JP4038840B2 - 車両の姿勢制御装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、旋回走行時、緊急の障害物回避時あるいは路面状況急変時等において車両のドリフトアウトやスピンを抑制するための車両の姿勢制御装置に関するものであって、とくにドライバーの運転技量等に応じて姿勢制御の終了タイミングを変更するようにした車両の姿勢制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、車両の旋回走行時等において一部の車輪のグリップ力が限界に達すると、車両の走行安定性が悪くなる。例えば、旋回走行時に前輪のグリップ力が限界に達すると、車両はドライバーの意図する旋回コースに沿って旋回することができず、旋回コースの外側にはみ出るといった現象いわゆるドリフトアウトを起こすことが多い。他方、後輪のグリップ力が限界に達すると、車両が旋回コースの内側に巻き込まれるように自転するといった現象いわゆるスピンを起こすことが多い。
【0003】
そこで、近年、走行中の車両のヨーレートやステアリング舵角等の車両の状態量に基づいて、旋回走行時、緊急の障害物回避時あるいは路面状況急変時等における車両のドリフトアウトやスピンを抑制する姿勢制御装置を備えた車両が数多く提案されている。例えば、特開平6−69230号公報には、目標ヨーレートに応じた姿勢制御時に、目標ヨーレートを横滑り角に応じて規制するようにしたものが開示されている。また、本願出願人にかかる特願平9−186977号の明細書中には、車両の状態量に応じてヨーレート制御又は横滑り角制御を行うようにした上で、ヨーレート制御から横滑り角制御に移行する際の制御ショックを緩和するようにした車両の姿勢制御装置が開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、このような姿勢制御装置を備えた従来の車両においては、ドリフトアウトあるいはスピンの発生が未然にかつ自動的に抑制されるので、一般論としては車両の走行安定性ないしは操縦性が高められるといった利点があるものの、かかる姿勢制御がかえってドライバーの自由な操縦の足かせとなる場合もある。例えば、運転技量が比較的高いドライバーの場合は、走行状態が不安定になっても、かかる姿勢制御に頼らずに自力で車両を安定させることが可能な場合も多く、このような場合は、姿勢制御を早めに終了させてドライバーの操作に任せる方が、ドライバーに違和感を与えないので好ましい。
【0005】
他方、さほど運転技量が高くないドライバーの場合は、車両の走行状態が十分に安定するまでなるべく長く姿勢制御を継続するのが好ましい。しかしながら、従来の姿勢制御装置では、ドライバーの運転技量に応じて臨機応変に姿勢制御を行うことはできないといった問題がある。
【0006】
本発明は、上記従来の問題を解決するためになされたものであって、ドライバーの運転技量等に応じて臨機応変に姿勢制御を行うことができる車両の姿勢制御装置を提供することを解決すべき課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決すべくなされた本発明は、車両走行時に、各車輪に設けられた制動装置をそれぞれ独立に制御することにより、車両の所定の姿勢状態量を目標値に追従させて該車両を姿勢制御する車両の姿勢制御装置において、車両の走行状態に応じて、姿勢制御の終了タイミングを変更(設定、補正)する制御終了タイミング変更手段が設けられ、制御終了タイミング変更手段は、運転環境の1つである車速が高いときほど姿勢制御の終了タイミングが遅くなるように姿勢制御の基本的な制御終了しきい値を設定し、運転者の運転技量を判定するための入力情報の1つであるブレーキ操作量が大きいときほど運転者の運転技量が低いものと判定して制御終了タイミングが遅れるように基本的な制御終了しきい値を減少方向に変更し、さらに姿勢制御の状態量偏差(姿勢状態量の実測値の目標値に対する偏差)が収束に向かっている場合は制御終了タイミングがさらに遅れるように姿勢制御の制御ゲインを減少方向に補正するようになっていることを特徴とするものである。
【0008】
この姿勢制御装置においては、車両の走行状態に応じて、姿勢制御の終了タイミングを変更することができるので、運転技量が比較的高いドライバーに対しては、姿勢制御の終了タイミングを早くすることにより、車両の走行安定性を確保しつつ、ドライバーの操縦の自由度を高めることができる。他方、運転技量が比較的低いドライバーに対しては、姿勢制御の終了タイミングを遅くすることにより、車両の走行状態が十分に安定するまで姿勢制御を継続することができる。したがって、ドライバーの運転技量等に応じて臨機応変に姿勢制御を行うことができる。
一般に車速が高いときには車両の走行安定性がとくに低下するが、この姿勢制御装置では、車速が高いときほど姿勢制御の終了タイミングが遅くなるように姿勢制御の基本的な制御終了しきい値を設定しているので、姿勢制御を積極的に行って走行安定性を高めることができる。
また、一般に操作機器の操作量が大きいときほど、そのドライバーの運転技量が低いものと推測されるが、この姿勢制御装置では、ブレーキ操作量が大きいときほど運転者の運転技量が低いものと判定して制御終了タイミングが遅れるように基本的な制御終了しきい値を減少方向に変更するので、運転技量が比較的高いドライバーに対してはその操縦の自由度を高めることができ、他方運転技量が比較的低いドライバーに対してはより積極的に姿勢制御を行って走行安定性を高めることができる。
さらに、この姿勢制御装置では、姿勢制御の状態量偏差が収束に向かっている場合は制御終了タイミングがさらに遅れるように姿勢制御の制御ゲインを減少方向に補正するので、姿勢制御の終了タイミングを容易かつ有効に遅れさせることができる。
【0009】
上記姿勢制御装置においては、制御終了タイミング変更手段は、運転環境の1つである路面摩擦係数が低いときほど姿勢制御の終了タイミング遅くなるように上記の基本的な制御終了しきい値を設定するようになっているのが好ましい。路面摩擦係数が低いときには車両の走行安定性がとくに低下するので、たとえ運転技量が高いドライバーといえども、姿勢制御を積極的に行うのが安全上好ましいからである。
【0010】
上記姿勢制御装置においては、姿制御の状態量偏差が大きいときほど姿勢制御の終了タイミングを遅く設定するようになっているのが好ましい。姿勢制御の状態量偏差が大きいときほど、そのドライバーの運転技量が低いものと推測されるからである。したがって、このようにすれば、運転技量が比較的高いドライバーに対してはその操縦の自由度を高めることができ、他方運転技量が比較的低いドライバーに対してはより積極的に姿勢制御を行って走行安定性を高めることができる。
【0012】
上記姿勢制御装置においては、御終了タイミング変更手段は、運転環境の1つである旋回走行時においては直進走行時よりも姿勢制御の終了タイミング遅くなるように上記の基本的な制御終了しきい値を設定するようになっているのが好ましい。旋回走行時には車両の走行安定性がとくに低下するので、姿勢制御を積極的に行って走行安定性を高めるのが安全上好ましいからである。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を添付の図面を参照しつつ具体的に説明する。
[姿勢制御装置の制御ブロック構成]
まず、この実施の形態にかかる車両の姿勢制御装置の制御ブロック構成を説明する。図1は、本発明の実施の形態にかかる車両の姿勢制御装置の制御ブロックの全体構成を示す図である。
【0016】
図1に示すように、この姿勢制御装置は、例えば、車両のコーナリング時や緊急の障害物回避時や路面状況急変時等において、走行中の車両の横滑りやスピンを抑制するために前後左右の各車輪への制動力を制御するものである。各車輪には、それぞれ、油圧ディスクブレーキ等からなるFR(右前輪)ブレーキ31と、FL(左前輪)ブレーキ32と、RR(右後輪)ブレーキ33と、RL(左後輪)ブレーキ34とが設けられている。これらのFR、FL、RR、RLブレーキ31〜34は、それぞれ油圧制御ユニット30に接続されている。油圧制御ユニット30は、FR、FL、RR、RLブレーキ31〜34の各ホイールシリンダ(図示せず)に接続され、各ブレーキ31〜34のホイールシリンダに油圧を導入することにより各車輪に制動力を付加する。油圧制御ユニット30は、加圧ユニット36及びマスタシリンダ37に接続されている。マスタシリンダ37は、ブレーキペダル38の踏力圧に応じて1次油圧を発生させる。この1次油圧は、加圧ユニット36に導入され、加圧ユニット36で2次油圧に加圧されて油圧制御ユニット30に導入される。油圧制御ユニット30は、SCS・ECU10に電気的に接続され、SCS・ECU10からの制動制御信号に応じて、FR、FL、RR、RLブレーキ31〜34への油圧を配分制御して各車輪への制動力を制御する。
【0017】
SCS(STABILITY CONTROLLED SYSTEM)・ECU(ELECTRONIC CONTROLLED UNIT)10は、この実施の形態の姿勢制御装置として前後・左右の各車輪への制動制御を司るとともに、従来より周知のABS(アンチロック・ブレーキ・システム)制御やTCS(トラクション・コントロール・システム)制御をも司る演算処理装置である。SCS・ECU10には、FR車輪速センサ11と、FL車輪速センサ12と、RR車輪速センサ13と、RL車輪速センサ14と、車速センサ15と、ステアリング舵角センサ16と、ヨーレートセンサ17と、横方向加速度センサ18と、前後方向加速度センサ19と、ブレーキ踏力圧センサ35と、EGIECU20と、TCSオフスイッチ40とが接続されている。
【0018】
ABS制御及びTCS制御の概要を説明する。ABS制御とは、車両走行中に急ブレーキ操作がなされて、車輪が路面に対してロックしそうな場合に車輪への制動力を自動的に制御して車輪のロックを抑制しながら車両を停止させる制御システムである。TCS制御とは、車両走行中に車輪が路面に対してスリップする現象を各車輪への駆動力あるいは制動力を制御することにより抑制しながら車両を走行させる制御システムである。
【0019】
