JP4030601B2 - 眼鏡用樹脂レンズの成形用スタンパ - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、眼鏡用樹脂レンズの成形用スタンパに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
眼鏡は、矯正用のほか、異物や光線からの防御とファッション性が求められ、軽くて薄いレンズが絶えず要求されるところであり着色レンズはファッション性には好適なものとされている。高屈折で透明性に優れた高分子素材の発達に伴いプラスチックレンズの需要はガラスレンズを越える状況である。プラスチックレンズに求められる性能は、まずレンズとして透明性が高く高屈折と低分散性、軽量、安全性、染色性、成形性などが挙げられる他、レンズ表面の反射光を低減し透過率を高めることも重要である。一般的にレンズ表面の片面における反射光は3%乃至4%あって屈折率の大きい素材ほど反射光は大きくなる傾向にある。現状この反射光を低減する手法は金属薄膜を多層に形成して各層における反射光を互いに干渉させ反射光を消滅させるもので3層乃至7層に及ぶ反射防止層が用いられている。この反射防止層の形成は真空蒸着器を用いて施工されるが大量にレンズを加工するために極めて大型の蒸着器が必要で、機器の価格もさることながらランニングコストもレンズコストを押し上げる要因となっている。
【0003】
透明で平滑面を有する材料の空気との界面における反射光を低減させる手法は空気と透明材料表面の間の平均的な屈折率を連続的に変化させることで目的を達成することができる。この考え方は不均質膜を透明材料の表面に形成することで解決される。この不均質の反射防止原理を考察するに、一例として図9のような凹凸を持つ場合、この層の深さ方向をxとすると屈折率(nf(x))は1式で表すことができる。
【0004】
【数1】
nf(x)=ng・V(x)+n0 (1−V(x)) …(1)
【0005】
ここに、ngはガラスの屈折率、V(x)はxでのガラスの占める体積、n0 は空気の屈折率である。この場合、空気と膜との界面及び膜とガラス基板との界面では、図10に示すように不連続に屈折率が変化するのでこの点における屈折率をそれぞれn1 、n2 とすると、この層の反射率Rは2式で表すことができる。
【0006】
【数2】
Figure 0004030601
【0007】
この式において、n0 =1.0,n1 =1.1,、n2 =1.477,ng=1.53とした場合、表面の凹凸が100nmのとき最も低い反射率が得られる。しかしこのように微細な凹凸を形成することは非常に困難である。この問題を解決するために、超微粒子を透明基材の表面に直接膜状に被覆することにより、低反射率と透過率の両者を満足する反射防止体及びその形成方法が特開平2−175601号公報に開示されている。そして粒径とばらつきの少ないSiO2 超微粒子を、ガラス基板上に単層配列することで、透過率を向上し優れた反射防止効果が得られている。
【0008】
SiO2 の超微粒子をガラス板上に単層固定するには、ガラス板をエチルシリケート、エタノール、IPA、MEKなどと、エチルシリケートを加水分解させるための水と硝酸などが混合された溶液(S408,旭硝子(株)製)と120nmの粒径をもつSiO2 をエタノールに20wt%分解させた混合液に浸し、垂直に毎秒0.98mmの速度で引き上げて、揮発成分が蒸発したのち、150°Cで約30分空気中で焼成しテトラエトキシシランを分解する。分解してできたSiO2 の連続した均一な薄膜中に強固に固着される。
【0009】
図11はガラス板上に固着されたSiO2 超微粒子を上述したよう固定した模様を模式的に断面として示したものである。図中Aに示した位置は屈折率は空気の屈折率n0 でその値を1とする。Bに示す位置では超微粒子4の屈折率n=1.48に等しくなるからこのA、Bに囲まれた部分の屈折率は前出の数式1に基づき平均的な屈折率はこの微少な仮想板の体積全体に占めるSiO2 部分の体積の割合に応じて連続的に変化すると考えて良い。Aよりわずかに内側に入ったC位置での屈折率をn1 、SiO2 の超微粒子が占める体積がほぼ100%になる位置をBとし屈折率をngとし、Bよりわずかに外側に出たD位置での屈折率をn2 とすればガラス面表面の反射率Rが最小となる条件は、次式で示される。
