JP4025476B2 - インジェクタ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、燃料噴射装置に係り、特にコモンレール式燃料噴射装置等に適用され、エンジンに高圧燃料を噴射するためのインジェクタの改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えばディーゼルエンジンに適用されるコモンレール式燃料噴射装置では、100MPa以上の高圧燃料がコモンレールからインジェクタに供給され、その高圧燃料がインジェクタよりエンジンに噴射供給される。本インジェクタの場合、先端部に設けられたノズルニードルの開閉をコマンドピストンで制御し、それにより燃料噴射を実施するよう構成される。すなわち、コマンドピストンの背後に制御室を設け、その制御室に高圧燃料を導入する。そして、制御室の圧力を一時的に減圧することにより、インジェクタ先端部に対してコマンドピストン及びノズルニードルを後退させ、燃料噴射を行わせる。
【0003】
制御室を高圧状態から低圧に切り替える構成として、インジェクタの閉弁時には制御室に高圧燃料を導入すると共に低圧側への連通路を閉鎖しておき、インジェクタの開弁時(燃料噴射時)になると、制御室と低圧側への連通路とを連通して制御室内の高圧燃料をリークさせ、同制御室の圧力を減圧する。
【0004】
また、この種のインジェクタとして、制御室と低圧側の通路との間を連通又は遮断するための弁体(ボール)と、その弁体を移動させるための電歪アクチュエータ(ピエゾアクチュエータ)とを備えるものがある。このインジェクタでは、電圧の印加に伴い電歪アクチュエータを伸長させ、それにより弁体を移動させて制御室内の高圧燃料を低圧側にリークさせる。例えば、米国特許5,779,149号公報に開示されたインジェクタは同様の構成を持つ。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、既存のインジェクタでは、前記弁体に常に100MPa以上の高圧燃料が作用している状態で、その高圧燃料による付勢に抗して電歪アクチュエータを伸長させ、高圧燃料の流れを切り替えなければいけないため、電歪アクチュエータが大型化されるといった問題を招く。近年、各種の構成部品を小型化したいという要望があり、その要望に応えるにもアクチュエータ部分の小型化対策を講じる必要がある。
【0006】
本発明は、上記問題に着目してなされたものであって、電歪アクチュエータの小型化を実現することができるインジェクタを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載のインジェクタによれば、電歪アクチュエータが伸長されない状態では、少なくとも高圧燃料により弁体が第1のシート面に押圧されると共に、同じく高圧燃料によりインジェクタボディに摺動可能に配設されたピストン部材が、弁体を第1のシート面から離間させる方向に押圧される。この状態で弁体が第1のシート面に当接することにより、コマンドピストン背後の制御室と低圧リーク側との間が遮断される。このとき、制御室に高圧燃料が導入され、該制御室が高圧状態で保持されることから、ノズルニードルが閉位置のまま保たれ、燃料噴射は行われない。また、電歪アクチュエータが伸長されるとピストン部材が移動し、それに伴い弁体が第1のシート面から離れ、高圧燃料がリークするので制御室の圧力が一時的に減圧され、ノズルニードルが開位置に移動して燃料噴射が行われる。
【0008】
また、本インジェクタでは、第1のシート面で弁体がシートされる部位の径とピストン部材の径とがほぼ一致するので、第1のシート面から弁体を離間させる方向に高圧燃料がピストン部材を押圧する力と、第1のシート面に弁体を当接させる方向に同じく高圧燃料が当該弁体を押圧する力とがほぼ一致する。従って、弁体に作用する力の均衡が保たれる。その結果、弁体の移動に際し、電歪アクチュエータに要求される駆動力が小さくなり、当該アクチュエータが小型化できる。電歪アクチュエータが小型化できれば、インジェクタの小型化も実現できる。
加えて、本インジェクタでは、電歪アクチュエータの伸長に伴い大径ピストンを変位させてその変位量を燃料導入室を介してピストン部材に伝えるので、電歪アクチュエータの伸長量が比較的小さくてもそれが拡大されて弁体の移動量となる。従って、電歪アクチュエータがより一層小型化できる。
【0009】
請求項2に記載のインジェクタによれば、電歪アクチュエータの伸長に伴い弁体が移動する時、弁体が第2のシート面に当接し、制御室への高圧燃料の導入が停止される。またこのとき、弁体が第1のシート面から離れるので、制御室と低圧リーク側とが連通される。本発明では特に、第2のシート面で弁体がシートされる部位の径とピストン部材の径とをほぼ一致させているので、電歪アクチュエータの伸長により弁体が第2のシート面に当接する際、弁体に作用する力は、アクチュエータ伸長以前の力のバランス状態に対し当該アクチュエータ伸長分の力が加わったものとなる。この場合、電歪アクチュエータに要求される駆動力は当該アクチュエータの伸長分だけで良く、その駆動力が自ずと小さくなる。それ故、インジェクタがより一層小型化できることとなる。
【0010】