FR車輪速センサ11は、右前輪の車輪速度の検出信号v1をSCS・ECU10に出力する。FL車輪速センサ12は、左前輪の車輪速度の検出信号v2をSCS・ECU10に出力する。RR車輪速センサ13は、右後輪の車輪速度の検出信号v3をSCS・ECU10に出力する。RL車輪速センサ14は、左後輪の車輪速度の検出信号v4をSCS・ECU10に出力する。車速センサ15は、車両の走行速度の検出信号VをSCS・ECU10に出力する。ステアリング舵角センサ16は、ステアリング回転角の検出信号θHをSCS・ECU10に出力する。ヨーレートセンサ17は、車体に実際に発生するヨーレートの検出信号ψをSCS・ECU10に出力する。横方向加速度センサ18は、車体に実際に発生する横方向加速度の検出信号YをSCS・ECU10に出力する。前後方向加速度センサ19は、車体に実際に発生する前後方向加速度の検出信号ZをSCS・ECU10に出力する。ブレーキ踏力圧センサ35は、加圧ユニット36に設けられ、ブレーキペダル38の踏力圧の検出信号PBをSCS・ECU10に出力する。TCSオフスイッチ40は、後述するが車輪のスピン制御(トラクション制御)を強制的に停止するスイッチであり、このスイッチ操作信号SをSCS・ECU10に出力する。
【0020】
EGI(ELECTRONIC GASOLINE INJECTION)・ECU20は、エンジン21と、AT22(AUTOMATIC TRANSMISSION)と、スロットルバルブ23とに接続され、エンジン21の出力制御と、AT22の変速制御と、スロットルバルブ23の開閉制御とを司っている。
SCS・ECU10及びEGI・ECU20は、CPU、ROM、RAMを含み、入力された上記各検出信号に基づいて予め記憶された姿勢制御プログラムやエンジン制御プログラムを実行する。
【0021】
[姿勢制御の概略説明]
この実施の形態の姿勢制御は、各車輪を制動制御することにより車体に旋回モーメントと減速力を加えて前輪あるいは後輪の横滑りを抑制するものである。例えば、車両の旋回走行中に、後輪が横滑りしそうな時(スピン)には主に前外輪にブレーキを付加し外向きモーメントを加えて旋回内側への巻き込み挙動を抑制する。また、前輪が横滑りして旋回外側に横滑りしそうな時(ドリフトアウト)には各車輪に適量のブレーキを付加し内向きモーメントを加えるとともに、エンジン出力を抑制し減速力を付加することにより旋回半径の増大を抑制する。
【0022】
姿勢制御の詳細については後述するが、概説すると、SCS・ECU10は、上述した車速センサ15、ヨーレートセンサ17及び横方向加速度センサ18の検出信号V、ψ及びYから車両に発生している実際の横滑り角(以下、実横滑り角という)βact及び実際のヨーレート(以下、実ヨーレートという)ψactを演算するとともに、実横滑り角βactからSCS制御に実際に利用される推定横滑り角βcontの演算において参照される参照値βrefを演算する。また、SCS・ECU10は、ステアリング舵角センサ16等の検出信号から車両の目標とすべき姿勢として目標横滑り角βTR及び目標ヨーレートψTRを演算し、推定横滑り角βcontと目標横滑り角βTRの差あるいは実ヨーレートψactと目標ヨーレートψTRの差が所定しきい値β0、ψ0を越えたときに姿勢制御を開始し、推定実横滑り角βcontあるいは実ヨーレートψactが目標横滑り角βTRあるいは目標ヨーレートψTRに収束するよう制御する。
【0023】
[姿勢制御の詳細説明]
次に、この実施の形態の姿勢制御(以下、SCS制御という)について詳細に説明する。図2は、この実施の形態の姿勢制御を実行するための全体的動作を示すフローチャートである。
図2に示すように、まず、運転者によりイグニッションスイッチがオンされてエンジンが始動されると、ステップS2でSCS・ECU10とEGI・ECU20とが初期設定され、前回の処理で記憶しているセンサ検出信号や演算値等をクリアする。ステップS4では、SCS・ECU10は上述のFR車輪速センサ11の検出信号v1と、FL車輪速センサ12の検出信号v2と、RR車輪速センサ13の検出信号v3と、RL車輪速センサ14の検出信号v4と、車速センサ15の検出信号Vと、ステアリング舵角センサ16の検出信号θHと、ヨーレートセンサ17の検出信号ψと、横方向加速度センサ18の検出信号Yと、前後方向加速度センサ19の検出信号Zと、ブレーキ踏力圧センサ35の検出信号PBと、TCSオフスイッチ40のスイッチ操作信号Sとを入力する。ステップS6では、SCS・ECU10は上述の各検出信号に基づいて車両状態量を演算する。ステップS7では、車両状態量に基づいて車輪速補正処理を実行する。ステップS8ではSCS・ECU10は、ステップS6で演算された車両状態量から、SCS制御に必要となるSCS制御目標値や制御出力値を演算する。同様に、ステップS10では、ABS制御に必要なABS制御目標値や制御出力値等を演算し、ステップS12では、TCS制御に必要なTCS制御目標値や制御出力値等を演算する。
【0024】
ステップS14では、ステップS8〜ステップS12で演算された各制御出力値の制御出力調停処理を実行する。この制御出力調停処理では、SCS制御出力値と、ABS制御出力値と、TCS制御出力値とをそれぞれ比較し、最も大きな値に対応した制御に移行させる。また、後述するが、SCS制御出力値とABS制御出力値との調停処理は、運転者のブレーキ踏力圧PBの大きさに応じて実行される。すなわち、ステップS14において、ABS制御出力値が最も大きな値の場合にはステップS16でABS制御出力値に基づいてABS制御が実行され、SCS制御出力値が最も大きな値の場合にはステップS18でSCS制御出力値に基づいてSCS制御が実行され、TCS制御出力値が最も大きな値の場合にはステップS20でTCS制御出力値に基づいてTCS制御が実行される。この後、ステップS22では、SCS・ECU10は油圧制御ユニット30等が正常に動作しているか否かのフェイルセーフ判定を行い、もし異常があると判定した場合には、その異常箇所に対応する制御を中止して、ステップS2にリターンして上述の処理を繰り返し実行する。
【0025】
[SCS演算処理の説明]
次に、図2のステップS8に示すSCS演算処理の詳細について説明する。なお、ステップS10及びS12のABS制御演算処理及びTCS制御演算処理については周知の技術であるのでその詳しい説明は省略する。図3は、図2のSCS演算処理を実行するためのフローチャートである。
【0026】
図3に示すように、処理が開始されると、ステップS30でSCS・ECU10は、FR車輪速v1と、FL車輪速v2と、RR車輪速v3と、RL車輪速v4と、車速Vと、ステアリング舵角θHと、実ヨーレートψactと、実横方向加速度Yactとを入力する。ステップS32では、SCS・ECU10は車両に発生する垂直荷重を演算する。この垂直荷重は車速V、横方向加速度Yから周知の数学的手法により推定演算される。ステップS33ではSCS・ECU10は車両に実際に発生する実横滑り角βactを演算する。実横滑り角βactは、実横滑り角βactの変化速度Δβactを積分することにより演算される。また、Δβactは、次の式1により算出される。
【数1】
Δβact=−ψact+Yact/V………………………………………式1
【0027】
次に、ステップS34では、SCS・ECU10はSCS制御に実際に利用される推定横滑り角βcontの演算において参照される参照値βrefを演算する。この参照値βrefは、車両諸元と、車両状態量(車速V、ヨーレートψact、実横方向加速度Yact、実横滑り角βactの変化速度Δβact、ヨーレートψactの変化量(微分値)Δψact)、ブレーキにより生じるヨーモーメントの推定値D1、ブレーキにより生じる横方向の力の低下量の推定値D2に基づいて2自由度モデルを流用して演算される。この参照値βrefは、要するに、検出された車両状態量及びブレーキ操作力に基づいて推定される横滑り角を演算している。
【0028】
この後、ステップS35では、SCS・ECU10はSCS制御に実際に利用される推定横滑り角βcontを演算する。この推定横滑り角βcontは、次の式2及び式3から導かれる微分方程式を解くことにより算出される。
【数2】
Δβcont=Δβact+e+Cf・(βref−βcont)…………………式2
【数3】
Δe=Cf・(Δβref−Δβact−e)………………………………式3
但し
e:ヨーレートセンサと横方向加速度センサのオフセット修正値
f:カットオフ周波数
【0029】
また、後で詳述するとおり、カットオフ周波数Cfは、推定横滑り角βcontを参照値βrefの信頼性に応じてこの参照値βrefに収束するように補正して、推定横滑り角βcontに発生する積分誤差をリセットする際の補正速度の変更ファクタとなり、参照値βrefの信頼性が低いほど小さくなるように補正される係数である。また、参照値βrefの信頼性が低くなるのは前輪のコーナリングパワーCpfあるいは後輪のコーナリングパワーCprに変化が生じたときである。
【0030】
ステップS36では、SCS・ECU10は各車輪の車輪スリップ率及び車輪スリップ角を演算する。車輪スリップ率及び車輪スリップ角は、各車輪の車輪速v1〜v4と、車速Vと、推定横滑り角βcontと、前輪ステアリング舵角θHとから周知の数学的手法により推定演算される。ステップS38では、SCS・ECU10は各車輪への負荷率を演算する。車輪負荷率は、ステップS36で演算された車輪スリップ率及び車輪スリップ角とステップS32で演算された垂直荷重から周知の数学的手法により推定演算される。ステップS40では、SCS・ECU10は走行中の路面の摩擦係数μを演算する。路面の摩擦係数μは、実横方向加速度YactとステップS38で演算された車輪負荷率から周知の数学的手法により推定演算される。次に、ステップS42では、SCS・ECU10は実ヨーレートψact及び推定横滑り角βcontを収束させるべく目標値となる目標ヨーレートψTR、目標横滑り角βTRを演算する。目標ヨーレートψTRは、車速Vと、ステップS40で演算された路面の摩擦係数μと、前輪ステアリング舵角θHとから周知の数学的手法により推定演算される。
【0031】
また、目標横滑り角βTRは、次の式4及び式5から導かれる式6の微分方程式を解くことにより算出される。
【数4】
βx=1/(1+A・V2)・{1−(M・Lf・V2)/(2L・Lr・Cpr)}・Lr・θH/L ………………………………………………式4
【数5】
A=M・(Cpr・Lr−Cpf・Lf)/2L2・Cpr・Cpf…………式5
【数6】
ΔβTR=C・(βx−βTR)……………………………………………式6
