以下、本発明の好適な実施形態(実施例)を添付図面に基づいて説明する。
最初に、図1を参照して本発明に係るランキンサイクル装置の全体システムの構成を説明する。
ランキンサイクル装置10は、蒸発器11と、膨張機12と、凝縮器13と、供給ポンプを備えた給水ポンプユニット14とから構成される。蒸発器11から膨張機12へは配管15により接続され、膨張機12から凝縮器13へは配管16により接続され、凝縮器13から給水ポンプユニット14へは配管17により接続され、給水ポンプユニット14から蒸発器11へは配管18により接続されている。かかる配管構造によって、ランキンサイクル装置10内で作動媒体が循環する循環回路が形成される。ランキンサイクル装置10において作動媒体は水または水蒸気である。
ランキンサイクル装置10の循環回路は、水または水蒸気を循環させる外界に対して密閉された循環構造を有している。ランキンサイクル装置10の循環回路において、凝縮器13における破線P1で示された液面位置から給水ポンプユニット14を通って蒸発器11に水(液相)が移動する。図1で水の部分に係る配管17,18は太い実線で表現されている。また蒸発器11から膨張機12を通って凝縮器13の液面位置P1に到る部分は水蒸気(気相)が移動する。図1で水蒸気の部分に係る配管15,16は太い破線で表現されている。
また、ランキンサイクル装置10の低温域である、供給ポンプユニット14と蒸発器11の間の配管18には、分岐管200,201を設けて第1リリーフ弁22、第2リリーフ弁202を設け、作動媒体が液相状態にある回路中に、回路内の内圧が設定限度圧より高い高圧のとき、回路外へ作動媒体を排出する排出(リリーフ)弁装置203を設け、初期の排出作動媒体を低温の液相とし、排出弁装置203から閉回路外へ排出される作動媒体の少なくとも一部を、ランキンサイクル装置10の熱源(排気管45)廻りに排出する。また、排出弁装置203は、排出作動媒体を閉回路外へ導出し、閉回路外へ排出する排出通路を複数(配管204,205,206,207,208)備え、排出通路中の少なくとも一部に流量制限装置(オリフィス)209を設けている。さらに、排出弁装置203は、少なくとも蒸発器11よりも供給ポンプ44側に近づけて配設した。なお、ここでは、排出弁を第1リリーフ弁22と第2リリーフ弁203の2箇所に設けているが、どちらか1つだけ設けるようにしてもよい。
ランキンサイクル装置10は、熱源から排出される熱を利用して水を水蒸気に相変化させ、水蒸気の膨張作用を利用して機械的な仕事を生じさせるものである。水を水蒸気に相変化させる機構が上記蒸発器11である。この実施形態に係るランキンサイクル装置10は、後述するごとく、自動車に搭載する車載用装置として構成している。そのため、蒸発器11は、排気ガスの有する熱を熱源として利用する。すなわち蒸発器11は、エンジン(内燃機関)の排気管45を通る排気ガスの熱を利用して、給水ポンプユニット14から供給される水を加熱し、さらに過熱することにより昇温昇圧させた高温高圧の水蒸気を発生させる。蒸発器11で発生した高温高圧の水蒸気は膨張機12に供給される。なお、排気管45に拘らず、エンジンの排気バルブより下流の排気ポートや排気マニホルド(不図示)等の、より高温の排気ガスの熱を利用できることは言うまでもない。
膨張機12では、その出力軸12aが、モータ/ジェネレータ(M/G)19のロータ等(不図示)に接続され、発電機として駆動させている。膨張機12は、蒸発器11から供給される高温高圧の水蒸気を膨張させる構造を有し、この水蒸気の膨張作用に基づき出力軸12aを回転させる。膨張機12の出力軸12aが回転すると、モータ/ジェネレータ19のロータを回転させ、所要の機械的回転動作または発電動作を行わせる。これにより、排気ガスの熱を利用して機械的な仕事を行うことができる。また膨張機12の出力軸12aは、油圧ポンプ25にも接続され、これを駆動させる。
