JP4040335B2 - 画像形成装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、画像形成装置に関し、詳しくは、基材表面の定着層の上面に浸透層を備えた被記録媒体を用い、この被記録媒体の浸透層に画像情報のプリントを行った後に加熱を行って、この画像情報を基材表面の定着層に定着させる形態で転写を行い、この転写の後に浸透膜を取り除く技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
上記のように構成された転写装置と類似する技術として特開平10‐297197号公報に示されるものが存在する。
【0003】
この従来の技術では、金属基材(本発明の基材)上に防錆層を兼ねる着色下地層(本発明の定着層)を形成し、この上に光透過性樹脂層としてアクリル系樹脂やポリエステル系樹脂やウレタン系樹脂で成る透明樹脂層を形成し、この上に多孔質アルミナ等を用いたインクジェット受理層(本発明の浸透層)を形成して金属装飾体を構成すると共に、この金属装飾体のインクジェット受理層に対して昇華形着色材を用いたインクジェット印刷により着色模様を形成する。この後、この金属装飾体を加熱炉や、ホットプレスで加熱することによりインクジェット受理層の昇華形着色材が昇華して透明樹脂層に入り込み、インクジェット受理層に形成された着色模様が透明受理層に形成される。次に、インクジェット受理層を温水で軟化させた後、布等で拭き取ることによってインクジェット受理層の全てを取り除くことで、着色模様が形成された金属装飾体が完成する。
【0004】
又、可撓性の樹脂シートを基材として用い、この基材の表面に定着層を形成し、更に、この定着層の表面に浸透層を形成し、浸透層にプリントした画像情報を加熱によって定着層に対して転写定着する被記録媒体は開発中のものであり、この被記録媒体を用い、この被記録媒体の浸透層に対して昇華性インクで画像情報のプリントを行った後に、加熱によって昇華性インクを昇華させて画像情報を定着層に転写定着させる連続的した処理を行う装置は開発されていなかった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の技術のように、インクジェット受理層に昇華形着色材を用いて着色模様を形成した後に、加熱を行うことでインク受理層の昇華形着色材を昇華させて透明樹脂層に転写を行い、この後に、インクジェット受理層を前述のように、温水で軟化させた後、布等で拭き取る形態で取り除くものでは、取り除くために温水で軟化させる処理を必要とするばかりで無く、拭き取る処理を必要とするため手間が掛かるものであった。特に、拭き取りよって取り除く場合には、取り除き不良を無くすために拭き取りを行う面の全面を丹念に拭き取る必要があり、大きいサイズの被記録媒体を用いた場合には、人為的な作業に頼らざるを得ない場合も多い。
【0006】
そこで、基材表面の定着層に対して剥離自在なフィルム状の浸透層を重ねて被記録媒体を構成することにより、転写を行った後には、浸透層をフィルム状のまま剥離することも考えられるが、この浸透層は薄く形成されることが多く、手作業による剥離が困難で且つ煩雑であると想定される。
【0007】
本発明の目的は、被記録媒体の定着層に対して浸透層にプリントした画像情報を転写し、この転写の後に浸透層を容易に剥離し得る画像形成装置を合理的に構成する点にある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1に係る画像形成装置の特徴、作用・効果は次の通りである。
〔特徴〕
基材表面の定着層にフィルム状の浸透層を重ねて成る被記録媒体を送る搬送機構と、この搬送機構で送られる被記録媒体の浸透層に対して昇華性インクを付与して画像情報をプリントするプリント機構と、被記録媒体を加熱することで浸透層にプリントされた画像情報を定着層に転写する加熱機構とを備えると共に、前記加熱機構で加熱された前記被記録媒体を弛ませる形態で送るループ形成部を備え、このループ形成部から送られた前記被記録媒体の前記基材側、あるいは、浸透層側の面に対して刃体で切り込みを形成する切り込み機構を備え、前記切り込み機構は、この切り込み機構において前記被記録媒体の搬送を停止した状態で前記刃体を作動させることにより前記切り込みを形成する点にある。
