JP4028024B2 - 可撓性エラストマー材料からなるタイヤ用安全支持体 - Google Patents

可撓性エラストマー材料からなるタイヤ用安全支持体 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両用タイヤの安全支持体であって、タイヤが破損した場合に荷重を受けるべく、タイヤの内部でホイールリム上に取り付けられる安全支持体に関する。より詳しくは、本発明は、本質的に可撓性エラストマー材料で作られた改良された支持体を提案する。
【0002】
【従来の技術】
可撓性エラストマー材料で作られた環状の安全支持体を使用することは、非常に長期間に亘って知られている。このような支持体は、衝撃に敏感でないこと、長期間に亘って優れた性能安定性が得られること、および、扁平走行しなければならないときにタイヤの挙動低下を顕著に引き起こさないこと等の長所を有する。
これに対し、このような支持体は2つの主要な欠点を有している。すなわち、車軸重量を低減させるという自動車製造業者の現在の条件を考慮するとき、許容できない重量となってしまうこと、および非常に急速に熱的劣化を招き易い材料の温度上昇の結果として、扁平走行状態(run-flat conditions)での耐久性が極めて悪いことである。
【0003】
これらの欠点を解決するため、フランス国特許出願(FR 2 532 591)は、長手方向中心平面に対して対称的なH形の形状をなす本質的にエラストマー材料で作られた安全支持体を提案しており、該安全支持体は、軽量化および剛性低下のため、半径方向下方部分に設けられた幅広の周方向チャンネルと、支持体をホイールリム上に保持するストラップのハウジングとして機能する、半径方向外方部分に設けられた周方向チャンネルとを有している。この支持体は小さな重量および許容できる耐久性を有効に与えるけれども、半径方向剛性が750kg/cm より大きくて比較的高いため、扁平走行状態でのタイヤの挙動性能を低下させてしまう。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、本質的に可撓性のあるエラストマー材料で作られた安全支持体であって、挙動性能と重量と耐久性との妥協を大幅に改善できる安全支持体を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
車両に装着するタイヤの内部でホイールリム上に取り付ける安全支持体であって、膨張圧力を喪失した場合にタイヤのトレッドストリップを支持する本発明の安全支持体は、本質的に可撓性エラストマー材料で作られており、かつ、
・ホイールリムの周囲に嵌合されるほぼ円筒状のベースと、
・膨張圧力を喪失した場合にはトレッドストリップと接触することができ、公称圧力を保有する場合にはトレッドストリップに対して間隙を維持するほぼ円筒状のキャップと、
・前記ベースとキャップとを連結する環状本体とを有し、該本体は、車両の側部外方に配置すべき前記本体の側面からほぼ軸方向に形成された複数のキャビティを備え、該キャビティは、前記本体を貫通することなく、該本体内に少なくとも1/2以上に亘って軸方向に延びていることを特徴とする。
【0006】
環状本体は、好ましくは、ベースと同じ軸方向幅を有する。
本発明によるこの支持体の横方向キャビティは、中実支持体に比べ支持体の重量を非常に減少させることができ、かつ非常に異なる態様で機械的に機能する2つの領域を支持体の本体に形成する。すなわち、これらの2つの領域とは、
・中実の第1環状領域がその1つである。中実であることは、扁平走行状態下で受ける全半径方向荷重範囲において、座屈を引き起こすことなくこれらの半径方向荷重が圧縮応力と対抗することを意味する。この領域の圧縮剛性は非常に大きいため、該領域は極く僅かの変形を受けるに過ぎず、従って一定度合いの温度上昇が生じるに過ぎない。
・第2の領域は、車両の側部外方に配置される環状領域である。この環状領域は、環状本体の一側面に開口する横方向キャビティを有する。この領域は、上記中実領域よりも可撓性がかなり大きく、従って、パッカリングを生じさせることなく、支持体のキャップとタイヤのキャップの半径方向内面との間に大きな面接触を維持できる。また、このため、扁平走行状態下で、地面とタイヤのトレッドストリップの表面との間に大きな接触面積が得られ、従ってこのトレッドストリップにパッカリングが生じることを防止する。
【0007】
