JP4024087B2 - 有機性廃水の処理方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば畜産業者などから排出される有機性廃水中の有機態窒素、亜硝酸態窒素、硝酸態窒素、アンモニア態窒素などの窒素化合物や、例えばリン酸、リン酸イオンなどのリン化合物などの処理方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、川や湖の富栄養化の原因の1つに窒素化合物の存在があることは周知である。また、この窒素化合物は、一般家庭の生活排水中や工場排水中、若しくは畜産業者などの廃水中に多く存在するが、浄化処理が困難なものであり、有効な対策がとれないのが現状である。特に、養豚業者などの畜産業者から排出される有機性廃水(以下、被処理水と称す)中には、COD(化学的酸素要求量)又はBOD(生物学的酸素要求量)の高い有機物が多く含まれており、浄化処理は非常に困難なものであった。
【0003】
一般には、生物的処理が行われているが、先ずアンモニア態窒素を硝酸態窒素に変換する硝化工程と、硝酸態窒素を窒素ガスに変換する脱窒工程の2つの工程により行われるため、2つの反応槽が必要となると共に、処理時間が遅いため、処理効率が低くなる問題があった。
【0004】
また、該生物的処理では、脱窒素細菌を保有するために大容量の嫌気槽が必要となり、設備建設コストの高騰、装置設置面積の拡大を招く問題があった。更に、該脱窒素細菌は、周囲の温度環境、その他、被処理水中に含まれる成分などに著しく影響されるため、特に温度が低くなる冬場になると、活動が低下して脱窒素作用が低下し、処理効率が不安定となる問題もあった。
【0005】
そこで、上記技術的課題を解決するために、従来の被処理水の電気分解法では、アノードに例えば、白金、イリジウム、パラジウムなどの貴金属材料を用い、被処理水に電流を流してアンモニア、亜硝酸態窒素、硝酸態窒素を窒素ガスにまで処理していた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の電解による窒素化合物の処理方法では、当該畜産業者などから排出される有機性廃水を処理すると、有機性廃水中に含有される高CODの有機物が電極に付着し、電解効率が著しく低下、若しくは、電解不能となってしまう問題があった。
【0007】
また、当該電解による窒素化合物の処理方法では、窒素化合物を処理する処理能力が低く、実際に畜産業者などから排出される有機性廃水などの処理において、硝酸態窒素及びアンモニア態窒素などの窒素化合物をほぼ消失させるまで処理することは困難であった。また、今までは、CODが含まれていなければ排水可能であったものが、今後の水質処理規制などにより、排水中に窒素化合物やリン化合物が含有されたままでは排水できないと云う問題が生じる。
【0008】
そこで、本発明は従来の技術的課題を解決するために成されたものであり、迅速、且つ、効率的に有機性廃水を窒素化合物が処理された排水にまで処理することができる有機性廃水の処理方法を提唱するものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明の有機性廃水の処理方法は、有機性廃水中の窒素化合物を処理するにあたって、有機性廃水中の有機物を処理するCOD又はBOD低減処理ステップと、有機性廃水中に第1及び第2の電極を少なくとも一部浸漬し、COD又はBOD低減処理ステップ終了後、アノードを構成する第1の電極を次亜ハロゲン酸、又は、オゾン、若しくは、活性酸素を発生させることが可能な導電体とすると共に、カソードを構成する第2の電極の材料を、鉄を含む導電体として電気化学的手法により有機性廃水中の窒素化合物を処理する窒素処理ステップと、この窒素処理ステップの終了後、第1の電極をカソードとし、第2の電極をアノードとして電気化学的手法により有機性廃水中のリン化合物を処理するリン処理ステップを含むことを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、有機性廃水中の窒素化合物を処理する有機性廃水の処理方法において、有機性廃水中の有機物を処理するCOD又はBOD低減処理ステップと、有機性廃水中に第1及び第2の電極を少なくとも一部浸漬し、COD又はBOD低減処理ステップ終了後、電気化学的手法により有機性廃水中の窒素化合物を処理する窒素処理ステップを含むので、一旦、COD又はBOD低減処理ステップにて有機性廃水中に含有される有機物の高CODを低減させた後、窒素処理ステップにて有機性廃水中に含有される窒素化合物を処理することができるようになる。
