JP4033256B2 - 樹脂改質材及びその組成物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、アイオノマー樹脂含有の組成物からなるポリプロピレン配合用樹脂改質材に関する。とりわけポリプロピレンの溶融特性や耐衝撃性の改良に有用な樹脂改質材及びこのような樹脂改質材が配合された改良された性質を有するポリプロピレン組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリプロピレンは、軽量、高剛性で熱変形温度が高いところから各種用途に使用されている。しかしながらとくに剛性の高いプロピレン単独重合体は、衝撃強度が小さいという欠点を有している。ポリプロピレンはまた、溶融粘度の温度依存性が大きいため、溶融、半溶融状態での延伸性(真空・圧空成形性、深絞り性、フイルム加工性など)に難がある。
【0003】
ポリプロピレンの有する特性をできるだけ損なわないで耐衝撃性を改良する処方については、古くから数多く提案されてきた。例えば特開昭60−248765号公報には、ポリプロピレンに、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体の金属塩であるアイオノマー樹脂と、フィラーと、任意にエチレン系ゴムを配合する処方が提案されており、またこのエチレン系ゴムは不飽和カルボン酸で予め変性されたものを使用できることが記載されている。しかしながらポリプロピレンの有する優れた特性をできるだけ維持し、しかもその欠点である耐衝撃性及び溶融特性の双方をバランス良く改良するという観点から見れば、上記公報開示の技術は、必ずしも充分な効果を達成するものではなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明者らは、ポリプロピレンの有する優れた特性をそれ程犠牲にすることなく、耐衝撃性及び溶融特性を同時に改善する処方を見出すべく検討を行った。その結果、不飽和カルボン酸変性重合体とアイオノマー樹脂を予め溶融ブレンドしたものをポリプロピレンに配合することにより、優れた特性を付与できることを見出し、本発明に到達した。従って本発明の目的は、とくにポリプロピレン等の改質に好適な樹脂改質材を提供すること、及びポリプロピレンにこのような改質材を配合した、改善された性質を有するポリプロピレン組成物を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、プロピレン重合体、プロピレン共重合体(以上を総称してプロピレン(共)重合体という)、エチレン・プロピレン共重合体及びスチレン系共重合体から選ばれた重合体を不飽和カルボン酸でグラフト変性してなる不飽和カルボン酸変性重合体(A)2〜85重量部とエチレン・不飽和カルボン酸共重合体のカルボキシル基の少なくとも一部が金属イオンで中和されてなるアイオノマー樹脂(B)98〜15重量部の溶融混合樹脂組成物からなる樹脂改質材に関する。本発明はまた、上記樹脂改質材5〜40重量部とポリプロピレン95〜60重量部を溶融混合してなるポリプロピレン組成物に関する。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明の樹脂改質材製造に使用される不飽和カルボン酸変性重合体(A)は、不飽和カルボン酸でグラフト変性された重合体である。変性重合体(A)のベースポリマーとなる重合体としては、アイオノマー樹脂(B)との混和性、あるいはアイオノマー樹脂(B)と溶融混練して得られる樹脂改質材をポリプロピレンの改質に使用する場合には、ポリプロピレンとの相溶性を考慮すると、炭化水素系の重合体、とくにオレフィン系重合体またはスチレン系共重合体を使用するのが好ましい。これら重合体としては、樹脂状重合体あるいはエラストマー状重合体を使用することができる。とくにアイオノマー樹脂(B)と溶融混練して得られる樹脂改質材をポリプロピレンの改質用に使用する場合において、ポリプロピレンの剛性をあまり犠牲にしたくない場合には樹脂状重合体を使用し、また耐衝撃性の顕著な改良を目的とする場合には、エラストマー状重合体を使用するのがよい。
【0007】
変性重合体(A)のベースポリマーとなる重合体として使用可能なオレフィン系重合体としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、4−メチル−1−ペンテンなどのα−オレフィンの単独重合体、これら2種以上のランダム共重合体、これら2種以上のブロック共重合体などを挙げることができる。
【0008】
