JP4033768B2 - 電気生理学的測定システム - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、イオン・チャネルを持つ膜組織、典型的には細胞のような脂質膜組織を持つ構造のイオン・チャネルの電気生理学的特性を測定および/または観測するための高性能なシステムに関する。このシステムは、細胞の準備、測定構成の準備および多数の細胞に対する独立した測定の実施から成る処理を自動で行うための手段を提供するものである。また、この発明は、細胞膜組織が測定電極との構成において高抵抗の絶縁部を形成し、細胞膜組織を流れる電流を測定および観測することを可能とする電気化学的な測定構成を構築するための基と手段に関する。さらに特徴的なこととして、この発明は、電気浸透流を用いて細胞を測定位置に自動的に配置するための手段を提供する基に関する。また、この発明は、複数の部位における細胞の試験ならびに測定を並行して実施するための主電子回路に関する。
【0002】
【従来の技術】
膜組織のパッチを電気的に絶縁し、電位固定状態のもとでこのパッチのイオン・チャネルを調査するという一般的なアイデアは、Neher 、Sakmann 、およびSteinback 氏らによる「The Extracellular Patch Clamp, A Method For Resolv- ing Currents Through Individual Open Channels In Biological Membranes 」、Pflueger Arch. 375; 219-278, 1978 に要約されている。彼らは、アセチルコリン(ACh)を含むピペットを筋肉細胞膜組織の表面に押し付けることによって、AChによって活性化されたイオン・チャネルの開始と終了に起因する電流の不連続な突出を見ることができることを発見した。しかし、ピペットのガラスと膜組織間の絶縁部の抵抗(10〜50MΩ)がチャネルの抵抗(10GΩ)に比較して非常に小さいという事実によって、それらは彼らの研究に限定されたものであった。そのような絶縁部から生じる電気ノイズは、その抵抗に対して反比例し、イオン・チャネルを流れる電流を不明瞭にするのに十分な大きさであり、そのコンダクタンスはAChチャネルのコンダクタンスよりも小さいものであった。また、それは、生成された絶縁部を通る大電流のために、ピペットの電圧を恒温槽の電圧とは異なる値に固定するのを妨げるものであった。
【0003】
そして、ガラスピペットの先端を熱加工し、ピペットの内部に吸引力を働かせることによって、細胞の表面に対して非常に高い抵抗(1〜100GΩ)の絶縁部を得ることができることが発見された。このギガ抵抗の絶縁部は、ノイズレベルをほとんどの生物学的な対象となるチャネルを調査できる程度の大きさに低減するとともに、これらの調査が可能な電圧範囲を大幅に拡大した。この改善された絶縁部は、「ギガシール」と称されるようになるとともに、このピペットは「パッチピペット」と称されるようになった。ギガシールの更に詳細な記述は、O.
P. Hamill、A. Marty、E. Neher、B. Sakmann、およびF. J. Sigworth氏らによる「Improved patch-clamp techniques for high resolution current record- ings from cells and cell-free membrane patches」Pflueger Arch. 391; 85-100, 1981にある。Neher とSakmann 両氏は、パッチクランプ法の開発における彼らの業績に対して、1991年のノーベル生理学医学賞を受賞した。
【0004】
イオン・チャネルは、無機イオンが細胞膜組織を通り抜ける際の触媒として作用する膜貫通タンパク質である。このイオン・チャネルは、起動および同期活動電位、シナプス伝達、ホルモン分泌、筋肉の収縮等のような多様なプロセスに関与している。多くの薬が、イオン・チャネルの調節を通してその特有の効果を発揮する。例えば、脳内における電位依存性のNa+ チャネルをブロックするフェニトインやラモトリジンのような抗てんかん化合物、平滑筋細胞における電位依存性のCa2+チャネルをブロックするニフェジピン、ジルチアゼムのような高血圧治療薬、およびすい臓におけるATP調節性のK+ チャネルをブロックするグリベンクラミドやトルブタミドのようなインスリン放出の刺激薬がある。パッチクランプ法によって、科学者は、イオン・チャネルの活動を化学的に誘発して調節するのに加えて、電位依存性のチャネルを操作することが可能となった。これらの手法には、パッチピペット内の電極の極性を調整すること、および塩類化合物を変化させて恒温槽溶液内における自由イオンレベルを緩和することから成る。
【0005】
パッチクランプ法は、生物学と医学において大きな発展を示しており、この方法により単一のイオン・チャネルタンパク質を通過するイオンフローの測定が可能となるとともに、薬に対する単一のイオン・チャネルの反応の研究が可能となった。簡単に言うと、標準的なパッチクランプ法においては、薄い(直径が約0.5〜2μm)ガラス製のピペットが用いられる。このパッチピペットの先端部は、細胞膜組織の表面に対して押し付けられる。このピペット先端部は、細胞をしっかりと絶縁し、膜組織の小さなパッチ内の少量のイオン・チャネルタンパク質を隔離する。これらのチャネルの活動は、個別に測定することが可能であるか(シングル・チャネル・レコーディング)、あるいは代替法としてパッチを破壊し、全細胞膜組織のチャネル活動の測定を可能とするもの(ホールセル構成)である。ホールセル測定を実施するための細胞内部への高いコンダクタンスによるアクセスは、ピペットに引っ張る向きの圧力をかけて膜組織を破壊することによって得ることができる。
【0006】
シングルチャネルレコーディングとホールセルレコーディングの両方において、膜組織にわたって「固定電位」をかけることによって、個々のチャネルサブタイプの活動の特性を引き出すことができる。電圧固定法においては、一定の膜組織電位のもとで膜組織電流が記録される。あるいは、より精密に行うには、膜組織の電位を実験者が規定したレベルに保持するのに必要な電流を増幅器が厳密に供給する。そのため、イオン・チャネルの開始と終了によって生じる電流が、膜組織を再充電することはなくなる。
【0007】
パッチクランプ法の性能を決める大きな制限要素は、細胞とピペットの位置決めと固定電圧の印加、ならびに溶解した化合物を細胞とパッチのところに持って行く供給システムの特性である。通常のパッチクランプ構成においては、細胞が試験槽内に置かれ、生理食塩水とともに連続的に灌流させられている。これらの槽への細胞の入ったピペットの接続を実施するには、時間がかかり、手数がかかる。注入口を少数の供給ビンに繋がっている弁に交換して、化合物を適用する。支持液と試験対象の化合物の所要量は、多い。
【0008】
パッチクランプ測定を実施するための高性能なシステムが提案されており、それは典型的には細胞膜組織の電気的な特性を求める測定構成において細胞を保持する部位を複数持てるように調整した基を有するものである。
【0009】
米国特許第5187096号明細書において、Rensselaer氏が細胞の細胞基質のインピーダンスを観測するための機器を開示している。細胞は、電極上で直に培養されており、そのうちに複数の細胞で覆われてしまい、個々の細胞の測定を行うことができなくなる。
【0010】
国際公開第98/54294号において、Leland Stanford 氏が電極配列を持つ井戸状部を有する基を開示している。この井戸状部と電極を持つ基は、CVD(Chemical Vapor Deposition )法とエッチング手法を用いてシリコン上に形成され、電極を囲む窒化珪素の「不活性化(passivation )」層を有する。細胞は、電極配列上で直に培養される。この基は、電気生理学的な特性を測定するように調整されており、様々な測定構成案を開示している。
【0011】
国際公開第99/66329号において、Cenes 氏は、井戸状部に穿孔を持ち、基の両側それぞれに電極を配備した基を開示している。この基は、シリコン基板をレーザーで穿孔することによって形成され、表面を抗付着材でコーティングすることもできる。この基は、穿孔を囲む抗付着層を設け、吸引力を用いて穿孔を通る溶液の流れを形成して、細胞を穿孔に配置することによって、あるいは細胞を電気的に誘導することによって、細胞に対するギガシールを構築するように調整される。ホールセル測定構成を構築するために、電磁場または化学的な方法によって細胞を透水性にすることができる。井戸状部内のすべての穿孔とそれ故にすべての測定可能な細胞は、1つの作用電極と1つの基準電極を共有し(図11参照)、そのため個々の細胞の測定を行うことはできない。
【0012】
国際公開第99/31503号明細書において、Vogel 氏らは、基(キャリア)の井戸状部に配置され、二つの区画を分離する通路を持つ測定機器を開示している。この測定機器は、二つの電極を有し、これらの電極は通路の一方の側に配置され、細胞を通路の開口部の位置に持って行くように調整されている。この基は、細胞を通路の開口部の位置に誘導するために、疎水性と親水性の領域を持っている。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
従来の技術は、電極、井戸状部、穿孔等を持つ基の詳細な製造と設計、ならびに適用可能な測定構成を構築する方法に焦点を置いている。周知のパッチクランプ機器を変えることは、基に対してピペットを変えたり、細胞の手動位置調整を細胞の自動位置調整に変えることになるので、これは非常に自然なことである。しかしながら、これらの点は自動パッチクランプ機器の提供途上における重要な手順を示すものであるが、多くの問題が検討されないまま残されている。
【0014】
【課題を解決するための手段】
この発明にもとづき、イオン・チャネルを持つ脂質膜組織を有するイオン溶液がある管状通路内に電気浸透流を生起させる電界を用いて、イオン・チャネルを持つ脂質膜組織を部位の位置に配置する。電気浸透流を生起させるためには、管状通路の材質と同様に幾何学的構造も注意深く選択しなければならない。イオン溶液内にイオン・チャネルを持つ脂質膜組織を保持し、またはイオン・チャネルを持つ脂質膜組織を有する溶液内に流れを生起させるイオン溶液内の流れを用いて、イオン・チャネルを持つ脂質膜組織は、所望の位置に誘導される。
【0015】
そのため、第一の特徴として、この発明は、イオン・チャネルを持つ脂質膜組織内のイオン・チャネルの電気生理学的な特性を測定および/または観察するための基を提供するものであり、この基は、以下のものから構成される。
【0016】
− イオン・チャネルを持つ脂質膜組織を保持するための第一の部位。この部位は、基を貫く一つの通路を有し、この通路の第一の端部が基の第一の上方表面部における第一の領域と接し、この通路の第二の端部が第一の管状通路における第二の領域と接する。
【0017】
− 第一の領域と電気的に接触する一つの基準電極。
【0018】
− 第二の領域と電気的に接触する一つの作用電極。
【0019】
− 第一の管状通路に第一の電界を生起させるための一つ以上の電極。これらの追加の電極は、第一の電界が第一の管状通路内に保持されたイオン溶液内に流れを誘導するような寸法と位置にあり、通路の第二の端部と第一の管状通路が、第一の管状通路内のイオン溶液が第一の領域から第二の領域に向けての、またはその逆向きの、通路を通る流れを生起させるような寸法で構成される。
【0020】
− 通路の第一の端部を部位に保持されたイオン・チャネルを持つ脂質膜組織に対する絶縁部を形成するように調整し、このことによって基、絶縁部および脂質膜組織が部位の第一の領域を第二の領域から絶縁し、その結果基準電極と作用電極間の電気信号を測定および/または観察することによって、この膜組織の一つ以上の電気的特性を測定および/または観察することが可能となる。
【0021】
好ましくは、通路の第一の端部の寸法と材料構成は、部位に保持されたイオン・チャネルを持つ脂質膜組織と基間に高い電気抵抗の絶縁部を提供するように調整される。この文意において、高い電気抵抗の絶縁部とは、基と膜組織の隣接する表面間の経路に沿う電気抵抗が10MΩ以上、好ましくは100MΩまたは1GΩ以上の大きさであることを意味し、またギガシールとして知られている。
【0022】
管状通路は、基内に形成されるか、または基の表面部分に溝を形成し、続いてこの表面部分に別の基を配備することによって閉じ、このようにして管状通路またはパイプを形成するものである。電気浸透流は、絶縁壁によって仕切られた管状通路内の溶液を通る電界を印加することによって生起される。この現象は、表面のイオン化状況に依存し、その際電気的中性においても薄い遮断層内の壁の近くの溶液には過剰な移動電荷が存在する。溶液に印加される電界は、この溶液内の過剰な電荷に働き、溶液が流れるように作用する。溶液内の過剰な電荷の量と分布状況は、表面の材料(イオン化する部位の密度)と溶液の成分、特にpHとイオン濃度に依存する。電荷の分布状況から、単一のパラメータであるゼータ(ζ)電位が導き出され、それは電気浸透流の強さを決めるものである。しかし、ゼータ電位の値は材料/溶液の組み合わせに対して測定され、公表されているが、実際には容易に制御可能なパラメータではなく、部位表面のイオン化状況から生じるので、ζとEOFは、表面の状態と汚れの変化に対して非常に影響を受けやすい。好ましくは、第一の管状通路の少なくとも一部の側壁は、10mV以上の実効ゼータ(ζ)電位を持つ材料で形成される。そのような材料の例は、シリカまたはガラスである。
【0023】
さらに、基は、第一および第二の領域と接する端部を持つ通路を有する部位を備える。このようにして、1つ以上の部位が第一の管状通路を共有し、この場合第一の管状通路で生起される流れは、幾つかの通路の流れを並行して制御するために利用することができる。
【0024】
は、好ましくはさらにイオン溶液を管状通路に導入するための管状通路の第一の端部を有する。電界がイオン溶液内の流れを効率的に誘導するためには、イオン溶液は、第二の領域に接する電極の内の少なくとも二つと電気的に接触しなければならない。そのため、イオン溶液は、管状通路内に導入された時に自動的に第二の領域に接する電極との電気的な接触を実現するのが好ましい。そのため、第二の領域に接する電極の寸法と位置とともに、管状通路と管状通路の第一の端部の寸法は、好ましくは第一の端部を通って導入されるイオン溶液が第二の領域に接する電極との電気的な接触を形成するように調整される。イオン溶液の管状通路への導入を支援するために、さらに基は管状通路内または管状通路の第一の端部内に管状通路と関連して配置された疎水性または親水性の材料の1つ以上の領域を持つ。
【0025】
好ましい実施形態においては、基は、管状通路の第二の端部を持ち、その際管状通路の第一と第二の端部は、基の第二の上方表面部において管状通路の入口と出口を持つ。この実施形態においては、第二の領域と接する第一の電極は、通路内か、または通路の第二の端部のどちらかに位置するとともに、第二の電極は、第一の電極よりも管状通路の第一の端部のより近くに位置し、またさらに基は第一の電極よりも管状通路の第二の端部のより近くに位置する第三の電極を有する。そのことによって、作用電極が管状通路の中央部に位置し、第二と第三の電極が管状通路の反対側に位置する構成が得られる。例えば、第二と第三の電極が実質的に同じ電位に保持され、第一の電極がより低い電位に保持される場合には、両方の端部から第一の電極に向かって流れが誘導され、それによって開口部の位置に高い圧力が効率良く形成される。他方、第一の電極が第二と第三の電極よりも高い電位に保持された場合、第一の電極から両方の端部に向かって流れが誘導され、それによって開口部の位置に低い圧力が効率良く形成される。また、どの電極も作用電極として機能することができる。
【0026】
別の好ましい実施形態においては、管状通路の第一の端部が基の第二の上方表面部における管状通路の入口または出口を構成するのに対して、管状通路の第二の端部は通路によって構成される。
【0027】
さらに別の好ましい実施形態においては、基は第一の領域と通路の上方端部に接する第二の管状通路およびこの第二の管状通路内に第一の電界を生成するための第一の領域に接する二つ以上の電極を有し、この第二の管状通路は第一と第二の端部を持ち、これらの追加の電極は第一の電界が第二の管状通路内に保持されたイオン溶液内に流れを誘導するような寸法と位置に有し、部位と第二の管状通路が第二の管状通路内のイオン溶液の流れが第二の管状通路の第一の端から部位を通り過ぎ第二の端までの流れを生起することができるような寸法に設定される。好ましくは、さらに基は、第二の管状通路内のイオン溶液に含まれるイオン・チャネルを持つ脂質膜組織が部位の近傍にあるかどうかを決めるための検出手段、例えばクールター計数器の手法または同等の手法とこの検出手段からの信号に応じて第二の管状通路における流れを制御する手段とを有する。
【0028】
第一(および第二)の管状通路における電気浸透流は、管状通路の少なくとも一部と電界を生成するための電極を特別に設計、構成した電気浸透流ポンプ(EOPポンプ)によって生起される。このEOFポンプは、基内/上に第一/第二の管状通路と電極を形成することによって基上に統合できる。それに代わって、第一/第二の管状通路と接するようにした管状通路内の別の基または構造上にEOFポンプを形成し、そしてこの基が保持しないEOFポンプを使用して第一/第二の管状通路内の流れを生起するものである。この場合、EOFポンプと関連の電子機器は繰り返して使用可能であるが、細胞を保持する基と試験対象の化合物は、使い捨てとなる。
【0029】
好ましくは、部位内に第一の端部を持つ通路は、最大で10μm、好ましくは0.5〜5μmの範囲の横径寸法を持つ。また、部位の通路によって規定される内部表面は、塩化ナトリウムのような物質を運ぶことができ、それは通路の端部で基と接している水溶液を引き付けて通路の中や通路を通過させるのに寄与するものである。
【0030】
基準電極は、基準電極と接する第一の領域と接する通路を構成する平面に投影した場合に、少なくとも部分的にこの通路を取り囲むような形状にされる。この構造においては、作用電極は、好ましくは通路の第二の端部に、あるいはその近傍に配置される。基準電極のこの形状は、基準電極と作用電極間に電位が印加される場合に、通路の第一の端部に収束する電気力線を持つ電界を生成する役割を果たし、その電界はイオン・チャネルを持つ脂質膜組織に力を加えて、それを通路の第一の端部に誘導するものである。