上記のごとく膨張機12は、蒸発器11から配管15を通して供給される高温高圧の水蒸気の膨張作用によって機械的な仕事を出力し、モータ/ジェネレータ19や油圧ポンプ25等の各負荷を動作駆動させる。膨張機12から排出され、降温降圧された水蒸気は、温度および圧力が低下し、その状態で配管16を経由して凝縮器13に供給される。凝縮器13は、膨張機12からの水蒸気を冷却して液化する。凝縮器13での液化で生じた水(凝縮水)は配管17を経由して給水ポンプユニット14に戻される。給水ポンプユニット14の高圧給水ポンプ44は、凝縮器13で液化された凝縮水を加圧し、配管18を通して再び蒸発器11に供給する。
上記のような全体システム構成を有するランキンサイクル装置10は、他の関連構成要素として、次のような要素を備えている。
膨張機12のケーシング21には、漏れた水蒸気を配管16に戻すためのブリーザ(セパレータ)23が設けられる。また膨張機12の下部にはオイル溜め24を備え、オイル溜め24からの水が混入したオイルを油圧ポンプ25によって、配管26を通して油コアレッサ27を通すようにしている。油コアレッサ27によって水とオイルは分離され、水は比重差から油タンク28の下部に収容される。油タンク28にはフロートセンサ29で動作する弁機構30が取り付けられている。また油コアレッサ27によって分離された油タンク28の上部に溜められたオイルは配管31を通って出力軸12aに形成された油路(不図示)を経由して膨張機12の各部へ給油される。油タンク28の下部に溜められた水は、弁機構30の動作で給水ポンプユニット14の開放タンク32に配管33を通して供給される。給水ポンプユニット14の開放タンク32からは逆止弁34を介して凝縮器13への配管35が設けられている。凝縮器13には、液面位置の近傍に、液面センサ38とエアベント39が設けられる。開放タンク32から凝縮器13への給水は、液面センサ38からの信号でオン・オフ動作するモータ36で駆動されるリターンポンプ37によって行われる。さらに凝縮器13にはエアベント39を通して開放タンク32に排水する配管40が設けられている。凝縮器13から排出される凝縮水を戻す配管17は、給水ポンプユニット14の密閉タンク41内の水コアレッサ42に接続されている。また密閉タンク41内の水は、モータ43によって動作する高圧給水ポンプ44によって配管18を通して蒸発器11に供給される。さらに凝縮器13にはその場所に応じて独立に冷却風を生じさせるための複数の冷却ファン46,47,48が設けられている。
上記の構成において、凝縮器13の内部の液面位置から下側部分に関連する装置部分、および給水ポンプユニット14によって作動媒体供給装置が構成される。ランキンサイクル装置10における密閉された作動媒体の循環系において、膨張機12のブリーザ23から漏れた作動媒体は出口P2を介して、配管16に戻され、循環系内に戻される。
図2は、上記の給水ポンプユニット14の具体的構造を示す構成図である。給水ポンプユニット14は、水コアレッサ42と密閉タンク41と駆動モータ43で動作する高圧給水ポンプ44と開放タンク32とリターンポンプ37と逆止弁34とから構成される。なお図2中、駆動モータ43の回転軸49が紙面に平行に図示してあるが、これは説明の便宜のためであって、実際は、回転軸49が紙面に垂直になるように配置されている。駆動モータ43の回転軸49にはカム機構49aが係合しており、カム軸となっている。
上記において、水コアレッサ42は油分分離を行う。密閉タンク41は高圧給水ポンプ44からのリーク水を直接回収する。高圧給水ポンプ44は、要求水量をポンプ回転数により制御して供給する。また開放タンク32は、系外へのリーク水の一時貯蔵をするためのものである。リターンポンプ37は密閉タンク41へのリーク水の戻しまたは凝縮機13の過冷却器への水の戻しを行う。すなわち、リターンポンプ37は、逆止弁151を備えた配管152を通して開放タンク32から密閉タンク41へリーク水を戻し、必要に応じて逆止弁34を備えた配管35を通して凝縮器13の過冷却器に水を送る。配管152における逆止弁151は密閉タンク41からの逆流を防止し、配管35における逆止弁34は、凝縮器13の過冷却器からの逆流を防止する。凝縮器13の出口13aからの水は、配管17を通して駆動モータ43により駆動される高圧給水ポンプ44に入る。高圧給水ポンプ44は配管18を通して水を蒸発器11に送る。またリーク水が配管40により開放タンク32に戻される。
