JP4033803B2 - 中空繊維成形体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、中空繊維成形体及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決使用とする課題】
パルプモールド成形体の製造方法に関する従来技術としては、例えば、特公昭35−9669号公報に記載の技術が知られている。この技術は、抄造型内に抄造された開口部を有する繊維積層体内に、膨張収縮自在の膜を備えた中子を該開口部から挿入し、該膜内に流体を供給して該膜を拡張させて該抄造型の内面に該成形体を押圧しながら、該成形体の脱水を行うようにしたものである。
【0003】
ところで、このパルプモールド成形体の製造方法は、上方に向けて開口する開口部を有する中空容器の成形には適しているが、屈曲部やねじれ部を有する管状の中空繊維成形体の製造には適さない。
【0004】
一方、屈曲した中空繊維成形体の製造に関する従来技術として、特開昭52−128412号公報に記載の技術が知られている。この技術は、一組の割型が組み合わされて外部に通じる二以上の開口部を有するキャビティが形成される抄造型内に、該開口部を通して二つの中子を挿入し、く字状の成形体を抄造脱水するものである。
この技術では、キャビティの開口部を通して中子を出し入れするため、キャビティが2カ所以上の複数箇所で屈曲しているような複雑な形態の場合には、該キャビティ中に中子が挿入できない場合があった。また、この技術は、開口端部の内径が中間部の内径に比べて小さい中空繊維成形体や、ねじれ部を有する管状の中空繊維成形体の製造には適用困難である。
【0005】
複数の開口部を有する管状の中空繊維成形体の製造方法としては、特開2000−239998号公報に記載の技術が知られている。
この技術は、複数の割型で個々に抄造した繊維積層体を、これらの割型を組み合わせることによって一体化し、均一な肉厚の管状の成形体を製造するものであるが、繊維積層体がより強固に一体化された均一な肉厚の管状の中空繊維成形体の製造方法の開発が望まれていた。
【0006】
従って本発明の目的は、複雑な屈曲形態を含み且つ繊維積層体が強固に一体化され均一な肉厚を有する中空繊維成形体、及び該成形体の好適な製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、一組の割型が組み合わされて外部に通じる二以上の開口部を有するキャビティが形成される抄造型と、該キャビティ内に配設される膨張収縮自在且つ屈曲自在の中空の弾性体からなる中子とを用いた中空繊維成形体の製造方法から製造される中空繊維成形体であって、複数の繊維積層体が一体化されることにより形成され、二カ所以上の複数箇所に屈曲部又はねじれ部を有する中空繊維成形体であり、複数の前記繊維積層体の継ぎ目が塞がれており、二以上の開口部を有し、一の該開口部から少なくとも何れかの他の該開口部が見通せないように形成されている中空繊維成形体を提供することにより、前記目的を達成したものである。
【0008】
また、本発明は、一組の割型が組み合わされて外部に通じる二以上の開口部を有するキャビティが形成される抄造型と、該キャビティ内に配設される膨張収縮自在且つ屈曲自在の中空の弾性体からなる中子とを用いた中空繊維成形体の製造方法であって、前記割型を組み合わせる前に該割型を繊維スラリーに浸漬して前記キャビティの形成面に繊維積層体を抄造し、前記繊維積層体が抄造された前記割型を組み合わせる前に前記繊維スラリー内で何れかの該割型に抄造された該繊維積層体上に前記中子を配してから該割型を組み合わせ、抄造された前記各繊維積層体の表面に新たに繊維積層体を抄造した後に、前記中子を膨張させて前記抄造型内で中空繊維成形体を成形する中空繊維成形体の製造方法を提供することにより、前記目的を達成したものである。
また、本発明は、一組の割型が組み合わされて外部に通じる二以上の開口部を有するキャビティが形成される抄造型と、該抄造型と形状が異なるキャビティを有する乾燥型と、該抄造型のキャビティ内に配設される膨張収縮自在且つ屈曲自在の中空の弾性体からなる中子と、該乾燥型のキャビティ内に配設される膨張収縮自在且つ屈曲自在の中空の弾性体からなる中子とを用いた中空繊維成形体の製造方法であって、前記割型を組み合わせる前に該割型を繊維スラリーに浸漬して前記キャビティの形成面に繊維積層体を抄造し、前記繊維積層体が抄造された前記割型を組み合わせる前に前記繊維スラリー内で何れかの該割型に抄造された該繊維積層体上に前記中子を配してから該割型を組み合わせ、抄造された前記各繊維積層体の表面に新たに繊維積層体を抄造した後に、前記中子を膨張させて前記抄造型内で中空繊維成形体を成形し、しかる後前記乾燥型のキャビティ内に配設する前記中子で前記中空繊維成形体を押圧して該成形体に曲げやねじれを付与する中空繊維成形体の製造方法を提供することにより、前記目的を達成したものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき説明する。
【0011】
図1〜図3は、本発明の中空繊維成形体の製造方法を、管状の繊維成形体の製造に適用した第1実施形態を示すものである。これらの図において、符号1は中空繊維成形体(以下、単に成形体ともいう。)、10は繊維スラリー、Pは繊維スラリーのプールを示している。
【0012】
図2(b)に示すように、本実施形態の成形体の製造方法では、一対(一組)の割型21、22が組み合わされて外部に通じる開口部20a、20bを有し且つ屈曲部を有するキャビティ20が形成される抄造型2と、キャビティ20内に配される膨張収縮自在の中子3とが用いられる。
【0013】
