JP4037024B2 - 吹付け工法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、道路、鉄道、及び導水路等のトンネルにおいて、露出した地山面へ急結性コンクリートを吹付ける際に使用するリバウンド低減剤、吹付け材料、及びそれを用いた吹付け工法に関する。
なお、本発明でいう部や%は特に規定のないかぎり質量基準である。
また、本発明でいうコンクリートとは、セメントモルタルやセメントコンクリートを総称するものである。
【0002】
【従来の技術とその課題】
従来、トンネル掘削等、露出した地山の崩落を防止するために、急結剤をコンクリートに混合した急結性のコンクリートの吹付け工法が用いられている(特公昭60−004149号公報)。
この吹付け工法は、通常、掘削工事現場に設置した計量混合プラントで、セメント、骨材、及び水を計量混合して吹付け用のコンクリートを調製し、それをアジテータ車で運搬し、コンクリートポンプで圧送し、途中に設けた合流管で、他方から圧送した急結剤と混合し、急結性吹付けコンクリートとして地山面に所定の厚みになるまで吹付ける工法である。
しかしながら、この工法では[(吹付けの際に付着せずに落下した急結性コンクリートの量)/(吹付けに使用した急結性コンクリート全体の吹付け量)×100(%)]で示されるリバウンド(跳返り)率が大きく、経済的に好ましくないという課題があった。
【0003】
本発明者は、前記課題を解決すべく検討した結果、特定のリバウンド低減剤を使用することにより、吹付け時におけるリバウンド率を低減できるという知見を得て、本発明を完成するに至った。
【0004】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明は、セメント100 部とポリアルキレンオキサイド0.001 〜 0.5 部とコンクリート 100 容量部に対して 0.5 〜 10 容量部の繊維状物質を含有してなるコンクリートと、セメント 100 部に対して急結剤5〜 15 部と、セメント 100 部に対してリグニンスルホン酸塩0.1 〜 1.0 部とを吹付け直前で混合して吹付けることを特徴とする吹付け工法であり、セメント 100 部とポリアルキレンオキサイド 0.001 〜 0.5 部とコンクリート 100 容量部に対して 0.5 〜 10 容量部の繊維状物質を予め含有してなるコンクリートと、セメント 100 部に対して急結剤5〜 15 部とリグニンスルホン酸塩 0.1 〜 1.0 部をあらかじめ混合してなる急結剤混合物とを、吹付け直前で混合して吹付けることを特徴とする吹付け工法であり、セメント 100 部とポリアルキレンオキサイド 0.001 〜 0.5 部とコンクリート 100 容量部に対して 0.5 〜 10 容量部の繊維状物質を予め含有してなるコンクリートと、セメント 100 部に対して急結剤5〜 15 部とリグニンスルホン酸塩 0.1 〜 1.0 部と水をあらかじめ混合してなる急結剤スラリーとを、吹付け直前で混合して吹付けることを特徴とする吹付け工法であり、ポリアルキレンオキサイドの平均分子量が100万〜500万であることを特徴とする該吹付け工法であり、リグニンスルホン酸塩のpHが7以上であることを特徴とする該吹付け工法であり、急結剤がカルシウムアルミネートである該吹付け工法であり、コンクリートの圧送速度が4〜 20m 3 /h である該吹付け工法である。
【0005】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0006】
本発明で使用するポリアルキレンオキサイド(以下、PAOという)は、リグニンスルホン酸塩との相互作用によりコンクリートに粘性を与え、吹付け直後の吹付け面からのコンクリートのダレを防止し、リバウンド率や発生する粉塵量を低減するものである。
PAOとしては、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、及びポリブチレンオキサイド等が挙げられるが、これらのなかでは効果が大きい面でポリエチレンオキサイドが好ましい。
PAOの平均分子量は100万〜500万が好ましい。100万未満ではリバウンド率を低減する効果が小さく、500万を越えると急結性コンクリートの圧送性が低下する場合がある。
