JP4030580B2 - 無定形金属合金リボンの湾曲減少アニール - Google Patents

無定形金属合金リボンの湾曲減少アニール Download PDF

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Description

発明の分野
本発明は電子物品監視(EAS)システムに使用する磁気力学的マーカー、及び該マーカーを製造する方法と装置に関する。
発明の背景
小売り施設からの商品の盗難を防止又は阻止するため電子物品監視システムを備えることは周知である。典型的なシステムでは店の出口に置いた電磁界又は磁界に干渉するよう設計したマーカーが商品の物品に付着される。もしマーカーが磁界すなわち“呼び掛けゾーン”に持ち込まれると、マーカーの存在が検出され警報が鳴る。この種のマーカーの中には商品の支払いを済ませた勘定台で除去するようになっているものがある。他の種類のマーカーは勘定の際、マーカーの電磁的又は磁気的な特性を変え、呼び掛けゾーンでマーカーがもはや検出することができないようにさせる不活性化装置によって不活性化される。磁気的EASシステムの一つのタイプは調和システムと呼ばれる。なぜならこれは、選択した周波数を有する電磁界を通過する磁気材料が電磁界を妨害し、選択した周波数の調和攪乱を発生するという原理に基づくからである。検出システムは一定の調和周波数を認識するよう同調されており、存在する場合は警報を発生する。発生した調和周波数は磁気材料のヒステリシスループの非直線性の度合いの関数である。
EASシステムの他のタイプは磁歪素子を含む磁気力学的マーカーを使用する。例えばアンダーソンその外に与えられた米国特許第4,510,489号はバイアス磁気素子に近接する長く伸びたハウジングに収容された、リボン形状の長さを有する磁歪無定型材料を含むマーカーを開示している。この磁歪素子はしばしば“活性素子”と呼ばれ、又上述のバイアス素子は“制御素子”であると考えられる。上述の磁歪素子はバイアス素子が一定のレベルまで磁化されると所定の周波数で共振するように組み立てられる。呼び掛けゾーンでは適当な発信器が所定の周波数の交流磁界を与え、バイアス素子が一定のレベルに磁化されるとき上記交流磁界にさらされると磁歪素子は上記所定の周波数で力学的に共振する。
上記米国特許に開示された一つの技術によるとマーカーは、前記の共振周波数に加えて、磁気力学的結合から得られる蓄積した力学的エネルギーがゼロに近い“非共振周波数”を有する。呼び掛けゾーンに磁界を与える呼び掛け回路はマーカーの共振および非共振周波数を含む周波数範囲に亘って掃引される。又、受信回路部品は呼び掛けゾーンに設けられ、共振周波数で生じるピーク伝達エネルギーレベル及び非共振周波数における谷レベルを検出することにより、マーカーの特徴的なサインを検出する。
上記米国特許で提案された他の監視システムでは、呼び掛け周波数は掃引されず、むしろマーカーの共振周波数のままである磁気力学的マーカーが使用される。この周波数における呼び掛け磁界はパルス又はバーストとして与えられる。マーカーが呼び掛け磁界中に存在するとその活性素子は各バーストによって励起され(制御部材が適当に磁化されていると仮定する)、各バーストの終了後、活性素子は“リングダウン”(ring down)として知られる減衰した力学的振動を受ける。その結果マーカーにより放射された信号は、呼び掛け回路と同期し、かつバーストの後の変化の少ない期間中、活性であるよう調整された検出回路部品によって検出される。このパルス磁界の形の磁気力学的マーカーは本願の譲受人により“ウルトラマックス”(UltraMax)という銘柄で販売されており、広い用途を有する。
本明細書では上記米国特許の開示を引用して本発明の説明に加える。
通常使用される磁気力学的マーカーにおける活性素子は、メトグラス(Metglas(登録商標))2826MB(ニュージャージー州、モーリスタウンシップ、アライドシグナル インコーポレイテッドより入手可能)のような無定型の鉄−ニッケル合金から形成され、Fe40Ni38Mo418(原子比で)の組成を有する。この材料を冷却した車輪上で鋳造して、薄い連続する、幅が約12.7ミリメートル(約0.5インチ)のリボンとする。この連続したリボンは長さが約38.1ミリメートル(約1.5インチ)の切片に切断し、磁気力学的マーカー用の活性素子を形成する。
