JP4028635B2 - 窒化物半導体発光素子 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は発光ダイオード素子、レーザダイオード素子等の発光素子、太陽電池、光センサ等の受光素子、あるいはトランジスタ、パワーデバイス等の電子デバイスに用いられる窒化物半導体(InXAlYGa1-X-YN、0≦X、0≦Y、X+Y≦1)よりなる素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
窒化物半導体は短波長レーザ素子の材料として知られており、本出願人はこの材料を用いてパルス電流下、室温での410nmのレーザ発振を世界で初めて発表した{例えば、Jpn.J.Appl.Phys.35(1996)L74、Jpn.J.Appl.Phys.35(1996)L217等}。このレーザ素子は、InGaNを用いた多重量子井戸構造(MQW:Multi-Quantum- Well)の活性層を有するダブルへテロ構造を有し、パルス幅2μs、パルス周期2msの条件で、閾値電流610mA、閾値電流密度8.7kA/cm2、410nmの発振を示す。さらに本出願人は研究を進歩させ、室温での連続発振にも初めて成功し、発表した。{例えば、日経エレクトロニクス 1996年12月2日号 技術速報、Appl.Phys.Lett.69(1996)3034-、Appl.Phys.Lett.69(1996)4056- 等}、このレーザ素子は20℃において、閾値電流密度3.6kA/cm2、閾値電圧5.5V、1.5mW出力において、27時間の連続発振を示す。
【0003】
前記レーザ素子は全て窒化物半導体の成長基板にはサファイアが用いられている。サファイアは窒化物半導体と格子整合する材料ではないが、基板の量産性に優れ、比較的結晶性の良い窒化物半導体が成長できるために多用されている。レーザ素子の基本構造としては、サファイア基板上にGaNよりなるコンタクト層(電極形成層)、AlGaNよりなるn側クラッド層、GaNよりなるn側ガイド層、InGaNを含むMQW活性層、GaNよりなるp側光ガイド層、AlGaNよりなるp側クラッド層、GaNよりなるp側コンタクト層が順に積層された分離閉じ込め(SCH)構造を有している。前記レーザ素子の場合、屈折率が大きい活性層を屈折率の小さいAlGaNよりなるクラッド層で挟んでいるが、基板とn側クラッド層との間に、屈折率が活性層よりは小さいが、基板及びn側クラッド層よりも大きいGaN層をコンタクト層として有している。従ってAlGaNよりなるクラッド層で閉じ込めきれなかった光は、サファイア基板の屈折率がGaNコンタクト層の屈折率より小さいため、GaNコンタクト層で導波される。そのため窒化物半導体層端面から出射されるレーザ光のファーフィールドパターン(FFP)は、ヘテロ接合界面に垂直な方向(y軸)に対して正規分布した形状とならずに、複数のビームがある形状となってしまう。このような複数のビームがあるレーザ光は光ディスクのピックアップに用いる光源としては使用しにくい。
【0004】
一方、活性層の発光の閉じ込め率を高くしようとすれば、クラッド層の屈折率をさらに小さくして、厚膜で成長させる必要がある。しかしながら従来の窒化物半導体は、サファイアのような格子定数、及び熱膨張係数が異なる基板の上に成長されているため、結晶欠陥が非常に多く、例えば断面TEMで観察すると1×109個/cm2以上ある。結晶欠陥の多い窒化物半導体層が積層されたレーザ素子では連続発振させた場合に、その結晶欠陥で電子とホールが非輻射再結合して発熱して寿命を短くする。特にクラッド層となるようなAlを含む窒化物半導体は結晶成長中に、結晶欠陥、及びクラックが発生しやすい傾向にある。従来のレーザ素子ではAlGaNクラッド層を例えば0.5μm以下の膜厚で成長させているが、このクラッド層でも結晶欠陥が非常に多く、またクラックも発生している可能性がある。またクラッド層の屈折率を小さくするためAl混晶比を上げようとすると、さらにクラックが多くなる傾向にある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明はこのような事情を鑑みて成されたものであって、その目的とするところは、厚膜のAlを含む窒化物半導体、またはAl混晶比の高い窒化物半導体を成長可能として、その窒化物半導体をクラッド層、コンタクト層として有する窒化物半導体素子を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、窒化物半導体の縦横方向成長による下地層であって、該下地層は結晶欠陥が1×107個/cm2以下であり、前記下地層の上に、Inを含む窒化物半導体よりなる井戸層を有する量子井戸構造の活性層を有し、該活性層と前記下地層との間に、Alを含む窒化物半導体を有する第1の窒化物半導体層が成長されており、該第1の窒化物半導体層はAlを含む窒化物半導体よりなる第2の窒化物半導体層と、第2の窒化物半導体層と異なる組成を有する窒化物半導体よりなる第3の窒化物半導体層とが積層された超格子構造よりなり、前記縦横方向成長は、窒化物半導体を成長させた後、さらに、窒化物半導体を選択的に横方向に成長させるものである、ことを特徴とする窒化物半導体発光素子である。
【0007】
本発明の窒化物半導体発光素子は、前記活性層の上にp側クラッド層を有し、該p側クラッド層がAlを含む窒化物半導体からなり、該p側クラッド層はAlを含む窒化物半導体よりなる第4の窒化物半導体層と、第4の窒化物半導体と異なる組成を有する窒化物半導体よりなる第5の窒化物半導体層とが積層された超格子構造よりなる窒化物半導体発光素子である。
【0008】
本発明の窒化物半導体発光素子は、前記第1の窒化物半導体の超格子構造を構成する第2の窒化物半導体層と第3の窒化物半導体層、及び/又は、前記p側クラッド層の超格子構造を構成する第4の窒化物半導体層と第5の窒化物半導体層は不純物濃度が異なる窒化物半導体発光素子である。
【0009】
本発明の窒化物半導体発光素子は、前記第1の窒化物半導体の超格子構造を構成する一方の層、及び/又は、前記p側クラッド層の超格子構造を構成する一方の層はアンドープである窒化物半導体発光素子である。
【0010】
本発明の窒化物半導体発光素子は、前記第1の窒化物半導体の超格子構造を構成する互いの層、及び/又は、前記p側クラッド層の超格子構造を構成する互いの層はバンドギャップエネルギーが異なることが好ましい。前記第2の窒化物半導体層、及び/又は、前記第4の窒化物半導体層はAlyGa1−yN(0<y≦1)よりなることが好ましい。前記第3の窒化物半導体層、及び/又は、前記第5の窒化物半導体層はInzGa1−zN(0≦z≦1)よりなることが好ましい。前記下地層は異種基板上に形成されたものであって、前記異種基板と前記第1の窒化物半導体層との間にAlxGa1−xN(0≦x≦0.5)よりなるバッファ層を有することが好ましい。裏面側にはn電極を有することが好ましい。
【0011】
【発明の実施の形態】
結晶欠陥が1×107個/cm2以下の窒化物半導体を含む下地層とは、例えば結晶欠陥の少ない窒化物半導体基板であっても良いし、また窒化物半導体と異なる材料よりなる基板(以下、異種基板という。)上に成長された結晶欠陥の少ない窒化物半導体層であってもよい。その下地層は例えば以下に述べる方法によって作製することができる。
【0012】
