JP4032937B2 - 有機el素子 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、有機EL(エレクトロルミネッセンス)素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
有機EL素子は、自己発光のため、視認性に優れ、かつ数数V〜数十Vの低電圧駆動が可能なため駆動回路を含めた軽量化が可能である。そこで薄膜型ディスプレイ、照明、バックライトとしての活用が期待できる。また、有機EL素子は色バリエ−ションが豊富であることも特徴であり、複数の発光色を組み合わせる混色によってさまざまな発光が可能となることも特徴である。
【0003】
この種の有機EL素子の一般的な構成を図1、図2を参照して述べる。図1は有機EL素子の概略平面図、図2は有機EL素子の概略断面図である。なお、図1では、識別のため便宜上、下部電極20に点々ハッチング、開口部61に斜線ハッチングを施してある。
【0004】
図1、図2に示すように、ガラス基板等の透明な基板10の上に、下部電極20、発光層を含む有機層30、および上部電極40が順次積層形成されている。ここで、下部電極20および上部電極40は互いに直交するストライプ形状をなしており、これら両電極20、40が重なっている領域50が、画素として形成されている。
【0005】
そして、隣り合う下部電極20の間には、レジスト材料からなる電気絶縁性の高分子膜としての絶縁膜60がパターニングされて形成されている。ここでは、両電極20、40が重なっている領域50の中央部にて、絶縁膜60は開口部61を形成している。
【0006】
そして、当該領域(画素)50の周辺部すなわち絶縁膜60の開口部61の周辺部では、下部電極20と有機層30との間に絶縁膜60が介在した形となっている。なお、このような開口部パターンを有する絶縁膜は、有機層30と上部電極40との間に形成されていても良い。
【0007】
ここにおいて、下部電極20と上部電極40とが重なっている領域(画素)50のうち絶縁膜60が存在しない領域(つまり開口部61)では、有機層30に対して上下電極20、40から正孔、電子が注入可能となっている。つまり、開口部61では、有機層30に対して下部電極20と上部電極40から電界を印加することにより有機層30が発光可能となっている。
【0008】
このような絶縁膜60は、ポジ型やネガ型のレジスト材料を用い、一般的なフォトリソグラフ工程により、精度良くパターニング形成することができる。ポジ型レジストでは、レジストの塗布、加熱硬化後に、光照射(露光)を行い、アルカリ可溶となった光照射部をアルカリ現像液により現像し除去してパターニングを行う。
【0009】
一方、ネガ型レジストでは、レジストの塗布、加熱硬化後に、光照射を行うと光照射部では光重合が進みアルカリ難溶性となるため、アルカリ現像液で現像すれば、光照射部以外が除去されることで、パターニング形成が行われる。
【0010】
このような絶縁膜60を設けることにより、上記画素50において絶縁膜60の開口部61のみにて通電可能となり発光させることができるので、開口部61の形状を調整すれば所望の領域での発光を精度良く行うことができる。
【0011】
また、このような絶縁膜60を設けた有機EL素子においては、複数個存在する画素50のうち或る画素を発光させ残りの画素は非発光とするが、非発光の画素においては、クロストークを防止するために逆バイアスの電圧を印加する。この逆バイアス電圧を印加したときに上下電極20、40間の耐圧を確保し、短絡を防止することも、絶縁膜60の役割である(例えば、特許文献1、2参照)。
【0012】
【特許文献1】
特許第2734464号公報
【0013】
【特許文献2】
特許第2911552号公報
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、絶縁膜60は上下電極20、40間の絶縁性の確保に有効であるが、本発明者らの検討によれば、下部電極20と上部電極40とが重なっている領域(画素)50のうち絶縁膜60が存在する部分において、異物やピンホール等により絶縁破壊が生じた場合、次のような問題が生じることがわかった。
【0015】
図2に示すように、画素50上の絶縁膜60が存在する部分において、例えば下部電極20に導電性異物K1が存在すると、この部分では絶縁性が低下し、逆バイアス電圧の印加時に上下電極20、40間の短絡が発生する。そして、この絶縁破壊のモードは、伝播型の破壊モードとなり、この短絡部K2から絶縁膜60上に沿って破壊が周囲に広がっていく。