但し
V:車速
θH:前輪ステアリング舵角
M:車体質量
I:慣性モーメント
L:ホイルベース
f:前輪から車体重心までの距離
r:後輪から車体重心までの距離
pf:前輪のコーナリングパワー
pr:後輪のコーナリングパワー
C:位相遅れに相当する値
【0032】
次に、図4に示すステップS44で、SCS・ECU10は、目標横滑り角βTRから推定横滑り角βcontを減算した値の絶対値がSCS制御開始しきい値β0以上か否かを判定する(|βTR−βcont|≧β0?)。ステップS44で目標横滑り角βTRから推定横滑り角βcontを減算した値の絶対値がSCS制御開始しきい値β0以上の場合(ステップS44でYES)、ステップS46に進んでSCS制御目標値を目標横滑り角βTRに設定する。一方、ステップS44で目標横滑り角βTRから推定横滑り角βcontを減算した値の絶対値がSCS制御開始しきい値β0を超えない場合(ステップS44でNO)、ステップS52に進んでSCS・ECU10は、目標ヨーレートψTRから実ヨーレートψactを減算した値の絶対値がSCS制御開始しきい値ψ0以上か否かを判定する(|ψTR−ψact|≧ψ0?)。ステップS52で目標ヨーレートψTRから実ヨーレートψactを減算した値の絶対値がSCS制御開始しきい値ψ0以上の場合(ステップS52でYES)、ステップS54に進んでSCS制御目標値を目標ヨーレートψTRに設定する。一方、ステップS52で目標ヨーレートψTRから実ヨーレートψactを減算した値の絶対値がSCS制御開始しきい値ψ0を超えない場合(ステップS52でNO)、ステップS30にリターンして上述の処理を繰り返し実行する。
【0033】
次に、ステップS50では、SCS・ECU10はSCS制御に実際に利用されるSCS制御量βamtを演算する。また、ステップS56では、SCS・ECU10はSCS制御に実際に利用されるSCS制御量ψamtを演算する。
【0034】
[SCS制御とABS制御との調停処理]
次に、図5〜図7を参照しつつSCS制御と、SCS制御とABS制御との調停処理とについて説明する。図5〜図7は、SCS制御とABS制御との調停処理を実行するためのフローチャートである。
以下に示す調停処理は、SCS制御開始条件が成立してもABS制御中であればABS制御を優先させ、あるいはABS制御出力値に基づいてSCS制御出力値を補正する。また、SCS制御開始条件とABS制御開始条件とが両方とも成立したときには、運転者のブレーキ踏力圧PBの大きさに応じていずれかの制御が実行される。
【0035】
以下、具体的な処理を説明する。
図5に示すように、ステップS58では、SCS・ECU10はSCS制御に用いる油圧制御ユニット30等に故障が発生しているか否か判定する。ステップS58で故障している場合(ステップS58でYES)、ステップS74に進んでSCS制御を中止して図2中に示すステップS2にリターンして上述の処理を繰り返し実行する。一方、ステップS58で故障していない場合(ステップS58でNO)、ステップS60に進む。ステップS60では、SCS・ECU10はSCS制 御フラグF1が「1」にセットされているか否かを判定する。SCS制御フラグF1は、「1」がセットされているときにはSCS制御実行中であることを表わす。ステップS60でSCS制御フラグF1が「1」にセットされている場合(ステップS60でYES)、ステップS76に進んでABS制御フラグF2が「1」にセットされているか否かを判定する。ABS制御フラグF2は、「1」がセットされているときにABS制御実行中であることを表わす。
【0036】
一方、ステップS60でSCS制御フラグF1が「1」にセットされていない場合(ステップS60でNO)、ステップS62に進んでABS制御実行中か否かを判定する。ステップS62でABS制御実行中の場合(ステップS62でYES)、後述するステップS80に進む。一方、ステップS62でABS制御実行中でない場合(ステップS62でNO)、ステップS64に進む。ステップS64では、SCS・ECU10はTCS制御実行中か否かを判定する。ステップS64でTCS制御実行中の場合(ステップS64でYES)、ステップS78に進みTCS制御における制動制御を中止して(すなわち、エンジンによるトルクダウン制御のみ実行可能とする)ステップS66に進む。一方、ステップS64でTCS制御実行中でない場合(ステップS62でNO)、ステップS66に進む。
【0037】
ステップS66では、SCS・ECU10はSCS制御の対象となる車輪を選択演算し、その選択車輪に配分すべき目標スリップ率を演算し、その目標スリップ率に応じたSCS制御量βamt又はψamtを演算する。この後、ステップS68では必要なトルクダウン量に応じたエンジン制御量を演算する。そして、ステップS70でSCS制御を実行して、ステップS72でSCS制御フラグF1を「1」にセットした後、上述したステップS2にリターンして上述の処理を繰り返し実行する。
【0038】
ステップS76でABS制御フラグF2が「1」にセットされている場合(ステップS76でYES)、図6中に示すステップS80に進む。ステップS80では、SCS・ECU10はABS制御量をSCS制御量βamt又はψamtに基づいて補正する。その後、ステップS82では、SCS・ECU10はABS制御が終了したか否かを判定する。ステップS82でABS制御が終了していない(ステップS82でNO)、ステップS84でSCS制御フラグF1を「1」にセットするとともに、ステップS86でABS制御フラグF2を「1」にセットして上述のステップS30にリターンする。一方、ステップS82でABS制御が終了したと判定されたならば(ステップS82でYES)、ステップS88でSCS制御フラグF1を「0」にリセットするとともに、ステップS90でABS制御フラグF2を「0」にリセットして上述のステップS30にリターンする。
【0039】
さらに、ステップS76でABS制御フラグF2が「1」にセットされていない場合(ステップS76でNO)、図7に示すステップS92に進む。ステップS92では、SCS・ECU10はブレーキ踏力圧PBが所定のしきい値P0以上あるか否かを判定する(PB≧P0?)。ステップS92で、ブレーキ踏力圧PBが所定のしきい値P0以上あると判定されたならば(ステップS92でYES)、ステップS94に進んでSCS制御を中止して、ステップS96でABS制御に切り換える。そして、ステップS98でABS制御フラグF2を「1」にセットして上述のステップS30にリターンする。一方、ステップS92でブレーキ踏力圧PBが所定のしきい値P0を超えていないと判定されたならば(ステップS92でNO)、ステップS100に進む。ステップS100では、SCS・ECU10はSCS制御が終了したか否かを判定する。ステップS100で、SCS制御が終了していないと判定された場合は(ステップS100でNO)、上述したステップS68にリターンしてその後の処理を実行する。一方、ステップS100でSCS制御が終了したと判定されたならば(ステップS100でYES)、ステップS102でSCS制御フラグF1を「0」にリセットするとともに、ステップS104でABS制御フラグF2を「0」にリセットして上述のステップS30にリターンする。
【0040】
[車輪速補正処理の説明]
次に、図2のステップS7に示す車輪速補正処理の詳細について説明する。図8は、図2の車輪速補正処理を実行するためのフローチャートである。図9は、車輪速補正手順を示す模式図である。
例えば、パンク対応時に用いる補助車輪(以下、これを「テンパ車輪」という)はノーマル車輪よりその径が約5〜15%小さく、他のノーマルタイヤに比べて車輪速が高くなる。車輪速補正処理は、このようなテンパ車輪やノーマル車輪の径のばらつきによる弊害を取り除くために実行される。その弊害とは以下に示すとおりである。
【0041】
▲1▼ABS制御では、1輪だけ車輪速が高いと基準となる車速が持ち上がってテンパ車輪以外のノーマル車輪がロック傾向にあると誤判定してしまう。
▲2▼TCS制御では、駆動輪にテンパ車輪が装着されていると、他方の駆動輪であるノーマル車輪がスピンしていると誤判定してしまう。
▲3▼ノーマル車輪ではその径に最大5%の誤差があり、この誤差に基づく車輪速のばらつきがSCS制御に影響する。
【0042】
図8に示すように、処理が開始されると、ステップS110で、SCS・ECU10はFR車輪速v1と、FL車輪速v2と、RR車輪速v3と、RL車輪速v4とを入力する。ステップS112では、SCS・ECU10は車両が定常走行中か否かを判定する。ここで、定常走行中とは、車輪速度の信頼性が低下するような極端な加減速時やコーナ走行時ではない状態を表している。ステップS112で定常走行中でないと判定された場合(ステップS112でNO)、ステップS110にリターンする。また、ステップS112で定常走行中であると判定された場合(ステップS112でYES)、ステップS114に進んでSCS・ECU10はFR車輪速v1、FL車輪速v2、RR車輪速v3及びRL車輪速v4のいずれかが所定のしきい値va以上であるか否かを判定する。ステップS114でいずれか1輪の車輪速が所定のしきい値va以上であると判定された場合は(ステップS114でYES)、ステップS116に進む。一方、ステップS114でいずれも所定のしきい値を超えていないと判定された場合(ステップS114でNO)、ステップS122に進んでノーマル車輪に対する車輪速補正を実行する。
【0043】
ステップS116では、SCS・ECU10は1輪の車輪速のみが所定のしきい値以上である状態が所定時間継続したか否かを判定する。ステップS116で1輪の車輪速のみが所定のしきい値以上である状態が所定時間継続していると判定された場合は(ステップS116でYES)、ステップS118に進む。一方、ステップS116で、1輪の車輪速のみが所定のしきい値以上である状態が所定時間継続しなかったと判定された場合は(ステップS116でNO)、ステップS122に進んでノーマル車輪に対する車輪速補正を実行する。ステップS118では、SCS・ECU10は1輪の車輪速のみが所定のしきい値以上である状態が所定時間継続したのでその1輪はテンパ車輪であると判定する。そして、ステップS120で、SCS・ECU10はテンパ車輪に対する車輪速補正を実行する。
【0044】
ノーマル車輪あるいはテンパ車輪に対する車輪速補正は、図9に示す▲1▼〜▲3▼の手順で実行される。すなわち、
