JP4036543B2 - 繊維処理用浴中品質向上剤 - Google Patents
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Description
【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、合成繊維類の精練、リラックス、染色などの浴中処理の際に使用する繊維処理用浴中品質向上剤に関する。さらに詳しくは、本発明は、合成繊維類の精練、リラックス、染色などの浴中処理の際に使用することにより、脱気性、浸透性、浴中柔軟性、平滑性、消泡性などの優れた諸性能を発揮し、高密度繊維素材の均一な染色を行い、あるいは合成繊維類の処理の際に生じる損傷、スレ、アタリ、シワなどの発生を布の走行性を安定化することにより防止することのできる繊維処理用浴中品質向上剤に関する。
【０００２】
【従来の技術】
従来、合成繊維類の精練、リラックス、染色などの浴中処理を行う際には、繊維の損傷、スレ、アタリ、シワなどの発生を抑制するために、多価アルコール脂肪酸エステル、ラノリン誘導体、高級アルコールの硫酸エステルなどを主成分とする浴中柔軟剤や、シリコーンあるいはリン酸エステル型陰イオン界面活性剤などを主成分とする消泡剤が用いられている。
【０００３】
しかし、前者の浴中柔軟剤では繊維類の損傷はかなり抑制されるものの、繊維類同士あるいは繊維類と金属との平滑性に乏しく、染色機内で布の並びが無秩序となり、滑らかな布の走行が得られず、スレ、アタリ、シワなどの発生を防ぐことはできない。また、後者の消泡剤では起泡性は低くなり、泡が原因となる精練斑や染色斑の発生は抑制できるものの、精練液や染色液の繊維類への浸透性がないため染色機内で布が袋状に広がり、安定な走行が得られず、スレ、アタリ、シワなどの発生を防ぐことはできない。特に、シリコーン系消泡剤の場合には、シリコーンを原因とするスカムが発生し易く、精練斑や染色斑のトラブルとなることが多い。さらに、従来の浴中柔軟剤や消泡剤を高密度繊維素材の染色の際に用いた場合には、染色液を繊維内部に浸透促進するような効果はなく、表面染着や染色表面のイラツキ等のトラブルを解消することはできない。また、染色液を繊維内部へ浸透させることを目的として使用される従来の浸透剤では、起泡性が高くなり、泡を原因とするトラブルが発生し、スレ、アタリ、シワなどの発生を防ぐことはできない。
【０００４】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、精練液や染色液が合成繊維類への浸透性に乏しいことが原因となり、加工機内で布が袋状に広がり、安定な走行が得られなくなるようなトラブルの発生を防止して、脱気性、浸透性に優れ、さらには合成繊維類の精練、リラックス、染色などの浴中処理の際に生ずる繊維類の損傷、スレ、アタリ、シワなどの発生を防止し、加工機内での泡立ちを抑え、浴中柔軟性、平滑性、消泡性に優れた繊維処理用浴中品質向上剤を提供することを目的とするものである。
【０００５】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、ポリオキシエチレン・ポリオキシアルキレンのブロック付加物またはランダム付加物が、脱気性、浸透性に優れ、かつ、浴中柔軟性、平滑性、消泡性を有することを見出し、この知見に基づき本発明を完成させた。
【０００６】
すなわち、本発明は、分子量が１０００〜６０００であり、分子中に占めるエチレンオキサイドに起因する単位の割合が５〜３０重量％である下記一般式（１）で表される化合物の少なくとも１種を含有する繊維処理用浴中品質向上剤を提供する。
HO[(C2H4O)a /(AO) b ](BO) d [(C2H4O)e /(AO) f ]H （１）