それは異種基板上に窒化物半導体を成長後、若しくは成長前に、その窒化物半導体層表面、若しくは異種基板の表面に、窒化物半導体が成長しにくい性質を有する保護膜を部分的に形成し、その保護膜によって異種基板と窒化物半導体との格子定数不整、熱膨張係数差等の要因によって発生する窒化物半導体の結晶欠陥を止める手法である。保護膜形成後、その保護膜及び窓部(保護膜が形成されていない部分)の上に再度窒化物半導体を成長させることにより、窓部から横方向に窒化物半導体の成長を促進させて、保護膜上部にまで窒化物半導体を成長させる。その保護膜上部に成長した窒化物半導体は、結晶欠陥が少ない窒化物半導体下地層となる。下地層の組成はAlを0.3以下で含むAlXGa1-XN、好ましくはGaNとすることが最も望ましい。またこのGaN下地層にSi、Ge、S等のn型不純物をドープして導電性を制御しても良い。n型不純物をドープするとGaN下地層がn電極形成層として好ましく使用できる。GaN下地層の結晶欠陥は好ましくは5×106個/cm2以下、さらに好ましくは1×106個/cm2以下、最も好ましくは5×105個/cm2であることが望ましい。なお下地層中の結晶欠陥は、断面TEMによる観察により写真撮影して計測できる数値を示している。
【0013】
図1乃至図4はGaN下地層を作製する際の、窒化物半導体ウェーハの構造を示す模式的な断面図である。これらの図において、1は異種基板、2は窒化物半導体よりなるバッファ層、3は第1の下地層、3’は第2の下地層、11は第1の保護膜、12は第2の保護膜を示しており、本発明の素子の下地層となるのは第1の下地層3、若しくは第2の下地層3’である。これらの図を元にしてGaNよりなる下地層の製法の一例を説明する。
【0014】
図1に示すように、異種基板1の表面に、GaNよりなるバッファ層2を例えば10μm以下の膜厚で成長させる。このバッファ層は基板に直接、あるいは低温成長バッファ層を介して、900℃以上の高温で成長される層であり、結晶欠陥が全ての断面において、例えば1×109個/cm2以上あるため、GaN下地層とはなり得ない。異種基板1は窒化物半導体と異なる材料よりなる基板であればどのようなものでも良く、例えば、C面の他、R面、A面を主面とするサファイア、スピネル(MgA12O4)のような絶縁性基板、SiC(6H、4H、3Cを含む)、ZnS、ZnO、GaAs、Si等の従来知られている窒化物半導体と異なる基板材料を用いることができる。またバッファ層2を成長させる前に、GaN、AlN、AlGaN等の900℃以下で成長させる低温成長バッファ層を異種基板1に接して、0.5μm以下の膜厚で成長させることが望ましい。
【0015】
次に図1に示すように、バッファ層2の上に窒化物半導体が直接成長しないか、若しくは成長しにくい性質を有する第1の保護膜11を所定の形状で部分的に形成する。保護膜の形状としてはストライプ状、ドット状、碁盤目状等どのような形状でも良いが、バッファ層の露出部分、即ち保護膜が形成されていない部分(窓部)よりも保護膜の面積を大きくする方が、より結晶欠陥の少ない第1の下地層3が成長しやすい。第1の保護膜11、第2の保護膜12の材料としては、例えば酸化ケイ素(SiOX)、窒化ケイ素(SiXNY)、酸化チタン(TiOX)、酸化ジルコニウム(ZrOX)等の酸化物、窒化物、またこれらの多層膜の他、1200℃以上の融点を有する金属等を用いることができる。これらの保護膜材料は、窒化物半導体の成長温度600℃〜1100℃の温度にも耐え、その表面に窒化物半導体が成長しないか、成長しにくい性質を有している。保護膜材料を窒化物半導体表面に形成するには、例えば蒸着、スパッタ、CVD等の気相製膜技術を用いることができる。部分的(選択的)に形成するためには、フォトリソグラフィー技術を用いて、所定の形状を有するフォトマスクを作製し、そのフォトマスクを介して、前記材料を気相製膜することにより、所定の形状を有する第1の保護膜11、第2の保護膜12を形成できる。図1ではバッファ層2の上に例えばストライプ状の保護膜を形成し、そのストライプに対して垂直な方向でウェーハを切断した際の部分的な断面図を示しており、結晶欠陥をバッファ層2内部に示す細線でもって模式的に示している。この図に示すように、バッファ層2にはほぼ均一に無数の結晶欠陥が発生するので、この層を本発明の素子のGaN下地層とすることは不可能である。
【0016】
次に第1の保護膜11を形成したウェーハの上に第1の下地層3を成長させる。図2に示すように、第1の保護膜11を形成したバッファ層2の上に、第1の下地層3を成長させると、最初は第1の保護膜11の上にはGaN層が成長せず、窓部のバッファ層2の上に第1の下地層3が選択成長される。図2は、窓部に多くGaNが成長して、第1の保護膜11の上にほとんど成長されないことを示している。
【0017】
さらに第1の下地層3の成長を続けると、第1の下地層3が第1の保護膜11の上に覆いかぶさって行き、隣接した第1の下地層3同士でつながって、図3に示すように、あたかも第1の保護膜11の上に第1の下地層3が成長したかのような状態となる。つまり、第1の下地層3を保護膜を介して横方向に成長させる。ここで重要なことは、基板の上に成長されているバッファ層2の結晶欠陥と、第1の保護膜11の上に成長されている第1の下地層3との結晶欠陥の数である。図3において、基板から第1の窒化物半導体層の表面に渡って示している複数の細線は図1、2と同じく結晶欠陥を模式的に示している。つまり、異種基板と窒化物半導体との格子定数のミスマッチにより、異種基板の上に成長される窒化物半導体には非常に多くの結晶欠陥が発生し、この結晶欠陥は窒化物半導体成長中、表面まで伝わる。一方、第1の保護膜11上に形成された第1の下地層3は基板から成長したものではなく、隣接する第1の下地層3が成長中に横方向につながったものであるため、結晶欠陥の数は基板から成長したものに比べて非常に少なくなる。従って、この第1の下地層3をAlを含む第1の窒化物半導体成長時の下地層に用いることにより、結晶欠陥、クラック等が発生しないため、Alを含む窒化物半導体が厚膜で成長できる。下地層の格子欠陥の数は保護膜11の面積を調整することによって調整可能である。
【0018】
図4はさらに好ましいGaN下地層の製法を示したものであり、第1の下地層3成長後、第1の保護膜11の窓部に対応する第1の下地層3の表面近傍に第2の保護膜12を形成することにより、基板と窒化物半導体層との界面から発生した格子欠陥が表面に現れている第1の下地層3の結晶欠陥を、更には、第1の下地層3の成長初期に窓部から転位し成長の途中で転位を中断した結晶欠陥の再転位を第2の保護膜12で止めることができる。第1の下地層3の成長初期に窓部から転位する結晶欠陥は、第1の下地層3の成長の途中で激減する傾向があり、この転位を中断した結晶欠陥が、素子を動作中に再転位する恐れが考えられるので、第2の保護膜を窓部上部に形成することが好ましい。なお、図4では図3で成長させた第1の下地層3表面の凹凸を少なくするため、研磨してフラットな面としているが、特に研磨せず、そのまま第1の下地層3の表面に第2の保護膜12を形成しても良い。好ましくは第2の保護膜12の面積を第1の保護膜11の窓の面積よりも大きくする。具体的には、保護膜の形状をドット、ストライプ等で形成した場合には、単位ドットの表面積、単位ストライプ幅を窓よりも大きくする。なぜなら、結晶欠陥は必ずしも基板から垂直に転移するのではなく、斜めに入ったり、途中で折れ曲がって転移する場合が多い。そのため第1の保護膜11の直上部にある第1の下地層3に結晶欠陥が侵入してくる可能性があるため、図4に示すように、第2の保護膜12の表面積を窓部よりも大きくすることが望ましい。以上のようにして第1の下地層3の上に形成された第2の保護膜12を介して第2の下地層を成長させると、第1の下地層3よりもさらに結晶欠陥の少ないGaN結晶が得られ、GaN下地層として十分に使用できる。このように結晶欠陥の数は、保護膜の面積、保護膜の形成回数によって制御可能である。但し、以上述べたGaN下地層の製法は単なる一例を示すものであって、本発明の素子のGaN下地層が以上の製法により拘束されるものではない。
【0019】
更に、下地層のその他の作成方法として以下の方法が挙げられる。
