JP4036794B2 - 窒素処理方法及び装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、有機態窒素、亜硝酸態窒素、硝酸態窒素及びアンモニア態窒素を含む排水の窒素処理方法及び装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、川や湖の富栄養化の原因の1つに窒素化合物の存在があることは周知である。また、この窒素化合物は、一般家庭の生活排水中や工場排水中に多く存在するが、浄化処理が困難なものであり、有効な対策がとれないのが現状であり、現在では、主に、生物的処理が採用されている。この生物的処理は、先ずアンモニア態窒素を硝酸態窒素に変換する硝化工程と、硝酸態窒素を窒素ガスに変換する脱窒工程の2つの工程により行われる。そのため、2つの反応槽が必要となると共に、処理時間が遅いため、処理効率が悪いという問題があった。
【0003】
また、該生物的処理では、脱窒素細菌を保有するために、大容量の嫌気槽が必要となり、設備建設コストの高騰、装置設置面積の増大を招く問題があった。更に、該脱窒素細菌は、周囲の温度環境、その他、被処理水中に含まれる成分などにより、著しく影響されるため、特に、温度が低くなる冬場になると、活動の低下により脱窒素作用が低下し、処理効率が不安定となる問題があった。
【0004】
そこで、上記技術的課題を解決するために、被処理水を電解処理してアンモニア、亜硝酸態窒素、硝酸態窒素を酸化又は還元分解して窒素ガスにする方法がある。従来、該電気分解による被処理水の処理方法では、アノードに例えば、白金、イリジウム、パラジウムなどの金属材料を用い、カソードに不錆鋼等を用いていた(特許文献1参照。)。
【0005】
そして、各電極に電流を流すことにより、被処理水中に次亜塩素酸などの酸化剤を発生させ、被処理水中のアンモニア態窒素を酸化し、更に、窒素ガスにまで還元し、有機性排水の無害化を図っていた。
【0006】
しかしながら、従来の電解による窒素処理方法では、窒素化合物の除去処理能力が低いため、実際に生活排水や工場排水の処理において、窒素化合物を処理することは、困難であった。また、上記方法では硝酸態窒素を窒素ガスに変換し難く、特に低濃度の硝酸イオンを除去することが困難であるため、被処理水中に窒素成分として残留してしまう問題がある。
【0007】
そこで、被処理水中の窒素化合物の処理能力の向上を図るため、硝酸態窒素及び亜硝酸態窒素の還元反応に対する触媒活性の高いカソードの材料の開発がなされ、カソードの材料として、銅や、銅と亜鉛の合金である黄銅が用いられていた。
【0008】
【特許文献1】
特開昭54−16844号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、銅をカソードの材料として用いた場合であっても、十分な硝酸態窒素及び亜硝酸態窒素の還元反応に対する触媒活性を得ることができないという問題があった。また、黄銅をカソードの材料として用いた場合には、高い硝酸態窒素及び亜硝酸態窒素の還元能力を得ることが可能となるが、時間と共にカソードが劣化していくという問題があった。
【0010】
そこで、本発明は従来の技術的課題を解決するために成されたものであり、長期に渡り、安定して使用できるカソードを提供し、被処理水中の窒素化合物を効率的に除去することが可能となる窒素処理方法及び装置を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
即ち、請求項1及び請求項6の発明によれば、電気化学的手法により被処理水中の窒素化合物を処理するにあたり、カソードを構成する材料は、酸化銅、又は、酸化銅含有材料であるので、被処理水中の硝酸態窒素及び亜硝酸態窒素の還元触媒活性を著しく向上させることができ、これら硝酸態窒素及び亜硝酸態窒素の処理能力の向上を図ることができるようになる。
【0012】