次に、排出弁装置203について説明する。排出弁装置203において、第1リリーフ弁22を高圧ポンプ44の排出口と蒸発器11の入り口との中間位置に設け、まず、水状態で放出することで減圧させたあと、蒸発器から逆流した蒸気が低圧状態で放出されるようにする。リリーフ回路は、(1)排水先を蒸発器11の下流の排気管45内への配管204と案内した場合、(2)蒸発器11の上流へ配管205により案内する場合がある。第1リリーフ弁22が作動する場合、システムは緊急に停止される必要がある。そのため第1リリーフ弁22を高圧ポンプ44の吐出口と蒸発器11の入り口との中間位置に設け、まず初期の高圧の間は水状態でリリーフさせ、その後減圧してから蒸発器11より逆流してきた蒸気が放出されるようにする。従って、リリーフ回路の分岐位置はあまり蒸発器11に近い位置は望ましくはなく、十分な作動媒体量が水状態で排出できるよう高圧給水ポンプ44の吐出口に近い位置でかつ排気管45までの距離がなるべく短い位置がよい。第1リリーフ弁22が作動した場合、伝熱管内部は流れが瞬時に止まり、続いて逆流をはじめる。このため排ガス熱流量が大きければ伝熱管の過昇温の恐れがある。このためリリーフ回路の戻し先によって以下の2つの方法がある。
(1)熱源(排気管45/蒸発器11)へ排出する場合では、リリーフ回路の案内先が蒸発器11の上流になるので瞬間的に大流量の作動媒体が蒸発器11に向けて噴射することができるが、その噴射量が大きすぎると伝熱管や蒸発器11筐体部材を急冷することになり熱衝撃による劣化等が懸念される。従って、あらかじめリリーフ回路にオリフィス209等を挿入して蒸発器11の熱容量に応じた最適な噴射量になるように設定することにより、高圧回路の圧力低下速度をやや阻害するものの、伝熱管の急冷ならびに過昇温による2次的損傷が回避しつつ、エンジンの出力状態を徐々に低下させることを可能にするという効果を有する。さらにまた、熱源(排気管45/蒸発器11)を冷却することは、蒸発器11で高温高圧蒸気を発生させる熱源(排気管45)および、発生した蒸発器11の高温高圧蒸気を冷却することであり、結果的に、排出される作動媒体の蒸気は、さらに低温低圧化が図れる。
(2)排気管45(蒸発器11下流)へ排出する場合では、蒸発器11の下流に案内した場合、リリーフ回路へのオリフィス209等の流量調整機構を設ける必要がないので水側回路としてはもっとも簡便な方法であり、(1)に比べ高圧回路の圧力をよりはやく下げることができる。しかしながら、高熱負荷時などに安全弁が作動した場合、一時的に蒸発器11が空だき状態となり過昇温による伝熱管の2次的損傷が危惧されるので、安全弁22の作動と同時にエンジン出力を急速に制限する等の制御により蒸発器11へ過大な熱量が入らないようにする必要がある。
次に、図3を参照して、上記のランキンサイクル装置10を車両に搭載したときの構成例を説明する。
301は車両前部のボディ形状の輪郭を示し、302は前輪を示している。ボディ301の内部はエンジンルーム303になっており、エンジンルーム303内にはエンジン50が搭載されている。エンジン50の背面側には排気マニホルド51が設けられ、排気マニホルド51には前述した排気管45が接続されている。上記の蒸発器11は、排気管45における排気マニホルド51に近い箇所に設けられる。蒸発器11には、高圧給水ポンプ44からの配管18が接続されている。配管18は、排気マニホルド51から排出される排気ガスの熱を熱源とする蒸発器11に水を供給する。蒸発器11は、排気ガスの熱で水を水蒸気に相変換し、膨張機12の水蒸気流入口52に接続される配管15によって水蒸気を膨張機12に供給する。膨張機12は、水蒸気の膨張エネルギを機械的エネルギに変換する。
膨張機12の水蒸気流出口53は配管16につながっている。この配管16と、高圧給水ポンプ44の入口側に通じる密閉タンク41との間には、水蒸気を冷却・凝縮させて液体にする凝縮器13が配置されている。凝縮器13は車両前部の前面に位置している。図3では、その他に、開放タンク32、水コアレッサ42、リターンポンプ37、油コアレッサ27、過冷却器(凝縮器13の液相部)54、エアベント39、逆止弁34等のレイアウト状態が示されている。
