JP4032781B2 - 分岐状液晶ポリマーフィラー及びその製造方法 - Google Patents

分岐状液晶ポリマーフィラー及びその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、分岐状液晶ポリマーフィラーに関し、詳しくは溶融時に光学的異方性を示す液晶ポリマーからなり、幹部および幹部より分岐して存在する枝状部を有し、幹部が平板状であることを特徴とする分岐状液晶ポリマーフィラーに関するものである。
【0002】
【従来の技術、発明が解決しようとする課題】
溶融時に光学的異方性を示す液晶ポリマーからなる液晶ポリマーフィラーとしては、例えば、5-ナトリウムスルホイソフタル酸等を共重合成分とする易アルカリ減量性ポリエステルを海成分とし、液晶ポリマーを島成分とする海島繊維から、易アルカリ減量性ポリエステルを除去することにより得られた枝分かれを有しないパルプ状繊維(特開平7-331581号公報)、液晶ポリマーを押出し伸張して得られるフィブリル状押出物を叩解して得られたパルプ状短繊維(特開平6-341014号公報)などが知られている。
しかしながら、繊維状のフィラーは、他の樹脂中に分散させて使用する場合、ガスバリア性が不十分であるという問題の他に、繊維状フィラー自身が絡み合い凝集するためか、分散性が不十分であるという問題があった。また薄い紙状成形体を製造する場合、突起、夾雑物が生じるといった問題があった。
【0003】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、かかる問題点の改善された液晶ポリマーフィラーを見出すべく、鋭意検討を重ねた結果、幹部および幹部より分岐して存在する枝状部を有し、幹部が平板状であるという特定の液晶ポリマーフィラーが、他の樹脂中に分散させて使用する場合、分散性が良好であり、ガスバリア性も向上し得、薄い紙状成形体を製造する場合も、突起、夾雑物等の問題を解決しえることを見出すとともに、このフィラーは、液晶ポリマーを二軸に延伸することにより成膜したフィルム形状物という特定のフィルム形状物を粉砕することにより製造し得ることを見出し、発明を完成した。
【0004】
すなわち本発明は、溶融時に光学的異方性を示す液晶ポリマーからなり、幹部および幹部より分岐して存在する枝状部を有し、幹部が平板状であることを特徴とする工業的に優れた分岐状液晶ポリマーフィラーを提供するものである。
また本発明は、溶融時に光学的異方性を示す液晶ポリマーをフィルムダイを経て押し出して二軸に延伸することにより成膜したフィルム形状物を粉砕することを特徴とする上記分岐状液晶ポリマーフィラーの製造方法を提供するものである。
【0005】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を更に詳細に説明する。
本発明の液晶ポリマーフィラーは、溶融時に光学的異方性を示す液晶ポリマーからなり、幹部および幹部より分岐して存在する枝状部を有し、幹部が平板状であることを特徴とするものである。かかる液晶ポリマーフィラーの比表面積は0.1〜2.5m2/gが好ましい。より好ましくは0.5〜2m2/gである。0.1m2/g未満であると、アラミドパルプやセルロースパルプとのなじみが悪く、抄紙などの成形性が悪くなることが有り好ましくない。また、2.5m2/g以上であると、枝分かれが大きすぎ、液晶ポリマーフィラーのみで凝集しやすくなるためか、他の繊維、パルプに配合する際に分散性が悪くなることが有り好ましくない。また液晶ポリマーフィラーを紙用途に使用する場合は、液晶ポリマーフィラーの幹となる部分における厚み、長軸長さ、短軸長さの内、最も小さい部分が30μm以下であることが好ましい。より好ましくは、10μm以下である。ここで、30μmを超えたものを使用すると、他のパルプ等に配合して薄い紙状成形体を製造する場合に、突起となったり、夾雑物が生じる傾向にある。
【0006】
本発明の液晶ポリマーフィラーは、溶融時に光学的異方性を示す液晶ポリマーをフィルムダイを経て押し出して二軸に延伸することにより成膜したフィルム形状物を粉砕することにより製造し得る。液晶ポリマーを押出すに当たり、液晶ポリマーは、均一に溶融混練されていることが好ましく、このことにより、薄いフィルムに延伸した場合でもフィブリル状、繊維状に開列しにくいフィルムを得ることができる。溶融混練は、一軸または二軸のスクリュー方式が採用される。
その具体的方法として、例えば、一軸押出機にTダイを設置し、Tダイから溶融樹脂を押出し、二軸テンターを用いて二軸延伸しながら巻き取るTダイ法、環状ダイスを設置した一軸押出し機から溶融樹脂を円筒状に押出し、内部に気体を封入して膨張させ、冷却しながら巻き取るインフレーション成膜法等が挙げられる。いずれの場合でも、幹部を平板状とするためには、TD方向に延伸することが好ましく、1倍を超える延伸率が好ましい。1倍以下であると、繊維化することがあり好ましくない。また、枝分かれを生じさせるためにはTD方向の延伸率が2倍未満であることが好ましい。2倍以上であると、実質的に枝分かれが生じないことがあり好ましくない。
【0007】
中でも、インフレーション成膜法が好ましく、高度にTD方向に延伸することなく、つまり、TD方向に2倍以下の延伸でも溶融樹脂表面に張力を加えながら成膜することにより、容易にフィブリル化、繊維化しないフィルム形状物を得ることができる。