上記パラグラフにおける「パッカリング」とは、例えばトレッドストリップの表面と地面との間の接触面積が連続的でないどころか、この接触面積の入口と出口との間に不連続部がある状態を意味すると理解されたい。これらの不連続部では、トレッドストリップが浮き上がってしまい、もはや地面とは接触しない。この現象は、タイヤが扁平走行するときに、接触面積においてタイヤのキャップに作用する長手方向圧縮力によるものであり、パッカリングは、タイヤのキャップの僅かな圧縮可能性によって生じる。支持体についても同じ現象が存在する。本発明の支持体の場合には、この圧縮可能性は、選択された幾何学的形状およびこのパッカリングをなくすことができる可撓性エラストマー材料に関連する中空領域の周囲での可撓性キャップの長手方向圧縮可能性である。
【0008】
本発明による安全支持体の決定的な長所は、支持体のキャップの可撓性により、該キャップが、均一な支持圧力でかつパッカリングを生じさせることなく、タイヤのキャップの半径方向内方壁に徐々に当接できることである。この結果、既に理解されているであろうが、タイヤのトレッドストリップと地面との間の大きな接触面積が維持されるため、トレッドストリップのパッカリングの危険性が低下し、従って均一な接触圧力が得られる。このトレッドストリップのパッカリングは、接触圧力の非常に不均一な分布、従って特にコーナリング時の車両の非常に劣悪な動をもたらす直接原因となる。
コーナリング時に最大荷重を受けるタイヤの部分は、旋回の外側に位置する部分である。これらのタイヤは、遠心力による最大荷重を支持する。タイヤのキャンバ角は、しばしば非常に大きくなる。すなわち、タイヤの長手方向中心平面は地面に対して垂直にはならず、旋回の外側に向かって傾斜もする。このため、旋回の外側で、タイヤのトレッドストリップにはより大きな荷重が作用する。扁平走行状態では、この現象が非常に顕著になる。
【0009】
これに対し、旋回の内側に位置するタイヤ部分にはそれほど大きな荷重は作用しないので、本発明による安全支持体は必ずしも対称的にする必要はなく、このため、必要な支持体の幅およびその重量を小さくできる。
また、横方向のキャビティは支持体の有効な換気を可能にし、このため、許容温度まで温度上昇することが制限される。
このコンビネーションは、少なくとも1つのタイヤが扁平走行する車両の挙動を優れたものとする。なぜならば、挙動は、扁平走行により僅かに変化するに過ぎないからである。また、このコンビネーションは、例外的な耐久性をも付与する。なぜならば、ゼロの膨張圧力の扁平走行状態において、約100km/hの速度で数百km/hをカバーできることが観察されているからである。
【0010】
本発明の他の優れた形態によれば、互いに隣接する2つのキャビティ間に形成される壁が弧状である。従って、これらの壁は、半径方向荷重を受けたときに非常に緩やかに曲げ変形する。これにより、扁平走行時に顕著な不連続部を形成する原因ともなる座屈現象を防止できる。
上記キャビティの特別な幾何学的形状は、70より小さい、好ましくは60〜70の間のショアA硬度を有する可撓性エラストマー材料の有効な使用を可能にする。
或る用途では、車両の側部外方に配置すべき支持体の側面にキャビティを形成するのが有効でもある。次に、これらのキャビティは、ほぼ軸方向に延びるけれども、これらのキャビティの長さは、車両の側部外方に配置すべき支持体の側面とは反対側の側面に形成されるキャビティの長さよりも非常に短い。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照して本発明の一実施を説明するが、この説明は本発明を制限するものではない。
図1は、タイヤ3のキャビティ30の内部で好ましいホイールリム2の周囲に取り付けられた本発明の安全支持体1を示す。この実施の形態は、ルノー・ツインゴ(Renault Twingo)のような小形ツーリングカーに装着する寸法を有している。タイヤのサイズは145×360である(ここで、145とはタイヤ幅のミリメートル値であり、360とはホイールリム2のミリメートル値である)。
ホイールリム2はワンピースホイールの一部を形成している。このホイールリム2は、ホイールディスク20と同じ側、すなわち車両の側部外方に配置される側から順に軸方向に次の部分、すなわち、
・第1シート21′と、
・本発明の安全支持体1を受け入れるための平らな円筒状領域22(該領域22の直径はシート21′の直径より大きく、このため、安全支持体1を軸方向に滑り込ませることにより、安全支持体1を容易かつ直接取り付けることができる)と、
・支持体1の横方向移動ができないようにするストッパ23と、
・取付け凹部(mounting well)24(この取付け凹部24は、従来の取付け凹部に比べ、最小化したサイズを有している)と、
・保持隆起部25の前方に位置する第2シート21″(この第2シート21″の直径は領域22の直径より大きい)と、
を有している。
【0012】
このホイールリム2の1つの特徴は、2つのシート21′、21″が、従来のホイールリムのシートの方向とは反対方向に傾斜していることにある。
タイヤ3はホイールリム2上に取り付けられるように設計されており、特に、直径の異なる2つのビード31′、31″を有している。