【0009】
〔作用・効果〕
上記特徴によると、搬送機構で送られる被記録媒体の浸透層に対してプリント機構で昇華性インクを付与することで画像情報のプリントを行い、このプリントの後に、この被記録媒体を加熱機構に送って加熱することにより、浸透層に付与された昇華性インクが定着層に定着する。又、前記切り込み機構で被記録媒体の浸透層、あるいは、基材に対して切り込みを形成できる。この切り込み機構で切り込みを形成する際には、被記録媒体の搬送を停止した状態で刃体を作動させるが、ループ形成部において被記録媒体に弛みを形成しているので、例えば、加熱機構から被記録媒体が継続的に送り出される場合でも速度差を吸収できる。そして、このように形成した切り込みが浸透層の側である場合には、例えば、基材を軽く湾曲させることで、浸透層に形成された切り込みを拡大させて、この拡大した隙間部分から浸透層をフィルム状のまま剥がせものとなり、このように形成した切り込みが基材の側である場合には、この切り込み部分から基材同士を分離することで、分離した基材同士の間に残される浸透層をフィルム状のまま剥がせるものとなる。その結果、基材に対して画像情報の転写を行う処理を実現するばかりで無く、転写後の浸透層を容易に剥がし得る装置が合理的に構成されたのである。
【0010】
本発明の請求項2に係る画像形成装置の特徴、作用・効果は次の通りである。
〔特徴〕
請求項1記載の画像形成装置において、前記切り込み機構が、前記基材側の面において基材の厚みに等しい深さの切り込みを、前記被記録媒体の全幅に亘って形成するよう構成されている点にある。
【0011】
〔作用・効果〕
上記特徴によると、切り込み機構が、被記録媒体の全幅に亘って、基材の厚みに等しい深さの切り込みを基材に形成することにより、この切り込みの部位から基材同士の分離を行って、分離した基材同士に亘って残される浸透層の剥がす処理を容易に行える。その結果、基材を必要とするサイズに分離できるばかりで無く、浸透層の剥離も容易に行えるものとなった。
【0012】
本発明の請求項3に係る画像形成装置の特徴、作用・効果は次の通りである。
〔特徴〕
請求項1記載の画像形成装置において、前記切り込み機構が、前記浸透層側の面において、この浸透層の厚みに等しい深さの切り込みを形成するよう構成されている点にある。
【0013】
〔作用・効果〕
上記特徴によると、切り込み機構が、被記録媒体の浸透層に対して、浸透層の厚みに等しい深さの切り込みを形成するので、この切り込み部分で浸透層を分離した状態にすることが可能となり、この切り込み部分から浸透層の端部を摘み上げて基材から剥離することが可能となる。その結果、基材のサイズに拘わらず剥離を行いやすい部位から浸透層の剥離を容易に行えるものとなった。
【0014】
本発明の請求項4に係る画像形成装置の特徴、作用・効果は次の通りである。
〔特徴〕
請求項1記載の画像形成装置において、前記切り込み機構が、被記録媒体に対する画像情報のプリント領域の外部領域に切り込みを形成するよう構成されている点にある。
【0015】
〔作用・効果〕
上記特徴によると、画像情報が形成されるプリント領域の外部領域に対して切り込み機構で切り込みを形成することになるので、例えば、浸透膜の側に切り込みを形成する場合に、切り込みの深さを浸透膜の厚みより大きい値に設定することで、この切り込みで浸透膜を確実に分離することが可能となり、例えば、基材の側に切り込みを形成する場合に、基材の角部を取り除く姿勢で切り込みを形成することで、この角部の基材を取り除いて浸透層の剥離を容易にすることも可能となる。つまり、プリント領域外に切り込み位置を設定することで浸透層を確実に切り込みを形成することや、基材を取り除いて浸透層の剥離を可能にする。その結果、プリントされた画像情報に何ら影響を与えること無く浸透層の剥離を確実に行えるものにする。