例えば、環状スリットのダイを備えた溶融押出機に液晶ポリマーを供給し、シリンダー設定温度200〜380℃、好ましくは230〜350℃で溶融混練を行い、押出機の環状スリットから筒状フィルムが上方または下方へ溶融樹脂が押出される。環状スリット間隔は通常0.1〜5mm、好ましくは0.2〜2mm、環状スリットの直径は通常20〜1000mm、好ましくは25〜600mmである。溶融押出しされた溶融樹脂フィルムを長手方向(MD)に延伸するとともに、この筒状フィルムの内側から空気または不活性ガス、例えば窒素ガス等を吹き込むことにより長手方向と直角な横手方向(TD)にフィルムを膨張延伸させることができる。また、筒状フィルムの直径が環状スリットの直径よりも小さい場合にも、内部にガスを吹き込むことで、筒状フィルムが必要以上に収縮したり萎んだり、皺になったりしないよう張力を与えることが出来る。
【0008】
インフレーション成膜法において、好ましいブロー比は1を超え2未満である。ブロー比が2以上であると、得られたフィルムを粉砕した場合にフィラーに枝分かれが生じないことがあり好ましくなく、1未満では安定した厚みのフィルムが得られないことがあり好ましくない。さらに、フィルムを叩解する前に繊維化することがあり好ましくない。好ましいMD延伸倍率は1.5〜70である。1.5未満であると得られたフィルムを粉砕した場合にフィラーの枝分かれが生じない場合があり好ましくなく、70を超えると成膜困難な場合があり好ましくない。ここで、ブロー比とは、ダイス口から吐出され膨張した後の溶融樹脂の直径を、環状スリットの直径で除した値をいう。また、MD延伸倍率とは、フィルム引き取り速度を環状スリットからの樹脂の吐出速度で除した値を言う。
【0009】
膨張させた溶融樹脂フィルムは通常、その円周を空冷あるいは水冷させた後、ニップロールを通過させて引き取ることにより、粉砕の原料となるフィルム形状物を得ることができる。
フィルム形状物の厚さは特に制限されないが、好ましくは0.5〜100μm、より好ましくは1〜30μm、更に好ましくは3〜10μmである。常用耐熱温度が140℃以上の耐熱性を有することが好ましい。
【0010】
上記のようなフィルム形状物を粉砕することにより、本発明液晶ポリマーフィラーが製造される。ここで、粉砕機としては、各種グラインダー、ミル、ビーター、ショルダン、リファイナー等が有効に使用される。また粉砕を湿潤状態で行う場合には原料樹脂の融着を防ぐ目的で、水または油剤、界面活性剤、を用いることもできる。またイソプロパノール、エタノール等のアルコール類を添加し表面の湿潤性を高め、より叩解が進み易くすることもできる。また、粉砕する際、MD、TDどちらかの長さをあらかじめ0.1mm〜50mm、更に好ましくは0.5mm〜20mm程度に切断して置くと粉砕が進みやすい。
【0011】
かくして、本発明の分岐状液晶ポリマーフィラーが製造されるが、基材となる溶融時に光学的異方性を示す液晶性ポリマーとしては、例えば、全芳香族系もしくは半芳香族系の、ポリエステル、ポリエステルイミド、ポリエステルアミド等や、これらを含む液晶性樹脂組成物等が挙げられる。好ましくは液晶ポリエステルやそれを含有する樹脂組成物であり、さらに好ましくは全芳香族系液晶ポリエステルやそれを含有する樹脂組成物である。
【0012】
ここでいう液晶ポリエステルとは、サーモトロピック液晶ポリマーと呼ばれるポリエステルである。その代表例としたは、例えば、
(1)芳香族ジカルボン酸と芳香族ジオールと芳香族ヒドロキシカルボン酸とを反応させて得られるもの、
(2)異種の芳香族ヒドロキシカルボン酸の組み合わせを反応させて得られるもの、
(3)芳香族ジカルボン酸と芳香族ジオールとを反応させて得られるもの、
(4)ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルに芳香族ヒドロキシカルボン酸を反応させて得られるもの、
などが挙げられ、通常、400℃以下の温度で異方性溶融体を形成するものである。なお、これらの芳香族ジカルボン酸、芳香族ジオール及び芳香族ヒドロキシカルボン酸の代わりに、それらのエステル誘導体が使用されることもある。さらに、これらの芳香族ジカルボン酸、芳香族ジオール及び芳香族ヒドロキシカルボン酸は、芳香族部分がハロゲン原子、アルキル基、アリール基等で置換されたものが使用されることもある。
【0013】
該液晶ポリエステルの繰返し構造単位としては、下記の▲1▼芳香族ジカルボン酸に由来する繰返し構造単位、▲2▼芳香族ジオールに由来する繰返し構造単位、▲3▼芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する繰返し構造単位を例示することができるが、これらに限定されるものではない。
【0014】
▲1▼芳香族ジカルボン酸に由来する繰り返し構造単位:
Figure 0004032781
【0015】
これらの各構造単位における芳香環は、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基等で置換されていてもよい。
【0016】
▲2▼芳香族ジオールに由来する繰返し構造単位:
Figure 0004032781
これらの各構造単位における芳香環は、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基等で置換されていてもよい。
【0017】
▲3▼芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する繰返し構造単位:
Figure 0004032781
これらの各構造単位における芳香環は、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基等で置換されていてもよい。
【0018】
耐熱性、機械的特性、加工性のバランスから特に好ましい液晶ポリエステルは、
Figure 0004032781
なる繰り返し構造単位を含むものであり、さらに好ましくはこのような繰り返し構造単位を少なくとも全体の30モル%以上含むものである。具体的には繰り返し構造単位の組み合わせが下記(I)〜(VI)のいずれかのものが好ましい。また、防湿性の観点からは(IV)以外の、全芳香族ポリエステルタイプがさらに好ましい。