なお、図には示していないが、本実施形態の製造方法においては、前記抄造型2の割型21、22を繊維スラリー10中に浸漬し、繊維スラリー10中から引き上げる上下動機構と、前記抄造型2を前記繊維スラリー中及び空中で開閉する型締め機構とを備える製造装置が用いられる。前記上下動機構は、油圧シリンダーで構成され、前記抄造型2の安定的な上下動を可能にする。前記型締め機構は、割型どうしを型開閉方向に平行に開閉でき且つ抄造型2が閉状態のときに所定の型締め力が作用するように、油圧シリンダー機構が採用され、抄造型2の繊維スラリー中での安定的開閉を可能とする。上下動機構、型締め機構は、油圧シリンダー機構の他、リンク機構、エアシリンダー機構、サーボ機構その他の駆動機構若しくはそれらの組み合わせを採用することもできる。
【0014】
前記上下動機構は、抄造型2をその長手方向軸の周りに回転させる回転軸と、該回転軸を回転させる駆動源と、該回転軸に所定角度おきに配設された抄造型の支持アームとで構成することもできる。この場合には、該アームのそれぞれの先端部に抄造型を構成する一組の割型を繊維スラリーの表面に対して水平方向に配設し、抄造型が回転軸の回転に伴って一周回する間に、割型の前記繊維スラリーへの浸漬、繊維積層体の抄造及び中空繊維成形体の脱水成形が実行できるようにすることができる。そして、繊維スラリー外で抄造型を開いて、脱水成形後の中空繊維成形体を、中子3とともに後述する移送手段で乾燥型に移行させる。
【0015】
各割型21、22は、キャビティの形成面21a、22aと、キャビティの形成面21a、22aにおいて開口する流通路21b、22bと、キャビティの形成面21a、22aを覆う抄造ネット(図示せず)とをそれぞれ備えている。
【0016】
流通路21b、22bは、吸引ポンプ等の吸引手段(図示せず)に通じる管路(図示せず)に接続されている。なお、図には示していないが、キャビティの形成面21a、22aには流通路21b、22b間を結ぶように流通溝が形成されており、抄紙、脱水の際に繊維スラリー中の液体分が流通路21b、22bを通して外部に排出されるようになしてある。
【0017】
前記抄造ネットの材質は、特に限定されるものではないが、例えば、植物繊維、動物繊維等の天然素材、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、再生樹脂、半合成樹脂等の合成樹脂素材、ステンレス、銅、真鍮等の金属素材等が挙げられる。
【0018】
図2(b)に示すように、前記キャビティ20は外部に通じる二つの開口部20a、20bを有している。前記キャビティ20は前記開口部20aから開口部20bが見通せないように2箇所で屈曲している。
【0019】
前記中子3は、中空の弾性体からなる膨張収縮自在の中空押圧部30と、中空押圧部30の両端部に配された押圧部31とを備えており、キャビティ20の開口部20aと20bの間に配し得るように屈曲自在に設けられている。押圧部31は、中空押圧部30のみでは中空繊維成形体の端部の押圧が不充分と思われる場合や、中空押圧部30を抄造型2や乾燥型4に確実にセットする場合に用いられる。押圧部31内には、中空押圧部30内に通じる流体の流通路(図示せず)が配設されている。そして、この流通路にはコンプレッサー又は吸引ポンプに通じる管路(図示せず)が接続される。中空押圧部30内に後述する流体を該管路を通して供給したり中空押圧部30内から該流体を該管路を通して排出することによって、当該中空押圧部30が膨張伸縮する。
【0020】
押圧部31のテーパー付き先端部は、成形体1のテーパー付きの開口部1a、1bにはめ込まれる。当該先端部と抄造型2や乾燥型4(図3参照)との間で成形体1が挟持されるので、該開口部の隅部(角部)に至るまで成形体1が均一に脱水され又は乾燥される。
【0021】
押圧部31の先端は、抄造型2や後述する乾燥型4(図3参照)の開口部及び繊維成形体1の開口部よりも小さく形成されており、その長さは、成形体1の開口部の深さよりも長い。これにより、抄造型2若しくは乾燥型4又は成形体への押圧部31の出し入れがスムーズに行え且つ成形体1と押圧部31との離間が容易になる。さらに、図2(c)に示すように、成形の際の押圧力によって、抄造型や乾燥型の開口部及び成形体1の開口部の隅部に亘って密着し、成形体1に押圧力が確実に伝えられるようになっている。
【0022】
中子3の中空押圧部30の材質としては、弾性体であれば特に制限はないが、耐久性、耐熱性、成形性等の点から、天然ゴムの他、ウレタン、フッ素系ゴム、シリコーン系ゴム又はエラストマー等の合成ゴム等を用いることが好ましい。また、押圧部31の材質は、前記の弾性体の他に、例えば金属のような剛体でもよい。
【0023】
中子3の中空押圧部30内には、錘32(図2(c)参照)が配されているので、中子3を繊維積層体の上に配したときに中空押圧部30の浮力による浮きが防止される。一方、錘32は自重により繊維積層体10aを変形させるおそれがあり、また、中空押圧部30が繊維積層体10aに密着しすぎてその後の新たな繊維積層体の抄造に悪影響を及ぼすおそれもある。また、脱水成形後の搬送に支障を来すこともあるので、錘はこれらの悪影響が生じない程度の重さとするのが好ましい。錘32の形状に特に制限はないが、中空押圧部30内で部分的に偏ったりしない点、中空押圧部30内への配置や取り外しのし易さ等の点から、チェーンやひも状体等の形状の他、球形や楕円形等の複数の錘にひも等を通して該ひも等の両端をとめて該両端から該鉛が抜けないようにした形状等が好ましい。
【0024】
次に、図1(a)及び(b)に示すように、割型(一部の割型)21をそのキャビティ形成面(抄造面)を上に向けて繊維スラリー10に浸漬し、前記流通路21bを通した前記繊維スラリー10の吸引により固形分を前記抄造ネット上に堆積させて概ね半円弧状の繊維積層体10aを抄造する。
【0025】
前記繊維スラリーは、パルプ繊維と水のみからなるものが好ましい。また、前記繊維スラリーには、パルプ繊維と水の他にタルクやカオリナイト等の無機物、ガラス繊維やカーボン繊維等の無機繊維、ポリオレフィン等の熱可塑性合成樹脂の粉末又は繊維、非木材又は植物質繊維、多糖類等の成分を含有させもよい。これらの成分の配合量は、パルプ繊維と該成分の合計量に対して1〜70重量%、特に5〜50重量%が好ましい。また、繊維スラリーには、パルプ繊維の分散剤、成形助剤、着色料、着色助剤、防かび剤等を適宜添加することができ、さらに、サイズ剤、顔料、定着剤等を適宜添加することもできる。