【0011】
これにより、従来の生物的処理に較べて、迅速、且つ、効率的に有機性廃水を窒素化合物が処理された排水にまで処理することができるようになり、有機性廃水の処理能力が向上される。
【0012】
また、生物的処理では、条件次第では分解が困難となる硝酸態窒素やアンモニア態窒素なども窒素処理ステップにて処理することができ、環境に適した状態で有機性廃水を排水することができるようになる。
【0013】
そして、窒素処理ステップは、アノードを構成する第1の電極を次亜ハロゲン酸、又は、オゾン、若しくは、活性酸素を発生させることが可能な導電体とすると共に、カソードを構成する第2の電極の材料を、鉄を含む導電体とするので、カソードを構成する第2の電極において有機性廃水中の硝酸態窒素の亜硝酸態窒素及びアンモニアへの還元反応が促進され、還元反応に要する時間を短縮し、且つ、低濃度の硝酸イオンも処理することができるようになる。
【0014】
また、カソードを構成する第2の電極において生じるアンモニアは、アノードを構成する第1の電極で生じる次亜ハロゲン酸としての次亜塩素酸等の物質と脱窒反応をすることになるので、相乗効果によって硝酸態窒素、アンモニア態窒素及び窒素化合物などの窒素成分を効果的に除去することができるようになる。これによって、畜産業者等から排出される有機性廃水から効率的に窒素化合物を除去することができるようになり、窒素化合物の処理能力が向上される。
【0015】
更に、窒素処理ステップの終了後、第1の電極をカソードとし、第2の電極をアノードとして電気化学的手法により有機性廃水中のリン化合物を処理するリン処理ステップを含むので、アノードとなる第2の電極より有機性廃水中に鉄(II)イオンを溶出させ、有機性廃水中で鉄(III)イオンにまで酸化された当該鉄(III)イオンと有機性廃水中のリン化合物としてのリン酸イオンを化学的に反応させ、リン酸鉄として沈殿処理することができるようになる。
【0016】
これにより、有機性廃水中のリン化合物も処理することができるようになるものである。
【0017】
請求項2の発明の有機性廃水の処理方法は、請求項1の発明において、COD又はBOD低減処理ステップは、有機性廃水中に一対の電極を一部浸漬し、電気化学的手法により有機性廃水中の有機物を硝酸態窒素及びアンモニア態窒素へ処理する有機物分解処理ステップを含むことを特徴とする。
【0018】
請求項2の発明によれば、請求項1の発明において、COD又はBOD低減処理ステップは、有機性廃水中に一対の電極を一部浸漬し、電気化学的手法により有機性廃水中の有機物を硝酸態窒素及びアンモニア態窒素へ処理する有機物分解処理ステップを含むので、有機性廃水中の有機物を効率的に硝酸態窒素及びアンモニア態窒素に変換することができるようになる。
【0019】
請求項3の発明の有機性廃水の処理方法は、請求項2の発明において、COD又はBOD低減処理ステップは、有機物分解処理ステップの前段に生物的処理ステップを含むことを特徴とする。
【0020】
請求項3の発明によれば、請求項2の発明において、COD又はBOD低減処理ステップは、有機物分解処理ステップの前段に生物的処理ステップを含むので、一旦、生物的処理ステップにて有機性廃水中の有機高分子を有機低分子や硝酸態窒素及びアンモニア態窒素にまで分解した後、有機物分解処理ステップを行うことができるようになり、より一層、COD又はBOD低減処理ステップを効率的に行うことができるようになる。
【0021】
請求項4の発明の有機性廃水の処理方法は、請求項1の発明において、COD又はBOD低減処理ステップは、生物的処理ステップを含むことを特徴とする。
【0022】
請求項4の発明によれば、請求項1の発明に加えて、COD又はBOD低減処理ステップは、生物的処理ステップを含むので、生物的処理ステップにて有機性廃水中の有機物を硝酸態窒素及びアンモニア態窒素にまで分解した後、窒素処理ステップを行うことができるようになり、より一層効率的に有機性廃水を窒素化合物が処理された排水にまで処理することができるようになる。
【0023】