また、請求項2のインジェクタでは、制御室への高圧燃料の導入を許容する第1のシート面と、制御室への高圧燃料の導入を停止させる第2のシート面とを設け、弁体が第1又は第2のシート面の何れかに当接するよう変位するので、弁体を第2のシート面側に移動させて制御室を減圧する際(高圧燃料を低圧側にリークする際)にスイッチングリークが生じることはなく、インジェクタの応答性が確保される。
【0011】
請求項3に記載のインジェクタでは、電歪アクチュエータの伸長方向とは逆向きに弁体又はピストン部材を付勢する付勢手段を備えるので、電歪アクチュエータが伸長されない場合においてインジェクタの閉弁状態が確実に保持される。
【0012】
上記の如く、ピストン部材と弁体とを挟んでその両端を高圧燃料で押圧する場合、弁体とは逆側のピストン部材の端面に設けた燃料導入室を、所望の高圧状態に保持する必要がある。そこで、以下の請求項4〜6の発明を提案する。
【0013】
請求項4に記載のインジェクタでは、電歪アクチュエータとピストン部材との間に設けた別のピストン、又はピストン部材の何れか一方の外周面に高圧燃料の導入溝を設け、燃料導入室から導入溝までの間におけるピストン部材又は別のピストンの外周摺動面のクリアランスを、他側の外周摺動面のクリアランスよりも大きくした。この場合、前記ピストン部材又は別のピストンの外周摺動面のクリアランスを通って高圧燃料が燃料導入室に導入され、当該燃料導入室は常に所望の高圧状態で保持される。
【0014】
請求項5に記載のインジェクタでは、電歪アクチュエータとピストン部材との間に設けた別のピストン、及びピストン部材の各々の外周面に高圧燃料の導入溝を設け、ピストン部材又は別のピストンの何れかの導入溝の燃料圧を、前記高圧燃料の圧力よりも僅かに低くした。この場合、燃料導入室は、2つの導入溝に挟まれ、両方の導入溝の中間の圧力で保持される。この中間の圧力は高圧燃料の圧力にほぼ等しいので、燃料導入室は常に所望の高圧状態で保持される。
【0015】
請求項6に記載のインジェクタでは、燃料導入室への高圧燃料の導入通路の途中に、当該燃料導入室の内外の圧力差に応じて開閉するチェック弁を設けた。この場合、燃料導入室の圧力が高圧燃料の圧力よりも低下すると、チェック弁が開いて高圧燃料が導入されるので、当該燃料導入室は常に所望の高圧状態で保持される。
【0016】
また、請求項7に記載のインジェクタでは、燃料導入室を囲むようにして、高圧燃料を導入する高圧導入路を複数箇所に設けた。この場合、燃料導入室に導入される燃料が高圧であり、それが原因で燃料導入室の径が拡大しようとしても、その周囲の高圧導入路に高圧燃料が導入されるので、燃料導入室の径が拡大されることはない。従って、ピストン部材等の外周クリアランスが拡張されることはなく、燃料導入室からの高圧燃料のリークが防止される。
【0018】
請求項8に記載のインジェクタでは、制御室に通じる通路の途中に第1の流量制御オリフィスを設けると共に、弁体が第1のシート面から離れて制御室から高圧燃料がリークする通路の途中に第2の流量制御オリフィスを設けた。この場合、オリフィス径を調節することにより、制御室に流入又は流出する時間当たりの燃料量が制御できる。その結果、流量制御範囲の広いインジェクタが実現できる。また、インジェクタの応答速度が容易に調整できるようになる。
【0019】
本発明では、請求項9に記載したように、コモンレールから前記制御室に高圧燃料を導入し、コモンレール圧相当の高圧燃料によりノズルニードルの開閉を行い、先端部に設けた噴孔から高圧燃料を噴射すると良い。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、この発明を具体化した一実施の形態を図面に従って説明する。本実施の形態の燃料噴射装置は、車両用ディーゼルエンジンに採用されるコモンレール式燃料噴射装置として具現化されるものであり、コモンレール(蓄圧配管)に蓄えられた高圧の燃料(軽油)はインジェクタの駆動に伴いエンジンに噴射供給される。本実施の形態では特に、インジェクタの構成及びその動作について詳しく説明する。
【0021】
図1は、本実施の形態におけるインジェクタの構成を示す断面図である。なお以下の説明では便宜上、図1に示す状態を基準に上下及び左右の方向を指示することとする。
【0022】
インジェクタ100には、コモンレール10から例えば150MPa程度の高圧燃料が供給される。インジェクタ100は、ECU30からの制御信号に応じて開閉し、その開動作に伴い図示しないエンジンに燃料を噴射供給する。ECU30は、周知のマイクロコンピュータ、インジェクタ駆動回路等を備えて構成され、エンジン回転数Ne、アクセル開度ACC、エンジン水温THW等のエンジン運転情報を取り込み、インジェクタ100による燃料噴射時期及び燃料噴射量を最適に制御する。
【0023】
インジェクタ100はその概要として、インジェクタ駆動部として機能する第1ボディ101と、三方弁を構成する第2ボディ102と、高圧燃料を導入又は排出する制御室152が設けられる第3ボディ103とを有し、第2,第3ボディ102及び103の間にはオリフィスプレート104が配設され、第3ボディ103の下側には、燃料噴射用のノズルニードル161を収容するニードルボディ105が配設されている。これら各部材を接合した状態で第1ボディ101にリテーナ106を螺着することにより、当該各部材が油密の状態で一体化されている。
【0024】