【0016】
このことについて、本発明者らは、破壊部分の観察、分析により、破壊モードが伝播型となる要因が絶縁膜60の存在にあり、その破壊メカニズムが次のようにであると推定した。
【0017】
例えば、画素50において絶縁膜60の存在しない開口部61では、図8に示すように、短絡による微小破壊点が発生した際、上部電極40が上方向に吹き飛び、破壊点K3の端部より外側へ後退するため、破壊点K3の径よりも上部電極40の無くなる部分が大きくなる。このため、破壊点K3の端部に上部電極40が存在しなくなり、それ以上、破壊は進行せず、破壊モードは自己修復型となる。
【0018】
しかしながら、画素50における絶縁膜60が存在する部分において、短絡による微小破壊点が発生した場合、絶縁膜60が存在するため、短絡部の直上で絶縁膜60が一部残り、その上の上部電極40も残ることになる。
【0019】
この場合、図9に示すように、残った上部電極40がたれて来て下部電極20に接するため、短絡が継続する。そのため、初期の短絡部の周囲に電極20、40間の短絡が広がっていく、すなわち伝播型の破壊モードとなる。このような伝播型の破壊は、自己修復型のように局所的な点欠陥にとどまらず、素子の広い領域に拡がり、致命的な不具合となる。
【0020】
そこで、本発明は上記問題に鑑み、上下電極の重なっている画素領域に絶縁膜が介在している有機EL素子において、画素領域中の絶縁膜が存在する部位にて上下電極が短絡したときに、欠陥が拡がる伝播型の破壊を極力抑制できるようにすることを目的とする。
【0021】
【課題を解決するための手段】
絶縁膜は、主成分である有機材料を高温で加熱し硬化させることで、有機材料の重合反応を進ませ、分子量を大きくしてネットワーク構造を形成したものである。本発明者らは、このことに着目し、微小破壊点が発生したときに、絶縁膜が上方向に多く飛ぶようにするために、絶縁膜の平均分子量や重合反応率を調整することを検討した。
【0022】
請求項1に記載の発明では、基板(10)の上に、下部電極(20)、発光層を含む有機層(30)、および上部電極(40)が順次積層形成されており、下部電極と上部電極とが重なっている領域(50)が複数存在し、各領域の一部にて、下部電極と有機層との間もしくは有機層と上部電極との間に高分子膜からなるパターニングされた絶縁膜(60)が介在しており、下部電極と上部電極とが重なっている複数の領域のうち所定の領域において絶縁膜が存在しない領域有機層に対して下部電極と上部電極から電界を印加して発光可能とし、残りの領域において絶縁膜が存在しない領域の有機層に対して下部電極と上部電極から逆バイアスの電界を印加する有機EL素子において、絶縁膜は、ポジ型のレジスト材料からなり、且つその平均分子量が100以上20000以下の範囲にあるものであることを特徴とする。
【0023】
本発明は、実験検討の結果得られたものである。絶縁膜を、ポジ型のレジスト材料からなり且つその平均分子量が20000以下の範囲にあるものとすることにより、実用レベルの有機EL素子において、上下電極が短絡したとき、その短絡点の上方に位置する絶縁膜が吹き飛んで、その上の上部電極も吹き飛ばすことができる。なお、平均分子量が100未満であると、絶縁膜の耐熱性が確保できないことを確認している。
【0024】
よって、本発明によれば、下部電極と上部電極とが重なっている領域すなわち画素領域中の絶縁膜が存在する部位にて上下電極が短絡したときに、自己修復型の破壊モードを実現できるため、欠陥が拡がる伝播型の破壊を極力抑制することができる。
【0025】
ここで、請求項2に記載の発明のように、絶縁膜(60)の平均分子量が100以上10000以下であることが好ましい。それによれば、より高温の環境下においても、伝播型の破壊を極力抑制することができる。
【0026】
また、請求項3に記載の発明では、基板(10)の上に、下部電極(20)、発光層を含む有機層(30)、および上部電極(40)が順次積層形成されており、下部電極と上部電極とが重なっている領域(50)が複数存在し、各領域の一部にて、下部電極と有機層との間もしくは有機層と上部電極との間に高分子膜からなるパターニングされた絶縁膜(60)が介在しており、下部電極と上部電極とが重なっている複数の領域のうち所定の領域において絶縁膜が存在しない領域有機層に対して下部電極と上部電極から電界を印加して発光可能とし、残りの領域において絶縁膜が存在しない領域の有機層に対して下部電極と上部電極から逆バイアスの電界を印加する有機EL素子において、絶縁膜は、ネガ型のレジスト材料からなり、且つその重合反応率が5%以上60%以下の範囲にあるものであることを特徴とする。