請求項5の発明の有機性廃水の処理方法は、請求項1、請求項2、請求項3又は請求項4の発明に加えて、電気化学的手法により次亜ハロゲン酸、又は、オゾン、若しくは、活性酸素を発生させることが可能な導電体として貴金属又は当該貴金属を被覆した導電体を用いることを特徴とする。
【0024】
請求項5の発明によれば、請求項1、請求項2、請求項3又は請求項4の発明に加えて、電気化学的手法により次亜ハロゲン酸、又は、オゾン、若しくは、活性酸素を発生させることが可能な導電体として貴金属又は当該貴金属を被覆した導電体を用いるので、容易に有機性廃水中に次亜ハロゲン酸、又は、オゾン、若しくは、活性酸素を発生させることが可能となり、効果的にアンモニア又はアンモニウムイオンの脱窒処理を行うことができるようになるものである。
【0025】
請求項6の発明の有機性廃水の処理方法は、請求項1、請求項2、請求項3又は請求項4の発明に加えて、電気化学的手法により次亜ハロゲン酸、又は、オゾン、若しくは、活性酸素を発生させることが可能な導電体として炭素系導電体又は当該炭素系導電体を被覆した導電体を用いることを特徴とする。
【0026】
請求項6の発明によれば、請求項1、請求項2、請求項3又は請求項4の発明に加えて、電気化学的手法により次亜ハロゲン酸、又は、オゾン、若しくは、活性酸素を発生させることが可能な導電体として炭素系導電体又は当該炭素系導電体を被覆した導電体を用いるので、容易に有機性廃水中に次亜ハロゲン酸、又は、オゾン、若しくは、活性酸素を発生させることが可能となり、効果的にアンモニア又はアンモニウムイオンの脱窒処理を行うことができるようになるものである。
【0027】
また、この炭素系導電体を使用することにより、低コストにて導電体を構成することができるようになる。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳述する。
(1)第1の実施例
先ず、図1乃至図3を用いて本発明の一実施例を説明する。図1は本発明の第1の実施例の有機性廃水の処理方法を実現するための処理システム1の概要を示す説明図である。この実施例における処理システム1は、COD又はBOD低減処理手段としての有機物分解処理装置2と、窒素及びリン処理手段としての窒素及びリン処理装置3とを有している。
【0029】
本実施例における有機物分解処理装置2は、内部に図示しない排水の流入口と流出口を有する処理室4を構成する処理槽5と、該処理室4内の被処理水中に少なくとも一部が浸漬するように対向して配置された一対の電極6、7と、該電極6、7に通電するための図示しない電源及び該電源を制御するための制御装置などから構成されている。尚、処理槽5には内部を撹拌するための撹拌手段を設けても良い。
【0030】
前記電極6及び7は、例えば、白金(Pt)又は白金とイリジウム(Ir)の混合物などの貴金属電極、又は、これらを被覆した不溶性の導電体から構成されている。尚、この実施例では白金電極を用いる。
【0031】
一方、本実施例における窒素及びリン処理装置3は、内部に図示しない排水の流入口と流出口を有する処理室8を構成する窒素及びリン処理槽9と、該処理室8内の被処理水中に少なくとも一部が浸漬するように対向して配置された一対の電極10、11と、該電極10、11に通電するための図示しない電源及び該電源を制御するための制御装置などから構成されている。尚、処理槽9には内部を撹拌するための撹拌手段を設けても良い。
【0032】
前記電極10(第1の電極)は例えば白金(Pt)又は白金とイリジウム(Ir)の混合物などの貴金属電極、又は、これらを被覆した不溶性の導電体、若しくは、セラミックス系導電体電極又は、これらを被覆した導電体、若しくは、炭素系導電体電極又はこれらを被覆した導電体、若しくは、ステンレス電極、又はこれらを被覆した導電体から構成されている。尚、この実施例では白金とイリジウム(白金・イリジウム)の混合物を用いる。他方、前記電極11(第2の電極)は、鉄(Fe)、若しくは、鉄を被覆した導電体(鉄を含む導電体)により構成されている。
【0033】
以上の構成により、本実施例では、有機性廃水、例えば養豚業者からの廃水を被処理水として処理する。尚、係る被処理水には、高いCOD(化学的酸素要求量)の有機物が多く含まれているものとする。先ず、有機物分解処理装置2内の処理室4に被処理水を貯留し、前記制御装置により電源をONとし、電極6に正電位を、電極7に負電位を印加する(COD又はBOD低減処理ステップとしての有機物分解処理ステップ。図1の左側)。これにより、電極6はアノードとなり、電極7はカソードとなる。