（式中、Ａは炭素数３または４のアルキレン基を表し、Ｂは炭素数１〜６のアルキレン基を表し、ａ、ｂ、ｄ、ｅ、ｆはそれぞれ０または正の整数を表し、[(C2H4O)a /(AO) b ] および[(C2H4O)e /(AO) f ] は、ブロック付加またはランダム付加を表す）
【０００７】
【発明の実施の形態】
本発明に用いられる前記一般式（１）で表される化合物は、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール等のグリコール類を原料に、苛性ソーダ、苛性カリ等のアルカリ触媒を用い、加圧下に１４０〜１７０℃にて所定量のエチレンオキサイド、プロピレンオキサイドまたはブチレンオキサイドを付加することにより容易に合成することができる。このときの付加方法は、ブロック付加、ランダム付加のいずれでもよい。
【０００８】
本発明に用いられる前記一般式（１）で表される化合物の、分子中に占めるエチレンオキサイドに起因する単位の割合は５〜３０重量％であり、この割合が５重量％未満では浸透性が得られず、３０重量％を超えると消泡性が低下する。なお、ポリエチレングリコールを原料として用いた場合には、この量も分子中に占めるエチレンオキサイドに起因する単位の割合に含める。
【０００９】
本発明に用いられる前記一般式（１）で表される化合物の分子量は１０００〜６０００であり、分子量が１０００未満では浴中柔軟性、平滑性が得られ難くなり、６０００を超えると浸透性が得られ難くなる。
本発明の繊維処理用浴中品質向上剤には、従来より公知の柔軟剤成分、平滑剤成分、消泡剤成分、脱気剤成分、浸透剤成分、均染剤成分、分散剤成分などの界面活性剤、溶剤、キレート剤などを併用してもよい。
【００１０】
本発明に従って前記一般式（１）で表される化合物の少なくとも１種を含む繊維処理用浴中品質向上剤を使用することにより、高密度繊維素材の染色の際に染色液の浸透不足に起因する表面染着や染色表面のイラツキ等のトラブルを解消でき、かつ、精練液や染色液が合成繊維類への浸透性が不足することによって染色機内で布が袋状に広がり、安定な走行が得られない等のトラブルを解消することができる。本発明の繊維処理用浴中品質向上剤は、さらに、従来からの使用目的であった合成繊維類の精練、リラックス、染色などの浴中処理の際に生じる合成繊維類の損傷、スレ、アタリ、シワなどの発生を防止し、染色機内での泡立ちも抑えることができる。
【００１１】
本発明の繊維処理用浴中品質向上剤は、ポリエステル、ポリアミド、ポリアクリルニトリル等の合成繊維類およびこれらの合成繊維類と他の天然、再生、半合成もしくは合成繊維類との混紡、交編織物等からなる糸、編織物、不織布等の精練、リラックス、染色などの加工時に使用することができる。
本発明の繊維処理用浴中品質向上剤は、精練、リラックス、染色の処理浴中に、不揮発分として通常０．０１〜５ｇ／リットル、好ましくは０．０５〜２ｇ／リットルの量で添加して用いるのがよい。
【００１２】
【実施例】
次に、本発明を実施例によりさらに説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
実施例１
高圧反応装置に分子量２０００のポリプロピレングリコール２０００ｇ（１モル）と苛性カリ８ｇを仕込み、１６０℃まで加熱昇温し、エチレンオキサイド７０４ｇ（１６モル）を１２０分かけて加えた後、６０分間熟成反応させた。これにより、ポリプロピレングリコールのエチレンオキサイド１６モルのブロック付加体を得た。
【００１３】
実施例２
高圧反応装置に分子量４００のポリエチレングリコール４００ｇ（１モル）と苛性カリ８ｇを仕込み、１６０℃まで加熱昇温し、プロピレンオキサイド２３２０ｇ（４０モル）を３００分かけて加えた後、６０分間熟成反応させて、ポリエチレングリコールのプロピレンオキサイド４０モルのブロック付加体を得た。
【００１４】
実施例３
