JP4029318B2 - 髪の養生のためのヘアケアトリートメントとその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する産業分野】
本発明は、パーマや髪染の後や、普段の髪の養生に用いるトリートメントに関する。
【0002】
【従来の技術】
パーマも髪染も、1剤としてもちいる還元剤は髪の毛のキューティクルを膨潤させたり、開裂して用いるため髪の毛を傷つけることになり、2剤としてもちいる酸化剤も、その刺激によって髪の毛や、頭皮を傷つけるものが多かった。
【0003】
髪の毛は、硫黄「S」をもつアミノ酸、いわゆるシステイン結合をもち、「S」と「S」との結びつきが強く、このため髪の毛は、ひっぱりに強い性質をもっていた。パーマの場合、これを自由な形状に変えるためには、まず、「S」と「S」との結合を切ることが必要で、このため還元剤としてチオグリコール酸などを用い、水素「H」を与える形で「S」と「S」の結合を切り「SH基」、メルカプタン基を作っていた。
【0004】
これは、実際のパーマ処理としては、髪の毛に、還元剤を塗布し、ロットにまきつけ、10分〜20分の所定時間静置した。
【0005】
この後、酸化剤として、ブロム酸ソーダないし過酸化水素(の5%液)を用い、このメルカプタン基から「H」をとり、元の位置とは、ずれた位置で「S」と「S」とを結合させ、変えた形状に固定するようにしていた。
【0006】
パーマの後、この酸化剤は、洗い流すようにしていたが、附着した酸化剤がのこり、これを完全に洗い流すことはできなかった。
【0007】
髪染の場合は、第1剤に還元剤とジアミン系の染料が含まれていて、還元剤によって、髪の毛を膨潤させ、髪の毛の組織であるキューティクルの間隙を広げ、この間隙を通りキューティクル内にジアミン系の染料を入れた。次に第2剤の酸化剤がこのキューティクル内に入ると、ジアミン系の染料と重合し、大きな粒子となり、はっきりとした色に発色した。また大きくなった染料粒子は、水洗いしても、今度はキューティクルの外に流れ落ちにくくなり、これによって永久髪染を行っていた。しかし実際は、髪の毛のキューティクルが染料分子を、確実に捕捉するわけではなく、色落ちは、避けられなかった。
【0008】
普段の洗髪においても、石鹸で洗ったときには、丁寧に洗わないと、ふけなどの洗いかすが残ったり、合成洗剤を使ったときには、よく洗えても逆に脂肪分が取られ過ぎ、頭皮がかさかさになったりした。また合成洗剤は、髪の毛や頭皮、毛根に、害のある有害物質を含みこれを使い続けることにより、髪の毛に枝毛が多くなったり、髪の毛が細くなったり、抜け毛が多くなったりした。
【0009】
【発明の解決しようとしている課題】
髪の毛が、おかれている周囲事情は、従来例で見たように極めて過酷で、厳しい状況にある。そこで本発明は、この髪の毛をケアするトリートメントを植物エキスを発酵分解し、分解によって得たアミノ酸、ブドウ糖などの生成物と、分解に寄与した微生物酵素をそのまま生かして作り、以下のことを実現することに目的がある。1)パーマや髪染によって受けた髪の毛や、頭皮のダメージを回復する。2)髪の毛を清潔にしふけなどによるかゆみを無くすと共に、いやな臭いも取り去るようにした。3)髪を引き締め、弾力を持たせ、こしとつやのある髪にする。4)残存する過酸化水素等の有害物質を分解する。
【0010】
【課題を解決する手段】
そこで本発明では、まずこの髪の毛をケアするトリートメントを作るに当たり、植物性のエキスで作るようにし、これを使うことによる副作用を避けるようにした。植物は、野菜や、果物、海草、穀物、野草など多種多様な植物を原材料にし、それらに付着している自然酵母を利用するようにした。
【0011】
これらの植物原材料を、生の状態で加工し植物エキスを抽出し、炭水化物や、たんぱく質、脂肪分からなるこの植物エキスを、この自然酵母の働きを借りて発酵分解した。低分子に分解されたアミノ酸は、皮膚の細胞の吸収性のよい栄養素とした。ブドウ糖や脂肪酸は保湿剤として利用できた。この際に働いた微生物は、微生物酵素を排き出し、炭水化物や、たんぱく質、脂肪を分解し自らの増殖の条件を作る。この微生物酵素を、髪の毛や頭皮、そして毛根に付着するふけや、油分などのごみを分解するのに利用した。