窒化物半導体と異なる材料よりなる異種基板の上に、窒化物半導体を成長させた後、該窒化物半導体の縦方向の成長を抑え、窒化物半導体を横方向のみに成長させ、続いて、縦と横方向に成長させる窒化物半導体の成長方法である。
上記成長方法は、異種基板の表面で発生する結晶欠陥が窒化物半導体を厚く成長させても窒化物半導体の表面まで連続して転位することを防止するために、窒化物半導体を成長させた後、窒化物半導体の縦方向の成長を抑え、横方向にのみ成長させ、続いて縦と横方向に成長させることで、結晶欠陥が非常に少ない結晶性の良好な窒化物半導体を得ることができる。
本発明において、窒化物半導体の縦方向の成長を抑えるとは、少なくとも窒化物半導体の成長が縦に進行しないようにすればよく、また横方向に成長させるとは、少なくとも成長させた窒化物半導体の端面を露出させて、この端面のみから成長させるようにすればよい。このように成長方向をコントロールされた窒化物半導体は、縦方向から横方向に成長を始め、成長を続けていくと横の成長に加えて再び縦方向にも成長をはじめる。
【0020】
このように窒化物半導体の成長方向をコントロールして行う窒化物半導体の成長方法の具体的な方法の一実施の形態としては、図8及び図9に示すように、窒化物半導体と異なる材料よりなる異種基板の上に第11の窒化物半導体を成長させ、その後、前記第11の窒化物半導体に部分的に段差を形成して第11の窒化物半導体の端面を露出させ、段差上面にある第11の窒化物半導体の平面及び段差の異種基板に対して水平な面に保護膜を形成し、更にその後、前記第11の窒化物半導体の端面から第12の窒化物半導体を成長させる窒化物半導体の成長方法である。
【0021】
つまり、成長させた第11の窒化物半導体の縦方向の成長を抑制するために、第11の窒化物半導体が縦の方向に成長可能な平面(例えば窒化物半導体の平面や異種基板面)に保護膜を形成し、また、第11の窒化物半導体に段差を形成して横方向への成長を可能とする第11の窒化物半導体の端面を形成し、このように窒化物半導体の成長方向を制御した後、第11の窒化物半導体の端面に第12の窒化物半導体を成長させる。このように窒化物半導体を成長させると、異種基板の表面に発生する結晶欠陥が窒化物半導体に転位するのを防止でき、結晶欠陥の非常に少ない結晶性の良好な窒化物半導体を得ることができる。
【0022】
上記の成長方向をコントロールして窒化物半導体を成長させる方法は、第11の窒化物半導体に部分的に設けた段差の上面にある第11の窒化物半導体の平面及び段差の底面(異種基板に水平な面)に保護膜を設けることで、異種基板の表面に発生する結晶欠陥が連続的に転位するのを防止する。更に、このように保護膜を形成すると、窒化物半導体が保護膜上に成長しにくいことから、第12の窒化物半導体の成長が選択的に第11の窒化物半導体の端面から横方向に成長をはじめる。ここで、異種基板の表面に発生する結晶欠陥は、窒化物半導体が横方向に成長する過程では、縦方向に成長する場合に比べて、転位が極めて少なくなる。更に横方向に転位した結晶欠陥は、窒化物半導体が横から縦方向へも成長し始める際にほとんど転位が起こらないと推定される。その結果、結晶欠陥のほとんどない、結晶性の非常に良好な第2の窒化物半導体を厚膜で得ることができる。ここで、窒化物半導体は保護膜上に成長しにくいが、第12の窒化物半導体が横方向と縦方向の成長を続けることで、あたかも保護膜の上に成長しているかのように保護膜を覆って成長する。
【0023】
更に窒化物半導体の成長方向をコントロールして窒化物半導体を成長させる方法について、図8及び図9を用いて更に詳細に説明する。
図8及び図9は、成長方向をコントロールして窒化物半導体を成長させる方法の一実施の形態の概略を示した模式的断面図である。
【0024】
まず、図8のように、異種基板81上に第11の窒化物半導体82を成長させ、第11の窒化物半導体82の端面を露出させるために第11の窒化物半導体82に部分的に段差を形成し、第11の窒化物半導体82の成長の方向をコントロールするために段差の上面にある第11の窒化物半導体82の平面及び段差の異種基板81に水平な面に保護膜83及び保護膜84を形成し、続いて、成長の方向が制御された第11の窒化物半導体82、つまり第11の窒化物半導体82の端面から第12の窒化物半導体85を成長させ、図9のように厚膜の第12の窒化物半導体85を得ることができる。
異種基板81上に第11の窒化物半導体82を成長させる前に、異種基板81上にバッファ層(図示されていない)を形成してもよい。
【0025】
上記成長方法において、部分的に段差を形成するとは、少なくとも第11の窒化物半導体82の端面が露出されるように、第11の窒化物半導体82の表面から異種基板81方向に窪みを形成してあればよく、第11の窒化物半導体82にいずれの形状で段差を設けてもよく、例えば、ランダムな窪み、ストライプ状、碁盤面状、ドット状に形成できる。
第11の窒化物半導体82に部分的に設けられた段差は、第11の窒化物半導体82の途中まで、又は異種基板81に達する深さで形成され、この段差の深さは、第11の窒化物半導体82の膜厚や、保護膜84の膜厚等にも左右される値であり、第11の窒化物半導体82の端面から横方向に成長する第12の窒化物半導体85が成長し易いように端面が形成されるように段差が形成されることが好ましい。段差の深さは、第11の窒化物半導体82が残る程度の深さが好ましい。仮に、段差を形成する際に異種基板81が露出されていると、保護膜84の形成時に第11の窒化物半導体82の端面付近に保護膜84が形成しにくいと考えられることから、保護膜84が十分に異種基板81の表面を覆ってない場合には、異種基板81の表面に第12の窒化物半導体85が成長し、そこから結晶欠陥が発生する可能性があるからである。
段差の具体的な深さは、特に限定せず通常500オングストローム〜5μm程度であれば十分である。
【0026】
段差を形成する方法としては、第11の窒化物半導体82を一部分取り除くことができる方法であればいずれの方法でもよく、例えばエッチング、ダイシング等が挙げられる。また、エッチングによって段差を形成する場合、エッチング面が、図8に示すように異種基板に対して端面がほぼ垂直となる形状、又は順メサ形状や逆メサ形状でもよく、あるいは第11の窒化物半導体82の端面が階段状になるように形成された形状等がある。
【0027】
第11の窒化物半導体82が縦方向に成長するのを制御するために、例えば段差の上面にある第11の窒化物半導体82の平面に保護膜83を、段差の下面の異種基板81に対してほぼ水平な面に保護膜84を、保護膜としてそれぞれ形成する。段差の形状が階段状である場合は、階段の各段の異種基板にほぼ水平な面に保護膜84をそれぞれ形成する。
【0028】
保護膜83及び保護膜84の膜厚は、特に限定せず、ドライエッチングにより端面を露出させられる膜厚であり、且つ底面を被覆できる膜厚にする必要がある。また、保護膜83と保護膜84の膜厚は、第12の窒化物半導体85が横方向に成長し易いように調整されていることが好ましく、場合によってはそれぞれの膜厚が異なってもよい。
例えば、保護膜83は、薄く形成された方が、第11の窒化物半導体の端面から横方向に成長させる第12の窒化物半導体85が保護膜83と同程度の膜厚となった時、隣接している第12の窒化物半導体85同士が接合し易くなると考えられる。また保護膜84は、比較的厚く(但し、第11の窒化物半導体82の端面が第12の窒化物半導体85が成長される程度に十分露出されている範囲)形成された方が、第12の窒化物半導体85の成長初期において、段差の下面(第11の窒化物半導体82の平面又は異種基板81面)を十分に覆うことができると共に熱による保護膜84へのピンホールの発生を防止できると考えられる。ピンホールが保護膜に発生すると、ピンホールから第12の窒化物半導体85が縦方向に成長する恐れがあり、結晶欠陥の発生の原因となると考えられる。
