JP4038449B2 - 高力ボルトによる箱形断面材の継手構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高力ボルトによる箱形断面材の継手構造及び継手施工法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
例えば、鋼構造物に用いられる鋼管柱には、円柱鋼管や厚板4面溶接組立角形鋼管、厚板プレス成形角形鋼管、薄板ロール成形角形鋼管等の箱形断面材が用いられている。これらは閉鎖断面を有することから、高力ボルトを用いた上下鋼管同士の現場での継手施工は不可能であるため溶接接合により行われているが、溶接は溶接工の技量によって溶接部の力学品質が大きく左右されると共に、風や雨に対しても十分な対策が必要であり、必要な力学品質を確保するためには、多大な管理と労力を要していると共に、溶接作業には、多大な手間と時間を必要とすることから施工コストが高騰する大きな要因ともなっていたもので、接合作業のスピードアップが強く要望されていた。
【0003】
このような鋼管の継手施工上のスピードアップを図るため、鋼管の外側のみで施工可能なワンサイドボルトが開発され、また、管壁にタップを設けたり、接合部に特殊な継手金物を溶接にて取り付けることにより、一般の高力ボルトによる施工を可能にしたものがあったが、前記ワンサイドボルトあるいは、特殊な継手金物と高力ボルトによる継手施工では、総じてコスト高になると共に、閉鎖断面が比較的小断面の鋼管にしか適用できない問題があった。さらに、閉鎖断面が大きい鋼管の継手構造において、接合端部から離れた部位にボルト施工用のハンドホールを開口して、鋼管内側からの高力ボルトの挿通作業を可能にした方法もあるが、ハンドホールの開口によって鋼管強度が低下するため、高力ボルトの挿通後、鋼板等の補強板を溶接してハンドホールを閉塞しなければならず、強度及びコストの両面での改善が必要であった。
【0004】
前記の諸問題を解決し、継手施工作業の向上及び施工コスト低減を図る継手構造につき、本出願人が先に特許出願をしている(特開2002−129658号)。
【0005】
この従来技術を、図3、図4によって説明する。各図において、矩形に配置した4辺厚板1の角部が溶接2にて接合されて上部と下部の厚板4面溶接組立角形鋼管柱(箱形断面材)3、4が構成されている。上下両鋼管柱3、4を高力ボルト5にて接合するにあたり、両鋼管柱3、4の互いの接合端部3a、4a間に跨って内外一対の添板6、7が4辺のそれぞれに所定の間隔に離して複数配設されており、これら内外一対の添板6、7にて上下両鋼管柱3、4の互いの接合端部3a、4a間を挟持する。
【0006】
また、上下鋼管柱(つまり箱形断面材)3、4の各辺における接合端部3a、4aで、かつ間隔をあけて配置される一対の各添板6、7間、つまり、上下鋼管柱3、4の各4辺の中央部付近に、高力ボルト5が挿入可能なハンドホール8を設け、このハンドホール8を通して高力ボルト5を上側鋼管柱3と下側鋼管柱4内の内側添板6から上側ボルト孔10および下側ボルト孔11に向けて挿通可能に構成されている。図3は、大径のハンドホール8で、添板6、7の幅寸法は相対的に低減された例を示し、図4は、小径のハンドホール8で、添板6、7の幅寸法は相対的に増大された例を示す。
【0007】
【特許文献1】
特開2002−129658号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
図3、図4の継手構造において、ハンドホール8の孔径は最低限、作業者の手元および高力ボルトを挿入できる所定の大きさが必要である。同時に、内外の添板6、7および高力ボルト5は強度が必要である。添板6、7の強度を増すには断面増加のため板厚を厚くし、また幅や長さ寸法を増大することになる。また高力ボルト8の強度を増すにはボルト径を太くするとか、ボルト本数を増やすことが必要である。
【0009】