【0027】
本発明も、実験検討の結果得られたものである。絶縁膜を、ネガ型のレジスト材料からなり且つその重合反応率が60%以下の範囲にあるものとすることにより、実用レベルの有機EL素子において、上下電極が短絡したとき、その短絡点の上方に位置する絶縁膜が吹き飛んで、その上の上部電極も吹き飛ばすことができる。なお、重合反応率が5%未満であると、絶縁膜の耐熱性が確保できないことを確認している。
【0028】
よって、本発明によっても、下部電極と上部電極とが重なっている領域すなわち画素領域中の絶縁膜が存在する部位にて上下電極が短絡したときに、自己修復型の破壊モードを実現できるため、欠陥が拡がる伝播型の破壊を極力抑制することができる。
【0029】
ここで、請求項4に記載の発明のように、絶縁膜(60)の重合反応率が5%から50%の範囲にあることが好ましい。それによれば、より高温の環境下においても、伝播型の破壊を極力抑制することができる。
【0030】
また、上記各手段は、特に、上部電極(40)の膜厚が150nm以下である場合に適用して有効に効果を発揮するものである。
【0031】
つまり、厚くなると、上下電極が短絡したとき、その上の上部電極が飛びにくくなり、自己修復型の破壊モードになり難くなるからである。
【0032】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【0033】
【発明の実施の形態】
(第1実施形態)
以下、本発明を図に示す実施形態について説明する。図1は本発明の第1実施形態に係る有機EL素子の概略断面構成を示す図であり、図2は、図1に示す有機EL素子の概略断面構成を示す図である。
【0034】
この有機EL素子は、ガラス基板等の絶縁性の基板10の上に、下部電極20、発光層を含む有機層30、および上部電極40が順次積層形成されている。ここで、下部電極20および上部電極40は互いに直交するストライプ形状をなしており、これら両電極20、40が重なっている領域50が、画素50として形成されている。
【0035】
ここで、下部電極20は、光学的に透明なITO(Indium Tin Oxide)膜等、有機層30は、正孔輸送性有機材料、電子輸送性有機材料および発光色素等の有機EL材料、上部電極40はAl等の金属膜等、というように通常有機EL素子に採用される材料からなる。
【0036】
限定するものではないが、本例では、基板10はガラス基板、下部電極20はスパッタリング法にて形成された膜厚150nmのITO膜であり、正孔注入性電極すなわち陽極として構成されている。
【0037】
本例の有機層30は、銅フタロシアニン層(15nm)、トリフェニルアミン4量体層(40nm)、ジメチルキノリンを1%ドープしたトリス(8−キノリノラート)アルミニウム錯体(Alq3)層(40nm)、Alq3層(20nm)を順次真空蒸着により積層したものである。
【0038】
ここで、有機層30のうち、ジメチルキノリンを1%ドープしたAlq3層が発光層であり、この発光層よりも下部電極20側の層が正孔注入性や正孔輸送性を有する層であり、発光層よりも上部電極40側の層が電子輸送性や電子注入性を有する層である。
【0039】
また、本例では、上部電極40は、真空蒸着法にて、LiF(0.5nm)層、Al層(100nm)を順次成膜してなるものである。ここで、上部電極40は電子注入性電極すなわち陰極として構成され、その膜厚は70nmから150nm程度である。
【0040】
そして、隣り合う下部電極20のストライプの間には、レジスト材料からなる電気絶縁性の高分子膜としての絶縁膜60がパターニングされて形成されている。ここでは、両電極20、40が重なっている領域(画素)50の中央部にて、絶縁膜60は開口部61を形成している。
【0041】
そして、画素50の周辺部すなわち絶縁膜60の開口部61の周辺部では、下部電極20と有機層30との間に絶縁膜60が介在した形となっている。なお、このような開口部パターンを有する絶縁膜は、有機層30と上部電極40との間に形成されていても良い。
【0042】