【0031】
第二の特徴としては、この発明は、イオン・チャネルを持つ脂質膜組織内のイオン・チャネルの電気生理学的な特性を測定するための測定構成を構築するための方法を提供し、この方法は、以下の手順から成るものである。
【0032】
− イオン・チャネルを持つ脂質膜組織を保持するための第一の部位を有する基を準備する手順。この部位は基内に一つの通路を有し、この通路の第一の端部は基の第一の上方表面部において第一の領域と接しており、この通路の第二の端部はこの基の第一の上方表面部の下にある第一の管状通路において第二の領域と接している。
【0033】
− 基の第一の上方表面部に一つの基準電極を準備する手順。この基準電極は前記の第一の領域と電気的に接触している。
【0034】
− 前記の第二の領域と電気的に接触する二つ以上の電極を準備する手順。このうちの一つが作用電極である。
【0035】
− 前記の第一の領域に担体液を供給する手順。
【0036】
− 前記の第二の領域にイオン溶液を供給する手順。このイオン溶液は前記の電極の少なくとも一つと電気的に接触している。
【0037】
− 前記の第二の領域と電気的に接触する電極の少なくとも二つの間に電位差を印加することによって、第一の管状通路に電界を生成する手順。この電界は第二の領域を横断して第一の管状通路内のイオン溶液に流れを生じさせ、そのことによって前記の第一の領域から前記の第二の領域に向けての、または前記の第二の領域から前記の第一の領域に向けての流れを生起させる。
【0038】
好ましくは、第一の領域に供給される担体液は、一つ以上のイオン・チャネルを持つ脂質膜組織を含み、そして電界は、イオン・チャネルを持つ脂質膜組織が通路の第一の端部を絶縁し、部位の第一の領域を第二の領域から絶縁するまで、第一の領域から第二の領域への溶液の流れを生起するものである。
【0039】
第二の特徴による方法にもとづくと、流れを生起するための電極間に印加される電位は、イオン溶液内に誘導される流れを無視した場合、少なくとも実質的に一定の大きさの電界を供給するためには、少なくとも実質的に一定である。この構成によると、電界の最大値は、10〜106 V/cmの範囲にある。印加される値は、EOFポンプの設計と寸法に大きく依存する。
【0040】
その代替法においては、流れを生起するための電極間に印加される電位は、電極間に少なくとも実質的に一定の電流を生成するように調整される。この構成によると、流れを生起するための電極間における電流の大きさは、0.1〜10000μAの範囲にある。
【0041】
また別の代替法においては、流れを生起するための電極間に印加される電位は、管状通路内において少なくとも実質的に一定の流れを維持するように調整される。この少なくとも実質的に一定な流れは、管状通路と通路の寸法に関連して決まるものである。
【0042】
好ましくは、第二の領域にイオン溶液を供給する手順は、基の第二の上方表面部にある管状通路への入口にイオン溶液を供給する手順から構成される。
【0043】
部位に細胞を配置するのを支援するために、この方法は、第一の領域と通路の上方端部に接する第二の管状通路を準備する手順と、この第二の管状通路は第一と第二の端部を持ち、第二の管状通路内に保持されたイオン溶液内において、第二の管状通路の第一の端部から部位を通過し第二の端部までの流れを誘導するために第二の管状通路内に第一の電界を生成する手順から成る。このようにして、細胞を通路の上端部に誘導するために、電気浸透流が第一の領域の管状通路内に生成される。好ましくは、この方法は、さらに第二の管状通路のイオン溶液内に含まれるイオン・チャネルを持つ脂質膜組織が部位の近傍にあるかどうかを決定し、その決定に応じて第二の管状通路内の流れを制御する手順を有する。
【0044】
好ましくは、イオン・チャネルを持つ脂質膜組織は、通路の第一の端部に対してギガシールのような高い電気抵抗の絶縁部を形成し、その結果流れを生起するための電極間の電気信号を測定および/または観測することによって、膜組織の一つ以上の電気的特性を測定および/または観測できるものである。
【0045】
高い電気抵抗の絶縁部を構築した後において、この方法は、好ましくは作用電極と基準電極間に第一の電位差を連続的に印加し、作用電極と基準電極間に流れる第一の電流を観測することによって、部位に保持されたイオン・チャネルを持つ脂質膜組織と通路の第一の端部間における高い電気抵抗の絶縁部を検査する手順を有する。この第一の電流が、予め規定した閾値電流より小さいか、あるいは同じ場合には、この部位がイオン・チャネルを持つ脂質組織と通路の第一の端部間には許容できる絶縁部を持つものと認められる。この方法におけるこの手順は、構築された絶縁部の特性を測定するために用いられる。ギガシールが無い場合には、大きな漏れ電流が膜組織と部位間に流れる。ギガシールが構築されている場合には、電流は主に膜組織に引き込まれて流れ、そして漏れ電流より極めて小さい。
【0046】
また、高い電気抵抗の絶縁部の構築後において、この方法は、好ましくは作用電極に最も近いイオン・チャネルを持つ脂質膜組織の一部を破壊することによって、ホールセル構成を形成する手順を有する。膜組織の一部を破壊することは、作用電極と基準電極間に一連の第二の電位差パルスを印加することによって行われる。膜組織の破壊は、作用電極と基準電極間に流れる電流を観測することによって確認され、この電流が予め規定した値を超える場合には、膜組織は破壊されており、一連の第二の電位差パルスは停止される。好ましくは、この一連の第二の電位差パルスは、振幅および/または持続時間が増加して行く一連の階段波の電圧から成る。膜組織が強い電界のために破壊された場合には、得られた電流応答には容量性スパイクが現れる。
【0047】
その代替法においては、電気浸透流を生起するための電極間に電位差を印加して通路内に引っ張る向きの静水圧を形成することによって、この破壊を行い、この電界は管状通路のイオン溶液内に流れを生起するように第二の領域を横断し、そのことによってイオン・チャネルを持つ脂質膜組織の当該部分が破壊されるまで、通路の第一の端部を覆うイオン・チャネルを持つ脂質膜組織の一部に対する吸引力を生成するものである。また、通路内に気孔を形成する化合物を供給することによって、通路から到達可能なイオン・チャネルを持つ脂質膜組織の一部が透水性を持つようになる。
【0048】
この文意においては、基準電極が通路または作用電極を少なくとも部分的に取り囲むと言う場合、基準電極は、前記の平面において、この基準電極によって囲まれる領域を構成する形状を持ち、この領域は基準電極には含まれず、通路または作用電極を保持するということを意味する。このようにして、基準電極は、前記の平面において開いたまたは閉じた円環を形成し、その円環内には通路または作用電極が配置される。たとえ基準電極の一部が通路または作用電極を囲むことがあったとしても、基準電極は通路または作用電極を覆ってしまうことはない。別の言い方をすれば、基準電極の内周と通路または作用電極の外周との間に何本かの直線を引いた場合、これらの線は通路または作用電極に収束する。
【0049】
前記の第一の領域または前記の部位に対応して、作用電極と基準電極間に電位差を印加して、電界からの電気力線が基準電極から作用電極への方向において密度が増加する形の電界を形成することによって、イオン・チャネルを持つ脂質膜組織を電気泳動させて作用電極の方に移動させ、部位に配置することができ、そのことによって部位の第一の領域を第二の領域から絶縁するものである。
【0050】
好ましくは、一つ以上の基準電極の形状は、少なくとも実質的に円形または長方形である。この円または長方形は、閉じているか、または一つ以上の小さな開口個所を持つものである。
【0051】
好ましい実施形態においては、基準電極および/または作用電極は、電極部と第一および/または第二の領域間に電気化学的なブリッジを形成する第一の材料層で覆われた電極部を有する。この好ましい実施形態においては、基準および/または作用電極は、銀/ハロゲン化銀の電極である。また、基準電極は、二つ以上の部位に共通に用いられる。
【0052】
高い性能のもとに多数の部位と細胞(多数測定チャネル)に対する位置決め、試験、刺激、測定等を行うために、この発明は、複数のチャネルの試験、刺激、ならびに測定を管理および実施するための主電子回路を提供し、これは単に単一のチャネルの電気回路を複数並列に配置したものではない。例えばコンピュータによって簡単に管理することができるコンパクトで費用対効果の高い主電子回路を提供するためには、幾つかの構成部品を多数のチャネルで共有できるように、チャネルの性能を制御する必要がある。
【0053】
このように、第三の特徴として、この発明は、イオン・チャネルを持つ脂質膜組織内のイオン・チャネルの電気生理学的な特性を測定および/または観察するためのシステムを提供するものであり、このシステムは一つの基を有し、この基はイオン・チャネルを持つ脂質膜組織を保持するための複数の部位と、各部位に一つの作用電極を配置した形態の複数の作用電極(6)と、各部位が少なくとも一つの基準電極と電気的に接触するように配置した形態の一つ以上の基準電極(8)を有し、部位の作用電極と基準電極間に流れる電流Imem がイオン・チャネルを持つ脂質膜組織内のイオン・チャネルによって伝達されるように、各部位がイオン・チャネルを持つ脂質膜組織を保持するように調整され、ならびに、このシステムは、さらに各部位に保持されたイオン・チャネルを持つ脂質膜組織に対して電圧固定測定を実施するための主電子回路を有し、この主電子回路は以下のものから構成される。
【0054】
−複数の電流電圧(I−V)変換器。これらはそれぞれ第一と第二の入力および一つの出力を持ち、第一の入力は作用電極に電気的に接続し、第二の入力は基準電圧Vref を受信し、各I−V変換器は、基準電圧Vref を受信した場合に、第一の入力の電圧が少なくとも大体においてVref と等しくなるまで、基準電極と作用電極間に電流Imem を流すように調整され、各I−V変換器は、さらにその出力上にImem に対応する第一の電圧信号を供給するように調整される。
【0055】
− 第一のマルチプレクサ。このマルチプレクサは二つ以上のI−V変換器から第一の電圧信号を受信するための複数の入力を有し、それぞれは制御可能な形態で選択した第一の電圧信号を第一のA/D変換器に供給し、この第一のA/D変換器は第一の電圧信号に対応したデジタル信号を生成する。
【0056】
− 複数の個別に制御可能なスイッチ。これらはそれぞれ第一の電圧信号をマルチプレクサに接続するか否かを実行するための作用電極とマルチプレクサ間の接続機能を果たす。
【0057】
− 前記のデジタル信号を受信し、処理するためのデジタル処理手段。このデジタル処理手段はイオン・チャネルを持つ脂質膜組織の刺激または試験に関連した第一のタイプのデジタル信号を管理し、生成するように調整され、このデジタル処理手段は、さらに主電子回路の個別に制御可能な構成部品を制御する第二のタイプのデジタル信号を管理し、生成するように調整される。
【0058】
− 前記の第一のタイプのデジタル信号を受信するための手段および各Vref に加算するためのアナログの刺激または試験信号Vstimを生成するための手段。
【0059】
− Vref を各I−V変換器に供給するための手段。各Vref は個別に制御可能であり、この手段はさらにVstimを受信し、Vstimを一つ以上の選択したVref に加算するように調整される。
【0060】
− デジタル処理手段から第二のタイプのデジタル信号を受信し、第二のタイプのデジタル信号に応じて、以下のものを制御するイネーブル網。
【0061】
・複数の個別に制御可能なスイッチ
・マルチプレクサにおける複数の第一の電圧信号の選択
・Vref を供給するための手段を制御することによって各Vref の値
このデジタル処理手段は、DSPまたはCPUである。これに代わって、デジタル処理手段は、システム内の他のユニット等とのインタフェースを持ち、データの操作と保存のような多くの付加機能を実行するためのより大規模な処理手段の一部を構成することもできる。
【0062】
好ましくは、個別に制御可能なスイッチおよび/または各I−V変換器の少なくとも一部は、基上に統合される。
【0063】
I−V変換器は、演算増幅器を持ち、そして場合によってはデュアルFETも持つ。
【0064】
stimを生成するための手段によって受信された第一のタイプのデジタル信号は、各チャネルに配備されたデジタル・アナログ(D−A)変換器によって対応するアナログのVstim信号に変換される。
【0065】
好ましい実施形態においては、Vstimを生成するための手段は、さらに複数のマルチプレクサと複数の個別に制御可能なサンプリング/保持回路を有し、各マルチプレクサは第一のタイプのアナログ信号を受信するためのD/A変換器に接続され、二つ以上のサンプリング/保持回路は各マルチプレクサの異なる出力と接続され、Vstimを生成するための手段は、二つ以上の部分から成る傾斜波のVstim信号をリアルタイムで供給するように調節され、各部分は第一のタイプのデジタル信号に対応し、D/A変換器は、第一のタイプの第一のデジタル信号に応じた第一のアナログ信号と第一のタイプの第二のデジタル信号に応じた第二のアナログ信号を生成するように調節され、マルチプレクサは、第一の出力に第一のアナログ信号を、第二の出力に第二のアナログ信号を供給するように調節され、個別に制御可能なサンプリング/ホールド回路は、傾斜波のVstim信号の異なる部分を形成するように、制御によってアナログ信号を順番に放出するようになるまで、前記の第一および第二のアナログ信号を受信し、保持するように調整される。
【0066】
例えば、Vstimは、部位におけるギガシールの存在を試験するための階段波(方形パルス)である。また、Vstimは、ホールセル測定構成を構築するために、細胞の膜組織を破壊するために用いられる、振幅が増加して行く一連の階段波(方形パルス)の電圧である。
【0067】
主電子回路は、また部位に膜組織を配置するための、第一、第三または第四の特徴にもとづく基の電極に予め規定した電位を供給するように調整される。
【0068】
第四の特徴として、この発明は、細胞のイオン・チャネルの電気生理学的な特性を測定および/または観測するための高性能なシステムを提供する。このシステムは、実行されるプロセスのほとんどが自動化され、多数の細胞に対して同時に実行可能な高い性能を提供するものである。
【0069】
このため、第四の特徴にもとづくシステムは、以下のものから構成される。
【0070】
− 一つの細胞培養ユニット。
【0071】
− 一つの化合物保管ユニット。
【0072】
− 請求項1に記載の一つ以上の基
【0073】
− 一つの基保管ユニット。
【0074】
− 基を受け入れるための細胞配置・測定ユニット。この細胞配置・測定ユニットは細胞を含む溶液を基の各部位に適用するための手段と、細胞を各部位の予め規定した位置に配置するために、基の各部位における予め規定した電極群の間に予め規定した電位差を印加するための手段と、配置された細胞の試験と測定を実施するための請求項25に記載の主電子回路を有する。
【0075】
− 基を基保管ユニットから細胞配置・測定ユニットに運ぶための運搬手段。この運搬手段はさらに細胞を細胞培養ユニットから細胞配置・測定ユニットに運ぶように調整されている。
【0076】
− 化合物を化合物保管ユニットから細胞配置・測定ユニットに保持された基にピペットで配分するためのピペット操作システム。
【0077】
− 測定および/または観察の実施を制御し、試験データを記憶するための主コンピュータシステム。この主コンピュータは、以下のものと接続して運用される。
【0078】
・データの取得と解析のための一つ以上の電子プロセッサ。この一つ以上の電子プロセッサは細胞配置・測定ユニットの主電子回路のデジタル処理手段と接続して運用される。
【0079】
・前記の運搬手段を制御するための電子プロセッサ手段
・前記のピペット操作システムを制御するための電子プロセッサ手段
この明細書を通して、細胞または膜組織と記載している場合には、細胞や人工的な膜組織のような、イオン伝達チャネルを持つ脂質膜組織を意味する。
【0080】
電気生理学的な特性は、例えばイオン・チャネルを通る電流、イオン・チャネルにわたる電位、あるいはイオン・チャネルを持つ膜組織の静電容量または電気抵抗である。さらに、各膜組織に対して個別の試験を実施できるように、各膜組織を保持する場所に個別に試験化合物(典型的には薬理学的な薬物)を加えることが可能である。一つの試験としては、試験化合物を加えたことに対するイオン伝達チャネルの反応を測定するものである。
【0081】
【発明の実施の形態】
この発明について、関連図を参照してさらに説明する。
【0082】
この発明にもとづく基は、好ましくは短時間で多数の個別の試験を実行できるように設計される。これは、複数の試験区画を持つ微小システムを提供することによって達成され、その各々は膜組織を保持するための一つ以上の部位と、データ収集装置に接続された統合型作用電極と、細胞のようなイオン・チャネルを持つ脂質膜組織を供給および配置するための手段と、担体、試験化合物、すすぎ液等を供給するための手段とから成る。これによって、各試験区画において独立した試験を実施し、ならびにコンピュータのような中央制御ユニットからすべての試験の準備と測定を制御することが可能となる。また、この発明は、試験区画の寸法が小さいために、ほんの少量の試験化合物を用いて測定を実施できるようになった。この発明は、また測定を実施するための幾つかの異なった手順を提供するものである。
【0083】
この発明にもとづき、基は、多数の異なった構成を持つことができる。図1Aは、作用電極16と基準電極8を保持し、一つの部位14を持つ基12を描いている。この基12を用いてイオン・チャネルを持つ脂質膜組織(以降、単に細胞と称する)における電気生理学的な測定を実施するためには、この膜組織は、イオン溶液を通して両電極との電気的な接触を保ちながら、作用電極16と基準電極8を絶縁する隔壁を構築しなければならない。このことは、生理食塩水で満たされた管状通路32と部位14を保持する井戸状部を持つ通路30に細胞2を配置することによって達成される。そのことによって、電極間に電位差を印加した場合、イオン・チャネルは、電極間において膜組織を通る電流を維持することができる。電流が膜組織を通ってのみ導通できるように、作用および基準電極を電気的に絶縁する構成の中に細胞2を配置すると、この細胞は基に対して高い抵抗の絶縁部であるギガシールを形成する。好ましくは、基の底側の通路に吸引力を働かせるための配管32がある。この配管32は、基の上側に通じており、図1Bに描かれているように、作用電極16への電気配線を含む。