第1〜第3ボディ101〜103及びオリフィスプレート104には、コモンレール10に通じてコモンレール圧相当の高圧燃料を導入する高圧燃料通路111とドレインタンク(燃料タンク)20に通じる低圧燃料通路112とが設けられている。
【0025】
以下、各部の構成を詳細に説明する。なお、インジェクタ100の各部の構成を明瞭にすべく、第1ボディ101付近の構成を図2に拡大して示し、第2ボディ102より下部の構成を図3に拡大して示す。但し、図2,3ではボディ外周のリテーナ106を外した状態の断面構造を示す。
【0026】
図2に示されるように、第1ボディ101に形成された孔部101aには電歪アクチュエータ121が収容されている。電歪アクチュエータ121は、圧電素子を積層して成る圧電素子部121aと、その下面に設けられるピストン部121bとを有する。電歪アクチュエータ121の上面には信号入力端子122が配設され、この信号入力端子122はリテーナ123により第1ボディ101に固着されている。電歪アクチュエータ121の圧電素子部121aは、信号入力端子122を介してECU30から取り込まれる制御信号(駆動電圧)に応じて伸縮し、制御信号に従い圧電素子部121aが伸長すると、ピストン部121bが皿バネ124の付勢力に抗して図の下方に移動する。
【0027】
電歪アクチュエータ121の下方にはピストンホルダ125が配設され、そのピストンホルダ125には駆動ピストン126が摺動可能に収容されている。駆動ピストン126の下方には、当該ピストン126よりも小径の貫通孔127が形成され、その貫通孔127内に小径ニードル128が配設されている。小径ニードル128の外周部には環状溝128aが形成されており、その環状溝128aは連通路129を介して高圧燃料通路111に連通している。駆動ピストン126及び小径ニードル128は何れも円柱状を成し、また何れも一方の端面が球面、他方の端面が平坦面で構成されて双方の平坦面が相対向している。
【0028】
変位拡大室130は、ピストンホルダ125、駆動ピストン126及び小径ニードル128で区画される空間にて形成されている。この場合、駆動ピストン外周のクリアランス(ピストンホルダ125と駆動ピストン126との間のクリアランス)に比べて、環状溝128aと変位拡大室130との間における小径ニードル外周のクリアランス(貫通孔127の壁面と小径ニードル128との間のクリアランス)を十分に大きくすることで、連通路129、環状溝128a、小径ニードル128の外周クリアランスを介して変位拡大室130に高圧燃料が導入され、同変位拡大室130内が概ね高圧燃料の圧力(コモンレール圧)に等しい圧力となる。
【0029】
実際には、駆動ピストン126の外周クリアランス(直径)を約1μm程度、環状溝128aと変位拡大室130との間における小径ニードル128の外周クリアランス(直径)を約4μm程度、それ以外の部位の小径ニードル128の外周クリアランス(直径)を約2〜3μm程度とする。
【0030】
また、変位拡大室130は、駆動ピストン126が下方に変位する時、その下向きの力を内部の燃料圧を介して小径ニードル128に伝達する。この場合、駆動ピストン126と小径ニードル128との断面積の比率に応じて、小径ニードル128の変位量が拡大される。詳細には、既述の通り駆動ピストン126の径は小径ニードル128の径よりも大きくそれら各部は断面積が相違するため、その断面積の比率を変位拡大率として駆動ピストン126の変位量を拡大しつつ、小径ニードル128を変位せしめる。すなわち、変位拡大室130は、電歪アクチュエータ121の微小な変位を上述した変位拡大率に応じて拡大し、小径ニードル128に伝える役割を果たす。
【0031】
一方、図3に示されるように、第2ボディ102には三方弁ホルダ131が螺着され、同ホルダ131の先端部は第2ボディ102に油密に接合している。三方弁ホルダ131と第2ボディ102との間にはボール室132が設けられ、そのボール室132内にボール(球体)133が収容されている。ボール133の上側に位置する三方弁ホルダ131には、円錐状をなす上側シート面134が形成され、ボール133の下側に位置する第2ボディ102には、同じく円錐状をなす下側シート面135が形成されている。ボール133は、上側シート面134に当接する位置と下側シート面135に当接する位置との間で移動する。
【0032】
三方弁ホルダ131には、小径ピン136が摺動可能に配設され、その上端面は第1ボディ101側の小径ニードル128に接すると共に、下端面はボール133に接している。小径ピン136は摺動部136aとそれよりも小径の縮径部136bとからなり、摺動部136aの直径は小径ニードル128の直径と一致する。また、縮径部136bは、三方弁ホルダ131に設けられた燃料リーク室137よりボール室132側へ突出している。
【0033】
燃料リーク室137は、ボール室132からリークした高圧燃料を導入する空間であり、燃料リーク室137に設けられたオリフィス138は、三方弁ホルダ131及び第2ボディ102のそれぞれに形成された燃料排出通路139,140を介して低圧燃料通路112に連通している。
【0034】
ボール133の下方において、第2ボディ102にはバネ室141が設けられ、同バネ室141内には押圧ピン142が配設されると共に、その押圧ピン142を付勢する圧縮コイルバネ143が配設されている。押圧ピン142の上端面はボール133に接しており、圧縮コイルバネ143のバネ力によりボール133を常に図の上方に押し上げている。バネ室141は連通路144を介して高圧燃料通路111に連通しており、ボール133には下方から高圧燃料の圧力(コモンレール圧)が作用する。また、ボール室132には燃料通路145の一端が開口している。
