JP4029704B2 - 誘電体セラミック原料粉体の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、セラミックコンデンサの材料として有用な誘電体セラミック原料粉体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、セラミックコンデンサを製造する場合、基本となる誘電体セラミック組成物、例えば、BaTiO3、SrTiO3、(Ba,Ca)(Ti,Zr)O3などの基本組成物に種々の金属元素を添加して、誘電体セラミック基本組成物の電気特性や焼結性などの改良を図ることが行なわれている。この金属元素の添加方法としては、誘電体セラミック基本組成物の個々の粉体の表面に、添加金属元素を含む化合物を付着させる方法などが採用されている。この具体的な添加方法を以下に示す。
【0003】
(1)誘電体セラミック基本組成物粉体に、添加すべき金属元素の炭酸塩もしくは酸化物またはそれらの混合物などの粉体を添加し、ボールミルやサンドミルなどの機械的方法で、粉砕しながら粉体同志を混合する方法。
【0004】
(2)誘電体セラミック基本組成物粉体を、添加すべき金属元素を含む化合物が溶解した有機溶媒中に分散してスラリーとし、その後、有機溶媒を蒸発除去する方法。
【0005】
(3)誘電体セラミック基本組成物粉体を、添加すべき金属元素を含む金属塩水溶液中に分散してスラリーとし、その後、金属塩水溶液から沈殿を析出させて濾過分離するか、またはスラリー中の水溶媒を蒸発除去する方法(例えば、特開昭63−141204号公報)。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、(1)の粉体同志を機械的に混合する方法は、添加元素が誘電体セラミック基本組成物粉体間に均一に分散せず、局所的な組成バラツキを生じる。そのため、例えば、添加元素が焼結助剤となる成分の場合、本来よりも過剰に添加しなければ目的とする焼結性が得られない。その結果、比誘電率が低下したり、添加元素の局所的な濃度不均一により、焼結体に絶縁抵抗などの非常に低い部分が生じ、信頼性が低下するという問題点を有していた。
【0007】
また、(2)の添加元素を含む化合物が溶解したスラリー中の有機溶媒を蒸発除去する方法は、誘電体セラミック基本組成物粉体の表面に均一に添加元素を含む化合物が付着するため、添加元素が誘電体セラミック基本組成物粉体中に均一に分散する。その結果、焼結性、電気特性などに優れた誘電体セラミック原料粉体が得られる。しかしながら、この方法は、大量の有機溶媒を用いるため、防爆設備が必要となり、また、製造原価が高価となるという問題点を有していた。
【0008】
さらに、(3)の添加元素を含む金属塩水溶液から沈殿を析出させて濾過分離するか、またはスラリー中の水溶媒を蒸発除去する方法は、それぞれ以下のような問題点を有していた。すなわち、沈殿を析出させる場合、スラリー内全体にわたって、均一に沈殿を析出させることが難しく、反応条件などによっては一部に集中して析出し、添加元素が誘電体セラミック基本組成物粉体中に均一に分散しない場合があった。また、蒸発乾燥させる場合、金属塩水溶液中の陰イオンが不純物として残留する場合があった。
【0009】
そこで、本発明の目的は、上記問題点を解決して、水溶媒を用いるために防爆設備を必要としない安価な製造方法であって、不純物の混入を抑えた、添加元素が誘電体セラミック基本組成物粉体中に均一に分散した誘電体セラミック原料粉体の製造方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の誘電体セラミック原料粉体の製造方法は、誘電体セラミック基本組成物粉体の表面に金属元素の化合物を付着させた誘電体セラミック原料粉体の製造方法において、(1)前記誘電体セラミック基本組成物粉体を水に分散させてスラリーとする工程、(2)前記スラリー中に、該スラリーを攪拌しながら、pH緩衝液と、前記化合物を構成する金属元素を含む溶液と、該金属元素と反応して沈殿を形成する沈殿剤とを添加する工程(ただし、前記pH緩衝液の添加は、前記金属元素を含む溶液、および前記沈殿剤の双方が添加される前とする)、(3)前記スラリーを洗浄し、その後乾燥させる工程、を備える。
【0011】
また、誘電体セラミック基本組成物粉体の表面に金属元素の化合物を付着させた誘電体セラミック原料粉体の製造方法において、(1)前記誘電体セラミック基本組成物粉体を水に分散させてスラリーとする工程、(2)前記スラリー中に、該スラリーを攪拌しながら、アンモニア水溶液−塩化アンモニウム水溶液からなるpH緩衝液と、前記化合物を構成する金属元素を含む溶液と、該金属元素と反応して沈殿を形成する沈殿剤とを添加する工程(ただし、前記pH緩衝液の添加は、前記金属元素を含む溶液、および前記沈殿剤の双方が添加される前とする)、(3)前記スラリーを洗浄し、その後乾燥させる工程、を備える。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、実施例に基づき説明する。
【0014】
(実施例1)
まず、誘電体セラミック基本組成物粉体としてのBaTiO3粉体50gを、100mlの水に加えて攪拌し、分散させてスラリーを得た。その後、このスラリー中に0.1Nアンモニア水溶液と0.1N塩化アンモニウム水溶液を体積比1:4で混合したpH緩衝液を400ml添加した。