【0019】
(I)
Figure 0004032781
【0020】
(II)
Figure 0004032781
【0021】
(III)
Figure 0004032781
【0022】
(IV)
Figure 0004032781
【0023】
(V)
Figure 0004032781
【0024】
(VI)
Figure 0004032781
【0025】
上記(I)〜(VI)における組合せの液晶ポリエステルは、例えば特公昭47−47870号公報、特公昭63−3888号公報、特公昭63−3891号公報、特公昭56−18016号公報、特開平2−51523号公報などに記載の方法に準拠して製造し得る。これらの中で好ましい組合せとしては(I)、(II)または(IV)、さらに好ましくは(I)または(II)が挙げられる。
【0026】
本発明において、高い耐熱性が要求される分野には、下記の繰り返し単位(a’)が30〜80モル%、繰り返し単位(b’)が0〜10モル%、繰り返し単位(c’)が10〜25モル%、繰り返し単位(d’)が10〜35モル%からなる液晶ポリエステルが好ましく使用される。
【0027】
Figure 0004032781
(式中、Arは2価の芳香族基を示す。)
繰り返し単位(d’)における2価の芳香族基は、上述の芳香族ジオールにおける2価の芳香族基が好ましく、特に高い耐熱性が要求される用途には全芳香族のジオールが好ましい。
【0028】
本発明の液晶ポリマーフィラーにおいて、環境問題等の見地から使用後の焼却などの廃棄の容易さが求められる分野には、ここまで挙げたそれぞれに要求される分野の好ましい組み合わせの中で特に炭素、水素、酸素のみの元素からなる組み合わせによる液晶ポリエステルが特に好ましく使用される。
また成形加工性、得られるフィルムの性能の点から、本発明においては(A)液晶ポリエステルを連続相とし(B)液晶ポリエステルと反応性を有する官能基を有する共重合体を分散相とする液晶ポリエステル樹脂組成物を用いることがさらに好ましい。
【0029】
上記の液晶ポリエステル樹脂組成物に用いられる成分(B)は、液晶ポリエステルと反応性を有する官能基を有する共重合体である。このような液晶ポリエステルと反応性を有する官能基としては、液晶ポリエステルと反応性を有すれば何でもよく、具体的には、オキサゾリル基やエポキシ基、アミノ基等が挙げられる。好ましくは、エポキシ基である。
エポキシ基等は他の官能基の一部として存在していてもよく、そのような例としては例えばグリシジル基が挙げられる。
【0030】
共重合体(B)において、このような官能基を共重合体中に導入する方法としては特に限定されるものではなく、周知の方法で行うことができる。例えば共重合体の合成段階で、該官能基を有する単量体を共重合により導入することも可能であるし、共重合体に該官能基を有する単量体をグラフト共重合することも可能である。
【0031】
液晶ポリエステルと反応性を有する官能基を有する単量体、中でもグリシジル基を含有する単量体が好ましく使用される。グリシジル基を含有する単量体としては、例えば下記一般式
Figure 0004032781
(式中、Rは、エチレン系不飽和結合を有する炭素数2〜13の炭化水素基を表し、Xは、−C(O)O−、−CH2−O−または
Figure 0004032781
を表す。)
で示される不飽和カルボン酸グリシジルエステル、不飽和グリシジルエーテルが好ましく用いられる。
【0032】
ここで、不飽和カルボン酸グリシジルエステルとしては、例えばグリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、イタコン酸ジグリシジルエステル、ブテントリカルボン酸トリグリシジルエステル、p−スチレンカルボン酸グリシジルエステルなどを挙げることができる。
【0033】
不飽和グリシジルエーテルとしては、例えばビニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、2−メチルアリルグリシジルエーテル、メタクリルグリシジルエーテル、スチレン−p−グリシジルエーテル等が例示される。
【0034】
上記の液晶ポリエステルと反応性を有する官能基を有する共重合体(B)は、好ましくは、不飽和カルボン酸グリシジルエステル単位および/または不飽和グリシジルエーテル単位を0.1〜30重量%含有する共重合体である。
【0035】
好ましくは、上記の液晶ポリエステルと反応性を有する官能基を有する共重合体(B)は、結晶の融解熱量が3J/g未満の共重合体が通常使用される。
また共重合体(B)としては、ムーニー粘度が3〜70のものが好ましく、3〜30のものがさらに好ましく、4〜25のものが特に好ましい。
ここでいうムーニー粘度は、JIS K6300に準じて100℃ラージローターを用いて測定した値をいう。これらの範囲外であると、組成物の熱安定性や柔軟性が低下する傾向にあり好ましくない。
【0036】
また、上記の液晶ポリエステルと反応性を有する官能基を有する共重合体(B)は、熱可塑性樹脂であってもゴムであってもよいし、熱可塑性樹脂とゴムの混合物であってもよい。該液晶ポリエステル樹脂組成物を用いて得られるフィルムまたはシート等の成形体の熱安定性や柔軟性が優れるゴムがより好ましい。
【0037】
液晶ポリエステルと反応性を有する官能基をゴム中に導入する方法としては、特に限定されるものではなく、周知の方法で行うことができる。例えばゴムの合成段階で、該官能基を有する単量体を共重合により導入することも可能であるし、ゴムに該官能基を有する単量体をグラフト共重合することも可能である。