第1図は鎖線22で表わされる平らな表面に載っているメトグラス2826MB材料で形成した活性部材20の概略側面図である。活性部材20は約38.1ミリメートル(約1.5インチ)の長さLを有し、活性部材20の中心部が平らな表面22の上に距離Dで表示された“王冠”を形成するよう、長さLに沿う湾曲を示す。この湾曲距離Dの代表的な測定例は約0.84ミリメートル(約0.033インチ)(図面上の明示のため活性素子20の湾曲は誇張されていることを理解されたい)であるが、鋳造工程は本来的に再現性に限度があり、結果として1.02ミリメートル(約0.040インチ)を超えるか、又は0.13ミリメートル(約0.005インチ)のような値の湾曲距離Dを示す38.1ミリメートル(約1.5インチ)の切断ストリップとなってもよい。垂直距離Dを活性部材20の長さLで割ると、長さに対する縦湾曲の比率、典型的には2%をを超える(0.84/38.1(0.033/1.5))値が得られる。
第2図は先行技術にしたがって構成した、活性素子20を含む、マーカー24の概略側断面図である。マーカー24は活性素子20を囲むハウジング26を含む。ハウジング26は活性素子20が呼び掛け信号磁界に応じて自由に力学的に共振できるような寸法である。
図面では別々に示していないが、バイアス素子は典型的にはハウジング26の底部或いは頂部壁のいずれかの外表面に付着されている。代替的にはバイアス素子は頂部壁又は底部壁をつくる2層のハウジング材料の間にサンドウイッチ状に挟んでもよい。
活性素子20により示される湾曲、及びEAS呼び掛け信号に応じて活性素子室に力学的な振動をさせる目的から、ハウジング26は或る厚みすなわち高さ寸法のHを有するよう形成される。特に既知の磁気力学的マーカーは少なくとも約1.65ミリメートル(0.065インチ)の全体厚すなわち高さを有し、普通2.03ミリメートル(0.080インチ)の全高を有する。通常の磁気力学的マーカーの厚み特性はマーカーをEASシステムで保護するよう求められている商品の物品へ適用することを困難にし若しくは不便なものにしている。米国特許出願第08/269,651号(本願の発明者及び譲受人と同じ発明者及び譲受人)には、飽和横方向磁界の存在下で、アモルファス鉄−コバルト合金の予め切断されたストリップがアニールされ、磁気力学的マーカー用の活性素子をつくる技術が開示されている。アニールした鉄−コバルト活性素子の利点の一つは、比較的平坦で直線的なヒステリシスループ特性を有することであり、したがって調和EASシステムにさらされて間違った警報を出すおそれがない。鉄−コバルト活性部材の他の利点は、上記米国出願において説明したように、アニールを平坦な表面上で実行してもよく、いかなる縦湾曲をも最小にするか或いは除去することができ、この結果、低プロファイルの磁気力学的マーカーを可能にすることである。上記米国出願の開示を引用してこの発明の説明に加える。
上記米国出願で説明された鉄−コバルト活性素子は連続的なアニール処理を使用しても形成される。このアニール処理ではリボンはアニールオーブンを通してリールからリールへ送られ、ついで分離したストリップに切断される。この連続的処理は本願の発明者及び譲受人と同じ発明者及び譲受人の米国特許出願第08/420,757号に説明されている。
既に述べてきた米国出願は、鉄−コバルト合金を使用する薄型の磁気力学的マーカーを実現する技術を開示しているが、普通の鉄−ニッケル材料で形成された活性素子を利用する薄型のマーカーを製造することも望ましい。
鉄−ニッケル材料を大きな直径の車輪上で鋳造して得られるリボンの鋳込み湾曲を減少する試みがなされてきた。しかし一般的にはこれらの試みによれば通常の技術で製造した材料より実質的に低い出力信号の振幅を提供する材料の製造に終わった。