ここにおいて、下部電極20と上部電極40とが重なっている領域(画素)50のうち絶縁膜60が存在しない領域(つまり開口部61)では、有機層30に対して上下電極20、40から正孔、電子が注入可能となっている。つまり、開口部61では、有機層30に対して下部電極20と上部電極40から電界を印加することにより有機層30が発光可能となっている。
【0043】
このような絶縁膜60は、ポジ型やネガ型のレジスト材料を用い、一般的なフォトリソグラフ工程により、精度良くパターニング形成することができる。つまり、基板10の上に下部電極20、有機層30、上部電極40を順次形成する際に、下部電極20の形成と有機層30の形成の間、もしくは、有機層30の形成と上部電極40の形成の間に、絶縁膜60の形成を行う。本例では、下部電極20の形成と有機層30の形成の間に行う。
【0044】
この絶縁膜60としては、絶縁体であるフォトレジスト材料からなる高分子膜であれば、特に制限は無く種々のものが使用できる。具体的にはポリイミド等の高分子が挙げられる。これらの材料を用いて成膜するには、通常スピンコート法、キャスト法、LB法などの方法で行われる。
【0045】
この絶縁膜60の形成において、ポジ型レジストでは、レジストの塗布、加熱硬化後に、光照射(露光)を行い、アルカリ可溶となった光照射部をアルカリ現像液により現像し除去してパターニングを行う。一方、ネガ型レジストでは、レジストの塗布、加熱硬化後に、光照射を行うと光照射部では光重合が進みアルカリ難溶性となるため、アルカリ現像液で現像すれば、光照射部以外が除去されることで、パターニング形成が行われる。
【0046】
このような絶縁膜60を設けることにより、上述したように、画素50において絶縁膜60の開口部61のみにて発光が精度良く行われ、また、クロストークが防止されるために逆バイアスの電圧を印加したときに上下電極20、40間の短絡が防止される。
【0047】
ここにおいて、本実施形態では、画素50中の絶縁膜60が存在する部位にて上下電極20、40が短絡したときに、自己修復型の破壊モードを実現し、伝播型の破壊を極力抑制するために、絶縁膜60は次に述べるような特徴を有するものとしている。
【0048】
まず、絶縁膜60が、ポジ型のレジスト材料からなる場合、その平均分子量が100以上20000以下の範囲にあるものとする。ポジ型のレジスト材料からなる絶縁膜60の平均分子量を20000以下の範囲にすることにより、上下電極20、40が短絡したとき、その短絡点の上方に位置する絶縁膜60が吹き飛んで、その上の上部電極40も吹き飛ばすことができる。なお、平均分子量が100未満であると、絶縁膜60の耐熱性が確保できない。
【0049】
ここで、好ましくは、ポジ型のレジスト材料からなる絶縁膜60の平均分子量が100以上10000以下であることが望ましく、それによれば、より高温の環境下においても、伝播型の破壊を極力抑制することができる。
【0050】
また、絶縁膜60がネガ型のレジスト材料からなる場合、その重合反応率が5%以上60%以下の範囲にあるものとする。ネガ型のレジスト材料からなる絶縁膜60の重合反応率を60%以下の範囲にすることにより、上下電極20、40が短絡したとき、その短絡点の上方に位置する絶縁膜60が吹き飛んで、その上の上部電極40も吹き飛ばすことができる。なお、重合反応率が5%未満であると、絶縁膜60の耐熱性が確保できない。
【0051】
ここで、好ましくは、ネガ型のレジスト材料からなる絶縁膜60の重合反応率が5%以上50%以下の範囲にあることが望ましく、それによれば、より高温の環境下においても、伝播型の破壊を極力抑制することができる。
【0052】
次に、このような絶縁膜60の構成を採用した根拠について、種々の具体例を示しながら述べる。
【0053】
[具体例1]
ガラス基板10上に、150nmの厚さのITO膜をスパッタリング法により形成し、これを下部電極20とした。
【0054】
次に、絶縁膜60を形成するが、その材料として主成分がアルカリ可溶性フェノール樹脂とキノンジアジドの混合物であるポジレジスト(SHIPLEY S−1400)を使用した。これをスピンナーにて500rpm、30secの条件により基板10に塗布して、オーブンにて90℃、3分間にて仮焼成を行い、さらにフォトリソ工程によって所定パターンに形成した。
【0055】
次に、絶縁膜60の平均分子量を調整にするために、さらに所定の温度で30分間、オーブンにて加熱焼成すなわちパターニング後の焼成を行った。このときの平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC: Gel Permeation Chromatography)法により測定した。