【0026】
前記パルプ繊維には、エステル化パルプにアクリル繊維を混入した材料を混合することもできる。該エステル化パルプとしては、例えば、特願昭52−5200号に開示されているような、天然セルロース、その誘導体又はポリビニールアルコール等の合成繊維をエステル化して得られるリン酸系セルロース繊維又はリン酸系ポリビニルアルコール繊維等が挙げられる。
【0027】
また、前記繊維スラリーには、前記エステル化パルプを含むスラリーにアクリル繊維を混入して叩解した材料を混合することもできる。
【0028】
次に、図2(a)に示すように、前記中子3を前記繊維積層体10aに被せるように配する。その一方で、割型22を(残りの割型)を前記繊維スラリーに浸漬して別の半円弧状の繊維積層体10b(図2(b)参照)を抄造する。
【0029】
割型21を繊維スラリー10の水面直下に配した状態で繊維積層体10a上に前記中子3を配することが好ましい。ここで繊維スラリー10の水面直下に配した状態とは、割型21の接合面21cが繊維スラリー10の水面から100mm以内にある状態をいう。0〜50mm以内が好ましい。100mmを越えると、中空中子の浮力により、当該中子を所定の位置に配することが困難となる。繊維積層体がスラリーの外へ出ると吸引等により該繊維積層体から水分が抜けすぎて、次工程での各繊維積層体の接合不良の原因となる。
【0030】
繊維積層体10bは、割型21のキャビティ形成面22aを下向きにする以外は、割型21による繊維積層体10aの抄造と同様にして抄造される。なお、割型21と割型22がヒンジによって連結され、一方が回転して他方と組み合わされる場合には、割型21のキャビティ形成面22aは上向きでもよい。
【0031】
次に、図2(b)に示すように、前記各繊維積層体10a、10bが抄造された割型21、22を前記繊維スラリー中で組み合わせて抄造型2を形成する。前記繊維スラリー10中で前記抄造型2を形成した後に、前記流通路21b、22bを通して繊維スラリー10を再び吸引し、前記各繊維積層体10a、10b表面に新たに繊維積層体(図示せず)を抄造する。これにより、各繊維積層体10a、10bの継ぎ目が殆ど残らなくなり、得られる成形体1の内周面の表面性が良好になる。
【0032】
次に、抄造型2内で前記中子3を膨張させて前記各繊維成形体10a、10bが一体化された成形体1を脱水成形する。この脱水成形工程では、押圧部31で成形体1を両側から押圧し、成形体1の両端開口部1a、1bを脱水する一方で、中空押圧部30内に流体を供給し、当該中空押圧部30を膨張させて前記成形体1を抄造型2の内面(前記各割型のキャビティの形成面)に押圧する。その後抄造型2及び中子3を繊維スラリー10から引き上げ、更に成形体1を抄紙型2の内面に押圧しつつ脱水して成形体1を形成する。このように、繊維スラリー10中で中空押圧部30を膨張させることで、得られる成形体1の継ぎ目や段差をなくし、強度を高くすることができる。なお、抄造型2は、成形体1を押圧する前に繊維スラリー10から引き上げられてもよく、成形体1の押圧中に繊維スラリー10から引き上げられてもよい。
【0033】
中子3の中空押圧部30を膨張させるために用いる流体には、例えば空気(加圧空気)、熱風(加熱された加圧空気)、蒸気、過熱蒸気等の気体、油(加熱油)、その他の液が挙げられる。特に、空気、熱風、過熱蒸気を用いることが、操作性等の点から好ましい。
【0034】
中子3の中空押圧部30内に流体を供給する圧力は、脱水成形に供する繊維積層体に応じて適宜設定することができるが、0.01〜5MPa、特に0.1〜3MPaが好ましい。
【0035】
この脱水成形工程では、中空押圧部30及び押圧部31による押圧力で成形体1を抄造型2の内面に押圧する一方で、前記流通路21b、22bを通して成形体1の水分を吸引して除去する。このように、中子3による押圧に加えて、成形体1の水分が吸引除去されるので、成形体1が均一に押圧され、成形体1の肉厚が均一化されながらその脱水が速やかに行われる。
【0036】
脱水成形を終えたときの成形体1の含水率は、乾燥成形工程への移行時の成形体1の損傷防止、乾燥効率向上等の点から、30〜80%が好ましく、40〜70%がより好ましい。
【0037】
次に、前記割型21、22を開き、脱水成形された前記成形体1内に前記中子3を配したままこれらを前記抄造型2から離脱させる。そして、図3(a)に示すように、これらは乾燥成形工程に移行される。
【0038】
脱水成形から乾燥成形工程への移行には、押圧部31を把持して中子3を中空繊維成形体1と共に乾燥型4に移行させるハンドリングロボット等の移送手段(図示せず)が用いられる。
【0039】
図3(b)に示すように、一組の割型41、42が組み合わされて開口部40a、40bを有するキャビティ40が形成される乾燥型4内に中子3と中空繊維成形体1を配し、成形体1を脱水乾燥して成形する。
【0040】
乾燥成形に用いられる乾燥型4は割型41、42から成り、加熱ヒーター等の加熱手段(図示せず)を具備する。割型41、42は、抄造型2の割型21、22と同様のキャビティの形成面41a、42a、キャビティの形成面41a、42aにおいて開口する流通路41b、42bを備えている。
【0041】
次に、前記加熱手段により乾燥型4を加熱して所定温度に保持する。乾燥型4の温度は、成形体1の焦げ付き防止、乾燥効率の点から100〜250℃が好ましく、120〜220℃がより好ましい。なお、乾燥型4内に中空繊維成形体1が配されるよりも前に、乾燥型4は加熱されて所定温度に保持されるのが好ましい。
【0042】
そして、図3(c)に示すように、成形体1を押圧部31で両側から押圧し、成形体1の両端開口部1a、1bを乾燥する一方で、中空押圧部30内に流体を供給し、中空押圧部30を膨張させて成形体1を乾燥型4の内面(前記各割型のキャビティの形成面)に押圧して成形体1を内側から加圧しながら脱水乾燥する。