又、リボンの湾曲を修正するために、リボンを二つの平らな板の間で加圧しながら鋳造したリボンを熱処理する試みもなされてきた。この処理で湾曲は修正されたが、材料の所望の磁気特性も低下し、得られる活性素子も十分な大きさの出力信号の振幅を提供することはできなかった。
発明の目的と要約
したがって本発明の目的は、材料の所望の磁気特性に実質的に影響を与えることなしに、磁気力学的マーカーに使用する活性素子を形成するのに適切な鉄−ニッケル金属合金リボンの縦湾曲を減少させる技術を提供することである。
本発明のさらなる目的は、通常の組成の活性素子を利用する低プロファイルの磁気力学的マーカーを提供することである。
本発明の一局面によれば、磁気力学的電子物品監視マーカーに使用する磁歪素子を形成する方法が提供され、該方法はアモルファス金属合金の連続ストリップを準備し、前記連続するアモルファス合金のストリップを加熱部において、該加熱部を通過する前記ストリップを連続的に送りながら加熱処理し、該加熱処理したストリップを所定の長さを有するストリップ片に切断する、工程を含む。
さらに本発明のこの局面によれば、上記加熱処理の間、連続する合金ストリップに対して、ストリップの縦方向、かつ加熱処理工程を受ける前のストリップが有する縦湾曲とは反対の方向に、湾曲が加えられる。この加熱処理と湾曲処理は適当な方法によって加熱したローラーの周りをストリップで巻くことで同時に達成させる。加熱処理は少なくとも摂氏300度の温度で行うのが好ましく、連続ストリップはキャプスタン及びピンチローラーを使用して供給リールから取り込みリールに送られる。
本発明の別の局面によれば、アモルファス金属合金の連続ストリップを、該ストリップの縦方向に湾曲を加えながら、熱処理し、ついで前記加熱処理した連続ストリップをストリップ片に切断することにより形成した、磁気力学的電子物品監視マーカーに使用する磁歪素子が提供される。さらに本発明のこの局面によれば、加熱処理工程を受ける前の連続ストリップが有する縦湾曲の度合が減少するよう湾曲処理が行われる。
さらに本発明の別の局面によれば、磁気力学的電子物品監視システムに使用する、上述したような活性素子を含む、マーカーが提供される。
本発明のさらに別の局面によれば、磁気力学的電子物品監視システムにして、呼び掛けゾーンにおいて選択した周波数で交番する電磁フイールドを発生する発生回路部品と、呼び掛けコイルと、前記呼び掛けゾーンを通る物品に固定されたマーカーにして、該マーカーはアモルファス金属合金の連続ストリップを、該ストリップに対しその縦方向に湾曲を加えながら、加熱処理して形成し、ついで前記加熱処理した連続ストリップを分離したストリップ片に切断して形成したアモルファス磁歪素子、前記磁歪素子に近接して位置し磁気的にバイアスをかけられ、前記交番磁界にさらされると前記磁歪部材を力学的に共振させるバイアス部材、を含む前記マーカーと、前記磁歪部材の力学的共振を検出するための検出回路部品と、を含む磁気力学的電子物品監視システムが提供される。本発明のさらに別の局面によれば、Fe40Ni38Mo418の組成を有するばらばらのアモルファスストリップを含む、磁気力学的電子物品監視システムに使用するマーカーにして、全体の厚さが1.65ミリメートル(0.065インチ)未満である前記マーカーが提供される。
本発明のもう一つの別の局面によれば、アモルファス金属合金のストリップを加熱処理し、前記加熱処理工程の期間中、前記合金ストリップに対し、前記ストリップの縦方向軸に沿い、かつ前記加熱処理工程の前に前記ストリップが有する縦方向湾曲とは反対の方向に、湾曲を加える、工程を含む、縦方向軸を有するアモルファス金属合金のストリップの縦方向湾曲の度合いを減少させる方法が提供される。
さらに本発明の後者の局面によれば、アモルファス金属合金のストリップは連続するリボンでよく、加熱処理と湾曲を加える工程は、前記連続ストリップを供給リールから巻き上げリールに送りながら実施される。
【図面の簡単な説明】
第1図は先行技術にしたがって形成した、磁気力学的マーカーに使用する活性素子の概略側面図である。