より具体的には、オレフィン系重合体における樹脂状重合体としては、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高圧法低密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン(エチレンと炭素数3以上のα−オレフィンとの共重合体)、ポリプロピレン(単独重合体、ランダム重合体、ブロック共重合体などで後記するもの)、ポリ−1−ブテン、ポリ−4−メチル−1−ペンテンなどを挙げることができる。これらは如何なる触媒系で製造されたものであっても良く、例えば上記直鎖低密度ポリエチレンにおいては、シングルサイト触媒あるいはマルチサイト触媒で製造されたものが使用できる。上記の内、ポリエチレンとしては、190℃、2160g荷重におけるメルトフローレートが、0.1〜1000g/10分、とくに0.2〜500g/10分程度のものが好ましく、またポリプロピレンとしては、230℃、2160g荷重におけるメルトフローレートが、0.1〜1000g/10分、とくに0.2〜500g/10分程度のものが好ましい。これら樹脂状重合体の中では、本発明の樹脂改質材をポリプロピレンの改質に使用する場合においては、ポリプロピレンを使用するのが最も好ましい。
【0009】
変性重合体(A)のベースポリマーとなるオレフィン系重合体として使用可能なエラストマー状重合体は、一般にオレフィン系エラストマーと称せられているもので、1種又は2種以上のオレフィンを構成成分とするエラストマー状の重合体又は共重合体である。具体的には、エチレンと炭素数3以上のα−オレフィンの低結晶性又は非晶性のランダム共重合体、炭素数3以上のα−オレフィン2種以上の低結晶性又は非晶性のランダム共重合体、ポリエチレンセグメントとエチレン・ブテン共重合ゴムセグメントのブロック共重合体とみなされるもの、例えば1,2−ビニル構造の少ないポリブタジエンセグメントと1,2−ビニル結合の多いポリブタジエンセグメントからなるブロック共重合体のブタジエン重合単位を水素添加して得られるブロック共重合体などを挙げることができる。
【0010】
上記エチレンと炭素数3以上のα−オレフィンの低結晶性又は非晶性のランダム共重合体としては、エチレン・プロピレン共重合ゴム、エチレン・1−ブテン共重合ゴム、エチレン・プロピレン・ポリエン共重合ゴム、エチレン・1−ブテン・ポリエン共重合ゴムのようなエチレンと炭素数3〜14程度のα−オレフィンを主体とする結晶化度(X線回折法)が30%以下、好ましくは20%以下の共重合体を挙げることができる。上記3元共重合ゴムにおけるポリエンとしては、ジシクロペンタジエン、5−メチレン−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、1,4−ヘキサジエン、ジビニルベンゼンなどを例示することができる。これらの中では、耐候性に優れた組成物が得られるところから、ポリエンを含有しない実質的に飽和のエチレン共重合体を使用するのが好ましく、とくにエチレン・プロピレン共重合ゴム又はエチレン・1−ブテン共重合ゴムの使用が好ましい。
【0011】
上記エチレン・α−オレフィン共重合ゴムやエチレン・α−オレフィン・ポリエン共重合ゴムにおいては、エチレンとα−オレフィンの重合比率は、エチレン/α−オレフィンがモル比で50/50〜90/10、とくに55/45〜85/15のものが好ましい。共重合ゴムとしてはまた、230℃、2160g荷重におけるメルトフローレートが0.1〜100g/10分、とくに0.5〜50g/10分程度のものが望ましい。
【0012】
オレフィン系エラストマーとしてはまたポリエチレンセグメントとエチレン・ブテン共重合ゴムセグメントのブロック共重合体、例えば1,2−ビニル構造の少ないポリブタジエンセグメントと1,2−ビニル結合の多いポリブタジエンセグメントからなるブロック共重合体のブタジエン重合単位を水素添加して得られるブロック共重合体を使用することができる。このようなブロック共重合体は、例えば1,2−ビニル結合含量が20%以下、好ましくは15%以下のポリブタジエンセグメント(X)と、1,2−ビニル結合含量が25〜95%、好ましくは25〜75%、一層好ましくは25〜55%のポリブタジエンセグメント(Y)からなり、ブロック構造がX−(Y−X)又は(X−Y)(但し、nは1以上、mは2以上の整数)で表される直鎖状又は分岐状のブロック共重合体のブタジエン重合単位を90%以上、好ましくは95〜100%水素添加されたものを挙げることができる。このような水素添加ブタジエンブロック共重合体としてはまた、230℃、2160g荷重におけるメルトフローレートが0.1〜100g/10分、とくに0.5〜50g/10分程度のものが望ましい。