【0043】
中空押圧部30内に流体を供給する際の該流体の圧力は、乾燥に供する成形体に応じて適宜設定することができるが、0.01〜5MPa、特に0.1〜3MPaが好ましい。中空押圧部30を膨張させるために用いる流体は、脱水工程で使用される流体を用いることができる。
【0044】
乾燥成形工程では、脱水成形におけると同様に、中空押圧部30及び押圧部31による押圧力で成形体1を乾燥型4の内面に押圧する一方で、流通路41b、42bを通して成形体1の水分を吸引除去する。このように、中子3による押圧に加えて、成形体1の水分が吸引除去されるので、成形体1が均一に押圧され、成形体1の肉厚が均一化されながらその乾燥が速やかに行われる。
【0045】
成形体1が所定の含水率にまで乾燥されたら、前記流通路41b、42bを通した吸引を停止するとともに、中空押圧部30内の流体を排出して中空押圧部30を収縮させる。
【0046】
そして、割型41、42を開き、図3(d)に示すように、乾燥型4から成形体1を取り出し、中空押圧部30の一端部を押圧部31から取り外し、成形体1の中から中子3を引き出して脱水乾燥成形工程が終了する。
【0047】
このようにして成形された成形体1には、必要に応じて、トリミング処理、別部材の取付け、内外表面の樹脂層による被覆処理、印刷処理、撥水性処理等の各種処理を施すことができる。特に、乾燥成形後に、成形体1の表面にケイ酸ソーダ層又は/及びシリコーン樹脂層を設けることにより、成形体1の耐熱性と耐水性を向上させることができる。
【0048】
以上説明したように、本実施形態の成形体の製造方法によれば、割型21の表面に繊維積層体10aを積層した後に、当該割型21が繊維スラリー10の水面直下に配された状態で、中子3を繊維積層体10a上に配し、当該割型21と、繊維積層体10bを抄造した割型22を組み合わせて抄造型2を形成した後に、中子3で成形体1を脱水成形をする。従って、継ぎ目がなく、薄肉、軽量で肉厚の均一な強度の高い屈曲やねじれ形態を有する成形体を効率よく製造することができる。そして、得られた成形体1は高い吸音性を有しているため、その内部に固体、気体等が流れた場合に発生する音の消音効果にも優れている。
【0049】
また、本実施形態の中空繊維成形体の製造方法では、繊維スラリー中で割型を組み合わせて抄紙型2を形成した後に、割型を繊維スラリーから引き上げ、中子3で繊維積層体をその内側から押圧して成形体1を脱水成形する。従って、湿潤状態の各繊維積層体が脱水されながら一体化され、継ぎ目のない肉厚の均一な成形体1が形成される。
【0050】
また、割型21、22が組み合わされて抄造型2が形成されているため、複雑な屈曲やねじれ形態のキャビティ形状を形成することができ、種々の複雑な形状を有する中空繊維成形体を製造することができる。
【0051】
また、中空押圧部30の両側に押圧部31を有する中子を用い、押圧部31で成形体1のテーパー付きの開口部1a、1bを成形するようにしたので、該開口部の隅部も成形精度に優れる。
【0052】
また、脱水成形工程で用いた中子3をそのまま乾燥成形工程でも用いるので、脱水成形工程から乾燥成形工程への移行がスムーズで、成形体の生産効率が向上する。
【0053】
また、乾燥成形工程において、中子3で成形体1を内側から乾燥型4の内面に押圧しながら脱水乾燥させるため、成形体1を効率よく脱水乾燥することができる上、肉厚が均一でしかも薄肉で高い強度の成形体を製造することができる。
【0054】
図4は、本発明の中空繊維成形体を、屈曲部を有する管状成形体に適用した一実施形態を示したものである。図4において、符号1は、管状成形体(以下、単に成形体ともいう。)を示している。
【0055】
図4に示す成形体1は、二つの繊維積層体が一体化されて形成される。
成形体1は、二つの開口部1a、1bを有し、その間に屈曲部11を有している。成形体1の開口部1aから開口部1bは見通すことはできない。また、成形体1には、開口部1a、1bの保護のためのフランジ部1c、1dが形成されている。フランジ部1c、1dは、それぞれ外向きにカールし、成形体1が他の管状成形体等と接合される際に、該開口部の損傷が防止される。
【0056】
成形体1は、パルプ繊維のみからなるのが好ましい。成形体1は、パルプ繊維以外にタルクやカオリナイト等の無機物、ガラス繊維やカーボン繊維等の無機繊維、ポリオレフィン等の熱可塑性合成樹脂の粉末又は繊維、非木材又は植物質繊維、多糖類等の成分を含有していてもよい。これらの成分の配合量は、パルプ繊維及び該成分の合計量に対して1〜70重量%、特に5〜50重量%が好ましい。また、成形体1には、成形助剤、着色料、着色助剤、防かび剤、サイズ剤、顔料、定着剤等を適宜添加することができる。
【0057】
成形体1には、前述のエステル化パルプにアクリル繊維を混入した材料を混合することもできる。
【0058】
また、成形体1は、高耐熱性を及び高耐水性を付与する点からケイ酸ソーダ層又は/及びシリコン樹脂層を備えていることが好ましい。
【0059】
次に本発明の中空繊維成形体の製造装置の一実施形態を図面を参照しながら説明する。
図5(a)に示すように、本実施形態の製造装置100は、一組の割型21、22が組み合わされて屈曲するキャビティ20が形成される抄造型2と、図5(b)に示すように割型21、22で抄造された繊維積層体10a、10bを脱水して前記中空繊維成形体1を成形するための中子3とを備えている。
【0060】
割型21、22は、図5(a)に示すように、キャビティの形成面21a、22aと、形成面21a、22aにおいて開口する流通路21b、22bと、形成面21a、22aを覆う抄造ネット(液透過性材料、図示せず。)とをそれぞれ備えている。割型21、22は、接合面(21cのみ図示)がほぼ一平面上に形成されている。
【0061】