第2図は先行技術にしたがって構成した磁気力学的マーカーの概略側断面図であり、第1図の活性素子を含んでいる。
第3A図は本発明にしたがって構成した処理装置を表す概略側面図であり、第3B図は第3A図の装置の一部である加熱したローラーの概略側断面図である。
第4図は温度とアニール時間を変化させた場合の第3A図の処理装置を作動させて得られた磁気力学的マーカー用の活性素子における湾曲減少を表わすグラフである。
第5図はバイアス磁界の変化に応じて第1図の先行技術の活性素子により示される共振周波数及び出力信号の大きさを表わすグラフである。
第6図は第3A図の処理装置の作動において時間と温度のパラメーターの各種の組合わせにしたがって得られた材料の共振周波数を最小にするために必要なバイアス磁界の大きさのいろいろな値を表わすグラフである。
第7図は第3A図の処理装置の作動に使用した時間と温度のパラメーターの各種の組合わせにしたがって得られた材料の周波数井戸特性を表わすグラフである。
第8図は第3A図の処理装置の作動において時間と温度のパラメーターの各種の組合わせを使用して得られた材料のそれぞれの出力大きさの特性を表わすグラフである。
第9図は本発明にしたがって形成した活性部材と共に作動する磁気力学的マーカーを使用する電子物品監視システムの概略ブロックダイヤグラムである。
好ましい実施例の説明
以下に第3A図及び第3B図を参照しながら、本発明による、アモルファス金属合金の連続リボンから磁気力学的EASマーカーの活性素子を形成するための方法及び処理装置を説明する。
処理装置は参照番号30で示される。装置30は第1図に関連して説明した長手方向湾曲を減少又は除去するため上述したメトグラス2826MB材料の連続リボン32を処理する。この処理装置は加熱したローラー34、合金リボン32がほどけて加熱したローラー34に送られる供給リール36、及びローラー34から送られたリボン32が巻かれる巻き上げリール38を含む。ガイドローラー37が供給リール36及び加熱したローラー34からのリボンの通路の一部を画成する。容器39が加熱したローラー34を囲んで設けられ、ローラー34付近でローラー34から放射した熱を保持する。スロット41が容器39に形成されリボン32の出入を可能にしている。リボン32は加熱したローラー34と巻き上げリール38の間に位置するキャプスタン40とピンチローラー42の間に係合する。ピンチローラー42と共に作動するキャプスタン40は供給リール36からの通路に沿って加熱したローラー34へ、ついで巻き上げリール38へ向かってリボンを引っ張る。モータ(図示せず)がキャプスタン40及びリール36と38を駆動するためそれぞれ設けられていることを理解すべきである。これらモータの制御は作業者又は適当な制御機構により行われる。
リボン32はガイドローラー37と加熱したローラー34の上流のリボンにループ43が形成する速度で供給リール36から供給される。ループ43におけるリボンの重量がローラー34におけるリボンの部分に張力を与え、リボンのローラー34の表面との接触を維持する。
加熱したローラー34の詳細は第3B図に示される。ローラー34は例えば非磁性のステンレス鋼又はアルミニュウムの中空の円筒のように形成するのが好ましい。加熱部材45がローラー34の内側に設けられ、ローラー34を所望の温度に維持する。ローラー34は回転できるように設けてもよいが、好ましい実施例ではローラー34は固定的に設けられ(図示しない取付け装置により)、リボンはローラー34の表面上を滑動する。
第3A図を再び参照すると、供給リール36からほどけた合金リボン32は、第3A図の参照番号44で示すような方向付けがされた、リボン32の鋳込み縦方向の湾曲を有するローラー34に送られる。リボン32はついでローラー34の周囲に巻きつき、リボン32は鋳込縦方向の湾曲に対して“後方へ曲げ”られる。換言すれば、リボン32の鋳込縦方向の湾曲の方向と反対方向の縦方向の湾曲がローラー34上のリボン32に与えられる。このリボン32の“後方への曲げ”はローラー34によるリボン32の直接加熱と共に、縦方向の湾曲をもたらした鋳込応力の少なくとも幾分かを軽減し、その結果第3A図の参照番号46で示すように湾曲が減少する。