【0010】
【数3】
Figure 0004030601
【0011】
これから、ng=n2 /n1 の条件を満たすときに無反射性能が得られる。ここでn2 /n1 の値は凹凸の形状によって決まる。ここでn1 及びn2 は仮想する微少板内の体積の割合に応じて定まる数値であるから、超微粒子の直径には無関係のようにみえるが、実験的に考察すると直径が30nm近辺より小さい方では、製造上の問題もあって、凹凸面が平滑になり反射光を抑える機能がなくなり、一方300nm近辺より大きい直径の場合は透明度が白濁したようになって透明体のもつ透き通った感覚が得られない。単層に並ぶ超微粒子の膜厚は100nm近辺が最も良い反射防止機能を有するのは先述の通りである。
【0012】
ガラス板上にSiO2 を単層固着させることでは特に問題のないところであるが、透明な樹脂板上にこの超微粒子を固定する場合、例えばアクリル板、ポリカーボネート板など汎用の透明板上に強い固着力を与えるバインダーは存在しない。又、レンズなどに用いる光学材料において、例えばCR−39、ウレタン樹脂などにおいても適当なバインダーは見当たらない。そこで微少な凹凸面を透明樹脂体上に形成する手段として、単層超微粒子面を樹脂体に直接転写することを試みその成果を当出願人は特願平5−330768号で示した。
【0013】
上記手法は転写面を正確に転写することで一定の成果は得られるのであるが、反復して転写を行う場合、超微粒子の脱落や離型の難易度及び転写面の均一性に問題を生じ、更なる改良が求められた。脱落を防止するためにバインダーの量を増加させると超微粒子がバインダー内に埋没するようになり、連続的に屈折率を変化させる作用が減少する。又、超微粒子の形状をできるだけ正確に転写して粒子の曲率半径を再現するには、バインダーの量が少ない方が良い。離型の難易度では、樹脂が粒子間に流入してアンカー効果を示す部分があり離型に大きな力を必要とし母型の破損にもつながるので新規な母型が望まれる。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
解決しようとする課題は、単層に並ぶ超微粒子面を転写するための新規な母型を用いて転写することで表面の反射光を低減させたレンズを得ることである。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明は、樹脂レンズの表面、裏面あるいは界面の少なくとも一面に、曲率半径が15nm乃至150nmの微細な凹面及び/又は凸面を形成して眼鏡用レンズとする。
【0016】
又、微細な凹面及び/又は凸面をスタンパを用いて転写形成する方法を用いることである。
【0017】
【実施例1】
図1は、超微粒子面を転写した眼鏡用レンズの断面を模式図として示したものであり、1はレンズ本体、2は単層超微粒子面の転写面である。図2は注型重合用ガラスモールド3に、粒径が120nmのSiO2 超微粒子を前出の手法にて強固に固定したものである。図1に示すレンズ1を成形するために、図2に示した凸面側の超微粒子面5に充分な洗浄を施した後、ニッケルの真空蒸着を行い、更にニッケルメッキを行いニッケルメッキ層の厚さを均一にするために液中でモールドを回転させる。メッキ層6が所定の膜厚になったところでメッキ槽から取り出し洗浄と乾燥を行ってメッキ層6の曲面と同じ曲面を有するモールド7を接着する(図4)。モールド7と3を引き離すような力を加えて真空蒸着層と超微粒子面の間で分離させる。分離したモールド7側を一部を拡大して図5に示した。このようにして得られたモールド7とニッケルメッキ部分をスタンパ8として通常の注型重合を行い図1に示すような微細な凹凸面2を有するレンズ1を得ることができる。ニッケルメッキ層で構成される転写面を更に転写した第2のスタンパを作成することが可能でこの場合当然の事ながら面の形状は逆の形状となる。