▲1▼FR車輪速を基準としてRR車輪速を補正し、次に、▲2▼FR車輪速を基準としてFL車輪速を補正し、最後に▲3▼FL車輪速を基準としてRL車輪速を補正する。但し、FR車輪がテンパ車輪である場合は、基準となる車輪は他の車輪に設定する。
以下の説明において、図4のステップS44からS46へ進み、それ以降の処理を横滑り角制御、ステップS52からS54へ進み、それ以降の処理をヨーレート制御と称する。
【0045】
[横滑り角制御開始しきい値β0の補正処理]
以下、図4のステップS44で参照する横滑り角制御開始しきい値β0の補正処理について説明する。図10は、横滑り角制御開始しきい値β0の補正処理を実行するためのフローチャートである。図11は、横滑り角制御開始しきい値β0をステアリング舵角θHに応じて補正するためのマップを示す図である。図12〜図14は、横滑り角制御開始しきい値β0をステアリング舵角θHの変化速度に応じて補正するためのマップを示す図である。
【0046】
図4のステップS52、S54及びS56に示すヨーレート制御中において、車両の横滑り角βが徐々に増加していくと、ステップS44に示す条件が成立した時点で横滑り角制御に移行する。この横滑り角制御への移行時点で、ヨーレート制御の結果、車両が横滑り角の大きく発生した姿勢であると、次に実行される横滑り角制御では、車両の姿勢(推定横滑り角βcont)が目標横滑り角βTRに対して大きくかけ離れているため、車両の姿勢は横滑り角制御により急激に修正されることになる。つまり、ドライバーのステアリング操作に反して車両の姿勢を急激に戻そうとするため、本当に姿勢制御が必要なときには非常に有効であるが、それ以外の急激な姿勢の戻し制御が不要な時にはドライバーの操作に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0047】
上記課題を踏まえて、この横滑り角制御開始しきい値β0の補正処理は、ヨーレート制御から横滑り角制御へスムーズに切り換えるために、ドライバーのステアリング操作に応じて早めに横滑り角制御に移行させるようにしている。
図10に示すように、処理が開始されると、ステップS132では、ドライバーのステアリング操作の状態を判定する。このステアリング操作の判定は、ステアリング舵角θHが増加している状態又はステアリング舵角θHの変化速度が増加している状態で切増しと判定し、反対に切増しの状態からステアリング舵角θHが減少している状態又はステアリング舵角θHの変化速度の方向が逆転した状態で切戻しと判定する。
【0048】
ステップS132でステアリングの切増し操作中の場合には、ステップS134に進む。このステアリングの切増し操作中の場合とは、例えば、旋回路への侵入直前か或いは旋回走行の前半のステアリング舵角θHが増加している状態と考えられる。ステップS134では、図11のマップに示すように、横滑り角制御開始しきい値β0をステアリング舵角θHに応じて補正する(β0→β0・x5)。続いて、ステップS136では、図12のマップに示すように、ステップS134にて補正された横滑り角制御開始しきい値β0を、ステアリング舵角θHの変化速度ΔθH(ステアリング舵角θHの時間による微分値)に応じて更に補正する(β0→β0・x5・x6)。この後、ステップS132にリターンする。
【0049】
図11に示すマップにおいて、ステアリング舵角θHがエリアa1の範囲では、ステアリング舵角θHが極めて小さく略直進走行中あるいは旋回路に侵入した初期段階と考えられる。このエリアa1において、急激にステアリングが操作される場合とは、例えば、前方障害物を避けるために急激なステアリング操作を行った場合やタイヤがパンクした場合が考えられ、早急に(あるいはドライバーが気付かない間に)車両の姿勢を立て直すのが望ましい。このため、エリアa1の範囲では、横滑り角制御開始しきい値β0を極めて減少方向に補正して、図4のステップS44からステップS46への、横滑り角制御に移行しやすくなるように補正している。
【0050】
また、図11に示すマップにおいて、ステアリング舵角θHがエリアa2の範囲では、通常の旋回路走行中と考えられる。このエリアa2では、横滑り角制御に頼らずに、なるべくヨーレート制御により旋回できることが望ましい。このため、エリアa2の範囲では、SCS制御開始閾値β0を増加方向に補正して、横滑り角制御に移行しにくくなる方向に補正している。
【0051】
また、図11に示すマップにおいて、ステアリング舵角θHがエリアa3の範囲では、旋回走行中にステアリング舵角θHが非常に大きいので、例えば、雪上走行中にステアリングを切っているにもかかわらず車両が真直ぐ進んでしまう状態等が想定され、横滑り角が非常に大きく発生している状態と考えられる。このエリアa3では、横滑り角制御に早く移行して、車両の姿勢を立て直すことが望ましい。このため、エリアa3の範囲では、横滑り角制御開始しきい値β0を減少方向に補正して、横滑り角制御に移行しやすくなる方向に補正している。
【0052】
また、図11中の破線で示すように、車速Vが増加するに従って、横滑り角制御開始しきい値β0をより減少方向に補正して、横滑り角制御に移行しやすくなる方向に補正してもよい。
また、図12に示すマップにおいて、ステアリング舵角θHの変化速度ΔθHが速くなる場合とは、ドライバーの意思でステアリング操作を速くして旋回しようとしている状態と考えられる。この状態では、ドライバの意思通りに車両が進むように、横滑り角制御開始しきい値β0を増加方向に補正して、横滑り角制御に移行しにくくなる方向に補正し、ドライバーのステアリング操作に反して車両の姿勢を急激に戻そうとはしないようにしている。
【0053】
ところで、前記のステップS132で、ステアリングの切戻し操作中の場合には、ステップS138に進む。このステアリングの切戻し操作中の場合とは、例えば、旋回路から抜け出す直前あるいは旋回走行の後半のステアリング舵角θHが減少している状態と考えられる。ステップS138では、車両がドライバーによるカウンタ操作中か否かを判定する。この判定は、ステアリング舵角θHの方向とヨーレートψの方向とが反対となっているか否か、すなわち、ステアリング操作方向と車体の旋回方向とが反対になっているか否かにより判定する。
【0054】
ステップS138で、ステアリング舵角θHの方向とヨーレートψの方向とが同方向の場合は(ステップS138でNO)、カウンタ操作ではないと判定され、ステップS140に進む。ステップS140では、車両は安定方向に向かって走行しているが、その後に急激に横滑りが発生した場合等に対応できるように、横滑り角制御開始しきい値β0を10%だけ減少方向に補正する。また、ステップS138で、ステアリング舵角θHの方向とヨーレートψの方向とが反対の場合は(ステップS138でYES)、カウンタ操作であると判定され、ステップS142に進む。ステップS142では、車両が不安定な状態で走行しており、早急に車両の姿勢を立て直す必要があるため、横滑り角制御開始しきい値β0を20%だけ減少方向に補正する。続いて、ステップS144では、カウンタ操作が収束したか否かを判定する。ステップS144でカウンタ操作が収束したと判定されたならば(ステップS144でYES)、ステップS132にリターンし、カウンタ操作が収束していないと判定されたならば(ステップS144でNO)、ステップS142にリターンして、更に横滑り角制御開始しきい値β0を20%だけ減少方向に補正する。
【0055】
上記ステップS140、S142で補正対象となる横滑り角制御開始閾値β0は、ステップS134とステップS136とを経て補正された値β00・x5、β0・x5・x6)でも、図4のステップS44で設定された補正前の値β0であっても良い。
【0056】
ここで、図12に示すマップの代わりに図13及び図14に示すマップにより横滑り角制御開始しきい値β0を補正してもよい。図13及び図14に示すマップでは、図12に示すマップとは逆に、横滑り角制御に移行しやすくなるように補正している。図13及び図14に示すマップにおいて、ステアリング舵角θHの変化速度ΔθHが速くなる場合(急激にステアリングが操作される場合)とは、例えば、前方障害物を避けるために急激なステアリング操作を行った場合やタイヤがパンクした場合が考えられ、早急に車両の姿勢を立て直すこと望ましい。このため、ステアリング舵角θHの変化速度ΔθHが速くなる程、横滑り角制御開始しきい値β0を減少方向に補正して、横滑り角制御に移行しやすくなるように補正している。
【0057】
<変形例>
以下、変形例を説明する。
▲1▼ヨーレートのセンサ値が非常に大きくなるスピン発生後は、推定演算される推定横滑り角の積分誤差がそのヨーレートのセンサ値の影響で非常に大きくなり、姿勢制御に移行する必要が無い場合でもドライバーの意思に反して姿勢制御に移行してしまう等、ドライバーの操作に悪影響を及ぼす虞がある。このため、スピンが発生したか否かを判定して、スピンが発生すると(スピンは、ヨーレートが急激に増加することにより判定する)、横滑り角制御開始しきい値β0を増加方向に補正して、横滑り角制御に移行しにくくなる方向に補正してもよい。また、ドリフトアウト発生後も同様である。ドリフトアウトの発生は、ステアリング舵角θHに対する車両の横滑り角が非常に大きいことにより判定する。
【0058】
▲2▼路面の摩擦係数μが急激に増減する場合にも、推定演算される推定横滑り角の積分誤差が大きくなり、また、ドライバの意思による姿勢立て直し操作に反して制御介入してしまうこともあるため、横滑り角制御開始しきい値β0を増加方向に補正して、横滑り角制御に移行しにくくなる方向に補正してもよい。
▲3▼ステアリング舵角θHの変化が少ない略直進走行の継続時間が大きくなるほど、横方向の負荷が検出できず、摩擦係数μが極めて小さな値となり推定横滑り角の値が不正確となるため、横滑り角制御開始しきい値β0を増加方向に補正して、横滑り角制御に移行しにくくなる方向に補正してもよい。
【0059】
[ヨーレート制御量ψamtの補正処理]
次に、図4のステップS56で参照するヨーレート制御量ψamtの補正処理について説明する。図15は、ヨーレート制御量ψamtの補正処理を実行するためのフローチャートである。図16は、ヨーレート制御量ψamtを横滑り角偏差量βdifに応じて補正するためのマップを示す図である。図17は、ヨーレート制御量ψamtを横滑り角偏差量βdifの変化速度Δβdifに応じて補正するためのマップを示す図である。
