法が挙げられる。
次に、上記した反応液と顔料インクを適用したインクジェット記録方法について説明する。更に、当該方法に適用することが好適なカートリッジ、記録ユニット、インクジェット記録装置、及び、これらの装置に好適に用いられる液体吐出ヘッドの構成の具体例を説明する。
図1は、本発明で使用可能なインクジェット記録装置の一例の要部を示す概略斜視図である。
図1においては、インクジェット記録装置は、ケーシング1008内に長手方向に沿って設けられる被記録媒体としての用紙1028を、図中に示した矢印Pで示す方向に間欠的に搬送する搬送部1030と、該搬送部1030による用紙1028の搬送方向Pに略直交する矢印S方向に略平行に、ガイド軸1014に沿って往復運動せしめられる記録部1010と、記録部1010を往復運動させる駆動手段としての移動駆動部1006とを含んで構成されている。
移動駆動部1006は、所定の間隔をもって対向配置される回転軸に配されるプーリ1026a、及び、該プーリ1026bに巻きかけられるベルト1016、ローラユニット1022a、及び、該ローラユニット1022bに略平行に配置され記録部1010のキャリッジ部材1010aに連結されるベルト1016を順方向及び逆方向に駆動させるモータ1018、とを含んで構成されている。
モータ1018が作動状態とされてベルト1016が図1の矢印R方向に回転したとき、記録部1010のキャリッジ部材1010aは、図1の矢印S方向に所定の移動量だけ移動される。又、モータ1018が作動状態とされてベルト1016が図中に示した矢印R方向とは逆方向に回転したとき、記録部1010のキャリッジ部材1010aは、図1の矢印S方向とは反対の方向に所定の移動量だけ移動されることとなる。更に、移動駆動部1006の一端部には、キャリッジ部材1010aのホームポジションとなる位置に、記録部1010の吐出回復処理を行うための回復ユニット1026が、記録部1010のインク吐出口配列に対向して設けられている。
記録部1010は、インクジェットカートリッジ(以下、単にカートリッジと記述する場合がある)1012とキャリッジ部材1010aとを含んで構成され、カートリッジ1012はキャリッジ部材1010aに対して着脱自在に備えられる。カートリッジ1012Y、1012M、1012C及び1012Bはそれぞれ、イエロー、マゼンタ、シアン及びブラックの各色顔料インクに対応し、又、カートリッジ1012Sは反応液に対応するものである。
このような構成を有するインクジェット記録装置は、反応液の吐出条件(反応液の吐出体積Vd、反応液の記録解像度Rx、Ry、反応液の記録デューティーduty)上記式(1)を満たすように予め設定されている。
図2は、上述のインクジェット記録装置に搭載可能なインクジェットカートリッジの一例を示す。本例におけるカートリッジ1012は、シリアルタイプのものであり、インクジェット記録ヘッド(以下、液体吐出ヘッドともいう)100と、インクや反応液等の液体を収容する液体タンク1001とで主要部が構成されている。
インクジェット記録ヘッド100は、インクや反応液等の液体を吐出するための多数の吐出口832が形成されており、インクや反応液等の液体は、液体タンク1001から図示しない液体供給通路を介して液体吐出ヘッド100の共通液室(図3参照)へと導かれるようになっている。図2に示したカートリッジ1012は、インクジェット記録ヘッド100と液体タンク1001とを一体的に形成し、必要に応じて液体タンク1001内に液体を補給できるようにしたものであるが、この液体吐出ヘッド100に対し、液体タンク1001を交換可能に連結した構造を採用するようにしてもよい。
このような構成のインクジェット記録装置に搭載され得る上述の液体吐出ヘッドの具体例を、以下に更に詳しく説明する。図3は、本発明で使用できるインクジェット記録装置に好適な液体吐出ヘッドの要部を模式的に示した概略斜視図である。尚、これらの図において、電気熱変換素子を駆動するための電気的な配線等は省略している。