【0035】
かかる構成において、圧縮コイルバネ143によりボール133が押し上げられることで、上側シート面134にボール133が着座する(図示の状態)。このとき、ボール室132と燃料リーク室137との連通が遮断される一方、ボール室132とバネ室141とが連通され、バネ室141内のコモンレール圧相当の高圧燃料がボール室132を介して燃料通路145側に導入される。なお、上側シート面134に着座したボール133には、ボール133のシート面積に相当する高圧燃料による力と圧縮コイルバネ143の力とが上向きに付勢される。
【0036】
また、小径ピン136が下方に移動すると、圧縮コイルバネ143のバネ力に抗してボール133が上側シート面134から離れると共に下側シート面135に着座する。このとき、ボール室132とバネ室141との連通が遮断される一方、ボール室132と燃料リーク室137とが連通され、燃料リーク室137が燃料通路145に導通される。
【0037】
こうして、ボール133の位置が切り替えられることにより、ボール室132及び燃料通路145と、燃料リーク室137と、バネ室141との間の連通状態が切り替えられ、三方弁としての機能を呈することとなる。
【0038】
ここで、小径ニードル128の直径と小径ピン136の摺動部136aの直径とが一致することは既述したが、更にそれに加え、上側シート面134におけるボール133のシート部分の直径と下側シート面135におけるボール133のシート部分の直径も一致する。すなわち、小径ニードル128の直径、小径ピン136の摺動部136aの直径、上側シート面134のシート径、及び下側シート面135のシート径は何れも概ね等しい。これは、ボール133の上下方向に加わる力のバランスを取るべく設定されるものであり、その詳細は後述する。
【0039】
オリフィスプレート104には、前記第2ボディ102の燃料通路145に連通する燃料通路146が設けられ、その途中にはオリフィス147が設けられている。
【0040】
第3ボディ103には、コマンドピストン151が摺動可能に且つ油密に収容され、コマンドピストン151の上端面と第3ボディ103とオリフィスプレート104とで囲まれた空間に制御室152が形成されている。制御室152には、オリフィス147及び燃料通路146を通じてボール室132から高圧燃料が導入される。かかる場合、制御室152の燃料圧はボール133のシート位置に応じて制御され、制御室152の燃料圧の大きさに応じてコマンドピストン151が上下何れかの方向に移動する。
【0041】
第3ボディ103の下部には低圧室153が設けられ、その低圧室153内には上下一対のバネ受け154,155に挟まれるようにして圧縮コイルバネ156が配設されている。低圧室153は、燃料排出通路157を通じて低圧燃料通路112に連通している。
【0042】
ニードルボディ105にはノズルニードル161が摺動可能に且つ油密に収容されており、そのノズルニードル161は圧縮コイルバネ156により図の下方に付勢されている。ノズルニードル161の上端はコマンドピストン151の下端面に接し、同下端はニードルボディ105に設けられたシート面162と相対している。ニードルボディ105の先端部には複数の噴孔163が設けられている。また、ニードルボディ105には、高圧燃料通路111に連通する連通路164が設けられ、この連通路164を介して高圧室165にコモンレール圧相当の高圧燃料が導入される。そして、この高圧室165からニードルボディ105の先端部に高圧燃料が供給される。
【0043】
従って、図示する通常の状態では、ノズルニードル161がシート面162に当接して噴孔163が閉じることから、高圧燃料が噴射されることはない。これに対し、圧縮コイルバネ156のバネ力に抗してコマンドピストン151と共にノズルニードル161が後退(上昇)すると、ノズルニードル161がシート面162から離れて噴孔163が開き、高圧燃料が噴射される。
【0044】
なお本実施の形態において、第1〜第3ボディ101〜103が「インジェクタボディ」に、小径ニードル128及び小径ピン136が「ピストン部材」に、ボール133が「弁体」に、押圧ピン142及び圧縮コイルバネ143が「付勢手段」に、変位拡大室130が「燃料導入室」に、それぞれ該当する。また、上側シート面134が「第1のシート面」に、下側シート面135が「第2のシート面」に該当する。更に、オリフィス147が「第1の流量制御オリフィス」に、オリフィス138が「第2の流量制御オリフィス」に該当する。
【0045】
次に、インジェクタ100の閉弁時並びに開弁時における三方弁部分の動作と、各部に作用する力のバランス状態について図4を用いて説明する。図4は、(a)がインジェクタ100の閉弁状態を示し、(b)がインジェクタ100の開弁状態を示す。
【0046】
インジェクタ閉弁状態を示す図4(a)において、ボール133は押圧ピン142を介して圧縮コイルバネ143により付勢され、上側シート面134に押し付けられている。この状態では、ボール133が圧縮コイルバネ143により上向きに付勢されると共に、上側シート面134のシート部分に燃料圧(コモンレール圧PH)が作用する。すなわち、ボール133には、圧縮コイルバネ143のバネ力Fkと、コモンレール圧PH及び上側シート面134のシート面積Aoutの積からなる油圧力との合力が上向きに作用する。