【0013】
変性重合体(A)のベース重合体として使用可能な上記スチレン系共重合体としては、スチレン系モノマーを主体とする重合体ブロック(S)と共役ジエン化合物を主体とするブロック(T)のブロック共重合体及び該ブロック共重合体の共役ジエン重合単位を水素添加したものであって、エラストマー状のものを例示することができる。ここにスチレン系モノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、t−ブチルスチレンなどを例示することができるが、とくにスチレンが好ましい。また共役ジエン化合物としては、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、2,3−ジメチルブタジエンなどを例示することができるが、とくにブタジエン又はイソプレンが好ましい。
【0014】
スチレン系モノマーを主体とする重合体ブロック(S)と共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック(T)のブロック共重合体としては、例えば、(S−T)又は(S−T)−S(式中、nは1以上の整数)で表される直鎖状、分岐状、放射状のブロック共重合体を挙げることができる。
【0015】
スチレン系共重合体としては、オレフィン性二重結合ができるだけ少ないものが望ましく、上記スチレン系モノマーを主体とする重合体ブロックと共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックからなるブロック共重合体の共役ジエン重合単位の70%以上、好ましくは90%以上が水素添加されたものが好ましい。より具体的には、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックにおける1,2−又は3,4−などのビニル結合が10%以上、好ましくは20〜80%、一層好ましくは30〜60%のブロック共重合体が水素添加されたスチレン系化合物含量が8〜50重量%、好ましくは10〜40重量%の水素添加ブロック共重合体であって、例えばS−T’−S型ブロック共重合体が最適である。ここにSはスチレン重合体ブロックを、またT’は水素添加共役ジエン重合体ブロック、すなわちアルキレン共重合体ブロック、具体的にはエチレン・ブテン共重合体ブロックあるいはエチレン・プロピレン共重合体ブロックなどである。このようなブロック共重合体は、一般にSBSと称されているスチレンーブタジエンースチレンブロック共重合体あるいはSISと称されているスチレンーイソプレンースチレンブロック共重合体のブタジエン重合体ブロックあるいはイソプレン重合体ブロックを水素添加して得られるものであって、一般にSEBSあるいはSEPSと称せられているものである。これらは230℃、2160g荷重におけるメルトフローレートが0.1〜100g/10分、とくに0.5〜50g/10分程度のものを使用するのが好ましい。
【0016】
不飽和カルボン酸変性重合体(A)は、上記のようなベースポリマーに不飽和カルボン酸をグラフト変性したものである。グラフト変性に使用される不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物などを挙げることができるが、とくに酸無水物が好ましく、とりわけ無水マレイン酸が好ましい。本発明において不飽和カルボン酸は、その無水物を含む意味で用いられる。不飽和カルボン酸の好適なグラフト量は、0.1〜5重量%、とくに0.2〜3重量%の範囲である。このような変性重合体(A)は、ベースポリマーの溶融条件下、あるいはベースポリマーを適当な溶媒に溶解あるいは懸濁させて、有機過酸化物のようなラジカル開始剤の存在下に、上記不飽和カルボン酸をグラフトすることによって得ることができる。
【0017】
グラフト反応に使用可能な有機過酸化物としては、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、ジ−t−ブチルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、メチルエチルケトンパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキシル−2,5−ビスパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキサイド、p−メンタンパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、クメンハイドロパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、1,3−ビス(2−t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼンなどを使用することができる。これら有機過酸化物は、ベース重合体に対して、例えば0.1〜2重量%程度の割合で使用される。