【0016】
本発明の請求項5に係る画像形成装置の特徴、作用・効果は次の通りである。
〔特徴〕
請求項1記載の画像形成装置において、前記切り込み機構は、被記録媒体を所定長さに切断する切断機構として機能し、この切断機構の切断面を被記録媒体の表面と直交する方向を基準に傾斜する姿勢に設定してある点にある。
【0017】
〔作用・効果〕
上記特徴によると、切り込み機構で切り込みを形成でき、この切り込み機構を切断機構として機能させて被記録媒体の切断を行えると共に、切断機構として切断を行った際には、その切断面が、被記録媒体の表面と直交する方向を基準にして傾斜するので、切断面において基材の側、あるいは、浸透層の側が張り出す形態となり、人為的に剥離を行う場合には、この張り出し部分に指先や爪先を接触させて、端部から剥離を行えるものとなり、機械的に剥離を行う場合でも、この張り出し部部に器具等を接触させて端部から剥離を行えるものとなる。その結果、被記録媒体に対して切り込みを形成できるばかりで無く、切断面が被記録媒体の表面に対して傾斜する姿勢に設定して被記録媒体の浸透膜を容易に剥離できるものとなった。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1〜図3に示すように、ロール状の被記録媒体Mを送る搬送機構Aと、この搬送機構Aで送られる被記録媒体Mに画像情報をプリントするインクジェット型のプリント機構Bと、これらを制御する制御機構Cとを本体ケース20に備えてインクジェット形のプリント部が構成されると共に、このプリント部に対して、該プリントから排出される被記録媒体Mを加熱する加熱機構としての加熱ユニットUを備えて画像形成装置が構成されている。この画像形成装置は、画像処理システムGから転送される文字情報や画像情報で成る画像情報を被記録媒体Mに転写する処理を実現するように構成されている。
【0019】
前記画像処理システムGは汎用のコンピュータ1、モニター2、キーボード3、マウス4を有すると共に、現像済みの銀塩式のフィルム5の画像情報を光電変換するフィルムスキャナー6と、メディアにデジタル信号として保存された情報を取り出すようにコンピュータ内部にメディアドライブ7とを備えて成り、この画像処理システムGから画像情報を前記制御機構Cに転送することにより、転送した画像情報を画像形成装置において被記録媒体Mに対して転写により形成し得るよう構成されている。尚、メディアドライブ7とは、CDやCD−R、あるいは、MO等のディスク状の媒体ばかりでなく、コンパクトフラッシュやスマートメディア等の半導体で成る媒体から情報を取り出すドライブの総称であり、同図にはCD及びCD−Rの情報を読出すメディアドライブを示している。
【0020】
前記被記録媒体Mは図4に示すように、PET(polyethylene terephthalate)製でフィルム状の基材11の表面に対して、昇華性インクに対して親和性のある樹脂としてポリビニルアルコール系の樹脂やポリビニルアセタール系の樹脂等で定着層12を形成し、この定着層12の表面に昇華性インクに対して非親和性となるフッ素樹やシリコン樹脂等の薄いフィルム状の浸透層13を剥離自在に重ね合わせ、全体として柔軟なシート状に構成したものであり、この被記録媒体Mは浸透層13に対して昇華性インクで画像をプリントした後、加熱処理を行うことにより、浸透層13のインクが昇華することによって定着層12に移行して基材11の表面に画像情報を定着形成する機能を有するものであり、画像情報を転写定着した後には、浸透層13をフィルム状のまま剥離して取り除くことにより基材11の表面の定着層12に形成された明瞭な画像を露出させるものとなっている。又、この被記録媒体Mは、基材11の素材が昇華性インクに対して親和性を有する性質のものでは、その基材11の表面をそのまま定着層12として利用できる。