【0012】
植物性の原材料だからと言って、アレルギーやかぶれなどに無縁である訳ではない。炭水化物や、たんぱく質、脂肪がそのままで存在すれば、アレルギーやかぶれを起こす人が出る。本発明では、これらを含む植物エキスは、自然酵母の働きと、微生物の働きで、発酵分解され、炭水化物はでんぷんからブドウ糖に、たんぱく質は、アミノ酸に、脂肪は、脂肪酸に分解され、低分子化されることにより人体にとってアレルギーにならないようにした。
【0013】
また本発明では、野生植物を生の状態もしくは煮出し、フラボノイド、アルカロイド、サポニン、タンニン酸などを抽出し、この植物エキスの働きを生かすようにした。その上で発酵分解に関与した微生物を、生菌のまま利用するようにした。
【0014】
植物エキスを抽出した段階で、植物に付着する雑菌が繁殖する恐れがある。そこで本発明では、砂糖などの糖類を多量に加え、酸化・変敗に走る微生物の増殖を抑えた。砂糖を入れて煮詰めたジャムが保存料として、日持ちする原理である。糖度の濃い溶液中では、そもそも微生物は、浸透作用で水分を吸収され働きが低下する。そういう環境条件に順応する微生物は、緩慢に進む発酵分解を行って行く。
【0015】
【発明の具体的な実施例】
以下本発明を図面に基づき説明する。図1は、本発明によるヘアケアトリートメントの製造方法を示すブロック図である。(2)は、野菜や、果物、海草、穀物などの複数の植物を生で加工し植物エキスを抽出する第一の工程、(4)は、砂糖など糖類を多量に加えることによって酸化・腐敗を抑え、かつ該複数の植物に付着した酵素の力によって発酵分解させる第二の工程、(6)は、発酵分解過程において、さまざまな微生物酵素を作り出す第三の工程、(8)は、植物のもつ人にかぶれやアレルギーを起こす要因物質を分解する第四の工程である。(9)は、乾燥した野生植物を、同量の糖と一緒に浸漬する工程である。第一の工程と同様に考えてもよい。また、この浸漬する液としてあらかじめ野生植物を煮出したものを使用してもよい。本発明のヘアトリートメントは、この四つの工程を組み合わせて作っている。
【0016】
図2は、本発明に基づく製造方法を時間の流れとともに追った図である。材料収集(10)に集められた材料は、たとえば、みかんやアボガド、パパイヤ、オレンジ、りんご、ぶどう、いちぢく、梨、桃、苺などの果物、ごぼう、れんこん、たまねぎ、にんじん、大根、じゃがいも、とうもろこし、ピーマン、トマト、ほうれん草、レタス、春菊、セロリ、山芋、白菜などの野菜、ひじき、昆布やわかめなどの海草、玄米、大豆、小豆、ハトムギなどの穀類、霊芝、よもぎ、杉の葉、ドクダミ、タンポポ、おおばこ、クコ、あかざ、すぎな、つるな、あま茶づる、かわら決明、柿の葉、いちょう、枇杷の葉などの野生植物など、川と海、畑と田んぼなど多様な採取場所から摂り、材料としての利用ヶ所も、葉、茎、根、実など多様なものを、複数集める。
【0017】
切断(12)では、これらの材料を、大きなものは、スライスしたり、数Cmぐらいの大きさに切断し穀類などは粉砕し材料とほぼ同量の糖類(14)と消化分解に関与する菌(16)を一緒に、第一の容器(18)に投入する。糖類としては、砂糖やオリゴ糖、ハチミツ、蔗糖他を入れる。
【0018】
糖度が高いため、植物に付着している雑菌は、組織内の水分を逆浸透圧によって吸い出され、繁殖を抑えられる。また、投入植物のエキスは、やはり、浸透圧によって液の中に抽出される。植物エキスの濃度の濃い溶液ができ、この状態で2〜3週間静置し常温状態で発酵させる。この間、1日5分間くらい、撹拌(20)する。この後、第一容器(18)の内容物は、フィルタ(22)を介して、第二容器(26)に移し変えられ、フィルタ(22)で、植物くず(24)は取り除かれる。フィルタ(22)は、網目のつまった布袋に第一容器の固型分を入れ、プレス器で押しつぶしてしぼり汁をとり、第一容器の液体分とともに第二容器に移す形をとっている。逆浸透圧による物理化学的作用によって植物エキスをしぼり出すようにしている。