リボンは幅が約12.7ミリメートルであり、第3A図に示した湾曲減少の処理の後、長さが約37.44ミリメートルのストリップに切断される。本装置の好ましい実施例では加熱したローラー34は約35.18ミリメートル(1.385インチ)の直径を有し、摂氏300度から約375度の範囲の温度に維持される。アニール時間はリボン32に沿う点がローラー34の表面に接触したままである時間の長さであると定義することができる。したがってアニール時間はリボン32が送られる速度、ローラー34の直径、及びリボン32に係合するローラーの円周(巻きつき角度)の比率の関数である。本装置の好ましい実施例では小さい角度又は大きい角度の巻きつき角度が考えられるが、約180度の巻きつき角度が維持される。本装置の好ましい作動方法では、アニール時間は約0.5から4.5秒の範囲内にある。
約35.18ミリメートルの好ましい直径より小さい直径又は大きい直径を有する加熱したローラー34を準備することも考えられる。小さい直径を有するローラー34は大きい曲げの度合いを実現できるが、リボン32を加熱する効率は低下する。同様に大きい直径を有するローラー34はリボン32を加熱する効率は高いが、曲げの度合は小さい。
第4図に示すように、アニール時間の増大によっても、或いはアニール温度の増加によってもアモルファス合金材料の鋳込湾曲を大きく減少することができる。第4図において、菱形の印は摂氏300度のアニール温度で得られた結果を示し、黒方形の印は摂氏325度のアニール温度で得られた結果を示し、円形の印は摂氏350度のアニール温度で得られた結果を示し、方形の印は摂氏375度のアニール温度で得られた結果を示す。これらアニール温度の各々をみると、アニール時間を長くすることにより、アニールを高温かつ比較的長時間実施する際、鋳込湾曲を反対方向へ湾曲させる点にまで湾曲を効率的に減少させることが判明した。例えば実質的に平らなリボン(湾曲はゼロに近い)は摂氏350度で約2.2秒のアニールで得られることが観察されるであろう。しかし上記した湾曲減少の処理をするにあたり考慮すべきファクターは、アニールが材料の磁気特性への逆効果を有することである。
第5図は通常の鋳造物としてのメトグラス2826MB材料の磁気特性を示すグラフである。第5図では実線は鉄−ニッケル活性部材の共振周波数が与えられたバイアスフィールドの関数としてどのように変化するかを示している。点線の曲線は出力信号の振幅がバイアス磁界の変化の関数としてどのように変化するかを示している。第5図に示した振幅のレベルは“A1”レベル、すなわち上記したパルス磁界の磁気力学的システム中の呼び掛け信号パルスが終了した1ミリ秒後に得られた信号レベルである。
活性素子の重要な特性の一つは、最小共振周波数(約7.5エルステッドのバイアスフイールドにおける約57.3キロヘルツ)から1エルステッドのバイアスフイールドにおける共振周波数へのシフトとして測定された“周波数井戸深さ”である。鋳造材料のための1エルステッドにおける共振周波数は約59.9キロヘルツであるから、鋳造材料のための周波数井戸深さはは約2.6キロヘルツである。マーカーを不活性化するため制御素子を消磁することにより共振周波数を十分シフトすることが必要であるから、周波数井戸深さが十分にあることが要求される。
又、高い振幅にある“リングダウン”信号を持たせることも望ましい。典型的には磁気力学的マーカーの中の効率的なバイアス磁界は約5.5エルステッドであり、第5図中に示すように得られるA1リングダウン信号は250ミリボルトあたりである。
第6図は本発明の湾曲減少アニール処理によって、最小共振周波数が得られるバイアスフイールドをどのように減少させるかを説明している。アニール時間が増加するにしたがって、最小周波数におけるバイアス磁界が大きく減少している。第6図において黒方形の印は摂氏325度のアニール温度で得られた結果を示し、円形の印は摂氏350度で得られた結果を示す。最小共振周波数に相当バイアス磁界、又は最小周波数のバイアス磁界の値に近い値のバイアス磁界、を有するマーカーを設け、活性素子によって経験した効果的バイアスへに対する地磁気の影響を変化させることにより生じた共振周波数の変動を最小にすることが望ましい。
