JP3847027B2 - セメント混和材及びセメント組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、セメント混和材及びセメント組成物に関し、特に、道路、鉄道、及び導水路等のトンネルにおいて、露出した地山面へ急結コンクリートを吹付ける際に使用するセメント混和材、セメント組成物、及びそれを用いた吹付工法に関する。
なお、本発明でいうコンクリートとは、セメントモルタルやセメントコンクリートを総称するものである。
【0002】
【従来の技術とその課題】
従来、トンネル掘削等、露出した地山の崩落を防止するために、急結材をコンクリートに混合した急結コンクリートの吹付工法が行われている(特公昭60−4149号公報)。
この工法は、通常、掘削工事現場に設置した計量混合プラントで、セメント、骨材、及び水を混合してコンクリートを調製し、アジテータ車で運搬し、コンクリートポンプで圧送して、途中に設けた合流管で、他方から圧送した急結材と混合し、急結コンクリートとして地山面に所定の厚みになるまで吹付ける工法である。
この際に使用する急結材としては、カルシウムアルミネート、アルカリ金属アルミン酸塩、及びアルカリ金属炭酸塩等の単味又は混合物や、永久構造物用のアルカリ骨材反応抑制型急結材が知られている(特公昭56−027457号公報、特開昭61−026538号公報、特開昭63−210050号公報、及び特開昭64−051351号公報や、特開平08−048553号公報)。
【0003】
しかしながら、この工法では、(跳ね返り落ちた急結コンクリートの量)/(吹付けた急結コンクリートの量)×100(重量%)で示されるリバウンド(跳ね返り)率が15〜30重量%と大きいという課題があった。
特に、繊維を併用した場合、繊維自身のリバウンド率は50重量%程度と著しく大きいものであった。繊維は高価であり、リバウンド率が大きいと経済的に好ましくないなどの課題があった。
そこで、急結コンクリートのリバウンド率や繊維のリバウンド率のより低減された吹付工法が求められていたが、現状では未だ充分に満足できる吹付材料がなく、その改良が強く望まれていた。
【0004】
本発明者は、前記課題を検討した結果、特定のセメント混和材を使用することにより、吹付け時のリバウンド率が低減できるとの知見を得て本発明を完成するに至った。
【0005】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明は、ポリアルキレンオキサイドと、フェノールスルフォネート−ホルムアルデヒド縮合物及び/又はビニルスルフォネート−ホルムアルデヒド縮合物とを有効成分とする急結吹き付けコンクリート用セメント混和材であり、ポリアルキレンオキサイドの分子量が100万〜500万である該急結吹き付けコンクリート用セメント混和材であり、セメントと該セメント混和材とを含有してなる急結吹き付けコンクリート用セメント組成物であり、セメントと急結材とを含有する急結コンクリートと、該セメント混和材とを混合する吹付け工法であり、さらには、該セメント混和材の有効成分の一種又は全部を吹付けノズル部分で急結コンクリートに混合する該吹付け工法である。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0007】
本発明で使用するポリアルキレンオキサイド(以下、PAOという)は、他の有効成分であるフェノールスルフォネート−ホルムアルデヒド縮合物及び/又はビニルスルフォネート−ホルムアルデヒド縮合物と混合することでコンクリートに粘性を与え、吹き付け直後の吹付け面からのダレや飛散を防止し、リバウンド率や発生する粉塵量を低減するものである。
PAOとしては、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、及びポリブチレンオキサイド等が挙げられる。これらの中で、ポリエチレンオキサイドがリバウンド低減効果が大きい面から好ましい。
PAOの分子量は、100万〜500万が好ましい。100万未満ではリバウンド率が大きい場合があり、500万を越えると急結コンクリートの圧送性が低下する場合がある。