しかるに、図3、図4の継手構造において、ハンドホール8を矩形の上下鋼管柱3、4の各辺の中央部に開設してあると、このハンドホール8の部位を回避するため内外添板6、7を角形の鋼管柱3、4の角部に寄せて配置することになる。この場合、添板6、7の強度を増大すべく断面増加のため板厚を厚くすると、直角2辺に配置した内側添板6、6の端部同士がこの角部で干渉する。このように内側添板6の断面強度を確保するために添板の厚みを厚くし、あるいは幅寸法を増そうとしても角部で互いにぶつかるという干渉の問題が生じる。
【0010】
このようにハンドホール8の孔径の確保と添板6の強度向上は相反する関係にあり、上下鋼管柱3、4の接合端部における各4辺の中央部付近にハンドホールを設置していると、鋼管内部の角部での干渉の回避あるいは有効なハンドホール寸法確保のために、適用できるボルト径や添板厚に制限があり、添板の引張耐力を確保するために高価な高強度材料を使用しなければならないなど、経済性の追求を阻害している。
【0011】
高力ボルト5については、ボルト径を太くすると使用する本数を少なくでき、反対に、ボルト径を小さくするときはボルト本数を多く使用することが必要となる。ボルト径とボルト本数の関係を図3と図4を比較して説明すると、図3のようにハンドホール8の径を大きく取ると、その両側の添板配置可能スペースが小さくなり、添板6、7の幅寸法がその分小さくなる。この場合は、幅が減少した添板6、7を必要な接合強度を保って上下鋼管柱3、4に接合するには、ボルトの断面強度が要求される。しかし、図3ではハンドホール8を大きくしたため、図4よりも添板6、7の幅寸法が小さく太径のボルトが使用しにくい。このため、図3のように小径の高力ボルト5を図4の場合よりも多数本使用する。
【0012】
前述のようにボルト径の小径化はボルト本数増加につながり、ひいては施工性低下の問題がある。
【0013】
前記のように、角型の鋼管柱3、4の4辺の中央部にハンドホール8を設ける継手構造にあっては、当該ハンドホール8の孔径の確保と添板6、7および高力ボルト5による強度確保の条件を同時に満たすことができなかった。本発明は、前記従来の問題点を解決した、高力ボルト5による箱形断面材の継手構造を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
前記の目的を達成するため、本発明は次のように構成する。
【0015】
第1の発明は、角型鋼管等の上下の箱形断面材を添板及び高力ボルトにて接合する箱形断面材の継手構造において、前記両箱形断面材の互いの接合端部間に跨って、箱形断面材の内側のみで、かつ各辺の中央部寄りの部位に添板を配設すると共に、前記箱形断面材の角部における接合端部の一方または両方に、高力ボルトが挿入可能なハンドホールを設け、前記添板の幅は、前記接合端部の近傍で幅狭となるよう構成されており、前記角部のハンドホールを通して前記高力ボルトを前記箱形断面材の内側のボルト孔に向けて挿通可能にしてなることを特徴とする
【0016】
第2の発明は、第1の発明において、前記ハンドホールは、前記箱形断面材の内側の最遠位置におけるボルト孔の位置まで手差し可能な大きさを有することを特徴とする。
【0017】
第3の発明は、第1または第2の発明において、前記添板の摩擦面に、少なくとも0.6以上のすべり係数が得られる高摩擦化処理を施してなることを特徴とする。
【0018】
第4の発明は、第1〜第3の何れかの発明において、前記高力ボルトは、少なくとも1200N/mm2以上の引張強さを有することを特徴とする。
【0019】
【作用】
本発明によると、箱形断面材の接合端部に開口するハンドホールを設けると共に、相対する箱形断面材間に跨って添板を設け、高力ボルトで両部材間を接合する継手構造において、箱形断面材の角部で交差する2つの辺に跨って、かつ接合端部に開口するハンドホールを設けたので、添板を前記各辺の中央部に配設することができる。したがって、箱形断面材の内側に配設する添板同士の角部での干渉を回避できるため、添板の断面積の限界を大幅に増加でき、添板に安価な低強度材の使用を可能にし、材料費の低減メリットが実現される。さらに、ボルトの太径化が可能であり、ボルト径の太径化はボルト本数低減につながり、ひいては施工性向上のメリットがある。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図を参照して説明する。なお、従来と同一要素には同一符号を付して説明する。