【0018】
このようにして得られる不飽和カルボン酸変性重合体(A)のメルトフローレートは、ベース重合体のそれとほぼ同じか、それより若干低い値を示す。
【0019】
本発明において、不飽和カルボン酸変性重合体(A)とともに使用されるアイオノマー樹脂(B)のベースポリマーとなるエチレン・不飽和カルボン酸共重合体は、不飽和カルボン酸含量が、1〜30重量%、好ましくは2〜20重量%、一層好ましくは3〜15重量%の共重合体であり、エチレンと不飽和カルボン酸の2元共重合体のみならず、任意に他の単量体が共重合された3元共重合体であってもよい。共重合体を構成する不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、無水マレイン酸などを例示することができるが、アクリル酸又はメタクリル酸が好ましい。酸含量が非常に少ない共重合体のアイオノマーを使用すると、ポリプロピレンの耐衝撃性や溶融特性をともに向上させるような樹脂改質材を得ることが難しい。また酸含量が過多な共重合体のアイオノマーを使用した場合にはは、得られる樹脂改質材のポリプロピレンに対する相溶性が低下し、その機械的特性や外観などに悪影響を及ぼすようになる。
【0020】
アイオノマー樹脂(B)の上記ベースポリマーに任意に共重合されていてもよい他の単量体としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルのようなビニルエステル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソブチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチルなどの不飽和カルボン酸エステルなどを例示することができる。これら単量体の中では、不飽和カルボン酸エステル、とくにアクリル酸又はメタクリル酸のエステルが最も好ましい。これら他の単量体を共重合したものを使用すると、上記樹脂改質材とポリプロピレンの相溶性向上に効果的な場合があり、例えば40重量%以下、好ましくは30重量%以下の割合で共重合されていてもよいが、一般にこのような他の単量体の含有量が増えると、剛性、耐傷付き性、耐熱性、引張強度等に優れたポリプロピレン組成物を得ることが難しくなるので、このような特性をあまり犠牲にしたくない場合には、このような単量体を含まないものか、あるいは含んでいたとしても20重量%以下の量で共重合されているものを使用するのが好ましい。
【0021】
上記エチレン・不飽和カルボン酸共重合体としては、190℃、2160g荷重におけるメルトフローレートが、1〜1000g/10分、とくに2〜800g/10分程度のものを使用するのが望ましい。かかる共重合体は、高温、高圧下のラジカル共重合によって得ることができる。
【0022】
アイオノマー樹脂(B)としては、上記共重合体のカルボキシル基の10%以上、好ましくは20〜90%、一層好ましくは30〜80%を金属イオンで中和したものが使用される。金属イオンとしては、リチウム、ナトリウム、カリウムなどの1価金属のイオン、亜鉛又はマグネシウム、カルシウムのようなアルカリ土類金属などの2価金属のイオンなどである。
【0023】
アイオノマー樹脂(B)としてはまた、成形性、機械的特性、不飽和カルボン酸変性重合体(A)との相容性などを考慮すると、190℃、2160g荷重におけるメルトフローレートが0.01〜100g/10分、とくに0.1〜50g/10分のものを使用するのが好ましい。
【0024】
本発明の樹脂改質材は、上記不飽和カルボン酸変性重合体(A)2〜85重量部、好ましくは10〜50重量部に対し、アイオノマー樹脂(B)98〜15重量部、好ましくは90〜50重量部を溶融混合することによって得ることができる。溶融混合は、単軸押出機、二軸押出機、バンバリ−ミキサー、ロール、ニーダーなどの一般の溶融混練装置によって行うことができる。溶融混合の温度は、(A)、(B)両成分が溶融流動する条件であれば任意であり、通常、100〜300℃程度の範囲である。(A)、(B)両成分を上記割合で溶融混合することにより、樹脂改質材、とりわけポリプロピレンの改質に有用な樹脂改質材を得ることができる。
