JP4039703B2 - インパクトドライバ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、T字状のインパクトドライバの減速機構に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
T字状のインパクトドライバは、手に持った時のバランスが良く、使いやすいため広く普及している。しかし、木ネジや鉄骨用のテクスネジを下穴の無い面に穴をあけながら締め込もうとする場合、モ−タを起動した瞬間に、ネジが倒れてしまう欠点があった。モ−タを起動した瞬間にビットがモ−タの反動で横に振れて、同時にその時点ではまだネジが食い付いていないのでネジが倒れるからである。倒れることによってネジ頭から脱落したビットは、化粧板や窓枠を傷つけ、台無しにしてしまうこともあった。
【0003】
これは、手で握っているハンドル部を支点にして本体全体がモ−タの反力で回転するため、本体胴体部及びビット軸が横に振れるからある。ハンドルの先端部に駆動用電池を収納したインパクトドライバは、駆動用電池の重みで重心そのものが本体胴体部からハンドル部側にずれるので回転し易くなり、より大きな横振れを発生させた。リングギヤを固定し、サンピニオンを入力軸、キャリアを出力軸としたプラネタリ形の遊星ギヤ機構のインパクトドライバは、サンピニオンとキャリアの回転方向が同じため、モ−タとインパクト機構部の回転方向が同じになり、モ−タの反力にインパクト機構部の反力も加わっていた。
【0004】
そのため、トリガスイッチを変速にして、作業者がモ−タをゆっくり起動することで本体胴体部の横振れを少なくする方法がとられていた。また、近年のモ−タはインパクト機構部の回転モ−メントと釣り合う程度に小型になっていることから、遊星ギヤ部を、キャリアを固定し、サンピニオンを入力軸、リングギヤを出力軸とするスタ−形にすることで入力軸と出力軸の回転方向を逆にし、モ−タとインパクト機構部を逆回転させることで、モ−タの回転モ−メントをインパクト機構部の回転モ−メントで相殺して反動を小さくするものがあった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、ゆっくり起動するものは、ネジが食い込むまで、ゆっくり操作するので時間がかかったり、或は、チョンチョンとトリガスイッチを間歇運動させるこつが必要であった。
【0006】
スタ−形のギヤ機構は入力軸と出力軸を逆回転させる効果があるが、プラネタリ形に比べて減速比が小さいという欠点がある。サンピニオンの歯数をZa、アイドルギヤの歯数をZb、リングギヤの歯数をZcとし、出力軸の回転方向が入力軸と同じとき+、逆のとき−の符号で表すと、公知の減速比は、
プラネタリ形は +1/{(Zc/Za)+1}………………(1)
スタ−形は −1/(Zc/Za)…………………………(2)
である。例えば、Zaを7、Zbを20、Zcを47とすると、
(1)は +1/7.714・・・
(2)は −1/6.714・・・
となる。スタ−形は出力軸の回転方向が入力軸と逆になるが、(2)は(1)より分母が1少なく減速比が小さい。(2)を(1)と同じにするためにはZaを減らすかZcを増やす方法がある。しかし実用的なインパクトドライバの場合、所定の減速比を得るために強度面の限界までZaを小さくしているため、実際にはZcを増やさなければならなず、Zcを増やしたものはリングギヤの径が大きくなり、本体胴体部が太くセンタ−ハイトが大きくなった。リングギヤを大きくできないものは別にもう一段減速ギヤ部を加えたため全長が長くなった。これらは狭いところやコ−ナ−部で作業することの多いインパクトドライバには大きな欠点になっていた。
【0007】
本発明の課題は、センタ−ハイトを大きくしたり、全長を長くしたりせずに、モ−タ回転方向とインパクト機構部の回転方向を互いに逆回転させて、モ−タの回転モ−メントを少しでも相殺することで、本体の反動を小さくし、ネジが倒れる失敗を少なくすることである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題は、電池によって駆動されるモ−タ部と、該モ−タ部の回転を減速する遊星ギヤ部と、該遊星ギヤ部につながるインパクト機構部とを有する本体胴体部と、該本体胴体部の略中央に略T字状に配設される棒状のハンドル部と、該ハンドル部の先端に配される電池と、を備えたインパクトドライバにおいて、該遊星ギヤ部は、該モータ部の回転軸につながるサンピニオンと、該サンピニオンと噛み合うファ−ストギヤと、該ファーストギヤと噛み合うセカンドギヤと、減速比が大きくなるよう該セカンドギヤと同軸上に連設されるサ−ドギヤと、該ファーストギヤと該セカンドギヤと該サードギヤを支持するキャリアと、該サードギヤと噛み合うよう該本体胴体部に固定されたリングギヤとを有し、該キャリアに該インパクト機構部がつながるよう構成することにより達成される。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態の一例を図1〜図2に示す。図1は本発明によるT字状のインパクトドライバの減速ギヤ部のギヤの関係を示す断面図である。図において1はモ−タにつながっているサンピニオンである。2はインパクト機構部につながっているキャリアである。3は固定されているリングギヤである。2aはキャリア2に内臓されていてサンピニオン1と噛み合うファ−ストギヤである。2bはキャリア2に内臓されていてファ−ストギヤ2aと噛み合うセカンドギヤである。2cはキャリア2に内臓され、セカンドギヤ2bと同軸上に一体もしくは連結されていて、リングギヤ3と噛み合うサ−ドギヤである。
【0010】