【0060】
このヨーレート制御量ψamtの補正処理も、上記横滑り角制御開始しきい値β0の補正処理と同一の課題を踏まえている。つまり、このヨーレート制御量ψamtの補正処理は、ヨーレート制御から横滑り角制御へスムーズに切り換えるために、車両の横滑り偏差量βdifに応じてヨーレート制御量ψamtを減少方向に補正してゆき、目標ヨーレートψTRへ収束させる時の追従性を増減して、車両が大きく姿勢変化しないようにスムーズに横滑り角制御に移行させるようにしている。
【0061】
図15に示すように、処理が開始されると、ステップS152では、車両の運転状態が横滑り制御領域にはなく(ステップS44でNO)、ヨーレート制御領域にある(ステップS52でYES)か否かを判定する。ステップS152、でヨーレート制御領域にあると判定されたならば(ステップS152でYES)、ステップS154に進む。
【0062】
ステップS154では、図16のマップに示すようにヨーレート制御量ψamtを横滑り角偏差量βdifdif=|βTR−βcont|)に応じて補正する(ψamt→ψamt・x7)。続いて、ステップS156では、図17のマップに示すように、ステップS154で補正されたヨーレート制御量ψamtを、横滑り角偏差量βdifの変化速度Δβdif(横滑り角偏差量βdifの時間による微分値)に応じて更に補正する(ψamt→ψamt・x7・x8)。
次に、ステップS158に進み、横滑り角偏差量βdifが増加傾向にあるか否かを判定する。この判定は、横滑り角偏差量βdifの変化速度Δβdifの増減により判定する。ステップS158で、横滑り角偏差量βdifが増加傾向にあると判定されたならば(ステップS158でYES)、ステップS160に進み、他方横滑り角偏差量βdifが増加傾向でないと判定されたならば(ステップS158でNO)、ステップS162に進む。
【0063】
ステップS160では、横滑り制御に移行する直前と考えられるので、ヨーレート制御量ψamtを20%だけ減少方向に補正して、目標ヨーレートψTRへの収束速度を遅くする。ステップS162では、ヨーレート制御量ψamtが所定値ψ1以下であるか否かを判定する。ステップS162でヨーレート制御量ψamtが所定値ψ1以下(ψamt≦ψ1)であると判定されたならば(ステップS162でYES)、ステップS164に進み、横滑り角制御開始しきい値β0を減少方向に補正して、横滑り角制御に移行しやすくなる方向に補正する。ステップS162での所定値ψ1は、ヨーレート制御量ψamtがさらに小さい値になった場合には目標ヨーレートψTRへの追従速度が遅くなり、ヨーレート制御を実行しても車両の姿勢に影響しないような値に設定される。
【0064】
図16に示すマップにおいて、横滑り角偏差量βdifが増加しているということは、横滑り角制御領域には入っていないが車両の姿勢が目標横滑り角βTRに対して大きくずれている状態である。そこで、横滑り角制御に移行する時の前準備として、ヨーレートによる無理な姿勢制御を行なわないで、ゆっくり収束させてゆく。
【0065】
また、図17に示すマップにおいて、横滑り角偏差量βdifの変化速度Δβdifが増加しているということは、図16の場合と同様に、横滑り角制御領域には入っていないが車両の姿勢が目標横滑り角βTRに対して大きくずれ始めている状態である。そこで、横滑り角制御に移行する時の前準備として、ヨーレートによる無理な姿勢制御を行なわないで、ゆっくりと目標ヨーレートψTRに収束させてゆく。このため、図17では、横滑り角偏差量βdifの変化速度Δβdifが増加するのに従ってステップS154で補正されたヨーレート制御量ψamt(=ψamt・x7)を更に減少方向に補正して、図4のステップS56に示す目標ヨーレートψTRに収束させる際の追従速度を小さくしている。
【0066】
<変形例>
図18は、ヨーレート制御量ψamtの補正処理の変形例を示すフローチャートである。
この変形例では、横滑り角偏差量βdifが増加傾向にある場合には、ヨーレート制御量ψamtの補正処理を実行し、横滑り角偏差量βdifが増加傾向に無い場合には、横滑り角偏差量βdifが拡大していないため、通常のヨーレート制御を実行するものである。
【0067】
図18に示すように、処理が開始されると、ステップS172では、横滑り角偏差量βdifが所定値β1(<β0)以上か否かを判定する。ステップS172で、横滑り角偏差量βdifが所定値β1以上であると判定されたならば(ステップS172でYES)、ステップS174で通常のヨーレート制御を実行する。次に、ステップS176で、今回の横滑り角偏差量βdifnが前回の横滑り角偏差量βdifn-1以上か否かを判定する。ステップS176で、今回の横滑り角偏差量βdifnが前回の横滑り角偏差量βdifn-1以上であると判定されたならば(ステップS176でYES)、横滑り角偏差量βdifは拡大傾向にあるので、ステップS178でヨーレート制御量ψamtの補正処理を実行する。このヨーレート制御量ψamtの補正処理は、図15のステップS154以降の処理と同様である。また、ステップS176で今回の横滑り角偏差量βdifnが前回の横滑り角偏差量βdifn-1よりも小さいと判定されたならば(ステップS186でNO)、ヨーレート制御により横滑り角偏差量βdifが拡大していないため、通常のヨーレート制御を実行するものである。
【0068】
[目標横滑り角βTRの上限値設定処理]
次に、図3のステップS42で演算する目標横滑り角βTRの上限値βTRLinを設定する処理について説明する。図19は、目標横滑り角βTRの上限値設定処理を実行するためのフローチャートである。図20は、目標横滑り角βTRの上限値βTRLinを車速Vに応じて設定するためのマップを示す図である。図21及び図22は、それぞれ、目標横滑り角βTRの上限値βTRLinをステアリング舵角θHに応じて設定するためのマップを示す図である。図23は、目標横滑り角βTRの上限値βTRLinをステアリング舵角θHの変化速度ΔθHに応じて設定するためのマップを示す図である。図24は、目標横滑り角βTRの上限値βTRLinを車速V及びステアリング舵角θHに応じて設定するためのマップを示す図である。図25は、目標横滑り角βTRの上限値βTRLinを車速V及びステアリング舵角θHの変化速度ΔθHに応じて設定するためのマップを示す図である。
【0069】
横滑り角制御中において、例えば、車両にスピンやドリフトアウト等が発生すると、ドライバーはあわてるため、車速が高い状態でステアリングを固定させたり、カウンタ操作を行ったりして、ステアリングを通常より大きく操作することが考えられる。このように、ステアリング舵角θHが大きくなると、本来の目標横滑り角βTRが正常値から大幅にずれるので、ステアリング舵角θHにより設定される目標横滑り角βTRの信頼性も低下する。この状態で、通常通りの横滑り角制御を実行すると、推定横滑り角βcontを信頼性の低い目標横滑り角βTRに収束させてしまうことになり、本来の正常な姿勢からかけ離れた姿勢に立て直そうとしてしまう。
【0070】
上記課題を踏まえて、目標横滑り角βTRの上限値設定処理は、車速Vやステアリング舵角θHに応じて目標横滑り角βTRの信頼性を判断し、目標横滑り角βTRの信頼性が低い場合には、目標横滑り角βTRに上限値βTRLinを設定し、その上限値βTRLinを減少方向に補正することにより、目標横滑り角βTRへの過剰な制御を抑制するようにしている。
【0071】
図19に示すように、処理が開始されると、ステップS182では、目標横滑り角βTRが、図20〜図24に示すマップから決定される目標横滑り角βTRの上限値βTRLin以上であるか否かを判定する。ステップS182で、目標横滑り角βTRが、その上限値βTRLin以上であると判定されたならば(ステップS182でYES)、ステップS184で、目標横滑り角βTRを、図20〜図24に示すマップから決定される目標横滑り角βTRの上限値βTRLinに設定する。
【0072】
図20に示すマップにおいて、エリアa4のように車速Vが低い状態では、例えば雪路走行中にスピン等が発生した場合、ドライバはあわてるため、ステアリングを通常より大きく操作することが考えられる。このように、ステアリング舵角θHが大きくなると、横滑り角偏差量βdifが誤った方向に拡大してしまう可能性がある。このため、目標横滑り角βTRの上限値βTRLinを減少方向に補正して、横滑り制御量βamtを小さくし車両の挙動変化を抑えている。また、車速Vが低い状態では、横滑り制御量βamtを小さくしても時間的に余裕があるため、繰り返し制御介入することにより車両の姿勢を立て直しやすくなる。
【0073】
反対に、エリアa5のように車速Vが高い状態では、低速時に比べてドライバーのステアリング操作に対して横滑り角偏差量βdifが大きくなるため横滑り制御量βamtも大きくなる。ところが、高速走行時に大きな横滑り制御量βamtで姿勢制御すると、制御が急激すぎて車両が路面とのグリップを失い、スピン等を起こす可能性がある。このため、目標横滑り角βTRの上限値βTRLinを減少方向に補正して、横滑り制御量βamtを小さくし車両の挙動変化を抑えている。
【0074】
図21に示すマップにおいて、エリアa6のようにステアリング舵角θHが大きくなっていく状態では、横滑り角偏差量βdifが大きくなり、車両はスピン等をしやすい状況にある。このため、目標横滑り角βTRの上限値βTRLinを増加方向に補正して、早急に姿勢を立て直すようにしている。つまり、エリアa6に示すステアリング舵角θHが低い状態に比べて、エリアa7のようにステアリング舵角θHが大きい状態では、例えば、ドライバーの操作したステアリング舵角θHが大きく、横滑り角偏差量βdifが拡大してスピンやドリフトアウトが発生するおそれがある。そこで、このような状態では、目標横滑り角βTRに早急に収束させ、車両の姿勢を立て直す必要があるので、目標横滑り角βTRの上限値βTRLinを増加方向に補正して横滑り角制御を実行させるようにしている。
【0075】
図22に示すマップにおいて、エリアa8のようにステアリング舵角θHが極端に大きくなる状態とは、例えば、ドライバーがカウンタ操作している時であり、この状態では目標横滑り角βTRに早急に収束させ、車両の姿勢を立て直す必要がある。このため、目標横滑り角βTRの上限値βTRLinを増加方向に補正して早く収束させるようにしている。
【0076】