本発明で使用する液体吐出ヘッドにおいては、例えば、図3に示されるような、ガラス、セラミックス、プラスチック或いは金属等からなる基板934が用いられる。このような基板の材質は、本発明の本質ではなく、流路構成部材の一部として機能し、インク吐出エネルギー発生素子、及び後述する液流路、吐出口を形成する材料層の支持体として、機能し得るものであれば特に限定されるものではない。そこで、本例では、Si基板(ウエハ)を用いた場合で説明する。このような基板934上にインク吐出口を形成するが、その方法としては、レーザー光による形成方法の他、例えば、後述するオリフィスプレート(吐出口プレート)935を感光性樹脂として、MPA(Mirror Projection Aliner)等の露光装置により、吐出口を形成する方法も挙げられる。
図3において、934は、電気熱変換素子(以下、ヒータと記述する場合がある)931、及び、共通液室部としての長溝状の貫通口からなるインク供給口933を備える基板であり、該インク供給口933の長手方向の両側には、熱エネルギー発生手段であるヒータ931がそれぞれ1列ずつ千鳥状に、電気熱変換素子の間隔が、例えば、600dpiで配列されている。又、この基板934には、インク流路を形成するためのインク流路壁936が設けられている。このインク流路壁936には、更に吐出口832を備える吐出口プレート935が設けられている。
ここで、図3においては、インク流路壁936と吐出口プレート935とは、別部材として示されているが、このインク流路壁936を、例えば、スピンコート等の手法によって基板934上に形成することにより、インク流路壁936と吐出口プレート935とを同一部材として同時に形成することも可能である。ここでは、更に、吐出口面(上面)935a側は撥水処理が施されている。
例示した装置では、図1の矢印S方向に走査しながら記録を行うシリアルタイプのヘッドを用い、例えば、1,200dpiで記録を行う。駆動周波数は10kHzであり、一つの吐出口では、最短時間間隔100μs毎に吐出を行うことになる。
次に、上述の構成のインクジェット記録ヘッドによる液体の吐出動作について図4〜図11を用いて説明する。図4〜図11は、図3に記載の液体吐出ヘッドの液体吐出動作を説明するための断面図であり、図3に示すX−X断面図である。この断面において吐出口部940のオリフィスプレート厚み方向の端部は、溝1141の頂部1141aとなっている。
図4は、ヒータ上に膜状の気泡が生成した状態を示し、図5は、図4の約1μs後、図6は、図4の約2μs後、図7は、図4の約3μs後、図8は、図4の約4μs後、図9は、図4の約5μs後、図10は、図4の約6μs後、図11は、図4の約7μs後の状態をそれぞれ示している。尚、以下の説明において、「落下」又は「落とし込み」、「落ち込み」とは、いわゆる重力方向への落下という意味ではなく、ヘッドの取り付け方向によらず、電気熱変換素子の方向への移動をいう。
先ず、図4に示すように、記録信号等に基づいたヒータ931への通電に伴ってヒータ931上の液流路1338内に気泡101が生成されると、該気泡は、2μs間に図5及び図6に示したように急激に体積膨張して成長する。気泡101の最大体積時における高さは吐出口面935aを上回るが、このとき、気泡の圧力は大気圧の数分の1から10数分の1にまで減少している。
次に、気泡101の生成から約2μs後の時点で、気泡101は上述のように最大体積から体積減少に転じるが、これとほぼ同時にメニスカス102の形成も始まる。このメニスカス102も、図7に示したように、ヒータ931側への方向に後退、即ち、落下してゆく。
ここで、図示した例の液体吐出ヘッドにおいては、吐出口部に複数の溝1141が分散した状態で設けられていることにより、メニスカス102が後退する際に、溝1141の部分では、メニスカス後退方向FMとは反対方向FCに毛管力が作用する。その結果、仮に何らかの原因により気泡101の状態に多少のバラツキが認められたとしても、メニスカスの後退時のメニスカス及び主液滴(以下、液体又はインクと記述する場合がある)Iaの形状が、吐出口中心に対して略対称形状となるように補正される。
そして、図示した例の液体吐出ヘッドでは、このメニスカス102の落下速度が気泡101の収縮速度よりも速いために、図8に示したように、気泡の生成から約4μs後の時点で気泡101が吐出口832の下面近傍で大気に連通する。このとき、吐出口832の中心軸近傍の液体(インク)は、ヒータ931に向かって落ち込んでゆく。これは、大気に連通する前の気泡101の負圧によってヒータ931側に引き戻された液体(インク)Iaが、気泡101の大気連通後も慣性でヒータ931面方向の速度を保持しているからである。