【0038】
液晶ポリエステルと反応性を有する官能基を有する共重合体(B)の具体例としてのエポキシ基を有するゴムとしては、(メタ)アクリル酸エステル−エチレン−(不飽和カルボン酸グリシジルエステルおよび/または不飽和グリシジルエーテル)共重合体ゴムを挙げることができる。
【0039】
ここで(メタ)アクリル酸エステルとは、アクリル酸またはメタクリル酸とアルコールから得られるエステルである。アルコールとしては、炭素原子数1〜8のアルコールが好ましい。(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、tert−ブチルアクリレート、tert−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレートなどを挙げることができる。なお、(メタ)アクリル酸エステルとしては、その一種を単独で使用してもよく、または二種以上を併用してもよい。
【0040】
本発明における共重合体ゴムにおいて、(メタ)アクリル酸エステル単位が好ましくは40重量%を超え97重量%未満、さらに好ましくは45〜70重量%、エチレン単位が好ましくは3重量%以上50重量%未満、さらに好ましくは10〜49重量%、不飽和カルボン酸グリシジルエーテル単位および/または不飽和グリシジルエーテル単位が好ましくは0.1〜30重量%、さらに好ましくは0.5〜20重量%である。
上記の範囲外であると、得られるフィルムまたはシート等の成形体の熱安定性や機械的性質が不十分となる傾向にあり好ましくない。
【0041】
該共重合体ゴムは、通常の方法、例えばフリーラジカル開始剤による塊状重合、乳化重合、溶液重合などによって製造することができる。なお、代表的な重合方法は、特開昭48−11388号公報、特開昭61−127709号公報などに記載された方法であり、フリーラジカルを生成する重合開始剤の存在下、圧力500kg/cm2以上、温度40〜300℃の条件により製造することができる。
【0042】
共重合体(B)に使用できるゴムとして他には、液晶ポリエステルと反応性を有する官能基を有するアクリルゴムや、液晶ポリエステルと反応性を有する官能基を有するビニル芳香族炭化水素化合物−共役ジエン化合物ブロック共重合体ゴムも例示することができる。
【0043】
ここでいうアクリルゴムとして好ましくは、一般式(1)〜(3)
CH2=CH−C(O)−OR1 (1)
CH2=CH−C(O)−OR2OR3 (2)
CH2=CR4−C(O)−O(R5(C(O)O)nR6 (3)
(式中、R1は炭素原子数1〜18のアルキル基またはシアノアルキル基を示す。R2は炭素原子数1〜12のアルキレン基を、R3は炭素原子数1〜12のアルキル基を示す。R4は水素原子またはメチル基、R5は、炭素原子数3〜30のアルキレン基、R6は炭素原子数1〜20のアルキル基またはその誘導体、nは1〜20の整数を示す。)
で表される化合物から選ばれる少なくとも1種の単量体を主成分とするものである。
【0044】
上記一般式(1)で表されるアクリル酸アルキルエステルの具体例としては、例えばメチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、ペンチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ノニルアクリレート、デシルアクリレート、ドデシルアクリレート、シアノエチルアクリレートなどを挙げることができる。
【0045】
また、上記一般式(2)で表されるアクリル酸アルコキシアルキルエステルとしては、例えばメトキシエチルアクリレート、エトキシエチルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、エトキシプロピルアクリレートなどを挙げることができる。これらの一種または二種以上を該アクリルゴムの主成分として用いることができる。
【0046】
このようなアクリルゴムの構成成分として、必要に応じて上記の一般式(1)〜(3)で表される化合物から選ばれる少なくとも一種の単量体と共重合可能な不飽和単量体を用いることができる。
このような不飽和単量体の例としては、スチレン、α−メチルスチレン、アクリロニトリル、ハロゲン化スチレン、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、ビニルナフタレン、N−メチロールアクリルアミド、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ベンジルアクリレート、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸などが挙げられる。
【0047】
液晶ポリエステルと反応性を有する官能基を有するアクリルゴムの好ましい構成成分比は、上記の一般式(1)〜(3)で表される化合物から選ばれる少なくとも一種の単量体40〜99.9重量%、不飽和カルボン酸グリシジルエステルおよび/または不飽和グリシジルエーテル0.1〜30重量%、上記の一般式(1)〜(3)で表される化合物から選ばれる少なくとも一種の単量体と共重合可能な不飽和単量体0〜30重量%である。
該アクリルゴムの構成成分比が上記の範囲内であると、組成物の耐熱性や耐衝撃性、成形加工性が良好であり好ましい。
【0048】
該アクリルゴムの製法は特に限定するものではなく、例えば特開昭59−113010号公報、特開昭62−64809号公報、特開平3−160008号公報、あるいはWO95/04764などに記載されているような周知の重合法を用いることができ、ラジカル開始剤の存在下で乳化重合、懸濁重合、溶液重合あるいはバルク重合で製造することができる。
【0049】