特に、カソードを構成する材料として酸化銅を用いた場合には、金属の被処理水中への溶出を生じることなく、従来、用いられていた黄銅と同等程度の硝酸態窒素及び亜硝酸態窒素の処理能力を発揮することができるようになる。これにより、カソードの劣化を気にすることなく、長期に渡り、効果的な窒素処理ができるようになる。
【0013】
また、酸化銅、又は、酸化銅含有材料は、請求項2の発明の如く銅又は銅含有材料を銅の融点(+1083℃)以下の酸化雰囲気中、好ましくは、請求項3の発明の如く表面に緻密な酸化物を形成するために+300℃以下の酸化雰囲気中で、所定時間熱処理することにより得られたものを用いることにより、適度に酸化された状態の酸化銅を被処理水の電解脱窒処理に用いることができ、より一層、硝酸態窒素及び亜硝酸態窒素の処理能力の向上を図ることができるようになる。
【0014】
請求項4の発明によれば、上記各発明において、被処理水は、10ppm以上のハロゲン化物イオンを含有するので、被処理水中に高効率で次亜ハロゲン酸等の酸化剤を生成することができるようになる。これにより、被処理水中に生成された次亜ハロゲン酸等の酸化剤により、カソードにおいて生成されたアンモニアの脱窒処理を行うことができるようになる。そのため、硝酸態窒素、アンモニア態窒素及び窒素化合物などの窒素成分をより一層、効果的に処理することができるようになる。
【0015】
請求項5及び請求項7の発明によれば、上記発明において、アノードを構成する導電性材料は、被処理水中のハロゲン化物イオンを酸化し、次亜ハロゲン酸イオンを生成する能力を有する不溶性金属材料又はカーボンであるので、被処理水中に発生させた酸化剤によって、カソードを構成する電極の酸化状態を長期に渡って維持することが可能となり、還元性能の低下を防止できるようになる。これによって、硝酸態窒素及び亜硝酸態窒素の還元処理を長期に渡って効率的に行うことができるようになる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳述する。図1は本発明の窒素処理方法を実現するための窒素処理装置1の概略説明図である。尚、本実施例の処理対象である被処理水は、窒素化合物などの有機物を含有しているものとする。本実施例における窒素処理装置1は、内部に被処理水の流入口2と流出口3を有する処理室8を構成する処理槽9と、該処理室8内の被処理水中に少なくとも一部が浸漬するように対向して配置された一対の電極10、11と、該電極10、11に通電するための電源12及び該電源12を制御するための図示しない制御装置などから構成されている。尚、処理槽9には内部を撹拌するための撹拌手段13を設けても良い。また、流入口2は、前記制御装置に接続された開閉弁4を介して給送管5が接続され、これにより、処理槽9内への被処理水の供給制御を可能としている。同じく流出口3は、制御装置に接続された開閉弁6を介して配送管7が接続され、これにより、処理槽9内の被処理水の排水制御を可能としている。
【0017】
前記電極10は導電体として例えば白金(Pt)又は白金とイリジウム(Ir)の混合物などの貴金属電極、又は、これらを被覆した不溶性金属材料若しくは、カーボンにより構成されている。尚、本実施例では、白金とイリジウムにより構成されている電極を採用するものとする。
【0018】
他方、前記電極11は、酸化処理がなされた金属として、例えば酸化銅により構成されている。尚、本実施例において用いられる酸化銅は、+170℃の酸化雰囲気中で6時間焼成処理することにより得られたものであるものとする。
【0019】
以上の構成により、処理槽9の処理室8内に硝酸性窒素を含む被処理水を貯留し、前記制御装置により電源12をONとし、電極10に正電位を、電極11に負電位を印加する。これにより、電極10はアノードとなり、電極11はカソードとなる。
【0020】