高圧反応装置に分子量３０００のポリプロピレングリコール３０００ｇ（１モル）と苛性カリ１２ｇを仕込み、１６０℃まで加熱昇温し、エチレンオキサイド４４０ｇ（１０モル）とプロピレンオキサイド５８０ｇ（１０モル）を１５０分かけて加えた後、６０分間熟成反応させて、ポリプロピレングリコールのエチレンオキサイド１０モル・プロピレンオキサイド１０モルのランダム付加体を得た。
【００１５】
実施例４
高圧反応装置に分子量２０００のポリプロピレングリコール２０００ｇ（１モル）と苛性カリ９ｇを仕込み、１６０℃まで加熱昇温し、エチレンオキサイド８８０ｇ（２０モル）を１２０分かけて加えた後、６０分間熟成反応させた。さらに、同温度で、プロピレンオキサイド２３２ｇ（４モル）を９０分かけて加えた後、３０分間熟成反応させて、ポリプロピレングリコールのエチレンオキサイド２０モル・プロピレンオキサイド４モルのブロック付加体を得た。
【００１６】
実施例５
高圧反応装置に分子量４００のポリエチレングリコール４００ｇ（１モル）と苛性カリ６ｇを仕込み、１６０℃まで加熱昇温し、プロピレンオキサイド９２８ｇ（１６モル）を１５０分かけて加えた後、６０分間熟成反応させた。さらに、同温度で、エチレンオキサイド８８ｇ（２モル）とブチレンオキサイド５７６ｇ（８モル）を１５０分かけて加えた後、６０分間熟成反応させて、ポリエチレングリコールのプロオキサイド１６モルブロック付加物のエチレンオキサイド２モル・ブチレンオキサイド８モルのランダム付加体を得た。
【００１７】
実施例６
高圧反応装置にブチレングリコール９０ｇ（１モル）と苛性カリ３ｇを仕込み、１６０℃まで加熱昇温し、エチレンオキサイド２６４ｇ（６モル）とプロピレンオキサイド８１２ｇ（１４モル）を１８０分かけて加えた後、６０分間熟成反応させて、ブチレングリコールのエチレンオキサイド６モル・プロピレンオキサイド１４モルのランダム付加体を得た。
【００１８】
実施例７
高圧反応装置にヘキサメチレングリコール１１８ｇ（１モル）と苛性カリ４ｇを仕込み、１６０℃まで加熱昇温し、プロピレンオキサイド９２８ｇ（１６モル）を１８０分かけて加えた後、６０分間熟成反応させた。さらに同温度で、エチレンオキサイド１７６ｇ（４モル）を９０分かけて加えた後、３０分間熟成反応させて、ヘキサメチレングリコールのプロピレンオキサイド１６モル・エチレンオキサイド４モルのブロック付加体を得た。
【００１９】
比較例１
ラウリルアルコールリン酸エステルナトリウム塩の２０％水溶液（浴中柔軟剤）。
比較例２
ラウリルアルコール硫酸エステルナトリウム塩の２０％水溶液（浴中柔軟剤）。
【００２０】
比較例３
シリコーンオイルの２０％エマルジョン液（消泡剤）。
性能評価
実施例１〜７および比較例１〜３を用いて、合成繊維の精練、リラックス、染色加工時の浴中品質向上剤としての性能評価を行なった。
【００２１】
１）精練、リラックス加工におけるシワ防止効果試験
下記条件での精練、リラックス加工におけるシワ防止効果を精練、リラックス布のシワの発生の程度により判定した。その結果を表１に記す。
試験布： ポリエステル織物（生機）
精練浴：
サンモールＷＸ−２４（日華化学（株）製精練剤） ２．０ｇ／リットル
ネオクリスタル１５０（日華化学（株）製キレート剤）０．５ｇ／リットル
浴中品質向上剤（１００％換算で） ０．５ｇ／リットル
苛性ソーダ １．０ｇ／リットル
浴比： １：１０
精練条件： ２℃／分で昇温後、１２０℃で２０分保持した。
【００２２】
【００２３】
【表１】
【００２４】
２）染色加工におけるシワ防止効果および走行性比較試験
下記条件での染色加工におけるシワ防止効果を染色布のシワの発生の程度により判定した。また、染色加工中の染色機内の布の走行性を観察することにより、浴中柔軟性、平滑性を比較した。その結果を表２に記す。
試験布：ポリエステル織物（精練上がり布）
染色浴：
染料（C.I. Disperse Orange 30 ） ０．５％o.w.f.