【0084】
図1Aでは、部位14は基準電極8と作用電極16と電気的に接触する領域であり、その表面の材料を膜組織に対して絶縁部を形成するのに好適なものにして細胞を保持するように調整されている。そのような材料としては、シリコン、プラスチック、純粋なシリカ、ならびにベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、ゲルマニウム、窒素、リン、ヒ素から成る群から選択した一つ以上の添加物やこの群の中の複数の酸化物をドープした合成石英、パイレックス(登録商標)またはシリカのようなガラスがある。同様に、基自身は、これらの材料のどれかから構成することができる。
【0085】
異なった化合物を試験しようとする場合に、基12がこれらの部位を分離する手段を提供できることが重要な特徴である。与えられた化合物の測定または基準となる測定を実施するための量の溶液を保持する容積部分を、試験区画と呼ぶ。試験区画は、好ましくは時には高価な試験化合物の所要量を最小化するために小さい容積を持ち、さらに、拡散によって生成された溶液を混ぜるために必要な時間は、容積が低下するのに応じて減少する。一つの試験区画は、一つ以上の部位を持つことが可能である。図1AとBの実施形態においては、部位は基上に幾何学的形状に形成された構造となっている。このような形状にするのは、部位内に細胞2を配置するのを支援すると同時に、この場合には単一の部位から成る試験区画同士を分離するためである。その代替法としては、井戸状部が二つ以上の部位を井戸状部の底部に配置するものがある。
【0086】
以下において、この発明にもとづく基の二つの好ましい実施形態が図2A〜Cと図3A〜Cに関連して記載されている。これらの図は、正しい縮尺で描かれたものではない。
【0087】
図2A〜Cと図3A〜Cの基は、基本的には先端を切断された複数のピラミッド形を持つ基であり、このピラミッド形は頂部に一つ以上の通路30を持つ穴を持つことができる。ピラミッド形の基盤は、四角形である。一つの細胞用の空間を設けるためには、ピラミット形の頂部の角度は両方とも54.7度で、ウェーハの厚さはd=280〜650μm、ピラミッドの頂部の横の長さはw=30〜60μmである。ピラミッドの頂部は、厚さh=0.1〜3μmの二酸化珪素または窒化珪素の膜組織で覆われている。この膜組織には、直径a=0.5〜5μmの通路が形成されている。このピラミットの向きは、図2A〜Cのようにピラミットが頂部を上にして基の下側に形成されるか、または図3A〜Cのように頂部を下にして基の上側に形成される。この二つの向きにおける働きは異なり、図2A〜Cの実施形態ではピラミッドが第一の管状通路におけるポンプ経路に対して有利に働き、他方図3A〜Cの実施形態ではピラミッドが細胞の配置に有利に働く。
【0088】
これらの機器は、幾つかの全く違った方法で製作することができる。以下では、基本構造に対する三つの異なる製作プロセスの概要を記載する。第一の方法は、上述の構造を製作するために用いられる「酸化物前置」(oxide first )法で、第二の方法は、それに代わる「酸化物後置」(oxide last)法であり、第三の方法は、さらに別の「ガラス積層」(deposited glass )法である。
「酸化物前置」(oxide first )法
・基全体を覆う1〜3μmの湿性サーマルSiO2 を成長させる
・シリコン基に酸化物を通す通路を作成するため、フォトマスキングとリアクティブ・イオン・エッチングにより基の底側に通路を形成する
・基の両側にエッチマスク用のLPCVD窒化珪素を積層する
・フォトマスキング、リアクティブ・イオン・エッチング、ウェット・オキサイド・エッチング(緩衝液を加えたフッ酸(buffered fluoric acid) )により、基の上側にピラミッドの基盤面を形成するために窒化物の窓を作成
・シリコンの異方性エッチングにより、上記の窓を通るピラミッド形の穴をエッチングする。これは、54.7度の傾斜を持つピラミッドの側面を形成するものである。
【0089】
・熱性のH3 PO4 を用いて、窒化物のエッチストップの除去
・ピラミッドの側面を覆うために、0.1〜1μmの湿性サーマルSiO2 を成長させ、バルクシリコンウェーハーを電気的に絶縁する。他のSiO2 領域は、大きくは成長させない。
「酸化物後置」(oxide last)法
・注入によるドーピングかエピタキシャル成長を用いて、基の底側にシリコンのエッチストップ層(ボロンドーピング)を形成する。このエッチストップ層は、典型的には厚さが約1μmである。
【0090】
・基の両側にエッチマスク用のLPCVD窒化珪素を積層する
・フォトマスキング、リアクティブ・イオン・エッチング、ウェット・オキサイド・エッチング(緩衝液を加えたフッ酸)により、基の上側にピラミッドの基盤面を形成するための窒化物の窓を作成
・シリコンの異方性エッチングにより、上記の窓を通るピラミッド形の穴をエッチングする。これは、54.7度の傾斜を持つピラミッドの側面を形成するものである。1μmまでの厚さのシリコン膜組織を形成するため、ホウ素をドープしたエッジストップでエッチングを止める。
【0091】
・熱性のH3 PO4 を用いて、窒化物のエッチストップの除去
・フォトマスキングとリアクティブ・イオン・エッチングにより基の底側に通路を形成する
・基上のすべての個所においてシリコン膜組織を酸化物に変化させるため、湿性サーマルSiO2 を成長させる。SiO2 は、通路内にも形成されるので、このプロセスは、通路を狭くするものであり、この方法によって、写真平板を用いて製作されたものと比べて、通路をより小さく製作することができる。
「ガラス積層」(deposited glass )法
・ウェットサーマル積層プロセスを用いて、シリコン基の両側に200〜500Åの二酸化珪素を積層する。
【0092】
・LPCVDプロセスを用いて、シリコン基の両側に1000〜5000Åの窒化珪素を積層する。
【0093】
・フォトマスキング、リアクティブ・イオン・エッチング、ウェット・オキサイド・エッチング(緩衝液を加えたフッ酸)により、基の上側にピラミッド形の基盤面を形成するための窒化物の窓を作成するとともに、底側に通路を作成する。
【0094】
・シリコンの異方性エッチングにより、上記の窓を通るピラミッド形の穴をエッチングする。これは、54.7度の傾斜を持つピラミッド形の側面を形成するものである。窒化珪素は、エッチングエージェントに対して基を保護するものである。
【0095】
・窒化珪素膜組織上に100nm〜3μmの酸化珪素またはその他のタイプのガラスを積層する。このガラスは、スパッタリング、PECVDまたはLPCVDプロセスとそれに続くサーマルアニーリングを用いて積層することができる。
この三つの製作プロセスすべてに関して、プロセス中における一番重要なことは、最後の高温による酸化手順の間における通路を持つSiO2 膜組織の機械的な安定性である。最初の二つの実施形態における表面材料(そこではSiO2 )は、導電性が促進されるのを防ぐため、任意に窒化珪素で覆うこともできる。
【0096】
これで、作用と基準電極を形成することできる。底側の作用電極は、標準的な積層および写真平板法を用いて形成することができる。基準電極は、好ましくはシャドーマスクを通した導電材料の蒸着を用いて形成される。図1Bと図3Bに描かれているとおり、基準電極8は、井戸状部の底にある部位を少なくとも部分的に取り囲むような形状にすることができる。これに代わって、基の頂部と底部に適用できるように、別の基上に電極を配置する方法もある。
【0097】
さらに、溶液操作と細胞配置のための管状通路を基内に作成することも可能であり、この流れ用の管状通路は、基上の別の場所に入口/出口を持つ。これに代わって、基の頂部と底部に適用できるように、別の基上に管状通路を作成する方法もある。後で詳しく記載するとおり、電気浸透流の発生を促進するように、管状通路を構成する。
【0098】
ここに記載した特徴は、好ましくは図1Bで図示されているとおり、集合体の上からすべての接続用入口と出口に簡単に近づけるように修正される(吸引用出口32、作用電極16と基準電極8との接点)。この構成は、一つのユニットを集合体の頂部上に配置して、同じ形ではあるが、入口と出口を逆にした構成に調整することもできる。
【0099】
図2Aに描かれた好ましい実施形態では、基は、図1と関連して記載された基の井戸状部と同様の複数の井戸状部を有する。さらに、この基は、各井戸状部と繋がる二つの開口部44と46を持つ管状通路32を持つ。管状通路の開口部44と46は、図2Bの平面図に図示されているとおり、基の上方の湿潤な側にある。作用電極16は、管状通路32の通路30の近くに配置される。また、管状通路32は、管状通路の開口部44と46の方に配置された二つの追加電極6を持つ。電極16と6は、後で詳しく記述するとおり、電気浸透流を生起させるために溶液を満たした管状通路32に電圧および/または電流を供給するように調整される。通路30を通る流れを生起させるために、管状通路内の流れを利用することができる。そのため、この実施形態では、作用電極16は、測定と流れの生起という二つの働きを持ち、これらは二つの個別の電極で行われる。管状通路の水平の形状は図2Cに図示されており、底板42を取り除いた底面図を示している。
【0100】
図2A〜Cと関連して記載された実施形態に似た別の実施形態が、図3A〜Cに示されている。図3Aで見られるとおり、管状通路は、この管状通路の他の開口部が通路30で形成されているので、基の上方表面部には一つの開口部46しか持っていない。それでも、この実施形態においては、単に作用電極16と電極6間に電位差を印加することにより、管状通路から出る、または管状通路へ入る通路の流れを生起する流れを誘導することができる。図3Bと図3Cは、それぞれ平面図と底面図を表す。
【0101】
図2A〜Cと図3A〜Cの実施形態において、基の乾いた裏側ですべての電気的接続を行うために、電極6,16および18は、基12と底板42を通り抜け接続ピン20に繋がる引き込み電極18を持つ。
【0102】
管状通路32は、基12の裏側に管路として形成し、その後底板で覆うことができる。この管状通路は、SiO2 の厚い(約30μm)フィルムを積層した後、写真平板法とエッチングを用いて管状通路の範囲と形状を整えることによって形成することができる。これに代わって、写真平板法を用いてSU−8フォトエポキシを積層することによって形成することもできる。
【0103】
細胞とガラスピペット間に十分な接触を確保し、そのことによって細胞とピペットの先端部との間にギガシールを形成することは、従来の技術において良く記載されているところである。この発明にもとづく基の場合には、常に吸引力を供給する必要はなく、細胞の配置は、別の手段によって行われる。細胞が表面とある程度接着し、ギガシールを形成するには、細胞膜組織と基、典型的には超純度のシリカ間を単に接触させるだけで十分である。
【0104】
の技術は、基上への細胞の配置に関して幾つかの問題を生じさせる。幾つかの細胞が一つの槽に投入され、そこで一つの細胞を正確な位置に配置し、その位置に固定しなければならない。残りの細胞は、廃棄物と見なされ、除去される。細胞の配置のためには、細胞を付着させたくない領域を疎水性の材料から成るフィルムで、細胞を付着させたい領域を親水性のフィルムで部位をコーティングする。図9AとBに示されているとおり、疎水性の材料26は、ちょうど電極のまわりの領域を除いた試験区画内の基の表面を覆う。そのため、細胞は、自身を部位だけに接着させることができる。
【0105】
疎水性/親水性の領域の形成は、基上に接着性の模様ができるように特定の位置に微細パターン加工することによって実現できる。例えば、疎水性のシランまたはテフロン(R)、あるいは別のタイプのポリマーは、膜組織が低い接着性を持つべき領域の範囲を規定するのに使用することができ、他方親水性の二酸化珪素または窒化珪素と二酸化珪素の多重層は、高い接着性を持つべき領域の範囲を規定するのに使用することができる。例えば、ポリリシン、ビトロネクチンまたはフィブロネクチンのような細胞を接着する因子は、疎水性の領域には接着しないことが明らかにされている。そのような因子で微細パターン加工した材料を処理すると、疎水性以外の領域全体に細胞に対する接着性を付与できる。
【0106】
疎水性と親水性の両方の材料の微細パターン加工は、疎水性の領域に対しては図10A〜Gで概要が描かれているとおり、標準の写真平板法を用いて作成することができる。図10Aは、汚れのないシリカ基200を示し、それは図10Bに示されたとおりフォトレジスト202でスピンコーティングされている。図10Cに示したとおりマスク204を用いて光露光205し、続いて図10Dの露光されたフォトレジスト206の現像を行うと、図10Eに示されたとおり「レジストの無い」領域208が基200上に形成される。最終層のパターンは、「レジストの無い」領域208に相当し、マスク204によってその範囲が規定される。次に、図10Fのとおり、疎水性の材料210の層を基上に積層する。この材料は、例えば標準のCVD法を用いて、あるいは単にシランまたはテフロン(R)のような疎水性の材料に基を晒すことにより積層する。図10Gでは、フォトレジストがエッチングにより除去され、所望の形状を持つ疎水性の材料の領域212が残る。
【0107】
親水性のパターンを形成するためには、図10Fにある疎水性の材料210の代わりに親水性の材料を積層する。ウェーハー処理技術の当業者に良く知られているとおり、同様のパターンの領域を生みだす製作過程には、これと異なる広範囲の手順を用いることができる。
【0108】
部位への細胞の配置は、電界を用いて実行することができる。電気泳動法においては、電荷を与えられた粒子は、電界の影響を受けて流体中を移動する。動きを与えられるのが粒子ではなく液体である場合、例えば管状通路内にイオン溶液の流れを生成する場合、この現象は、電気浸透流と呼ばれる。細胞を微細な構造に誘導するのに電界を用いる場合、通常は微細な構造には作用しない多くのパラメータを考慮しなければならない。
【0109】
図2A〜Cと図3A〜Cに関連して記載された基の実施形態において、細胞、小胞またはリポソームの配置は、管状通路32に電気浸透流(EOF)を起こす電気浸透法を用いて実行される。電気浸透法を用いる場合、電極6と16を用いて溶液を通る電界を印加することで、管状通路内に溶液の流れが生起される。この流れは、井戸状部から間隙30に向けてのように管状通路と繋がっている容器内に流れを生起する。以下のとおり、電気浸透法に関する幾つかの重要な考察が図4Aに関連して記載されており、そして電気浸透流ポンプ(EOP)の幾つかの特定の実施形態が図5〜8に示されている。
【0110】
電気浸透流は、絶縁壁で仕切られた管状通路内の溶液を通る電界を印加することにより生起され、管状通路1の略図が図4Aに描かれている。各端に電極256と258を持つ壁250によって、管状通路が形成されている。この管状通路内に保持された溶液は、プラスイオン253とマイナスイオン260を持つイオン溶液である。
【0111】
この現象は、壁250の表面におけるマイナスに帯電した部位254の電離状態に依存し、この場合電気的中性状態では溶液内には過剰な移動電荷が存在し、その大部分は境界面に対してデバイ距離λD ≒l−10nmで与えられる薄い遮蔽層中の壁の近くに位置する。溶液に印加される電界は、過剰電荷の遮蔽層に作用し、溶液に流れを生起するものである。溶液内における過剰電荷の量と分布状況は、表面の材料(電離可能な部位の密度)と溶液の成分、特にpHとイオン密度に依存する。電荷分布は、電気浸透流の強度を決めるゼータ(ζ)電位の一つのパラメータに関係する。しかし、ゼータ電位の値は、材料/溶液の組み合わせに対して測定され、公表されているが、それは実際には直ぐに制御できるパラメータではなく、表面の部位の電離状態から発生するので、ζとEOFは、表面の状態と汚染状態の変化に対して非常に敏感である。ζに対する75mVの値は、シリカ表面に関するもので文献に示されている。ガラスに関する値は、シリカに関する値の二倍であるが、pHと吸着種の両方の影響に対して、実際には非常に大きくその値を下げるものである。ζに対するそのような値は、設計計算に用いることはできるが、正しい性能はそれには依存せず、実際に得られたものであるということを認めるのが賢明である。EOFの方向は、表面部位の電離状態で生成される溶液内の過剰な移動電荷で決まる。シリカまたは珪酸塩ガラス上の電離可能な成分に関するpKaとしては、−2であり、そして中性のpH値では表面はマイナスの電荷を持ち、EOFはマイナスの極性を持つ電極の方向に向う移動プラスイオンに従う。流れの管状通路の長さLと一定の断面積Aに対する電気浸透流量に関する体積流量
【0112】
【外1】
Figure 0004033768
【0113】
は、
【0114】
【外2】
Figure 0004033768
【0115】
で与えられ、εは誘電率、ηは溶液の粘性率であり、ζは溶液と管状通路境界間の境界面のゼータ電位である。Uは、長さLと一定の断面積Aを持つ管状通路の端面を通って印加される駆動電圧である。式1は、EOFポンプが無負荷時に駆動可能な最大流量を定義するものである。管状通路内の溶液粒子の平均速度は、一般的にはu=Ivol /Aで、電界の強さは、E=U/Lで与えられ、電気浸透流の流動性μeof =u/E=εζ/ηの定義をEOFポンプを持つ流れの管状通路の特定の寸法とは独立するものとし、もっぱら溶液と壁との間の境界面を特徴付けるものとしている。ポンプに負荷が接続された場合、EOF駆動力は、圧力駆動流(ポアズイユの流れ)と共に起こる。層流のポアズイユの流れに関する体積流量は、
【0116】
【外3】
Figure 0004033768
【0117】
で与えられ、Δpは流れの管状通路の両端面における差であり、Kchannel は管状通路のフローコンダクタンスである。そして、全流量は、
【0118】
【外4】
Figure 0004033768
【0119】
で与えられる。
【0120】
ポンプの圧力コンプライアンスは、Ivol =0とし、Δpに関して解いて、
【0121】
【外5】
Figure 0004033768
【0122】
となる。特定のEOFポンプの全体能力は、単位がワットで表される量である積