【0047】
一方、変位拡大室130内にはコモンレール圧相当の高圧燃料が導入され、その高圧燃料により駆動ピストン126が上方向へ、小径ニードル128が下方向へ付勢される。小径ニードル128及び小径ピン136には変位拡大室130の燃料圧力が作用し、ボール133を下方に押し付けている。そのため、ボール133には、変位拡大室130のコモンレール圧PH及び小径ニードル128の断面積Adの積からなる油圧力が下向きに作用する。
【0048】
また、燃料リーク室137では、比較的小さな燃料圧(リターン圧PL)により小径ピン136が上向きに付勢されると共に、ボール133が下向きに付勢されている。従って、リターン圧PL及び小径ピン136の摺動部136aの断面積Apの積からなる力が小径ピン136に上向きに作用すると共に、リターン圧PL及び上側シート面134のシート面積Aoutの積からなる油圧力がボール133に下向きに作用する。
【0049】
このことから、ボール133に働く上向きの力Fを数式で表すと、
【0050】
【数1】
となる。上記(1)式によれば、ボール133には、圧縮コイルバネ143のバネ力に相当する上向きの力が作用することが分かる。
【0051】
また、インジェクタ開弁状態を示す図4(b)において、ボール133は小径ニードル128及び小径ピン136を介して下方に押され、下側シート面135に押し付けられシールする。このとき、電歪アクチュエータ121の伸長に伴う変位拡大室130の圧力上昇分をΔPdとすると、ボール133には、圧力(PH+ΔPd)及び小径ニードル128の断面積Adの積からなる油圧力と、リターン圧PL及び下側シート面135のシート面積Ainの積からなる油圧力とが下向きに作用する。
【0052】
また、ボール133には、コモンレール圧PH及び下側シート面135のシート面積Ainの積からなる油圧力と、リターン圧PL及び小径ピン136の摺動部136aの断面積Apの積からなる油圧力と、圧縮コイルバネ143のバネ力Fkとが上向きに作用する。
【0053】
ボール133に働く下向きの力Fを数式で表わすと、
【0054】
【数2】
となる。上記(2)式によれば、変位拡大室130の圧力上昇分ΔPdによりボール133を下側シート面135に押し付ける力(シート力)が発生することが分かる。
【0055】
次に、上記の如く構成されるインジェクタ100の動作を、図5のタイムチャートを参照しながら説明する。
先ずは、時刻t1以前のインジェクタ100の閉弁時において電歪アクチュエータ121に印加される駆動電圧が0〔V〕となる場合を考える。この場合、変位拡大室130の燃料圧は概ねコモンレール圧PHに保たれている。また、ボール133は上側シート面134に押し付けられシールする。このとき、燃料リーク室137に高圧燃料がリークすることはなく、燃料リーク室137はリターン圧PLに保たれている。この状態では、既述した通り圧縮コイルバネ143のバネ力Fkがボール133に図1の上向きに作用している。
【0056】
またこのとき、ボール133が下側シート面135から離れているためにバネ室141内の高圧燃料がボール室132に導入され、更にその高圧燃料が燃料通路145及び146を介して制御室152に導入されるため、ボール室132及び制御室152がコモンレール圧PHに保たれる。そして、コマンドピストン151の断面積がノズルニードル161の断面積よりも大きいことから、大きな燃料圧力がノズルニードル161に下向きに働き、下向きの圧縮コイルバネ156のバネ力と合いまって、ノズルニードル161がシート面162に押し付けられてシールされる。これにより、インジェクタ100の閉弁状態が保持される。
【0057】
一方、時刻t1において、インジェクタ100の開弁信号に応じて電歪アクチュエータ121に所定値電圧が印加されると、圧電効果により電歪アクチュエータ121が伸びて駆動ピストン126が下方に変位し、変位拡大室130内の圧力が上昇する。するとそれに伴い、小径ニードル128が下方に変位する。このとき、駆動ピストン126の断面積と小径ニードル128の断面積との比からなる変位拡大率に応じて駆動ピストン126の変位量が拡大され、それが小径ニードル128の変位量となる。
【0058】
ボール133は、小径ニードル128及び小径ピン136を介して下方に押され、下側シート面135に押し付けられシールする。また、ボール133が上側シート面134から離れるため、燃料リーク室137がボール室132と導通し、燃料リーク室137の圧力が一旦上昇する。ボール室132と制御室152の圧力は、燃料リーク室137側への高圧燃料のリークに伴い低下する。その後、オリフィス138及び147の流量抵抗に応じて制御室152、ボール室132及び燃料リーク室137の圧力が低下していく。なおこの状態では、前記(2)式から分かるように、変位拡大室130の圧力上昇分ΔPdにより「ΔPd×Ad−Fk」の力がボール133に図1の下向きに作用し、当該ボール133のシート力が発生する。
【0059】