染料（C.I. Disperse Red 54） ０．５％o.w.f.
染料（C.I. Disperse Blue 73 ） ０．５％o.w.f.
ニッカサンソルトRM-340 １．０ｇ／リットル
（日華化学（株）製分散均染剤）
浴中品質向上剤（１００％換算で） ０．５ｇ／リットル
９０％酢酸 ０．３ｇ／リットル
浴比： １：１０
染色条件： ２℃／分で昇温後、１３０℃で３０分保持した。
【００２５】
【００２６】
【表２】
【００２７】
３）高密度繊維素材における染色性試験
下記条件での高密度繊維素材の染色における染色液の浸透性を、染色布の表面のイラツキの有無および繊維内部の染色の程度により判定した。その結果を表３に記す。
試験布：ポリエステル高密度織物（精練上がり布）
染色浴：
染料（C.I. Disperse Orange 30 ） ０．５％o.w.f.
染料（C.I. Disperse Red 54） ０．５％o.w.f.
染料（C.I. Disperse Blue 73 ） ０．５％o.w.f.
ニッカサンソルトRM-340 ０．５ｇ／リットル
（日華化学（株）製分散均染剤）
浴中品質向上剤（１００％換算で） ０．５ｇ／リットル
９０％酢酸 ０．３ｇ／リットル
浴比： １：１０
染色条件： ２℃／分で昇温後、１３０℃で３０分保持した。
【００２８】
【００２９】
【表３】
【００３０】
４）染色における染め斑防止性および消泡性比較試験
下記条件での染色における染め斑防止性を染色布の斑の発生の程度により判定した。また、染色加工中の染色機内の泡の高さを観察することにより、消泡性を比較した。その結果を表４に記す。
試験布：ナイロン織物精練上がり布
染色浴：
染料（C.I. Acid Yellow 127） ０．５％o.w.f.
染料（C.I. Acid Red 114 ） ０．５％o.w.f.
染料（C.I. Acid Blue 138） ０．５％o.w.f.
ニューボンTS-400（日華化学（株）製均染剤） ２．０ｇ／リットル
浴中品質向上剤（１００％換算で） ０．３ｇ／リットル
９０％酢酸 １．０ｇ／リットル
酢酸アンモニウム ３．０ｇ／リットル
浴比： １：１０
精練条件： ２℃／分で昇温後、９５℃で６０分保持した。
【００３１】
【００３２】
【表４】
【００３３】
【発明の効果】
本発明の繊維処理用浴中品質向上剤を用いれば、脱気性、浸透性、浴中柔軟性、平滑性、消泡性が優れているので、高密度繊維素材における染色時の染色液の浸透不足による表面のみへの染着や染色表面のイラツキ等のトラブルを解消し、かつ、精練液や染色液の合成繊維類への浸透性がないことが原因となって染色機内で布が袋状に広がり、安定な走行が得られない等のトラブルを解消することができる。また、同時に、浴中品質向上剤の従来からの使用目的であった、合成繊維類の精練、リラックス、染色などの浴中処理の際に生じる合成繊維類の損傷、スレ、アタリ、シワなどの発生を防止し、染色機内での泡立ちを抑えることができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、合成繊維類の精練、リラックス、染色などの浴中処理の際に使用する繊維処理用浴中品質向上剤に関する。さらに詳しくは、本発明は、合成繊維類の精練、リラックス、染色などの浴中処理の際に使用することにより、脱気性、浸透性、浴中柔軟性、平滑性、消泡性などの優れた諸性能を発揮し、高密度繊維素材の均一な染色を行い、あるいは合成繊維類の処理の際に生じる損傷、スレ、アタリ、シワなどの発生を布の走行性を安定化することにより防止することのできる繊維処理用浴中品質向上剤に関する。