ヒータ931側に向かって落ち込んでいった液体(インク)は、図9に示すように気泡101の生成から約5μs後の時点でヒータ931の表面に到達し、図10に示すように、ヒータ931の表面を覆うように拡がってゆく。このようにヒータ931の表面を覆うように拡がった液体は、ヒータ931の表面に沿った水平方向のベクトルを有するが、ヒータ931の表面に交差する、例えば、垂直方向のベクトルは消滅し、ヒータ931の表面上に留まろうとし、それよりも上側の液体、即ち、吐出方向の速度ベクトルを保つ液体を下方向に引っ張ることになる。
その後、ヒータ931の表面に拡がった液体と、上側の液体(主液滴)との間の液体部分Ibが細くなってゆき、気泡101の生成から約7μs後の時点で図11に示したようにヒータ931の表面の中央で液体部分Ibが切断され、吐出方向の速度ベクトルを保つ主液滴Iaと、ヒータ931の表面上に拡がった液体Icとに分離される。このように分離の位置は液流路1338内部、より好ましくは、吐出口832よりも電気熱変換素子931側が望ましい。
主液滴Iaは吐出方向に偏りがなく、吐出ヨレすることなく、吐出口832の中央部分から吐出され、被記録媒体の被記録面の所定位置に着弾される。又、ヒータ931の表面上に拡がった液体Icは、従来であれば、主液滴の後続としてサテライト滴となって飛翔するものであるが、ヒータ931の表面上に留まり、吐出されない。
このように、サテライト滴の吐出を抑制することができるため、サテライト滴の吐出により発生し易いスプラッシュを防止することができ、霧状に浮遊するミストによって被記録媒体の被記録面が汚れるのを確実に防止することが可能となる。尚、図8〜11において、Idは溝部に付着したインク(溝内のインク)を、又、Ieは液流路1338内に残存しているインクを表している。
このように、図示した例の液体吐出ヘッドでは、気泡が最大体積に成長した後の体積減少段階で液体を吐出する際に、吐出口の中心に対して分散した複数の溝により、吐出時の主液滴の方向を安定化させることができる。その結果、吐出方向のヨレのない、着弾精度の高い液体吐出ヘッドを提供することができる。又、高い駆動周波数での発泡ばらつきに対しても吐出を安定して行うことができることによる、高速高精細印字を実現することができる。
特に、図示した例の液体吐出ヘッドでは、気泡の体積減少段階で、この気泡を始めて大気と連通させることで液体を吐出することにより、気泡を大気に連通させて液滴を吐出する際に発生するミストを防止できるので、所謂、突然不吐出の要因となる、吐出口面に液滴が付着する状態を抑制することもできる。本発明に好適に使用できる、上記したような吐出時に気泡を大気と連通する吐出方式の記録ヘッドの他の実施態様としては、例えば、特許第2783647号公報に記載のように、いわゆるエッジシュータータイプが挙げられる。
本発明の記録方法は、特にインクジェット記録方式の中でも、熱エネルギーを利用して飛翔的液滴を形成し、記録を行うインクジェット方式の記録ヘッドや記録装置において、優れた効果をもたらすものである。その代表的な構成や原理については、例えば、米国特許第4,723,129号明細書及び同第4,740,796号明細書に開示されている基本的な原理を用いて行うものが好ましい。
この方式は、いわゆるオンデマンド型及びコンティニュアス型のいずれにも適用可能であるが、特に、オンデマンド型の場合には、液体(インク)が保持されているシートや液路に対応して配置されている電気熱変換体に、記録情報に対応していて膜沸騰を超える急速な温度上昇を与える少なくとも一つの駆動信号を印加することによって、電気熱変換体に熱エネルギーを発生せしめ、記録ヘッドの熱作用面に膜沸騰を生じさせて、結果的に、この駆動信号に一対一で対応した液体(インク)内の気泡を形成できるので有効である。この気泡の成長及び収縮により吐出用開口を介して液体(インク)を吐出させて、少なくとも一つの液滴を形成する。この駆動信号をパルス形状とすると、即時適切に気泡の成長収縮が行なわれるので、特に応答性に優れた液体(インク)の吐出が達成でき、より好ましい。