前記液晶ポリエステルと反応性を有する官能基を有するビニル芳香族炭化水素化合物−共役ジエン化合物ブロック共重合体ゴムとしては、例えば(a)ビニル芳香族炭化水素化合物を主体とするシーケンスと(b)共役ジエン化合物を主体とするシーケンスからなるブロック共重合体をエポキシ化して得られるゴム、該ブロック共重合体の水添物をエポキシ化して得られるゴム等が挙げられる。
【0050】
ここでビニル芳香族炭化水素化合物としては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルナフタレンなどを挙げることができ、中でもスチレンが好ましい。
共役ジエン化合物としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、3−ブチル−1,3−オクタジエンなどを挙げることができ、ブタジエンまたはイソプレンが好ましい。
【0051】
かかるビニル芳香族炭化水素化合物−共役ジエン化合物ブロック共重合体またはその水添物は、周知の方法で製造することができ、例えば、特公昭40−23798号公報、特開昭59−133203号公報等に記載されている。
【0052】
共重合体(B)として用いるゴムとして好ましくは、(メタ)アクリル酸エステル−エチレン−(不飽和カルボン酸グリシジルエステルおよび/または不飽和グリシジルエーテル)共重合体ゴムが用いられる。
【0053】
共重合体(B)として用いるゴムは、必要に応じて加硫を行い、加硫ゴムとして用いることができる。
上記の(メタ)アクリル酸エステル−エチレン−(不飽和カルボン酸グリシジルエステルおよび/または不飽和グリシジルエーテル)共重合体ゴムの加硫は、例えば多官能性有機酸、多官能性アミン化合物、イミダゾール化合物などを用いることで達成されるが、これらに限定されるものではない。
【0054】
一方、液晶ポリエステルと反応性を有する官能基を有する共重合体(B)の具体例としてのエポキシ基を有する熱可塑性樹脂としては、(a)エチレン単位が50〜99重量%、(b)不飽和カルボン酸グリシジルエステル単位および/または不飽和グリシジルエーテル単位が0.1〜30重量%、好ましくは0.5〜20重量%、(c)エチレン系不飽和エステル化合物単位が0〜50重量%からなるエポキシ基含有エチレン共重合体を挙げることができる。
【0055】
エチレン系不飽和エステル化合物(c)としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル等のカルボン酸ビニルエステル、α,β−不飽和カルボン酸アルキルエステル等が挙げられる。特に酢酸ビニル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチルが好ましい。
【0056】
該エポキシ基含有エチレン共重合体の具体例としては、たとえばエチレン単位とグリシジルメタクリレート単位からなる共重合体、エチレン単位とグリシジルメタクリレート単位およびアクリル酸メチル単位からなる共重合体、エチレン単位とグリシジルメタクリレート単位およびアクリル酸エチル単位からなる共重合体、エチレン単位とグリシジルメタクリレート単位および酢酸ビニル単位からなる共重合体等が挙げられる。
【0057】
該エポキシ基含有エチレン共重合体のメルトインデックス(以下、MFRということがある。JIS K6922−2、190℃、2.16kg荷重)は、好ましくは0.5〜100g/10分、さらに好ましくは2〜50g/10分である。メルトインデックスはこの範囲外であってもよいが、メルトインデックスが100g/10分を越えると組成物にした時の機械的物性の点で好ましくなく、0.5g/10分未満では成分(A)の液晶ポリエステルとの相溶性が劣り好ましくない。
【0058】
また、該エポキシ基含有エチレン共重合体は、曲げ剛性率が10〜1300kg/cm2の範囲のものが好ましく、20〜1100kg/cm2のものがさらに好ましい。
曲げ剛性率がこの範囲外であると組成物の成形加工性や機械的性質が不十分となる傾向がある。
【0059】
該エポキシ基含有エチレン共重合体は、通常不飽和エポキシ化合物とエチレンをラジカル発生剤の存在下、500〜4000気圧、100〜300℃で適当な溶媒や連鎖移動剤の存在下または不存在下に共重合させる高圧ラジカル重合法により製造される。また、ポリエチレンに不飽和エポキシ化合物およびラジカル発生剤を混合し、押出機の中で溶融グラフト共重合させる方法によっても製造しえる。
【0060】
本発明における液晶ポリエステル樹脂組成物は、前記のような(A)液晶ポリエステルを連続相とし、前記のような(B)液晶ポリエステルと反応性を有する官能基を有する共重合体を分散相とする樹脂組成物であることが好ましい。
液晶ポリエステルが連続相でない場合には、液晶ポリエステル樹脂組成物からなるフィルムのガスバリア性、耐熱性などが著しく低下する傾向にある。
【0061】
このような官能基を有する共重合体と液晶ポリエステルとの樹脂組成物においては、機構の詳細は不明ではあるが、該組成物の成分(A)と成分(B)との間で反応が惹起され、成分(A)が連続相を形成するとともに成分(B)が微細分散し、そのために該組成物の成形性が向上するものと考えられる。
【0062】
上記の液晶ポリエステル樹脂組成物の一実施態様は、(A)液晶ポリエステル90〜100質量%、好ましくは95〜99.5重量%、さらに好ましくは97〜99重量%、および(B)液晶ポリエステルと反応性を有する官能基を有する共重合体0〜10重量%、好ましくは0.5〜5重量%、さらに好ましくは1〜3重量%を含有する樹脂組成物である。
成分(A)が90重量%未満であると得られる液晶ポリマーフィラーの分岐がなくなる傾向があり好ましくない。
【0063】