【０００２】
【従来の技術】
従来、合成繊維類の精練、リラックス、染色などの浴中処理を行う際には、繊維の損傷、スレ、アタリ、シワなどの発生を抑制するために、多価アルコール脂肪酸エステル、ラノリン誘導体、高級アルコールの硫酸エステルなどを主成分とする浴中柔軟剤や、シリコーンあるいはリン酸エステル型陰イオン界面活性剤などを主成分とする消泡剤が用いられている。
【０００３】
しかし、前者の浴中柔軟剤では繊維類の損傷はかなり抑制されるものの、繊維類同士あるいは繊維類と金属との平滑性に乏しく、染色機内で布の並びが無秩序となり、滑らかな布の走行が得られず、スレ、アタリ、シワなどの発生を防ぐことはできない。また、後者の消泡剤では起泡性は低くなり、泡が原因となる精練斑や染色斑の発生は抑制できるものの、精練液や染色液の繊維類への浸透性がないため染色機内で布が袋状に広がり、安定な走行が得られず、スレ、アタリ、シワなどの発生を防ぐことはできない。特に、シリコーン系消泡剤の場合には、シリコーンを原因とするスカムが発生し易く、精練斑や染色斑のトラブルとなることが多い。さらに、従来の浴中柔軟剤や消泡剤を高密度繊維素材の染色の際に用いた場合には、染色液を繊維内部に浸透促進するような効果はなく、表面染着や染色表面のイラツキ等のトラブルを解消することはできない。また、染色液を繊維内部へ浸透させることを目的として使用される従来の浸透剤では、起泡性が高くなり、泡を原因とするトラブルが発生し、スレ、アタリ、シワなどの発生を防ぐことはできない。
【０００４】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、精練液や染色液が合成繊維類への浸透性に乏しいことが原因となり、加工機内で布が袋状に広がり、安定な走行が得られなくなるようなトラブルの発生を防止して、脱気性、浸透性に優れ、さらには合成繊維類の精練、リラックス、染色などの浴中処理の際に生ずる繊維類の損傷、スレ、アタリ、シワなどの発生を防止し、加工機内での泡立ちを抑え、浴中柔軟性、平滑性、消泡性に優れた繊維処理用浴中品質向上剤を提供することを目的とするものである。
【０００５】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、ポリオキシエチレン・ポリオキシアルキレンのブロック付加物またはランダム付加物が、脱気性、浸透性に優れ、かつ、浴中柔軟性、平滑性、消泡性を有することを見出し、この知見に基づき本発明を完成させた。
【０００６】
すなわち、本発明は、分子量が１０００〜６０００であり、分子中に占めるエチレンオキサイドに起因する単位の割合が５〜３０重量％である下記一般式（１）で表される化合物の少なくとも１種を含有する繊維処理用浴中品質向上剤を提供する。
HO[(C2H4O)a /(AO) b ](BO) d [(C2H4O)e /(AO) f ]H （１）
（式中、Ａは炭素数３または４のアルキレン基を表し、Ｂは炭素数１〜６のアルキレン基を表し、ａ、ｂ、ｄ、ｅ、ｆはそれぞれ０または正の整数を表し、[(C2H4O)a /(AO) b ] および[(C2H4O)e /(AO) f ] は、ブロック付加またはランダム付加を表す）
【０００７】
【発明の実施の形態】
本発明に用いられる前記一般式（１）で表される化合物は、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール等のグリコール類を原料に、苛性ソーダ、苛性カリ等のアルカリ触媒を用い、加圧下に１４０〜１７０℃にて所定量のエチレンオキサイド、プロピレンオキサイドまたはブチレンオキサイドを付加することにより容易に合成することができる。このときの付加方法は、ブロック付加、ランダム付加のいずれでもよい。