流通路21b、22bは、割型21、22内において一つの流通路(22dのみ図示)に集約されており、これらの流通路の開口部は、吸引ポンプ等の吸引手段(図示せず)に通じる管路(図示せず)に接続されている。なお、キャビティの形成面21a、22aには流通路21b、22b間を結ぶ流通溝(図示せず)が形成されており、抄紙、脱水の際に繊維スラリー中の液体が流通路21b、22bを通してスムーズに外部に排出される。
【0062】
前記キャビティ20は外部に通じる二つの開口部20a、20bを有している。キャビティ20は2箇所で屈曲しているので、前記開口部20aから開口部20bは見通すことはできない。
【0063】
前記中子3は、中空の弾性体からなるチューブ状の形態を有しており、膨張収縮自在であり、キャビティ2の二つの開口部20a、20b間に配し得るように屈曲自在である。
【0064】
中子3は両端部がそれぞれヘッド33に着脱自在に取り付けられている。各ヘッド33には、コンプレッサー又は吸引ポンプ等に通じる管路(図示せず)が接続されている。当該ヘッド33に中子3を取り付けた状態では、中子3の内部と該管路が連通する。そして、コンプレッサー又は吸引ポンプ等によって後述する流体を中子3の内部に供給したり該流体を中子3の内部から排出する。
【0065】
製造装置100は、後述する抄造型の上下動機構に連動して繊維スラリー中に浸漬され、前記中子3を割型21、22の一方又は両方のキャビティの形成面21c、22cに配設する中子配設機構を備えている。
この中子配設機構は、本実施形態では、図5(b)に示すように、片側の割型21におけるキャビティの形成面21cの屈曲形状に対応して屈曲した樋状のガイドカバー34と、割型21の位置に合わせて中子3をキャビティ形成面に配設できるようにこのガイドカバー34を割型21の開閉方向に移動させ、中子3の配設後はガイドカバー34を支障のない位置に移動させる駆動機構(図示せず)とを備えている。ガイドカバー34の内部には、中子3を吸着保持する吸着手段(例えば真空パッド)が備えられ、中子3は割型21の屈曲したキャビティの形成面の形状に一致する屈曲状態に保たれる。
駆動機構は、油圧又は空気圧シリンダー、その他の一般的な駆動手段及びリンク、ギヤ等の伝達機構によって構成される。
中子配設機構は、一組の割型に対して複数基配設することもできる。また一つの中子配設機構で複数の中子を配設することもできる。
【0066】
本実施形態の製造装置100は、図6(a)に示すように、前記中空繊維成形体1を乾燥する乾燥型4と、前記中子3を脱水成形された中空繊維成形体1とともに乾燥型4に移行する移行手段(図示せず)とを備えている。
【0067】
乾燥型4は、一対の割型41、42を備えている。割型41、42は、加熱ヒーター等の加熱手段41e、42eを具備する。乾燥型4の割型41、42は、抄造型2の割型21、22と同様のキャビティの形成面41a、42a、形成面41a、42aにおいて開口する流通路41b、42b、接合面41c、42c、流通路41b、42bを集約し外部に通じる複数の流通路(42dのみ図示)を有している。
【0068】
前記移行手段には、前記ヘッド33を把持して中空繊維成形体1を中子3と共に乾燥型4に移行させるハンドリングロボット等が用いられる。ハンドリングロボットには、成形体を乾燥型へ移行する際の成形体の損傷を防ぐ観点から成形体の外形形状に一致した形状の取り出し治具等を備えるのが好ましい。
【0069】
なお、図には示していないが、製造装置100は、前記抄造型2を繊維スラリー中に浸漬したり、該繊維スラリー中から引き上げたりする上下動機構と、前記抄造型2を前記繊維スラリー中及び空中で開閉する型締め機構(型開閉機構)を備えている。前記上下動機構は、油圧シリンダー機構で構成され、当該油圧シリンダー機構は、前記抄造型2を安定的に上下動させることができる。前記型締め機構には、割型どうしを型開閉方向に平行に開閉し且つ抄造型2が閉状態のときに所定の型締め力が作用するように、油圧シリンダー機構とリンク機構とを併用した構成が採用される。該型締め機構は、抄造型2を繊維スラリー中で安定的に開閉させることができる。上下動機構、型締め機構は、油圧シリンダー機構の他、エアシリンダー機構、サーボ機構その他の駆動機構を採用することもできる。
【0070】
前記上下動機構の構成と作用は、前述の説明と同様である。
【0071】
次に、本発明の中空繊維成形体の製造方法の第2実施形態を、前記製造装置100を用いた前記成形体1の製造方法に適用した実施形態に基づいて説明する。なお、第1実施形態の製造方法と共通する点についてはその記載を省略した。従って、特に説明のない点については、前記第1実施形態における説明が適宜適用される。
【0072】
図5(a)〜(d)は、前記成形体1の製造工程における抄造工程(第1の工程)の手順を模式的に示したものである。
【0073】
先ず、繊維スラリーのプール(図示せず)に割型21、22を浸漬して繊維スラリーを吸引し、図5(b)に示すように、前記抄造ネット上に繊維を堆積させて断面が概ね半円弧状の繊維積層体10a、10bを形成する。
【0074】
第2の工程では、繊維積層体10a,10bが形成された割型21、22を前記繊維スラリー中で組み合わせる一方、割型21、22を組み合わせることによって形成される前記キャビティ20内に前記中子3を配設する。
【0075】
中子3は、割型21、22を組み合わせる前に片側の割型21の繊維積層体10a上に配置される。
中子3の配置の際には、図5(b)に示すように、中子3をキャビティの形成面21aに対応して屈曲した形状の前記ガイドカバー34内に配設して繊維積層体10a上に配置する。中子3の配置後、ガイドカバー34は中子3から離間させられてキャビティから外部に取り出される。
【0076】
そして、図5(c)に示すように、割型21、22を接合面で組み合わせ、抄造型2を閉じる。抄造型2を閉じる際も繊維スラリーを吸引し、繊維積層体10a、10bの内側に別の繊維を堆積させる。このようにして得られる成形体は、継ぎ目や段差が無く、高強度となる。
【0077】