【0123】
【外6】
Figure 0004033768
【0124】
で与えられる性能によって数量化することができる。力が強くなるほど、ポンプの全体能力が良くなる。ポンプに、一端をフローコンダクタンスKloadで他端を基準圧とした負荷をかけた場合、基準圧に対する負荷間の圧力差は、
【0125】
【外7】
Figure 0004033768
【0126】
で与えられ、負荷を通る体積流量は、
【0127】
【外8】
Figure 0004033768
【0128】
で与えられる。
【0129】
特定のポンプ構成は、ポンプ管状通路の電気コンダクタンスGcanal を生起する。EOF駆動電圧に応じて、ポンプ管状通路内の電解質は、電流Iq を通す。EOFポンプに関する設計で考慮する点には、ポンプでのエネルギー損失による熱減衰を含めるべきである。さらに、電極の位置と形も考慮すべきである。電気生理学的機器においては、電極材の一般的な選択肢は、AgClであり、そのためポンプを稼動した場合のこのような電極の消耗を考慮すべきである。単位時間当りの体積で表した電極材の消耗率は、
【0130】
【外9】
Figure 0004033768
【0131】
で与えられ、AgClのモル質量はmAgCl=143.321g/molで、AgClの質量密度はρAgCl=5.589g/cm3 であり、電荷の基本単位はe=1.602x10C-19 で、アボガドロ定数はNA =6.02x1023mol-1である。
【0132】
消耗する電極の利用の代替法が提案されており、それは流体力学的な流れに対して高い抵抗を持つ電解質ブリッジによって槽と連結された外部電極を備えることに関するものである。これは、EOFポンプ機能を提供するものと同様に、薄い管状通路であるが、表面に電荷密度の低い部位(低いゼータ電位)を持つか、または表面にEOFポンプ管状通路と逆の極性の電荷を持つものである。後者の場合、反対の電極に対して低いフローコンダクタンスを持つ管状通路は、EOFポンプ機能に有利に働く。ほとんどの壁材は、ガラスまたはシリカのように、中性のpHの溶液と接してマイナスの電荷を持つ傾向がある。しかし、プラス電荷を持つ材料を見出すことも可能である。特に溶液が中性の低い方のpHの場合には、アルミニウムをベースとするセラミックが適している。これに代わるものとして、アガロース、ポリアクリルアミド、ナフィオン、酢酸セルロースのようなポリマーまたはゲル材料、あるいはその他の透析膜組織タイプの材料は、流体力学的な流れに対して高い抵抗を持つブリッジを構成できる。好ましくは、これらは低い表面電荷密度か、EOFポンプ機能の管状通路とは逆の極性を持つものである。
【0133】
以下において、EOFポンプの幾何学的構造の三つの実現可能な形態を述べ、それらの性能を比較する。
【0134】
図5AとBに表された平行平板型EOFポンプにおいては、シリカまたはガラスの表面を持つ二つの平板間に挿入された薄いスペーサが、ポンプ管状通路の範囲を定める。このポンプ管状通路は、幅W、長さL、および高さ(すなわち平板間の距離)hを持つ。溶液の導電率は、σ(塩化ナトリウムの水溶液150mMに対して約0.014Scm-1)である。ポンプ構成の実現可能な形態は、図5AとBに表されている。この管状通路の幅は、その高さと長さよりずっと大きい。このようなポンプの幾何学的構成は、ポリマーのスペーサボールまたはSU−8レジストで写真平板法を用いて形成されたスペーサで間隔を保持し、積層ポリマー容器内に組み込まれたガラス平板によって、容易に実現できる。ポンプの主要なパラメータを以下の表に示す。他のパラメータは、式1〜5から容易に計算できる。
【0135】
【表1】
Figure 0004033768
【0136】
図6AとBに表されたコルビーノ円盤型EOFポンプも、平行平板型の構成のように、スペーサで分離されたシリカまたはガラスの表面を持つ平板を基本としている。しかし、この幾何学的構成においては、平板は環状形であり、流れは、中心のドレインに対して放射状になる。平板間の距離hは、また環状体の内径(rin)と外径(rout )の両方に比較して小さくなければならない。このポンプ構成は、特にピペット用井戸状部に統合するのに適している。主要なパラメータを以下の表に示す。
【0137】
こし器型EOFポンプは、基本的には前の二つの例とは異なる。ここでは、ポンプの流れを起こす管状通路は、シリカまたはガラスの膜組織のN個の小さい穴として規定される。流体に対してζ電位を形成する多孔性の材料を通る流れによって、同様の効果を得ることができる。このポンプは、細胞の絶縁時に用いられる通路に関する同じ微細加工処理を用いて製造できる。一つだけの穴の代わりに、穴の配列を膜組織に作成するものである。しかし、この構成に関する主要なパラメータは、前の例ほど解析的に計算するのは容易ではなく、実効的な管状通路長に対応する単一通路Kpassage と幾何学的係数Fgeometryに対して実験的に決められるフローコンダクタンスに頼らなければならず、この実効的な管状通路長は、穴の直径dが膜組織の厚さtm と同程度である場合には、実際の膜組織の厚さより幾分長いと言える。
【0138】
【表2】
Figure 0004033768
【0139】
図7AとBは、このポンプ構成の原理を表している。このこし器型構成は、特に空間的に非常に小さく、コンパクトなポンプが必要な場合に適している。この構成の欠点は、この幾何学的構成に固有の熱減衰の困難性である。以下に、主要なパラメータの表を示す。
【0140】
【表3】
Figure 0004033768
【0141】
実際に選んだポンプの寸法に関する主要なパラメータを、以下に挙げる。電気生理学的機器における微細流体に関係する応用分野で実現可能なポンプの寸法は、次のとおりである。
【0142】
・平行平板型ポンプ W=0.5cm、L=0.5cm、h=0.5μm
・コルビーノ円盤型ポンプ rout =0.25cm、rint =0.1cm、h=0.5μm
・こし器型ポンプ tm =1μm、d=1μm、N=10、Fgeometry=2
これらの算定は、使用される溶液が生理学的な緩衝液であるという、電気生理学的な機器に関連した条件に基づいている。しかし、ほとんどの目的に対しては、150mMのNaCl溶液に対応したデータが代表的なものである。確定的な導電率はσ=0.014Scm-1であり、粘性率η=8.84x10-4kgm-1-1である。これらの算定は、駆動電圧U=100Vと控え目な選択値であるゼータ電位ζ=15mVに基づいている。EOFポンプに対して最も重要な負荷であると考えられる細胞レセプタ通路のフローコンダクタンスは、実験的に穴の直径の値に対して決まり、図4Bに示されている。
【0143】
これらの算定においては、ほぼ直径1μmの穴に対応するフローコンダクタンスKpassage =3pls-1mbar-1と仮定している。
【0144】
呼び水処理(Priming )は、作動前に初めて対象の機器を溶液で満たすために必要な処理であると考えられる。電気浸透の駆動力は、流れが生起される前に溶液内に両方の電極を浸すことを必要とする。提案の異なったEOFポンプ構成は、狭い流れを起こす管状通路の毛細管力によって自然にある程度呼び水処理される。しかし、毛細管力だけで両電極を含むポンプ槽全体を呼び水処理することはできない。AgCl電極の消費率を考慮すると、ガラス平板間に積層される薄いフィルム電極は、機器の運用期間全体に対しては持ちこたえられないと見込まれる。こし器型構成に対しては、状況はさらに悪い。対象の機器は、使い捨てと考えられているにもかかわらず、大きな電極が望まれる。この問題に対する実現可能な解決法は、大きな電極を含むポンプ槽の呼び水処理のためだけに適切に配置した薄いフィルム電極を使用することである。この大きな電極は、呼び水処理手順後に取り替えることができるものである。他に考えられる解決法は、正規の運用の前にポンプとピペット用ポートにガス圧を加えることにより機器全体を呼び水処理することである。多数の並行して測定する部位を持つ機器においてさえ、すべての部位に溶液をピペットで垂らし、すべての部位に同時にガス圧を加えることにより呼び水処理することで、容易に呼び水処理を行うことができる。
【0145】
【表4】
Figure 0004033768
【0146】
一つの考えられる細胞配置手順においては、機器には通路の前側と後側の両方に流れを起こす管状通路が組み込まれる。前側というのは、細胞が装着され、電気生理学的な測定用の追加の基準電極が配置される側を言い、一方裏側というのは、細胞を通路に引き込むために吸引が行われ、細胞内電極が配置される側を言う。表側の流れを起こす管状通路は、通路を通って、一端をポンプ(EOFポンプまたは同様の性能を持つ他のポンプ)と、別の一端をピペット用井戸状部と接続されている。表側の流れを起こす管状通路の体積は、細胞が一旦管状通路に入ったら、裏側のポンプで維持された通路の流れが短時間の内にその細胞を通路の位置に引き込んでギガシールを構築できることを確実に実行するのに十分に小さい。表側の狭いフローポンプにより、クールター計数器と同じ原理を用いて管状通路を通る細胞を検出することが可能となる。管状通路の各端に一つづつある二つの電極で管状通路の電気抵抗を電気的に測定することにより、この検出を行うことができる。細胞が流れを起こす管状通路に入った時、それはその体積に相当する緩衝液を追い出し、その結果その分だけコンダクタンスに寄与できないことになる。そのため、管状通路体積に対する細胞の体積の比率に従い、電気抵抗における相対的な変化が生じる。さらに、広がりによる抵抗への寄与も想定される。しかし、細胞の断面積が流れを起こす管状通路の断面積に比べて小さいので、それは小さい。管状通路抵抗における変化は、
【0147】
【外10】
Figure 0004033768
【0148】
によって計算され、この場合VcellとVc は、それぞれ細胞と管状通路の体積である。Rc は、管状通路の電気抵抗、Fs は細胞が管状通路内にあることに関連した広がり抵抗を考慮するための幾何学的な係数である。Fs は、1より少し大きな数であり、細胞と管状通路の断面積比に依存する。しかし、管状通路の幅が細胞の大きさと同程度になった場合には、この幾何学的な係数は、非常に大きくなり、それは広がり抵抗が緩衝液の体積交換による効果より優勢となる状態に該当する。裏側の流れを起こす管状通路は、非常に狭いものである必要はなく、一端を一つのポンプ口と他の一端を通路と直接接続された構成か、またはそれに代わるものとして管状通路の中央に通路を配置し、各端に一つづつのポンプ口を持つ二つのポンプ口を有する構成である。二つのポンプ口を持つ構成は、機器の運用中に細胞内緩衝液の交換を望む場合に選択される。前側の流れを起こす管状通路に繋がるピペット用井戸状部に配置された細胞がある確率で管状通路を通過するのに必要な待ち時間を予測するために、統計的な方法が用いられる。この確率は、主に未使用の細胞の密度Cc 、表側の流れを起こす管状通路における流れの平均速度uc 、ならびに流れを起こす管状通路の断面積Af に依存する。時間tの間に管状通路を通過する細胞の平均数は、
β(t)=Cc f c t (8)
により得られる。時間tの間に少なくとも一つの細胞が管状通路を通過する確率p(t)は、以下のポアッソン分布
【0149】
【外11】
Figure 0004033768
【0150】
で与えられる。この配置構成を明らかにするのに、計算の簡単化のため前側の流れを起こす管状通路は、断面が半径rc =25μmの円形で長さがLc =0.25mmであると仮定する。この流れを起こす管状通路の体積とフローコンダクタンスは、それぞれVc =0.5nl、Kc =πrc 4/8ηL=69nls-1mbar-1で与えられる。圧力で駆動するポアズイユの流れの流れの平均速度は、駆動する圧力差のmbar単位当り35mms-1である。典型的な半径rcell=6μmに対して、式7で与えられる抵抗の変化は全管状通路抵抗90.9kΩに対して約177Ωであり、すなわち変化率は0.19%である。この場合、広がり抵抗を考慮するための幾何学的な係数を1.06と仮定している。表側の駆動圧力差を単に1mbarとして、2秒以内に平均で4.1個の細胞が管状通路を通過し、少なくとも一つの細胞が確率98.4%で通過する。この配置構成は、一つの細胞が管状通路に入ったら瞬時に前側のフローを停止できるかどうかにかかっている。このことは、高速な電子回路を必要とし、これを回避する方法は、クールター計数器の原理を用いて管状通路内における細胞の存在が検出されるまで、前側の流れを起こす管状通路に小さい圧力パルスを連続的に印加することである。表側の流れを起こす管状通路の体積が小さいことを考慮すると、裏側の流れを起こす管状通路に搭載された、ここに記載されている型式のEOFポンプのどれも数分の1秒以内に細胞を通路の位置に吸い出すことができる。クールター計数器の細胞検出回路は、イオン・チャネル反応の電気生理学的な測定に必要とされるものと同じ型式のもので構成することができる。
【0151】
図5AとBは、平行平板型EOFポンプを細胞測定部位と統合した実施形態を表している。図5Aは、機器の側面図を、図5Bは、平面図を表している。この図は、細胞内緩衝液を含む裏側の溶液操作システムだけを考えている。容器60は、表面がガラスまたはシリカの二つの平行平板61と62を持つ。電極63と64の間に電気イオン電流が流れた場合、これらの表面の間の溶液を満たした空間にポンピング動作が発生する。ゲル材料65の領域は、電極63の周りに高い流体力学的な流動抵抗を持つ電流ブリッヂを構成する。これらの構成ユニットから成るEOFポンプは、細胞測定部位66の通路を通る流れを制御する。測定部位への低い抵抗の電流経路を設けるために、追加の測定電極67が付加されている。平行平板61と62との間には、これらの間隔をマイクロメータ以下に保持するためにスペーサブロック68が挿入されている。
【0152】
図6AとBは、コルビーノ円盤型ポンプをピペット用井戸状部に統合した実施形態を表している。図6Aは機器の側面図を表し、図6Bは平面図を表している。表面がガラスまたはシリカである二つの平行平板61と62は、これらの間隔をマイクロメータ以下に保持するためのスペーサブロック68を挿入した状態で、絶縁接着部71を用いてピペット用井戸状部69の底に固定されている。電極63と64の間に電気イオン電流が流れた場合、間隔を接近させた平板61と62の間の溶液を満たした空間にポンピング動作が発生する。上方の電極63は、(図のように)ピペット用井戸状部に統合するか、あるいは上方の機器保持部から井戸状部内に浸すことができる。矢印73は、機器の残りの部分への流れの接続方向を示している。EOFポンプを呼び水処理するために、平行平板上の井戸状部に溶液をピペットで入れる。毛細管力に打ち勝つためには、ガス圧を井戸状部の頂部に加え、溶液を平板間の隙間から下方の電極64に追い落とす。溶液が電極63と64の両方に接触したら、直ぐにEOFポンプを作動し、ポンピングを引き継ぐことが可能となる。
【0153】
図7AとBは、こし器型EOFポンプの実施形態を表している。図7Aは機器の側面図を表し、図7Bは平面図を表している。容器60は、頂部表面に薄い膜組織75を持つ微細構造ユニット74を有する。この微細構造は、絶縁接着部69を用いて容器に固定されている。この膜組織は、シリカまたはガラスから成る表面を持つ。微細構造の中央部において、直径が1ミクロンより小さい穴配列76が、独立した膜構造を貫通している。電極63と64の間に電気イオン電流が流れた場合、これらの穴の近傍にポンピング動作が発生する。矢印は、溶液の流れる経路を示している。
【0154】
図8は、溶液の流れを起こす管状通路と三つのEOFポンプ部位とともに細胞捕捉部位を持つ、この発明にもとづく基の実施形態を表している。容器60は、流体管状通路77と82を持ち、こられは頂部表面に薄い膜組織75を保持する微細構造ユニット74で分離されている。膜組織75における通路は、細胞2を保持するように調整されており、測定部位14を形成する。この流体系は、二つの分離された流れの系統から成る。第一の流れの系統は、細胞溶液を保持する管状通路77から成る。管状通路77は、膜組織77の上部、細胞溶液を加えるための入口78、および管状通路77内の細胞溶液に流れを生成し、制御するためのコルビーノ型EOFポンプを持つ出口80と接している(電極は図示されていないが、図6AとBに表されたとおりに配置することができる)。第二の流れの系統は、細胞内緩衝液を保持する管状通路82から成る。管状通路82は、膜組織75の下部、入口79、および管状通路82内の緩衝液に流れを生成し、制御するためのコルビーノ型EOFポンプを持つ出口81と接している(電極は図示されていないが、図6AとBに表されたとおりに配置することができる)。細胞2は、ピペット用井戸状部として動作する入口78を通して導入され、この流体系を通って測定部位14に運ばれる。管状通路77は、クールター計数器原理を用いた細胞の検出を可能とするために、細胞捕捉部位14の近傍において狭くなっている。
【0155】
細胞の測定を実施した後は、細胞を取り除くとともに、基を再利用または廃棄するために洗浄しなければならない。どちらの場合においても、細胞と化合物のあらゆる痕跡を適切に取り除く必要がある。電気浸透流を用いて、細胞を取り除くとともに、管状通路と通路を洗い流すことができる。この目的のためには、典型的には流れをできるだけ強くする。
【0156】
電気泳動法においては、電界が電荷を持った粒子に力を及ぼし、この力の方向は電界の方向と粒子の電荷(プラスかマイナスか)に依存する。部位に収束する電気力線を持つ電界を生成するように作用および基準電極を設計することにより、細胞や小胞のような電荷を持った粒子を電気泳動法を用いて部位に誘導することができる。電気泳動法を実行する場合には、電界が個別の粒子または細胞に作用するように、これに対して電気浸透流においては、電界が大量の媒体に流れを起こすようにすることが重要である。そのため、電界の詳細な形状は、電気浸透流においてよりも電気泳動法において、より重要な役割を果たすことになる。
【0157】
図1B、2Bおよび3Bに関連して記載した実施形態において、基準電極8は、部位および/または作用電極を少なくとも部分的に取り囲んでいる。次に、図9AとBを参照して、電気泳動法の詳細な記述を行う。
【0158】
図9AとBは、基準電極8によって少なくとも部分的に取り囲まれた作用電極16を持つ基12の側面図と平面図を表している。作用電極は、井戸状部の底の通路30の中または下に配置する。好ましくは、作用電極を取り囲む部位の領域は、細胞がこれらの領域に接着しないように疎水性の材料26でコーティングされる。