第7図に示されるように、周波数井戸の深さは湾曲減少アニール処理により減少する。同じく黒方形の印は摂氏325度のアニール温度で得られた結果を示し、円形の印は摂氏350度で得られた結果を示す。
第8図はリングダウン信号の振幅に対するアニールの逆効果を説明している。ここでA1リングダウンの振幅に関しては黒方形及び円形の印はそれぞれ摂氏325度及び350度で得られた結果を示す。
湾曲減少アニール処理に起因する磁気特性への好ましからざる影響を考慮すると、完全な湾曲減少と磁気特性への最小の影響間の妥協を受入れざるを得ない。
35.18ミリメートルの加熱ローラーの場合のアニールのパラメーターとしては1.5秒に対して摂氏350度でることが判っている。この値は38.1ミリメートル(1.5インチ)の切断ストリップに対して、周波数井戸深さ又はリングダウン信号の大きさの過剰な変動なしに、約0.254ミリメートル(0.010インチ)(10ミル)の湾曲距離(D)をもたらす。これらのパラメーターにより、長さに対する縦湾曲の比として0.7%未満の値が得られた。
本発明による湾曲減少処理を受けた鉄−ニッケル合金を使用することにより、1.39乃至0.94ミリメートル(0.055乃至0.037インチ)の厚さを有する薄型のマーカーを構成することができる。これらのマーカーは約200ミリボルトのA1リングダウンの大きさを示し、最小共振周波数におけるバイアス磁界は約5.9エルステッドであり、周波数井戸深さは約1.95キロヘルツである。
第9図は本発明にしたがって組み立て、上記の湾曲減少処理を受けた鉄−ニッケル活性素子を用いる、磁気力学的マーカー24′、を使用するパルス式呼び掛けEASシステムを説明している。
第9図に示すシステムは付勢回路201及びレシーバ回路202の動作を制御する同期回路200を含んでいる。該同期回路200は同期ゲートパルスを付勢回路201に送り、同期ゲートパルスは付勢回路201を活性化する。活性化されると、付勢回路201は同期パルスの期間中、呼び掛け信号を発生し、呼び掛けコイル206へ送る。呼び掛け信号に応じて呼び掛けコイル206は呼び掛け磁界を発生し、これは順次マーカー24′の活性部材を力学的に共振させるよう励起する。
呼び掛け信号パルスが完全に出来上がると同期回路200はゲートパルスをレシーバ回路202に送り、このゲートパルスはレシーバ回路202を活性化する。レシーバ回路202が活性化されている期間中、かつもしマーカーが呼び掛け磁界中に存在するとき、このマーカーはマーカーの力学的共振の周波数の信号をレシーバ回路202中に発生させるであろう。この信号はレシーバ回路202により感知され、レシーバ回路202は感知した信号に応答して信号を発生してインジケーター203に送り、警報その他を発生させる。要するにレシーバ回路202は付勢回路201に同期するので、パルス呼び掛け磁界の各パルス間の変化の少ない期間中、レシーバ回路202が活性なだけである。
第3A図に図解した湾曲減少装置は、合金リボンをそれとの直接接触により加熱するための中空の円筒として設けた加熱ローラーを含むものとして説明した。
しかし合金リボンを加熱し“後方に”曲げるために、半丸の付属部品の形状、又はその他の湾曲した形状の、湾曲した加熱表面を設けることが考えられる。又、鋳造物としての合金リボンから切断したストリップ片をオーブン等で加熱しながら後方に曲げることによって湾曲減少処理を行うことも考えられる。しかしかかる処理によれば切断したストリップの磁気特性の過剰な劣化を生じさせることなしに十分な湾曲減少は達成できないと思われる。
上記したマーカーの他の各種の改変及び上述の実施例の修正は本発明の精神から離れることなく導入されるであろう。本発明の特に好ましい実施例はそのような意図で例示されたものでありこれらに限定されるものではない。本発明の実質的な内容と範囲は以下の特許請求の範囲に述べられている。