中子3をキャビティ内に配設した後、脱水工程(第3の工程)に移行する。脱水は、図5(c)の状態の抄造型2及び中子3を、繊維スラリーから引き上げて行うが、抄造型2及び中子3を該繊維スラリーから引き上げる前から行うこともできる。
この脱水工程では、中子3に流体を供給し、中子3を膨出させて前記繊維積層体10a、10bを抄造型2の内面に押圧した後に、抄造型2及び中子3を繊維スラリーから引き上げ、前述の中子3による押圧を継続させて、繊維積層体10a、10bを脱水して成形体1を形成する。このように、プール内の繊維スラリー中で中子3を膨出させることで、得られる成形体を、継ぎ目、段差の無い、強度の高いものとすることができる。
【0078】
中子3内に流体を供給する際の流体の圧力は、脱水に供する繊維積層体に応じて適宜設定することができるが、0.01〜5MPa、特に0.1〜3MPaが好ましい。
【0079】
脱水工程では、中子3での押圧を行う一方で、前記流通路21b、22b等を通して繊維積層体10a、10bの水分を吸引する。このように、押圧を行うことにより、形成される成形体1が均一に押圧され、肉厚が均一化されながら成形体1の脱水が速やかに行われる。
【0080】
成形体1が所定の含水率まで脱水されたら、前記流通路21b、22b等を通した吸引を停止するとともに、中子3内の流体を排出して中子3を収縮させる。そして、図5(d)に示すように、割型21、22を開いて湿潤状態の成形体1及び中子3を抄造型2から離間させる。
【0081】
脱水工程を終えたときの成形体1の含水率は、乾燥工程への移行時の成形体1の損傷防止、次の乾燥工程での乾燥効率等の点から、30〜70%が好ましく、40〜60%がより好ましい。
【0082】
脱水を終えた湿潤状態の成形体1及び中子3は、前記図示しない移行手段により、図6(a)に示すように、乾燥型4の割型41、42間に移動され、脱水乾燥工程(第4の工程)が開始される。
【0083】
まず、図6(b)に示すように、割型41、42を接合面において組み合わせ、乾燥型4のキャビティ内に成形体1及び中子3を配設する。
【0084】
次に、前記加熱手段45により乾燥型4を加熱して所定温度に保持する。
乾燥型4の温度は、成形体1の焦げ付き防止、乾燥効率の点から100〜250℃が好ましく、150〜220℃がより好ましい。
【0085】
中子3に流体を供給して中子3を膨出させ、成形体1を乾燥型4の内面に押圧して成形体1を脱水乾燥させる。
中子3内に流体を供給する際の流体の圧力は、乾燥に供する成形体に応じて適宜設定することができるが、0.01〜5MPa、特に0.1〜3MPaが好ましい。中子3の膨出には、脱水工程で使用された流体を用いることができる。
【0086】
乾燥工程では、中子3での押圧に加え、流通路41b、42b等を通して成形体1の水分を吸引する。これにより、成形体1が内部より均一に押圧され、肉厚が均一化されながらその乾燥が速やかに行われる。
【0087】
成形体1を所定の含水率まで乾燥できたら、前記流通路41b、42b等を通した吸引を停止するとともに、中子3内の流体を排出して中子3を収縮させる。
【0088】
所定時間経過後、図6(c)に示すように、割型41、42を開き、乾燥型4から成形体1を取り出す。さらに、中子3の一端部をヘッド33から取り外し、成形体1の中から中子3を引き出して脱水乾燥工程が終了する。なお、割型41、42を開く前に、中子3の一端部をヘッド33から取り外してもよい。
【0089】
乾燥工程を終えた後、所定曲率の断面形状を有するリング状の溝を有する型(図示せず)の該溝に、成形体1の開口部1a、1bの端部をそれぞれ押し当てて該端部を外向きにカールさせ、前記フランジ部1c、1dが形成される。
【0090】
成形体1には、必要に応じて、トリミング処理、別部材の取付け、内外表面の樹脂層による被覆処理、印刷処理、撥水性処理等の各種処理を施すことができる。特に成形体1の表面にケイ酸ソーダ層又は/及びシリコーン樹脂層を設けることにより、成形体の耐熱性や耐水性を向上させることができる。
【0091】
このようにして製造された本実施形態の成形体1は、二箇所で屈曲する複雑な屈曲形態を有し、継ぎ目がなく、薄肉、軽量で肉厚が均一で強度も高い。フランジ部1c、1dによって成形体1の端部が保護されているため、該端部の損傷を防止することができる。さらに、成形体1は高い吸音性を有しているため、その内部を流れる固体や気体等に起因する音の強さを低減する効果を有する。
【0092】
前記製造装置100を用いた本実施形態の中空繊維成形体の製造方法では、繊維スラリー中において割型21、22を組み合わせて抄紙型2を形成した後に、割型21、22を繊維スラリーから引き上げ、中子3で繊維積層体10a、10bを押圧して脱水成形するので、湿潤状態の繊維積層体10a、10bが脱水されながら一体化され、継ぎ目のない肉厚の均一な成形体1を形成することができる。
【0093】
また、中子3をキャビティ内に配設する際に、キャビティの形成面20の屈曲に一致した形状のガイドカバー34を用いるので、中子3をキャビティ20の形成面21aの屈曲形状に一致した形状に維持でき、繊維積層体10a上に中子3を配置した後に、割型21、22を閉じるので、屈曲の形態が複雑な場合でも確実に中子3をキャビティ内に配設することができる。
【0094】
また、抄造型2を割型21、22に分割しているため、複雑なキャビティ形状を形成することができ、種々の複雑な形状を有する中空繊維成形体を製造することができる。
【0095】
また、抄造工程で用いた中子3を成形体1内に入れたまま脱水乾燥工程に移行するので、抄造工程から脱水乾燥工程への移行が短時間でスムーズとなる。
また、脱水乾燥工程において、中子3で成形体1を乾燥型4の内面に押圧しながら乾燥させるため、成形体1を効率よく乾燥させることができる上、肉厚が均一でしかも薄肉で高い強度の成形体を製造することができる。
【0096】
本発明は、前記各実施形態に制限されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、適宜変更することができる。