ノズルニードル161には、コマンドピストン151の断面積及び制御室152の圧力の積からなる油圧力と圧縮コイルバネ156のバネ力とを合わせた力が下向きに作用すると共に、高圧室165内の高圧燃料により発生する力が上向きに作用しており、下向きの力が上向きの力を下回れば、ノズルニードル161が開弁位置に移動する。すなわち、制御室152の圧力が充分低下する時刻t2では、ノズルニードル161に働く下向きの力が上向きの力よりも小さくなり、ノズルニードル161が上昇し始める。これにより、インジェクタ100が開弁し、噴孔163より燃料が噴射される。
【0060】
時刻t2以後、ノズルニードル161が上昇速度を増し、ある一定の速度で上昇すると、制御室152、ボール室132及び燃料リーク室137の圧力が釣り合い、それら各圧力がほぼ一定のまま保持される。
【0061】
その後、時刻t3では、閉弁信号に従い電歪アクチュエータ121の印加電圧が0〔V〕に戻り、電歪アクチュエータ121が元の長さに縮むと、変位拡大室130の圧力が元のコモンレール圧PHに戻る。そのため、小径ニードル128に働く下向きの油圧力が減少し、小径ニードル128及び小径ピン136と共にボール133が上昇し、上側シート面134に当接するまで移動する。このとき、ボール室132と燃料リーク室137との間が遮断されるため、燃料リーク室137内の圧力はオリフィス138の流量抵抗に応じて徐々に低下し、やがてリターン圧PLまで低下する。
【0062】
また、ボール室132はバネ室141と連通するため、コモンレール圧PHまで上昇する。制御室152にはオリフィスプレート104のオリフィス147を通じて高圧燃料が流入し、その圧力はコモンレール圧PHまで上昇するが、制御室152の圧力により生じる下向きの力によりノズルニードル161が下方に加速され、ある一定の速度に達すると、制御室152の圧力も釣り合う圧力に保たれる。
【0063】
ノズルニードル161は、制御室152の圧力上昇に伴い下降に転じる。その後、時刻t4では、ノズルニードル161の先端部がシート面162に当接する。これにより、インジェクタ100が閉弁し、噴孔163からの燃料噴射が停止される。時刻t4以後、制御室152の圧力はコモンレール圧PHまで上昇する。
【0064】
以上の通り本実施の形態のインジェクタ100は三方弁構造を成すので、既存の二方弁構造のインジェクタと比べて、インジェクタの開弁速度が任意に設定できると共に、その設計自由度が広がるという利点を持つ。二方弁との違いを、図6を用いて簡単に説明する。
【0065】
すなわち、図6(a)に示す二方弁構造のインジェクタでは、二方弁A1が図のv1の状態(閉じ位置)にある時、流入側オリフィスA2を介して制御室A3に高圧燃料が導入される(図示の状態)。また、二方弁A1が図のv2の状態(開き位置)に変化すると、制御室A3内の高圧燃料が流出側オリフィスA4を介して低圧側にリークされる。これにより、コマンドピストンA5が上方に移動する。この図6(a)の構成では、周知の通り二方弁開弁時にも流入側オリフィスA2から高圧燃料が流入し、所謂スイッチングリークが多くなる。それ故、流入側及び流出側オリフィスA2,A4を大きくするには制限ができ、インジェクタの応答性が十分に上げられないといった問題がある。
【0066】
一方、図6(b)に示す三方弁構造のインジェクタでは、三方弁B1が図のv3の状態にある時、流入側オリフィスB2(但し、流出時にも使う)を介して制御室B3に高圧燃料が導入される。また、三方弁B1が図のv4の状態に変化すると、制御室B3内の高圧燃料が流入側オリフィスB2及び流出側オリフィスB4を介して低圧側にリークされる。これにより、コマンドピストンB5が上方に移動する。この図6(b)の構成では、燃料リーク時において、高圧側と制御室B3との間が遮断されると共に低圧側と制御室B3とが連通されるので、図6(a)とは異なり、高圧側と低圧側とが導通されることはなく、スイッチングリークが小さく抑えられる。
【0067】
以上詳述した本実施の形態のインジェクタ100によれば、以下に示す効果が得られる。
(イ)上側シート面134におけるボール133のシート面積(直径)と、下側シート面135におけるボール133のシート面積(直径)と、小径ニードル128及び小径ピン136の断面積(直径)とがほぼ一致するので、高圧燃料によりボール133に働く上向き及び下向きの力がバランスし、力の均衡が保たれる。また、電歪アクチュエータ121の伸長によりボール133が下側シート面135に当接する際、アクチュエータ伸長以前の力のバランス状態に対し当該アクチュエータ伸長分の力を加えた力でボール133が移動するので、電歪アクチュエータ121に要求される駆動力は当該アクチュエータの伸長分だけで良く、その駆動力が自ずと小さくなる。その結果、コモンレール圧相当の高圧燃料が作用するボール133の移動に際し、電歪アクチュエータ121に要求される駆動力が小さくなり、電歪アクチュエータ121が小型化できる。電歪アクチュエータ121が小型化できれば、インジェクタ100の小型化も実現できる。これにより、省電力化やコスト低減の効果も得られる。
【0068】
(ロ)上側及び下側シート面134,135を設けて三方弁構造としたので、制御室152を減圧する際(高圧燃料を低圧側にリークする際)にスイッチングリークが生じることはなく、インジェクタ100の応答性が確保される。
【0069】
