JP4029161B2 - セラミックブロック体のカット装置およびカット方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は積層セラミックコンデンサ等のセラミック電子部品の製造に使用されるセラミックブロック体のカット装置およびカット方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
積層セラミックコンデンサ等のセラミック電子部品の製造は、例えば以下のようにして行われる。印刷等の手法により所定の導体パターンを形成したセラミックグリーンシートを積層、圧着してセラミックブロック体を構成する。次に、セラミックブロック体を所定の寸法の積層セラミックチップにせん断カットする。このようにして切断された積層セラミックチップは、焼成炉で焼結された後、端子電極等が形成されてセラミック電子部品とされる。
【0003】
従来、セラミックブロック体のカット装置としては、図4に示すようなものが一般に周知である(例えば、特開2000−269104号公報参照)。該カット装置50は、概略、ワーク供給トレイ51、搬送装置(図示せず)、カットテーブル54及びカット刃55にて構成されている。カット刃55は、図示しない駆動装置により矢印Aで示す方向に駆動され、カットテーブル54上に載置されたセラミックブロック体53をせん断カットする。搬送装置は、矢印Kで示すように、ワーク供給トレイ51からセラミックブロック体53を順次搬送して、カットテーブル54上に載置する。カットテーブル54のテーブル面54aには、加熱ヒータ56が埋設されている。この加熱ヒータ56により、セラミックブロック体53に含まれているバインダのガラス転移点温度以上にセラミックブロック体53を加熱し、セラミックブロック体53の切断性を向上させていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、従来のカット装置50は、カットテーブル54に搬送されてきたセラミックブロック体53を、カット前にカットテーブル54の加熱ヒータ56により加熱していた。このため、セラミックブロック体53が所定の温度に達するまで、加熱待ちの時間が発生し、その間はカット刃55によるセラミックブロック体53のカットは行えず、装置50の稼働率が低いという問題を有していた。
【0005】
そこで、本発明の目的は、効率よくセラミックブロック体をカットすることができるセラミックブロック体のカット装置およびカット方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するため、本発明に係るセラミックブロック体のカット装置は、セラミックブロック体をカットテーブル上に搬送し、セラミックブロック体を加熱しつつカット刃でカットするセラミックブロック体のカット装置であって、カットテーブル上に搬送されるセラミックブロック体を、セラミックブロック体に含まれるバインダのガラス転移点温度より低い温度に予熱する予熱手段を備え、カットテーブル上でのセラミックブロック体の加熱温度は、予熱手段での加熱温度以上であって、かつ、セラミックブロック体に含まれるバインダのガラス転移点温度以上であることを特徴とする。
【0007】
予熱手段としては、例えば予熱テーブルに配置された予熱ヒータ(伝導を利用したもの)、セラミックブロック体の周囲の雰囲気を加熱する雰囲気加熱装置(対流を利用したもの)、あるいは、セラミックブロック体を加熱する赤外線加熱装置(放射を利用したもの)などがある。また、予熱手段でのセラミックブロック体の加熱温度は、セラミックブロック体に含まれるバインダのガラス転移点温度付近であることが好ましい。
【0008】
また、本発明に係るセラミックブロック体のカット方法は、セラミックブロック体をカットテーブル上に搬送し、セラミックブロック体を加熱しつつカット刃によりカットするカット方法であって、セラミックブロック体がカットテーブル上に搬送される前に、セラミックブロック体に含まれるバインダのガラス転移点温度より低い温度にセラミックブロック体を予熱し、カットテーブル上でのセラミックブロック体の加熱温度は、予熱での加熱温度以上であって、かつ、セラミックブロック体に含まれるバインダのガラス転移点温度以上である。予熱温度と加熱温度の温度差は、20℃以下であることが好ましい。また、予熱でのセラミックブロック体の加熱温度は、セラミックブロック体に含まれるバインダのガラス転移点温度付近であることが好ましい。
【0009】
【作用】
セラミックブロック体は、カット刃によりカットされる前に、予め予熱手段により加熱される。これにより、カットテーブルに搬送されてきたセラミックブロック体の温度が上昇しており、カットテーブル上ではセラミックブロック体を少し加熱するだけで、セラミックブロック体のバインダのガラス転移点温度以上になる。従って、カットの際に必要とされるセラミックブロック体の加熱待ち時間が短縮される。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係るセラミックブロック体のカット装置およびカット方法の実施の形態について添付の図面を参照して説明する。セラミックブロック体として、積層型コンデンサのマザー基板を例にして説明するが、積層型インダクタ、積層型LCフィルタや高周波モジュール、多層デバイスのマザー基板、多層基板などであってもよいことは言うまでもない。
【0011】
[第1実施形態、図1]