【0056】
次に、有機膜30として、銅フタロシアニン層(15nm)、トリフェニルアミン4量体層(40nm)、ジメチルキノリンを1%ドープしたAlq3層(40nm)、Alq3層(20nm)を順次真空蒸着により積層した。この有機層30を形成した後、LiFを0.5nmおよびAlを100nm真空蒸着で成膜し、これらを上部電極40とした。
【0057】
その後、乾燥剤(BaO)入りのSUS缶にて封止を行い、本具体例1の有機EL素子を得た。
【0058】
この手順で作製する有機EL素子において、絶縁膜60の膜厚を1μmとし、その平均分子量を変えたものを種々作製した。平均分子量の変更は、上記した平均分子量を調整にするために行うパターニング後の焼成における加熱温度を変えて行うことで実現した。図3は、その加熱温度と平均分子量との関係を示す図である。
【0059】
図3に示すように、本具体例1においては、本焼成における加熱温度を20〜180℃の範囲にすることで、本実施形態における平均分子量100以上20000以下を適切に実現できることがわかる。実際には、この図3に示すような加熱温度と平均分子量との関係を予め求めておいて、製造時の加熱条件を決定することで、所望の平均分子量を実現できる。
【0060】
そして、絶縁膜60の平均分子量を種々変えた場合について、試験を行い、絶縁膜60の膜厚を1μmとした時の、絶縁膜60の平均分子量と絶縁膜60上における伝播型破壊の発生個数との関係を調べた。その結果を図4に示す。
【0061】
ここでは、各平均分子量毎に、256×64ドットマトリクスの有機EL素子10台を作製し、この10台の素子を65℃または85℃の恒温槽中で1000時間、200cd/cm2の面輝度で連続発光試験を実施した。このときの駆動条件は、1/64デューティで発光状態とするための順バイアス電圧を13V、非発光状態とするための逆バイアスを20Vとした。
【0062】
その後に、各素子について、光学顕微鏡にて絶縁膜60上の伝播型破壊すなわちライン欠陥の有無を測定した。この伝播型破壊(ライン欠陥)の個数は、各平均分子量毎に作製した10台の素子の総計として求めた。例えば、図4において、ある平均分子量における破壊発生数が4個であれば、その平均分子量の絶縁膜60を有する有機EL素子10台中に、4個の伝播型破壊が発生したことを意味する。
【0063】
図4から、65℃では平均分子量を20000以下とすることにより、また85℃では平均分子量を10000以下とすることで、伝播破壊の発生を無くせることがわかる。
【0064】
これは絶縁膜60の平均分子量が20000以下になると、微小破壊点が発生した際、絶縁膜60が上方向に吹き飛びやすくなり、上部電極40が破壊点端部より外側へ後退するためである。このことは、顕微鏡観察等にて確認している。その様子を図5に模式的に示す。
【0065】
図5に示すように、上下電極20、40が短絡したとき、その短絡点K2の上方に位置する絶縁膜60が吹き飛んで、その上の上部電極40もきれいに吹き飛ばすことができる。また、85℃で発光させたときの絶縁膜60の耐熱性を考慮すると、平均分子量は100以上とする必要があることも、実験的に確認している。
【0066】
このように、本具体例1によって、ポジ型のレジスト材料からなる絶縁膜60の平均分子量を100以上20000以下(好ましくは10000以下)の範囲にあるものとする根拠が示された。なお、この具体例1以外の他のポジ型レジストでも、同様の傾向が確認されている。
【0067】
さらに、絶縁膜60の平均分子量を10000に固定して、上部電極40の膜厚を70nm(70nm未満は抵抗が高くなり過ぎる)、150nm、200nmに変更しその他の条件は具体例1と同じで、伝播破壊の発生状況を85℃で確認した所、70nm、150nmは未発生であったが、200nmでは発生した。
【0068】
[具体例2]
絶縁膜60として、ラジカル重合をするアクリル樹脂系のネガレジストを使用し、その重合反応率が5%以上60%以下の範囲になるものを用いる他は、上記具体例1と同様に行った。
【0069】
絶縁膜60として、ラジカル重合反応をするアクリル樹脂系のネガレジストをスピンナーにて、500rpm、30secの条件により基板10に塗布し、次にプリベーク(仮焼成)として、オーブンにて90℃×3分を行い、フォトリソ工程により所定パターンに形成した。このフォトリソ工程での露光によって光重合反応率を5%以上60%以下とした。
【0070】