図23に示すマップにおいて、エリアa9のようにステアリング舵角θHの変化速度ΔθHが極端に大きくなる状態とは、例えば、ドライバがカウンタ操作している時であり、この状態では目標横滑り角βTRに早急に収束させ、ドライバの操作通りに車両の姿勢を立て直す必要があるので、目標横滑り角βTRの上限値βTR Linを増加方向に補正している。
【0077】
図24に示すマップにおいて、車速Vが高い状態でも、ステアリング舵角θHが大きくなるほど、横滑り角偏差量βdifが大きくなるため、目標横滑り角βTRに早急に収束させ、ドライバーの操作通りに車両の姿勢を立て直す必要があるので、目標横滑り角βTRの上限値βTRLinを増加方向に補正している。
【0078】
図25に示すマップにおいて、エリアa10のように、車速Vが低速でもなく高速でもない中間領域で、且つステアリング舵角θHの変化速度ΔθHが低い状態から中程度の領域では、目標横滑り角βTRの信頼性が高いので、目標横滑り角βTRの上限値βTRLinを増加方向に補正して横滑り角制御を実行させるようにしている。反対に、エリアa10以外のエリアa11の状態では、目標横滑り角βTRの信頼性が低いので、目標横滑り角βTRの上限値βTRLinの補正処理を実行しないようにしている。
【0079】
<変形例>
変形例として、車両走行中の路面の摩擦係数μが所定の摩擦係数より小さい場合には、ステアリング操作を行ないやすく、目標横滑り角βTRが増加しやすい状態なので、目標横滑り角βTRの上限値βTRLinを減少方向に補正して、横滑り角制御による急激な車両の挙動変化を抑えるようにしてもよい。
【0080】
[横滑り角制御量βamtの補正処理]
次に、図4のステップS50で参照する横滑り角制御量βamtの補正処理について説明する。図26は、横滑り角制御量βamtの補正処理を実行するためのフローチャートである。図27は、横滑り角制御量βamtをステアリング舵角θH及びその変化速度ΔθHに応じて補正するためのマップを示す図である。
図4に示す横滑り角制御中において、横滑り角偏差量βdifの変化速度Δβdifが変化している場合、これが目標横滑り角βTRの増加に起因していることが考えられる。この目標横滑り角βTRは、ドライバーのステアリング操作により決定されるが、横滑り角偏差量βdifが増加している状態でさらにステアリングを切り込むことはスピンやドリフトアウトを助長する結果となる。
【0081】
そこで、横滑り角制御量βamtの補正処理では、目標横滑り角βTRが増加している状態で、ドライバのステアリング操作が切り戻されているか、切り増されているか、あるいはステアリング舵角θHやその変化速度ΔθHによって横滑り角制御量βamtを補正し、ドライバのステアリング操作に応じた横滑り角制御を行うようにしている。
【0082】
図26に示すように、処理が開始されると、ステップS192で、横滑り角偏差量βdifの変化速度Δβdifが所定値β2以上か否かを判定する。ステップS192で、横滑り角偏差量βdifの変化速度Δβdifが所定値β2以上であると判定されたならば(ステップS192でYES)、ステップS199に進む。ステップS199では、横滑り角偏差量βdifがかなり大きくなり、早急に車両の姿勢を立て直す必要があるため、横滑り角制御量βamtを20%増加方向に補正して、目標横滑り角βTRへの収束速度を速める。
【0083】
ステップS192で、横滑り角偏差量βdifの変化速度Δβdifが所定値β2以上でないと判定されたならば(ステップS192でNO)、横滑り角偏差量βdifはそれほど大きくなく、早急に車両の姿勢を立て直す必要もないと考えられるので、ステップS194に進む。
ステップS194では、ドライバーのステアリング操作の状態を判定する。このステアリング操作の判定は、ステアリング舵角θHが変化しない状態で固定と判定し、ステアリング舵角θHが増加している状態又はステアリング舵角θHの変化速度ΔθHが増加している状態で切増しと判定し、反対に切増しの状態からステアリング舵角θHが減少している状態又はステアリング舵角θHの変化速度ΔθHの方向が逆転した状態で切戻しと判定する。
【0084】
ステップS194で、ステアリングの固定又は切増し操作中であると判定された場合は、ステップS196に進む。このステアリングの固定又は切増し操作中の場合とは、例えば、スピンあるいはドリフトアウトが発生しそうな時に横滑り角制御が介入するのであるが、そのスピンあるいはドリフトアウトが発生しそうな時にステアリングを固定又は切増し操作するのは、スピンあるいはドリフトアウトを助長する結果となりドライバーが誤って操作している状態と考えられる。そこで、ステップS196では、目標横滑り角βTRの信頼性は低いものと考えられ、図27のマップに示すように、横滑り角制御量βamtをステアリング舵角θH及びその変化速度ΔθHに応じて補正する(βamt→βamt・x9)。
【0085】
また、ステップS194で、ステアリングの切戻し操作中であると判定された場合は、ステップS198に進む。ステアリングの切戻し操作中の場合とは、例えば、スピンあるいはドリフトアウトが発生しそうな時に横滑り角制御が介入するのであるが、そのスピンあるいはドリフトアウトが発生しそうな時にステアリングがカウンタ操作されていると考えられる。このカウンタ操作は、スピンあるいはドリフトアウトを回避する操作であるのでドライバの操作は誤っていないものと考えられる。そこで、ステップS198では、目標横滑り角βTRの信頼性は高いものと考えられ、早急に車両の姿勢を立て直す必要があるため、横滑り角制御量βamtを10%増加方向に補正して、目標横滑り角βTRへの収束速度を高めている。
【0086】
図27に示すマップにおいて、ステアリングの固定又は切増し操作中の場合には、スピン或いはドリフトアウトが発生しそうな時にステアリングを固定又は切増し操作するのは、スピンあるいはドリフトアウトを助長する結果となりドライバーが誤って操作している状態なので、ステアリング舵角θHが増加するに従って、目標横滑り角βTRの信頼性は低くなるものと考えられ、横滑り角制御量βamtを減少方向に補正している。同様に、ステアリング舵角θHの変化速度ΔθHが増加するに従って、目標横滑り角βTRの信頼性は低くなるものと考えられ、さらに車両の挙動変化が速くなるため、横滑り角制御量βamtをさらに減少方向に補正している。
【0087】
[横滑り角偏差量又はヨーレート偏差量の変化要因に基づく補正処理]
次に、横滑り角偏差量βdif又はヨーレート偏差量ψdifの変化要因に基づく補正処理について説明する。図28は、ヨーレート偏差量ψdifに応じた横滑り角制御開始しきい値β0、目標横滑り角βTR及びヨーレート制御量ψamtの補正処理を実行するためのフローチャートである。図29は、横滑り角偏差量βdifに応じた、横滑り角制御開始しきい値β0、目標横滑り角βTR及び横滑り角制御量βamtの補正処理を実行するためのフローチャートである。
【0088】
<ヨーレート偏差量ψdifに応じた補正処理>
まず、ヨーレート偏差量ψdifに応じた横滑り角制御開始閾値β0、目標横滑り角βTR、ヨーレート制御量ψamtの補正処理について説明する。
ヨーレート偏差量ψdifdif=|ψTR−ψact|)に応じた補正処理では、ヨーレート偏差量ψdifの変化速度Δψdif(今回のヨーレート偏差量ψdifnと前回のヨーレート偏差量ψdifn-1との差)が所定値ψ1以上変化した場合、その変化要因が目標ヨーレートψTRであるのか、それとも実ヨーレートψactであるのかに応じて、ヨーレート制御量ψamt、横滑り角制御開始閾値β0及び目標横滑り角βTRを補正する。
【0089】
図28に示すように、図4のステップS56からステップS202に進み、ステップS202では、ヨーレート偏差量ψdifの変化速度Δψdifが所定値ψ2以上変化したか否かを判定する。ステップS202で、ヨーレート偏差量ψdifの変化速度Δψdifが所定値ψ2以上変化したと判定されたならば(ステップS202でYES)、ステップS204に進む。ステップS204では、ヨーレート偏差量ψdifの変化速度Δψdifの変化要因が目標ヨーレートψTRであるのか、それとも実ヨーレートψactであるのかを判定する。ステップS204で、ヨーレート偏差量ψdifの変化速度Δψdifの変化要因が目標ヨーレートψTRであれば、ステップS206〜S210に進む。
【0090】
ヨーレート偏差量ψdifの変化速度Δψdifの変化要因が目標ヨーレートψTRであれば、これはドライバーのステアリング操作によるものと考えられる。そこで、ステップS206では、ドライバーの意思に従って、横滑り角制御開始しきい値β0を増加方向に補正して、横滑り角制御に移行しにくくして、ドライバーのステアリング操作に任せるようにする。さらに、ステップS208では、目標横滑り角βTRの上限値βTRLinを増加方向に補正して、横滑り角制御に移行した場合に、ドライバーのステアリング操作に応じて目標横滑り角βTRが増加できるように補正する。また、ステップS210では、ヨーレート制御量ψamtを減少方向に補正して、ヨーレート制御による目標ヨーレートへの急激な姿勢変化を抑制し、ドライバのステアリング操作に任せるとともに、ドライバーのステアリング操作と干渉しないようにしている。
【0091】
一方、ステップS204で、ヨーレート偏差量ψdifの変化速度Δψdifの変化要因が実ヨーレートψactであると判定されたならば、ステップS212〜S214に進む。
ヨーレート偏差量ψdifの変化速度Δψdifの変化要因が実ヨーレートψactであれば、これは路面形状変化や路面摩擦係数変化等の外乱に起因するものと考えられ、早急に車両の姿勢を立て直す必要がある。そこで、ステップS212で、横滑り角制御開始しきい値β0を減少方向に補正して、横滑り角制御に移行しやすくし、横滑り角制御に移行した時にスリップやドリフトアウトに対して早めに対処できるようにする。さらに、ステップS214では、早急な姿勢の立て直しを図るため、ヨーレート制御量ψamtを増加方向に補正して目標ヨーレートψTRへの収束を早めている。
【0092】
以上のように、ヨーレート制御中において、ヨーレート偏差量ψdifの変化要因に応じて横滑り角制御開始しきい値β0、目標横滑り角βTR及びヨーレート制御量ψamtを補正するので、ドライバの操作に起因する場合には、ドライバの意思に従うようにし、外乱に起因する場合には、早急に車両の姿勢を立て直すようにすることができる。
【0093】