【0159】
電極16と8間に電位差を印加すると、図9A〜Bに表されるとおり、作用電極16に収束する電気力線90を持つ電界が形成される。基準電極8が通路30または作用電極16を取り囲む幾何学形状により、基準電極8からのすべての電気力線は、作用電極16またはそれに代わって通路30の方向を向く。さらに、基準電極の環境にあるどの位置においても、電気力線の密度、およびそのことにより電界の強さが作用電極16またはそれに代わって通路30に向かう方向において増加する。図1A〜B、2A〜Cおよび3A〜Cの実施形態において、電気力線を通路30の方向に向けるためには、作用電極16を通路30の近傍またはその中に配置する必要がある。
【0160】
図1B、2Bおよび3Bとの関連で記載した実施形態においては、電極16と18間に電位差を印加することによって、装着する細胞を作用電極16またはそれに代わって通路30に配置することができる。電気泳動法に必要な電位は、典型的には電気浸透流において必要な電位よりも大きく、電極16と18間の距離に依存して、数ボルトのオーダーになる。基準電極8は、典型的には細胞に比べて大きく、このことは、典型的には10μmと5mmの間、好ましくは100μmと1000μmの間にある直径を持つということを意味する。
【0161】
好ましい実施形態においては、細胞の配置は、上述した異なる方法を組み合わせて実行される。
【0162】
部位が細胞に対してギガシールを形成しているかどうかを検出するために、作用電極と基準電極間の漏れ電流が測定される。試験区画が多数の電極を持つ場合においても、ギガシールで絶縁された電極を探し出すのは簡単な作業であり、コンピュータに非常に適した仕事である。図11と12は、ギガシールされた測定部位を検出するための構成を示している。この構成を実行するための電気システムの実施形態については、後で詳細に記述する。
【0163】
図11では、多数の部位がnxm(ここでは3x3)のマトリックスを形成している。電極の配線18は、基上の接点列20(1番〜9番)に繋がっており、これらの接点は、電流測定手段を持ったコンピュータにより個別に指定することができる。ギガシールされた電極のリストは、図12の流れ図に描かれた単純な方法を用いて作ることができる。第一ステップ(1)において、電極のマトリックスにおけるすべての点を調べるために、二つのループが作られる。ステップ(2)において、電極接点番号N(1番〜9番)を持つ電極接点の個別の指定(ステップ(3))を行うために、マトリックスのnxm配列を展開する。階段形状の電圧が接点Nと接点番号0の基準電極8間に印加され、生じた電流信号を測定し(ステップ(4))、そして大きな漏れ電流が流れるということは、ギガシールは形成されていないということ、INO>Ithreshold であり、それに反してギガシールが形成されている場合には、細胞にはほんの小さな漏れ電流しか生じないので、絶縁部の特性(すなわち、ギガシールか否か)は、生じた電流の大きさによって決めることができる。ギガシールが検出された場合には、接点番号が好適な電極リストに加えられ(ステップ(6))、その中から作用電極が選択される(ステップ(7))。この構成は、好適な電極の相対位置n,mの情報を持ち。この情報は、ステップ(7)で最適な作用電極を選択するために利用できるが、省略して各電極を単純に接点番号Nで識別できるようにすることもできる。典型的には、試験区画当り一つの電極だけが選択される。
【0164】
これらのチャネルの活動は、単一チャネルのレコーディング(オンセルレコーディング)で電気的に測定するか、またはパッチを破壊して細胞膜組織全体のチャネル活動を電気的に測定することができる(ホールセルレコーディング)。ホールセル測定を実行するための細胞内部への高いコンダクタンスによる接触は、少なくとも三つの異なる方法により得られる。
a)図1A〜B、2A〜C、3A〜Cおよび8に関連して記載された基の実施形態において、膜組織は、基の裏側からの吸引により破壊することができる。引っ張る向きの流体静力学的な圧力が、強さが増加する形の短いパルスか、または強さが増加する形の傾斜波か階段波として印加される。印加される圧力は、10から200mBarの間でなければならない。膜組織の破壊は、印加された試験電圧パルスに応答した大きく増加する容量性の電流スパイク(細胞膜組織の全静電容量を反映して)によって検出される。吸引は、細胞を配置するための吸引と同じ方法、またはこれらの組み合わせによって行われる。
b)電圧パルスの印加による膜組織への衝撃。電圧パルスは、強さ(200mVから1V)と長さ(10μ秒から1秒)が増加する形の短いパルスとして、あるいは強さが増加する形の傾斜波か階段波として、電極間に印加される。典型的な細胞の膜組織を形成する脂質は、これらの電圧パルスからの大きな電界の力により影響を受け、それによって膜組織は、電極の近傍で分解する。膜組織の破壊は、印加された試験電圧パルスに応答した大きく増加する容量性の電流スパイクによって検出される。このような傾斜パルスを印加するための電気システムの実施形態については、後で詳細に記述する。
c)膜組織の透水性化。空孔を持つ化合物(例えば、ナイスタチンまたはアンフォテリシンBのような抗生物質)を、例えばこれらを事前に部位に積層することにより適用する。膜組織を破壊することによってではなく、透水性の分子を組み込むことにより膜組織の抵抗を選択的に低下させ、電極対による効果的な細胞への電圧制御が可能となる。この組み込み後には、全体の抵抗が徐々に低下し、静電容量が増加する。
【0165】
この発明のシステムを用いて実施される電気生理学的な測定には、各電極における電解反応に関して、溶液に浸した二つの電極間に電流を流すことが含まれている。このシステムを設計する場合には、主に個別の試験区画の寸法が非常に小さいことに起因する一連の問題が発生する。
【0166】
この発明にもとづき、測定部位と電極を保持する基は、微細構造であり、そのことから電極のサイズも、同じく極小化される。電極を考える場合に重要な点は、電極の所要のサイズを決定することである。電極反応においては、一つの電極の金属は、ゆっくりと溶け、その電極は最終的には完全に溶解してしまう。この問題は、従来の技術においては、長期間にわたって実施されない限り、常に電極は効果を発揮するのに十分な大きさを持っていたので、関係がなかった。また、この発明にもとづく基は、好ましくは使い捨ての大量生産品なので、使い捨て後の汚染の可能性とともに材料のコストを最小限に抑えられる。
【0167】
長い実験においては、実験者は、例えば10nAの電流を10分間流す実験を行い、以下の電極反応を起こすようにするためには、電極はある量のAgClを含まなければならない。
AgCl→e- +Ag(s)+Cl- (aq)
ファラデー定数(96485.3Cmol-1)から、アンペアはCs-1と定義されるので、1秒間に10nAの電流に等しいAgClのモル数nを以下のとおり得る。
n=10-8Cmol/96485.3Cs=1. 0364・10-13 mols-1
これにより、10分間の実験を行うのに必要なモル数Nは、以下となる。
N=600s・1. 0364・10-13 mols-1=6.22・10-11 mol
AgClの密度は5.589g/cm3 であり、その分子量は143.321g/molである。そのため、6.22・10-11 molは(143.321g/mol・6.22・10-11 mol=)8.91・10-9gのAgClと等しいとの結果を得る。この量は、以下の体積を持つ。
V=8.91・10-9g/5.589g/cm3 =1.595・10-9cm3
=1595μm3
より一般的に言うと、これは毎分1nAの電流を流すのに15.95μm3 のAgClが必要であることを意味する。
【0168】
電流が反対方向に流れる場合には、次の電極反応が起こる。
Ag(s)+Cl- (aq)→AgCl(s)+e-
これは、AgがAgClに変化することを述べており、そのため電極はAgを含まなければならず、そうしないと電流が反対方向に流れることができず、そして以下の有害な電極反応が起こる可能性がある。
2Cl- (aq)→Cl2 (aq)+2e-
pHにおける同時変化を伴う他の起こりうる反応は、以下のとおりである。
2H2 O→4e- +4H+ (aq)+O2 (aq)
Agは、10.3g/cm3 の密度と107.9g/molの分子量を持つ。10分間の10nAという例を用いて、(107.9g/mol・6.22・10-11 mol=)6.71・10-9gのAgとなる。この量は、650μm3 の体積となる。
【0169】
そのため、電流測定の極端な例に対して用いられるAg/AgCl電極の全体積は、以下のとおりとなる。
total =650+1590=2240μm3
一般的に言うと、これは毎分1nAの電流を流すのに22.4μm3 のAg/AgClが必要であることを意味する。
【0170】
以上述べたとおり、長い測定は、電流が数分間にわたって不活性化してゆく、Smith 氏やAshford 氏が記載しているような、ゆっくりと不活性化する電流の研究においてのみ必要なものである。大多数の研究においては、電極は、1〜20μm3 の範囲でAg/AgClを積層する必要がある。図13には、KClおよびAg/AgClの積層を井戸状部の側壁に形成した、電極の実現可能な構成が描かれている。Ag/AgCl電極は、ドリフトを最小限にするため、0.9%のNaClに格納される。
【0171】
備考:Smith 氏,MAとAshford 氏,MLによる「Inactivation of large-conductance, calcium-activated potassium channels in rat cortical neurones」, Neuroscience 2000, 95(1), 33-50
Clの活動は、Ag/AgCl両電極において同じであるということが重要であり、そうでないと二つの電極間に大きなオフセット電流が流れることになる。Clの活動を持続させる方法は、高いモル濃度のKClブリッジでレコーディング槽からAg/AgClを分離することである。Clを排除してしまうと、電極が完全に分極し、有害ガスの発生やpHの変化のようなその他の望まない電極反応を引き起こす電位が形成されることとなる。
【0172】
備考:Raynauld氏,JPとLaviolette氏, JRによる「The silver-silver chloride electrode: a possible generator of offset voltages and currents」,J Neurosci Methods 1987 Mar, 19(3), 249-55
Ag/AgCl電極は、生物学的サンプリングをAgで汚染することに繋がり、そのため生物学的試料をAg/AgCl電極と直接接触することから遮蔽するのが賢明である。これは、Ag/AgCl電極と生物学的試料を格納した区画間に高いモル濃度のKClブリッジを用いることにより達成される。このブリッジは、まずAg/AgClで基の材料をコーティングした後に、KClを結晶コーティングし、次にポリマーで包むことにより得られる。このポリマーは、生物学的試料を格納した区画との電気的接触を可能とするため、レーザーまたは写真平板法を用いて幾つかの個所を破断する。
【0173】
電極の電位は、その電極を通る電流が無くなった場合に基準電極に対して測定される。言い換えれば、電気化学的な電池の起電力は、問題としている電極と基準電極が対象となる。平衡電位と標準電極電位も参照されたい。平衡電位の概念は、おそらく単純な金属/金属イオンの電極系で実証するのが最も簡単である。金属(例えば、銀)をそのイオンを含む溶液(例えば、硝酸銀溶液)に浸した場合、金属イオンは金属/溶液境界面を移動する。それらは、イオンの「化学エネルギー」が大きな相からイオンの「化学エネルギー」がより小さい相に移動する。これは、その系に依存してどちらの方向にも起こりうる。しかし、プラスの電荷(例えば、銀)を持った陽イオンだけが境界面を通ることができる。マイナスの電荷を持った電子は、溶液中に移動できず、そして陰イオン(例えば、硝酸塩)も金属中に移動できない。イオン溶液内に電極を置く場合、以下のとおり多くの分極効果が生じる。
1.Clを含む溶液に対しては、(Ag/AgCl電極の電極境界面で見られる)活性化分極が無視できるが、Clが無い溶液においては無視できない問題となる。これは、電極の活性化電位に影響するが、汚染のところで記載したとおり、KClブリッジを用いて回避することができる。
2.(数百ミクロンまでの空乏域に見られる)濃淡分極。これは、電極からのイオンの消耗によって溶液の汚染に繋がる。電極は、大容量の溶液の濃淡状況との干渉を起こさないように、大容量の溶液から十分に離して配置しなければならず、典型的には200μmのオーダーの距離で十分である。
3.(電気化学的電池全体の抵抗を反映する)オーム分極は、絶縁抵抗の低下を起こす。これは、電流に依存する測定回路に余分な直列抵抗を生じさせ、そしてそのことにより修正しなければならない測定誤りを引き起こす。この効果を最小限にするには、作用電極と基準電極間の距離を最小限にする。これは、電極の二重層の静電容量とともに、電極応答の時定数を定める。そのため、これは、与えられた状態における電極に対して記録可能な最大周波数を決めるものとなる。
【0174】
備考:Tassinary 氏,LG、Green 氏,TR、Cacioppo氏,JT、Edelberg氏,R による「Issues in biometrics: offset potentials and the electrical stabil-ity of Ag/AgCl electrodes 」,Psychophysiology 1990 Mar, 27(2), 236-42
適用可能な測定構成を構築後には、ギガシールされた細胞は、電気システム系の部品を構成する。図14は、測定構成の拡大図であり、細胞2および通路30を持つ基12から成る測定構成の全電気抵抗Rseries、高速静電容量Cfast, ならびに低速静電容量Cslowを示している。
電気システム系
上における膜組織の電気特性を測定するための電気システム系は、以降主電子回路といい、各測定部位にある一つ以上の作用電極と各部位と接する一つの基準電極を有する。
【0175】
作用−基準電極の各対は、一つ以上の増幅器と一つの低雑音電流電圧変換器に接続している。この発明にもとづく基は、多数の測定部位を持つので、増幅された出力(典型的には8以上の組として)は、マルチプレクサに繋がっており、これは各信号を順次アナログデジタル変換器(A/D)を通してデジタル信号プロセッサ(DSP)に送るものである。DSPは、信号の事前分析とコンピュータへのインタフェースとしての役割を持つ。DSPは、入力信号を処理する役割を持ち、信号の単純な数学的記述に対するフーリエ係数ならびに多項式の係数の高速計算のために使用される。さらなるデータ処理は、典型的にはコンピュータで行われる。主電子回路は、また各測定部位への電圧固定信号と試験信号を生成する役割を持つ。
【0176】
以下の段落においては、主電子回路は、主電子回路の概要を表す図15に関連して記述されている。その後、主電子回路の様々な構成部品の詳細な記述が、図16と20に関連して記載されている。
【0177】
電圧固定構成においては、与えられた細胞101からの電流信号を測定するために、アナログスイッチ103を用いて作用電極と基準電極間で電圧のオン/オフを切り替える。それによって、イネーブル網110のイネーブルピンD1〜D4を用いて異なった細胞/部位を指定することができる。作用電極の電流信号は、電流電圧(I−V)変換器102で電圧信号に直接変換される。
【0178】
I−V変換器の機能は、二つの構成部品102と104に分けられる。アナログスイッチ103とI−V変換器102は、基上に物理的に配置される。I−V変換器104以降は、好ましくは第二の基上に配置される。図示した実施形態においては、一つの井戸状部が4組のアナログスイッチ103とI−V変換器102を持ち、それらはそれぞれ井戸状部外のI−V変換器104と接続している。イネーブル網110のイネーブルピンD1〜D4によって、同時には、一組だけが選択される。
【0179】
I−V変換器からの出力信号は、10kHz以上の周波数を持つ信号をカットオフするため、差動増幅器105とローパスフィルター106を通る。フィルターされた信号は、イネーブルピンD1〜D4に対応して、サンプリング論理部107とフィードバック網108に供給される。
【0180】
クランプする細胞101に対して、Vref 電圧を安定して保持するためには、I−V変換器の各組には一つのフィードバック網108がなければならない。フィードバック網108は、I−V変換フィードバック、固定直列抵抗補償および保持/誘導電圧Vstimの機能を持つ。これらすべては、信号ピンVref によってフィードバックされる。フィードバック網108は、イネーブル網110のイネーブルピンD1〜D4によって制御される。
【0181】
また、図15において、アナログスイッチ109は、イネーブル網110によって制御されるイネーブルピンD1〜D4を用いて、正しいVref が差動増幅器105に供給されることを確保するものである。
【0182】
図15の主電子回路に表されたサンプリングロジック部107は、増幅され、フィルターされたアナログ信号をデジタル信号に変換する。このデジタル信号は、データバス120を介して、プロセッサDSP/CPU109に転送される。DSP/CPU109では、デジタル信号/データが多項式の表現形式に変換される。そのデータは、DSP/CPU109から、PCインタフェース123を介してコンピュータに転送される。DSP/CPU109は、アドレスバス122を介してイネーブル網110にアドレスを送信することにより選択されたチャネルと井戸状部を把握している。このアドレスはイネーブル網110で復号され、選択されたチャネルはピンD1〜D4とイネーブルピンE上で指定される。また、DSP/CPU109は、デジタル信号をデータバス121を介して刺激信号発生器111に送信することにより、各I−V変換器102にアナログ信号を印加する。刺激信号発生器111は、このデジタル信号をアナログ信号に変換する。
【0183】
図16と20は、図15の主電子回路のI−V変換器の構成部品102と104の異なる実施形態を表している。図16と20は、二つの測定部位の電子回路を図示しているが、多数のI−V変換器の構成部品を並列に配備することができる。
【0184】