図2に本発明を採用したインパクトドライバの全体側面図を示す。上記構成による減速ギヤ部の特徴を説明する。
【0011】
第一に、回転方向について説明する。セカンドギヤ2bはファ−ストギヤ2aを介しサンピニオン1の回転と同じ回転方向に自転する。同じくサ−ドギヤ2cもサンピニオン1の回転と同じ回転方向に自転する。サ−ドギヤ2cは固定されたリングギヤ3によって、キャリア2をサンピニオン1と逆方向に回転させる。このためキャリア2につながっているインパクト機構部はモ−タの回転方向と逆方向に回転しモ−タの回転モ−メントを相殺して起動時の反動を小さくする。
【0012】
第2に、減速比について説明する。上記構成による減速ギヤ部の減速比は、サンピニオン1の歯数をZa、ファ−ストギヤ2aの歯数をZb1、セカンドギヤ2bの歯数をZb2、サ−ドギヤ2cの歯数をZb3、リングギヤの歯数をZcとしたとき、
−1/{(Zc/Za)×(Zb2/Zb3)−1}………(3)である。
【0013】
例えば、Zaを7、Zb1を15、Zb2を17、Zb3を13、Zcを47とすると、
(3)は −1/7.780・・・
となる。(3)はプラネタリ形の減速比(1)と同等の減速比である。Zb2、Zb3の関係を工夫することにより更に大きな減速比を得ることもできる。ファ−ストギヤ2aとサ−ドギヤ2cはサンピニオン1とリングギヤ3の間に配設できるので、リングギヤの径をプラネタリ形より大きくしない。セカンドギヤ2bも、リングギヤ3より、リングギヤ3を固定できない程に、はみ出さないように選択できるので本体胴体部を太くしない。
【0014】
また減速比を大きくしなくてもよい場合は、サ−ドギヤ2cを削除し、セカンドギヤ2bをリングギヤ3と噛み合わせることもできる。このときの減速比は、
−1/{(Zc/Za)−1}………(4)
である。
【0015】
例えば、Zaを7、Zb1を15、Zb2を17、Zcを47とすると、
(4)は −1/5.714・・・
となる。
【0016】
第3に、歯幅について説明する。実用的なインパクトドライバの遊星ギヤ部において各々のギヤの強度を比較すると、サンピニオンが最も弱い。アイドルギヤやリングギヤに比べると半分以下の場合もある。このことからサンピニオンと最初に噛み合うギヤの歯幅が遊星ギヤ部の最小の幅寸法を決める寸法の一つとなっている。強度上はセカンドギヤ2bとサ−ドギヤ2cとリングギヤ3はサンピニオン1のおよそ半分の刃幅で十分である。従って、セカンドギヤ2bとサ−ドギヤ2cは、サンピニオン1と噛み合う最初のギヤの刃幅の間に、あるいは僅かに大きい範囲に配設することができる。また、ファ−ストギヤ2aは、リングギヤ3の内側に、サンピニオン1の半分の刃幅のセカンドギヤ2bと噛み合うのに十分な強度を有する歯数にして配設することができる。従って、本体胴体部の全長を長くせず、長くなっても僅かの程度にすることができる。
【0017】
【発明の効果】
本発明によれば、プラネタリ形と減速比を同等以上とすることができ、しかもファ−ストギヤとサ−ドギヤはサンピニオンとリングギヤの隙間に配設でき、セカンドギヤはリングギヤより著しくはみ出さないように選択でき、セカンドギヤとサ−ドギヤは、サンピニオンと噛み合うファ−ストギヤの刃幅と同程度の幅の間に配設できるので、本体胴体部を太くしたり全長を長くしたりしない。また、キャリア及びインパクト機構部をモ−タの回転方向と逆方向に回転させるので、T字状のドライバにおいて起動時の反動を小さくしてネジが倒れる失敗を少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明になる減速ギヤの一実施例を示す状態図である。
【図2】 本発明を採用したインパクトドライバを示す一部縦断側面図である。
【符号の説明】
1はサンピニオン、2はキャリア、2aはファ−ストギヤ、2bはセカンドギヤ、2cはサ−ドギヤ、3はリングギヤである。

Claims (2)

  1. 電池によって駆動されるモ−タ部と該モ−タ部の回転を減速する遊星ギヤ部と、該遊星ギヤ部につながるインパクト機構部とを有する本体胴体部と、
    該本体胴体部の略中央に略T字状に配設される棒状のハンドル部
    該ハンドル部の先端に配される電池と、
    を備えたインパクトドライバにおいて、
    該遊星ギヤ部は、該モータ部の回転軸につながるサンピニオンと、該サンピニオンと噛み合うファ−ストギヤと、該ファーストギヤと噛み合うセカンドギヤと、減速比が大きくなるよう該セカンドギヤと同軸上に連設されるサ−ドギヤと、該ファーストギヤと該セカンドギヤと該サードギヤ支持するキャリアと、該サードギヤと噛み合うよう該本体胴体部に固定されたリングギヤとを有し、該キャリアに該インパクト機構部がつながるよう構成されたことを特徴とするインパクトドライバ。
  2. 電池によって駆動されるモ−タ部と、該モ−タ部の回転を減速する遊星ギヤ部と、該遊星ギヤ部につながるインパクト機構部とを有する本体胴体部と、
    該本体胴体部の略中央に略T字状に配設される棒状のハンドル部と、
    該ハンドル部の先端に配される電池と、
    を備えたインパクトドライバにおいて、
    該遊星ギヤ部は、該モータ部の回転軸につながるサンピニオンと、該サンピニオンと噛み合うファ−ストギヤと、該ファーストギヤと噛み合うセカンドギヤと、該ファーストギヤと該セカンドギヤを支持するキャリアと、該セカンドギヤと噛み合うよう該本体胴体部に固定されたリングギヤとを有し、該キャリアに該インパクト機構部がつながるよう構成されたことを特徴とするインパクトドライバ。
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