また、第11の窒化物半導体82の縦方向の成長を防止する一実施の形態として、保護膜を形成して行うことを挙げたが、これに限定されない。また、横方向から第12の窒化物半導体85を成長させる一実施の形態として第11の窒化物半導体82に窪みを形成して端面を設けることを挙げたが、これに限定されない。
【0029】
上記のように保護膜83及び保護膜84を形成したことにより、第12の窒化物半導体85が成長可能な部分を、第11の窒化物半導体82の端面のみとし、第11の窒化物半導体82の端面から第12の窒化物半導体85が選択的に横方向に成長し始める。そして、成長を続けるうちに、第12の窒化物半導体85が横方向に加え縦方向にも成長をはじめ、窒化物半導体が成長しにくい保護膜上にあたかも成長したかのように、第12の窒化物半導体85は保護膜83及び保護膜84を覆い成長を続ける。このように成長初期に成長方向を特定された第12の窒化物半導体85は、厚膜に成長させても、結晶欠陥のない非常に良好な結晶性を有する。
【0030】
第12の窒化物半導体85は、成長の初期においては、保護膜の形成されていない第11の窒化物半導体82の端面に選択的に成長し、向き合っている第11の窒化物半導体82の端面から横方向に成長した第12の窒化物半導体85が保護膜84の上面を覆い、次第に横方向から縦方向に成長し始め保護膜83と同程度の膜厚に成長すると、第12の窒化物半導体85が保護膜83の上部に向かって横方向に成長し、そして隣接している第12の窒化物半導体85同士でつながる。その結果、図9に示すように、第12の窒化物半導体85があたかも保護膜83、84上に成長したかのような状態となる。
【0031】
本発明の窒化物半導体素子では、格子欠陥が1×107個/cm2以下の下地層の上にAlを含む第1の窒化物半導体層が成長される。第1の窒化物半導体層は下地層に接して成長されていても良いし、また下地層と第1の窒化物半導体層との間に他の窒化物半導体層が成長されていても良い。第1の窒化物半導体層の膜厚は0.3μm以上、さらに好ましくは0.5μm以上、最も好ましくは1μm以上とする。0.3μmよりも薄いとレーザ素子の場合光閉じ込めが不十分となる傾向にある。また第1の窒化物半導体層はAlXGa1-XN(0<X≦1)を成長させることが望ましく、さらに好ましくはX値が0.1以上、さらに好ましくは0.2以上、最も好ましくは0.3以上のAlXGa1-XNを成長させる。
【0032】
さらに本発明の素子の場合、このAlを含む第1の窒化物半導体層の上にInを含む窒化物半導体よりなる井戸層を含む量子構造の活性層を有している。Inを含む井戸層を有する活性層が存在することにより、この層が第2のバッファ層のような作用を奏する。つまりレーザ素子の場合、連続発振中に第1の窒化物半導体層中に存在する結晶欠陥が素子全体、特に活性層に広がって素子の寿命を短くするのを防止する作用がある。井戸層の膜厚は70オングストローム以下、さらに好ましくは50オングストローム以下に調整する。多重量子井戸構造の場合、障壁層は井戸層よりもバンドギャップエネルギーが大きい窒化物半導体で形成し、特にInを含んでいなくても良く、膜厚は200オングストローム以下、さらに好ましくは150オングストローム以下、最も好ましくは100オングストローム以下に調整する。
【0033】
さらに好ましい態様として、本発明の素子では第1の窒化物半導体層がAlを含む第2の窒化物半導体と、その第2の窒化物半導体と異なる組成を有する第3の窒化物半導体とが積層されてなる超格子構造よりなる。なお第3の窒化物半導体はAlを含んでいなくても良い。超格子層の第2の窒化物半導体層、及び第3の窒化物半導体層の膜厚は100オングストローム以下、さらに好ましくは70オングストローム以下、最も好ましくは50オングストローム以下の膜厚に調整する。多重量子井戸構造の活性層の場合、井戸層と障壁層のバンドギャップエネルギーは必ず障壁層を大きくする必要があるが、第1の窒化物半導体層が超格子構造である場合、第2の窒化物半導体と第3の窒化物半導体層とのバンドギャップエネルギーは同じでも良い。
【0034】
さらに、超格子を構成する第2の窒化物半導体と第3の窒化物半導体層とにn型不純物を変調ドープする方が、レーザ素子のVf、及び閾値が低下しやすい傾向にある。変調ドープとは第2の窒化物半導体層と第3の窒化物半導体層とのn型不純物濃度を異ならせることである。変調ドープの場合、一方の層はアンドープ(undope)でも良い。
n型不純物濃度は5×1016/cm3〜1×1021/cm3の範囲、さらに好ましくは、1×1017/cm3〜1×1019/cm3に調整することが望ましい。n側クラッド層5全体の膜厚は100オングストローム以上、2μm以下、さらに好ましくは500オングストローム以上、1μm以下で成長させることが望ましい。
【0035】
第1の窒化物半導体を超格子構造とする場合、超格子層を構成する窒化物半導体層は互いに組成が異なる窒化物半導体で構成されていれば良く、バンドギャップエネルギーが異なっていても、同一でもかまわない。例えば超格子層を構成する最初の層(第2の窒化物半導体層)をInXGa1-XN(0≦X≦1)で構成し、次の層(第3の窒化物半導体層)をAlYGa1-YN(0<Y≦1)で構成すると、第3の窒化物半導体層のバンドギャップエネルギーが必ず第2の窒化物半導体層よりも大きくなるが、第2の窒化物半導体層をInXGa1-XN(0≦X≦1)で構成し、第3の窒化物半導体層をInZAl1-ZN(0<Z≦1)で構成すれば、第2の窒化物半導体層と第3の窒化物半導体層とは組成が異なるが、バンドギャップエネルギーが同一の場合もあり得る。また第2の窒化物半導体層をAlYGa1-YN(0<Y≦1)で構成し、第3の窒化物半導体層をInZAl1-ZN(0<Z≦1)で構成すれば、同様に第2の窒化物半導体層と第3の窒化物半導体層とは組成が異なるがバンドギャップエネルギーが同一の場合もあり得る。超格子層はAlを含む窒化物半導体層を有していれば良く、組成が異なってバンドギャップエネルギーが同じ構成でも良い。超格子層を構成する各窒化物半導体層の膜厚は100オングストローム以下、さらに好ましくは70オングストローム以下、最も好ましくは10オングストローム以上、40オングストローム以下の範囲に調整する。100オングストロームよりも厚いと弾性歪み限界以上の膜厚となり、膜中に微少なクラック、あるいは結晶欠陥が入りやすい傾向にある。井戸層、障壁層の膜厚の下限は特に限定せず1原子層以上であればよいが10オングストローム以上に調整することが望ましい。このように、単一膜厚が100オングストローム以下、さらに好ましくは70オングストローム以下、最も好ましくは50オングストローム以下の互いに組成の異なる窒化物半導体層を積層成長させた超格子構造とすると、単一の窒化物半導体層の膜厚が弾性臨界膜厚以下となって、結晶性が非常に良くなり、容易に室温で連続発振する。
【0036】
さらに、超格子層を構成する第2の窒化物半導体層、第3の窒化物半導体層の窒化物半導体はバンドギャップエネルギーが異なるものを積層することが望ましく、超格子層を構成する窒化物半導体の平均バンドギャップエネルギーを活性層よりも大きくするように調整することが望ましい。好ましくは一方の層をInXGa1-XN(0≦X≦1)とし、もう一方の層をAlYGa1-YN(0<Y≦1)で構成することにより、結晶性のよい超格子層を形成することができる。また、AlGaNは結晶成長中にクラックが入りやすい性質を有している。そこで、超格子層を構成する第2の窒化物半導体層を膜厚100オングストローム以下のAlを含まない窒化物半導体層とすると、Alを含む窒化物半導体よりなるもう一方の第3の窒化物半導体層を成長させる際のバッファ層として作用し、第3の窒化物半導体層にクラックが入りにくくなる。そのため超格子層を積層してもクラックのない超格子を形成できるので、結晶性が良くなり、素子の寿命が向上する。これもまた一方の層をInXGa1-XN(0≦X≦1)とし、もう一方の層をAlYGa1-YN(0<Y≦1)、とした場合の利点である。