Claims (26)

  1. 磁気力学的電子物品監視マーカーに使用する磁歪素子を形成する方法にして、
    アモルファス金属合金の連続ストリップを準備し、
    加熱位置において、該加熱位置を通る前記ストリップを連続的に送りながら加熱処理し、
    前記連続するアモルファス金属合金のストリップに生じている縦方向湾曲を減少させるために、前記加熱位置において、該ストリップに生じている湾曲とは反対の方向に湾曲を加えるように、該ストリップを湾曲を有する部材に巻きつけ、
    前記加熱処理したストリップを所定の長さを有するストリップ片に切断する、諸工程を含む、前記磁気力学的電子物品監視マーカーに使用する磁歪素子を形成する方法。
  2. 前記連続するアモルファス金属合金のストリップの前記加熱処理と前記ストリップに生じている湾曲を減少させる工程は、加熱したローラーの周りに前記ストリップを巻きつけることにより行われる、請求項1の方法。
  3. 前記連続ストリップは鉄、ニッケル、モリブデン、及び硼素の合金からなる、請求項1の方法。
  4. 前記連続ストリップは実質的にFe40Ni38Mo418の組成を有する、請求項の方法。
  5. 前記熱処理工程は少なくとも摂氏300度の温度で行われる、請求項の方法。
  6. アモルファス金属合金の連続するストリップを加熱処理するための装置にして、
    前記連続するアモルファス金属合金のストリップに生じている湾曲を減少させるために、該ストリップを巻きつけるための湾曲を有する部材と、
    前記連続するアモルファス金属合金のストリップを前記湾曲を有する部材位置において加熱するための加熱手段と、
    前記加熱手段を通る通路に沿って前記ストリップを連続的に送るための送り手段と、を含み、
    前記湾曲を有する部材は、前記連続するアモルファス金属合金のストリップに対し、該ストリップに生じている縦方向の湾曲とは反対の方向に湾曲を加えるように、縦方向湾曲を加えるよう前記通路に対応して配置されている、前記アモルファス金属合金の連続するストリップを加熱処理するための装置。
  7. 前記湾曲を有する部材は加熱したローラーである、請求項の装置。
  8. 供給リールにして該供給リールから前記連続するストリップが前記加熱手段に送られる前記供給リールと、
    巻き上げリールにして該巻き上げリールに対して前記連続するストリップが前記加熱手段から送られる、前記巻き上げリールと、をさらに含む請求項の装置。
  9. 前記送り手段はキャプスタンとピンチローラーを含み、該キャプスタンとピンチローラーは前記加熱手段と前記巻き上げリールの間に設けられ、前記連続するストリップは前記キャプスタンによって前記巻き上げリールに送られるよう前記キャプスタンと前記ピンチローラーの間に係合する、請求項の装置。
  10. 磁気力学的電子物品監視マーカーに使用する磁歪素子にして、
    連続するアモルファス金属合金のストリップに生じている縦方向湾曲を減少させるために、該ストリップに生じている湾曲とは反対の方向に湾曲を加えるように、該ストリップを湾曲を有する部材に巻きつけ、
    前記湾曲を有する部材位置において加熱処理し、
    前記加熱処理した連続ストリップをストリップ片に切断することにより形成した、前記磁気力学的電子物品監視マーカーに使用する磁歪素子。
  11. 前記連続ストリップは鉄、ニッケル、モリブデン、及び硼素の合金からなる、請求項10の磁歪素子。
  12. 実質的にFe40Ni38Mo418の組成を有する、請求項11の磁歪素子。
  13. 磁気力学的電子物品監視システムに使用するマーカーにして、
    連続するアモルファス金属合金のストリップに生じている縦方向湾曲を減少させるために、該ストリップに生じている湾曲とは反対の方向に湾曲を加えるように、該ストリップを湾曲を有する部材に巻きつけ、
    前記湾曲を有する部材位置において加熱処理し、
    前記加熱処理し連続ストリップをストリップ片に切断することにより形成したアモルファス磁歪ストリップ片を含む、前記磁気力学的電子物品監視システムに使用するマーカー。