このような液晶ポリエステル樹脂組成物を製造する方法としては周知の方法を用いることができる。たとえば、溶液状態で各成分を混合し、溶剤を蒸発させるか、溶剤中に沈殿させる方法が挙げられる。工業的見地からみると溶融状態で上記組成の各成分を混練する方法が好ましい。溶融混練には一般に使用されている一軸または二軸の押出機、各種のニーダー等の混練装置を用いることができる。特に二軸の高混練機が好ましい。
溶融混練に際しては、混練装置のシリンダー設定温度は、用いる液晶ポリエステルの流動温度以上、通常200〜360℃の範囲が好ましく、さらに好ましくは230〜350℃である。
【0064】
混練に際しては、各成分は、予めタンブラーもしくはヘンシェルミキサーのような装置で各成分を均一に混合してもよいし、必要な場合には混合を省き、混練装置にそれぞれ別個に定量供給する方法も用いることができる。
【0065】
本発明に使用する基材としての液晶ポリマーには、必要に応じて、さらに、有機充填剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、無機または有機系着色剤、防錆剤、架橋剤、発泡剤、蛍光剤、表面平滑剤、表面光沢改良剤、フッ素樹脂などの離型改良剤などの各種の添加剤を製造工程中あるいはその後の加工工程において添加することができる。
【0066】
本発明の液晶ポリマーフィラーは、これを例えば湿式抄紙法により紙造することにより耐熱性、低吸水性を有する紙状成形体を製造し得る。さらに、特に強度が要求される用途については、例えばガラス織布、アラミド不織布、アラミド織布、金属織布を1重量%以上40重量%未満配合することにより抄紙とすることもできる。1重量%未満であると強度向上の効果がえられないことがあり好ましくなく、40重量%以上であると、液晶ポリマーがマトリクスとならない場合があり好ましくない。
さらに、本発明の液晶ポリマーフィラーを熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、ゴム、熱可塑性エラストマーなどに適量配合し、溶融混練、攪拌、混練、などにより、分散させて、弾性率や強度を向上させたり、元の材質のガスバリア性を向上させたりすることができる。また、粘着剤、接着剤に適量配合して、樹脂、金属、ゴム、木材、セラミック、紙、ガラスなどの表面に塗布して、元の材質の擦動性を向上あせるなどの用途に用いられる。
具体的には、PE、PP、PET、Ny、PC、PMMAなどの熱可塑性樹脂やその樹脂組成物に液晶ポリマーフィラーを1重量%以上70重量%未満、よりこのましくは3重量%以上60重量%未満、さらに好ましくは5重量%以上50重量%未満を配合し、液晶ポリマーフィラーがもつ平板状の幹部の形状が熔融によって破壊しないように、原料となる液晶ポリマーの流動温度以下の温度で熔融混練を行って、樹脂組成物を得る方法が好ましく用いられる。また、同様に熱硬化性樹脂に上記配合量で配合した後、適当な形状に成形しつつ熱硬化させる方法も好ましく用いられる。
さらに、粘着材、接着剤の固形分に対して上記と同量配合し、粘着剤、接着剤を補強する用途にも用いられる。
【0067】
【実施例】
以下、製造例、実施例及び比較例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定さるものではない。尚、例中の各測定及び試験は以下の方法に従って行なった。
【0068】
〈膜厚測定〉
トープロ企画製、DIGIMATIC Model MG−4を用い測定した。20mm×50mmの大きさのサンプル片に対し、5点測定しその平均値をサンプル膜厚とした。
〈BET式比表面積〉
島津製作所製、フローソーブII2300を用い、窒素を吸着ガスとし、BET1点法により比表面積を求めた。
【0069】
〈ろ水度〉
JIS P8121に準じ、熊谷理機製、カナディアンフリーネステスターを用い、測定した。完全に乾燥させたサンプル6gを水2000ml中に分散させ、この分散液を2等分し、ろ水度を2回測定し、その平均値を測定値とした。
〈裂断長測定〉
JIS P8113に準拠して測定した。
〈MEK含浸後の湿式裂断長測定〉
熱プレス後の紙をMEK(メチルエチルケトン)に全体が含浸するまで浸し、2秒間置いた後、取り出し裂断長を測定した。
【0070】
〈吸湿率〉
抄紙によって得られた紙を熱風オーブン中、120℃で2時間加熱乾燥させた後の質量をA、この加熱後の紙を、20℃、70%RHに調整された恒温恒湿に保たれた室内に静置し、24時間後経過したあとの質量をBとし、次式により吸湿率を測定した。
吸湿率(%)={(B−A)/B}×100
〈フィラーの形状〉
ゲージ付きの光学顕微鏡で写真を撮り、視界内のフィラーを10片選び、縦横の長さをはかって平均した。厚みは、エポキシ包埋したフィラーを研磨し、断面を電子顕微鏡で観察して、求めた。
〈分岐および枝状部の確認〉
得られたフィラーに直接金蒸着を施し、電子顕微鏡(日立社製S−2300型日立走査電子顕微鏡)で観察して、平板状幹部より分岐が発生していることを確認した。
<水蒸気透過度>
JIS Z0208(カップ法)に準拠し、測定した。
【0071】
製造例1
液晶ポリエステルA−1の製造
p−アセトキシ安息香酸8.30kg(60モル)、テレフタル酸2.49kg(15モル)、イソフタル酸0.83kg(5モル)及び4,4’−ジアセトキシジフェニル5.45kg(20.2モル)を、櫛型撹拌翼を備えた重合槽に仕込み、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら昇温し330℃で1時間重合させた。この間に副生する酢酸ガスを冷却管で液化し回収、除去しながら、強力な撹拌下で重合させた。その後、系を徐々に冷却し、200℃で得られたポリマーを系外へ取出した。得られたポリマーを細川ミクロン(株)製のハンマーミルで粉砕し、2.5mm以下の粒子とした。これを更にロータリーキルン中で窒素ガス雰囲気下に280℃で3時間処理することによって、流動開始温度が324℃の粒子状の下記繰り返し構造単位からなる全芳香族ポリエステルを得た。