この際のパルス形状の駆動信号としては、米国特許第4,463,359号明細書及び同第4,345,262号明細書に記載されているようなものが適している。尚、上記熱作用面の温度上昇率についての発明に関する米国特許第4,313,124号明細書に記載されている条件を採用すると、更に、優れた記録を行なうことができる。
本発明で使用するインクカートリッジ、記録ユニット、インクジェット記録装置を構成する記録ヘッドの構成としては、上記に挙げた各明細書に開示されているような吐出口、液路及び電気熱変換体の組み合わせ構成(直線状液流路又は直角液流路)の他に、熱作用部が屈曲する領域に配置されている構成を開示する米国特許第4,558,333号明細書及び米国特許第4,459,600号明細書を用いた構成のものを使用することも好ましい。
加えて、複数の電気熱変換体に対して、共通するスリットを電気熱変換体の吐出部とする構成を開示する特開昭59−123670号公報や熱エネルギーの圧力波を吸収する開孔を吐出部に対応させる構成を開示する特開昭59−138461号公報に基づいた構成としても有効である。
加えて、装置本体に装着されることで、装置本体との電気的な接続や装置本体からのインクの供給が可能になる交換自在のチップタイプの記録ヘッド、或いは記録ヘッド自体に一体的にインクタンクが設けられたカートリッジタイプの記録ヘッドを用いることもできる。
又、本発明を好適に適用できるインクジェット記録装置に設けられる、記録ヘッドに対しての回復手段、予備的な補助手段等を付加することは、本発明の効果を一層安定できるので好ましいものである。これらを具体的に挙げれば、記録ヘッドに対してのキャッピング手段、クリーニング手段、加圧或いは吸引手段、電気熱変換体或いはこれとは別の加熱素子、或いはこれらの組み合わせによる予備加熱手段、記録とは別の吐出を行う予備吐出モードを行うことも安定した記録を行うために有効である。
尚、本発明では、図1に示されるようなインクジェット記録装置、即ち、記録ヘッドの走査と被記録媒体の搬送を繰り返すことで画像形成を行っていくシリアルタイプの装置が好適に用いられるが、これに限られるものではない。例えば、被記録媒体の記録領域の全幅に亘って複数のノズルが配列されたフルライン型の記録ヘッドを用いて画像形成を行うラインタイプの装置にも適用可能である。尚、シリアルタイプの場合であっても、ラインタイプの場合であっても、反応液の吐出動作を伴う相対走査の方向が記録方向に相当する。
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明を更に具体的に説明する。尚、以下の記載において、「部」及び「%」とあるものは特に断わらない限り質量基準である。
先ず下記に述べるようにして、各色の顔料インクを得た。
(顔料インクの調製)
<顔料分散液の作製>
・スチレン−アクリル酸−アクリル酸エチル共重合体
(酸価240、重量平均分子量=5,000)
1.5部
・モノエタノールアミン 1.0部
・ジエチレングリコール 5.0部
・イオン交換水 81.5部
上記成分を混合し、ウォーターバスで70℃に加温し、樹脂分を完全に溶解させた。この溶液に新たに試作されたカーボンブラック(MCF88、三菱化成製)10部、イソプロピルアルコール1部を加え、30分間プレミキシングを行った後、下記の条件で分散処理を行った。
・分散機:サンドグラインダー(五十嵐機械製)
・粉砕メディア:ジルコニウムビーズ、1mm径
・粉砕メディアの充填率:50%(体積比)
・粉砕時間:3時間
更に、遠心分離処理(12,000rpm、20分間)を行って、粗大粒子を除去して、黒色の顔料分散液とした。
<顔料インクK1の作製>
上記で得た黒色の顔料分散液を使用し、下記の組成比を有する成分を混合し、黒色の顔料インクK1を作製した。
・上記顔料分散液 30.0部
・グリセリン 10.0部
・エチレングリコール 5.0部
・N−メチルピロリドン 5.0部
・エチルアルコール 2.0部
・アセチレノールEH(川研ファインケミカル製)
1.0部
・イオン交換水 47.0部
<顔料インクC1の作製>