【0025】
このような樹脂改質材には任意に添加剤を配合することができる。このような添加剤は、予め(A)、(B)の一方又は双方に配合しておくこともできるし、(A)、(B)両成分の溶融混合過程で添加することができる。あるいは(A)、(B)からなる樹脂改質材を調製した後に配合することができる。このような添加剤の例としては、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、着色剤、滑剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、防黴剤、抗菌剤、難燃剤、難燃助剤、架橋剤、架橋助剤、発泡剤、発泡助剤、無機充填剤、繊維強化材などを挙げることができる。無機充填剤として具体的には、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化バリウム、ハイドロタルサイト、塩基性炭酸マグネシウム、塩基性炭酸亜鉛、塩基性炭酸鉛、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、クレー、タルク、シリカ、珪酸マグネシウムなどを例示することができる。また着色剤の例として、酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック、弁柄、モリブデンオレンジ、酸化鉄黄、クロムグリーン、群青、紺青、マンガンバイオレットなどの無機顔料、アゾ系、フタロシアニン系、キナクリドン系、ペリレン系、イソインドリノン系、ジオキサジン系、スレン系などの有機顔料を例示することができる。このような無機充填剤や着色剤は、例えば樹脂改質材100重量部に対し、0.01〜100重量部、好ましくは0.01〜50重量部の割合で配合することができる。
【0026】
上記のような本発明の樹脂改質材は、種々の熱可塑性樹脂の改質に使用することができる。例えば、不飽和カルボン酸変性重合体のベースポリマーとして紹介したような樹脂状オレフィン系重合体の改質材として有用である。とりわけポリプロピレンに配合したときに、ポリプロピレンの耐衝撃性や溶融特性の改善効果が優れているので好ましい。上記改質材配合の対象となり、あるいは前記不飽和カルボン酸変性重合体のベースポリマーとなりうるポリプロピレンとしては、プロピレンの単独重合体、プロピレンと他のα−オレフィンとのランダム共重合体、プロピレンと他のα−オレフィンとのブロック共重合体などを挙げることができる。
【0027】
上記ランダム共重合体やブロック共重合体においてプロピレンと共重合されるα−オレフィンとしては、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、4−メチル−1−ペンテンなどの炭素数2〜14程度のα−オレフィンの1種又は2種以上を例示することができる。
【0028】
上記プロピレンのランダム共重合体においては、とくにプロピレン含量が80〜99.9重量%、好ましくは90〜99.5重量%であるプロピレンとエチレンのランダム共重合体又はプロピレンとエチレンと他のα−オレフィンとからなるランダム共重合体が好ましい。
【0029】
また上記ポリプロピレンのブロック共重合体は、プロピレンと上記例示のような他のα−オレフィンを順次に重合又は共重合して得られるもので、一般には(1)プロピレンの重合の後、(2)プロピレンとやや多量のα−オレフィンの共重合及び/又は(3)α−オレフィンの重合からなる重合段階を一つ以上組み合わせることによって行われる。上記(1)のプロピレンの重合においては少量のα−オレフィンを共重合させる場合があり、また(3)のα−オレフィンの重合においてプロピレンを少量共重合させる場合がある。好適なプロピレン・α−オレフィンブロック共重合体は、(1)のプロピレン重合体ブロックを60〜95重量%程度含有するプロピレンとエチレンのブロック共重合体である。
【0030】
いずれにしてもプロピレン単独重合体、上記ランダム共重合体、上記ブロック共重合体などのポリプロピレンは、立体特異性触媒の存在下で重合又は共重合することによって得ることができる。ポリプロピレンとしてはまた、成形加工性、改質材としての上記樹脂組成物との混和性、機械的強度などを考慮すると、230℃、2160g荷重におけるメルトフローレートが0.1〜100g/10分、とくに0.2〜80g/10分のものが好ましい。