また、配管18には、分岐管200に安全弁22が取り付けられ、安全弁22からは配管204が接続されその排出口は、排気管45に向けて設けられている。また、点線で示されるような配管205により、オリフィス209を設けて蒸発器11の上流側に排出するようにしてもよい。
上記の高圧給水ポンプ44、蒸発器11、膨張機12、凝縮器13等は、前述の通り、熱エネルギを機械的エネルギに変換するランキンサイクル装置を構成している。
次に、上記ランキンサイクル装置の動作を水および水蒸気の流れに沿って説明する。
凝縮器13で冷却・凝縮された水は、高圧給水ポンプ44で加圧され、配管18を通って蒸発器11に供給される。
液相作動媒体である水は、蒸発器11で熱エネルギを付加されて加熱され、さらに過熱されて昇温昇圧された高温高圧の水蒸気となり、膨張機12に供給される。膨張機12は、昇温昇圧された高温高圧の水蒸気の膨張作用によって熱エネルギを機械エネルギに変換する。これにより、膨張機12に付設されたモータ/ジェネレータ19は機械的エネルギを得る。
膨張器12から流出した水蒸気は降温降圧された水蒸気となり、凝縮器13に流入する。凝縮器13に流入した降温降圧された水蒸気は、ここで再び冷却・凝縮され、その後、凝縮水となって水コアレッサ42を介して高圧給水ポンプ44に供給される。以後、作動媒体である水は上記の循環を繰り返し、膨張機12に昇温昇圧された高温高圧の水蒸気を供給し続ける。
次に、排出弁装置203の第2リリーフ弁202と第1リリーフ弁22の設定について説明する。図4は排ガスエネルギの時間変化のグラフであり、図5は、目標給水量の時間変化のグラフであり、図6は蒸気圧力の時間変化のグラフである。図4〜図6の横軸は時間を示し全図の時間軸は共通である。図4では、車両の発進、停止などに伴い、排ガスエネルギが変化し、排ガスエネルギと目標給水量の変化に伴い、蒸気圧力は曲線P1,P2,P3のように変化する。また、図6の直線L10は膨張機または蒸発器の許容限度圧力を示す。そこで、安全弁の作動圧力を直線C11と直線C12に示すように通常の蒸気圧力より高く設定する。
第2リリーフ弁202を単独で用いる場合は、その作動圧力は運転圧力に対し約2倍の圧力(第1作動限度圧力)に設定する。それにより、システムの運転圧力を維持しつつ、過剰圧のみ減圧するのでランキンの運転を保持することができる。リリーフ回路は、配管207で排気管内へ接続する方法と、配管208で開放タンクへ接続する方法とがあり、後者の場合、作動媒体を回収・再生できる。
第1リリーフ弁22を単独で用いる場合、その作動圧力は運転圧力に対し約2.5倍(第2作動限度圧)に設定する。それにより、耐圧限界に近い許容限度圧力以下で必ず圧力が開放されるので蒸発器や膨張機は確実に保全され、安全弁の破裂板を交換後システムを再稼働することができる。
第1リリーフ弁22と第2リリーフ弁208を併用する場合、それぞれの弁の作動圧力は1,2と同様に設定される。それにより、リリーフ弁の誤作動に対するフェールセーフをとることができる。
図7は、第2リリーフ弁202の縦断面図である。リリーフ弁は、弁本体401とこれに螺着される弁体支持部402と弁体支持部402に被せられるキャップ403がネジ機構により結合されており、Oリング404とシール405により上下動可能な軸状弁体406が上部に設けたスプリング407によって弾支されて固定されている。配管口408の圧力が設定値より高くなると、軸状弁体406の端部がその圧力によりスプリング407を押し、Oリング404と軸406との間に隙間ができ、その隙間からリークするようになっている。
図8は、第1リリーフ弁22の実施例としての破裂式安全弁を示す。ホルダA410とホルダB411からなり、ホルダA内にバックアップリング412に支えられた破裂板413が固定されている。破裂板413は、図9(a)、(b)に示すように、所定の圧力が掛かったときには、図9(b)に示すようにディスク部414が開くようになっており、それにより、所定の圧力異常になったときは、リークするようになる。
次に、図10〜図18を参照して、上記ランキンサイクル装置10における凝縮器13内に貯留される水の液面位置の制御について説明する。