【0018】
レンズ成形のための樹脂に高屈折率ポリウレタン樹脂、屈折率1.66を用いて図1に示すような眼鏡用マイナスレンズを成形し片面の反射率を測定したところ図6のような反射率を示した。この場合、目が一番強く光を感じる500nm乃至550nm近辺の波長域において0.3%程度の反射率を示し、真空蒸着による金属薄膜が示す反射率がこの近辺で増加するのに対し、可視光域でほぼ平坦なものとなる。本実施例で得られるレンズの対物側面の反射光の色は紫色である。又、本例では粒子が120nmを使用したが、30nmから300nmの間で任意に粒径を定めて用いることができるので反射率特性を変化させることができる。
【0019】
上述の微細な凹凸面の耐擦傷性を向上させるためには、シリコン系のハードコート材を塗布してもよいが、凹凸面が平滑な面になるおそれがあり、連続的に屈折率を変化させることができなくなる。このような問題の解決策として、まず通常のモールドで図1に示すレンズ1を成しその表面に図7に示すような密着性を向上させる粘着層9を形成後更にシリコンハードコート層10を1μm乃至1.5μmの厚さに塗布しスタンパ8で押圧する。この場合スタンパの微細な凹凸面の空気を巻き込んで均一な転写面が得られないから、真空チャンバー内で行う必要がある。実際にこの方法は工程が増えるから、スタンパにハードコート液を塗布し、上記粘着面9へ押圧し余分なハードコート液を押し出すことで作業の簡略化を図ることができる。スタンパを押圧した状態で加熱乾燥しスタンパを除去することで耐擦傷性のある微細な凹凸面11を形成することができる(図8)。
【0020】
この手法によるハードコート層は粘着層とレンズ界面で生ずる反射光を散乱させる効果があり、更に該ハードコート層の表面に屈折率が1.38のMgF2 を一層真空蒸着することで更に反射光を低減させることが可能である。
【0021】
【発明の効果】
以上説明したように本発明の反射光を低減する超微細な凹凸面はレンズ成形時に加工できるから、従来の多層金属薄膜による反射防止層は不要となり、作業工程の簡略化が図れるので製造原価を低くすることができる。又、この手法は射出成形法にも応用できるから反射光を低減する機能を有するレンズを連続的に加工することも可能である。又、手あかなどによる汚染や撥水性の改善については、フロン系のコーティング材フロラード(住友スリーエム(株)製)が有効で屈折率も1.36とMgF2 のそれより低いから反射光の低減には有利になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明になるレンズの断面図。
【図2】本発明に用いるガラスモールド。
【図3】メッキ層を構成したガラスモールドの断面図。
【図4】スタンパ製作過程を示す断面図。
【図5】スタンパの一部拡大断面図。
【図6】本発明の反射率を示すグラフ。
【図7】本発明の一工程を示す断面図。
【図8】ハードコート層に微細な凸面を形成したレンズの断面図。
【図9】本発明の反射光防止の理論説明図。
【図10】屈折率の変化状況を示す説明図。
【図11】本発明の連続的に屈折率の変化する概念を示す説明図。
【符号の説明】
1 レンズ
2,2−1 微細な凹凸面
3 ガラスモールド
4 SiO2 超微粒子
6 ニッケルメッキ層
7 ガラスモールド
8 スタンパ
10 ハードコート層

Claims (1)

  1. 眼鏡用樹脂レンズの注型重合用ガラスモールドの曲面に、直径が30nm乃至300nmの超微粒子を単層固着して微細な凹凸面を形成し、該微細な凹凸面に真空蒸着層を形成してその上にメッキ層を形成し、該メッキ層の曲面と同じ曲面を有するガラスモールドを接着し、前記微細な凹凸面と前記真空蒸着層の間で分離し、前記微細な凹凸面を形成したメッキ層を備えたガラスモールドからなるスタンパ。
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