【0031】
ポリプロピレンに上記樹脂改質材を配合する場合、ポリプロピレンの優れた特性を保持しつつ、耐衝撃性、溶融特性に優れた樹脂組成物を得るためには、ポリプロピレン60〜95重量部、好ましくは65〜90重量部に対し、上記樹脂改質材を40〜5重量部、好ましくは35〜10重量部となる割合で配合するのが良い。ポリプロピレンと上記樹脂改質材の溶融混合は、(A)と(B)の溶融混合と同様に行うことができる。また、ポリプロピレンと上記樹脂改質材からなるポリプロピレン組成物には、上記したような添加剤を任意に配合することができる。
【0032】
(A)、(B)の溶融混合樹脂組成物からなる樹脂改質材を配合したポリプロピレン組成物は、メルトテンションが大きく、溶融状態、半溶融状態における延伸性が優れており、とりわけ真空成形、圧空成形、深絞り成形、フイルム成形などにおいて良好な加工性を示す。またこのような成形方法に限られず、その他押出成形、射出成形、インサート成形、中空成形、プレス成形においても良好な成形性を示す。従ってこれら成形方法により、フイルム、シート、棒状物、管状物などの単純な形状の成形品から複雑な形状の成形品まで種々の形状の成形品を製造することができ、自動車内外装材、家電、土木建築材、生活用品、スポーツ用品、工業用品などとして使用することができる。
【0033】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。尚、実施例及び比較例において使用した原料及び物性評価方法は、以下の通りである。
【0034】
[原料]
(1)不飽和カルボン酸変性重合体
A−1:無水マレイン酸変性ホモポリマータイプポリプロピレン(DuPont社製Fusabond MZ109D、MFR(230℃)120g/10分)
A−2:無水マレイン酸変性ランダムコポリマータイプポリプロピレン(DuPont社製Fusabond MD353D、MFR(230℃)450g/10分)
A−3:無水マレイン酸変性耐衝撃タイプポリプロピレン(DuPont社製Fusabond MZ203D、MFR(230℃)100g/10分)
A−4:無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合樹脂(DuPont社製Fusabond MF504D)
A−5:無水マレイン酸変性スチレン共重合体(旭化成工業(株)製タフテックM1943、S/EB=20/80(重量比)、酸価10mgCHONa/g、MFR(230℃)8g/10分)
【0035】
(2)アイオノマー樹脂
B−1:エチレン・メタクリル酸共重合体亜鉛アイオノマー(メタクリル酸含量15重量%のエチレン・メタクリル酸共重合体の亜鉛アイオノマー、中和度59%、MFR(190℃)0.9g/10分)
B−2:エチレン・メタクリル酸・アクリル酸イソブチル共重合体亜鉛アイオノマー(メタクリル酸含量10重量%、アクリル酸イソブチル含量10重量%のエチレン・メタクリル酸アクリル酸・イソブチル共重合体の亜鉛アイオノマー、中和度70%、MFR(190℃)1g/10分)
【0036】
(3)樹脂改質材
30mmφ単軸押出機(L/D=32、ダブルダルメージタイプスクリュー)を用い、加工温度220℃、スクリュー回転数50min−1の条件で、下記樹脂改質材を調製した。
C−1:A−1とB−1を重量比25対75の割合で溶融混合した樹脂改質材
C−2:A−2とB−1を重量比25対75の割合で溶融混合した樹脂改質材
C−3:A−3とB−1を重量比25対75の割合で溶融混合した樹脂改質材
C−4:A−4とB−1を重量比25対75の割合で溶融混合した樹脂改質材
C−5:A−5とB−1を重量比25対75の割合で溶融混合した樹脂改質材
C−6:A−1とB−2を重量比25対75の割合で溶融混合した樹脂改質材
C−7:A−2とB−2を重量比25対75の割合で溶融混合した樹脂改質材
C−8:A−3とB−2を重量比25対75の割合で溶融混合した樹脂改質材
C−9:A−4とB−2を重量比25対75の割合で溶融混合した樹脂改質材
C−10:A−5とB−2を重量比25対75の割合で溶融混合した樹脂改質材
【0037】
(4)ポリプロピレン
D−1:ホモポリマータイプポリプロピレン((株)グランドポリマー製B101、MFR(230℃)0.7g/10分)
D−2:ブロックコポリマータイプポリプロピレン((株)グランドポリマー製B701、MFR(230℃)0.5g/10分)
【0038】
[評価方法]
(1)MFR(メルトフローレート):JIS K7210、230℃、2160g荷重
(2)曲げ弾性率:ASTM D790