<横滑り角偏差量βdifに応じた補正処理>
次に、横滑り角偏差量βdifに応じた横滑り角制御開始しきい値β0、目標横滑り角βTR、横滑り角制御量βamtの補正処理について説明する。
横滑り角偏差量βdifdif=|βTR−βcont|)に応じた補正処理では、横滑り角偏差量βdifの変化速度Δβdif(今回の横滑り角偏差量βdifnと前回の横滑り角偏差量βdifn-1との差)が所定値β2以上変化した場合、その変化要因が目標横滑り角βTRであるのか、推定横滑り角βcontであるのかに応じて、横滑り角制御開始しきい値β0、目標横滑り角βTR及び横滑り角制御量βamtを補正する。
【0094】
図29に示すように、図4のステップS50からステップS222に進み、ステップS222では、横滑り角偏差量βdifの変化速度Δβdifが所定値β2以上変化したか否かを判定する。ステップS222で、横滑り角偏差量βdifの変化速度Δβdifが所定値β2以上変化したと判定されたならば(ステップS222でYES)、ステップS224に進む。ステップS224では、横滑り角偏差量βdifの変化速度Δβdifの変化要因が目標横滑り角βTRであるのか、推定横滑り角βcontであるのかを判定する。ステップS224で、横滑り角偏差量βdifの変化速度Δβdifの変化要因が目標横滑り角βTRであると判定されたならば、ステップS226〜S230に進む。
【0095】
横滑り角偏差量βdifの変化速度Δβdifの変化要因が目標横滑り角βTRであれば、これはドライバーのステアリング操作によるものと考えられる。そこで、ステップS226では、ドライバーの意思に従って横滑り角制御開始しきい値β0を増加方向に補正して、横滑り角制御に移行しにくくして、ドライバーのステアリング操作に任せるようにする。さらに、ステップS228では、目標横滑り角βTRの上限値βTRLinを増加方向に補正して、ドライバーのステアリング操作に応じて目標横滑り角βTRが増加できるように補正する。また、ステップS230では、横滑り角制御量βamtを減少方向に補正して、横滑り角制御による目標横滑り角βTRへの急激な姿勢変化を抑制し、ドライバーのステアリング操作に任せるとともに、ドライバーのステアリング操作と干渉しないようにしている。
【0096】
一方、ステップS224で、横滑り角偏差量βdifの変化速度Δβdifの変化要因が推定横滑り角ψcontであると判定されたならば、ステップS232〜S234に進む。
横滑り角偏差量βdifの変化速度Δβdifの変化要因が推定横滑り角ψcontであれば、これは路面形状変化や路面摩擦係数変化等の外乱に起因するものと考えられ、早急に車両の姿勢を立て直す必要がある。そこで、ステップS232では、横滑り角制御開始しきい値β0を減少方向に補正して、横滑り角制御に移行しやすくし、横滑り角制御に移行した時にスリップやドリフトアウトに対して早めに対処できるようにする。さらに、ステップS234では、早急な姿勢の立て直しを図るため、横滑り角制御量βamtを増加方向に補正して、目標横滑り角βTRへの収束を早めている。
【0097】
以上のように、横滑り角制御中において、横滑り角偏差量βdifの変化要因に応じて横滑り角制御開始しきい値β0、目標横滑り角βTR及び横滑り角制御量βamtを補正するので、ドライバーの操作に起因する場合には、ドライバの意思に従うようにし、外乱に起因する場合には、早急に車両の姿勢を立て直すことができる。
【0098】
[制御終了タイミング補正処理]
以下、車両の走行状態(運転環境)ないしはドライバーの運転技量に応じてSCS制御の制御特性、具体的にはSCS制御の制御終了タイミングを臨機応変に好ましく設定ないしは変更(補正)するための処理(制御終了タイミング補正処理)について説明する。
この制御終了タイミング補正処理においては、車速Vと、路面摩擦係数μと、ステアリング舵角θHの絶対値│θH│(以下、これを「舵角絶対値│θH│」という)と、SCS制御状態量(ヨーレートあるいは横滑り角)の実測値の目標値に対する偏差(SCS制御状態量偏差)と、車両の走行状態を制御する所定の操作機器(例えば、ハンドル、スロットルバルブ、ブレーキ等であり、以下これを「走行制御機器」という)のSCS制御中における操作量ないしは操作量変化とに基づいて、該SCS制御の終了タイミングを設定ないしは変更(補正)するようにしている。
【0099】
ここで、車速Vと、路面摩擦係数μと、舵角絶対値│θH│とは、本質的な車両の走行安定性(運転環境)を判定するための入力情報として用いられる。すなわち、車速Vが高いときほど、路面摩擦係数μが低いときほど、あるいは舵角絶対値│θH│が大きいとき(旋回走行)ほど、本質的には車両の走行安定性(運転環境)が低下するので、ドライバーの運転技量のいかんにかかわらずSCS制御の終了タイミングを遅く設定して走行安定性を確保するようにしている。
【0100】
また、SCS制御状態量偏差と、走行制御機器の操作量ないしは操作量変化とは、ドライバーの運転技量を判定するための入力情報として用いられる。すなわち、SCS制御状態量偏差が大きいときには、ドライバーがSCS制御状態量(ヨーレートあるいは横滑り角)を目標値になかなか近づけることができず、したがって該ドライバーの運転技量は比較的低いものと推測される。そこで、SCS制御状態量偏差が所定の基準値より大きいときには、該ドライバーの運転技量は低いものと判定するようにしている。
他方、走行制御機器の操作量ないしは操作量変化が大きいときには、ドライバーが走行制御機器を安定して操作することができず右往左往の操作を行っており、したがって該ドライバーの運転技量は比較的低いものと推測される。そこで、走行制御機器の操作量ないしは操作量変化が所定の基準値より大きいときには、該ドライバーの運転技量は低いものと判定するようにしている。
【0101】
ところで、このSCS制御においては、SCS制御状態量(ヨーレートあるいは横滑り角)又はSCS制御状態量偏差(ヨーレート偏差あるいは横滑り角偏差)が所定の制御終了しきい値より小さくなったときにSCS制御(各場面場面における個別的なSCS制御の実行)を終了するようにしている。そこで、この制御終了タイミング補正処理では、運転環境(V、μ、│θH│)に応じて基本的な制御終了しきい値を設定した上で、ドライバーの運転技量に応じて該制御終了しきい値を減少方向に変更(補正)することにより、制御終了タイミングを遅らせるようにしている。そして、SCS制御状態量偏差が収束に向かっている場合は、さらにSCS制御における制御ゲインを減少方向に補正することにより、制御終了タイミングをさらに遅らせるようにしている。
【0102】
かくして、この制御終了タイミング補正処理においては、基本的には、本質的な走行安定性が低いときほどSCS制御の終了タイミングを遅く設定した上で、さらにドライバーの運転技量が低いときにはSCS制御の終了タイミングをさらに遅らせて、走行安定性を十分に高めるようにしている。したがって、運転技量が比較的高いドライバーについては、SCS制御の終了タイミングを比較的早くすることができ、SCS制御により走行安定性を高めつつ操縦の自由度を高めることができる。他方、運転技量が比較的低いドライバーについては、SCS制御の終了タイミングを比較的遅くすることができ、より積極的に姿勢制御を行って走行安定性を十分に高めることができる。
【0103】
以下、図30に示すフローチャートを参照しつつ、制御終了タイミング補正処理の具体的な制御方法を説明する。
図30に示すように、この制御終了タイミング補正処理においては、まずステップS242で、ヨーレート制御における基本的な制御終了しきい値ψxと、横滑り角制御における基本的な制御終了しきい値βxとが演算される。
【0104】
図31に示すように、これらの基本的な制御終了しきい値ψx及びβxは、車速Vが高い(大きい)ときほど小さくなるように、かつ路面摩擦係数μが低いときほど小さくなるように設定されている。すなわち、車速Vが高いときあるいは路面摩擦係数μが低いときほどSCS制御の制御終了タイミングを遅く設定して、積極的にSCS制御を実行するようにしている。車速Vが高いときあるいは路面摩擦係数μが低いときには、車両の本質的な走行安定性がとくに低下するので、たとえ運転技量が高いドライバーといえども、SCS制御を積極的に行うのが安全上好ましいからである。
【0105】
次に、ステップS244で、前記の基本的な制御終了しきい値ψx及びβxを、舵角絶対値│θH│に基づいて補正するための補正値θHxが演算される。
図32に示すように、この補正値θHxは、舵角絶対値│θH│が大きいときほど小さくなるように設定されている。換言すれば、補正値θHxは、旋回走行時には直進走行時よりも小さくなるように設定されている。すなわち、舵角絶対値│θH│が大きいとき(旋回走行時)には、SCS制御の終了タイミングを遅くして、積極的にSCS制御を実行するようにしている。舵角絶対値│θH│が大きいとき(旋回走行時)には車両の走行安定性がとくに低下するので、SCS制御を積極的に行って走行安定性を高めるのが安全上好ましいからである。なお、舵角絶対値│θH│が0付近の領域では補正値θHxは1とされ、この場合は基本的な制御終了しきい値ψx及びβxに対してステアリング舵角θHに基づく補正は施されないことになる。
【0106】
そして、ステップS246で、SCS制御中における制御状態量(ヨーレートあるいは横滑り角)の目標値に対する偏差すなわちSCS制御状態量偏差(ヨーレート偏差あるいは横滑り角偏差)の平均値α(以下、これを「制御偏差平均値α」という)が演算される。
続いて、ステップS248で、SCS制御中における走行制御機器(例えば、ハンドル)の操作量変化(例えば、ステアリング舵角変化)の平均値θ(以下、これを「操作量変化平均値θ」という)が演算される。
【0107】
この後、ステップS250で、制御偏差平均値αが所定の基準値α0よりも大きいか否かと、操作量変化平均値θが所定の基準値θ0よりも大きいか否かとが比較・判定される。ここで、基準値α0は、制御偏差平均値αがこれより大きいと、そのドライバーの運転技量が低いものと推測されるような値に好ましく設定される。また、基準値θ0は、操作量変化平均値θがこれより大きいと、そのドライバーの運転技量が低いものと推測されるような値に好ましく設定される。
【0108】