【0097】
本発明は、前記第1、第2実施形態の製造方法のように、一対の概ね半円弧状の繊維積層体を抄造し、これらを接合して一体化して中空繊維成形体を脱水成形することが好ましいが、例えば、図7(a)に示すように、接合箇所の両側にフランジ部10c、10dを有する形状の一対の半円弧状の繊維積層体10a、10bを抄造し、図7(b)に示すように、これらを接合して一体化してフランジ部1cを有する中空繊維成形体1を脱水成形することもできる。
【0098】
また、成形する中空繊維成形体に取付フランジ部を成形したい場合には、図7(c)及び(d)に示すように、該取付フランジ部に対応するフランジ部10eを備えた繊維積層体10a、10bを抄造し、図7(e)及び(f)に示すように、各繊維積層体を接合して一体化して取付フランジ部1dを有する中空繊維成形体1を脱水成形することもできる。
【0099】
本発明は、前記第1、第2実施形態の製造方法のように、中子3で繊維積層体を抄造型2の内面に押圧するとともに、前記流通路21b、22b等を通して繊維積層体に含まれる水分を吸引して成形体を脱水成形することが好ましいが、脱水成形工程における脱水方法は、これに限定されない。例えば、中子の膨張による押圧脱水及び流通路を通した吸引脱水の後に、中子から流体を抜き、中子と繊維積層体表面との間の空隙に脱水用流体をブローさせるブロー脱水を施してもよい。また、複数の脱水方法を適宜組み合わせて行うこともできる。
【0100】
本発明は、前記第1、第2実施形態の製造方法のように、繊維積層体を脱水時に一体化させて成形体1を形成した後に、成形体1を乾燥型4内においてさらに内側から押圧しながら脱水乾燥させることが好ましいが、脱水工程を終えた後に、湿潤状態の成形体1と中子3とを分離し、成形体1のみをトンネル型の各種乾燥機で脱水乾燥することもできる。
【0101】
また、前記第1、第2実施形態の製造方法では、繊維積層体10a、10bを一体化して二つの開口部1a、1bを有する成形体1を形成するようにしたが、複数の繊維積層体を一体化して一端が開口し他端が閉じた成形体を形成した後に、他端を切断する等して二つの開口部を有する成形体とすることもできる。
【0102】
また、本発明は、前記第1、第2実施形態の製造方法のように、脱水成形された中空繊維成形体を前記移送手段によって乾燥型に移行することが好ましいが、割型への成形体1の吸引等を利用して抄造型及び乾燥型の割型間で、成形体を直接移行させることもできる。
例えば、先ず、抄造型の何れか一方の割型の流通路を通して成形体1を該割型に吸引させた状態で該割型と中子3とを併せて移動する。そして、該割型に対向させて乾燥型の割型を配置し、両方の割型を合体させた後に、乾燥型の割型の流通路を通して成形体1を吸引する一方で、抄造型の割型の流通路から圧縮空気を噴射して成形体1を該抄造型の割型から離間させる。その後、該抄造型の割型に代えて、対応する乾燥型の割型を配設し、乾燥型の両割型を合体させて成形体1及び中子3が共に乾燥型のキャビティ内に配設された状態にする。
この方法は、長尺の成形体や肉厚の薄い成形体の移行に特に好適である。
【0103】
また、前記第1、第2実施形態の製造方法では、二つの割型からなる抄造型、乾燥型を用いたが、製造する成形体の形状に応じて3つ以上の割型を組み合わせることによって所定形状のキャビティが形成される抄造型、乾燥型を用いることもできる。また、一対の繊維積層体を一体化して成形体を形成したが、3以上に分割された繊維積層体を一体化して成形体を形成することもできる。
【0104】
また、各割型の接合面は、前記第1、第2実施形態の製造方法のように面一とすることが好ましいが、ある特定の成形体の場合には、当該成形体の取り出しが容易に行えるように接合面を非面一(例えば曲面)とすることもできる。
【0105】
また、抄造型と乾燥型のキャビティの形状は、前記第1、第2実施形態の製造方法のように、ほぼ同一形状のものとすることが好ましいが、抄造型と乾燥型のキャビティを異なる形状とし、乾燥成形工程において中子3で乾燥型4の内面に成形体1を押圧することによって当該成形体1に曲げやねじれ等を付与することもできる。
【0106】
また、本発明の中空繊維成形体の製造方法は、前記第1、第2実施形態で述べたように、二つの開口部を有している中空繊維成形体の製造に特に好適であるが、三つ以上の開口部を有する中空繊維成形体の製造にも適用することができる。
【0107】
また、本発明において用いられる抄造型又は乾燥型のキャビティは、二次元的屈曲でもよく、三次元的屈曲でもよい。
【0108】
また、本発明は、前記第1、第2実施形態の製造方法のように、キャビティの形成面を覆う抄造ネットを備えた割型を用いることが好ましいが、前記抄造ネット以外に不織布その他の液透過性材料でキャビティの形成面を覆うこともできる。また、抄造型を多孔質性の材料からなる割型で構成し前記の液透過性材料を省略することもできる。
【0109】
また、前記第1、第2実施形態では、一つの中子を用いたが、得られる前記中空繊維成形体の形状に応じて、複数の中子を用いることもできる。
【0110】
本発明は、前記第2実施形態のように、繊維スラリー内において、ガイドカバー34を用いて中子3をキャビティ内に配設することが好ましいが、中子3を繊維スラリー外でキャビティ内に配設してもよい。
【0111】
また、前記第2実施形態では、乾燥工程後に開口端部に丸め加工を施してフランジ部を形成するようにしたが、抄造型を構成する割型のキャビティの形成面に予めフランジ部に対応する凹部を形成しておき、抄造時にフランジ部を形成することもできる。
また、フランジ部を抄造せずに、管状成形体の形成後に該成形体の端部にフランジ部材を取り付けることもできる。
【0112】
また、本発明は、屈曲部以外に、ねじれ部を有する中空繊維成形体、ねじれ部及び屈曲部を有する中空繊維成形体の製造にも適用することができる。
【0113】