図16においては、選択されたアナログスイッチ103からの測定電流信号が、デュアルFET U430 112の入力の一つに送信される。このデュアルFET U430 112は、差動プリアンプとして機能し、その出力はさらに従来のオペアンプNE5534 113によって増幅される。デュアルFET U430 112の第二の入力は、Vref フィードバック信号を受信するために使用される。Vref は、フィードバック網108によって作られる信号である。Vref は、Vstim、フィードバック電圧および固定Rseries補償電圧のような多くの異なった信号から作られる。差動プリアンプにVref で印加される電圧レベルは、差動プリアンプの他の入力のレベルが同じになるように作用し、それにより細胞の正しい電圧固定を行えるようにする。
【0185】
トランジスタ網115は、「固定電流」構成である。それは、差動プリアンプのDC駆動電圧を正しく、そして第二に最低にならないように保持し、差動プリアンプの共通モード阻止機能を改善するものである。デュアルFET U430
112は、差動プリアンプとして機能し、そしてオペアンプNE5534 113は、電流電圧変換器として構成された「スーパーオペアンプ」と考えることができる。この変換は、公式Vp =Ip ・Rf にもとづき、ここでRf はフィードバック抵抗114の抵抗であり、典型的には0.5GΩのオーダーである、フィードバック抵抗114を通して行われる。差分増幅器105は、電圧差を読み取るために用いられる。
【0186】
この回路の主要な利点は、デュアルFET U430 112とアナログスイッチ103が基の裏側に組み込むことが可能であり、実際にはFETをシリコン層に直接作成することが可能であることである。この回路の他の利点は、ここに記載した構成部品を用いた場合により良い仕様を得ることが可能であるということである。
【0187】
前の段落で記載した構成の回路は、I−V変換器をどのように構成できるかを示す単なる一例にすぎない。別の例が、図17に図示されている。そこでは、デュアルFET U430 112とオペアンプNE5534 113が一つのオペアンプAD743 131と置き換わっており、I−V変換器とアナログスイッチ103が逆順に配置されている。この回路の主要な利点は、それが少ない構成部品を使い、「フリップチップ」搭載技術の使用を可能とするものであることである。
【0188】
図18は、図15の主電子回路のサンプリング論理部107の実施形態を表している。
【0189】
図15の構成部品102〜106から供給される信号のような、フロントエンドアンプ116からの信号は、MUX117で多重化されて、アナログデジタル変換器118に転送される。
【0190】
アナログデジタル変換器118のサンプリングレートは、(ナイキストの「標本化理論」を実行するためには)入力信号の最大周波数の少なくとも2倍の大きさでなければならない。この場合、アナログ信号は、10kHzローパスフィルターを通ってきており、そのためサンプリングレートは、デジタル信号で正しい情報を得るためには、少なくとも20kHzまたはより良くは30kHzでなければならない。また、サンプリングレートは、各MUX117の入力数倍される。アナログ信号のデジタル信号への変換後に、DSP/CPU109は、例えばデータを多項式に変換するような、追加の信号処理を行う。
【0191】
各マルチプレクサ117は、Eピン上において、イネーブル網110によって実行可能とされる。MUX117からの「MUXレディ」配線119は、A/D変換器118への「A/D変換開始」となる。デジタル信号は、データバス120を介して、A/D変換器からDSP/CPU109に進む。
【0192】
図19と20は、図15の主電子回路の刺激信号発生器部分111の異なった実施形態を表している。
【0193】
図19に表された回路においては、DSP/CPU109は、データバス121を介して、刺激信号発生器のデジタルアナログ(D−A)変換器124にデジタル信号を送信することにより、アナログ信号を各I−V変換器116(Vref )に供給することができる。このアナログ信号は、DSP/CPU109の事前にプログラムされた手順に従って、パッチされた細胞101を試験および/または破壊するために必要である。このアナログ信号は、細胞101を刺激するための傾斜波のようである。傾斜波発生回路が二つだけ図示されているが、図19の回路のデータバス121は、4つの個別の細胞101を並行して試験する手順を可能とするものである。傾斜波アナログ信号を発生させるために、一連の異なったアナログ信号が必要であるが、細胞101のためには、これらの信号をリアルタイムで印加しなければならない。
【0194】
デジタルアナログ変換器124は、同時に一つの信号を発生することができ、デジタルアナログ変換器の数を制限するために、アナログ信号を多重化ユニット125を通してサンプリング/保持回路126に送る。サンプリング/保持回路126は、文字通り、第一に多重化ユニット125からの信号を「サンプリング」電圧での測定を行い、次にこの「サンプリング」電圧での測定を「保持」し、他方多重化ユニット125は別のアナログ信号を別のサンプリング/保持回路126等に供給する。デジタルアナログ変換器124は、変換が完了した時に、多重化ユニット125に「レディ」信号127を送信し、その後信号が傾斜波の連続として放出される。選択網128は、多重化ユニット125がアナログ信号を送信しているサンプリング/保持回路126を把握するものである。
【0195】
多数の異なるアナログ信号をリアルタイムで同時に供給する別の方法は、各異なるタイプのアナログ信号に対して、一つのラッチ129と一つ以上のD−A変換器124の組を持つことである。このことは、図20に表されている。このラッチ129は、イネーブルピンE上において、イネーブル網110により実行可能とされた場合に、データバス121を介してD−A変換器にデジタル信号を送り、この信号を新しいデジタル信号が送られるまで保持する。ラッチ129は、デジタルデータが変換準備完了となった場合に、デジタルアナログ変換器124に「レディ」信号130を送信する。すべての細胞101が同じ試験信号をかけられる時に起こる、すべてのアナログ信号が同じような場合には、アナログ変換器124は一つだけ必要である。
【0196】
図21は、この発明にもとづくシステムの概要を表している。以降の段落においては、以下の図21の参照番号を用いて、このシステムの簡単な記述が行われている。
【0197】
【表5】
Figure 0004033768
【0198】
図21は、特別なHTSパッチクランプ応用に必要なデータ取得、分析および記憶手段のみならずHTSシステムに必要な細胞、化合物および使い捨て器具の操作を実行するための幾つかの可能な解決法の一つを表している。
【0199】
図21においては、サーバーPC300は、一つ以上のデータ取得・解析用PC302によって収集、送信される実験データを記憶するため、ならびに異なるPC300,302と304上で動作する異なるソフトウェア構成要素間でプロセス間の通信と同期メッセージを転送するために使用される。
【0200】
一つ以上の装置制御用ワークステーションPC304が、ロボットアーム320,322、細胞培養ユニット330、使い捨て器具貯蔵ユニット332、化合物貯蔵ユニット334ならびに細胞装着・配置ユニット350を制御するために使用される。ピペット操作用デッキ340、ピペット用部位342およびロボットアーム用レール310は、商業的に入手可能なHTSピペットシステムの中核機器とすることができる。ピペット用ロボットアーム320は、溶液のピペット操作用に使用され、常設または使い捨てのピペット324を装填する。
【0201】
プレート取扱い用ロボットアーム322は、使い捨て器具貯蔵ユニット332から使い捨て器具(化合物運搬プレートと実験プレート(基))の取り出しと運搬用、細胞培養ユニット330からの細胞を含むプレートの取り出しと運搬用ならびに化合物貯蔵ユニット334からの化合物を含むプレートの取り出しと運搬用に使用され、すべて適切な入力・出力スロット336を経由して関係するプレートサイト342および入力・出力スロット352,362と364に取り出し/運搬される。
【0202】
細胞装着・配置ユニット350において、細胞は試験プレート(基)上の試験部位に装着され、さらに別に記載した配置手段の一つを用いて配置される。細胞が装着され、配置された場合、試験プレート(基)は、実験が実行される化合物適用・測定ユニット360に運ばれる。
【0203】
使用する細胞配置方法に依存して、細胞装着・配置ユニット350またはその機能は、有利には化合物適用・測定ユニット360に統合することができる。
【0204】
電極を持つ基の個別の形状に依存して、担体液、細胞および試験化合物の付与を幾つかの方法で実施することができる。
【0205】
細胞は、最適な(温度および二酸化炭素レベル)保管条件を可能とする培養器内に待機して保管される。細胞は、多くの場合図22と24と関連して化合物の適用に対して記載されるものと同じ適用装置を用いて、培養器から取り出し、基の流れの系統に注入することができる。細胞配置手段は、基に関する段落で記載されているとおりである。
【0206】
また、細胞は、増殖培地に浸しながら基上で直接培養できる。最適な場合には、細胞は、表面上に細胞の増殖に適さないように意図的に作った領域を除いて表面全体の上に(増殖させる細胞のタイプに依存して)均質な単層を形成する。基上における細胞の培養の成否は、基の材料に大きく依存する。
【0207】
また、細胞の代わりに、イオン・チャネルを組み込んだ人工的な膜組織を使用することができる。そのような人工的な膜組織は、通路上に小さい塊の脂質を配置することにより、脂質の飽和溶液から作ることができる。この技術は、例えばChristopher Miller氏の「Ion Channel Reconstitution」,Plenum 1986 ,p.577 に完全な形で記載されている。通路のサイズが適切で、水のような極性のある液体が通路の両側に存在する場合には、脂質の二重層を通路上に形成することができる。次の手順は、この二重層にたんぱく質のイオン・チャネルを組み込むものである。これは、二重層の片側にイオン・チャネルを組み込んだ脂質の小胞を供給することにより実現できる。この小胞は、例えば傾斜した浸透圧によって、二重層と融合することができ、それによってイオン・チャネルが二重層に組み込まれる。
【0208】
標準的なマイクロタイタープレートの寸法内で適合可能なサイズを持ち、そして標準的なマイクロタイタープレートのサイズの保持機器に取り付け可能なウェーハを用いて、基の交換を実施することができ、このようにすることで既存のロボットを利用することができる。これに代わる方法として、(典型的には顕微鏡装置と関連して使用される)ウェーハ検査用の既存の技術にもとづく装填機器を使用することもできる。
【0209】
試験される化合物は、標準的なロボット装置と関連して利用可能な既存の「ホテル」内に保管することができる。プレートと化合物の登録は、既存の装置を用いて、バーコードを読むことを基本とする
以下において、化合物の適用に関する多くの異なった構成を記述する。
【0210】
図22は、使い捨てのピペット用先端部を用いた担体液と化合物の直接的な適用に関する汚染の無いピペット操作方法を図示したものである。このピペット操作システムは、マイクロタイタープレート72の蓋に実装された、使い捨ての(およびこのために汚染の無い)二次元配列のピペット72をベースとするものである。この方法に適した物理寸法では、(好ましくは使い捨て器具として硬質プラスティックから製作された)各ピペット72のスリットは、毛細管として機能し、マイクロタイタープレートの溶液を満たした井戸状部に下げられた場合に溶液52または36を充填する。
【0211】
それから、そのようなピペット72で採取された溶液の一部を、疎水性の領域26で隔離された親水性の領域56を含む運搬プレート54に移動する(化合物の間接適用)。
【0212】
これに代わる方法として、平らな先端部を持つピペットによりピペット操作を行うことができ、その上ではピペットが溶液から離れるにつれて、溶液52または36の液滴が形成される。ピペットの先端部に残る溶液の量は、先端部の面積と親水特性によって決まり、両方とも製造過程で制御可能なものである。
【0213】
その他の代替法としては、基本的に毛細管であるピペット先端部を用いることであり、この方法は図24A〜Cと関連して後に記述されている。
【0214】
化合物の直接適用が好ましい場合には、化合物52または36を試験区画に直接運ぶためにピペット72を使用することができる。詳細は、図24A〜Cを参照されたい。
【0215】
図23AとBは、化合物運搬プレートを用いた化合物の間接適用の実施形態を図示したものである。ここでは、図22に関連して記述された化合物の直接適用に関連して記述されているとおり、最初に化合物を運搬プレート54に置く。
【0216】
次に、図23Aにおいて、化合物の液滴52を持つ運搬プレート54が、担体液52内の細胞2を持つ基12の上方または下方の位置に置かれる。図23Bに表されるとおり、試験区画15の溶液52の滴が、運搬プレート54上の液滴52と接するように動かされた場合に、溶液の交換が行われる。細胞2の周りの十分な量の溶液の交換を行うためには、運搬プレート54上の液滴52の量が、試験区画15の容積と比較して大きいものとみなされなければならない。試験区画15の周りの領域においては、運搬プレート54上の液滴52が試験区画15の個所以外で基12と接しないように、基12の厚さが低減されている。
【0217】
図23AとBにおいては、運搬プレート54は、基12の下方の位置に置かれている。液滴が試験区画15に上方から適用されるように、運搬プレート54と基12を引っくり返した逆の状態も、同様に有効である。
【0218】
図24A〜Cは、異なった長さのピペット用先端部または毛細管を用いた化合物の直接適用の原理を図示している。
【0219】
図24AとBは、毛細管60と62による溶液の交換の使用状況を図示しており、それらは化合物の直接適用を可能とするように連携して取り付けられている(理想的には図22AとBに関連して記載されたとおりのマイクロタイタープレート用の蓋に実装される)。これらの毛細管は、異なる長さを持ち、図24Cに図示されているとおり、試験区画15の周りの通路58を持つ特別な基と一緒に使用される。新しい化合物を運ぶものより長い空の毛細管60は、この毛細管60を取り除きたい溶液と接するように台を下げることによって、溶液を取り除くために使用される。化合物を運ぶ毛細管62は、溶液を満たした管の先端部にある溶液が基に接しないように、空きの毛細管60より短くなっている。新しい化合物を試験区画に運ぶためには、溶液を満たした毛細管62が試験区画15の上方にくるように移動される。台を下げることにより、溶液を満たした毛細管62から溶液が部位に充填される。この時点においては、長い方の毛細管60は図24Cに表されている通路58に下ろされる。
【0220】
図24Bは、(理想的には図22AとBに関連して記載されたとおりのマイクロタイタープレート用の蓋70に実装される)毛細管60と62の側面図である。図24Cは、試験区画15、増幅器の電子回路との接点20および穿孔58を有する完全な試験配置の平面図である。
【0221】
上述した化合物の適用は、HTSシステム用の標準的なロボット装置を用いて、あるいはプリンタヘッドに見られるようなインクジェットやバブルジェット(R)バルブのような既存の技術をベースとする特別に構成した適用システムを用いて実行することができる。
【0222】
その代替法として、化合物の間接適用または直接適用に対して、統合型ピペットを持つマイクロタイタープレート用の特別に設計した蓋を使用することとができ、これは汚染の無いピペット操作を確実に実施するものである。また、代替法として、チップ技術を用いて設計された新しい適用システムの使用法がある。
【0223】
前述した化合物の適用システムを用いて、試験化合物を液体流として、液滴として、または噴霧として適用することができる。後者に対する前者の二つの方法の利点は、適用済みの(基準または試験)化合物を、別の化合物を適用する前に大幅に取り除くことができることである。
【0224】
試験区画が上方から接近できる場合には、以前の段落で記載した投与またはピペット操作システムによって、担体液および細胞の液滴を各試験区画に供給することができる。これに代わるものとして、インクジェットプリンタヘッドまたはバブルジェット(R)プリンタヘッドのようなシステムを使用することができる。他の利用可能なものとして、nQUAD吸引投与装置または少量の溶液を投与するように調整したその他の投与/ピペット操作機器がある。これに代わるものとして、担体液と細胞を全体として(例えば、基に細胞を含む担体液を注入または基をこのようなものに浸すことによって)基上に適用するものであり、これにより担体液と細胞を各試験区画に供給する。担体液および因って試験化合物の体積は、ナノリットルほどに小さく、水分の蒸発が問題となることがある。そのため、好ましくは具体的な体積に依存して、基上での溶液の操作は、高い湿度環境のもとで行う。
【0225】
以下の段落において、この発明にもとづく好ましいシステムをシステムの個別の構成部品の実施形態に関する以前の記述を参照して記載する。この記述は、実施可能な測定構成を実現するための措置として示す。
【0226】
この措置は、図2A〜Cに関連して記述された実施形態にもとづく基に適用し、この基は複数の等しい部位を持つが、ここでの記述は、一つの部位だけを対象とする。
【0227】
溶液の装填
イオンを含む溶液の液滴を入口44の上部に置く。これで、入口44の液滴は、毛細管力または(イオンを含む溶液を介した)電気的接触を作用電極16と電極6間に形成することによる外部の圧力によって、管状通路32を通って出口46の方に流れてゆく。次に、通路30の底部に流れおよび/または押し出す向きの圧力を生成するように作用電極16と電極6間に電圧を印加し、このようにして通路30を通るように少量の溶液を井戸状部の底部に押しやる。これで、イオンを含む溶液(リンガー)の液滴が井戸状部内に配置される。井戸状部内と管状通路32内の溶液間の液体の接触は、井戸状部内の溶液が井戸状部の底部に達した時に起こる。この液体の接触は、基準電極8と作用電極16間の(イオンを含む溶液を介した)電気的接触を生じる。
【0228】