(3)溶融特性:メルトテンション(DuPont法)
(4)IZOD衝撃試験:JIS K7110、試験片厚み1/8インチ(ノッチ1/10インチ)、温度23℃
尚、MFR及び溶融特性の評価サンプルは、ペレットを使用した。また曲げ弾性率及びIZOD衝撃試験の評価サンプルは、射出成形試験片(射出成形機(東芝IS−100型締力100t)を用い、シリンダー温度240℃、金型温度20℃、背圧40kg/cmの条件で成形)を用いた。
【0039】
[実施例1〜5、比較例1]
ホモポリマータイプポリプロピレン(D−1)85重量部に樹脂改質材C−1〜C−5を各15重量部の割合で、該樹脂改質材調製の場合と同様の条件で溶融混合して得られるポリプロピレン組成物の評価を行った。比較のため、D−1のみの評価を併せて行った。その結果を表1に示す。
【0040】
【表1】
Figure 0004033256
【0041】
表1の結果から、ホモポリマータイプポリプロピレンに樹脂改質材C−1〜C−5を配合することにより、流動性(MFR)や剛性(曲げ弾性率)を大きく損なうことなく、溶融特性(メルトテンション)及び耐衝撃性を改良できることがわかる。
【0042】
[実施例6〜9、比較例2]
先の実施例と同様にして、ブロックコポリマータイプポリプロピレン(D−2)85重量部に樹脂改質材C−1、C−2、C−4、C−5を各15重量部の割合で溶融混合して得られるポリプロピレン組成物の評価を行った。比較のため、D−2のみの評価を併せて行った。その結果を表2に示す。
【0043】
【表2】
Figure 0004033256
【0044】
表2の結果より、ブロックコポリマータイプポリプロピレンに対しても、ホモタイプポリプロピレンと同様の効果が得られることがわかる。
【0045】
[実施例10〜14]
先の実施例と同様にして、ホモポリマータイプポリプロピレン(D−1)85重量部に樹脂改質材C−6〜C−10を各15重量部の割合で溶融混合して得られるポリプロピレン組成物の評価を行った。その結果を比較例1の評価結果とともに表3に示す。
【0046】
【表3】
Figure 0004033256
【0047】
表3の結果から、アイオノマー樹脂として、3元共重合タイプのものを使用しても2元共重合タイプのものと同様の効果が得られ、メルトテンションや耐衝撃性の改良効果は優れているという結果が得られた。
【0048】
[実施例15〜23]
実施例2、4、5におけるホモポリマータイプポリプロピレン(D−1)とC−2、C−4又はC−5との配合比を表4のように代えて同様の評価を行った。その結果を比較例1の評価結果とともに表4に示す。
【0049】
【表4】
Figure 0004033256
【0050】
【発明の効果】
本発明によれば、ポリプロピレンの改質に有用な樹脂改質材を提供することができる。このような樹脂改質材を配合したポリプロピレン組成物は、溶融特性及び耐衝撃性が改良されており、種々の用途に使用することができる。

Claims (5)

  1. プロピレン(共)重合体、エチレン・プロピレン共重合体及びスチレン系共重合体から選ばれた重合体を不飽和カルボン酸でグラフト変性してなる不飽和カルボン酸変性重合体(A)2〜85重量部とエチレン・不飽和カルボン酸共重合体のカルボキシル基の少なくとも一部が金属イオンで中和されてなるアイオノマー樹脂(B)98〜15重量部の溶融混合樹脂組成物からなるポリプロピレン配合用樹脂改質材。
  2. 不飽和カルボン酸変性重合体(A)が、プロピレン(共)重合体、エチレン・プロピレン共重合体及びスチレン系共重合体から選ばれた重合体を0.1〜5重量%の不飽和カルボン酸でグラフト変性してなる請求項1に記載のポリプロピレン配合用樹脂改質材。
  3. アイオノマー樹脂(B)が、エチレン・不飽和カルボン酸2元共重合体又はエチレン・不飽和カルボン酸・不飽和カルボン酸エステル3元共重合体の中和度が10%以上のアイオノマー樹脂である請求項1に記載のポリプロピレン配合用樹脂改質材。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂改質材5〜40重量部とポリプロピレン95〜60重量部を溶融混合してなるポリプロピレン組成物。
  5. ポリプロピレンが、プロピレン単独重合体、プロピレンと他のα−オレフィンのランダム共重合体及びプロピレンと他のα−オレフィンのブロック共重合体から選ばれるものである請求項4に記載のポリプロピレン組成物。
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