この後、本焼成を行った。この場合、本焼成の加熱条件をプリベークの温度(つまり露光前の加熱温度)以下とすることで、この本焼成のにおける重合反応率の変化を抑制でき、実質的に露光のみで重合反応率を規定することができる。本例では、プリベークと同様にオーブンにて90℃×3分の本焼成を行い、さらなる重合反応を抑制した。
【0071】
重合反応率は、フーリエ変換赤外分光(FT−IR:Fourier Transform Infrared)法により、光照射によるネガレジスト中の不飽和2重結合(−CH=CH2)のピーク値の変化率から求めた。
【0072】
この方法は、重合反応率をモノマー中の不飽和2重結合の残存率から求めたもので、重合あるいは架橋の程度は直接測定できないので、IRスペクトルから不飽和基のCH面外変振動を測定し、その吸収の消失割合から間接的に求めた。FT−IR法により得られたスペクトルから各処理工程におけるC=C基の減少率を見積もった。ここでは、984cm-1の末端ビニル基(σCH2)について、1367cm-1のCH3変角振動を基準に吸収強度比を求め、各処理における反応率を見積もった。
【0073】
ここで、重合反応率の範囲を5%から60%の範囲とする方法は、フォトリソ工程での露光時における絶縁膜60の光に対する感度及び照射量を調整する方法、フォトリソ工程における露光時の温度を変更する方法、あるいは重合開始剤や重合抑制剤の量あるいは材料を調整する方法等があげられる。
【0074】
なお、実際には、上記した露光時の感度や照射量等の露光に関わる条件と重合反応率との関係を予め求めておいて、製造時の露光条件を決定することで、所望の重合反応率を実現できる。
【0075】
そして、絶縁膜60の重合反応率を種々変えた場合について、試験を行い、絶縁膜60の膜厚を1μmとした時の、絶縁膜60の平均分子量と絶縁膜60上における伝播型破壊の発生個数(個/10素子)との関係を調べた。試験方法は上記具体例と同様とした。その結果を図6に示す。
【0076】
図6から、65℃では重合反応率を60%以下とすることにより、また85℃では重合反応率を50%以下とすることで、伝播破壊の発生を無くせることがわかる。
【0077】
これは、絶縁膜60の重合反応率を60%以下になると、上記図5と同様に、微小破壊点が発生した際、絶縁膜60が上方向に吹き飛びやすくなり、上部電極40が破壊点端部より外側へ後退するためである。このことは、顕微鏡観察等にて確認している。また、85℃で発光させたときの絶縁膜60の耐熱性を考慮すると、重合反応率を5%以上とする必要があることも、実験的に確認している。
【0078】
このように、本具体例2によって、ネガ型のレジスト材料からなる絶縁膜60の重合反応率を5%以上60%以下(好ましくは50%以下)の範囲にあるものとする根拠が示された。なお、この具体例2以外の他のネガ型レジストでも、同様の傾向が確認されている。
【0079】
このように、本実施形態において上記したような絶縁膜60の構成を採用した根拠は、本発明者らの行った実験検討の結果によるものである。そして、本実施形態の絶縁膜60を採用することにより、画素50中の絶縁膜60が存在する部位にて上下電極20、40が短絡したときに、自己修復型の破壊モードを実現し、伝播型の破壊を極力抑制することができる。
【0080】
また、本実施形態は、上部電極40の膜厚が150nm以下である場合に適用して有効である。上部電極40が厚すぎると、いくら絶縁膜60が短絡によって吹き飛びやすくなっていても、上部電極40までも吹き飛ばしにくくなるためである。
【0081】
また、絶縁膜60の膜厚は、約3μm以下程度が好ましい。これは絶縁膜60の厚さが3μmを超えると、絶縁膜60が吹き飛ぶときに発生するガスにより絶縁膜60周辺が発光しにくくなる場合があるためである。
【0082】
また、上記例では、有機層30として低分子の有機EL材料を用いた場合を示したが、ポリマー系有機EL材料を用いたものでも、本実施形態は有効である。その具体例を次に示す。
【0083】
[具体例3]
有機膜30として、ポリマー系の材料を使用する他は上記具体例1と同様に有機EL素子を作製した。
【0084】
すなわち、有機膜30として、25gのメタノールに1gのポリ(p−フェニレンビニレン)(PPV)の前駆体を溶かした溶液を、上部電極20および絶縁膜60が形成された基板10の上に、回転速度5000rpmでスピンコートした。そのポリマー前駆体を170℃にて真空オーブン中で加熱することで、分子量10000のPPV(その膜厚は150nm)に変換し、これを有機膜30とした。