【０００８】
本発明に用いられる前記一般式（１）で表される化合物の、分子中に占めるエチレンオキサイドに起因する単位の割合は５〜３０重量％であり、この割合が５重量％未満では浸透性が得られず、３０重量％を超えると消泡性が低下する。なお、ポリエチレングリコールを原料として用いた場合には、この量も分子中に占めるエチレンオキサイドに起因する単位の割合に含める。
【０００９】
本発明に用いられる前記一般式（１）で表される化合物の分子量は１０００〜６０００であり、分子量が１０００未満では浴中柔軟性、平滑性が得られ難くなり、６０００を超えると浸透性が得られ難くなる。
本発明の繊維処理用浴中品質向上剤には、従来より公知の柔軟剤成分、平滑剤成分、消泡剤成分、脱気剤成分、浸透剤成分、均染剤成分、分散剤成分などの界面活性剤、溶剤、キレート剤などを併用してもよい。
【００１０】
本発明に従って前記一般式（１）で表される化合物の少なくとも１種を含む繊維処理用浴中品質向上剤を使用することにより、高密度繊維素材の染色の際に染色液の浸透不足に起因する表面染着や染色表面のイラツキ等のトラブルを解消でき、かつ、精練液や染色液が合成繊維類への浸透性が不足することによって染色機内で布が袋状に広がり、安定な走行が得られない等のトラブルを解消することができる。本発明の繊維処理用浴中品質向上剤は、さらに、従来からの使用目的であった合成繊維類の精練、リラックス、染色などの浴中処理の際に生じる合成繊維類の損傷、スレ、アタリ、シワなどの発生を防止し、染色機内での泡立ちも抑えることができる。
【００１１】
本発明の繊維処理用浴中品質向上剤は、ポリエステル、ポリアミド、ポリアクリルニトリル等の合成繊維類およびこれらの合成繊維類と他の天然、再生、半合成もしくは合成繊維類との混紡、交編織物等からなる糸、編織物、不織布等の精練、リラックス、染色などの加工時に使用することができる。
本発明の繊維処理用浴中品質向上剤は、精練、リラックス、染色の処理浴中に、不揮発分として通常０．０１〜５ｇ／リットル、好ましくは０．０５〜２ｇ／リットルの量で添加して用いるのがよい。
【００１２】
【実施例】
次に、本発明を実施例によりさらに説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
実施例１
高圧反応装置に分子量２０００のポリプロピレングリコール２０００ｇ（１モル）と苛性カリ８ｇを仕込み、１６０℃まで加熱昇温し、エチレンオキサイド７０４ｇ（１６モル）を１２０分かけて加えた後、６０分間熟成反応させた。これにより、ポリプロピレングリコールのエチレンオキサイド１６モルのブロック付加体を得た。
【００１３】
実施例２
高圧反応装置に分子量４００のポリエチレングリコール４００ｇ（１モル）と苛性カリ８ｇを仕込み、１６０℃まで加熱昇温し、プロピレンオキサイド２３２０ｇ（４０モル）を３００分かけて加えた後、６０分間熟成反応させて、ポリエチレングリコールのプロピレンオキサイド４０モルのブロック付加体を得た。
【００１４】
実施例３
高圧反応装置に分子量３０００のポリプロピレングリコール３０００ｇ（１モル）と苛性カリ１２ｇを仕込み、１６０℃まで加熱昇温し、エチレンオキサイド４４０ｇ（１０モル）とプロピレンオキサイド５８０ｇ（１０モル）を１５０分かけて加えた後、６０分間熟成反応させて、ポリプロピレングリコールのエチレンオキサイド１０モル・プロピレンオキサイド１０モルのランダム付加体を得た。