【0019】
第二容器(26)に移し変えた後、再び、1ヶ月静置する。糖度が高いため、緩慢に発酵する。この間も、ごく間欠的に、短時間撹拌(28)を続ける。この嫌気的発酵の過程で、生の植物に付着した野生酵母の働きをかり、炭水化物、たんぱく質、脂肪を低分子に分解する。この後、天日乾燥させた野生植物(32)と同量の糖類と、第二容器(26)の内容物とを、第三容器(30)に移し、約6ヶ月間静置する。この間も間欠的な撹拌(36)は続ける。1ヶ月の静置に続きこの分解を進める。微生物は、自らのエサとなる炭水化物、たんぱく質、脂肪等の有機物を分解するために酵素をはき出し、さらに分解をすすめる。この結果徐々に、そうした酵素をはき出す微生物が溶液中に存在することになる。
【0020】
ここで使用する野生植物(32)としては、先に示したようなものであるが、アルカロイド、サポニン、タンニン酸やフラボノイドも抽出できる。こうした植物エキスを抽出する過程では、野生植物(32)を乾燥したものを、第三容器(30)に投入し、いわば生の状態で抽出することもできるが、別途煮出しをして、抽出し、抽出液を、第三容器(30)に投入してもよい。第一容器(18)から第三容器(30)で、緩慢な嫌気発酵を行う過程で、間欠的に撹拌(20、28、36)を行う意味は、酸素供給することにより、好気性微生物を働かせ、刺激を受けた、嫌気性の微生物の活性を計ることと、その過程で生成される活性酸素を打ち消す酵素を分泌する微生物の活性を計ることに狙いがある。
【0021】
またこの緩慢な発酵分解過程を通して、植物材料中の炭水化物、たんぱく質、脂質分は、いずれも加水分解され、低分子のブドウ糖やアミノ酸、そして、脂肪酸などに分解される。そのため人体に吸収されやすくなり、かつアレルギーやかぶれの要因は除去される。
【0022】
第三容器(30)で6ヶ月静置した後、フィルター(38)で、植物くず(40)を取り除き、第四容器(42)に移し変え、ここで再び6ヶ月静置し、糖分を分解し発酵しなくなって完成する。
【0023】
植物には煮詰めたときに「あく」として出るのは、金属ミネラル分やたんぱく質であるが植物中に含まれるこれらについても、ブドウ糖が、嫌気発酵によって有機酸に変成する中で、PHが低くなり、溶液中にイオン分解するため、それによるかぶれなどの要因も除去される。以上のようにして本発明による植物エキスは製造されるが、第1図は、この第2図の実際の製造過程を、製造方法上の主要な要件として現したものである。
【0024】
このように完成させた第4容器から取り出した植物エキスを原液のまま、また深海水やミネラルウォーターなどを混入し、ヘアトリートメントとした。これについて、2つの実験を行った。1つは、100店舗の美容室で、1つは、残留過酸化水素についての酸素電極法による試験である。
【0025】
美容室での使用実験では、本発明によるヘアトリートメントを、パーマや髪染を行った後の髪につけ、しばらく静置した後、これを洗い流して、パーマや髪染めの後のダメージの回復や、色落ちが軽減されているかなどを見た。100店舗の美容室で、約500例について調べたが、かぶれや副作用については、1件もなかった。
【0026】
実施例による声として▲1▼皮膚のかゆみがなくなった。▲2▼パーマや髪染の後のひりひりすることがなくなった。▲3▼湿疹が なくなった。▲4▼毛におちつきがでて、コシができた。▲5▼髪染の色落ちがなくなった。という声が出された。
【0027】
また、シャンプーの後のヘアトリートメントとしてつけた後、静置し、しばらく後に洗い流したり、最初からシャンプー液に混入し、シャンプーした時にも▲1▼頭皮のかゆみがなくなり、▲2▼毛に弾力がつき、つやがよくなったという声が聞けた。
【0028】