係る電位の印加により、カソードを構成する電極11側では、アノードを構成する電極10側において生成された電子が供給され、被処理水中に含まれる硝酸態窒素としての硝酸イオンが亜硝酸イオンに還元される(反応A)。更に、亜硝酸イオンに還元された硝酸態窒素は、カソードを構成する電極11側において、電子が供給され、アンモニア(アンモニウムイオン)まで還元される(反応B)。以下に、反応A及び反応Bを示す。
反応A NO3 -+H2O+2e-→NO2 -+2OH-
反応B NO2 -+5H2O+6e-→NH3(aq)+7OH-
【0021】
一方、アノードを構成する白金・イリジウム電極10側では、被処理水中に含有されるハロゲン化物イオンとしての塩化物イオンが電子を放出して塩素を生成する。そして、この塩素は水に溶解して次亜塩素酸(次亜ハロゲン酸)を生成する。このとき、電極上では同時にオゾン、若しくは、活性酸素も生成される。
【0022】
ここで、被処理水中に含まれる塩化物イオン濃度が低い場合には、被処理水中に、例えば塩化物イオンや、ヨウ化物イオンや、臭化物イオンなどのハロゲン化物イオンや、これらハロゲン化物イオンを含む化合物、例えば、塩化カリウムや塩化ナトリウムなどを添加してもよい。即ち、被処理水の塩化カリウムの塩化物イオンを例えば10ppm以上とする。
【0023】
このような被処理水中に本来含まれる塩化物イオンや上述の如く添加した塩化カリウムは、アノードを構成する電極10において酸化され、塩素を生成し(反応C。塩化カリウムの場合で示す)、生成された塩素は、被処理水中で水と反応し、次亜塩素酸を生成する(反応D)。そして、生成された次亜塩素酸は、上述の反応Bで被処理水中に生成されたアンモニア(アンモニウムイオン)と反応し、複数の化学変化を経た後、窒素ガスに変換される(反応E)。以下、反応C乃至反応Eを示す。このとき、電極上では同時にオゾン、若しくは、活性酸素も生成される。
反応C KCl→K++Cl-
2Cl-→Cl2+2e-
反応D Cl2+H2O→HClO+HCl
反応E NH3+HClO→NH2Cl+H2O
NH2Cl+HClO→NHCl2+H2O
NH2Cl+NHCl2→N2↑+3HCl
【0024】
また、被処理水中のアンモニア(アンモニウムイオン)は、アノードを構成する電極10側で発生するオゾン、若しくは、活性酸素と反応Fに示す如く反応し、これによっても窒素ガスに脱窒処理される。
反応F 2NH3(aq)+3(O)→N2↑+3H2O
【0025】
これにより、被処理水中の硝酸態窒素、亜硝酸態窒素及びアンモニア態窒素の脱窒処理が可能となる。また、本実施例では、アノードを構成する電極10を上述した如く不溶性金属材料又はカーボンなどの導電性材料であるため、アンモニア態窒素の分解反応によって生成するハロゲン化物イオンは、上記反応Cに戻ってアノード酸化を受け、次亜ハロゲン酸イオンとなり、再び反応D及び反応Eを繰り返す。これにより、被処理水中のハロゲン化物イオン濃度が低い場合であっても効率的に窒素化合物の除去処理を行うことができるようになる。
【0026】
ここで、図2乃至図5を参照して各電極11を用いた場合の被処理水中の硝酸態窒素及び亜硝酸態窒素の脱窒処理能力について詳述する。図2は各材料により構成された電極11をカソードとして用いた場合の電解時間に対する硝酸態窒素及び亜硝酸態窒素の濃度変化を示す。
【0027】
図2に示される実験結果は、アノードを構成する電極10に白金・イリジウム電極を用い、カソードを構成する電極11に、それぞれ銅と亜鉛が60:40の割合で構成される黄銅、銅(C1220)、二種類の酸化銅A、Bを用いて被処理水の電解脱窒処理を行ったものである。尚、酸化銅Aは、銅を+170℃の酸化雰囲気中で3時間焼成処理されたもの(上記実施例にて使用したもの)であり、酸化銅Bは、銅を+170℃の酸化雰囲気中で6時間焼成処理されたものである。尚、図2中、菱形は黄銅、四角は銅、三角は酸化銅A、丸は酸化銅Bの実験結果を示す。また、係る実験では、塩化カリウム中の塩化物イオンが2000mg/L、硝酸態窒素が500mg/L含有された模擬排水300mlを被処理水とする。