ここで流動開始温度とは、島津製作所製島津フローテスターCFT−500型を用いて、4℃/分の昇温速度で加熱溶融された樹脂を、荷重100kgf/cm2のもとで、内径1mm、長さ10mmのノズルから押し出したときに、溶融粘度が48000ポイズを示す温度(℃)をいう。
以下、得られた液晶ポリエステルをA−1と略記する。このA−1は、加圧下、340℃以上で光学異方性を示した。
【0072】
Figure 0004032781
【0073】
製造例2
( ) 共重合体であるゴムの製造
特開昭61−127709号公報の実施例5に記載の方法に準じて、アクリル酸メチル/エチレン/グリシジルメタクリレート=59.0/38.7/2.3(質量比)、ムーニー粘度=15のゴムを得た。以下、得られたゴムをB−1と略記する。
【0074】
実施例1
製造例1で製造したA−1を97質量%及び製造例2で製造したB−1を3質量%の配合比で、日本製鋼(株)製TEX−30型二軸押出機を用いて、シリンダー設定温度350℃、スクリュー回転数250rpmで溶融混練を行って液晶ポリエステル樹脂組成物ペレットを得た。このペレットは、加圧下、343℃以上で光学的異方性を示した。
得られたペレットを、円筒ダイを備えた60mmφの単軸押出機を用いてシリンダー設定温度350℃、スクリュー回転数60rpmで溶融押出して、直径50mm、リップ間隔1.0mm、ダイ設定温度348℃の円筒ダイから上方へ溶融樹脂を押出し、得られた筒状フィルムの中空部へ乾燥空気を圧入し、膨張させ、次に冷却させたのちニップロールに通してフィルムを得た。ブロー比は1.8、ドローダウン比は58であり、フィルムの実測平均厚さは10μmであった。以下、得られた溶融時に光学異方性を示すフィルムをF−1と略記する。
【0075】
F−1を成膜時の膜引取り方向(以下、この方向をMD方向と言うことがある)に対して垂直方向(以下、この方向をTD方向と言うことがある)に、幅10mmに調整されたシュレッダーで切断した。当該切断品 100gを2000gの水中に分散させた。次いで熊谷理機製、KRK高濃度ディスクレファイナーのディスク間隙を0mmに調整し(その時の距離計の読みは−0.05mmであった)その位置から間隙を広げ、空隙距離計の読み+0.07mmとし、当該分散サンプルを5回通過させ叩解した。その後乾燥し、フィラーG−1を得た。得られたG−1は、光学顕微鏡での観察でもフィブリル状の枝分かれが認められ、比表面積を測定したところ、0.8m2/gであった。もっとも厚い部分の厚みは、フィルム厚みを反映し、10μm程度であった。濾水度は750mlであった。
【0076】
実施例2
G−1を50g/m2で抄紙し、複合紙を得た。この複合紙の裂断長は0.13Kmであり、この複合紙を350℃、100kgf/cm2で熱プレスした後の裂断長は0.90Kmであった。またMEK含浸後の裂断長は0.76Kmであった。また吸湿率は0.4%と非常に良好であった。
【0077】
実施例3
製造例1で製造したA−1を92.5質量%及び製造例2で製造したB−1を7.5質量%の配合比とし、ブロー比を1.9、ドローダウン比は36.0とした以外は、実施例1と同様にして得られた実測平均厚さ15μmのフィルムF−2を実施例1と同様に叩解した。得られたフィラーG−2を電子顕微鏡で観察したところ平板状幹部より分かれた糸状の枝状部が認められた。比表面積を測定したところ、0.6m2/gであった。もっとも厚い部分の厚みは、フィルム厚みを反映し、15μm程度であった。濾水度は800mlであった。
【0078】
実施例4
G−1と市販のアラミドパルプ(アクゾノーベル社製、Twaron1094、比表面積は4.55m2/g、濾水度は683ml)を質量比35:65で混合し、この混合品を50g/m2で抄紙し、複合紙を得た。この複合紙の裂断長は0.24Kmであり、この複合紙を350℃、100kgf/cm2で熱プレスした後の裂断長は1.10Kmであった。またMEK含浸後の裂断長は0.93Kmであった。また吸湿率は1.5%であった。
【0079】
実施例5
住友ダウ社製、ポリカーボネート(グレード名200−20)2000gに、実施例1で得られたG−1を200gをPCM二軸混練押出し装置を用いシリンダー設定温度280℃、スクリュー回転数150rpmで溶融混練を行って液晶ポリカーボネート樹脂組成物ペレットを得た。このペレットを300℃に設定したプレス機を用い、シート状にしたものの水蒸気透過度は9.0g/m2・24hrであった。
【0080】
比較例1
製造例1で製造したA−1を85質量%及び製造例2で製造したB−1を15質量%の配合比とし、ブロー比を3.5、ドローダウン比は30.0とした以外は、実施例1と同様にして得られた実測平均厚さ10μmのフィルムF−3を実施例1と同様に叩解したところ、得られたフィラーG−3は実質的に枝分かれが認められず、比表面積を測定したところ、0.01m2/gであった。もっとも厚い部分の厚みは、フィルム厚みを反映し、10μm程度であった。濾水度は860mlであった。
G−3を50g/m2で抄紙することを試みたが、フィラーどうしの絡みあいが小さく、紙状物は得られなかった。
【0081】
比較例2
市販のアラミドパルプ(アクゾノーベル社製、Twaron1094、比表面積は4.55m2/g、濾水度は683ml)を単体で50g/m2目付で抄紙し、アラミド紙を得た。このアラミド紙の裂断長は0.41Kmであり、この紙を350℃、100kgf/cm2で熱プレスした後の裂断長は0.66Kmであった。またMEK含浸後の裂断長は0.54Kmであった。また吸湿率は4.5%であった。