【0021】
前記画像形成装置の本体ケース20はロール状の被記録媒体Mが収納された部位からプリント機構Bを覆う蓋状材20Aをヒンジ21周りで揺動開閉できるよう支持し、底部に備えたフレーム22に対して支柱部23を介して接地脚部24を備えることにより本体ケース部20を比較的高い位置に配置してある。又、前記ロール状の被記録媒体Mは、この被記録媒体Mの筒状の芯の両端部に挿入する状態で支持する支持軸25によって本体ケース20の内部において回転自在に支持されている。
【0022】
前記搬送機構Aは、駆動回転によって被記録媒体Mを圧着状態でプリント機構Bに搬送した後に排出するよう複数の駆動ローラ28と、これに圧着する遊転形の複数の圧着ローラ29と、複数の駆動ローラを回転駆動するステッピングモータ型のプリント搬送モータ30とを備えて成っている。
【0023】
前記プリント機構Bは、被記録媒体Mの搬送方向と直交する姿勢に配置したガイドロッド32と、このガイドロッド32に沿って往復移動自在に支持されたプリントヘッド33と、このプリントヘッド33を、プーリ34に巻回したタイミングベルト35を介して往復駆動するステッピングモータ型の走査モータ36とを備えて成り、このプリントヘッド33でプリントを行う部位には被記録媒体Mの背面に位置を設定してプレート37を備えている。又、このプリントヘッド33は、取り換え自在に構成されたインクカートリッジ38のインクをノズルから被記録媒体Mに対して吹き付けるようピエゾ素子等の吐出機構39を備えている。尚、インクカートリッジ38として、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の少なくとも4色のインクの他に中間色の2色のインクを用いた6色を使用するよう構成され、この実施の形態で使用される昇華性インクは、80℃程度で昇華が始まり、前述したようにフィルム状のPET製の基材11を有する被記録媒体Mにおいては、180℃で2分程度の加熱により最適な転写状態となる。尚、この昇華性インクは170℃〜200℃程度でインクの昇華を無理なく行えるものであり、200℃では1分程度の加熱、170℃では5分程度の加熱で必要とする転写が可能となる。
【0024】
前記プリントヘッド33に対し被記録媒体Mの側に突出する切断位置と、この被記録媒体から離間する待機位置とに切換自在に刃体40を備えると共に、この刃体40を切断位置と待機位置とに、ネジ送り式やカム送り式の切り換える切換モータ41を備えて、このプリント位置で被記録媒体Mの切断を行えるようにも構成されている。尚、被記録媒体Mを切断する場合には、切換モータ41の駆動力で刃体40を切断位置まで突出させてプリントヘッド33を走査方向に作動させることにより、被記録媒体Mを幅方向の全幅に亘って切断し、切り離しを行えるように構成されている。尚、図面には示していないが、前記プレート37には、刃体40による切断を許す溝が全幅に亘って形成されている。
【0025】
前記加熱ユニットUは、筒状のフレーム45の内部に被記録媒体Mの搬送方向に沿って加熱部Hと、ループ形成部Lと、切り込み機構Dとを配置してあり、この加熱部Hを挟む位置に駆動ローラ46Aと従動ローラ46Bとで成る圧着形の複数の加熱部搬送ローラ46を備えると共に、この駆動ローラ46Aを駆動する加熱搬送モータ47を備えている。又、加熱部Hは、断熱材製の壁体50で形成された加熱空間Rの内部に、この加熱空間内の空気温度の上昇を図る電気ヒータ51と加熱空気を送るファン52と、ファン52を駆動するファンモータ53と、電気ヒータ51からの熱が被記録媒体に直接照射される現象を阻止する遮蔽板54と、空気温度を計測する温度センサSとを備えて構成されている。この加熱空間Rの内部において被記録媒体Mを180℃に加熱された空気に接触させることで、被記録媒体Mに対して加熱系の部材を接触させない状態での加熱を行い、この加熱による転写を実現している。
【0026】