支持体1は、3つの主要部分、すなわち、
a)全体として環状の形状を有しかつほぼ0°の角度で長手方向に配向されたプライ11により補強されたベース10と、
b)半径方向外方の壁に長手方向の溝13が設けられた実質的に環状のキャップ12と、
c)ベース10とキャップ12とを結合する環状本体14と、
を有している。
【0013】
図1の断面は、本体14の第1中実部分141と、本体14の1/2よりも実質的に大きい範囲で軸方向に延びかつ本体14の外端面からほぼ軸方向に形成されたキャビティ143を含む第2部分142とを示している。これらのキャビティ143(図3)は本体14の全周の回りに均一に分布されており、かつ支持体1のキャップ12とベース10との間の半径方向直接連結部を形成する半径方向壁144を形成している。壁144は弧状の形状を有する。この幾何学的形状は、これらの軸方向壁144が押し潰されるとき、圧縮というより曲げ作用を受けるという長所を有している。キャビティ143従って壁144は、扁平走行状態で該壁144が均一支持を与えることができる充分な個数を有する。
キャビティ143は、支持体1の重量を非常に減少させることができる。例えば、図1〜図3に示す好ましい好ましい実施の形態では、壁144は、7mmの厚さおよび19mmのパターンリピートを有し、支持体1の軸方向幅の70%以上に亘って延びており、重量は、対応する中実支持体の重量の丁度67%である。
【0014】
この実施の形態では、半径方向壁144は軸方向に向いている。壁144は、この軸方向から最大30°の角度で拡開させることもできる。軸方向に対する傾斜角度を増大させると、同一材料の他の幾何学的パラメータおよび剛性を維持しながら、支持体の半径方向剛性を増大できる。30°を超えると、剛性の増大が過度になる。
この実施の形態で選択したエラストマー材料は、60〜70のショアA硬度を有している。中実部分141からなる支持体1の部分の半径方向剛性は420kg/cm であり、中空部分142からなる部分の半径方向剛性は160kg/cm である。これは、中実部分141で荷重の70%が支持されかつキャビティ143を含む部分で荷重の30%が支持されることを意味する。
【0015】
この例では、支持体1のベース10が、ほぼ0°の角度で配向されたプライ11で補強されている。このプライ11は、タイヤ3の回転速度の如何に係わらず、支持体1が事実上周方向に延びることがなく、従ってホイールリム2上に保持されることを保証するため、高弾性係数をもつ周方向補強体で形成するのが好ましい。また、このプライ11は、支持体1をホイールリム2上に取り付ける前に支持体1をタイヤ3内に挿入するのに要求される大きな変形を可能にするため、小さな撓み剛性を有する。
この実施の形態では、ベース10は、タイヤ3の隣接ビード31′をブロックするための円筒状ストッパ15を有している。第2ビード31″は通常の隆起部25により動かないように固定される。
【0016】
安全支持体1の高さは、タイヤの通常のあらゆる使用時にかなりの一時的過大荷重が作用しても、支持体1がタイヤ3に接触することがないように選択される。この高さは、ホイールリム2とタイヤ3のキャップとの間のトーラス状キャビティ30の高さのほぼ1/2に等しい。
支持体1を製造する材料としては、EPDMのような飽和鎖エラストマーに基づいた材料を選択するのが好ましい。
支持体1の耐久性能を改善するため、タイヤ3のキャビティ30内に潤滑剤が入れられ、通常、支持体1のキャップ12とタイヤ3のキャップとの間に生じることがある接触を潤滑する。
このような安全支持体1は、例えば、射出成形による通常の方法で製造できる。
【0017】
図1に示す装置を組み立てる第1ステップは、安全支持体1をタイヤ3のトーラス状キャビティ30内に挿入することである。支持体1の第1部分が、タイヤのこのキャビティ内に挿入される。次に、支持体1の反対側部分がタイヤ3の反対側部分に入ることができるように、支持体1の反対側部分が、支持体1の長手方向中心平面の軸方向外側に傾斜される(図5参照)。支持体が本質的に可撓性エラストマー材料で作られているという事実から、この傾斜が容易であることは全く明らかであり、従って、いかなる工具も使用しないで、この傾斜を手で非常に容易に行うことができる。次に、タイヤ3の大きい方の直径のビード31″からスタートし、タイヤと支持体との組立体がホイールリム2の周囲に配置される。このビード31″を取付け凹部24内に入れ、これと同時に、支持体1をホイールリム2の領域22の周囲に配置する。次に、取付け凹部24のおかげで、第1ビード31″を隆起部25を乗り越えさせてシート21″上に置く。この第1ビード31″は外部からそのシート21″上に取り付け、最後に、タイヤ3の小さい直径の第2ビード31′がシート21′上に取り付けられる。この取付けもこのシート21′の外部から行なう。