図10は上記ランキンサイクル装置10のシステムを凝縮器13を中心にして描いたものであり、凝縮器13は車両前方側から見た正面図として描かれている。図10では、凝縮器13の内部における作動媒体の状態(水(または凝縮水):W1、水蒸気:W2)が示されている。また図5は凝縮器13における冷却ファン46,47,48の配置関係を示す凝縮器の側面図であり、同時に内部の状態も示されている。
凝縮器13は、上端部に水蒸気導入室13A、下端部に集水室13Bを備え、さらに中央に中間室56を備える。水蒸気導入室13Aと中間室56の間、中間室56と集水室13Bとの間には、それぞれ、複数本の冷却パイプ55が設けられ、各室は連通された状態になっている。冷却パイプ55の周囲には冷却フィン55aが設けられている。
凝縮器13の水蒸気導入室13Aは、配管16を介して膨張機12の水蒸気流出口53と接続されている。凝縮器13の集水室13Bは、配管17等を介して給水ポンプユニット14に接続されている。前述の通り、膨張機12は配管15を介して蒸発器11に接続され、同様に給水ポンプユニット14は配管18を介して蒸発器11に接続されている。蒸発器11は、排気管45を介してエンジン(熱源)50の排気ガスからの熱50Aを受ける。給水ポンプユニット14内には、前述した通りの密閉タンク41、水コアレッサ42、高圧給水ポンプ44、駆動モータ43、開放タンク32、リターンポンプ37、モータ36等の各構成要素が示されている。
凝縮器13では、水蒸気W2が冷却されて凝縮し、水(凝縮水)W1となり、その内部の下側に貯留される。中間室56内で示された水平線は、液面65を示し(図1中、液面位置P1に相当)、凝縮器13内に貯留された水W1の液面の位置を示している。中間室56内の液面65の位置に対応させて所要の位置に液面センサ38と中間排水口59が設けられている。液面センサ38から出力される液面位置に係る検出信号は制御装置60に送られる。制御装置60は、液面位置検出信号に基づきモータ制御指令信号を生成し、このモータ制御指令信号をリターンポンプ37のモータ36に与える。他方、中間排水口59には水蒸気用のエアベント39が接続される。エアベント39の出口側は、チャッキ弁58を備えた配管40を介して開放タンク32に通じている。配管40には並行に排気ポンプ57が付設されている。
また凝縮器13では、図11に示されるように、その背面側に、水蒸気W2の存在領域部分に対応して冷却ファン46が配置され、水W1の存在領域部分に対応して冷却ファン47,48が配置されている。冷却ファン46の冷却動作は、例えば水蒸気W2が供給される配管16に取り付けられた圧力センサ61の水蒸気圧力検出信号に基づき圧力制御装置62によって制御される。冷却ファン46は水蒸気圧力調整に用いる凝縮用冷却ファンである。また冷却ファン47,48の冷却動作は、例えば水W1が流れる配管17に取り付けられた温度センサ63の水温検出信号に基づき温度制御装置64によって制御される。冷却ファン47,48は凝縮水を冷却するための水冷却用冷却ファンである。図11で、A1は冷却ファン46の回転動作に基づく前方からの冷却用空気の流れを示し、A2は冷却ファン47,48の回転動作に基づく前方からの冷却用空気の流れを示している。上記のように、凝縮器13では、水蒸気W2に対応する機器部分である気相部(水蒸気凝縮部)70の冷却と、水W1に対応する機器部分である液相部(凝縮水冷却部)71の冷却は、それぞれ独立に行われる。72は、独立な各冷却領域を区画するシュラウドである。
上記の構成において、膨張機12の水蒸気流出口53から出る水蒸気は大気圧相当である。上側の冷却パイプ(凝縮管)55の各々の出口集合部である中間室56では、液面65をこの空間内に位置するよう調整するために、エアベント39から水を排出する。また高圧給水ポンプ44は、ランキンサイクル装置10のメインの循環回路の給水ポンプとして、所要量の水を蒸発器11に送る。
さらに上記の構成において、リザーブ用開放タンク32は、大気開放型であり、システム内の密閉された循環回路に対しリザーブ用として予備的な水を保有しておく。リターンポンプ37は、液面センサ38の信号を受けて凝縮器13内に給水する。排気ポンプ57は、凝縮器13を負圧で運転するときはエアベント39の下流を吸引する。