尚、この加熱部Hを、加熱空気によって被記録媒体Mを加熱するよう構成したが、本発明では、加熱空間Rの内部に赤外線ヒータ(遠赤外線ヒータを含む)を配置して、赤外線の輻射によって被記録媒体Mの加熱を行うよう加熱部Hを構成することも可能である。
【0027】
前記切り込み機構Dは、図2及び図6〜図8に示すように、被記録媒体Mの搬送方向で加熱部Hより下手位置に設定された切り込み位置を搬送方向で挟む位置に配置された駆動ローラ58Aと従動ローラ58Bとで成る圧着形の一対の切り込み部搬送ローラ58と、夫々の駆動ローラ58Aを駆動する切り込み部搬送モータ59と、切り込み位置において被記録媒体Mの浸透層13の側に配置されたプレート60と、被記録媒体Mの基材11の側に配置され、被記録媒体Mの搬送方向と直交する方向(幅方向)に移動自在な移動ブロック61に支持された刃体62と、移動ブロック61を案内するガイドロッド63と、この移動ブロック61を往復移動させるためプーリ64に巻回したタイミングベルト65と、プーリ64を駆動する切り込みモータ66とを備えて構成されている。又、この切り込み機構Dは、基材11の厚みに等しいだけ被記録媒体Mに切り込みEを形成するよう切り込み深さを設定してあり、この切り込みEを形成することにより基材同士を切り離すよう機能し、この加熱ユニットUから排出された被記録媒体Mはトレイ48に受け止められる。
【0028】
前記ループ形成部Lは、切り込み部搬送ローラ58の駆動を停止させて切り込み機構Dで被記録媒体Mに対して切り込みEを形成する際には、このループ形成部Lにおいて被記録媒体Mを垂れ下がり方向に弛ませる空間で構成されている。
【0029】
図5に示すように、制御機構Cは、前記コンピュータ1から転送される記録情報を入力する入力系を形成すると共に、前記プリント搬送モータ30と、走査モータ36と、吐出機構39と、切換モータ41と、加熱搬送モータ47と、電気ヒータ51と、ファンモータ53と、切り込み部搬送モータ59と、切り込みモータ66とに対して制御信号を出力する信号系を備え、前記温度センサSからの温度情報をフィードバックさせる信号系を備えている。
【0030】
この構成によって、この画像形成装置で被記録媒体Mに対して画像情報の転写を行う場合には、画像処理システムGからプリントすべき画像情報を画像形成装置に転送して処理を実行することにより、制御機構Cは、搬送機構Aを制御して被記録媒体Mの搬送を行い、プリント機構Bのプリントヘッド33を制御してインクカートリッジ38内の昇華性インクを被記録媒体Mに吹き付けて浸透層13に画像情報をプリントするプリント処理を実行し、この処理を継続させることで画像情報がプリントされた被記録媒体Mが搬送機構Aの搬送力によって加熱ユニットUに送り込まれる。この加熱ユニットUでは、受け入れた被記録媒体Mを加熱部搬送ローラ46で搬送を行いながら加熱部Hにおいて被記録媒体Mに対して加熱系の部材を接触させること無く、非接触状態で180℃の雰囲気中で2分程度、加熱を継続させて、浸透層13にプリントされた画像情報を定着層12に転写する処理を行う。尚、この加熱部Hにおいては温度センサSからの温度情報をフィードバックして加熱空間Rの温度を180度に維持するよう電気ヒータ51を駆動する制御が行われる。この後、転写を終えた被記録媒体Mは切り込み部搬送ローラ58で送られ、切り込みEを形成すべき位置が切り込み機構Dにおける切り込み形成位置に達した時点で、切り込み部搬送ローラ58の搬送を停止した後、この切り込み機構Dの刃体62により搬送方向と直交する方向の幅に亘って基材11の厚さだけ切り込みEを形成する処理が行われ、この後、加熱ユニットUから送り出され、トレイ48に受け止められる。
【0031】