顔料インクK1の作製の際に使用したカーボンブラック(MCF88、三菱化成製)10部を、ピグメントブルー15に代えたこと以外は、顔料インクK1の作製の場合と同様にして、シアン色の顔料インクC1を作製した。
<顔料インクM1の作製>
顔料インクK1の作製の際に使用したカーボンブラック(MCF88、三菱化成製)10部を、ピグメントレッド7に代えたこと以外は、顔料インクK1の作製の場合と同様にして、マゼンタ色の顔料インクM1を作製した。
<顔料インクY1の作製>
顔料インクK1の作製の際に使用したカーボンブラック(MCF88、三菱化成製)10部を、ピグメントイエロー74に代えたこと以外は、顔料インクK1の作製と同様にして、イエロー色の顔料インクY1を作製した。
(反応液S1の調製)
次に、下記の成分を混合溶解した後、更に、ポアサイズが0.22μmのメンブレンフィルター(商品名:フロロポアフィルター、住友電工製)にて加圧濾過し、pHが3.8に調整されている反応液S1を得た。
<反応液S1の組成>
・ジエチレングリコール 10.0部
・メチルアルコール 5.0部
・塩化カルシウム 7.0部
・アセチレノールEH(川研ファインケミカル製)
0.1部
・イオン交換水 77.9部
インクジェット記録ヘッドにより、上記で得た反応液S1と、各顔料インクK1、C1、M1、Y1とを用い、普通紙であるPB用紙(キヤノン製)に、反応液S1を先に付与させた後に顔料インクK1、C1、M1、Y1を付与させて、1cm角からなる発色性・裏抜け・定着性の評価用印字部を作成した。又、同様にして、ブリーディング評価用として背色と文字色の組み合わせによる印字部を作成し、これらを印字物A1とした。背色と文字色は、顔料インクK1、C1、M1、Y1の1次色と、これらからなる2次色により組み合わせた。評価した文字は「電驚」の明朝体で、文字の大きさは8ポイント文字の1種類とした。
尚、ここで用いた顔料インクK1、C1、M1、Y1の記録ヘッドは、1ドットあたりの吐出体積が夫々4.5plで、駆動周波数15kHzの動作が可能な1,200dpiの記録密度を有するものを使用した。一方、反応液S1の記録ヘッドは、1ドットあたりの吐出体積が4.5pl、2.0pl、1.0pl、0.5plの4種類を使用した。顔料インクK1、C1、M1、Y1の記録条件は、1,200dpiの記録密度に対して100%の記録デューティー(付与率)で記録するものとした。一方、反応液S1の記録条件は、下記表1に示すように、吐出体積Vd(pl)、記録方向(相対走査の方向)の記録解像度Rx(dpi)、相対走査の方向と直交する方向の記録解像度Ry(dpi)、記録デューティー(duty)を変えて記録した。又、印字テストの際の環境条件は、25℃/55%RHに統一した。
(評価)
そして下記の方法及び基準で評価を行い、それぞれの評価結果を表1中に示した。
1.発色性
上記のようにして得た印字物を12時間放置した後、その印字物の反射濃度を反射濃度計マクベスRD19(マクベス社製)にて測定して、発色性を評価した。尚、評価基準は以下の通りである。
○:反射濃度が、1.20以上。
×:反射濃度が、1.20未満。
2.裏抜け
上記のようにして得た印字物を12時間放置した後、その印字部裏面の反射濃度を反射濃度計マクベスRD19(マクベス社製)にて測定して、裏抜けの程度を評価した。尚、評価基準は以下の通りである。
○:反射濃度が、0.10未満。
×:反射濃度が、0.10以上。
3.定着性
印字直後から15秒経過後に、印字していない別のPB用紙A0(キヤノン製)を印字部に密着させて、35g/cm2の加圧状態を維持したまま擦り合わせ、色写りがあるか否かを目視で観察して、定着性を評価した。尚、評価基準は以下の通りである。
○:PB用紙A0に殆ど色写りしない(実使用で問題がないレベル)。
×:PB用紙A0に色写りする(実使用で問題があるレベル)。
4.ブリーディング
8ポイントからなる文字の視認性について、下記の基準で官能試験を行ってブリーディングを評価した。
○:実使用で問題がないレベル。
×:実使用で問題があるレベル。
Figure 0004040584
Figure 0004040584
Figure 0004040584