【0085】
本例においても、絶縁膜60の膜厚を1μmとし、その平均分子量を変えた有機EL素子を種々作製した。そして、絶縁膜60の膜厚を1μmとした時の、絶縁膜60の平均分子量と絶縁膜60上における伝播型破壊の発生個数(個/10素子)との関係を調べた。その結果を図7に示す。
【0086】
図7に示すように、本具体例3においても、65℃では平均分子量を20000以下とすることにより、また85℃では平均分子量を10000以下とすることで、伝播破壊発生を無くせることがわかる。
【0087】
(他の実施形態)
なお、トランジスター付きの基板を使用したアクティブ有機EL素子の場合でも、上記実施形態と同様の絶縁膜を採用すれば、同様の結果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態に係る有機EL素子の概略平面構成を示す図である。
【図2】図1に示す有機EL素子の概略断面構成を示す図である。
【図3】絶縁膜においてパターニング後の焼成における加熱温度加熱温度と平均分子量との関係を示す図である。
【図4】具体例1における絶縁膜の平均分子量と絶縁膜上における伝播型破壊の発生個数との関係を示す図である。
【図5】本実施形態の絶縁膜による自己修復型の破壊の様子を示す図である。
【図6】具体例2における絶縁膜の重合反応率と絶縁膜上における伝播型破壊の発生個数との関係を示す図である。
【図7】具体例3における絶縁膜の平均分子量と絶縁膜上における伝播型破壊の発生個数との関係を示す図である。
【図8】絶縁膜が存在しない画素部分における自己修復型の破壊モードを示す図である。
【図9】絶縁膜が存在する画素部分における伝播型の破壊モードを示す図である。
【符号の説明】
10…基板、20…下部電極、30…有機層、40…上部電極、50…下部電極と上部電極とが重なっている領域としての画素、60…絶縁膜。

Claims (5)

  1. 基板(10)の上に、下部電極(20)、発光層を含む有機層(30)、および上部電極(40)が順次積層形成されており、
    前記下部電極と前記上部電極とが重なっている領域(50)が複数存在し、各領域の一部にて、前記下部電極と前記有機層との間もしくは前記有機層と前記上部電極との間に高分子膜からなるパターニングされた絶縁膜(60)が介在しており、
    前記下部電極と前記上部電極とが重なっている複数の領域のうち所定の領域において前記絶縁膜が存在しない領域前記有機層に対して前記下部電極と前記上部電極から電界を印加して発光可能とし、残りの領域において前記絶縁膜が存在しない領域の前記有機層に対して前記下部電極と前記上部電極から逆バイアスの電界を印加する有機EL素子において、
    前記絶縁膜は、ポジ型のレジスト材料からなり、且つその平均分子量が100以上20000以下の範囲にあるものであることを特徴とする有機EL素子。
  2. 前記絶縁膜(60)の平均分子量が100以上10000以下であることを特徴とする請求項1に記載の有機EL素子。
  3. 基板(10)の上に、下部電極(20)、発光層を含む有機層(30)、および上部電極(40)が順次積層形成されており、
    前記下部電極と前記上部電極とが重なっている領域(50)が複数存在し、各領域の一部にて、前記下部電極と前記有機層との間もしくは前記有機層と前記上部電極との間に高分子膜からなるパターニングされた絶縁膜(60)が介在しており、
    前記下部電極と前記上部電極とが重なっている複数の領域のうち所定の領域において前記絶縁膜が存在しない領域前記有機層に対して前記下部電極と前記上部電極から電界を印加して発光可能とし、残りの領域において前記絶縁膜が存在しない領域の前記有機層に対して前記下部電極と前記上部電極から逆バイアスの電界を印加する有機EL素子において、
    前記絶縁膜は、ネガ型のレジスト材料からなり、且つその重合反応率が5%以上60%以下の範囲にあるものであることを特徴とする有機EL素子。
  4. 前記絶縁膜(60)の重合反応率が5%以上50%以下の範囲にあることを特徴とする請求項3に記載の有機EL素子。
  5. 前記上部電極(40)の膜厚が150nm以下であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一つに記載の有機EL素子。
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