(ハ)小径ニードル128の外周摺動面のクリアランスを駆動ピストン126の外周摺動面のクリアランスよりも大きくしたので、小径ニードル128の外周クリアランスを通って高圧燃料が変位拡大室130に導入され、当該変位拡大室130は常に所望の高圧状態(コモンレール圧)で保持される。この場合、特別な調圧機構を必要とせず、構成が簡素になる。
【0070】
(ニ)電歪アクチュエータ121の伸長に伴い駆動ピストン126を変位させ、その変位量を変位拡大室130を介して小径ニードル128及び小径ピン136に伝えるので、電歪アクチュエータ121の伸長量が比較的小さくてもそれが拡大され、結果として電歪アクチュエータ121がより一層小型化できる。
【0071】
(ホ)オリフィス138,147を各々独立して設定することができ、そのオリフィス径を調節することにより、制御室152に流入又は流出する時間当たりの燃料量が制御できる。その結果、インジェクタ100の設計自由度が広がり、流量制御範囲や応答速度が容易に且つ任意に調整できるようになる。
【0072】
(第2の実施の形態)
次に、本発明における第2の実施の形態を説明する。以下には第1の実施の形態との相違点を中心に説明する。
【0073】
図7は、本実施の形態におけるインジェクタ200の構成を示す断面図である。また、図8には、インジェクタ200の要部構成を拡大して示す。但し、前記図1のインジェクタ100と同等である部材については図面に同一の記号を付すと共にその説明を簡略化する。
【0074】
始めに前記図1のインジェクタ100との違いについて略述すれば、その違いとして、
・第1〜第3ボディ101〜103及びオリフィスプレート104に代えて、インジェクタボディとしての上側ボディ201及び下側ボディ202を設ける、
・変位拡大室130の調圧機構としてリリーフ弁204を設ける、
・ボール下方の「付勢手段」を省略し、ボールに働く上向きの力は油圧力のみとする、
といった構成を有する。
【0075】
図7において、駆動ピストン126及び小径ニードル128は相対向して上側ボディ201に配設され、その間に変位拡大室130が設けられている。駆動ピストン126及び小径ニードル128にはそれぞれ環状溝126a,128aが形成されている。小径ニードル128の環状溝128aには連通路129を介してコモンレール圧相当の高圧燃料が導入されるのに対し、駆動ピストン126の環状溝126aには連通路203及びリリーフ弁204を介してコモンレール圧よりも僅かに低圧の燃料が導入される。この場合、各環状溝126a,128aに導入された燃料は、駆動ピストン126及び小径ニードル128のそれぞれの外周クリアランスを通って変位拡大室130に導入される。
【0076】
リリーフ弁204について図8を用いて詳しく説明する。上側ボディ201にはその下端面に開口する凹部205が形成され、該凹部205には、シート付ブロック206、ボール207、ボール押え208及び圧縮コイルバネ209が配設されている。シート付ブロック206の通路206a内の高圧燃料は、ボール207及びボール押え208の外周クリアランスを通ってその上部にも導入される。ボール207には、ボール押え208を介して上方より圧縮コイルバネ209のバネ力が作用すると共に、上下双方から燃料圧が作用する。
【0077】
従って、変位拡大室130は、コモンレール圧相当の環状溝128aと、コモンレール圧に対して圧縮コイルバネ209のバネ力相当の圧力だけ低い圧力の環状溝126aとに挟まれることとなり、双方の圧力の中間の圧力で保持される。この場合、圧縮コイルバネ209のバネ力の調整により、変位拡大室130の圧力はコモンレール圧とほぼ等しい圧力に設定される。
【0078】
また、同じく図8において、下側ボディ202には、上側ホルダ211及び下側ホルダ212からなる三方弁ホルダ213が螺着され、上側及び下側ホルダ211,212の間に設けられるボール室214にはボール215が収容されている。上側ホルダ211には円錐状をなす上側シート面216が形成され、下側ホルダ212には同じく円錐状をなす下側シート面217が形成されている。ボール215は、上側シート面216に当接する位置と下側シート面217に当接する位置との間で移動する。
【0079】
上側ホルダ211には小径ピン218が摺動可能に配設されている。小径ピン218は圧縮コイルバネ219により常に上方に付勢され、その上端面は小径ニードル128に接している。小径ピン218の摺動径は小径ニードル128の径と一致している。
【0080】
ボール室214には燃料通路221,222を介してコモンレール圧相当の高圧燃料が導入され、この高圧燃料によりボール215が上側シート面216に当接するよう付勢されている。また、ボール室214は、オリフィス223、燃料通路224,225を介して制御室152に連通している。
【0081】
上記構成において、高圧燃料によりボール215が押し上げられることで、上側シート面216にボール215が着座する(図示の状態)。このとき、ボール室214と燃料リーク室137との連通が遮断され、高圧燃料がボール室214、オリフィス223、燃料通路224,225を介して制御室152に導入される。
【0082】
また、電歪アクチュエータ121の伸長に伴い、小径ピン218が圧縮コイルバネ219のバネ力に抗して下方に移動すると、ボール215が上側シート面216から離れると共に下側シート面217に着座する。このとき、ボール室214への高圧燃料の導入が停止されると共に、ボール室214内の高圧燃料が燃料リーク室137へリークし、結果として制御室152の圧力が低下する。