このように切り込み機構Dで切り込みEを形成する際に、切り込み機構Dの部位で被記録媒体Mの搬送が停止し、加熱部Hで搬送が継続されることもあり、このような際にはループ形成部Lにおいて被記録媒体Mが垂れ下がり方向に弛み、被記録媒体Mの搬送速度差を吸収するものとなっている。そして、切り込み部で切り込みEが形成された状態の被記録媒体Mは、基材11が切り離されるものの浸透層13だけが連なる状態にあるので、被記録媒体Mの排出側の端部(先端)を持ち、折り曲げ方向に軽く変形させるように操作するだけで、図9(イ)、(ロ)に示すように、基材11から浸透層13をフィルム状のまま剥離して取り除けるものとなる。このように浸透層13を剥離した状態では、剥離された浸透層13が後続する被記録媒体Mに連なる状態となるので、この浸透層13の先端側に張力を加えることで、この浸透層13を後続する基材11から簡単に剥離できるものとなっている。
【0032】
このように、切り込みEを形成する場合、必ずしも基材11を完全に切り離す深さの切り込みEを形成する必要は無く、基材11を切り離さないまでも深い切り込みEを形成することにより、小さな外力を作用させることで切り離しを行えるよう実施することも可能である。
【0033】
又、プリント機構Bで被記録媒体Mに対して画像情報のプリントを行う場合にはプリントヘッド33が走査する際に被記録媒体Mの搬送を停止させ、プリントヘッド33が走査方向への作動が完了した直後に被記録媒体Mを設定量だけ搬送する形態の処理が繰り返して行われるが、この画像形成装置では、例えば、被記録媒体Mに余白が形成されるようにプリントヘッド33で画像がプリントされない状況であっても予め設定された速度で被記録媒体Mを搬送することにより温度ムラを発生させないよう被記録媒体Mの搬送形態を設定しており、プリント機構Bと加熱ユニットUにおける加熱部Hとにおいては、この搬送速度で被記録媒体Mを搬送するよう、プリント搬送モータ30と加熱搬送モータ47とが同期した信号で駆動される。
【0034】
又、被記録媒体Mに対してプリント部でプリントを行う際に、画像処理システムGから連続して画像情報が転送された場合には、被記録媒体Mに対して搬送方向に隣接する位置関係(必ずしも画像情報が接する必要は無く、多少の隙間を形成する位置関係でも良い)で画像情報のプリントを行うものであるが、このように伝送される画像情報の最後のもののプリントが終了した場合には、そのようにプリントされた部位を切り離すように、プリントヘッド33に備えて刃体40を切断位置にセットして、プリントヘッド33を走査方向に作動させることで、プリントされた部位を切り離して加熱ユニットUに送り込めるものにしている。
【0035】
このように本発明では、プリント部で画像情報をプリントした被記録媒体Mを加熱空間Rにおいて昇華性インクが適正に昇華する加熱状態を維持することにより、画像情報の転写を実現しており、この加熱空間Rにおいては、ガイド類やローラ類を接触させない非接触型で加熱を行うので、例えば、ガイド類やローラ類に接触させた状態で加熱を行うものと比較した場合に、被記録媒体Mに対して偏った力を作用させず、偏った加熱を行う不都合を解消して、ムラの無い均一の加熱を可能にして、歪みや転写に色ムラを招くことのない処理を実現している。そして、このように画像情報が転写された被記録媒体Mの基材11だけに切り込みEを形成する処理を行うことにより、簡単な扱いで基材11から浸透層13を剥離できるものにしている。このように浸透層13を剥離した被記録媒体Mは定着層12に転写させた画像情報を露出させ、明瞭な文字情報や画像情報を得るものとなる。特に、切り込み機構Dは被記録媒体Mに切り込みEを形成するためのものであるが、実質的に被記録媒体Mの切り離しを行う機能を有するので、被記録媒体Mを切断するための機構を特別に備えずに済むものとなっている。
【0036】
〔別実施の形態〕
本発明は上記実施の形態以外に、例えば、以下のように構成することも可能である(この別実施の形態では前記実施の形態と同じ機能を有するものには、実施の形態と共通の番号、符号を付している)。
【0037】