【００１５】
実施例４
高圧反応装置に分子量２０００のポリプロピレングリコール２０００ｇ（１モル）と苛性カリ９ｇを仕込み、１６０℃まで加熱昇温し、エチレンオキサイド８８０ｇ（２０モル）を１２０分かけて加えた後、６０分間熟成反応させた。さらに、同温度で、プロピレンオキサイド２３２ｇ（４モル）を９０分かけて加えた後、３０分間熟成反応させて、ポリプロピレングリコールのエチレンオキサイド２０モル・プロピレンオキサイド４モルのブロック付加体を得た。
【００１６】
実施例５
高圧反応装置に分子量４００のポリエチレングリコール４００ｇ（１モル）と苛性カリ６ｇを仕込み、１６０℃まで加熱昇温し、プロピレンオキサイド９２８ｇ（１６モル）を１５０分かけて加えた後、６０分間熟成反応させた。さらに、同温度で、エチレンオキサイド８８ｇ（２モル）とブチレンオキサイド５７６ｇ（８モル）を１５０分かけて加えた後、６０分間熟成反応させて、ポリエチレングリコールのプロオキサイド１６モルブロック付加物のエチレンオキサイド２モル・ブチレンオキサイド８モルのランダム付加体を得た。
【００１７】
実施例６
高圧反応装置にブチレングリコール９０ｇ（１モル）と苛性カリ３ｇを仕込み、１６０℃まで加熱昇温し、エチレンオキサイド２６４ｇ（６モル）とプロピレンオキサイド８１２ｇ（１４モル）を１８０分かけて加えた後、６０分間熟成反応させて、ブチレングリコールのエチレンオキサイド６モル・プロピレンオキサイド１４モルのランダム付加体を得た。
【００１８】
実施例７
高圧反応装置にヘキサメチレングリコール１１８ｇ（１モル）と苛性カリ４ｇを仕込み、１６０℃まで加熱昇温し、プロピレンオキサイド９２８ｇ（１６モル）を１８０分かけて加えた後、６０分間熟成反応させた。さらに同温度で、エチレンオキサイド１７６ｇ（４モル）を９０分かけて加えた後、３０分間熟成反応させて、ヘキサメチレングリコールのプロピレンオキサイド１６モル・エチレンオキサイド４モルのブロック付加体を得た。
【００１９】
比較例１
ラウリルアルコールリン酸エステルナトリウム塩の２０％水溶液（浴中柔軟剤）。
比較例２
ラウリルアルコール硫酸エステルナトリウム塩の２０％水溶液（浴中柔軟剤）。
【００２０】
比較例３
シリコーンオイルの２０％エマルジョン液（消泡剤）。
性能評価
実施例１〜７および比較例１〜３を用いて、合成繊維の精練、リラックス、染色加工時の浴中品質向上剤としての性能評価を行なった。
【００２１】
１）精練、リラックス加工におけるシワ防止効果試験
下記条件での精練、リラックス加工におけるシワ防止効果を精練、リラックス布のシワの発生の程度により判定した。その結果を表１に記す。
試験布： ポリエステル織物（生機）
精練浴：
サンモールＷＸ−２４（日華化学（株）製精練剤） ２．０ｇ／リットル
ネオクリスタル１５０（日華化学（株）製キレート剤）０．５ｇ／リットル
浴中品質向上剤（１００％換算で） ０．５ｇ／リットル
苛性ソーダ １．０ｇ／リットル
浴比： １：１０
精練条件： ２℃／分で昇温後、１２０℃で２０分保持した。
【００２２】
【表１】
２）染色加工におけるシワ防止効果および走行性比較試験
下記条件での染色加工におけるシワ防止効果を染色布のシワの発生の程度により判定した。また、染色加工中の染色機内の布の走行性を観察することにより、浴中柔軟性、平滑性を比較した。その結果を表２に記す。
試験布：ポリエステル織物（精練上がり布）
染色浴：
染料（C.I. Disperse Orange 30 ） ０．５％o.w.f.