図1に示すように、カット装置10は、概略、ワーク供給トレイ51、搬送装置(図示せず)、予熱テーブル11、カットテーブル54及びカット刃55にて構成されている。カット刃55は、図示しない駆動装置により矢印Aで示す方向に駆動され、カットテーブル54上に載置されたセラミックブロック体53をカットする。カット刃55は、肉厚が0.1〜0.5mm(代表値:0.2mm)、刃先の先端角度が5〜20度(代表値:5度)である。カット刃55の材質は、超硬、SK(炭素工具鋼)、SUS(ステンレス)などが用いられる。
【0012】
搬送装置は、矢印K1で示すように、ワーク供給トレイ51からセラミックブロック体53を順次搬送して、予熱テーブル11上に載置する。予熱テーブル11のテーブル面11aには、予熱ヒータ12が埋設されている。予熱ヒータ12は、セラミックブロック体53に含まれるバインダのガラス転移点温度付近まで、セラミックブロック体53を加熱する。予熱テーブル11の温度設定は、予熱時にセラミックブロック体53の溶剤等が蒸発しきらない温度である。セラミックブロック体53から溶剤等が完全に蒸発してしまうと、セラミックブロック体53が固くなってしまい、せん断カットが困難になるからである。具体的数値例を示すならば、予熱テーブル11での加熱温度は85〜95℃で、加熱時間は1〜2分間程度である。なお、予熱の方法としては、予熱ヒータ12をセラミックブロック体53の上面に当てる方法であってもよいし、上下両面に当てる方法であってもよい。
【0013】
予熱テーブル11で予熱されたセラミックブロック体53は、再び、矢印K2で示すように、搬送装置によりカットテーブル54に搬送される。カットテーブル54のテーブル面54aにも、セラミックブロック体53を加熱する加熱ヒータ56が埋設されている。加熱ヒータ56はセラミックブロック体53をさらに加熱し、バインダのガラス転移点温度以上にセラミックブロック体53を加熱する。これにより、カット刃55によるセラミックブロック体53の切断性を向上させている。具体的数値例を示すならば、カットテーブル54での加熱温度は100〜150℃である。
【0014】
予熱温度と加熱温度の温度差は、20℃以下であることが好ましい。温度差を20℃以下にすることによって、予め、余分な溶剤を蒸発させるとともに、バインダの可塑性を向上させ、セラミック層相互間の接着強度を向上させておいて、カット時の積層ずれ等を防止する。なお、より好ましくは、予熱温度と加熱温度の温度差は10℃以下である。
【0015】
以上のように、カットテーブル54に載置されたセラミックブロック体53がせん断カットされている間に、次にカットされるセラミックブロック体53が予熱テーブル11で加熱されている。従って、カットテーブル54に搬送されてくるセラミックブロック体53の温度は既に上昇しており、カットテーブル54ではセラミックブロック体53を少し加熱するだけで、セラミックブロック体53は短時間でバインダのガラス転移点温度以上の温度に上昇する。この結果、セラミックブロック体53のカットの際に必要とされる加熱待ちの時間が短縮され、設備の稼働率が向上する。
【0016】
[第2実施形態、図2]
図2に示すように、カット装置20は、概略、ワーク供給トレイ51、搬送装置(図示せず)、雰囲気加熱装置21、カットテーブル54及びカット刃55にて構成されている。
【0017】
搬送装置は、矢印K1で示すように、ワーク供給トレイ51からセラミックブロック体53を順次搬送して、雰囲気加熱装置21内に一旦収容する。雰囲気加熱装置21内には高温の空気が循環している。雰囲気加熱装置21は、セラミックブロック体53に含まれるバインダのガラス転移点温度付近まで、セラミックブロック体53を予熱する。雰囲気加熱装置21の温度設定は、予熱時にセラミックブロック体53のバインダ等が蒸発しきらない温度である。
【0018】
雰囲気加熱装置21で予熱されたセラミックブロック体53は、再び、矢印K2で示すように、搬送装置によりカットテーブル54に搬送される。カットテーブル54の加熱ヒータ56はセラミックブロック体53をさらに加熱し、バインダのガラス転移点温度以上にセラミックブロック体53を加熱する。これにより、カット刃55によるセラミックブロック体53の切断性を向上させている。なお、図2において、図1に対応する部分には対応する符号を付して示し、重複した説明は省略する。
【0019】
以上のように、カットテーブル54に載置されたセラミックブロック体53がせん断カットされている間に、次にカットされるセラミックブロック体53が雰囲気加熱装置21で加熱されているので、加熱待ちの時間が短縮され、設備の稼働率が向上する。
【0020】
[第3実施形態、図3]
図3に示すように、カット装置30は、概略、ワーク供給トレイ51、搬送装置(図示せず)、赤外線加熱装置31、カットテーブル54及びカット刃55にて構成されている。
【0021】
搬送装置は、矢印K1で示すように、ワーク供給トレイ51からセラミックブロック体53を順次搬送して、赤外線加熱装置31内に一旦収容する。赤外線加熱装置31は赤外線ヒータ32を備えている。赤外線加熱装置31は、セラミックブロック体53に赤外線を照射し、バインダのガラス転移点温度付近までセラミックブロック体53を予熱する。赤外線は吸収効率が高いので、セラミックブロック体53は赤外線加熱装置31からの赤外線を効率よく吸収して全体が予熱され、セラミックブロック体53の予熱時間も短くなり、設備の稼働効率をより一層改善することができる。赤外線加熱装置31の温度設定は、予熱時にセラミックブロック体53の溶剤等が蒸発しきらない温度である。