また、本発明において製造する繊維成形体の断面形態は、屈曲部やねじれ部の形態に応じて適宜変更することができる。また、例えば、差込嵌合による連結が可能なように成形体の胴部と端部の口径を異なる大きさにしたり、成形体の端部にテーパ等を付与することもできる。
【0114】
本発明の中空繊維成形体の用途は、特に限定されるものではないが、例えば、小口径又は異型等の中空容器等の中空成形体に好ましく用いることができる。
【0115】
【発明の効果】
本発明によれば、2カ所以上で屈曲するような複雑な屈曲形態を含む種々の形態を有し、複数の繊維積層体が強固に一体化され均一な肉厚を有する中空繊維成形体、及び該成形体を好適に製造することができる中空繊維成形体の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1(a)及び(b)には、本発明の中空繊維成形体の製造方法を前記管状成形体の製造に適用した第1実施形態における抄造工程が模式的に示されている。図1(a)は一部の割型による抄造工程を示す部分断面図。図2(b)は図1(a)の平面図である。
【図2】図2(a)〜(c)は、前記第1実施形態における抄造・脱水工程の手順を模式的に示す部分断面図である。図2(a)は繊維成形体上に中子を配した状態を示す。図2(b)は一組の割型による抄造工程を示す。図2(c)は脱水成形工程を示す。
【図3】図3(a)〜(d)は、前記第1実施形態における製造工程の手順を模式的に示す部分断面図である。図3(a)は脱水成形工程から乾燥成形工程への移行を示す。図3(b)及び(c)は中子による乾燥成形工程を示す。図3(d)は乾燥型から取り出した繊維成形体及び中子を示す図である。
【図4】図4は、本発明の中空繊維成形体を二つの開口部を有する管状成形体に適用した一実施形態を模式的に示した斜視図である。
【図5】図5(a)〜(d)は、本発明の中空繊維成形体の製造方法を管状成形体の製造に適用した第2実施形態における抄造・脱水工程の手順を模式的に示す斜視図である。図5(a)は抄造工程を示す。図5(b)は中子を配設する前の状態を示す。図5(c)は脱水工程を示す。図5(d)は割型を分離した状態を示す。
【図6】図6(a)〜(c)は、前記第2実施形態における乾燥工程の手順を模式的に示す。図6(a)は乾燥型内に成形体及び中子を配設する前の状態を示す。図6(b)は成形体及び中子を乾燥型内に配設した状態を示す。図6(c)は成形体と中子とを分離した状態を示す。
【図7】図7(a)〜(f)では、本発明における、他の形態の繊維積層体による中空繊維成形体の製造工程が模式的に示されている。図7(a)及び(b)は接合フランジ部を有する中空繊維成形体の製造工程を示す。図7(c)及び(d)並びに図7(e)及び(f)は取付フランジ部を有する中空繊維成形体の製造工程を示す。
【符号の説明】
1 管状成形体(中空繊維成形体)
1a、1b 開口部
10 繊維スラリー
10a、10b 繊維積層体
11 屈曲部
100 中空繊維成形体の製造装置
2 抄造型
20 キャビティ
20a、20b 開口部
21、22 割型
21a、22a キャビティの形成面
21b、22b 流通路
21c 接合面
3 中子
30 中空押圧部
31 押圧部
32 錘
33 ヘッド
34 ガイドカバー
4 乾燥型
40 キャビティ
40a、40b 開口部
40
41、42 割型
41a、42a キャビティの形成面
41b、42b 流通路
100 中空繊維成形体の製造装置
Claims (4)
- 一組の割型が組み合わされて外部に通じる二以上の開口部を有するキャビティが形成される抄造型と、該キャビティ内に配設される膨張収縮自在且つ屈曲自在の中空の弾性体からなる中子とを用いた中空繊維成形体の製造方法から製造される中空繊維成形体であって、
複数の繊維積層体が一体化されることにより形成され、二カ所以上の複数箇所に屈曲部又はねじれ部を有する中空繊維成形体であり、複数の前記繊維積層体の継ぎ目が塞がれており、二以上の開口部を有し、一の該開口部から少なくとも何れかの他の該開口部が見通せないように形成されている中空繊維成形体。 - 前記内面に抄造された新たな繊維積層体で前記継ぎ目が塞がれている請求項1記載の中空繊維成形体。
- 一組の割型が組み合わされて外部に通じる二以上の開口部を有するキャビティが形成される抄造型と、該キャビティ内に配設される膨張収縮自在且つ屈曲自在の中空の弾性体からなる中子とを用いた中空繊維成形体の製造方法であって、
前記割型を組み合わせる前に該割型を繊維スラリーに浸漬して前記キャビティの形成面に繊維積層体を抄造し、前記繊維積層体が抄造された前記割型を組み合わせる前に前記繊維スラリー内で何れかの該割型に抄造された該繊維積層体上に前記中子を配してから該割型を組み合わせ、抄造された前記各繊維積層体の表面に新たに繊維積層体を抄造した後に、前記中子を膨張させて前記抄造型内で中空繊維成形体を成形する中空繊維成形体の製造方法。 - 一組の割型が組み合わされて外部に通じる二以上の開口部を有するキャビティが形成される抄造型と、該抄造型と形状が異なるキャビティを有する乾燥型と、該抄造型のキャビティ内に配設される膨張収縮自在且つ屈曲自在の中空の弾性体からなる中子と、該乾燥型のキャビティ内に配設される膨張収縮自在且つ屈曲自在の中空の弾性体からなる中子とを用いた中空繊維成形体の製造方法であって、
前記割型を組み合わせる前に該割型を繊維スラリーに浸漬して前記キャビティの形成面に繊維積層体を抄造し、前記繊維積層体が抄造された前記割型を組み合わせる前に前記繊維スラリー内で何れかの該割型に抄造された該繊維積層体上に前記中子を配してから該割型を組み合わせ、抄造された前記各繊維積層体の表面に新たに繊維積層体を抄造した後に、前記中子を膨張させて前記抄造型内で中空繊維成形体を成形し、しかる後前記乾燥型のキャビティ内に配設する前記中子で前記中空繊維成形体を押圧して該成形体に曲げやねじれを付与する中空繊維成形体の製造方法。
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