以上から本発明によるトリートメントのもつ働きとして、次のように確認することができる。▲1▼本発明による製造方法をもって作った原液は、原液のまま使うにせよ、ミネラルウォーターなどを混入し、少し薄めて使用するにせよ、最終の製品化処理の段階で、加熱することなく生のまま用いたので、一定期間保管したものでも、含有する微生物が、酵素を排き出し、生の酵素の働きをそのまま生かすことができた。この酵素は、炭水化物、たんぱく質、脂肪を分解するため、髪の毛や頭皮、毛根に付着しているよごれを分解した。また植物エキスから作られたアミノ酸は、髪の毛や皮膚の栄養素となり、ブドウ糖や脂肪酸は、保湿などに生かされた。こうした作用により、頭皮のかゆみがなくなり、髪の毛を養生する条件を作り、弾力やツヤが生み出されたものと考えられる。はえぎわの湿疹などの原因も取り除くことができた。植物中のフラボノイドもにおい成分となるよごれを分解した。
【0029】
▲2▼タンニン酸やアルカロイドは、パーマや髪染によって傷付き、開裂した髪の毛のキューティクルをひきしめ、かさかさになった頭皮をひきしめ、髪に弾力とツヤを与えるもう1つの条件となった。また髪染によってキューティクル内に内包した染料が、流れ出すのを防ぎ、色落ちをなくした。
【0030】
酸素電極法による試験については、日本食品分析センターに依頼して行った。髪染用に使用する第2剤に水を10倍量入れ、10分間かくはんしたものを測定したところ、0.57%の過酸化水素が残っていた。これに対し、同じ第2剤に、本発明による植物エキスを10倍量混合し、10分間かくはんしたものについて、4.5PPmの過酸化水素が残っていたことが分かった。本植物エキスを使用すると、残留過酸化水素が、約1000分の1になり、残留分が限りなくゼロに近いことが分かった。また、100店舗の使用美容室での実験については、過酸化水素が残留している時には、水分の蒸発により髪がパサパサすることが知られているが、そうしたことがなくなった。
【0031】
【発明の効果】
以上、本発明による製造方法によって作り出された植物エキスは、パーマや髪染におけるヘアトリートメントに効果があり、過酸化水素を分解する力もあり、脱色や発ガン物質生成の怖れをなくすことができる。なお、本発明で説明した実施例はあくまで1実施例であり、本発明はこの実施例に把われるものではない。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明による植物エキスの製造方法の主要な構成をなす工程図
図2は、本発明による植物エキスの製造方法の実際の流れを示す1実施例図。
Claims (2)
- 野菜や果物、海草、穀物、野生植物からなる植物素材のそれぞれを、少なくとも1つ以上用意し、該用意した植物素材から植物エキスを抽出し、該植物エキスに略等量の糖類を投入し、腐敗防止を計りながら略1年をかけて該植物素材に付着した微生物を活用し、該植物エキスを発酵分解し、該植物エキス中のでんぷん質、たんぱく質、脂質をそれぞれぶどう糖、アミノ酸、脂肪酸に変化させ、髪の栄養素や保湿材として利用するとともに、該変化させるに当たって働いた該微生物酵素を該髪の養生のために活用するように、該発酵分解した該植物エキスを加熱せず生の状態で製品化したことを特徴とするヘアケアトリートメント。
- 野菜や果物、海草、穀物、野生植物からなる植物素材を生の状態で加工し、植物エキスを抽出する第一の工程と該植物エキスに糖類を加えることによって酸化、腐敗を抑え、かつ該植物素材に付着した微生物の力によって該植物エキスを発酵分解させる第二の工程と該発酵分解させた植物エキスを加熱せず、生の状態で深海水やミネラルウォーターに混入してヘアケアトリートメントとして作る第五の工程からなり、該第二の工程は該発酵分解過程に於いて該微生物が微生物酵素を出す(作り出す)第三の工程と前記植物エキス中のでんぷん質、たんぱく質、脂質をそれぞれぶどう糖、アミノ酸、脂肪酸に分解する第四の工程とを合わせもち、以上第一の工程から第五の工程との組み合わせによって特許請求の範囲第1項で示した前記へアケアトリートメントを作ることを特徴とするヘアケアトリートメントの製造方法。
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