PAOの使用量は、セメント100重量部に対して、0.01〜0.5重量部が好ましく、0.01〜0.1重量部がより好ましい。0.01重量部未満では充分なリバウンド低減効果がない場合があり、0.5重量部を越えるとコンクリートの圧送性に支障をきたす場合があり、また、経済的にも好ましくない。
【0008】
本発明で使用するフェノールスルフォネート−ホルマリン縮合物(以下、PSという)及び/又はビニルスルフォネート−ホルマリン縮合物(以下、VSという)は、酸、アルカリ金属塩、及びアルカリ土類金属塩のいずれでもよく、部分的に単一種又は複数種の塩であってもよい。
PSやVSの分子量は1万〜1,000万が好ましい。1万未満では充分なリバウンド低減効果が得られない場合があり、1,000万を越えるとリバウンド低減効果が減少する場合がある。
PS及び/又はVSの使用量は、セメント100重量部に対して、0.1〜5重量部が好ましく、0.2〜3重量部がより好ましい。0.1重量部未満ではリバウンド低減効果が得られない場合があり、5重量部を越えるとコンクリートの強度発現に悪影響をおよぼす場合がある。
【0009】
本発明で使用するセメントは特に制限されるものではなく、通常使用されている普通・早強・超早強、及び低熱等の各種ポルトランドセメントや、これらポルトランドセメントに、高炉スラグ、フライアッシュ、石灰石微粉末、又はシリカを混合した各種混合セメント、さらには、3CaO・SiO2や11CaO・7Al2O3・CaF2を主成分とする超速硬セメント、市販の微粒子セメントなどが挙げられる。また、各種ポルトランドセメントや各種混合セメントを微粉末化して使用することも可能である。
【0010】
本発明で使用する急結材は特に制限されるものではなく、無機塩系、セメント鉱物系、及び有機質系等が挙げられる。
無機塩系急結材としては、アルカリ金属アルミン酸塩、アルカリ金属炭酸塩、及び珪酸塩等が、また、セメント鉱物系急結材としては、アルミン酸カルシウム類やカルシウムサルホアルミネート類などが、そして、有機質系急結材としては、トリエタノールアミンやグリセリンなどが挙げられ、粉末、スラリー、あるいは、液体のいずれの状態のものも使用可能である。
急結材の使用量は、使用材料により適宜決定されるものであるが、使用量の少ないものとしては、無機塩系急結材で、セメント100重量部に対して、3〜5重量部程度が好ましく、使用量の多いものとしては、セメント鉱物系急結材で、セメント100重量部に対して、8〜15重量部程度が好ましい。急結材の使用量がこれより少ないと急結力が不足してリバウンドが非常に多くなる場合があり、急結材の使用量がこれより多くても、それに見合う効果が得られず、経済的に好ましくない。
【0011】
本発明では、コンクリート硬化体の耐衝撃性や弾性を向上させるため、繊維を併用することが好ましい。
【0012】
繊維としては、無機質や有機質いずれも使用可能である。
無機質の繊維としては、ガラス繊維、炭素繊維、ロックウール、石綿、セラミック繊維、及び金属繊維等が挙げられ、有機質の繊維としては、ビニロン繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリアクリル繊維、セルロース繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリアミド繊維、パルプ、麻、木毛、及び木片等が挙げられ、これらの一種又は二種以上が使用できる。これらの中では経済性がよく、耐衝撃性や弾性を向上させる効果が大きい面で、金属繊維が好ましく、特に、鋼繊維が好ましい。
繊維の長さは圧送性や混合性などの面で、100mm以下が好ましく、0.5〜60mmがより好ましい。100mmを越えると圧送管が閉塞する場合がある。
繊維の使用量は、コンクリート100容量部に対して、0.1〜5容量部が好ましく、0.3〜1.5容量部がより好ましい。0.1容量部未満では繊維を添加した効果がない場合があり、5容量量部を越えると吹付作業性、経済性、及び圧送性が悪くなる場合がある。