  14. 前記アモルファス磁歪ストリップ片は鉄、ニッケル、モリブデン、及び硼素の合金からなる、請求項13のマーカー。
  15. 前記アモルファス磁歪ストリップ片は実質的にFe40Ni38Mo418の組成を有する、請求項14のマーカー。
  16. 磁気力学的電子物品監視システムにして、
    (a)呼び掛けゾーンにおいて選択した周波数で交番する電磁フイールドを発生するための発生手段にして、該発生手段は呼び掛けコイルを含む前記発生手段と、
    (b)前記呼び掛けゾーンを通る物品に固定されたマーカーにして、
    該マーカーは連続するアモルファス金属合金のストリップに生じている縦方向湾曲を減少させるために、該ストリップに生じている湾曲とは反対の方向に湾曲を加えるように、該ストリップを湾曲を有する部材に巻きつけ、
    前記湾曲を有する部材位置において加熱処理し、
    前記加熱処理した連続ストリップをストリップ片に切断することにより形成したアモルファス磁歪ストリップ片を含み、前記マーカーは前記磁歪ストリップ片に近接して位置するバイアス素子をさらに含み、前記バイアス素子は磁気的にバイアスをかけられて前記交番磁界にさらされると前記磁歪ストリップ片を力学的に共振させる、前記マーカーと、
    (c)前記磁歪ストリップ片の前記力学的共振を検出するための検出手段と、
    を含む磁気力学的電子物品監視システム。
  17. 前記磁歪ストリップ片は鉄、ニッケル、モリブデン、及び硼素の合金からなる、請求項16の磁気力学的電子物品監視システム。
  18. 前記磁歪ストリップ片は実質的にFe40Ni38Mo418の組成を有する、請求項17の磁気力学的電子物品監視システム。
  19. 磁気力学的電子物品監視システムに使用するマーカーにして、実質的にFe40Ni38Mo418の組成を有するアモルファスストリップ片を含み、前記マーカーの全体の厚さは1.65ミリメートル(0.065インチ)未満である前記磁気力学的電子物品監視システムに使用するマーカー。
  20. 前記マーカーの全体の厚さは実質的に1.4ミリメートル(0.055インチ)である請求項19のマーカー。
  21. 前記マーカーの全体の厚さは実質的に0.9ミリメートル(0.037インチ)である請求項19のマーカー。
  22. 磁気力学的電子物品監視マーカーに使用するアモルファス金属合金のストリップに生じている縦方向湾曲を減少させるための方法であって、
    該ストリップに生じている湾曲とは反対の方向に湾曲を加えるように、該ストリップを湾曲を有する部材に巻きつけ、
    前記湾曲を有する部材位置において加熱処理することからなるアモルファス金属合金のストリップに生じている縦方向湾曲を減少させるための方法。
  23. 前記アモルファス金属合金のストリップは連続ストリップであり、前記加熱処理工程と前記湾曲を加える工程は前記合金のストリップを供給リールから巻き上げリールに送りながら行われる、請求項22の方法。
  24. 前記合金のストリップは鉄、ニッケル、モリブデン、及び硼素の合金からなる、請求項22の方法。
  25. 前記合金のストリップは実質的にFe40Ni38Mo418の組成を有する、請求項24の方法。
  26. 磁気力学的電子物品監視マーカーに使用する磁歪部材を形成する方法にして、
    アモルファス金属合金の連続ストリップを準備し、
    前記アモルファス金属合金ストリップを加熱位置に供給し、
    前記加熱位置において前記アモルファス金属合金ストリップを該ストリップに生じている縦方向湾曲とは反対の方向に湾曲を加えるように、湾曲した通路中を連続的に送りながら、前記加熱位置において前記アモルファス金属合金ストリップを加熱処理し、
    前記加熱処理したストリップを所定の長さを有するストリップ片に切断することからなる、前記磁気力学的電子物品監視マーカーに使用する磁歪素子を形成する方法。
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