PAOの使用量は、セメント100部に対して、0.001〜0.5部が好ましく、0.005〜0.3部がより好ましい。0.001部未満では急結性コンクリートの粘性が小さく、吹付けたときにダレが生じ、リバウンド率が大きくなる場合があり、0.5部を越えると急結性コンクリートの粘性が大きくなり、圧送性に支障が生じる場合がある。
【0007】
本発明で使用するリグニンスルホン酸塩(以下、LNSという)は、リグニンスルホン酸のナトリウム塩、カリウム塩、及びカルシウム塩等があり、そのうち、ナトリウム塩が通常使用され、市販品が使用可能である。なかでも急結性セメントコンクリートと混合したときの増粘性が大きく、リバウンド率をより低減できる面で、pHが7以上のものが好ましい。
なお、ここでいうpHとは、LNSを固形分で5%含有する水溶液のpHを指す。
LNSの使用量は、セメント100部に対して、0.1〜1.0部が好ましく、0.2〜0.8部がより好ましく、0.3〜0.5部が最も好ましい。0.1部未満ではリバウンドを低減する効果が小さく、1.0部を越えるとコンクリートの強度発現性が低下する場合がある。
【0008】
本発明で使用するセメントは、特に限定されるものではなく、普通、早強、超早強、中庸熱、耐硫酸塩、及び低熱等の各種ポルトランドセメントや、これらポルトランドセメントに、高炉スラグ、フライアッシュ、石灰石微粉末、又はシリカを混合した各種混合セメント、さらには、アルミナセメント、膨張セメント、及びコロイドセメント等いずれも使用可能である。
【0009】
本発明で使用する急結剤は、特に制限されるものではなく、無機塩系としては、アルカリ金属アルミン酸塩、アルカリ金属炭酸塩、及び珪酸塩等が、セメント鉱物系としては、カルシウムアルミネート類やカルシウムサルホアルミネート類などが、並びに、有機系としては、トリエタノールアミンやグリセリンなどが挙げられ、粉末状、スラリー状、あるいは液状のいずれの状態でも使用可能である。なかでも凝結性状や強度発現性などが良好な面でカルシウムアルミネート類を含有するものが好ましい。
急結剤の使用量は使用材料により一義的に規定することはできないが、無機塩系急結剤の場合、セメント100部に対して、3〜5部程度が好ましく、セメント鉱物系急結剤の場合、5〜15部程度が好ましい。急結剤の使用量がこれより少ないと初期凝結が充分に得られず、リバウンドやコンクリートの剥落が多くなる場合があり、急結剤の使用量をこれより多くすると長期強度発現性が低下し、経済的にも不利になる場合がある。
【0010】
本発明では、さらに、急結性コンクリート硬化体の耐衝撃性や弾性向上の面から繊維状物質を使用することが好ましい。
繊維状物質としては、無機質、有機質のいずれも使用可能である。
無機質の繊維状物質としては、ガラス繊維、炭素繊維、ロックウール、石綿、セラミック繊維、及び金属繊維等が挙げられ、有機質の繊維状物質としては、ビニロン繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリアクリル繊維、セルロース繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリアミド繊維、パルプ、及び麻等が挙げられる。これらのなかでは経済性や効果の面から金属繊維やビニロン繊維が好ましい。
繊維状物質の長さは、圧送性や混合性の面から、50mm以下が好ましく、30mm以下がより好ましい。50mmを越えると圧送管が閉塞する場合がある。
繊維状物質の使用量は、コンクリート100容量部に対して、0.5〜10容量部が好ましい。0.5容量部未満では耐衝撃性や弾性の向上が見られない場合があり、10容量部を越えると圧送性が低下する場合がある。
【0011】
本発明では、前記各材料の他に、砂や砂利などの骨材、凝結調整剤、AE剤、消泡剤、防錆剤、SBRやポリアクリレートなどの高分子エマルジョン、酸化カルシウムや水酸化カルシウムなどのカルシウム化合物、硫酸アルミニウムやアルカリ金属硫酸塩などの硫酸塩、ベントナイト等の粘土鉱物、ゼオライト、ハイドロタルサイト、及びハイドロカルマイト等のイオン交換体、無機リン酸塩、並びに、ホウ酸等のうちの一種又は二種以上を本発明の目的を実質的に阻害しない範囲で併用することが可能である。
【0012】
急結剤の混合方法としては、例えば、コンクリートと粉末状急結剤を別々に空気圧送して合流混合する方法や、コンクリートと急結剤が合流混合する手前で粉末状急結剤に加水してスラリー化させた急結剤スラリーをコンクリートに合流混合する方法などがあり、いずれも使用可能であるが、粉塵量低減の面から急結剤をスラリー化する方法が好ましい。