【0034】
係る電位の印加により、アノードを構成する電極6側では、被処理水中に含まれる有機物が硝酸態窒素としての硝酸イオンやアンモニア態窒素としてのアンモニアやアンモニウムイオン若しくは、二酸化炭素及び水などに分解される(反応A)。以下に、反応Aを示す。
反応A 有機物→NO3 -+NH3+CO2+H2O
【0035】
これにより、有機性廃水中の有機物を効率的に硝酸態窒素及びアンモニア態窒素に変換することができるようになる。
【0036】
アノードを構成する白金電極6側において、被処理水中に含有される塩化物イオンが電子を放出して塩素を生成する(反応B)。そして、この塩素は水に溶解して次亜ハロゲン酸としての次亜塩素酸を生成する(反応C)。そして、生成された次亜塩素酸は、上述の反応Aで被処理水中に生成されたアンモニア(アンモニウムイオン)と反応し、複数の化学変化を経た後、窒素ガスに変換される(反応D)。以下、反応B乃至反応Dを示す。このとき、同時にオゾン、若しくは、活性酸素も生成される。
反応B KCl→K++Cl-
2Cl-→Cl2+2e-
反応C Cl2+H2O→HClO+HCl
反応D NH3+HClO→NH2Cl+H2O
NH2Cl+HClO→NHCl2+H2O
NH2Cl+NHCl2→N2↑+3HCl
【0037】
また、被処理水中のアンモニア(アンモニウムイオン)は、アノードを構成する電極10側で発生するオゾン、若しくは、活性酸素と反応Eに示す如く反応し、これによっても窒素ガスに脱窒処理される。
反応E 2NH3(aq)+3(O)→N2↑+3H2O
【0038】
これにより、有機物分解処理ステップにて硝酸態窒素、亜硝酸態窒素及びアンモニア態窒素までに処理された窒素化合物を処理することが可能となる。
【0039】
ここで、図2に示される実験結果は、両電極6、7を白金電極を使用した場合における養豚場廃水を被処理水とした場合の被処理水中のCOD及び硝酸態窒素濃度を示している。この実験では養豚場の廃水を1/4に希釈した被処理水200mlを、始め電極6、7間に0.5Aを4時間流し、定電流電解を行った。その後、両電極6、7間に1.0Aを2時間流し、定電流電解を行った。引き続き、両電極6、7間に1.5Aを5.5時間流し、定電流電解を行った。更に、両電極6、7間に2.0Aを7時間流し、定電流電解を行った。
【0040】
図2中における白丸は硝酸態窒素濃度、黒丸はCODを測定した結果を示している。この図によると、有機性廃水中に含有された有機物により始め2000mg/lであったCODは、電解開始から4時間後には、1200mg/lを下回っていた。更に、電解を続けることにより、電解開始から15時間後には、ほぼCODがなくなっていることが分かる。
【0041】
これに対し、有機性廃水中に含有された有機物が減少するに伴って、はじめ被処理水中に存在していなかった硝酸態窒素は、時間の経過と共に、硝酸態窒素濃度が上昇し、700mg/lにまで増加することが分かる。また、電解開始から14時間経過後以降において、被処理水中にCODがほぼ存在していない状態となると、被処理水中の硝酸態窒素濃度が減少し始めていることも分かる。また、このとき、被処理水中に生成されたアンモニア態窒素は、上述の如く窒素ガスにまで変換され、被処理水中にはほぼアンモニア態窒素が存在していない状態となる。
【0042】
これにより、被処理水中の高CODの有機物は、電解により硝酸態窒素などに分解されていることが分かる。
【0043】
また、このとき、有機物分解処理装置2に設けられる電極6、7は、両者とも白金電極により構成されているため、所定期間、例えば30分経過毎にこれらの電極6、7に印加される極性を切り換えることも可能となる。
【0044】
これにより、カソードを構成する電極7又は6の表面に付着する有機物やスケール(CaCO3、Mg(OH)2等)は、各電極6、7の極性が切り換えられ、当該電極7又は6がアノードとなることにより表面から落とされる。これにより、電極7又は6の電解性能を高く維持できるようになる。
【0045】
このような有機物の分解処理(有機物分解処理ステップ)の終了後、有機物分解処理槽5内の被処理水を前記窒素及びリン処理装置3の処理槽9内に搬送し、処理槽9内に有機物分解処理された被処理水を貯留する。そして、前記制御装置により電源をONとし、先ず、電極10に正電位を、電極11に負電位を印加する(窒素処理ステップ。図1の右上)。これにより、電極10はアノードとなり、電極11はカソードとなる。