ステップS250で、α>α0であるか、又はθ>θ0であると判定された場合(YES)、すなわち車両を運転しているドライバーの運転技量が低いものと判定された場合は、以下のステップS252〜S260で、SCS制御(ヨーレート制御あるいは横滑り角制御)の制御終了タイミングが遅れさせられてSCS制御がより長く継続され、該ドライバーの低い運転技量に相応して車両の走行安定性が十分に高められる。
【0109】
具体的には、まずステップS252で、ドライバーの運転技量に基づく制御終了しきい値補正量hが1より小さい所定の正の数、例えば0.8に設定される。このように、制御終了しきい値補正量hが0.8に設定された場合、後記のステップS260でSCS制御(ヨーレート制御あるいは横滑り角制御)における制御終了しきい値ψx又はβxが、0.8倍に低減されることになる。
【0110】
次に、ステップS254で、SCS制御状態量偏差(ヨーレート偏差あるいは横滑り角偏差)が減少しているか否か、すなわちSCS制御状態量(ヨーレートあるいは横滑り角)が目標値に収束しつつあるか否かが比較・判定される。ここで、SCS制御状態量偏差が減少していると判定された場合は(YES)、ステップS258で該SCS制御(ヨーレート制御あるいは横滑り角制御)の制御ゲインが20%だけ低減される。この場合、制御ゲインの低減により、SCS制御状態量の目標値への接近速度、すなわちSCS制御状態量偏差の制御終了しきい値への接近速度が小さくなり、SCS制御の制御終了タイミングが遅くなる。この制御ゲインの低減による制御終了タイミングの遅延は、制御終了しきい値の低減による制御終了タイミングの遅延とあいまって走行安定性を大幅に高めることになる。この後、ステップS260が実行される。
【0111】
他方、ステップS254で、SCS制御状態量偏差が減少していないと判定された場合は(NO)、ステップS256で現在の制御ゲインを保持し、制御ゲインの減少方向への補正は行われない。SCS制御状態量偏差が減少していない場合は、SCS制御状態量がなかなか目標値に近づかない状態にあるので、制御ゲインを高く保ってSCS制御の効果を強める必要があるからである。この後、ステップS260が実行される。
【0112】
ステップS260では、次の式7又は式8により、それぞれ、基本的なヨーレート制御終了しきい値ψxと横滑り角制御終了しきい値βxとが補正され、この後リターンする。
【数7】
ψx=ψx・θHx・h…………………………………………………式7
【数8】
βx=βx・θHx・h…………………………………………………式8
但し
θHx:ステップS244で演算された舵角絶対値に係る補正値
h:ステップS252で演算された運転技量に係る補正量
【0113】
このように、ドライバーの運転技量が低い場合は、車速Vと路面摩擦係数μと舵角絶対値│θH│とに基づいてSCS制御の終了タイミングが設定され、さらにドライバーの運転技量に基づいてSCS制御の終了タイミングが遅延させられるので、車両の走行状態が十分に安定するまでSCS制御が継続される。
【0114】
ところで、前記のステップS250で、α≦α0であり、かつθ≦θ0であると判定された場合(NO)、すなわち車両を運転しているドライバーの運転技量が高いと判定された場合は、ステップS262で、次の式9又は式10により、それぞれ、基本的なヨーレート制御終了しきい値ψxと横滑り角制御終了しきい値βxとが補正され、この後リターンする。
【数9】
ψx=ψx・θHx………………………………………………………式9
【数10】
βx=βx・θHx………………………………………………………式10
但し
θHx:ステップS244で演算された舵角絶対値に係る補正値
【0115】
このように、ドライバーの運転技量が高い場合は、車速Vと路面摩擦係数μと舵角絶対値│θH│とに基づいてSCS制御の終了タイミングが好ましく設定されるだけであって、格別にSCS制御の終了タイミングは遅延させられない。したがって、SCS制御の終了タイミングが比較的早くなり、車両の走行安定性を確保しつつ、ドライバーの操縦の自由度を高めることができる。
【0116】
このように、制御終了タイミング補正処理を行うことにより、ドライバーの運転技量に応じて臨機応変に適切なSCS制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態にかかる車両の姿勢制御装置の制御ブロックの全体構成を示す図である。
【図2】 本実施の形態にかかる姿勢制御を実行するための全体的動作を示すフローチャートである。
【図3】 図2中のSCS演算処理ステップを実行するためのフローチャートである。
【図4】 図2中のSCS演算処理ステップを実行するためのフローチャートである。
【図5】 SCS制御とABS制御との調停処理を実行するためのフローチャートである。
【図6】 SCS制御とABS制御との調停処理を実行するためのフローチャートである。
【図7】 SCS制御とABS制御との調停処理を実行するためのフローチャートである。
【図8】 図2中の車輪速補正処理ステップを実行するためのフローチャートである。
【図9】 車輪速補正の手順を示す模式図である。
【図10】 横滑り角制御開始しきい値β0の補正処理を実行するためのフローチャートである。
【図11】 横滑り角制御開始しきい値β0をステアリング舵角θHの変化速度に応じて補正するためのマップを示す図である。
【図12】 横滑り角制御開始しきい値β0をステアリング舵角θHの変化速度に応じて補正するためのマップを示す図である。
【図13】 横滑り角制御開始しきい値β0をステアリング舵角θHの変化速度に応じて補正するためのマップを示す図である。
【図14】 横滑り角制御開始しきい値β0をステアリング舵角θHの変化速度に応じて補正するためのマップを示す図である。
【図15】 ヨーレート制御量ψamtの補正処理を実行するためのフローチャートである。
【図16】 ヨーレート制御量ψamtを横滑り角偏差量βdifに応じて補正するためのマップを示す図である。
【図17】 ヨーレート制御量ψamtを横滑り角偏差量βdifの変化速度Δβdifに応じて補正するためのマップを示す図である。
【図18】 ヨーレート制御量ψamtの補正処理の変形例を示すフローチャートである。
【図19】 目標横滑り角βTRの上限値設定処理を実行するためのフローチャートである。
【図20】 目標横滑り角βTRの上限値βTRLinを車速Vに応じて設定するためのマップを示す図である。
【図21】 目標横滑り角βTRの上限値βTRLinをステアリング舵角θHに応じて設定するためのマップを示す図である。
【図22】 目標横滑り角βTRの上限値βTRLinをステアリング舵角θHに応じて設定するためのマップを示す図である。
【図23】 目標横滑り角βTRの上限値βTRLinをステアリング舵角θHの変化速度ΔθHに応じて設定するためのマップを示す図である。
【図24】 目標横滑り角βTRの上限値βTRLinを車速V及びステアリング舵角θHに応じて設定するためのマップを示す図である。
【図25】 目標横滑り角βTRの上限値βTRLinを車速V及びステアリング舵角θHの変化速度ΔθHに応じて設定するためのマップを示す図である。
【図26】 横滑り角制御量βamtの補正処理を実行するためのフローチャートである。
【図27】 横滑り角制御量βamtをステアリング舵角θH及びその変化速度ΔθHに応じて補正するためのマップを示す図である。
【図28】 ヨーレート偏差量ψdifに応じた横滑り角制御開始しきい値β0、目標横滑り角βTR及びヨーレート制御量ψamtの補正処理を実行するためのフローチャートである。
【図29】 横滑り角偏差量βdifに応じた、横滑り角制御開始しきい値β0、目標横滑り角βTR及び横滑り角制御量βamtの補正処理を実行するためのフローチャートである。
【図30】 制御終了タイミング補正処理の制御方法を示すフローチャートである。
【図31】 制御終了タイミング補正処理における、SCS制御終了しきい値の車速及び路面摩擦係数に対する変化特性を示す図である。
【図32】 制御終了タイミング補正処理における舵角絶対値に基づくSCS制御終了しきい値の補正値の舵角絶対値に対する変化特性を示す図である。
【符号の説明】
10…SCS・ECU、11…FR車輪速センサ、12…FL車輪速センサ、13…RR車輪速センサ、14…RL車輪速センサ、15…車速センサ、16…ステアリング舵角センサ、17…ヨーレートセンサ、18…横方向加速度センサ、19…前後方向加速度センサ、20…EGI・ECU、21…エンジン、22…オートマチックトランスミッション、23…スロットルバルブ、30…油圧制御ユニット、31…FRブレーキ、32…FLブレーキ、33…RRブレーキ、34…RLブレーキ、35…ブレーキ踏力圧センサ、36…加圧ユニット、37…マスタシリンダ、38…ブレーキペダル、40…TCSオフスイッチ。

Claims (3)

  1. 車両走行時に、各車輪に設けられた制動装置をそれぞれ独立に制御することにより、車両の所定の姿勢状態量を目標値に追従させて該車両を姿勢制御する車両の姿勢制御装置において、
    車両の走行状態に応じて、上記姿勢制御の終了タイミングを変更する制御終了タイミング変更手段が設けられ
    上記制御終了タイミング変更手段は、運転環境の1つである車速が高いときほど上記姿勢制御の終了タイミングが遅くなるように上記姿勢制御の基本的な制御終了しきい値を設定し、運転者の運転技量を判定するための入力情報の1つであるブレーキ操作量が大きいときほど運転者の運転技量が低いものと判定して上記制御終了タイミングが遅れるように上記の基本的な制御終了しきい値を減少方向に変更し、さらに上記姿勢制御の状態量偏差が収束に向かっている場合は上記制御終了タイミングがさらに遅れるように上記姿勢制御の制御ゲインを減少方向に補正するようになっていることを特徴とする車両の姿勢制御装置。
  2. 上記制御終了タイミング変更手段は、運転環境の1つである路面摩擦係数が低いときほど、上記終了タイミング遅くなるように上記の基本的な制御終了しきい値を設定するようになっていることを特徴とする請求項1に記載された車両の姿勢制御装置。
  3. 上記制御終了タイミング変更手段は、運転環境の1つである旋回走行時においては直進走行時よりも、上記終了タイミング遅くなるように上記の基本的な制御終了しきい値を設定するようになっていることを特徴とする請求項1又は2に記載された車両の姿勢制御装置。
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