【0028】
これによると、黄銅をカソードの材料として使用した場合、電解処理開始時点において500mg/Lであった硝酸態窒素及び亜硝酸態窒素の濃度は、電解処理開始から60分後には120mg/L程度、120分後には、50mg/L以下にまで低下し、180分後にはほぼ完全に硝酸態窒素及び亜硝酸態窒素が脱窒処理されていることが分かる。但し、係る黄銅をカソードの材料として使用した場合には、硝酸態窒素及び亜硝酸態窒素の高い脱窒処理能力を示すが、黄銅を構成する亜鉛が被処理水中に溶出するため、環境に還元する被処理水を処理するのに好ましくない。
【0029】
他方、従来より行われている銅をカソードの材料として使用した場合、電解処理開始時点において500mg/Lであった硝酸態窒素及び亜硝酸態窒素の濃度は、電解処理開始から60分後には300mg/L程度、120分後でも、250mg/Lを下回る程度にしか低下していないことが分かる。
【0030】
これに対し、本発明の酸化銅Aをカソードの材料として使用した場合、電解処理開始時点において500mg/Lであった硝酸態窒素及び亜硝酸態窒素の濃度は、電解処理開始から60分後には250mg/L程度、120分後には、150mg/L程度にまで低下していることが分かる。
【0031】
通常、銅をカソードの材料として用いた場合であっても、電解処理が行われるに従って、銅自体が被処理水中に生成される次亜ハロゲン酸等の酸化剤により酸化され、電極11の表面に酸化銅を形成する。しかしながら、その形成には長時間を要する。よって図2に示すように酸化銅をカソード材料として用いた方がよいことが分かる。
【0032】
また、酸化銅Aよりも長い焼成時間で形成された酸化銅Bをカソードの材料として使用した場合、電解処理開始時点において500mg/Lであった硝酸態窒素及び亜硝酸態窒素の濃度は、電解処理開始から60分後には190mg/L程度、120分後には、90mg/Lを下回る程度にまで低下している。これによると、焼成時間が長い方が、即ち酸化割合の高い銅を用いた方が、被処理水中の硝酸態窒素及び亜硝酸態窒素の脱窒処理に大きな触媒活性を示すことが分かる。
【0033】
特に、酸化銅Bをカソードの材料として用いた場合には、他の材料を用いた場合に比べて、より黄銅を用いた場合の脱窒処理能力に近い脱窒処理能力を発揮することが分かる。また、かかる場合には、黄銅を用いた場合により生じる被処理水中への亜鉛溶出のような構成材料の溶出がないため、長期に渡りシステムが安定して運転できるようになる。
【0034】
他方、図3乃至図5は、各電極11をカソードとして用いた場合の被処理水の電解脱窒処理時の電流−電位曲線を示す。図3は酸化銅A、図4は黄銅、図5は銅を用いた場合における電流−電位曲線を示す。各実験において、被処理水は、3mMの硝酸カリウムと0.25Mの硫酸ナトリウムの混合溶液を用い、当該被処理水に100mVs-1で電位を加えたものである。各図において(1)は硝酸態窒素から亜硝酸態窒素への還元ピークを示し、(2)は亜硝酸態窒素からアンモニア態窒素への還元ピークを示している。
【0035】
図3乃至図5より、酸化銅Aをカソードの材料として用いた場合には、(1)のピークが−0.8V(基準電極に対する電位である。以下、同じ。)、(2)のピークが−1.01Vであった。黄銅をカソードの材料として用いた場合には、(1)のピークが−0.9V、(2)のピークが−1.25Vであった。銅をカソードの材料として用いた場合には、(1)のピークが−0.9V、(2)のピークが−1.22Vであった。
【0036】
これにより、(1)のピーク、即ち硝酸態窒素から亜硝酸態窒素への還元ピークに関しては、各電極材料間で大きな違いは見られないが、(2)のピーク、即ち亜硝酸態窒素からアンモニア態窒素への還元ピークに関しては、黄銅及び銅を用いた場合に比べて本発明の酸化銅を用いた場合の方が、電位が小さいことが分かる。