これに代わるものとして、まずイオンを含む溶液(リンガー)の液滴を井戸状部内に置く。それから、イオンを含む溶液の液滴を入口44の上部に置く。これで、入口44の液滴は、毛細管力または(イオンを含む溶液を介した)電気的接触を作用電極16と電極6間に形成することによる外部の圧力によって、管状通路32を通って出口46の方に流れてゆく。管状通路32を通って流れてゆく間に、この溶液の流れは、通路30の底部に引っ張る向きの圧力(吸引力)を発生させ、このようにして井戸状部内と管状通路32内の溶液間の液体の接触が実現されるのを支援する。この液体の接触は、基準電極8と作用電極16間の(イオンを含む溶液を介した)電気的接触を生じる。液体の接触が自然に起こらない場合には、通路30の底部に流れおよび/または圧力を生成するように基準電極8と作用電極16間に電圧を印加し、このようにして通路30を通るように少量の溶液を引き寄せ、それによって井戸状部内の溶液と管状通路32内の溶液間の接触を生じさせることができる。
【0229】
溶液の吸引(電気浸透流を介した流れ)
作用電極16と電極6間に電界を印加した場合には、電気浸透流および/または圧力が管状通路32内の溶液に発生する。この配管内の溶液における流れおよび/または圧力は、通路30の下側を通る溶液が通路30の内部および上方の溶液に動き(流れ)あるいは吸引力(圧力)を発生させるように、作用電極16と電極6間の電圧によって制御される。
【0230】
貫通孔電流の測定
基準電極8と作用電極16間に電位差を印加する場合、発生した通路30を通る電流は、作用電極16によって測定される。この処理を行う場合には、電極6は、電気雑音を起こさないように、高いインピーダンスの状態で「動作停止」されなければならない。
【0231】
細胞配置
細胞を、それを頂部に配置しなければならない通路の方に誘導するのに必要な、その通路を通る溶液の流れは、上述したとおり、管状通路32の溶液の流れおよび/ または吸引力から生じる溶液の吸引力によって生起される。
【0232】
細胞の付着および絶縁処理
通路の頂部の淵への細胞の付着、および通路の周りの細胞膜組織の高い抵抗の絶縁処理は、通路の上にある細胞膜組織の部分に引っ張る方向への圧力(吸引力)をかけて支援する。通路の下への吸引力は、基準電極8を高インピーダンス状態にして、作用電極16と電極6間に電圧を印加することにより発生する電気浸透流によって生成される。
【0233】
ホールセル構成の実現
細胞膜組織を通路30で破壊する、ホールセル測定構成は、通路30を通る増加してゆく吸引力を印加することによって実現できる。このことは、基準電極を高インピーダンス状態にして、作用電極16と電極6間に電圧を印加することにより発生する電気浸透流を生成することにより実施できる。通路30で細胞膜組織を破壊する他の方法は、基準電極8と作用電極16間に一つ以上の電圧パルスを、膜組織が破壊されるまで印加することである(ザッピング)。10マイクロ秒から1秒までの時間の0.5Vと1.0Vの間の電圧パルスが、多くのタイプの細胞に対して、良好に作用する。好ましい方法は、記録した電流における容量性のスパイクが細胞膜組織が破壊されたことを示すまで、各連続するパルスの電圧またはパルス時間あるいはこの両方を増加することである。多くの場合、破壊された細胞が再び絶縁部を形成するのを回避し、細胞が漏電しやすくならないことを確保するためには、処理全体の間または少なくとも各電圧パルスの間隔の間に、通路30を通って細胞膜組織上に適度な引っ張る方向の圧力をかけるのが有利である。膜組織に対する電圧は、電極6を高インピーダンス状態にして、作用電極16と基準電極8間に印加される。通路の下への吸引力は、基準電極8を高インピーダンス状態にして、作用電極16と電極6間に電圧を印加することにより発生する電気浸透流によって生成される。
【0234】
化合物の交換
化合物は、別のところで述べた液滴または「ピペット」法により適用することができる。
【0235】
この段階では、電極が細胞膜組織のイオン伝達チャネルの電気生理学的な特性を測定できるように、幾つかの電極を持ち、それぞれ一つの細胞を保持する基が準備され、選択された細胞が各々の電極のまわりにギガシールを形成している。これは、電気生理学的な試験を実施するために、準備が整った複数の試料細胞を提供するという、この発明の主要な特徴を示すものである。さらに、細胞の個別の試験を可能とするために、各細胞は個別に仕切られている。残りの記述は、準備された基の利用に焦点を当てる。
【0236】
試験化合物は、各試験区画に異なった試験化合物が付与されるように、各試験区画に個別的に加えられなければならない。これは、担体液が基全体に適用される方法を除いて、担体液を適用する方法を用いて実行される。
【0237】
細胞を測定構成内に配置したら、イオン・チャネルを通る電流(電圧固定)、イオン・チャネルによる電圧降下(電流固定)、またはイオン・チャネルを含む膜組織の静電容量のような、幾つかの電気化学的な測定を行うことができる。どの場合でも、固有の電子測定回路が用いられる。電圧固定の測定に対する一つの実施可能な回路は、図15〜20を参考にして従来の技術で記述する。
【0238】
電圧固定の測定の場合、細胞膜組織のイオン伝達チャネルによって運ばれる電流Imem は、溶液(基準電圧)から作用電圧への電荷の移動を生じ、典型的にはpA(ピコアンペア:10-12 A)からμAのオーダーである。この測定構成における膜組織による電圧降下は、Vmem である。
【0239】
以下において、この発明にもとづく、パッチクランプ試験を準備および実施するための好ましい措置の概略を記述する。
【0240】
1.試験媒体の準備
保管場所から取り出す(ならびに生理学的な緩衝液で満たす)。
【0241】
2.ピペット操作の準備
使い捨てのピペット配列を使用する場合:保管場所から、使い捨てのピペット配列と液滴運搬器を取り出す。
【0242】
使い捨てのピペット配列を使用しない場合:ピペット配列を洗浄する。
【0243】
3.化合物の準備
保管場所から化合物を取り出す(マイクロタイタープレートに)。
【0244】
直接的なピペット操作を使用する場合:試験化合物をピペットに充填する。
【0245】
間接的なピペット操作を使用する場合:ピペット操作により試験、洗浄および制御用化合物を運搬器に置く。
【0246】
4.待機中の細胞
二酸化炭素および温度を制御された培養器から。
【0247】
5.細胞の仕分け
磁気または機械的なフィルターを通す。
【0248】
6.細胞の適用
(生理学的な緩衝液を持つ)新鮮な試験媒体上に。
【0249】
7.細胞の配置
電気浸透流、対流、重力、(電気浸透流、毛細管の作用または浸透によって起こされる)溶液の流れを用い、これらはすべて適切な幾何学的なコーティングと組み合わせることができる。
【0250】
8.細胞の付着
細胞の配置と関連し、脂質との接触と組み合わせることができる。
【0251】
9.細胞のギガシール化(Rmem =Vmem /Imem による)
細胞の付着と関連。
【0252】
10.ホールセルの実現(Imem における容量性スパイクによる)
(電気浸透流により生成される)吸引力、ザッピング、または空孔を持つ化合物。
【0253】
11.基線検査(Vmem を固定し、Imem の時間的な経過を分析することによる)
障害に対する制御。
【0254】
12.試験化合物の適用
液滴を用いたり、試験媒体に統合された配管による直接的または間接的なピペット操作。
【0255】
13.電圧固定による記録(Vmem を固定し、Imem の時間的な経過を記録することによる)
14.化合物の洗浄
試験化合物の適用と関連。
【0256】
15.基準化合物の適用
試験化合物の適用と関連。
【0257】
16.電圧固定による記録(制御を目的とする)
17.試験媒体の廃棄
18.次の試験
以下において、図21に表示されているシステム概要図の符号を括弧[]内に参照して、この措置の各手順の実施について、詳細に記述する。
【0258】
手順1〜3は、有利には一般的なHTSに最適化された商業的に入手可能なロボット装置を用いて、実施することができる。そのように巧く調整されたシステムとしては、Tecan Genesis RMP(Robotic Microplate Processor) システムがあり、例えば溶液操作アーム[320,324](ピペット操作に用いられる)、試験媒体の運搬用のロボット操作アーム(RoMa)[322]、使い捨てピペット、マイクロプレートおよびRMPの全位置における試薬棚を装備した、Tecan Genesis RMP 300 [304,310,340,342]またはこれらの内の一つをベースとした大規模ワークステーションシステムである。ロボットアームを繋いだTecan Genesis RMP は、Tecan 社のGEMINIソフトウェアにより制御することができる。
【0259】
使い捨てでないピペット(単一または配列の)が用いられる場合には、Tecan Genesis RMP は、Washerシステムを配備することができ、ピペット配列の場合には、このピペット操作システムは、500nl〜200mlのピペット操作を可能とするTecan Genesis RWS 多チャネルピペット操作オプションとすることができる。1〜8台のピペット操作システムの場合には、10nl〜5mlのピペット操作を可能とするTecan Genesis NPS ナノピペット操作システムを用いることができる。
【0260】
化合物の保管に関しては、一台以上のTecan Mol Bank[334]を統合することができ、それぞれが(バーコードを用いて)登録された試験化合物を保持、保管し、要求に応じて取り出すマイクロタイタープレートを2500個まで収容できるものである。一台以上のMol Bankユニットを、Tecan 社のFACTSソフトウェアで制御することができる。
【0261】
手順4〜5は、一つ以上の特注機器を用いて、あるいは商業的に入手可能な機器を用いて実施することができる。
【0262】
二酸化炭素と温度を制御した環境のもとでの細胞の培養に、Tecan 社のIncubator/Shaker[330]を用いることができる。このシステムに、Tecan Te-MagS 磁気ビード分離ユニットを統合して、細胞の分離に使用できる。このTe-Magユニットは、Tecan 社のGEMINIソフトウェアによって制御可能である。
【0263】
手順6〜8は、特注機器[350]を用いて実施することができる。
【0264】
手順9〜17は、試験媒体の保持機器、刺激・記録用電子回路および間接的な化合物の適用の場合における化合物の適用のための機器を統合した特注機器[360]で実施される。
【0265】
これに代わって、ピペット配列システムを用いた直接的な化合物の適用が行われる場合には、この特注機器は、一つ以上の開口部を持ち、そこを通して試験、洗浄および制御用の化合物を外部のピペット操作システムによって適用する。
【0266】
手順12〜14は、細胞当り一つ以上の化合物が試験される場合には、非常に多くの回数繰り返される。
【0267】
このシステムの性能は、ギガシールした細胞が異なる化合物に対して使用される回数に依存する。
【0268】
細胞当り1つの化合物が使用するシステムの場合
・媒体交換と初期装着 約2分
・細胞の配置、ギガシール処理、ホールセル構成の
構築、基線検査 約5分
・試験化合物の適用とデータ収集 約2分
・試験化合物の洗浄 約1分
・基準化合物の適用とデータ収集 約1分
全サイクルタイム 約11分
成功率50%と仮定すると、各「試験部位」に対して一日当り約60の化合物を試験する能力となる。96の「試験部位」を同時に操作する場合には、一日当り約5,000の化合物の試験が可能である。384の「試験部位」を同時に操作する場合には、一日当り約20,000の化合物の試験が可能である。
【0269】
細胞当り四つの化合物が使用するシステムの場合
・媒体交換と初期装着 約2分
・細胞の配置、ギガシール処理、ホールセル構成の
構築、基線検査 約5分
・四回の試験化合物の適用とデータ収集 約8分
・四回の試験化合物の洗浄 約4分
・基準化合物の適用とデータ収集 約1分
全サイクルタイム 約20分
成功率50%と仮定すると、各「試験部位」に対して一日当り約144の化合物を試験する能力となる。96の「試験部位」を同時に操作する場合には、一日当り約12,500の化合物の試験が可能である。384の「試験部位」を同時に操作する場合には、一日当り約50,000の化合物の試験が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1A】 井戸状部の底部に通路を持つ井戸状部を有する基の横断面図
【図1B】 井戸状部の底部に通路を持つ井戸状部を有する基の平面図
【図2A】 基に管状通路に繋がる通路を有する基の第一の実施形態の横断面図
【図2B】 基に管状通路に繋がる通路を有する基の第一の実施形態の平面図
【図2C】 基に管状通路に繋がる通路を有する基の第一の実施形態の底面図
【図3A】 基に管状通路に繋がる通路を有する基の第二の実施形態の横断面図
【図3B】 基に管状通路に繋がる通路を有する基の第二の実施形態の平面図
【図3C】 基に管状通路に繋がる通路を有する基の第二の実施形態の底面図
【図4A】 この発明の実施形態に用いられる電気浸透流ポンプの所要の性能を例示するための管状通路を通る溶液における電気浸透流の略図
【図4B】 この発明の実施形態に用いられる電気浸透流ポンプの所要の性能を例示するためのフローコンダクタンス対基の上方と下方部間の通路の口径の関係を表すグラフ
【図5A】 この発明の第一の実施形態に用いられる電気浸透流ポンプの横断面図
【図5B】 この発明の第一の実施形態に用いられる電気浸透流ポンプの平面図
【図6A】 この発明の第二の実施形態に用いられる電気浸透流ポンプの横断面図
【図6B】 この発明の第二の実施形態に用いられる電気浸透流ポンプの平面図
【図7A】 この発明の第三の実施形態に用いられる電気浸透流ポンプの横断面図
【図7B】 この発明の第三の実施形態に用いられる電気浸透流ポンプの平面図
【図8】 この発明の図6Aと6Bの電気浸透流ポンプを用いた実施形態の横断面図
【図9A】 放射状に収束する電気力線を持つ電極構造の横断面図
【図9B】 放射状に収束する電気力線を持つ電極構造の平面図
【図10A〜G】 図8に描かれた親水性の領域のような疎水性/親水性材料の領域を製作するための工程図
【図11】 接点列と電極列の接続状態を表す図
【図12】 図11に描かれた電極列内の一つの電極に対してギガシールを形成する細胞を検出するための手順を示す流れ図
【図13】 基準電極が溶液の汚染を回避するためのブリッジを持つ場合における図1A〜Bおよび図3A〜Cに描かれた基のどれに対しても適用できる井戸状部の実施図
【図14】 一つの測定構成の様々な電気パラメータを示すパッチクランプされた細胞の拡大図
【図15】 一つの好ましい実施形態にもとづく基上の膜組織の電気的な特性を測定するための電気システム(主電子回路)を表す電子回路図
【図16】 図15の回路の電流電圧変換器の部分の第一の実施形態を表す電子回路図
【図17】 図15の回路の電流電圧変換器の部分の第二の実施形態を表す電子回路図
【図18】 異なる測定部位からの信号の受信、多重化ならびに変換を行うための、図15の回路の論理部分例を表す電子回路図
【図19】 測定部位への試験信号を生成するための、図15の回路における刺激信号発生器の第一の実施形態を表す電子回路図
【図20】 測定部位への試験信号を生成するための、図15の回路における刺激信号発生器の第二の実施形態を表す電子回路図
【図21】 この発明にもとづくシステムの全体図
【図22A〜B】 この発明にもとづく基への担体および化合物のピペット操作を行うための第一の実施形態を表す図
【図23A〜B】 この発明にもとづく基への担体および化合物のピペット操作を行うための第二の実施形態を表す図
【図24A〜C】 この発明にもとづく基への担体および化合物のピペット操作を行うための第三の実施形態を表す図
【符号の説明】
1 管状通路
2 細胞
6 追加電極
8 基準電極
12 基
14 測定部位
16 作用電極
18 引き込み電極
20 ピン
26 疎水性の領域
30 通路(間隙)
32 (吸引)配管(管状通路)
36 溶液
42 底板
44,46 開口部
52 溶液
54 運搬プレート
56 親水性の領域
58 穿孔
60 容器
61,62 平行平板
63,64 電極
65 ゲル材料
66 細胞測定部位
67 追加の測定電極
68 スペーサブロック
69 ピペット用井戸状部
70 マイクロタイタープレート
71 絶縁接着部
72 ピペット
73 機器のその他の部分への接続方向
74 微細構造ユニット
75 薄い膜組織
76 穴配列
77,78 流体管状通路
79 入口
81 出口
90 電気力線
101 細胞
102,104 電流電圧(I−V)変換器
103 アナログスイッチ
105 差動増幅器
106 ローパスフィルター
107 サンプリング論理部
108 フィードバック網
109 プロセッサ(DSP/CPU)
110 イネーブル網
111 刺激信号発生器
112 デュアルFETU430
113 オペアンプNE5534
115 トランジスタ網
117 マルチプレクサ(MUX)
116 電流電圧(I−V)変換器
118 アナログデジタル変換器
119 「MUXレディ」配線
120,121 データバス
122 アドレスバス
123 PCインタフェース
124 デジタルアナログ(D−A)変換器
125 多重化ユニット
126 サンプリング/保持回路
127,130 「レディ」信号
129 ラッチ
131 オペアンプAD743
200 シリカ基
202 フォトレジスト
204 マスク
205 光露光
206 露光されたフォトレジスト
208 「レジストの無い」領域
210 疎水性の材料
212 所望の形状を持つ疎水性の材料の領域
250 壁
253 プラスイオン
256,258 電極
260 マイナスイオン
300 サーバPC
302 データ取得・解析用ワークステーションPC
304 装置制御用ワークステーションPC
306 高速通信網
310 ロボットアーム用レール
320 ピペット用ロボットアーム
322 プレート取り扱い用ロボットアーム
324 ピペット配列
330 細胞培養(温度・二酸化炭素制御)ユニット
332 使い捨て器具貯蔵ユニット、基保管ユニット
334 化合物貯蔵・登録ユニット
336,352 入力・出力スロット
340 ピペット用デッキ
342 ピペット用部位
350 細胞装着・配置ユニット
360 化合物適用・電気信号測定ユニット