なお、上記の排気ポンプ57の動作については、図11に示した圧力センサ61と圧力制御装置62によって負圧時を感知させることにより動作させたり、あるいは、液面センサ38の検出により液面65の位置が所定範囲の上限を超えるときに感知させ、制御装置60によって動作させる、ように構成することができる。
またチャッキ弁58は、凝縮器13内が負圧になる場合に大気の逆流を防ぐ。逆止弁34は、リターンポンプ37の逆流を防止する。水蒸気用エアベント39は、水、空気は通すが水蒸気は通さない。中間排水口59は不凝縮性ガスの排出、水のオーバーフローにより凝縮水の液面65の位置の変化に制限を与え、所定の範囲で液面位置が変動するようにするためのものである。液面センサ38は、液面65に係る位置信号を制御装置60に出力する。制御装置60は、液面65の位置が中間室56内に存するようにリターンポンプ37の動作を制御する。液面65の位置は、エアベント39と液面センサ38の間の範囲に含まれる高さ位置になるように制御される。液面センサ38には、例えば静電容量式レベルセンサやフロート式レベルスイッチが用いられる。
圧力センサ61は、凝縮器13の内部の圧力を検出するもので、基本的に水蒸気W2の圧力を検出する。圧力制御装置62は、凝縮器13の内部圧力が設定値になるように冷却ファン46を動作させる。温度センサ63は、凝縮水W1の温度を検出する。温度制御装置64は、凝縮水温度が設定値になるように冷却ファン47,48を動作させる。
図12〜図14を参照してエアベント39の構造・作用を詳述する。図12と図13はエアベント39の閉じているときの状態を示し、図12は縦断面図、図13は図12でのA−A線断面図である。また図14はエアベントの開いているときの状態を示す縦断面図である。図12等において、エアベント39の左側が凝縮器側であり、右側が大気側である。エアベント39は、内部が飽和水蒸気で満たされているときには密閉され(図12)、水や空気などの不凝縮性ガスが存在するときには自動的に開放され、水や不凝縮性ガスを排出して再び密閉する(図14)。
エアベント39は、容器中央の位置に配置された弁66と、この弁66を支持する弁サポート67と、弁口(パッキン)68を備える。弁サポート67で支持された弁66は、弁口68を塞ぐことができる位置関係にて配置されている。弁66は2枚のダイヤフラム66aを密閉空間を形成するように組み合わせて形成され、その内部の密閉空間にサーモリキッド(感温液)69を収容している。サーモリキッド69は、水と同じように、或る圧力下、或る温度以下では液体であり、或る温度以上になると気体となって膨張するという特性を有している。図15にサーモリキッドの飽和曲線C1と水の飽和曲線C2を示す。サーモリキッド69が気体になる温度は、水が蒸気になる温度よりもΔT(約10℃)だけ低い温度であるため、エアベント39の内部が水蒸気W2の雰囲気の時にはサーモリキッド69は気化して気体となっており、膨張したサーモリキッド69の入った密閉空間が両側のダイヤフラム66aを外方へ押し、ダイヤフラム66aで形成される弁66と弁口68との間にあった隙間を閉じる(図12)。逆に内部が低温である場合(周囲環境が空気のごとき不凝縮性ガスA3等である状態)はサーモリキッド69は液体の状態であり、ダイヤフラム66aは内方へ収縮し、弁66と弁口68の間の隙間から空気等が排出されることになる(図14)。
以上の構成において、制御装置60は、冷却ファン46で冷却して水蒸気W2を水(凝縮水)W1に戻す凝縮器13における液面65の位置を所定範囲内で変化させるように制御するための制御装置である。制御装置60は、凝縮器13における気相部70と液相部71との境界である液面65の位置を検出する液面センサ38からの検出信号に基づき、上記の所定範囲の下限よりも低下するときには凝縮器13内に水を供給するリターンポンプ37のモータ36の動作を制御し、不足分の水を開放タンク32から配管35を介して補充する。また液相部71の液面65の位置が上記の所定範囲の上限を超えるときには、中間排水口59とエアベント39等により開放タンク32に超過した水を排出する。こうして、液面センサ38に基づく下限およびエアベント39に基づく上限で決まる範囲によって液面65の位置の望ましい所定範囲が設定される。