【0046】
係る電位の印加により、カソードを構成する電極11側では、アノードを構成する電極10側において生成された電子が供給され、被処理水中に含まれる硝酸態窒素としての硝酸イオンが亜硝酸イオンに還元される(反応F)。更に、亜硝酸イオンに還元された硝酸態窒素は、カソードを構成する電極10側において、電子が供給され、アンモニア(アンモニウムイオン)まで還元される(反応G)。以下に、反応F及び反応Gを示す。
反応F NO3 -+H2O+2e-→NO2 -+2OH-
反応G NO2 -+5H2O+6e-→NH3(aq)+7OH-
【0047】
一方、アノードを構成する白金電極10側では、被処理水中に含有される塩化物イオンが電子を放出して塩素を生成する。そして、この塩素は水に溶解して次亜塩素酸を生成する。このとき、同時にオゾン、若しくは、活性酸素も生成される。
【0048】
ここで、被処理水中に含まれる塩化物イオン濃度が低い場合には、被処理水中に、例えば塩化物イオンや、ヨウ化物イオンや、臭化物イオンなどのハロゲン化物イオンや、これらハロゲン化物イオンを含む化合物、例えば、塩化カリウムや塩化ナトリウムなどを添加してもよい。即ち、被処理水の塩化カリウムの塩化物イオンを例えば10ppm以上40000ppm以下とする。
【0049】
このような被処理水中に本来含まれる塩化物イオンや上述の如く添加した塩化カリウムは、アノードを構成する電極10において酸化され、塩素を生成し(前記反応B。塩化カリウムの場合で示す)、生成された塩素は、被処理水中で水と反応し、次亜塩素酸を生成する(前記反応C)。そして、生成された次亜塩素酸は、上述の反応Gで被処理水中に生成されたアンモニア(アンモニウムイオン)と反応し、複数の化学変化を経た後、窒素ガスに変換される(前記反応D)。
【0050】
また、被処理水中のアンモニア(アンモニウムイオン)は、アノードを構成する電極10側で発生するオゾン、若しくは、活性酸素と前記反応Eに示す如く反応し、これによっても窒素ガスに脱窒処理される。
【0051】
これにより、有機物分解処理ステップにて硝酸態窒素、亜硝酸態窒素及びアンモニア態窒素までに処理された窒素化合物を容易に処理することが可能となる。
【0052】
このような窒素化合物の処理(窒素処理ステップ)の終了後、制御装置は各電極10、11に印加する電位の極性を切り換える(図1の右下。リン処理ステップ。尚、極性切り換え後も被処理水中では上記窒素処理反応が継続している)。これにより、電極10はカソード、電極11はアノードを構成することになる。これにより、被処理水は電気化学的手法としての電解処理が行われ、アノードを構成する電極11は、上述の如く鉄を含む導電体にて構成されていることから、電極11より鉄(II)イオンが被処理水中に溶出して、被処理水中において鉄(III)イオンにまで酸化される。
【0053】
生成された鉄(III)イオンは、反応Hに示す如く脱リン反応により、被処理水中のリン酸イオンと凝集沈殿し、水に難溶性のリン酸鉄を生成する。
反応H Fe3++PO4 3-→FePO4↓
これにより、被処理水中に含有されたリン化合物としてのリン酸イオンをリン酸鉄として沈殿処理することができる。
【0054】
また、電子の供給のために被処理水中に鉄(II)イオンの状態で溶出し、電極上或いは被処理水中で酸化された鉄(III)イオンの一部は、この場合にカソードを構成する電極10側において、再度電子が供給され、鉄(II)イオンに還元されて、硝酸を還元したり、また酸素によって酸化されたりする。
【0055】
尚、鉄(II)イオンを含有した被処理水を電解することにより、被処理水中に含有される硝酸イオンをアンモニウムイオンにまで還元処理する技術については、既に、1999年3月16日から3月18日に渡って開催された第33回日本水環境学会において配布された日本水環境学会年会講演集の「電気化学反応を用いた無機窒素化合物処理技術の開発」において開示されている。
【0056】