【0015】
次に、スラリー中に、攪拌しながら、付着させるべき化合物を構成する金属元素を含む溶液としてのDyCl3、MgCl2およびMnCl2の0.1モル/l水溶液をそれぞれ8:5:1の割合で混合した水溶液20mlを、0.5ml/分の速度で滴下した。また、スラリー中に、攪拌しながら、沈殿剤として、これと化学量論的に等量の0.1モル/lNaOH水溶液51.4mlを18ml/分の速度で滴下した。
【0016】
次に、スラリーを濾過して脱水し、誘電体セラミック基本組成物粉体と沈殿物からなる固形物を得た。その後、固形物に500mlの水を加えて1時間攪拌し、その後、濾過して固形物を得るという洗浄工程を2回繰り返した。その後、得られた固形物を110℃で24時間乾燥し、60メッシュの篩を通して、誘電体セラミック基本組成物粉体としてのBaTiO3粉体の表面に、Dy、MgおよびMn元素の化合物が付着した誘電体セラミック原料粉体を得た。
【0017】
次に、得られた誘電体セラミック原料粉体表面のDy、Mg、Mnの分散状態をX線マイクロアナライザ(XMA)によってマッピング分析を行なったところ、これら元素の偏析は認められず、粉体表面に均一に分散していることが確認された。
【0018】
このように、スラリーに、pH緩衝液を添加することで、添加元素を含む水溶液と沈殿剤を加えたときのpHの変化が小さくなり、析出反応の速度を一定にすることができる。したがって、スラリー中で均一に沈殿反応が起こり、沈殿析出物を誘電体セラミック基本組成物粉体に均一に付着させることができる。
【0019】
次に、このようにして作製した原料粉末をアクリル樹脂をトルエンに溶解したバインダー液と混合し、ドクターブレード法により厚さ5μmのグリーンシートを得た。このグリーンシートを所定の寸法に打ち抜き、Ni金属粉末をビヒクルに分散させた電極ペーストを印刷し、乾燥させた。さらに、交互に積層し、圧着した後、カットして積層体を作製し、N2雰囲気中で1220℃で2時間焼成した。これに、Ag−Pdペーストで外部電極を形成し、焼付けることで積層コンデンサを得た。
【0020】
得られた積層コンデンサは、1層当りの誘電体層厚みが約3μmであった。そして、電気特性を特定した結果、室温の比誘電率が約3000、誘電損失(DF)が2%、絶縁抵抗(IR)が5×109Ωであって、静電容量の温度特性はJIS規格で規定するB特性、およびEIAJ規格で規定するX7R特性を満足した。また、直流電圧1.6Vを1000時間印加した後のIR劣化は認められなかった。
【0021】
なお、上記実施例1においては、誘電体セラミック基本組成物粉体がBaTiO3の場合について示したが、本発明はこれのみに限定されるものではない。BaTiO3以外に、SrTiO3、(Ba,Ca)(Ti,Zr)O3など種々の誘電体セラミック組成物粉体の場合に適用できる。また、添加剤として付着させる金属化合物は、目的とする誘電体特性に応じて、誘電体セラミック基本組成物粉体との組み合わせで、適宜選択することができる。
【0022】
【発明の効果】
以上の説明で明らかなように、本発明の誘電体セラミック原料粉体の製造方法によれば、沈殿析出反応時にスラリー中に、アンモニア水溶液−塩化アンモニウム水溶液からなる緩衝液のような、緩衝溶液を加えることで、pHの変化が小さくなり、析出反応の速度を一定にすることができる。したがって、スラリー中で均一に沈殿反応が起こり、沈殿析出物を均一に誘電体セラミック基本組成物粉体に付着させることができる。
【0024】
さらに、本発明の製造方法は、水溶媒を用いるために防爆設備を必要としない安価な製造方法であり、不純物の混入を抑えた、添加元素が誘電体セラミック基本組成物粉体中に均一に分散した誘電体セラミック原料粉体の製造方法を得ることができる。

Claims (2)

  1. 誘電体セラミック基本組成物粉体の表面に金属元素の化合物を付着させた誘電体セラミック原料粉体の製造方法において、(1)前記誘電体セラミック基本組成物粉体を水に分散させてスラリーとする工程、(2)前記スラリー中に、該スラリーを攪拌しながら、pH緩衝液と、前記化合物を構成する金属元素を含む溶液と、該金属元素と反応して沈殿を形成する沈殿剤とを添加する工程(ただし、前記pH緩衝液の添加は、前記金属元素を含む溶液、および前記沈殿剤の双方が添加される前とする)、(3)前記スラリーを洗浄し、その後乾燥させる工程、を備える、誘電体セラミック原料粉体の製造方法。
  2. 誘電体セラミック基本組成物粉体の表面に金属元素の化合物を付着させた誘電体セラミック原料粉体の製造方法において、(1)前記誘電体セラミック基本組成物粉体を水に分散させてスラリーとする工程、(2)前記スラリー中に、該スラリーを攪拌しながら、アンモニア水溶液−塩化アンモニウム水溶液からなるpH緩衝液と、前記化合物を構成する金属元素を含む溶液と、該金属元素と反応して沈殿を形成する沈殿剤とを添加する工程(ただし、前記pH緩衝液の添加は、前記金属元素を含む溶液、および前記沈殿剤の双方が添加される前とする)、(3)前記スラリーを洗浄し、その後乾燥させる工程、を備える、誘電体セラミック原料粉体の製造方法。
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