さらに詳しく説明する。凝縮器13の中間室56に、水(凝縮水)W1を排水するのための中間排水口59を設置して液面65の上限位置を規制する。中間排水口59以上に液面65が上昇したときは中間排水口59からリザーブ用開放タンク32に水をオーバーフローさせることにより液面65の位置を下げる。液面65が中間排水口59より下側に位置するときには、中間排水口59から水蒸気が排出されないように、中間排水口59にはエアベント39が設置されている。図12〜図14に示したように、水蒸気の排出を阻止するためのエアベント39は、内部に水蒸気が存在するときには自動的に閉弁し、内部に空気(不凝縮ガス)や水が存在するときには自動的に開弁する作動を行う。また中間排水口59の下側の位置には液面センサ38を配置して、液面65の位置が液面センサ38よりも低下したときには開放タンク32からリターンポンプ37により給水して液面65の位置を液面センサ38の位置まで上昇させる。上記の作用に基づき液面65の位置は常に中間排水口59と液面センサ38の間の範囲内に維持される。中間排水口59と液面センサ38の間隔が広くなると、水蒸気W2側と水(凝縮水)W1側の伝熱面積の誤差が大きくなる。逆に当該間隔が小さくなると、リターンポンプ37とエアベント39の動作が頻繁に起きることになる。従って、中間排水口59と液面センサ38の間隔は、これらの2つの影響が共に小さくなる範囲に設定されればよい。さらに該伝熱面積を一定化することを主眼とすれば、当該間隔は限りなく小さく、ゼロとすることが望ましい。
図16に液面65の位置設定の詳細を示す。図16で、(A)は液面センサ38とエアベント39と液面65の位置関係を示し、(B)は液面位置とエアベントの動作とリターンポンプの動作との関係を表で示している。
図16の(A)では、上限液面位置としてHA、下限液面位置としてHB、液面位置65としてHLがそれぞれ設定されている。液面65の位置HLが上限液面位置HAより高いときには、エアベント39は開状態であり、リターンポンプ37はオフ(OFF)である。液面65の位置HLが、上限液面位置HAと下限液面位置HBの間にあるときは、エアベント39は閉状態であり、リターンポンプ37はオフである。液面65の位置HLが下限液面位置HBより低いときには、エアベント39は閉状態であり、リターンポンプ37はオン(ON)である。以上により、液面65の変動は上限液面位置HAと下限液面位置HBの範囲内に抑えられる。
またランキンサイクル装置10の起動・停止時や過渡的変化時に水蒸気の流入量(質量流量)や凝縮器13から高圧給水ポンプ44への排水量(質量流量)が変化する場合にも、凝縮器13の内部における液面65の位置の変動を抑制し、安定して凝縮器13の運転を行うことができる。
さらに、図10で示したように、ランキンサイクル装置10の密閉された主回路とは別に、大気開放のリザーブ用開放タンク32が設けられている。開放タンク32は、凝縮器13と、その中間排水口59に接続されたエアベント39とチャッキ弁58を介して接続されている。また開放タンク32の下部は、リターンポンプ37と配管35と逆止弁34を介して凝縮器13の出口部13aに接続されている。液面65が中間排水口59より高い場合には水は開放タンク32にオーバーフローされ、液面65が液面センサ38より低い場合にはリターンポンプ37が作動して水の補充が行われる。凝縮器13の下流に位置する高圧給水ポンプ44は給水量が制御されているため、リターンポンプ37が作動すると、凝縮器13内への給水で液面65が上昇して液面センサ38の位置でリターンポンプ37は停止する。また中間排水口59と液面センサ38を含む領域に中間室56を設けて複数の冷却パイプ(凝縮管)55が集合するような構造としたため、中間排水口59からの排水時やリターンポンプ37からの給水時に液面65の変化の応答性を良好にし、かつ安定させることができる。なお、水蒸気導入室13A側と集水室13B側の中間室56部分を各冷却パイプ(凝縮管)55が連通されていればよく、中間室56を設けることは必須のことではない。
次に、図17のフローチャートを参照して、制御装置60において実施される液面位置制御の流れを説明する。