上記表1より、本発明の目的である発色性、裏抜け、定着性、ブリーディングの全てを満足するための最適条件は、反応液の記録条件が、
Figure 0004040584
を満たすことが必要であることが分かった。
尚、Vd(pl)は反応液の1ドットあたりの吐出体積、Rx(dpi)は記録方向(相対走査の方向)における記録解像度、Ry(dpi)は記録ヘッドの相対走査の方向と直交する方向における記録解像度、duty(%)は反応液の記録デューティーである。さて、上記式(1)は、インクの記録デューティー(以下、インクデューティーという)が100%のときの最適な反応液吐出条件を規定したものである。従って、インクデューティーが100%のときには上記式(1)を満たしている必要がある。しかし、インクデューティーが100%以外のときまで上記式(1)を満たしている必要はない。要するに、少なくともインクデューティーが100%のときに上記式(1)を満たすような形態であれば本発明に包含される。勿論、インクデューティーに関係なく、常に上記式(1)を満たす形態であっても本発明に包含される。
本発明の活用例として、定着性及び発色性に優れ、裏抜け及びブリーディングを低減した記録方法、特にインクジェット記録方法が挙げられる。
インクジェットプリンタの一例を示す概略斜視図である。 インクジェットカートリッジの一例を示す概略斜視図である。 液体吐出ヘッドの一例を示す模式的概略斜視図である。 図3中のX−X斜視断面形状に対応し、液体吐出ヘッドの液体吐出動作を経時的に説明するための概略断面図である。 図3中のX−X斜視断面形状に対応し、液体吐出ヘッドの液体吐出動作を経時的に説明するための概略断面図である。 図3中のX−X斜視断面形状に対応し、液体吐出ヘッドの液体吐出動作を経時的に説明するための概略断面図である。 図3中のX−X斜視断面形状に対応し、液体吐出ヘッドの液体吐出動作を経時的に説明するための概略断面図である。 図3中のX−X斜視断面形状に対応し、液体吐出ヘッドの液体吐出動作を経時的に説明するための概略断面図である。 図3中のX−X斜視断面形状に対応し、液体吐出ヘッドの液体吐出動作を経時的に説明するための概略断面図である。 図3中のX−X斜視断面形状に対応し、液体吐出ヘッドの液体吐出動作を経時的に説明するための概略断面図である。 図3中のX−X斜視断面形状に対応し、液体吐出ヘッドの液体吐出動作を経時的に説明するための概略断面図である。 本発明の前提となるインクジェット記録方法を模式的に説明する図である。 凝集物31bが集合して膜状の凝集体31cが形成される様子を示した図である。 膜状の凝集体31cが被記録媒体の表面に定着して凝集膜31dが形成される様子を示した図である。 凝集膜31dが形成されない場合の被記録媒体表面の様子を示した図である。 記録解像度(Rx、Ry)がRx=1,200、Ry=1,200であるときの反応液の吐出体積Vd(pl)と印字dutyの関係を表した図である。 記録解像度(Rx、Ry)がRx=600、Ry=1,200であるときの反応液の吐出体積Vd(pl)と印字dutyの関係を表した図である。 記録解像度(Rx、Ry)がRx=600、Ry=600であるときの反応液の吐出体積Vd(pl)と印字dutyの関係を表した図である。
符号の説明
10:被記録媒体
10a:被記録媒体の印字表面
20:反応液
21:多価金属イオン
30:顔料インク
31:分散状態にある顔料粒子
31a:電気的斥力を消失した顔料粒子
31b:凝集物
31c:膜状の凝集体
31d:凝集膜
32:浸透促進剤(例えば、界面活性剤)
M:メニスカス後退方向
C:メニスカス後退方向と反対方向
I:インク
a:主液滴(液体、インク)
b、Ic:液体(インク)
d:溝部に付着したインク(溝内のインク)
e:液流路内に残存しているインク
P:用紙の搬送方向
R:ベルトの回転方向
S:用紙の搬送方向と略直交する方向

Claims (8)

  1. 顔料インクと、当該顔料インクよりも高い表面張力を有し且つ多価金属塩を含む反応液とを吐出するための記録部を被記録媒体に対し相対的に走査させながら、前記記録部から顔料インク及び反応液を前記被記録媒体に吐出して記録を行うインクジェット記録方法であって、
    前記記録部から前記反応液を前記被記録媒体に吐出する工程と、