繊維の混合方法は、急結コンクリートに繊維を混合されれば特に限定されるものではなく、例えば、コンクリート側や急結材側へ繊維を添加する方法や、コンクリートや急結材と別個に繊維を添加する方法などが挙げられ、これらを併用することも可能である。
【0013】
本発明では、前記各材料の他に、砂や砂利などの骨材、減水剤、凝結調整剤、AE剤、消泡剤、増粘剤、セメント膨張剤、防錆剤、防凍剤、SBRやポリアクリレートなどの高分子エマルジョン、酸化カルシウムや水酸化カルシウムなどのカルシウム化合物、硫酸アルミニウム、アルカリ金属硫酸塩、アルカリ金属亜硫酸塩、及びアルカリ金属重亜硫酸塩等の硫酸塩、ベントナイト等の粘土鉱物、ゼオライト、ハイドロタルサイト、及びハイドロカルマイト等のイオン交換体、無機リン酸塩、並びに、ホウ酸等のうちの一種又は二種以上を本発明の目的を実質的に阻害しない範囲で併用することが可能である。
また、これらの材料の添加方法にも特に制限はなく、コンクリートに添加する方法や、急結材と共に混合管により添加する方法などが挙げられる。
【0014】
本発明の吹付工法では、乾式吹付法や湿式吹付法のいずれも使用できる。
乾式吹付工法としては、セメント、骨材、及び急結材を混合し、空気圧送し、途中で、例えば、Y字管の一方から水を添加して、湿潤状態で吹付ける方法や、セメントと骨材とを混合して空気圧送し、途中で急結材、水の順に添加し、湿潤状態で吹付ける方法などが挙げられる。
湿式吹付工法としては、セメント、骨材、及び水を添加して混練し、空気圧送し、途中で、例えば、Y字管の一方から粉体、液体、又はスラリ−状の急結材を添加して吹付ける方法等が挙げられる。
【0015】
本発明の吹付工法においては、従来の吹付設備等が使用可能である。吹付設備は吹付けが充分に行われれば特に限定されるものではなく、例えば、コンクリートの圧送にはアリバ社製商品名「アリバ280」等が、また、粉末急結材の圧送にはちよだ製作所製急結材圧送装置商品名「ナトムクリート」等が、急結材スラリーの圧送にはプツマイスター社製商品名「アンコマットポンプ」等が使用可能である。
粉末急結材に加水するには一般的な水ポンプが使用可能であり、エアと一緒に加圧条件下で加水する方法が可能である。
【0016】
また、急結材を圧送する圧縮空気の圧力は、コンクリートが急結材の圧送管内に侵入してその圧送管が閉塞しないように、通常、3〜5kg/cm2のコンクリートの圧送圧力より0.1〜3kg/cm2高いことが好ましい。
そして、急結コンクリートの圧送速度は4〜20m3/hが好ましい。
さらに、急結材とコンクリートとの合流点は、混合性を良くするために、圧送管の形状や、圧送管の内壁を乱流状態になりやすい構造やラセン状の構造にすることも可能である。
【0017】
本発明法においては、セメント混和材の有効成分のいずれか一方をあらかじめコンクリートに混合し、他方を吹付けノズル又はノズルの直前で添加することが好ましい。セメント混和材の有効成分の両者をコンクリートに混合すると急激に圧送性が低下するため、吹付けノズル以外の場所やノズル付近以外の場所で添加した場合、閉塞や脈動を生ずるおそれがある。
【0018】
本発明において、セメントと骨材、あるいは、セメント、骨材、及び水等を混合する装置としては、既存のいかなる撹拌装置も使用可能であり、例えば、傾胴ミキサー、オムニミキサー、V型ミキサー、ヘンシェルミキサー、及びナウターミキサ等の使用が可能である。
【0019】
【実施例】
以下、実験例に基づき本発明を詳細に説明する。
【0020】
実験例1
セメント100重量部に対して、減水剤1重量部、水40重量部、細骨材234.6重量部、及び粗骨材105重量部、並びに、コンクリート100容量部に対して、1容量部の繊維を添加してコンクリートを調製し、コンクリート圧送機「アリバ−280」を用いて圧送した。
一方、表1に示す急結材α100重量部に対して、70重量部の水を添加して、プツマイスター社製「アンコマットポンプ」で連続的に混練し、急結材スラリーを調製し、コンクリート圧送途中に設けたY字管の一方より圧縮空気により吹き込み、急結コンクリートとし、吹付けし、そのリバウンド率と圧縮強度を測定した。