【0037】
さらに超格子を構成する窒化物半導体に不純物をドープする場合、n型不純物は第2の窒化物半導体層、第3の窒化物半導体層両方の層にドープすることは言うまでもないが、好ましくバンドギャップエネルギーの大きな方の層に多くドープするか、またはバンドギャップエネルギーの小さな方をアンドープとして、バンドギャップエネルギーの大きな方にn型不純物をドープする方が、閾値電圧、閾値電流が低下しやすい傾向にある。
【0038】
さらに、この第2の窒化物半導体層と第3の窒化物半導体層とのn型不純物濃度が異なる。これはいわゆる変調ドープと呼ばれるもので、一方の層のn型不純物濃度を小さく、好ましくは不純物をドープしない状態(アンドープ)として、もう一方を高濃度にドープすると、閾値電圧、Vf等を低下させることができる。これは不純物濃度の低い層を超格子層中に存在させることにより、その層の移動度が大きくなり、また不純物濃度が高濃度の層も同時に存在することにより、キャリア濃度が高いままで超格子層が形成できることによる。つまり、不純物濃度が低い移動度の高い層と、不純物濃度が高いキャリア濃度が大きい層とが同時に存在することにより、キャリア濃度が大きく、移動度も大きい層となるために、閾値電圧、Vfが低下すると推察される。
【0039】
バンドギャップエネルギーの大きな窒化物半導体層に高濃度に不純物をドープした場合、この変調ドープにより高不純物濃度層と、低不純物濃度層との間に二次元電子ガスができ、この二次元電子ガスの影響により抵抗率が低下すると推察される。例えば、n型不純物がドープされたバンドギャップの大きい窒化物半導体層と、バンドギャップが小さいアンドープの窒化物半導体層とを積層した超格子層では、n型不純物を添加した層と、アンドープの層とのヘテロ接合界面で、障壁層側が空乏化し、バンドギャップの小さい層側の厚さ前後の界面に電子(二次元電子ガス)が蓄積する。この二次元電子ガスがバンドギャップの小さい側にできるので、電子が走行するときに不純物による散乱を受けないため、超格子の電子の移動度が高くなり、抵抗率が低下する。なおp側の変調ドープも同様に二次元正孔ガスの影響によると推察される。またp層の場合、AlGaNはGaNに比較して抵抗率が高い。そこでAlGaNの方にp型不純物を多くドープすることにより抵抗率が低下するために、超格子層の実質的な抵抗率が低下するので素子を作製した場合に、閾値が低下する傾向にあると推察される。
【0040】
一方、バンドギャップエネルギーの小さな窒化物半導体層に高濃度に不純物をドープした場合、以下のような作用があると推察される。例えばAlGaN層とGaN層にMgを同量でドープした場合、AlGaN層ではMgのアクセプター準位の深さが大きく、活性化率が小さい。一方、GaN層のアクセプター準位の深さはAlGaN層に比べて浅く、Mgの活性化率は高い。例えばMgを1×1020/cm3ドープしてもGaNでは1×1018/cm3程度のキャリア濃度であるのに対し、AlGaNでは1×1017/cm3程度のキャリア濃度しか得られない。そこで、本発明ではAlGaN/GaNとで超格子とし、高キャリア濃度が得られるGaN層の方に多く不純物をドープすることにより、高キャリア濃度の超格子が得られるものである。しかも超格子としているため、トンネル効果でキャリアは不純物濃度の少ないAlGaN層を移動するため、実質的にキャリアはAlGaN層の作用は受けず、AlGaN層はバンドギャップエネルギーの高いクラッド層として作用する。従って、バンドギャップエネルギーの小さな方の窒化物半導体層に不純物を多くドープしても、レーザ素子、LED素子の閾値を低下させる上で非常に効果的である。なおこの説明はp型層側に超格子を形成する例について説明したが、n層側に超格子を形成する場合においても、同様の効果がある。
【0041】
バンドギャップエネルギーが大きい窒化物半導体層にn型不純物を多くドープする場合、バンドギャップエネルギーが大きい窒化物半導体層への好ましいドープ量としては、1×1017/cm3〜1×1021/cm3、さらに好ましくは1×1018/cm3〜5×1019/cm3の範囲に調整する。1×1017/cm3よりも少ないと、バンドギャップエネルギーの小さい窒化物半導体層との差が少なくなって、キャリア濃度の大きい層が得られにくい傾向にあり、また1×1021/cm3よりも多いと、素子自体のリーク電流が多くなりやすい傾向にある。一方、バンドギャップエネルギーの小さい窒化物半導体層のn型不純物濃度はバンドギャップエネルギーの大きい窒化物半導体層よりも少なければ良く、好ましくは1/10以上少ない方が望ましい。最も好ましくはアンドープとすると最も移動度の高い層が得られるが、膜厚が薄いため、バンドギャップエネルギーの大きい窒化物半導体側から拡散してくるn型不純物があり、その量は1×1019/cm3以下が望ましい。n型不純物としてはSi、Ge、Se、S、O等の周期律表第IVB族、VIB族元素を選択し、好ましくはSi、Ge、Sをn型不純物とする。この作用は、バンドギャップエネルギーが大きい窒化物半導体層にn型不純物を少なくドープして、バンドギャップエネルギーが小さい窒化物半導体層にn型不純物を多くドープする場合も同様である。
以上、超格子層に不純物を好ましく変調ドープする場合について述べたが、バンドギャップエネルギーが大きい窒化物半導体層とバンドギャップエネルギーが小さい窒化物半導体層との不純物濃度を等しくすることもできる。
【0042】
具体的な素子構造として、本発明の素子では、前記井戸層を有する活性層の上に、Alを含む第4の窒化物半導体層と、第4の窒化物半導体層と異なる組成を有する第5の窒化物半導体層とが積層された超格子層の窒化物半導体層をp側クラッド層として有している。このp側クラッド層も第1の窒化物半導体層と同じく、GaN下地層をベース層として形成しているために、Alを含む第4の窒化物半導体層のAl混晶比を高くすることが可能である。特にp側クラッド層を超格子構造とすると、超格子構造でないものよりも抵抗率の低いp側クラッド層が得られ易くレーザ素子の閾値電圧、LED素子のVfも低下する傾向にある。第4の窒化物半導体層は少なくともAlを含む窒化物半導体、好ましくはAlXGa1-XN(0<X≦1)を成長させることが望ましく、第5の窒化物半導体は好ましくはAlYGa1-YN(0≦Y<1、X>Y)、InZGa1-ZN(0≦Z≦1)のような2元混晶、3元混晶の窒化物半導体を成長させることが望ましい。第4の窒化物半導体層、及び第5の窒化物半導体層の膜厚は100オングストローム以下、さらに好ましくは70オングストローム以下、最も好ましくは50オングストローム以下に調整する。
【0043】
p側クラッド層を超格子構造とすると、超格子構造が発光素子に与える作用は、n側層の超格子層の作用と同じであるが、さらにn層側に形成した場合に加えて次のような作用がある。即ち、p型窒化物半導体はn型窒化物半導体に比べて、通常抵抗率が2桁以上高い。そのため超格子層をp層側に形成することにより、Vfの低下が顕著に現れる。詳しく説明すると窒化物半導体はp型結晶が非常に得られにくい半導体であることが知られている。p型結晶を得るためp型不純物をドープした窒化物半導体層をアニーリングして、水素を除去する技術が知られている(特許第2540791号)。しかしp型が得られたといってもその抵抗率は数Ω・cm以上もある。そこで、このp型層を超格子層とすることにより結晶性が良くなり、抵抗率が1桁以上低下するためVfの低下が現れやすい。
【0044】