    前記被記録媒体上に液状で存在している反応液に対して前記記録部から前記顔料インクを吐出して、前記反応液と前記顔料インクとの接触により生成される顔料凝集物が集合してなる膜状の凝集体を前記液状で存在している反応液の表面上に形成する工程とを有し、
    前記形成工程では、(A)前記液状で存在している反応液と前記被記録媒体との境界に向かって前記顔料凝集物が反応液の表面上を移動し、(B)当該顔料凝集物の移動によって反応液の表面に沿って前記顔料凝集物が連なり、(C)これにより、前記膜状の凝集体が前記反応液の表面上に形成され、
    前記反応液の1ドットあたりの吐出体積をVd(pl)、前記相対走査の方向の記録解像度をRx(dpi)、前記相対走査の方向と直交する方向の記録解像度をRy(dpi)、前記反応液の記録デューティーをduty(%)とした場合、前記反応液の吐出条件が、
    Figure 0004040584
    なる関係を満たすことを特徴とするインクジェット記録方法。
  2. 顔料インクと、当該顔料インクよりも高い表面張力を有し且つ多価金属塩を含む反応液とを吐出するための記録部を被記録媒体に対し相対的に走査させながら、前記記録部から顔料インク及び反応液を前記被記録媒体に吐出して記録を行うインクジェット記録方法であって、
    前記記録部から前記反応液を前記被記録媒体の所定領域に吐出する工程と、
    前記被記録媒体の所定領域に液状で存在している反応液に対して前記記録部から前記顔料インクを吐出して、前記反応液と前記顔料インクとの接触により生成される顔料凝集物が集合してなる膜状の凝集体を前記液状で存在している反応液の表面上に形成する工程とを有し、
    前記形成工程では、(A)前記液状で存在している反応液と前記被記録媒体との境界に向かって前記顔料凝集物が反応液の表面上を移動し、(B)当該顔料凝集物の移動によって反応液の表面に沿って前記顔料凝集物が連なり、(C)これにより、前記膜状の凝集体が前記反応液の表面上に形成され、
    少なくとも、前記所定領域におけるインクの記録デューティーが100%の場合、前記所定領域に対する反応液の吐出条件が、
    Figure 0004040584
    (但し、
    Vd(pl):反応液の1ドットあたりの吐出体積
    Rx(dpi):相対走査の方向の記録解像度
    Ry(dpi):相対走査の方向と直交する方向の記録解像度
    duty(%):反応液の記録デューティー)
    なる関係を満たすことを特徴とするインクジェット記録方法。
  3. 前記Vd(pl)は、0.5(pl)≦Vd(pl)≦4.5(pl)なる関係を満たす請求項1又は2に記載のインクジェット記録方法
  4. 前記Rx(dpi)及び前記Ry(dpi)は、Rx(dpi)=Ry(dpi)=1,200(dpi)なる関係を満たす請求項1乃至3のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法
  5. 前記顔料インクは界面活性剤を含み、当該界面活性剤は前記顔料凝集物と共に前記境界部へ向かって前記反応液の表面上を移動する請求項1乃至4のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法
  6. 前記顔料インクの界面活性剤の含有率は、前記反応液の界面活性剤の含有率よりも高い請求項5に記載のインクジェット記録方法
  7. 前記インクと前記反応液が記録された部分の裏面の反射濃度が0.10未満である請求項1乃至6のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法
  8. 前記膜状の凝集体が前記反応液の表面上に形成された後、前記反応液の溶媒成分が前記被記録媒体に浸透することによって、前記膜状の凝集体が、前記被記録媒体を構成する繊維の起伏に沿って当該繊維を被覆する状態となる請求項1乃至7のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法
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