【0037】
そのため、カソードを構成する電極11の材料を酸化銅とすることにより、より小さなエネルギーで被処理水中の亜硝酸態窒素からアンモニア態窒素への還元反応を生じることができる。
【0038】
これにより、電気化学的手法により被処理水中の窒素化合物を処理するにあたり、カソードを構成する材料に、酸化処理がなされた金属材料、又は、酸化処理がなされた金属含有材料、特に、酸化銅、又は、酸化銅含有材料を用いることにより、被処理水中の硝酸態窒素及び亜硝酸態窒素の還元触媒活性を著しく向上させることができ、これら硝酸態窒素及び亜硝酸態窒素の処理能力の向上を図ることができるようになる。
【0039】
特に、上述した如くカソードを構成する材料として酸化銅を用いた場合には、金属の被処理水中への溶出を生じることなく、従来、用いられていた黄銅と同等程度の硝酸態窒素及び亜硝酸態窒素の処理能力を発揮することができるようになる。これにより、長期に渡りシステムを安定して運転できるようになる。
【0040】
尚、本実施例では、酸化銅は、銅を+170℃の酸化雰囲気中で3時間又は6時間焼成処理したものを用いているが、これ以外にも銅を融点(+1083℃)以下の酸化雰囲気中、好ましくは、表面に緻密な酸化物を形成するために+300℃以下の酸化雰囲気中で、所定時間、例えば数時間乃至数十時間、熱処理することにより得られたものであっても良いものとする。これにより、適度に酸化された状態の酸化銅を被処理水の電解脱窒処理に用いることができ、より一層、硝酸態窒素及び亜硝酸態窒素の処理能力の向上を図ることができるようになる。
【0041】
また、本実施例では、銅の酸化処理方法として、所定温度における処理を行っているが、上述した如き所定温度における熱処理による酸化度合いと同等程度の銅の酸化を実現することができる方法であれば、例えば、次亜ハロゲン酸又はオゾン若しくは活性酸素等の酸化剤による酸化処理であっても良いものとする。更に、本実施例では、酸化処理された金属として酸化銅を挙げているが、これ以外にも酸化処理された金属であれば、例えば酸化鉄であっても良いものとする。
【0042】
また、添加される塩化物イオンや、ヨウ化物イオン又は臭化物イオンなどのハロゲン化物イオンの濃度は、10ppm以上とすることにより、被処理水中に高効率で次亜ハロゲン酸等の酸化剤を生成することができるようになる。これにより、被処理水中に生成された次亜ハロゲン酸等の酸化剤により、カソードにおいて生成されたアンモニアの脱窒処理を行うことができるようになる。そのため、硝酸態窒素、アンモニア態窒素及び窒素化合物などの窒素成分をより一層、効果的に処理することができるようになる。
【0043】
特に、被処理水中に塩化ナトリウムを添加する場合には、添加剤として安価且つ安全であるため、添加剤の管理や添加作業を容易に行うことができるようになる。また、海水が含まれる被処理水の窒素処理を行う場合には、海水に塩化ナトリウムが多量に含まれているため、格別に添加剤を加えることなく、効果的に窒素成分の除去を行うことができるようになる。
【0044】
【発明の効果】
以上詳述した如く請求項1及び請求項6の発明によれば、電気化学的手法により被処理水中の窒素化合物を処理する方法であって、カソードを構成する材料は、酸化銅、又は酸化銅含有材料であるので、被処理水中の硝酸態窒素及び亜硝酸態窒素の還元触媒活性を著しく向上させることができ、これら硝酸態窒素及び亜硝酸態窒素の処理能力の向上を図ることができるようになる。
【0045】
特に、カソードを構成する材料として酸化銅を用いた場合には、金属の被処理水中への溶出を生じることなく、従来、用いられていた黄銅と同等程度の硝酸態窒素及び亜硝酸態窒素の処理能力を発揮することができるようになる。これにより、長期に渡りシステムを安定して運転できるようになる。
【0046】