p側クラッド層の第4の窒化物半導体層と第5の窒化物半導体層とのp型不純物濃度が異なり、一方の層の不純物濃度を大きく、もう一方の層の不純物濃度を小さくする。n側層の超格子層と同様に、バンドギャップエネルギーの大きな第4の窒化物半導体層の方のp型不純物濃度を大きくして、バンドギャップエネルギーの小さな第5の窒化物半導体層の方のp型不純物濃度を小さく、好ましくはアンドープとすると、閾値電圧、Vf等を低下させることができる。またその逆でも良い。つまりバンドギャップエネルギーの大きな第4の窒化物半導体層のp型不純物濃度を小さくして、バンドギャップエネルギーの小さな第5の窒化物半導体層のp型不純物濃度を大きくしても良い。理由は先に述べたとおりである。
【0045】
第4の窒化物半導体層への好ましいドープ量としては1×1018/cm3〜1×1021/cm3、さらに好ましくは1×1019/cm3〜5×1020/cm3の範囲に調整する。1×1018/cm3よりも少ないと、同様に第5の窒化物半導体層との差が少なくなって、同様にキャリア濃度の大きい層が得られにくい傾向にあり、また1×1021/cm3よりも多いと、結晶性が悪くなる傾向にある。一方、第5の窒化物半導体層のp型不純物濃度は第4の窒化物半導体層よりも少なければ良く、好ましくは1/10以上少ない方が望ましい。最も好ましくはアンドープとすると最も移動度の高い層が得られるが、膜厚が薄いため、第4の窒化物半導体側から拡散してくるp型不純物があり、その量は1×1020/cm3以下が望ましい。p型不純物としてはMg、Zn、Ca、Be等の周期律表第IIA族、IIB族元素を選択し、好ましくはMg、Ca等をp型不純物とする。この作用は、バンドギャップエネルギーが大きい第4の窒化物半導体層にp型不純物を少なくドープして、バンドギャップエネルギーが小さい第5の窒化物半導体層にp型不純物を多くドープする場合も同様である。
【0046】
さらにまた超格子を構成する窒化物半導体層において、不純物が高濃度にドープされる層は、厚さ方向に対し、半導体層中心部近傍の不純物濃度が大きく、両端部近傍の不純物濃度が小さい(好ましくはアンドープ)とすることが望ましい。具体的に説明すると、例えばn型不純物としてSiをドープしたAlGaNと、アンドープのGaN層とで超格子層を形成した場合、AlGaNはSiをドープしているのでドナーとして電子を伝導帯に出すが、電子はポテンシャルの低いGaNの伝導帯に落ちる。GaN結晶中にはドナー不純物をドープしていないので、不純物によるキャリアの散乱を受けない。そのため電子は容易にGaN結晶中を動くことができ、実質的な電子の移動度が高くなる。これは前述した二次元電子ガスの効果と類似しており、電子横方向の実質的な移動度が高くなり、抵抗率が小さくなる。さらに、バンドギャップエネルギーの大きいAlGaNの中心領域にn型不純物を高濃度にドープすると効果はさらに大きくなる。即ちGaN中を移動する電子によっては、AlGaN中に含まれるn型不純物イオン(この場合Si)の散乱を多少とも受ける。しかしAlGaN層の厚さ方向に対して両端部をアンドープとするとSiの散乱を受けにくくなるので、さらにアンドープGaN層の移動度が向上するのである。作用は若干異なるが、p層側の第4の窒化物半導体層と第5の窒化物半導体層とで超格子を構成した場合も類似した効果があり、バンドギャップエネルギーの大きい第4の窒化物半導体層の中心領域に、p型不純物を多くドープし、両端部を少なくするか、あるいはアンドープとすることが望ましい。一方、バンドギャップエネルギーの小さな窒化物半導体層にn型不純物を多くドープした層を、前記不純物濃度の構成とすることもできる。超格子層は、少なくともp側層にあることが好ましく、p側層に超格子層があるとより閾値が低下し好ましい。
【0047】
従来の窒化物半導体レーザ素子では結晶欠陥が多く、Al混晶比の高いクラッド層を厚膜で成長させることが難しい傾向にあった。従ってクラッド層による光閉じ込めが不十分となって、基板とGaNコンタクト層との界面で反射されて、再度GaNコンタクト層で光が導波される。GaNコンタクト層で活性層の光が導波されると、観測されるレーザ光のファーフィールドパターンには、活性層導波路による分と、コンタクト層導波路による分、その他基板界面での乱反射分等というように、複数のビームができる。しかしながら本発明によると、Alクラッド層が厚膜で成長できるため、活性層の光閉じ込めが向上し、ファーフィールドパターンの形状を従来より向上させることができる。
【0048】
図5は本発明の一実施例に係るレーザ素子の構造を示す模式的な斜視図、図6は本発明の他の実施例に係るレーザ素子の構造を示す断面図、図7は本発明の他の実施例に係るレーザ素子の構造を示す断面図である。図5、図6に示すように異種基板1を素子構造として残す場合には、前にも述べたようにウェーハの反りの関係から、下地層3の膜厚は1μm以上、50μm以下に調整することが望ましい。p電極、n電極とは同一面側から取り出す構造とする場合、本発明の素子では、n電極は図5に示すように第1の窒化物半導体層5の表面に形成する場合と、図6に示すように下地層3の表面に形成する場合とがある。図5のように第1の窒化物半導体層の表面に形成する場合には、第1の窒化物半導体はキャリアを閉じ込めるクラッド層及び電流を注入するためのコンタクト層として作用するので、下地層3の窒化物半導体はアンドープでも良い。一方、図6に示すように下地層3の表面にn電極を形成する場合には、下地層の窒化物半導体がコンタクト層として作用するため、下地層にはn型不純物をドープする方が好ましい。この場合、第1の窒化物半導体層はクラッド層としてのみ作用する。このように異種基板を素子自体に残す場合は、活性層の発光は下地層3中で多少導波されるが、クラッド層の光閉じ込め率が向上しているため、閾値が低下する。
【0049】
一方、図7のように異種基板を除去した構造の場合、異種基板を除去するために下地層3の膜厚は80μm以上あることが望ましい。この場合n電極は第1の窒化物半導体層が形成されてない側の下地層面、つまり下地層の裏面側に形成することができ、下地層にはn型不純物がドープされていることが望ましい。下地層のキャリア濃度、あるいは不純物濃度としては5×1016/cm3〜1×1019/cm3に調整する方が、シリーズ抵抗を下げる上で非常に好ましい。このように下地層を直接基板とする場合には、活性層から出るレーザ光のファーフィールドパターンのビームは1つになる。
【0050】
【実施例】
[実施例1]
図5は本発明の一実施例に係るレーザ素子の形状及び構造を示す模式的な斜視図であり、以下、図1〜図3及び図5を元に本発明の実施例1について説明する。
【0051】
2インチφ、C面を主面とするサファイアよりなる異種基板1を反応容器内にセットし、500℃にて異種基板1の上にGaNよりなる低温成長バッファ層(図示せず。)を200オングストロームの膜厚で成長させた後、温度を1050℃にしてGaNよりなるバッファ層2を5μmの膜厚で成長させる。低温成長バッファ層は900℃以下の低温で成長させ、GaN、AlN等を成長させる。一方、低温成長バッファ層の上に成長させるバッファ層2はAl混晶比X値が0.5以下のAlXGa1-XN(0≦X≦0.5)を成長させることが望ましい。0.5を超えると、結晶欠陥というよりも結晶自体にクラックが入りやすくなってしまうため、結晶成長自体が困難になる傾向にある。なおこのバッファ層2は通常10μm以下の膜厚で成長させるが、前にも述べたように本発明の素子の下地層とはなり得ない。
【0052】
バッファ層2成長後、ウェーハを反応容器から取り出し、バッファ層2の表面に、ストライプ状のフォトマスクを形成し、CVD装置によりストライプ幅20μm、ストライプ間隔(窓部)5μmのSiO2よりなる第1の保護膜11を0.1μmの膜厚で形成する。図1はストライプの長辺方向に垂直な方向で切断した際の部分的なウェーハの構造を示す模式断面図である。
【0053】