(イ)図10に示すように、加熱ユニットUにおいて、被記録媒体Mの搬送方向で加熱部Hより下手位置に、被記録媒体Mの浸透層13の側に切り込みEを形成する切り込み機構Dを配置する。この切り込み機構Dは被記録媒体Mの基材11の側に配置されるプレート60と、被記録媒体Mの浸透層13の側に配置され、被記録媒体Mの搬送方向と直交する方向(幅)に移動自在な移動ブロック61に支持された刃体62と、移動ブロック61を案内するガイドロッド63と、この移動ブロック61に対する刃体62の突出量を調節する調節モータ62Mと、移動ブロック61を被記録媒体Mの幅方向に作動させる駆動系とを備え、かつ、調節モータMを制御して、図11に実線で示す位置に刃体62を設定して、この刃体62で被記録媒体62Mの浸透層13だけに切り込みEを形成する切り込みモードと、図11に仮想線で示す位置に刃体62を設定して、この刃体62で被記録媒体Mを切断する切断モードとに切換える制御を実現する制御手段(図示せず)を備える。又、切り込みモードを実行した場合には図12に示すように浸透層13にだけ、浸透層13の厚みに等しい深さの切り込みEが形成される。
【0038】
そして、切り込みモードでの制御を実行することにより、図13(イ)に示すように、被記録媒体Mにおいて画像情報が形成されるプリント領域Fの外部の領域に切り込みEを形成することや、画像情報が形成されるプリント領域Fの内部でも画像情報がプリントされていない領域に切り込みEを形成し、この切り込みEから浸透層13の剥離を行えるものとなり、又、刃体12の位置に被記録媒体Mの切断すべき位置が達した場合には、切断モードでの制御を実行することで被記録媒体Mの切り離しを行えるものになる。つまり、この構成では切り込みEの形成と、被記録媒体Mの切断とを単一の切り込み機構Dによって実現するものとなっている。又、この別実施の形態は被記録媒体Mの浸透層13の全幅に切り込みEを形成することを除外するものでは無く、図13(ロ)に示すように、被記録媒体Mの浸透層13の全幅に亘って定着層12に傷を付けない状態で切り込みEを形成することで、幅方向での端部から浸透層13を容易に剥離できる形態で実施することも可能である。
【0039】
(ロ)図14(イ)に示すように、被記録媒体Mの画像情報が形成されるプリント領域Fの外部の領域に位置する角部において基材11の側に切り込みEを形成するよう切り込み機構Dを構成することも可能である。この別実施の形態では、被記録媒体Mを切断するための手段を別途必要とするものであるが、この切り込みEを形成することにより、図14(ロ)に示すように、この角部の基材11(三角形となる)を取り除いて浸透層13の角部をオーバーハングさせる状態にすることや、この角部の基材11と、この部位に浸透層13を同時に摘んで浸透層13に張力を作用させることで、容易に浸透層13の剥離を行えるものにしている。尚、このように斜め姿勢で切り込みEを形成する対象を浸透層13に設定して実施することも可能である。
【0040】
(ハ)図15に示すように、被記録媒体Mの基材11の側に配置されるプレート60と、被記録媒体Mの浸透層13の側に配置され、被記録媒体Mの搬送方向と直交する方向(幅)に移動自在な移動ブロック61に支持され、かつ、被記録媒体Mの表面と直交する方向を基準にして傾斜する姿勢の刃体62と、移動ブロック61を案内するガイドロッド63と、この移動ブロック61に対する刃体62の突出量を調節する調節モータ62Mと、移動ブロック61を被記録媒体Mの幅方向に作動させる駆動系とを備え、かつ、調節モータ62Mを制御して、刃体62で被記録媒体Mの浸透層13だけに切り込みEを形成する切り込みモードと、刃体62で被記録媒体Mを切断する切断モードとに切換える制御を実現する制御手段(図示せず)を備える。
【0041】