本発明において、セメント、骨材、及び水等を混合する装置としては、既存の撹拌装置が使用可能であり、例えば、傾胴ミキサ、オムニミキサ、V型ミキサ、ヘンシェルミキサ、及びナウタミキサ等が使用可能である。
【0013】
本発明の吹付け工法としては、乾式吹付け工法や湿式吹付け工法が使用可能である。乾式吹付け工法とは、例えば、セメントや骨材を混合して空気圧送し、水と急結剤を合流混合して吹付ける方法であり、また、湿式吹付け工法とは、例えば、あらかじめセメント、骨材、及び水を混合してコンクリートとし、これを空気圧送して急結剤を合流混合して吹き付ける方法である。このうち、乾式吹付け工法では粉塵量が多くなる場合があるため、湿式吹付け工法を用いることが好ましい。
本発明の吹付け工法においては、従来の吹付け設備等の使用が可能である。吹付け設備は吹付けが充分に行われれば特に限定されるものではなく、例えば、コンクリートの圧送にはアリバ社製商品名「アリバ280」等が、また、急結剤の圧送にはちよだ製作所製商品名「ナトムクリート」等が、さらに、急結剤スラリーの圧送にはプツマイスター社製商品名「アンコマットポンプ」等が使用可能である。
粉末状急結剤に加水するには一般的な水ポンプが使用でき、圧送空気と一緒に加水する方法が可能である。
また、急結剤を圧送する圧縮空気の圧力は、コンクリートが急結剤の圧送管内に侵入して圧送管内が閉塞しないように、コンクリートの圧送圧力より0.01MPa大きいことが好ましい。
また、コンクリートの圧送速度は4〜20m3/hが好ましい。
さらに、急結剤とコンクリートとの合流点は、混合性を良くするために、管の形状や内壁をらせん状や乱流状態になりやすい構造とすることが可能である。
【0014】
本発明においてはPAOをあらかじめコンクリートと混合しておき、LNSを吹付けノズル手前の混合管でコンクリートと混合することが好ましい。LNSをコンクリートに混合すると粘性が上がり、圧送性が低下するため、前記以外の箇所で添加した場合には、閉塞や脈動を生じる場合がある。
【0015】
【実施例】
以下、実験例に基づき本発明を詳細に説明する。
【0016】
実験例1
各材料の単位量を、セメント450kg/m3、水234kg/m3、細骨材1,062kg/m3、及び粗骨材576kg/m3とし、さらにコンクリート100容量部に対して、繊維状物質1容量部を添加したコンクリートを調製し、圧送速度15m3/h、圧送圧力0.4MPaの条件下でコンクリート圧送機「アリバ280」で圧送した。
また、コンクリート中のセメント100部に対して、表1に示すPAOとLNSを使用した。PAOイ〜ハはコンクリートにあらかじめ混合し、LNSニは、コンクリート中のセメント100部に対して0.3部、急結剤にあらかじめ混合して使用した。
急結剤100部に対して、70部の水を圧縮空気と一緒に加圧条件下で加え、急結剤スラリーとした。これを吹付けノズルの手前に設けた混合管に、コンクリート中のセメント100部に対して急結剤が10部になるように吹込み、急結性コンクリートとし、模擬トンネルに吹付けて、リバウンド率、圧縮強度、ダレ、及び圧送性の評価を行った。結果を表1に併記する。
【0017】
<使用材料>
セメント :普通ポルトランドセメント、市販品、ブレーン比表面積3,200cm2/g、比重3.16
細骨材 :新潟県姫川産川砂、表面水率4.0%、比重2.62
粗骨材 :新潟県姫川産川砂利、表乾状態、比重2.64、最大骨材寸法10mm
急結剤 :カルシウムアルミネート/石膏/アルミン酸塩=100/100/14(重量比)からなる混合物。ただし、カルシウムアルミネートは12CaO・7Al2O3組成に対応し、ブレーン比表面積6,100cm2/gで非晶質のものを使用し、石膏はII型無水石膏で、ブレーン比表面積5,100cm2/gのもの、アルミン酸塩はアルミン酸ナトリウムを使用した。
PAOイ :ポリエチレンオキサイド、平均分子量250万、市販品
PAOロ :ポリエチレンオキサイド、平均分子量100万、市販品
PAOハ :ポリエチレンオキサイド、平均分子量500万、市販品
LNSニ :リグニンスルホン酸塩、pH10.0、市販品
繊維状物質:鋼繊維、比重7.8、長さ30mm、市販品
【0018】
<測定方法>