【0082】
比較例3
実施例3においてG−1を添加しなかった以外は、同様の方法でシート状物を得た。このシートの水蒸気透過度は11.4g/m2・24hrであった。
【0083】
【発明の効果】
本発明によれば、溶融時に光学的異方性を示す液晶ポリマーからなり、幹部および幹部より分岐して存在する枝状部を有し、幹部が平板状であることを特徴とする分岐状液晶ポリマーフィラーが提供される。本発明の液晶ポリマーフィラーは、他の樹脂中に分散させて使用する場合、分散性が良好であり、ガスバリア性も向上し得る。また薄い紙状成形体を製造する場合も、突起、夾雑物等の問題も解消し得る。

Claims (21)

  1. 溶融時に光学的異方性を示す液晶ポリマーを、フィルムダイを経て押し出して、二軸に延伸して成膜したフィルム形状物を粉砕して得られる、幹部および幹部より分岐して存在する枝状部を有し、幹部が平板状であることを特徴とする分岐状液晶ポリマーフィラー。
  2. 比表面積が、0.1〜2.5m2/gであることを特徴とする請求項1記載の液晶ポリマーフィラー。
  3. 枝分かれを有する液晶ポリマーフィラーの幹となる部分の厚み、長軸長さ、短軸長さの内、最も小さい部分が30μm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の液晶ポリマーフィラー。
  4. 溶融時に光学的異方性を示す液晶ポリマーが、(A)液晶ポリエステルを連続相とし、(B)液晶ポリエステルと反応性を有する官能基を含む共重合体を分散相とする液晶ポリエステル樹脂組成物であることを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の液晶ポリマーフィラー。
  5. 液晶ポリエステル樹脂組成物が(A) 液晶ポリエステル90〜100質量%と、(B)液晶ポリエステルと反応性を有する官能基を含む共重合体10〜0質量%とを溶融混練して得られたものであることを特徴とする請求項記載の液晶ポリマーフィラー。
  6. (B)液晶ポリエステルと反応性を有する官能基を含む共重合体の官能基が、オキサゾリル基、エポキシ基又はアミノ基の少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項4又は5記載の液晶ポリマーフィラー。
  7. (B)液晶ポリエステルと反応性を有する官能基を含む共重合体が、不飽和カルボン酸グリシジルエステル単位及び/又は不飽和グリシジルエーテル単位を0.1〜30質量%含有する共重合体であることを特徴とする請求項4〜6いずれかに記載の液晶ポリマーフィラー。
  8. (B)液晶ポリエステルと反応性を有する官能基を含む共重合体が、その結晶の融解熱量が3J/g未満の共重合体であることを特徴とする請求項4〜7いずれかに記載の液晶ポリマーフィラー。
  9. (B)液晶ポリエステルと反応性を有する官能基を含む共重合体のムーニー粘度が、3〜70の範囲であることを特徴とする請求項4〜8いずれかに記載の液晶ポリマーフィラー。
  10. (B)液晶ポリエステルと反応性を有する官能基を含む共重合体が、エポキシ基を有するゴム及び/又はエポキシ基を有する熱可塑性樹脂であることを特徴とする請求項4〜9いずれかに記載の液晶ポリマーフィラー。
  11. エポキシ基を有するゴムが、(メタ)アクリル酸エステル−エチレン−(不飽和カルボン酸グリシジルエステル及び/又は不飽和グリシジルエーテル)共重合体ゴムからなることを特徴とする請求項10記載の液晶ポリマーフィラー。
  12. ( ) 液晶ポリエステルが、下記の繰り返し構造単位を少なくとも全体の30モル%含むことを特徴とする請求項4〜11のいずれかに記載の液晶ポリマーフィラー。
    Figure 0004032781
  13. ( ) 液晶ポリエステルが、芳香族ジカルボン酸と芳香族ジオールと芳香族ヒドロキシカルボン酸との反応物であることを特徴とする請求項4〜12いずれかに記載の液晶ポリマーフィラー。
  14. ( ) 液晶ポリエステルが、2種以上の芳香族ヒドロキシカルボン酸の反応物であることを特徴とする請求項4〜12いずれかに記載の液晶ポリマーフィラー。
  15. 溶融時に光学的異方性を示す液晶ポリマーをフィルムダイを経て押し出して二軸に延伸するインフレーション成膜法により成膜したフィルム形状物を粉砕することを特徴とする請求項1〜14いずれかに記載の液晶ポリマーフィラーの製造方法。
  16. インフレーション成膜法におけるブロー比が1を超え2未満であることを特徴とする請求項15記載の製造方法
  17. フィルム形状物の厚さが0.5〜100μmであることを特徴とする請求項15または16に記載の製造方法
  18. 請求項1〜14いずれかに記載の液晶ポリマーフィラーのみを用いてなることを特徴とする紙状成形体
  19. ガラス繊維、アラミド繊維、セルロース繊維、アラミドパルプ、セルロースパルプから選ばれる少なくとも1種を 1 重量%以上 40 重量%未満含有することを特徴とする請求項18記載の紙状成形体
  20. 請求項1〜14いずれかに記載の液晶ポリマーフィラーが、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性エラストマー、架橋ゴム、接着剤、粘着剤から選ばれる少なくとも1種に 1 重量%以上 70 重量%未満分散されてなる組成物
  21. 請求項20記載の組成物を液晶ポリマーの流動開始温度以下の温度で溶融混練した後、成形することを特徴とする組成物成形体
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