この構成により、図16(イ)に示すように、切り込みモードでの制御を実行することにより、被記録媒体Mの浸透層13に切り込みEを形成して、この切り込みEから浸透層13の剥離を可能にし、又、切断モードでの制御を実行することで被記録媒体Mの切り離しを行い、その断面を図16(ロ)に示すように、浸透層13の側が切断面の側に張り出す斜め姿勢にして浸透層13の剥離を容易にする。つまり、この構成では切り込みEの形成した場合には、この切り込みEの切り込み面を斜め姿勢にしているので、人為的に剥離を行う場合でも、切り込み面の張り出し部分に爪や指先を接触させて浸透層13の剥離を容易に行えるものにしており、又、被記録媒体Mの切断を行った場合にも、切断面において張り出す形態の浸透層13に爪や指先を接触させて浸透層13の剥離を容易に行えるものにしている。
【0042】
(ニ)本発明は、被記録媒体Mの搬送方向で加熱ユニットU(加熱機構)より上手位置で基材11の側に切り込みEを形成するよう処理形態を設定することも可能である。又、加熱ユニットUより下手位置で切り込みEを形成する場合において、基材11の側と浸透層13の側とに切り込みEを形成するよう切り込み機構Dを被記録媒体Mの表裏両面に配置して実施することも可能であり、浸透層13の剥離を行う場合に、人為的な操作に限らず、機械的な操作で剥離を行うよう構成しても良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】画像形成装置及び画像処理システムの斜視図
【図2】画像形成装置の縦断側面図
【図3】画像形成装置の構成を示す斜視図
【図4】被記録媒体の断面図
【図5】制御系のブロック回路図
【図6】切り込み機構の構成を示す図
【図7】切り込み機構の刃体と被記録媒体との位置関係を示す図
【図8】切り込みを形成した被記録媒体の断面図
【図9】切り込みを形成した被記録媒体と浸透層の剥離時の被記録媒体とを示す斜視図
【図10】別実施の形態(イ)の切り込み機構を示す断面図
【図11】別実施の形態(イ)の切り込み機構の刃体と被記録媒体との位置関係を示す図
【図12】別実施の形態(イ)の切り込み機構で形成された切り込みを示す断面図
【図13】別実施の形態(イ)の切り込みと浸透層の剥離形態とを示す斜視図
【図14】別実施の形態(ロ)の切り込みと浸透層の剥離形態とを示す斜視図
【図15】別実施の形態(ハ)の切り込み機構を示す断面図
【図16】別実施の形態(ハ)の切り込みと浸透層の剥離形態とを示す斜視図
【符号の説明】
12 定着層
13 浸透層
B プリント機構
D 切り込み機構
F プリント領域
M 被記録媒体
U 加熱機構

Claims (5)

  1. 基材表面の定着層にフィルム状の浸透層を重ねて成る被記録媒体を送る搬送機構と、この搬送機構で送られる被記録媒体の浸透層に対して昇華性インクを付与して画像情報をプリントするプリント機構と、被記録媒体を加熱することで浸透層にプリントされた画像情報を定着層に転写する加熱機構とを備えると共に、
    前記加熱機構で加熱された前記被記録媒体を弛ませる形態で送るループ形成部を備え、このループ形成部から送られた前記被記録媒体の前記基材側、あるいは、浸透層側の面に対して刃体で切り込みを形成する切り込み機構を備え、
    前記切り込み機構は、この切り込み機構において前記被記録媒体の搬送を停止した状態で前記刃体を作動させることにより前記切り込みを形成する画像形成装置。
  2. 前記切り込み機構が、前記基材側の面において基材の厚みに等しい深さの切り込みを、前記被記録媒体の全幅に亘って形成するよう構成されている請求項1記載の画像形成装置。
  3. 前記切り込み機構が、前記浸透層側の面において、この浸透層の厚みに等しい深さの切り込みを形成するよう構成されている請求項1記載の画像形成装置。
  4. 前記切り込み機構が、被記録媒体に対する画像情報のプリント領域の外部領域に切り込みを形成するよう構成されている請求項1記載の画像形成装置。
  5. 記切り込み機構は、被記録媒体を所定長さに切断する切断機構として機能し、この切断機構の切断面を被記録媒体の表面と直交する方向を基準に傾斜する姿勢に設定してある請求項1記載の画像形成装置。
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