リバウンド率:急結性コンクリートを15m3/hの圧送速度で5分間、高さ4.5m、幅5.5mの模擬トンネルに吹付けた。吹付け終了後、付着せずに落下した急結性コンクリートと繊維状物質の量を測り、(リバウンド率)=(吹付けの際に付着せずに落下した急結性コンクリート又は繊維状物質)/(吹付けに使用した全体の急結性コンクリート又は繊維状物質)×100(%)の式より算出した。
圧縮強度 :材齢3時間の圧縮強度は幅25cm×長さ25cmのプルアウト型枠に設置したピンを、プルアウト型枠表面から急結性コンクリートで被覆し、型枠の裏側よりピンを引抜き、その時の引き抜き強度を求め、(圧縮強度)=(引抜き強度)×4/(剪断面積)の式から圧縮強度を算出した。材齢1日以降の圧縮強度については、幅50cm×長さ50cm×厚さ20cmの型枠に急結性コンクリートを吹付け、コアリングして採取した直径5cm×長さ10cmの供試体の強度を耐圧試験器で測定した。
ダレ :急結性コンクリートを吹付けた後の状態を観察し、ダレが生じなかったものを◎、少し生じたものを○、多く生じたものを×とした。
圧送性 :急結性コンクリートを吹付ける際の圧送管内の圧力を測定した。管内圧力が0.4〜0.55MPaである場合を◎、管内が閉塞しやすくなる0.6MPa以上になっても、圧送管に衝撃を与えることにより圧力が低下して0.4〜0.55MPaになる場合を○、圧送管が閉塞し、衝撃を与えても0.4〜0.55MPaとならない場合を×とした。
【0019】
【表1】
【0020】
実験例2
PAOイをセメント100部に対して0.01部使用し、LNSの種類を表2に示すように変えて、リバウンド率、圧縮強度、及び圧送性の評価を行ったこと以外は実験例1と同様に行った。
LNSニ〜トはあらかじめ急結剤に混合して使用した。結果を表2に併記する。
【0021】
<使用材料>
LNSホ :リグニンスルホン酸塩、pH8.5、市販品
LNSヘ :リグニンスルホン酸塩、pH7.0、市販品
LNSト :リグニンスルホン酸塩、pH6.5、市販品
【0022】
【表2】
【0023】
実験例3
セメント100部に対して、PAOイを0.01部、LNSニを0.3部配合し、表3に示す急結剤を使用して急結性コンクリートを調製し、評価を行ったこと以外は実験例2と同様に行った。結果を表3に併記する。
【0024】
【表3】
【0025】
【発明の効果】
本発明のリバウンド低減剤、吹付け材料、及びそれを用いた吹付け工法により、吹付け時における急結性コンクリートのリバウンド率を低減でき、経済的な施工が可能となる。
Claims (7)
- セメント100 部とポリアルキレンオキサイド0.001 〜 0.5 部とコンクリート 100 容量部に対して 0.5 〜 10 容量部の繊維状物質を含有してなるコンクリートと、セメント 100 部に対して急結剤5〜 15 部と、セメント 100 部に対してリグニンスルホン酸塩0.1 〜 1.0 部とを吹付け直前で混合して吹付けることを特徴とする吹付け工法。
- セメント 100 部とポリアルキレンオキサイド 0.001 〜 0.5 部とコンクリート 100 容量部に対して 0.5 〜 10 容量部の繊維状物質を予め含有してなるコンクリートと、セメント 100 部に対して急結剤5〜 15 部とリグニンスルホン酸塩 0.1 〜 1.0 部をあらかじめ混合してなる急結剤混合物とを、吹付け直前で混合して吹付けることを特徴とする吹付け工法。
- セメント 100 部とポリアルキレンオキサイド 0.001 〜 0.5 部とコンクリート 100 容量部に対して 0.5 〜 10 容量部の繊維状物質を予め含有してなるコンクリートと、セメント 100 部に対して急結剤5〜 15 部とリグニンスルホン酸塩 0.1 〜 1.0 部と水をあらかじめ混合してなる急結剤スラリーとを、吹付け直前で混合して吹付けることを特徴とする吹付け工法。
- ポリアルキレンオキサイドの平均分子量が100万〜500万であることを特徴とする請求項1〜3のうちの一項記載の吹付け工法。
- リグニンスルホン酸塩のpHが7以上であることを特徴とする請求項1〜3のうちの一項記載の吹付け工法。
- 急結剤がカルシウムアルミネートである請求項1〜3のうちの一項記載の吹付け工法。
- コンクリートの圧送速度が4〜 20m 3 /h である請求項1〜6のうちの一項記載の吹付け工法。
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