362 化合物プレート用入力・出力スロット

Claims (32)

  1. イオン・チャネルを持つ脂質膜組織内のイオン・チャネルの電気生理学的な特性を測定および/または観察するための基において、
    この基がイオン・チャネルを持つ脂質膜組織を保持するための第一の部位を有し、この部位が基内に一つの通路を有し、この通路の第一の端部が基の第一の上方表面部にある第一の領域と接しており、この通路の第二の端部が第一の管状通路(32)にある第二の領域と接しており、
    ならびに、この基が前記の第一の領域と電気的に接触する一つの基準電極(8)を有し、
    ならびに、この基が前記の第二の領域と電気的に接触する一つの作用電極(16)を有し、
    ならびに、この基が第一の管状通路に第一の電界を生成するための一つ以上の追加の電極()を有し、この追加の電極が、この第一の電界によって前記の通路内に引っ張る方向の圧力を生成させることとなる第一の管状通路内に保持されたイオン溶液内における流れを誘導できるような寸法と位置にあり、前記の通路の第二の端部と第一の管状通路が、第一の管状通路内のイオン溶液が前記の第一の領域から前記の第二の領域に向けての、またはその逆向きの、この通路を通る流れを生成するような寸法で構成されており、
    ならびに、前記の通路の第一の端部が前記の第一の部位に保持されたイオン・チャネルを持つ脂質膜組織に対する絶縁部を形成するように調整され、このことによって基、絶縁部および脂質膜組織が部位の第一の領域を第二の領域から絶縁することとなり、その結果前記の基準電極と作用電極間の電気信号を測定および/または観察することによって、この膜組織の一つ以上の電気的特性を測定および/または観察することが可能となり、その際作用電極(16)と一つ以上の追加の電極()間に電位差を印加することによりイオン・チャネルを持つ脂質膜組織と基間においてギガシール構成を形成可能とする、通路内における引っ張る方向の圧力を発生させる基
  2. 請求項1に記載の基において、この基がさらにイオン溶液を第一の管状通路へ導入するための第一の管状通路の第一の端部を有し、第一の管状通路とこの第一の管状通路の第一の端部の寸法および前記の追加の電極の寸法と位置が、この第一の端部を通って導入されるイオン溶液が追加の電極の少なくとも一つと電気的な接触を形成できるように調整される基
  3. 前記の第一の管状通路の少なくとも一部の側壁が、10mV以上の実効ゼータ(ζ)電圧を持つ材料で形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の基
  4. 請求項2に記載の基において、この基がさらに第一の管状通路の第二の端部を有し、第一の管状通路の第一と第二の端部が、基の第二の上方表面部において第一の管状通路の入口と出口を構成することを特徴とする基
  5. 請求項2に記載の基において、この基がさらに第一の管状通路の第二の端部を有し、第一の管状通路の第一の端部が、基の第二の上方表面部において第一の管状通路の入口または出口を構成すること、ならびに第一の管状通路の第二の端部が、前記の通路によって構成されることを特徴とする基
  6. 請求項1から5のどれか一つに記載の基において、第一の管状通路へのイオン溶液の導入を支援するために、第一の管状通路において親水性または疎水性の材料で構成された一つ以上の領域をさらに有する基
  7. 作用電極が、前記の通路内または通路の第二の端部に位置すること、ならびに基準電極が、通路を包含する基の部分と平行な面内において、この通路を少なくとも部分的に取り囲むような形状に構成されていることを特徴とする請求項1または6までのどれか一つに記載の基
  8. 基準電極および作用電極が、基準電極および作用電極間の電流、電圧、またはインピーダンスを測定するための電気回路に接続されていることを特徴とする請求項1または7までのどれか一つに記載の基
  9. 前記の通路の横断軸の寸法が最大10μmであることを特徴とする請求項1または8までのどれか一つに記載の基
  10. 請求項9に記載の基において、この通路の横断軸の寸法が0.5μm〜5μmの範囲にあることを特徴とする基
  11. 少なくとも前記の第一の部位の通路によって定められる内側表面が、この通路の第一または第二の端部において基と接する水溶性の溶液を通路に入れ、そして通過させることに寄与する物質を運ぶことを特徴とする請求項1または10までのどれか一つに記載の基
  12. 前記の物質が塩化ナトリウムであることを特徴とする請求項11に記載の基
  13. 前記の通路の第一の端部の寸法および材料成分が、部位に保持されたイオン・チャネルを持つ脂質膜組織と基間に高い電気抵抗の絶縁部を提供するように調整されていることを特徴とする請求項1または12までのどれか一つに記載の基
  14. 請求項1または13までのどれか一つに記載の基において、この基が前記の第一の領域および通路の上方の端部と接する第二の管状通路を有し、この第二の管状通路が第一および第二の端部を持ち、
    ならびに、この基が第二の管状通路に第一の電界を生成するための二つ以上の電極を有し、この追加の電極がこの第一の電界が第二の管状通路に保持されたイオン溶液に流れを誘導するような寸法と位置を持ち、
    ならびに、部位と第二の管状通路が第二の管状通路内のイオン溶液の流れが第二の管状通路の第一の端部から部位を通過して第二の端部への流れを生成するような寸法に構成される基
  15. 第二の管状通路内のイオン溶液に含まれるイオン・チャネルを持つ脂質膜組織が部位の近傍にある時間タイミングを決めるための検出手段およびこの検出手段からの信号に応じて第二の管状通路内の流れを制御するための手段をさらに有する請求項14に記載の基
  16. イオン・チャネルを持つ脂質膜組織内のイオン・チャネルの電気生理学的な特性を測定するための測定構成を構築するための方法において、
    この方法にはイオン・チャネルを持つ脂質膜組織を保持するための第一の部位を有する基を準備する手順があり、この部位が基内に一つの通路を有し、この通路の第一の端部が基の第一の上方表面部にある第一の領域と接しており、この通路の第二の端部がこの基の第一の上方表面部の下にある第一の管状通路において第二の領域と接しており、
    ならびに、この方法には基の第一の上方表面部に一つの基準電極を準備する手順があり、この基準電極は前記の第一の領域と電気的に接触し、
    ならびに、この方法には前記の第二の領域と電気的に接触する二つ以上の電極を準備する手順があり、これらの電極のうちの一つが作用電極であり、
    ならびに、この方法には前記の第一の領域に担体液を供給する手順があり、
    ならびに、この方法には前記の第二の領域にイオン溶液を供給する手順があり、このイオン溶液が前記の電極の少なくとも一つと電気的に接触し、
    ならびに、この方法には前記の第二の領域と電気的に接触する電極の少なくとも二つの間に電位差を印加することによって、第一の管状通路に電界を生成する手順があり、この電界が第二の領域を横断して第一の管状通路内のイオン溶液に流れを生じさせ、そのことによって前記の第一の領域から前記の第二の領域に向けての、または前記の第二の領域から前記の第一の領域に向けての流れを生成させる方法。
  17. 前記の第一の領域に供給される担体液が、イオン・チャネルを持つ一つ以上の脂質膜組織を有すること、ならびに前記の電界が、イオン・チャネルを持つ脂質膜組織が前記の通路の第一の端部に対して絶縁部を形成し、前記の部位の第一の領域を第二の領域から絶縁するまで、前記の第一の領域から前記の第二の領域に向けての溶液の流れを生成させることを特徴とする請求項16に記載の方法。
  18. イオン・チャネルを持つ脂質膜組織が、前記の通路の第一の端部に対して高い電気抵抗の絶縁部を形成し、その結果前記の基準電極と作用電極間の電気信号を測定および/または観察することによって、この膜組織の一つ以上の電気的特性を測定および/または観察することが可能となることを特徴とする請求項16または17に記載の方法。
  19. 請求項16から18までのどれか一つに記載の方法において、この方法には前記の第一の領域と通路の上方の端部に接する第二の管状通路を準備する手順があり、この第二の管状通路が第一および第二の端部を持ち、
    ならびに、この方法には第二の管状通路内に保持されたイオン溶液内に第二の管状通路の第一の端部から部位を通過して第二の端部への流れを誘導するように、第二の管状通路内に第一の電界を生成させる手順がある方法。
  20. 請求項19に記載の方法において、この方法には、さらに第二の管状通路内のイオン溶液に含まれるイオン・チャネルを持つ脂質膜組織が部位の近傍にある時間タイミングを決めるための手順およびこの決定に応じて第二の管状通路内の流れを制御するための手順がある方法。
  21. 請求項16から20までのどれか一つに記載の方法において、さらに、この方法には、高い電気抵抗の絶縁部を構築後に、作用電極と基準電極間に第一の電位差を連続的に印加することにより、部位に保持されたイオン・チャネルを持つ脂質膜組織と前記の通路の第一の端部間における高い電気抵抗の絶縁部を検査する手順があり、
    ならびに、この方法には前記の作用電極と基準電極間の第一の電流を観察する手順があり、
    ならびに、この方法にはこの第一電流を予め規定した閾値電流と比較し、第一の電流がこの予め規定した閾値電流以下の場合に、この部位がこのイオン・チャネルを持つ構造とこの部位の表面部間に許容範囲の絶縁部を有するものと是認する手順がある方法。
  22. 請求項16から21までのどれか一つに記載の方法において、さらに、この方法には高い電気抵抗の絶縁部を構築後に、作用電極と基準電極間に一連の第二の電位差パルスを印加することにより、イオン・チャネルを持つ脂質膜組織において作用電極に最も近い部分を破壊することによってホールセル構成を構築する手順があり、
    ならびに、この方法には前記の作用電極と基準電極間に流れる第二の電流を観測する手順があり、
    ならびに、この方法にはこの第二の電流が予め規定した閾値を超えた場合に、前記の一連の第二の電位差パルスを中断する手順がある方法。
  23. 請求項16から21までのどれか一つに記載の方法において、さらに、この方法には高い電気抵抗の絶縁部を構築後に、前記の第二の領域の電極間に電位差を印加することで前記の通路内に引っ張る向きの圧力を形成することにより、イオン・チャネルを持つ脂質膜組織において作用電極に最も近い部分を破壊することによってホールセル構成を構築する手順があり、この電界が前記の第二の領域を横断して第一の管状通路内のイオン溶液に流れを生じさせ、そのことによってイオン・チャネルを持つ脂質膜組織の前記の通路の第一の端部を覆う部分に対する吸引力を、イオン・チャネルを持つ脂質膜組織のこの部分が破壊されるまで生じさせる方法。
  24. 請求項16から21までのどれか一つに記載の方法において、さらに、この方法には前記の通路内に気孔を持つ化合物を配備する手順があり、このことで高い電気抵抗の絶縁部を構築後に、この気孔を持つ化合物が、イオン・チャネルを持つ脂質膜組織の前記の通路から到達可能な部分を透水性にすることによって、ホールセル構成を構築することを特徴とする方法。
  25. イオン・チャネルを持つ脂質膜組織内のイオン・チャネルの電気生理学的な特性を測定および/または観察するためのシステムにおいて、
    このシステムは一つの基を有し、この基はイオン・チャネルを持つ脂質膜組織を保持するための複数の部位と、各部位に一つの作用電極を配置した形態の複数の作用電極(6)と、各部位が少なくとも一つの基準電極と電気的に接触するように配置した形態の一つ以上の基準電極(8)を有し、部位の作用電極と基準電極間に流れる電流Imem がイオン・チャネルを持つ脂質膜組織内のイオン・チャネルによって伝達されるように、各部位がイオン・チャネルを持つ脂質膜組織を保持するように調整され、
    ならびに、このシステムは、さらに各部位に保持されたイオン・チャネルを持つ脂質膜組織に対して電圧固定測定を実施するための主電子回路を有し、
    この主電子回路は複数の電流電圧(I−V)変換器(102+104)を有し、これらはそれぞれ第一と第二の入力および一つの出力を持ち、この第一の入力は作用電極に電気的に接続し、この第二の入力は基準電圧Vref を受信し、各I−V変換器は、基準電圧Vref を受信した場合に、第一の入力の電圧が少なくとも大体においてVref と等しくなるまで、基準電極と作用電極間に電流Imem を流すように調整され、各I−V変換器は、さらにその出力上にImem に対応する第一の電圧信号を供給するように調整され、
    ならびに、この主電子回路は第一のマルチプレクサ(107,117)を有し、このマルチプレクサは二つ以上のI−V変換器から第一の電圧信号を受信するための複数の入力を有し、制御可能な形態で選択した第一の電圧信号を第一のA/D変換器(107,118)に個別的に供給し、この第一のA/D変換器は第一の電圧信号に対応したデジタル信号を生成し、
    ならびに、この主電子回路は複数の個別に制御可能なスイッチ(103)を有し、これらはそれぞれ第一の電圧信号をマルチプレクサに接続するか否かを実行するための作用電極とマルチプレクサ間の接続機能を果たすものであり、
    ならびに、この主電子回路は前記のデジタル信号を受信し、処理するためのデジタル処理手段(109)を有し、このデジタル処理手段はイオン・チャネルを持つ脂質膜組織の刺激または試験に関連した第一のタイプのデジタル信号を管理し、生成するように調整されるとともに、このデジタル処理手段は、さらに主電子回路の個別に制御可能な構成部品を制御する第二のタイプのデジタル信号を管理し、生成するように調整され、
    ならびに、この主電子回路は前記の第一のタイプのデジタル信号を受信し、各Vref に加算するアナログの刺激または試験信号Vstimを生成するための手段(111)を有し、
    ならびに、この主電子回路はVref を各I−V変換器に供給するための手段を有し、各Vref は個別に制御可能であり、この手段はさらにVstimを受信し、Vstimを一つ以上の選択したVref に加算するように調整され、
    ならびに、この主電子回路はイネーブル網(110)を有し、このイネーブル網はデジタル処理手段から第二のタイプのデジタル信号を受信し、第二のタイプのデジタル信号に応じて、複数の個別に制御可能なスイッチと、マルチプレクサにおける複数の第一の電圧信号の選択と、Vref を供給するための手段を制御することによって個別のVref の値を制御するシステム。
  26. 個別に制御可能なスイッチが基に統合されていることを特徴とする請求項25に記載のシステム。
  27. 各I−V変換器の少なくとも一部が基に統合されていることを特徴とする請求項25または26に記載のシステム。
  28. I−V変換器が一つの演算増幅器を有することを特徴とする請求項25〜27までのどれか一つに記載のシステム。
  29. I−V変換器がさらにデュアルFETを有することを特徴とする請求項28に記載のシステム。
  30. stimを生成するための手段が、さらに第一のタイプのデジタル信号を受信し、それに対応するアナログ信号のVstimを供給するための複数のデジタルアナログ(D−A)変換器(124)を有することを特徴とする請求項27〜29までのどれか一つに記載のシステム。
  31. stimを生成するための手段が、さらに複数のマルチプレクサ(125)を有し、それらがそれぞれ第一のタイプのアナログ信号を受信するためのD/A変換器に接続され、
    ならびに、この手段が複数の個別に制御可能なサンプリング/保持回路(126)を有し、その際二つ以上のサンプリング/保持回路(126)が各マルチプレクサからの相異なる出力と接続され、
    このVstimを生成するための手段が二つ以上の部分から成る傾斜波のVstim信号をリアルタイムで供給するように調整され、これらの各部分が第一のタイプのデジタル信号に対応し、
    このD/A変換器は、第一のタイプの第一のデジタル信号に対応した第一のアナログ信号と第一のタイプの第二のデジタル信号に対応した第二のアナログ信号を生成するように調整され、マルチプレクサは第一の出力に第一のアナログ信号を、第二の出力に第二のアナログ信号を供給するように調整され、各個別に制御可能なサンプリング/保持回路は、制御されて傾斜波のVstim信号の異なる部分を形成するようにアナログ信号を順次放出するまで、これらの第一と第二のアナログ信号を受信し、保持するように調整されていることを特徴とする請求項30に記載のシステム。
  32. 細胞内のイオン・チャネルの電気生理学的な特性を測定および/または観察するためのシステムにおいて、このシステムは、
    一つの細胞培養ユニット(330)と、
    一つの化合物保管ユニット(334)と、
    請求項1に記載の一つ以上の基と、
    一つの基保管ユニット(332)と、
    を受け入れるための細胞配置・測定ユニット(350+360)を有し、この細胞配置・測定ユニットは細胞を含む溶液を基の各部位に装着するための手段と、細胞を各部位の予め規定した位置に配置するために、基の各部位における予め規定した電極群の間に予め規定した電位差を印加するための手段と、配置された細胞の試験と測定を実施するための請求項25に記載の主電子回路を有し、
    ならびに、このシステムは基を基保管ユニットから細胞配置・測定ユニットに運ぶための運搬手段(322)を有し、この運搬手段はさらに細胞を細胞培養ユニットから細胞配置・測定ユニットに運ぶように調整されており、
    ならびに、このシステムは化合物を化合物保管ユニットから細胞配置・測定ユニットに保持された基にピペットで配分するためのピペット操作システム(320,324,340,342)を有し、
    ならびに、このシステムは測定および/または観察の実施を制御し、試験データを記憶するための主コンピュータシステムを有し、
    この主コンピュータは、データの取得と解析のための一つ以上の電子プロセッサと接続して運用され、この一つ以上の電子プロセッサは細胞配置・測定ユニットの主電子回路のデジタル処理手段(109)と接続して運用され、
    ならびに、この主コンピュータは前記の運搬手段を制御するための電子プロセッサ手段と、前記のピペット操作システムを制御するための電子プロセッサ手段と接続して運用されるシステム。
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