第1の保護膜11形成後、ウェーハを再度反応容器内にセットし、500℃にて、AlNよりなる第2の低温成長バッファ層(図示せず。)を200オングストロームの膜厚で成長させる。下地層を成長させる前に、保護膜上に第2の低温成長バッファ層を形成すると、下地層の横方向の成長が促進されて下地層の結晶性が良くなり、薄膜で保護膜上に下地層が成長しやすい傾向にある。なおこの低温成長バッファ層はAlN、若しくはAlを含む窒化物半導体を900℃以下の低温で成長させることが望ましい。次に、1050℃で、アンドープGaNよりなる第1の下地層3を10μmの膜厚で成長させる(図2、図3)。第1の下地層3の好ましい成長膜厚は、先に形成した第1の保護膜11の膜厚、大きさによっても異なるが、第1の保護膜11の表面を覆うように成長させる。第1の保護膜11の大きさは特に限定しないが、第1の保護膜11の面積を窓部の面積よりも大きくする方が結晶欠陥の少ないGaN基板を得る上で非常に好ましい。
【0054】
素子構造となる窒化物半導体を成長させる場合、結晶欠陥の少ない下地層の好ましい膜厚は、素子においてその異種基板を残すか否かによって異なる。即ち図5及び図6のように異種基板を残す素子構造の場合、下地層の総膜厚は1μm以上、50μm以下に調整することが望ましい。異種基板上に窒化物半導体を成長させると、異種基板の種類によっても異なるが、異種基板との熱膨張係数差により、成長後にウェーハ全体が反る傾向にある。その反りは窒化物半導体を厚膜で成長させるほど大きくなる傾向にある。従ってウェーハが反り返っても、異種基板をつけたままで加工できる限界、即ち50μm以下の膜厚が上限値として好ましく、また1μm以上でなければ保護膜の上に窒化物半導体を成長させることが難しい。一方、図7のように異種基板を除去する場合、下地層が基板となるため、下地層全体の膜厚は80μm以上にすることが望ましい。
【0055】
続いて、温度を1050℃に保持したままSiを1×1019/cm3ドープしたAl0.4Ga0.6N層(第2の窒化物半導体層)を40オングストローム成長させ、次にSiを1×1018/cm3ドープしたGaNよりなる層(第3の窒化物半導体層)を40オングストローム成長させる。そして第2の窒化物半導体層と第3の窒化物半導体層を交互に積層して総膜厚1.6μmの超格子よりなる第1の窒化物半導体層4を成長させる。
【0056】
次に、温度を800℃にして、アンドープのIn0.2Ga0.8Nよりなる井戸層、25オングストロームと、アンドープIn0.01Ga0.99Nよりなる障壁層、50オングストロームを交互に積層してなる総膜厚175オングストロームの多重量子井戸構造(MQW)の活性層5を成長させる。
【0057】
次に、温度を1050℃に上げMgを1×1020/cm3ドープしたp型Al0.4Ga0.6N層(第4の窒化物半導体層)を40オングストローム成長させ、次にMgを1×1018/cm3ドープしたp型GaNよりなる層(第5の窒化物半導体層)を40オングストローム成長させる。そして第4の窒化物半導体層と第5の窒化物半導体層を交互に積層して総膜厚1.6μmの超格子よりなるp側クラッド層6を成長させる。このp側クラッド層は、活性層の発光及びキャリアを閉じ込める層として作用する。
【0058】
続いて、1050℃にて、Mgを2×1020/cm3ドープしたp型GaNよりなるp側コンタクト層7を150オングストロームの膜厚で成長させる。p側コンタクト層は500オングストローム以下、さらに好ましくは400オングストローム以下、20オングストローム以上に膜厚を調整すると、p層抵抗が小さくなるため閾値における電圧を低下させる上で有利である。
【0059】
反応終了後、反応容器内において、ウェーハを窒素雰囲気中、700℃でアニーリングを行い、p層をさらに低抵抗化する。アニーリング後、ウェーハを反応容器から取り出し、図5に示すように、RIE装置により最上層のp側コンタクト層7と、p側クラッド層6とをエッチングして、4μmのストライプ幅を有するリッジ形状とする。
【0060】
リッジ形成後、p側クラッド層6をさらにエッチングして、n電極を形成すべき第1の窒化物半導体層4の表面を露出させ、露出した第1の窒化物半導体層4の表面にWとAlよりなるn電極22を図5に示すような形状で形成する。
【0061】
そして、p側コンタクト層7のストライプリッジ最表面にNi/Auよりなるp電極20を形成した後、p電極とn電極との間にSiO2よりなる絶縁膜23を形成して、p電極20の上に、ボンディング用のpパッド電極21を形成する。
【0062】
電極形成後、異種基板1の裏面を研磨して50μm厚とした後、ストライプ状のp電極20、n電極22のストライプに垂直な方向で異種基板1を劈開して、活性層の劈開面を共振面とする。劈開後のレーザ素子形状を図5に示している。劈開面を断面TEMにより観察すると、第1のGaN下地層3の結晶欠陥はおよそ1×105個/cm2しかなく、またドライエッチングにより第1の下地層までエッチングしてそのエッチピットを計測してもほぼ同じ個数となり、非常に結晶性の良いGaN下地層が得られていたことが判明した。
【0063】
なおこのレーザ素子を室温でレーザ発振させたところ、閾値電流密度1.8kA/cm2、閾値電圧4.1Vで、発振波長405nmの連続発振が確認され、2000時間以上の寿命を示した。
【0064】
[実施例2]
図6は本発明の他の実施例に係るレーザ素子の構造を示す模式的な断面図であり、基本的な構造は図5に示すレーザ素子と同じであるが、実施例2では下地層3を成長させる工程において、Siを1×1018/cm3ドープしたGaNよりなる下地層3を15μmの膜厚で成長させる。その他、n電極を形成する工程において、SiドープGaNよりなる下地層3の表面が露出するまでエッチングを行い、エッチングにより露出した下地層3の表面にn電極22を形成する点で実施例1と異なる。このように下地層3の表面にn電極22を形成しても、下地層3の結晶性が優れているため、容易に下地層と好ましいオーミック接触が得られる。なお、このレーザ素子も実施例1のものとほぼ同等の特性を示し、第1の下地層3の結晶欠陥はおよそ1×106個/cm2以下しかなかった。
【0065】
[実施例3]
図7は本発明の他の実施例に係るレーザ素子の構造を示す模式的な断面図である。このレーザ素子は図5、6に示すレーザ素子と異なり、下地層を直接基板としている。以下この図を元に実施例3について説明する。
【0066】
実施例1と同様にして、サファイアよりなる異種基板1の上に、GaNよりなる低温成長バッファ層と、Siを1×1018/cm3ドープしたGaNよりなるバッファ層2を成長させた後、同様にしてそのバッファ層の表面にストライプ状の第1の保護膜を形成する。
【0067】
その後、Siを1×1018/cm3ドープしたGaNよりなる第1の下地層3を150μmの膜厚で成長させる。第1の下地層成長後、ウェーハを反応容器から取り出し、反った状態のウェーハを研磨装置に移送して、異種基板、バッファ層、第1の保護膜を研磨除去する。研磨後の第1の下地層の結晶欠陥はおよそ1×106個/cm2であった。
【0068】
研磨後、基板となった第1の下地層を再度反応容器内に移送し、実施例1と同様にして、第1の下地層3の上に、Siを変調ドープした超格子層よりなる第1の窒化物半導体層4、活性層5、Mgを変調ドープしたp側クラッド層6、及びp側コンタクト層7を成長させる。成長後、実施例1と同様にしてアニール、リッジ形成を行う。さらにp電極20と、pパッド電極21を形成した後、第1の下地層3の裏面のほぼ全面にn電極22を形成する。電極形成後、第1の下地層を劈開してその劈開面を共振面とするレーザ素子を作製したところ、実施例1とほぼ同等の特性を有するレーザ素子が得られた。
【0069】
[参考例4]
実施例1において、第1の窒化物半導体層4を成長させる際、超格子構造とせずに、Siを5×1018/cm3ドープしたAl0.3Ga0.7Nよりなる層を0.8μmの膜厚で成長させる他は同様にしてレーザ素子を得たところ、閾値が若干上昇し、寿命は実施例1のものに比較しておよそ20%程短くなった。