また、酸化銅、又は、酸化銅含有材料は、請求項2の発明の如く銅又は銅含有材料を銅の融点(+1083℃)以下の酸化雰囲気中、好ましくは、請求項3の発明の如く表面に緻密な酸化物を形成するために+300℃以下の酸化雰囲気中で、所定時間熱処理することにより得られたものを用いることにより、適度に酸化された状態の酸化銅を被処理水の電解脱窒処理に用いることができ、より一層、硝酸態窒素及び亜硝酸態窒素の処理能力の向上を図ることができるようになる。
【0047】
請求項4の発明によれば、上記各発明において、被処理水は、10ppm以上のハロゲン化物イオンを含有するので、被処理水中に高効率で次亜ハロゲン酸等の酸化剤を生成することができるようになる。これにより、被処理水中に生成された次亜ハロゲン酸等の酸化剤により、カソードにおいて生成されたアンモニアの脱窒処理を行うことができるようになる。そのため、硝酸態窒素、アンモニア態窒素及び窒素化合物などの窒素成分をより一層、効果的に処理することができるようになる。
【0048】
請求項5及び請求項7の発明によれば、上記発明において、アノードを構成する導電性材料は、被処理水中のハロゲン化物イオンを酸化し、次亜ハロゲン酸イオンを生成する能力を有する不溶性金属材料又はカーボンであるので、被処理水中に発生させた酸化剤によって、カソードを構成する電極の酸化状態を長期に渡って維持することが可能となり、還元性能の低下を防止できるようになる。これによって、硝酸態窒素及び亜硝酸態窒素の還元処理を長期に渡って効率的に行うことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の窒素処理方法を実現するための窒素処理装置の概要説明図である。
【図2】 各材料により構成された電極をカソードとして用いた場合の電解時間に対する硝酸態窒素及び亜硝酸態窒素の濃度変化を示す図である。
【図3】 酸化銅Aをカソードとして用いた場合の被処理水の電解脱窒処理時の電流−電位曲線を示す図である。
【図4】 黄銅をカソードとして用いた場合の被処理水の電解脱窒処理時の電流−電位曲線を示す図である。
【図5】 銅をカソードとして用いた場合の被処理水の電解脱窒処理時の電流−電位曲線を示す図である。
【符号の説明】
1 窒素処理装置
8 処理室
9 処理槽
10 電極(アノード)
11 電極(カソード)
12 電源
Claims (7)
- 電気化学的手法により被処理水中の窒素化合物を処理する方法であって、
カソードを構成する材料は、酸化銅、又は、酸化銅含有材料であることを特徴とする窒素処理方法。 - 前記酸化銅、又は、酸化銅含有材料は、銅、又は、銅含有材料を銅の融点(+1083℃)以下の酸化雰囲気中で所定時間熱処理することにより得られたものであることを特徴とする請求項1の窒素処理方法。
- 前記酸化銅、又は、酸化銅含有材料は、銅、又は、銅含有材料を+300℃以下の酸化雰囲気中で所定時間熱処理することにより得られたものであることを特徴とする請求項1の窒素処理方法。
- 前記被処理水は、10ppm以上のハロゲン化物イオンを含有することを特徴とする請求項1、請求項2又は請求項3の窒素処理方法。
- アノードを構成する導電性材料は、前記被処理水中のハロゲン化物イオンを酸化し、次亜ハロゲン酸イオンを生成する能力を有する不溶性金属材料又はカーボンであることを特徴とする請求項4の窒素処理方法。
- 被処理水中に少なくとも一部が浸漬された一対の電極と、各電極への通電を制御することにより、前記被処理水を電気化学的手法により処理する制御装置とを備えた窒素処理装置であって、
カソードを構成する前記電極を、酸化銅、又は、酸化銅含有材料により構成したことを特徴とする窒素処理装置。 - アノードを構成する導電性材料は、前記被処理水中のハロゲン化物イオンを酸化し、次亜ハロゲン酸イオンを生成する能力を有する不溶性金属材料又はカーボンであることを請求項6の窒素処理装置。
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