【0021】
図1は、本発明に係る高力ボルトによる箱形断面材の継手構造の第1実施形態を示す。
【0022】
図1において、矩形に配置した4辺厚板1の角部が溶接2にて接合されて厚板4面溶接組立角形鋼管柱(箱形断面材)3、4が構成されていて、上下両鋼管柱3、4の4辺において、互いの接合端部3a、4aの内外面を挟持するように、かつ互いの接合端部3a、4a間に跨って内外一対の添板6、7が配設され、高力ボルト5にて接合されている。
【0023】
さらに説明すると、角形の上下両鋼管柱3、4の4つの角部において、交差する2辺に跨って、かつ互いの接合端部3a、4aに開口するハンドホール12が開設されている。ハンドホール12は作業が手で把持し高力ボルト5が挿入可能な孔径を有し、このハンドホール12を通して高力ボルト5を上側鋼管柱3と下側鋼管柱4内の内側添板6の上側ボルト孔10と下側ボルト孔11に向けて挿通可能に構成したものである。
【0024】
ハンドホール12は上下両鋼管柱3、4の角部13に開設されるので、各4辺の中央部付近にはハンドホールが存在せず、したがって、各辺の中央部付近に内外一対の添板6、7を配設でき、しかも添板6、7の板厚を大きくしても、直角に隣り合辺の内側の添板6同士が干渉し合うことがなく、必要な強度を確保するに足りる板厚を有した添板6を配設できる。
【0025】
図2は、本発明に係る高力ボルトによる箱形断面材の継手構造の第2実施形態を示す。図1と図2が相異するのは次の点である。すなわち、図1の第1実施形態では、内添板6と外添板7の両添板で鋼管柱3、4の内外両側を挟持する例を示したが、図2の第2実施形態では、内添板6のみ使用しこれと高力ボルト5で上下の鋼管柱3、4を接合した例を示す。第2実施形態の場合は、内添板6が外添板7を兼用するためその分強度確保のため板厚が厚くなるが、ハンドホール12が鋼管柱3、4の角部にあり、内添板6を各辺の中央部に配設できるので、内添板6を十分厚くしても、直角に隣合う辺の内添板6同士が干渉し合うことがない。
【0026】
ハンドホール12の大きさと、このハンドホール12を避けて配置される添板6、7の厚さの関係は、本出願人の先願に係る特開2002−129658に開示するのでこれを援用する。なお、簡単に説明すると、高力ボルト5による鋼管柱3、4間の摩擦接合部に作用する応力は、鋼管柱3、4と添板6、7との間の部材間の摩擦力で伝達される。この摩擦力の大きさは、高力ボルト5の締付けによる鋼管柱3、4と添板6、7間表面摩擦力係数の積で求められる。
【0027】
一方、高力ボルト5による摩擦係合部の材間圧縮力の大きさは、高力ボルト5のボルト張力に等しいことから、高力ボルト5の導入ボルト張力が大きく、また摩擦係数が高いほど大きくなり、これにより鋼管柱3、4間に伝達できる応力も大きくなる。このため、添板6、7の摩擦面には、少なくとも、0.6以上のすべり係数が得られるように高摩擦化処理を施すことが好ましい。また、高力ボルト5は、少なくとも1200N/mm2以上の引張強さを有することが望ましい。
【0028】
次に、本発明の第1実施形態に係る高力ボルトによる鋼管柱の継手施工手順を説明する。
【0029】
まず、下側鋼管柱4の接合端部4a側に、予め、内外一対の添板6、7の下半部を配設して挟持し、これら両添板6、7の下半部の各ボルト孔群14に高力ボルト(H.T.B)5を挿入して仮止めする。次いで、下側鋼管(箱形断面材)4の接合端部4aに仮締めされた両添板6、7の上半部間に、上側鋼管(箱形断面材)3の接合端部3aを差込み挟持させた後、両添板6、7の下半部間を仮締めする。
【0030】