【0070】
[実施例5]
実施例1において、バッファ層2成長後、以下のように図8及び図9のに示すようにして下地層を作製する他は同様にして行った。
【0071】
バッファ層2を成長後、TMGのみ止めて、温度を1050℃まで上昇させる。1050℃になったら、原料ガスにTMG、アンモニア、シランガスを用い、Siを1×1018/cm3ドープしたGaNよりなる第11の窒化物半導体層82を2μmの膜厚で成長させる。
【0072】
第11の窒化物半導体層82を成長後、ストライプ状のフォトマスクを形成し、スパッタ装置によりストライプ幅15μm、ストライプ間隔3μmのSiO2よりなる保護膜83を1μmの膜厚で形成し、続いて、RIE装置により第11の窒化物半導体層82の途中までエッチングして段差を形成することにより第11の窒化物半導体82の端面を露出させる。なお、ストライプ方向は、オリフラ面に対して垂直な方向で形成する。
【0073】
第11の窒化物半導体層82に、段差を形成した後、段差を形成した第11の窒化物半導体82の表面にスパッタ装置により保護膜を形成し、CF4とO2ガスにより、段差を形成したことにより形成された第11の窒化物半導体82の端面部の保護膜のみをエッチングすることにより、保護膜83及び保護膜84を形成する。
【0074】
保護膜83及び保護膜84を形成後、反応容器内にセットし、温度を1050℃で、原料ガスにTMG、アンモニア、シランガスを用い、Siを1×1018/cm3ドープしたGaNよりなる第12の窒化物半導体層85を30μmの膜厚で成長させる。
【0075】
第12の窒化物半導体層85を成長後、ウェーハを反応容器から取り出し、SiドープGaNよりなる窒化物半導体基板を得る。
【0076】
上記のようにして得られた窒化物半導体基板(下地層)上に、実施例1と同様に素子構造となる窒化物半導体を成長させ、図5に示す形状のレーザ素子を得た。その結果、実施例1とほぼ同様に良好であった。
【0077】
[実施例6]
実施例1において、第1の窒化物半導体成長時に、Siを1×1019/cm3ドープしたGaNよりなる層(第3の窒化物半導体層)を40オングストロームと、Siを1×1018/cm3ドープしたのAl0.40Ga0.60Nよりなる層(第2の窒化物半導体層)を40オングストローム成長させて、このペアを200回成長させ、総膜厚1.6μm(16000オングストローム)の超格子構造よりなるを成長させ、また、p側クラッド層6成長時に、Mgを1×1020/cm3ドープしたGaNよりなる層(第5の窒化物半導体層)を40オングストロームと、Mgを1×1018/cm3ドープしたAl0.40Ga0.60Nよりなる層(第4の窒化物半導体層)を40オングストローム成長させて、このペアを200回成長させ、総膜厚1.6μm(16000オングストローム)の超格子構造よりなるp側クラッド層6を成長させる他は実施例1と同様にしてレーザ素子を得たところ、実施例1と同様に良好であった。
【0078】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の素子によると、Alを含む窒化物半導体を成長させる前の窒化物半導体の結晶欠陥が少ないために、厚膜で成長可能となり、レーザ素子では低閾値で発振できるようになって長寿命となる。結晶欠陥が少ないということはGaN下地層中の歪みが小さいと言うことを意味し、歪みの小さいGaN下地層の上に格子不整合の状態でAlGaNを成長させると、同様にAlGaN中の歪みも小さくなるために、クラックが入りにくくなり厚膜のAlGaNが成長できる。なお本発明は主としてレーザ素子について説明したが、本発明はレーザ素子の他に、LED素子、受光素子のような、他の窒化物半導体を用いたあらゆる電子デバイスに適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 第1の下地層を得るための一製法において得られる窒化物半導体ウェーハの構造を示す模式的断面図。
【図2】 第1の下地層を得るための一製法において得られる窒化物半導体ウェーハの構造を示す模式的断面図。
【図3】 第1の下地層を得るための一製法において得られる窒化物半導体ウェーハの構造を示す模式的断面図。
【図4】 第1の下地層を得るための一製法において得られる窒化物半導体ウェーハの構造を示す模式的断面図。
【図5】 本発明の一実施例に係る窒化物半導体素子の構造を示す斜視図。
【図6】 本発明の他の実施例に係る窒化物半導体素子の構造を示す模式断面図。
【図7】 本発明の他の実施例に係る窒化物半導体素子の構造を示す模式断面図。
【図8】 第1の下地層を得るための一製法において得られる窒化物半導体ウェーハの構造を示す模式的断面図。
【図9】 第1の下地層を得るための一製法において得られる窒化物半導体ウェーハの構造を示す模式的断面図。
【符号の説明】
1・・・・異種基板
2・・・・バッファ層
3・・・・第1の下地層
4・・・・第1の窒化物半導体層
5・・・・活性層
6・・・・p側クラッド層
7・・・・p側コンタクト層
20・・・・p電極
21・・・・pパッド電極
22・・・・n電極
23・・・・絶縁膜
Claims (9)
- 窒化物半導体の縦横方向成長による下地層であって、該下地層は結晶欠陥が1×107個/cm2以下であり、
Inを含む窒化物半導体よりなる井戸層を有する量子井戸構造の活性層を有し、
該活性層と前記下地層との間に、Alを含む窒化物半導体を有する第1の窒化物半導体層が成長されており、
該第1の窒化物半導体層はAlを含む窒化物半導体よりなる第2の窒化物半導体層と、第2の窒化物半導体層と異なる組成を有する窒化物半導体よりなる第3の窒化物半導体層とが積層された超格子構造よりなり、
前記縦横方向成長は、窒化物半導体を成長させた後、さらに、窒化物半導体を選択的に横方向に成長させるものである、
ことを特徴とする窒化物半導体発光素子。 - 前記活性層の上にp側クラッド層を有し、該p側クラッド層がAlを含む窒化物半導体からなり、
該p側クラッド層はAlを含む窒化物半導体よりなる第4の窒化物半導体層と、第4の窒化物半導体と異なる組成を有する窒化物半導体よりなる第5の窒化物半導体層とが積層された超格子構造よりなる請求項1記載の窒化物半導体発光素子。 - 前記第1の窒化物半導体の超格子構造を構成する第2の窒化物半導体層と第3の窒化物半導体層、及び/又は、前記p側クラッド層の超格子構造を構成する第4の窒化物半導体層と第5の窒化物半導体層は不純物濃度が異なる請求項2記載の窒化物半導体発光素子。
- 前記第1の窒化物半導体の超格子構造を構成する一方の層、及び/又は、前記p側クラッド層の超格子構造を構成する一方の層はアンドープである請求項3記載の窒化物半導体発光素子。
- 前記第1の窒化物半導体の超格子構造を構成する互いの層、及び/又は、前記p側クラッド層の超格子構造を構成する互いの層はバンドギャップエネルギーが異なる請求項2乃至4のいずれか1項記載の窒化物半導体発光素子。
- 前記第2の窒化物半導体層、及び/又は、前記第4の窒化物半導体層がAlyGa1−yN(0<y≦1)よりなる請求項2乃至5のいずれか1項記載の窒化物半導体発光素子。
- 前記第3の窒化物半導体層、及び/又は、前記第5の窒化物半導体層がInzGa1−zN(0≦z≦1)よりなる請求項2乃至6のいずれか1項記載の窒化物半導体発光素子。
- 前記下地層は異種基板上に形成されたものであって、前記異種基板と前記第1の窒化物半導体層との間にAlxGa1−xN(0≦x≦0.5)よりなるバッファ層を有する請求項1乃至7のいずれか1項記載の窒化物半導体発光素子。
- 裏面側にn電極を有する請求項1乃至8のいずれか1項記載の窒化物半導体発光素子。
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