【0022】
赤外線加熱装置31で予熱されたセラミックブロック体53は、再び、矢印K2で示すように、搬送装置によりカットテーブル54に搬送される。カットテーブル54の加熱ヒータ56はセラミックブロック体53をさらに加熱し、バインダのガラス転移点温度以上にセラミックブロック体53を加熱する。これにより、カット刃55によるセラミックブロック体53の切断性を向上させている。なお、図3において、図1に対応する部分には対応する符号を付して示し、重複した説明は省略する。
【0023】
以上のように、カットテーブル54に載置されたセラミックブロック体53がせん断カットされている間に、次にカットされるセラミックブロック体53が赤外線加熱装置31で加熱されているので、加熱待ちの時間が短縮され、設備の稼働率が向上する。
【0024】
[他の実施形態]
本発明は前記実施形態に限定するものではなく、その要旨の範囲内で種々に変更することができる。例えば、カットテーブル54でのセラミックブロック体53の加熱を省略してもよい。また、被カット部材のセラミックブロック体は、未焼成状態のものでもよいし、焼結状態のものでもよい。
【0025】
さらに、本発明は、セラミックグリーンシートを積層し圧着することによりセラミックブロック体53を形成するもののほか、セラミックスラリを塗布および乾燥後、その上に必要な導体パターンを形成する工程を繰り返してセラミックブロック体を形成するものにも適用することができる。
【0026】
また、セラミックブロック体は1枚のセラミック層により構成されていてもよいし、複数枚のセラミック層を積層して構成されたものであってもよい。セラミックブロック体には、種々の電子部品に応じた内部回路パターンが内蔵されている。
【0027】
【発明の効果】
以上の説明からも明らかなように、本発明によれば、セラミックブロック体は、カット刃によりカットされる前に予め予熱手段により予熱されているので、カットテーブルに搬送されてきたセラミックブロック体の温度が上昇しており、カット刃でカットする際にセラミックブロック体を少し加熱するだけで、セラミックブロック体はバインダのガラス転移点温度以上になり、セラミックブロック体のカットの際に必要とされるセラミックブロック体の加熱待ちの時間が短縮され、設備の稼働率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るセラミックブロック体のカット装置の第1実施形態を示す概略構成図。
【図2】本発明に係るセラミックブロック体のカット装置の第2実施形態を示す概略構成図。
【図3】本発明に係るセラミックブロック体のカット装置の第3実施形態を示す概略構成図。
【図4】従来のセラミックブロック体のカット装置を示す概略構成図。
【符号の説明】
10,20,30…カット装置
11…予熱テーブル
12…予熱ヒータ
21…雰囲気加熱装置
31…赤外線加熱装置
53…セラミックブロック体
54…カットテーブル
55…カット刃
56…加熱ヒータ
Claims (8)
- セラミックブロック体をカットテーブル上に搬送し、前記セラミックブロック体を加熱しつつカット刃でカットするセラミックブロック体のカット装置において、
カットテーブル上に搬送される前記セラミックブロック体を、該セラミックブロック体に含まれるバインダのガラス転移点温度より低い温度に予熱する予熱手段を備え、
前記カットテーブル上での前記セラミックブロック体の加熱温度は、前記予熱手段での加熱温度以上であって、かつ、該セラミックブロック体に含まれるバインダのガラス転移点温度以上であることを特徴とするセラミックブロック体のカット装置。 - 前記予熱手段がセラミックブロック体を載置する予熱テーブルと該予熱テーブルに配置された予熱ヒータとを備えていることを特徴とする請求項1に記載のセラミックブロック体のカット装置。
- 前記予熱手段がセラミックブロック体の周囲の雰囲気を加熱する雰囲気加熱装置であることを特徴とする請求項1に記載のセラミックブロック体のカット装置。
- 前記予熱手段がセラミックブロック体を加熱する赤外線加熱装置であることを特徴とする請求項1に記載のセラミックブロック体のカット装置。
- 前記予熱手段での前記セラミックブロック体の加熱温度は、該セラミックブロック体に含まれるバインダのガラス転移点温度付近であることを特徴とする請求項1に記載のセラミックブロック体のカット装置。
- セラミックブロック体をカットテーブル上に搬送し、前記セラミックブロック体を加熱しつつカット刃によりカットするカット方法において、
前記セラミックブロック体がカットテーブル上に搬送される前に、該セラミックブロック体に含まれるバインダのガラス転移点温度より低い温度に該セラミックブロック体を予熱し、
前記カットテーブル上での前記セラミックブロック体の加熱温度は、前記予熱での加熱温度以上であって、かつ、該セラミックブロック体に含まれるバインダのガラス転移点温度以上であることを特徴とするセラミックブロック体のカット方法。 - 予熱温度と加熱温度の温度差が20℃以下であることを特徴とする請求項6に記載のセラミックブロック体のカット方法。
- 前記予熱での前記セラミックブロック体の加熱温度は、該セラミックブロック体に含まれるバインダのガラス転移点温度付近であることを特徴とする請求項6に記載のセラミックブロック体のカット方法。
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