【0018】
図2は、図1の安全装置と同じ安全装置が作動状態にあるところを示す。支持体1のキャップ12が、タイヤ3のキャップの半径方向内面と接触している。
支持体1の寸法を定めるときに重要な点は、環状中実部分141の軸方向幅を決定することである。この環状中実部分141の相対軸方向幅は、この環状中実部分141の軸方向幅と、支持体1の全軸方向幅との比として定められる。例えば、5%の相対軸方向幅の場合、ルノー社のTwingoモデルのツーリングカーに使用した支持体の寿命は、膨張圧力がゼロで、100km/h のフル荷重で走行したとき、150kmであった。しかしながら、幅を15%より大きくすると、同じ試験条件下での寿命が600km以上になった。もちろん、中実部分の幅を更に増大させると、支持体の重量が増大しかつ支持体の換気が低下する。従って、必要とする最も適当な寸法および剛性は、装着すべき車両の関数として、ケースバイケースで決定すべきである。
【0019】
本発明による安全支持体1は、もちろん、平らなベースを備えた慣用的なツーパートホイールに取り付けることもできる。
図4に示す第2の実施の形態によれば、安全支持体5は幾つかのリング、すなわち、
・ほぼ矩形の軸方向断面をもつリング51と、
・2つ以上の環状要素52(図4には2つの環状要素52を示す)であって、各環状要素52の全幅に亘ってほぼ軸方向に延びておりかつ各環状要素52の周方向にほぼ均一に分布された複数のキャビティ53を備えた環状要素52と、からなる。これらの環状要素52は、リング51に対し車両の側部外方に配置されるようにして、ホイールリム2上に取り付けられる。前の実施の形態と同様に、各環状要素52は、タイヤのキャップの半径方向内面に当接できるキャップ12と、ホイールリム2に接触するためのベース10とを有している。ベース10は、該ベースが実際に長手方向に延びないように保証する長手方向の補強要素11を有している。
【0020】
この第2の実施の形態は、第1の実施の形態と非常に良く似た特性を有するけれども、種々の環状要素の撓み剛性が小さいため、タイヤ内への挿入が一層容易である。
【図面の簡単な説明】
【図1】タイヤのキャビティの内部で好ましいホイールリム上に取り付けられた本発明の安全支持体の軸方向断面の1/2を示す断面図である。
【図2】安全支持体が扁平走行状態にあるところを示す図1と同様な1/2断面図である。
【図3】図1の安全支持体をキャビティ側から見た部分側面図である。
【図4】本発明の支持体の第2の実施の形態を示す軸方向の1/2断面図である。
【図5】支持体がタイヤのキャビティ内に挿入されるときに、支持体に加えられる変形を示す図面である。
【符号の説明】
1 安全支持体
2 ホイールリム
3 タイヤ
10 支持体のベース
11 プライ
12 支持体のキャップ
13 溝
14 環状本体
30 トーラス状キャビティ
51 リング
52 環状要素
143 キャビティ
144 半径方向壁

Claims (3)

  1. 膨張圧力を喪失した場合にタイヤ(3)のトレッドを支持するために、車両に装着するタイヤ(3)の内部でホイールリム(2)上に取り付けられるようになっている安全支持体(1,5)であって、該安全支持体(1,5)は、本質的に可撓性エラストマー材料で作られており、かつ、前記安全支持体(1,5)は、
    ホイールリム(2)の周囲に嵌合されるほぼ円筒状のベース(10)と、
    膨張圧力を喪失した場合にはトレッドと接触することができ、公称圧力を保有する場合にはトレッドに対して間隙を維持するほぼ円筒状のキャップ(12)と、
    前記ベース(10)とキャップ(12)とを連結する環状本体(14)とを有する安全支持体において、
    前記環状本体(14)は、車両の外側に配置すべき前記環状本体の側面に開口するほぼ軸方向の複数のキャビティ(143,53)を備え、該キャビティ(143,53)は、外側端部および内側端部を有し、前記環状本体は、前記キャビティ(143,53)の内側端部に隣接して、その他の環状本体の部分と比べて比較的中実でかつより剛性の高い部分(141,51)を有し、前記キャビティ(143,53)は、前記環状本体(14)を貫通することなく、該環状本体の少なくとも1/2に亘って軸方向に延びていることを特徴とする安全支持体。
  2. 前記ベース(10)が、実質的に非伸長性の長手方向補強手段(11)を有することを特徴とする請求項1に記載の安全支持体。
  3. 前記環状本体(14)は更に、車両の内側に配置すべき前記環状本体の側面に開口するほぼ軸方向の複数のキャビティを有することを特徴とする請求項1または2に記載の安全支持体。
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