なお、コンクリート中のセメント100重量部に対して、表1に示す、セメント混和材の有効成分PAOイをコンクリート調製時にあらかじめ混合し、また、セメント混和材の有効成分PSを急結材にあらかじめ混合して添加した。
【0021】
<使用材料>
セメント :普通ポルトランドセメント、市販品、ブレーン値3,200cm2/g、比重3.16
減水剤 :ポリカルボン酸系高性能減水剤、市販品
細骨材 :新潟県姫川産砕砂、比重2.63
粗骨材 :新潟県姫川産砕石、表乾状態、比重2.65、最大寸法10mm
急結材α :アルミン酸カルシウム系、市販品
PAOイ :ポリエチレンオキサイド、分子量200万、市販品
PS :フェノールスルフォネート−ホルムアルデヒド縮合物、市販品
繊維 :鋼繊維、長さ30mm、比重7.8、市販品
【0022】
<測定方法>
リバウンド率:急結コンクリートを4m3/hの圧送速度で5分間、鉄板でアーチ状に製作した高さ3.5m、幅2.5mの模擬トンネルに吹付けた。吹付け終了後、跳ね返り落ちた急結コンクリートと繊維の量を測定し、(跳ね返り落ちた急結コンクリート又は繊維の量)/(吹付けた急結コンクリート又は繊維の量)×100(重量%)から算出した。
なお、跳ね返り落下した繊維の量は、跳ね返った急結性吹付コンクリートから繊維を磁石により吸引、収集し、繊維に付着したセメントを洗い流し、乾燥した後に測定した。
圧縮強度:調製した急結コンクリートを型枠に吹付けた。材齢3時間の圧縮強度は、幅25×長さ25cmのプルアウト型枠供試体を使用し、プルアウト型枠表面からピンを急結コンクリートで被覆し、型枠の裏側よりピンを引き抜き、その時の引き抜き強度を求め、(圧縮強度)=(引き抜き強度)×4/(供試体接触面積)の式から算出した。材齢1日以降の圧縮強度は、幅50×長さ50×厚さ20cmの型枠から採取した直径5×長さ10cmの供試体を使用して測定した。
【0023】
【表1】
【0024】
実験例2
急結材、PAO、PS、及びVSを表2に示すように配合したこと以外は実験例1と同様に行った。結果を表2に併記する。
なお、PAOはコンクリート調製時にあらかじめ混合し、また、PSやVSは急結材にあらかじめ混合して添加した。
【0025】
<使用材料>
急結材β :カルシウムサルホアルミネート系、市販品
急結材γ :アルカリ金属アルミン酸塩とアルカリ金属炭酸塩の混合系、市販品PAOロ :ポリエチレンオキサイド、分子量100万、市販品
PAOハ :ポリエチレンオキサイド、分子量500万、市販品
VS :ビニルスルフォネート−ホルムアルデヒド縮合物、市販品
【0026】
【表2】
【0027】
実験例3
コンクリートに繊維を配合せず、急結材、PAO、PS、及びVSを表3に示すように配合したこと以外は実験例1と同様に行った。結果を表3に併記する。
なお、PAOはコンクリート調製時にあらかじめ混合し、また、PSやVSは急結材にあらかじめ混合して添加した。
【0028】
【表3】
【0029】
【発明の効果】
本発明のセメント混和材を使用することにより、また、本発明法により、大幅に急結コンクリートや繊維のリバウンド率や粉塵量を低減することができ、吹付け施工コストの削減や施工時間の短縮も実現できる。
Claims (5)
- ポリアルキレンオキサイドと、フェノールスルフォネート−ホルムアルデヒド縮合物及び/又はビニルスルフォネート−ホルムアルデヒド縮合物とを有効成分とする急結吹き付けコンクリート用セメント混和材。
- ポリアルキレンオキサイドの分子量が100万〜500万であることを特徴とする請求項1記載の急結吹き付けコンクリート用セメント混和材。
- セメントと、請求項1又は2記載のセメント混和材とを含有してなる急結吹き付けコンクリート用セメント組成物。
- セメントと急結材とを含有してなる急結コンクリートと、請求項1又は2記載のセメント混和材とを混合して吹付けることを特徴とする吹付工法。
- 請求項1又は2記載のセメント混和材の有効成分の一種又は全部を、吹付けノズル部分で、急結コンクリートに混合することを特徴とする請求項4記載の吹付工法。
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