この状態で、上側鋼管柱3と下側鋼管柱4の接合端部3a、4aに切欠したハンドホール12から上側鋼管柱3の内側添板6の上半部の各ボルト孔群15に向けて、手腕で高力ボルト5を挿入し、添板6、7の上半部間を仮締めした後、添板6、7の下半部を一次締めするとともに、両添板6、7の上半部間を一次締めする。さらに、添板6、7の下半部間を本締めすると共に、両添板6、7の上半部間を本締めする。
【0031】
なお、本発明を実施する場合、前記高力ボルト5による鋼管柱の継手施工手順とは、上下逆にした施工手順によっておこなってもよい。また、図1、図2では、ハンドホール12を上下鋼管柱3、4の両接合端部3a,4aに形成したが、上下何れか一方の接合端部3a,4aに形成してもよい。その他、各実施形態で示した構成を適宜設計変更して実施することは、本発明の範囲に含まれる。
【0032】
【発明の効果】
本発明によると、箱形断面材の接合端部に開口するハンドホールを設けると共に、相対する箱形断面材間に跨って添板を設け、高力ボルトで両部材間を接合する継手構造において、箱形断面材の角部で交差する2つの辺に跨って、かつ接合端部に開口するハンドホールを設けたので、添板を前記各辺の中央部に配設することができる。したがって、箱形断面材の内側に配設する添板同士の角部での干渉を回避できるため、添板の断面積の限界を大幅に増加でき、添板の安価で低強度材の使用を可能にし、材料費の低減メリットが実現される。さらに、ボルトの太径化が可能であり、ボルト径の太径化はボルト本数低減につながり、ひいては施工性向上のメリットがある。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は、本発明に係る高力ボルトによる箱形断面材の継手構造の第1実施形態を示す要部側面図、(b)は、同(a)のA−A断面図、(c)は、同(a)のB−B断面図である。
【図2】(a)は、本発明に係る高力ボルトによる箱形断面材の継手構造の第2実施形態を示す要部側面図、(b)は、同(a)のC−C断面図、(c)は、同(a)のD−D断面図である。
【図3】(a)は、第1従来例に係る高力ボルトによる箱形断面材の継手構造の側面図、(b)は、同(a)のE−E断面図、(c)は、同(a)のF−F断面図である。
【図4】(a)は、第2従来例に係る高力ボルトによる箱形断面材の継手構造の側面図、(b)は、同(a)のG−G断面図、(c)は、同(a)のH−H断面図である。
【符号の説明】
1 厚板
2 溶接
3 上鋼管柱
3a 接合端部
4 下鋼管柱
4a 接合端部
5 高力ボルト
6 内側の添板
7 外側の添板
8 ハンドホール
10 上側ボルト孔
11 下側ボルト孔
12 ハンドホール
13 角部
14 下半部のボルト孔群
15 上半部のボルト孔群
Claims (4)
- 角型鋼管等の上下の箱形断面材を添板及び高力ボルトにて接合する箱形断面材の継手構造において、前記両箱形断面材の互いの接合端部間に跨って、箱形断面材の内側のみで、かつ各辺の中央部寄りの部位に添板を配設すると共に、前記箱形断面材の角部における接合端部の一方または両方に、高力ボルトが挿入可能なハンドホールを設け、前記添板の幅は、前記接合端部の近傍で幅狭となるよう構成されており、前記角部のハンドホールを通して前記高力ボルトを前記箱形断面材の内側のボルト孔に向けて挿通可能にしてなることを特徴とする高力ボルトによる箱形断面材の継手構造。
- 前記ハンドホールは、前記箱形断面材の内側の最遠位置におけるボルト孔の位置まで手差し可能な大きさを有することを特徴とする請求項1記載の高力ボルトによる箱形断面材の継手構造。
- 前記添板の摩擦面に、少なくとも0.6以上のすべり係数が得られる高摩擦化処理を施してなることを特徴とする請求項1または2記載の高力ボルトによる箱形断面材の継手構造。
- 前記高力ボルトは、少なくとも1200N/mm2以上の引張強さを有することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項記載の高力ボルトによる箱形断面材の継手構造。
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