ここで、図3に示される実験結果は、アノードとなる電極10に白金電極を、カソードとなる電極11を鉄を使用し、被処理水中の硝酸態窒素濃度及びアンモニア態窒素濃度を示している。この実験では上記図2において有機物分解処理された有機性廃水を、始め電極10、11間に0.5Aを3.75時間流し、定電流電解を行った。その後、両電極10、11間に1.0Aを6.25時間流し、定電流電解を行った。引き続き、両電極10、11への通電時間の10%は、電極11をアノード、電極10をカソードとし、残りの通電時間は、電極10をアノード、電極11をカソードとして、1.0Aを0.5時間流し、定電流電解を行った。更に、同条件にて、両電極10、11間に1.5Aを0.5時間流し、定電流電解を行った。更に、また、同条件にて、両電極10、11間に2.0Aを1.5時間流し、定電流電解を行った。これにより、電解開始から10時間までは、上記窒素処理ステップのみを実行し、電解開始から10時間以降は、窒素処理ステップを90%、リン処理ステップを10%の割合で実行している。尚、電解終了後、被処理水中には、適当量の次亜塩素酸ソーダを添加した。
【0057】
図3中における黒丸は硝酸態窒素濃度、白丸はアンモニア態窒素濃度を測定した結果を示している。この図によると、窒素処理ステップのみを行っている場合において、有機物分解処理された後の有機性廃水中に含有された硝酸態窒素濃度は、始め220mg/lであったが、電解を行うことにより、徐々に減少し、120mg/lにまで処理された。これに対し、始め有機性廃水中にはほぼ存在していなかったアンモニア態窒素濃度は硝酸態窒素濃度の減少に伴い、徐々に上昇し、40mg/lを上回る程度にまで生成される。
【0058】
その後、窒素処理ステップとリン処理ステップを交互に実行されることにより、硝酸態窒素濃度は急激に減少し、有機性廃水中にほぼ存在しない程度にまで処理される。また、一旦は増加したアンモニア態窒素濃度も、硝酸態窒素濃度が減少した後、有機性廃水中にほぼ存在しない程度にまで処理されていることが分かる。
【0059】
これにより、有機物分解処理ステップにおいて処理された後の有機性廃水は、窒素処理ステップにおいて、効率的に硝酸態窒素及びアンモニア態窒素の処理が行われることが分かる。また、リン処理ステップによって効率的に有機性排水中のリン化合物が処理されることが分かる。
【0060】
尚、上記実施例において窒素処理ステップのみを実行する場合には、電極11をステンレスで構成してもよい。この場合ステンレスとしてはオーステナイト系鋼種(SUS304)、オーステナイト・フェライト系鋼種(SUS329J1)、フェライト系鋼種(SUS444)、マルテンサイト系鋼種(SUS410)或いは析出硬化系鋼種(SUS631)などがある。係るステンレスを使用した場合にも前述した窒素化合物処理作用を期待できる。特に、この場合には電極に生じる錆を予防し、耐久性を向上させることが可能となる。
【0061】
以上の実施例により、有機性廃水は、上述の如きCOD又はBOD低減処理装置としての有機物分解処理装置2及び窒素及びリン処理装置3によりそれぞれ電気化学的処理を行うことにより、効果的に処理することができることが分かる。これにより、従来の生物的処理に較べて、迅速、且つ、効率的に有機性廃水を窒素化合物が処理された廃水にまで処理することができるようになり、有機性廃水の処理能力が向上される。
【0062】
また、生物的処理では、分解が困難な硝酸態窒素やアンモニア態窒素等も窒素処理ステップにて処理することができ、排水中に窒素化合物やリン化合物が殆ど存在していない環境に適した状態で有機性廃水を排水することができるようになる。
【0063】
(2)第2の実施例
次に、もう一つの本発明の実施例について図4を参照して説明する。図4は本発明の第2の実施例の有機性廃水の処理方法を実現するための処理システム1の概要を示す説明図である。尚、図4において図1と同一符号は同一若しくは同様の作用を奏するものとする。
【0064】
この実施例における処理システム1は、上記第1の実施例と同様の有機物分解処理装置2及び窒素及びリン処理装置3にて構成されており、この有機物分解処理装置2の前段には、有機物分解処理装置2と共にCOD又はBOD低減処理手段を構成する生物的処理槽12が設けられている。
【0065】
この実施例における生物的処理槽12は、図示しない好気槽を備えており、この好気槽内には、有機物を有機低分子、硝酸態窒素及びアンモニア態窒素に変換するための脱窒素細菌が保有されている。
【0066】