染料（C.I. Disperse Red 54） ０．５％o.w.f.
染料（C.I. Disperse Blue 73 ） ０．５％o.w.f.
ニッカサンソルトRM-340 １．０ｇ／リットル
（日華化学（株）製分散均染剤）
浴中品質向上剤（１００％換算で） ０．５ｇ／リットル
９０％酢酸 ０．３ｇ／リットル
浴比： １：１０
染色条件： ２℃／分で昇温後、１３０℃で３０分保持した。
【００２５】
【表２】
３）高密度繊維素材における染色性試験
下記条件での高密度繊維素材の染色における染色液の浸透性を、染色布の表面のイラツキの有無および繊維内部の染色の程度により判定した。その結果を表３に記す。
試験布：ポリエステル高密度織物（精練上がり布）
染色浴：
染料（C.I. Disperse Orange 30 ） ０．５％o.w.f.
染料（C.I. Disperse Red 54） ０．５％o.w.f.
染料（C.I. Disperse Blue 73 ） ０．５％o.w.f.
ニッカサンソルトRM-340 ０．５ｇ／リットル
（日華化学（株）製分散均染剤）
浴中品質向上剤（１００％換算で） ０．５ｇ／リットル
９０％酢酸 ０．３ｇ／リットル
浴比： １：１０
染色条件： ２℃／分で昇温後、１３０℃で３０分保持した。
【００２８】
【表３】
４）染色における染め斑防止性および消泡性比較試験
下記条件での染色における染め斑防止性を染色布の斑の発生の程度により判定した。また、染色加工中の染色機内の泡の高さを観察することにより、消泡性を比較した。その結果を表４に記す。
試験布：ナイロン織物精練上がり布
染色浴：
染料（C.I. Acid Yellow 127） ０．５％o.w.f.
染料（C.I. Acid Red 114 ） ０．５％o.w.f.
染料（C.I. Acid Blue 138） ０．５％o.w.f.
ニューボンTS-400（日華化学（株）製均染剤） ２．０ｇ／リットル
浴中品質向上剤（１００％換算で） ０．３ｇ／リットル
９０％酢酸 １．０ｇ／リットル
酢酸アンモニウム ３．０ｇ／リットル
浴比： １：１０
精練条件： ２℃／分で昇温後、９５℃で６０分保持した。
【００３１】
【表４】
【発明の効果】
本発明の繊維処理用浴中品質向上剤を用いれば、脱気性、浸透性、浴中柔軟性、平滑性、消泡性が優れているので、高密度繊維素材における染色時の染色液の浸透不足による表面のみへの染着や染色表面のイラツキ等のトラブルを解消し、かつ、精練液や染色液の合成繊維類への浸透性がないことが原因となって染色機内で布が袋状に広がり、安定な走行が得られない等のトラブルを解消することができる。また、同時に、浴中品質向上剤の従来からの使用目的であった、合成繊維類の精練、リラックス、染色などの浴中処理の際に生じる合成繊維類の損傷、スレ、アタリ、シワなどの発生を防止し、染色機内での泡立ちを抑えることができる。
Claims (1)
- 分子量が１０００〜６０００であり、分子中に占めるエチレンオキサイドに起因する単位の割合が５〜３０重量％である下記一般式（１）で表される化合物の少なくとも１種を含有する繊維処理用浴中品質向上剤。
HO[(C2H4O)a /(AO) b ](BO) d [(C2H4O)e /(AO) f ]H （１）
（式中、Ａは炭素数３または４のアルキレン基を表し、Ｂは炭素数１〜６のアルキレン基を表し、ａ、ｂ、ｄ、ｅ、ｆはそれぞれ０または正の整数を表し、[(C2H4O)a /(AO) b ] および[(C2H4O)e /(AO) f ] は、ブロック付加またはランダム付加を表す）
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- 1998-09-22 JP JP26812598A patent/JP4036543B2/ja not_active Expired - Lifetime
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