最初に、液面センサ38によって液面65の位置HLの読込みを行う(ステップS10)。液面位置HLが上限液面位置HAよりも高いか否かが判断される(ステップS11)。もし液面位置HLが上限液面位置HAより高いときには、エアベント39が開かれて排水され、液面65が下げられる(ステップS12)。その後、リターンに移行してステップS10に戻る。もし液面位置HLが上限液面位置HA以下のときには、エアベント39を閉じる(ステップS13)。次のステップでは、液面位置HLが下限液面位置HBより低いか否かが判断される(ステップS14)。もし液面位置HLが下限液面位置HBより低いときには、リターンポンプ37がオンになり、水が補給される(ステップS15)。もし液面位置HLが下限液面位置HB以上のときには、リターンポンプ37がオフとなり、水の補給は行われない(ステップS16)。その後、リターンに移行してステップS10に戻る。
図18は、本実施形態に係るランキンサイクル装置10を搭載した車両の車速変化とエンジン出力変化と蒸発器への給水流量と凝縮器の液面位置の変化を、従来装置と比較して示すタイミングチャートである。図18の(A)は車速の変化、(B)はエンジン出力の変化、(C)は従来装置での蒸発器給水流量の変化、(D)は従来装置の凝縮器での液面位置の変化、をそれぞれ示す。図13で横軸は時間である。ランキンサイクル装置が搭載された車両が図18(A)で示すような車速変化をするとき、図18(B)で示すようにエンジン出力が変化し、それに関連して図18(C)に示すように蒸発器への給水流量の変化が生じ、さらに図18(D)に示すように凝縮器の液面位置が変化する。換言すれば、横方向の時間軸において、車両が時刻t1,t3,t5で発進し、時刻t2,t4,t6で停止したとき、その車両の発進・停止に伴ってエンジン出力は変化し、蒸発器への給水流量も変化し、凝縮器の液面位置が変動する。
上記のように、従来の車載用ランキンサイクルの凝縮器100では、図18(A)に示したように車両の発進・停止時や過渡的車速変化時に、図18(B)に示すごとくエンジン出力が変化するので、蒸発器111への給水流量が変化し、凝縮器100の冷却パイプ103における液面位置112が変動することになる。つまり、凝縮器100において、水蒸気の流入量が凝縮水の排水量より多い場合には液面位置112は上昇し、水蒸気の流入量が凝縮水の排水量より少ない場合には液面位置112は低下することになる。
上記に対して、本実施形態の構成によれば、車両が図18(A)で示すような車速変化をするとき、前述の通り液面位置の制御が行われるので、液面位置は、車両の発進時と停止時において上限位置HAと下限位置HBの間での変動のみであり、大きな変動は起こらない。
以上のように、凝縮器13内に貯留される水(凝縮水)W1の液面65の位置変動を所定範囲に抑制することにより、凝縮器13における水蒸気に対応する気相部と凝縮水に対応する液相部の互いの伝熱面積の変化を低減して、その伝熱面積の変化を考慮することなく冷却を行え、かつ制御の精度向上を図り、ポンプ装置内のキャビテーションおよび、蒸発器11での再加熱の際の余分な熱エネルギの消費を低減する凝縮器13の液面位置制御装置を得ることができる。
また伝熱面積の変化幅を許容範囲内に保つことができ、かつ液相作動媒体の排出と補充供給の切換え動作にヒステリシスを持たせることができ、それによって切換え動作の頻度を少なくし、凝縮器の作動安定化と共に、排出および補充供給に係わる装置の耐久性が向上する。さらに、液相作動媒体(水)を排出して設定液面を適切に制御しつつ、気相作動媒体(水蒸気)の排出は阻止するので、凝縮器の作動安定化を図ることができる。また、液相作動媒体を蓄えたリザーブ用開放タンクからリターンポンプを介して直接に設定液面まで液相作動媒体の補充供給することができ、これにより液面位置の調整をポンプの高応答・高精度の供給量制御により、液面位置を早期に正確に安定させることができる。さらに、回路内で作動媒体の総質量流量を維持しつつ液面位置制御が可能となり、作動媒体の外部への排出、および外部からの補充という特別な装置を付加する必要がない循環回路として構成できる。さらに、凝縮器の各冷却パイプ毎の液面位置のばらつきを少なくでき、液相作動媒体の排水および補充供給時における液面を早期に正確に安定させることができ、凝縮器の作動安定化を行うことができる。