そのため、上記実施例の有機物分解処理装置2の前段として、当該生物的処理槽12にて、有機性廃水に含有される有機物(有機高分子)を一旦、有機低分子、硝酸態窒素及びアンモニア態窒素に分解することができるため、有機物分解処理装置2における有機物分解処理ステップの処理効率をより一層向上させることができるようになる。
【0067】
これにより、上記実施例に加えて、より一層効率的な有機性廃水の処理を実現することができるようになる。
【0068】
尚、上記各実施例において、有機性廃水(被処理水)中に含有されるハロゲン化物イオンは、塩化物イオンであり、これにより次亜塩素酸が生成されているが、これ以外に、フッ化物イオンや臭化物イオンなどにより、他の次亜ハロゲン酸が生成されても同様の効果を奏するものとする。
【0069】
【発明の効果】
以上詳述した如く本発明によれば、有機性廃水中の窒素化合物を処理する有機性廃水の処理方法において、有機性廃水中の有機物を処理するCOD又はBOD低減処理ステップと、有機性廃水中に第1及び第2の電極を少なくとも一部浸漬し、COD又はBOD低減処理ステップ終了後、電気化学的手法により有機性廃水中の窒素化合物を処理する窒素処理ステップを含むので、一旦、COD又はBOD低減処理ステップにて有機性廃水中に含有される有機物の高CODを低減させた後、窒素処理ステップにて有機性廃水中に含有される窒素化合物を処理することができるようになる。
【0070】
これにより、従来の生物的処理に較べて、迅速、且つ、効率的に有機性廃水を窒素化合物が処理された排水にまで処理することができるようになり、有機性廃水の処理能力が向上される。
【0071】
また、生物的処理では、条件次第では分解が困難となる硝酸態窒素やアンモニア態窒素なども窒素処理ステップにて処理することができ、環境に適した状態で有機性廃水を排水することができるようになる。
【0072】
そして、窒素処理ステップは、アノードを構成する第1の電極を次亜ハロゲン酸、又は、オゾン、若しくは、活性酸素を発生させることが可能な導電体とすると共に、カソードを構成する第2の電極の材料を、鉄を含む導電体とするので、カソードを構成する第2の電極において有機性廃水中の硝酸態窒素の亜硝酸態窒素及びアンモニアへの還元反応が促 進され、還元反応に要する時間を短縮し、且つ、低濃度の硝酸イオンも処理することができるようになる。
【0073】
また、カソードを構成する第2の電極において生じるアンモニアは、アノードを構成する第1の電極で生じる次亜ハロゲン酸としての次亜塩素酸等の物質と脱窒反応をすることになるので、相乗効果によって硝酸態窒素、アンモニア態窒素及び窒素化合物などの窒素成分を効果的に除去することができるようになる。これによって、畜産業者等から排出される有機性廃水から効率的に窒素化合物を除去することができるようになり、窒素化合物の処理能力が向上される。
【0074】
更に、窒素処理ステップの終了後、第1の電極をカソードとし、第2の電極をアノードとして電気化学的手法により有機性廃水中のリン化合物を処理するリン処理ステップを含むので、アノードとなる第2の電極より有機性廃水中に鉄(II)イオンを溶出させ、有機性廃水中で鉄(III)イオンにまで酸化された当該鉄(III)イオンと有機性廃水中のリン化合物としてのリン酸イオンを化学的に反応させ、リン酸鉄として沈殿処理することができるようになる。
【0075】
これにより、有機性廃水中のリン化合物も処理することができるようになるものである。
【0076】
請求項2の発明によれば、請求項1の発明において、COD又はBOD低減処理ステップは、有機性廃水中に一対の電極を一部浸漬し、電気化学的手法により有機性廃水中の有機物を硝酸態窒素及びアンモニア態窒素へ処理する有機物分解処理ステップを含むので、有機性廃水中の有機物を効率的に硝酸態窒素及びアンモニア態窒素に変換することができるようになる。
【0077】
請求項3の発明によれば、請求項2の発明において、COD又はBOD低減処理ステップは、有機物分解処理ステップの前段に生物的処理ステップを含むので、一旦、生物的処理ステップにて有機性廃水中の有機高分子を有機低分子や硝酸態窒素及びアンモニア態窒素にまで分解した後、有機物分解処理ステップを行うことができるようになり、より一層、COD又はBOD低減処理ステップを効率的に行うことができるようになる。
【0078】
請求項4の発明によれば、請求項1の発明に加えて、COD又はBOD低減処理ステップは、生物的処理ステップを含むので、生物的処理ステップにて有機性廃水中の有機物を硝酸態窒素及びアンモニア態窒素にまで分解した後、窒素処理ステップを行うことができるようになり、より一層効率的に有機性廃水を窒素化合物が処理された排水にまで処理することができるようになる。
【0079】
請求項5の発明によれば、請求項1、請求項2、請求項3又は請求項4の発明に加えて、電気化学的手法により次亜ハロゲン酸、又は、オゾン、若しくは、活性酸素を発生させることが可能な導電体として貴金属又は当該貴金属を被覆した導電体を用いるので、容易に有機性廃水中に次亜ハロゲン酸、又は、オゾン、若しくは、活性酸素を発生させることが可能となり、効果的にアンモニア又はアンモニウムイオンの脱窒処理を行うことができるようになるものである。
【0080】
請求項6の発明によれば、請求項1、請求項2、請求項3又は請求項4の発明に加えて、電気化学的手法により次亜ハロゲン酸、又は、オゾン、若しくは、活性酸素を発生させることが可能な導電体として炭素系導電体又は当該炭素系導電体を被覆した導電体を用いるので、容易に有機性廃水中に次亜ハロゲン酸、又は、オゾン、若しくは、活性酸素を発生させることが可能となり、効果的にアンモニア又はアンモニウムイオンの脱窒処理を行うことができるようになるものである。
【0081】
また、この炭素系導電体を使用することにより、低コストにて導電体を構成することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の有機性廃水の処理方法を実現するための処理システムの第1の実施例の概要を示す説明図である。
【図2】 図1の実施例において処理される硝酸態窒素及びCODの濃度変化を示す図である。
【図3】 図1の実施例において処理される硝酸態窒素及びアンモニア態窒素の濃度変化を示す図である。
【図4】 本発明の有機性廃水の処理方法を実現するための処理システムの第2の実施例の概要を示す説明図である。
【符号の説明】
1 処理システム
2 有機物分解処理装置
3 窒素及びリン処理装置
4 処理室
5 有機物分解処理槽
6、7、10、11 電極
8 処理室
9 窒素及びリン処理槽
12 生物的処理槽
Claims (6)
- 有機性廃水中の窒素化合物を処理する有機性廃水の処理方法であって、
前記有機性廃水中の有機物を処理するCOD又はBOD低減処理ステップと、
前記有機性廃水中に第1及び第2の電極を少なくとも一部浸漬し、前記COD又はBOD低減処理ステップ終了後、アノードを構成する前記第1の電極を次亜ハロゲン酸、又は、オゾン、若しくは、活性酸素を発生させることが可能な導電体とすると共に、カソードを構成する前記第2の電極の材料を、鉄を含む導電体として電気化学的手法により前記有機性廃水中の窒素化合物を処理する窒素処理ステップと、
該窒素処理ステップの終了後、前記第1の電極をカソードとし、前記第2の電極をアノードとして電気化学的手法により前記有機性廃水中のリン化合物を処理するリン処理ステップを含むことを特徴とする有機性廃水の処理方法。 - 前記COD又はBOD低減処理ステップは、前記有機性廃水中に一対の電極を一部浸漬し、電気化学的手法により前記有機性廃水中の有機物を硝酸態窒素及びアンモニア態窒素へ処理する有機物分解処理ステップを含むことを特徴とする請求項1の有機性廃水の処理方法。
- 前記COD又はBOD低減処理ステップは、前記有機物分解処理ステップの前段に生物的処理ステップを含むことを特徴とする請求項2の有機性廃水の処理方法。
- 前記COD又はBOD低減処理ステップは、生物的処理ステップを含むことを特徴とする請求項1の有機性廃水の処理方法。
- 前記電気化学的手法により次亜ハロゲン酸、又は、オゾン、若しくは、活性酸素を発生させることが可能な導電体として貴金属又は当該貴金属を被覆した導電体を用いることを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3又は請求項4の有機性廃水の処理方法。
- 前記電気化学的手法により次亜ハロゲン酸、又は、オゾン、若しくは、活性酸素を発生させることが可能な導電体として炭素系導電体又は当該炭素系導電体を被覆した導電体を用いることを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3又は請求項4の有機性廃水の処理方法。
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