【0083】
前記図1の構成と同様に本インジェクタ200においても、小径ニードル128及び小径ピン218の断面積(直径)と、上側シート面216におけるボール215のシート面積(直径)と、下側シート面217におけるボール215のシート面積(直径)とがほぼ一致しており、高圧燃料によりボール215に働く上向き及び下向きの力がバランスするよう構成されている。
【0084】
なお第2の実施の形態において、小径ニードル128及び小径ピン218が「ピストン部材」に、ボール215が「弁体」に、それぞれ該当する。また、上側シート面216が「第1のシート面」に、下側シート面217が「第2のシート面」に該当する。更に、オリフィス223が「第1の流量制御オリフィス」に該当する。
【0085】
以上第2の実施の形態によれば、上述した第1の実施の形態と同様に、高圧燃料によりボール215に働く上向き及び下向きの力がバランスし、力の均衡が保たれる。その結果、電歪アクチュエータ121の小型化、インジェクタ100の小型化が実現できる。
【0086】
また、高圧燃料を導入する2つの環状溝126a,128aで変位拡大室130を挟み、一方をリリーフ弁204により僅かに低圧としたので、変位拡大室130の圧力を所望のコモンレール圧にほぼ等しく保つことができる。この場合、前記図1の構成(第1の実施の形態)とは異なり、小径ニードル128のクリアランスを大きくする必要がないので、燃料リーク量が低減できるといった利点を併せ持つ。
【0087】
(第3の実施の形態)
本実施の形態におけるインジェクタは基本的に前記図7の構成を用い、変位拡大室130内をコモンレール圧とするための構成及びその周辺構造のみが相違する。本インジェクタについて、前記図7との相違点を拡大して示す図9を参照して説明する。
【0088】
図9において、上側ボディ201には、駆動ピストン126を摺動可能に収容するピストンホルダ301と、小径ニードル128を摺動可能に収容するニードルホルダ302とが配設されている。これら各ホルダ301,302は油密な状態で固定されている。なお、前記図7とは異なり、駆動ピストン126及び小径ニードル128は環状溝を持たない。
【0089】
ニードルホルダ302には、高圧燃料通路303,111に連通する通路304が形成され、他方、ピストンホルダ301には、ニードルホルダ302の前記通路304に連通する通路305が形成されている。ニードルホルダ302の通路304の途中には、逆止弁として機能するチェック弁306が配設されている。
【0090】
チェック弁306について詳しくは、図10に示されるように、ニードルホルダ302に円錐シート面307が形成され、その円錐シート面307に対向して半球状の弁体308が配設されている。弁体308は、円錐シート面307とピストンホルダ301の下面との間で概ね10μm上下動可能となっている。
【0091】
従って、弁体308はその上側の平坦面が受圧面となって変位拡大室130の圧力を受け、変位拡大室130の圧力が通路304側の燃料圧(コモンレール圧)よりも低下すると、その燃料圧により弁体308が上方へ付勢される。よって、高圧燃料が円錐シート面307と弁体308との隙間を通って変位拡大室130内に導入される。また、駆動ピストン126の下方への移動に伴い、変位拡大室130の圧力が上昇した場合には、その上昇した燃料圧により弁体308が下方へ付勢され、弁体308の球面が円錐シート面307に着座しシール状態で保持される。これにより、変位拡大室130の圧力低下が防止される。
【0092】
但し、チェック弁306としては、勿論、円錐シート面307及び半球状の弁体308からなる構成以外のものでも良い。例えば、通路304を閉じる位置と同通路304を開く位置との間で移動するプレート材を用いたチェック弁(逆止弁)であっても良い。
【0093】
図9の説明に戻り、ピストンホルダ301及びニードルホルダ302には各々、駆動ピストン126及び小径ニードル128に平行に且つそれらを囲む位置に、複数個の高圧孔311,312が設けられている。各高圧孔311,312には図示しない高圧燃料通路を通じてコモンレール圧相当の高圧燃料が導入される。
【0094】
要するに、変位拡大室130に導入される燃料は高圧であるので、それが原因で変位拡大室130の径が拡大し、駆動ピストン126及び小径ニードル128の外周クリアランスが拡張されるおそれがある。かかる場合、変位拡大室130と同じ高圧燃料を高圧孔311,312に導入することにより、駆動ピストン126及び小径ニードル128の外周クリアランス拡張が防止される。従って、変位拡大室130からの高圧燃料のリーク量が低減される。
【0095】
なお、高圧燃料の導入路として、上記高圧孔311,312以外に、高圧燃料通路に連通する溝を設けても良く、こうした構成であっても同様の効果を発揮する。また、既述の図1や図7の構成においても高圧孔311,312のような構成を付加しても良い。
【0096】
本第3の実施の形態では既述の効果以外に、次の効果を奏する。つまり、高圧燃料を導入する通路の途中に、変位拡大室130の内外の圧力差に応じて開閉するチェック弁306を設けたので、変位拡大室130の圧力を所望のコモンレール圧にほぼ等しく保つことができる。
【0097】
また、変位拡大室130を囲むようにして、高圧孔311,312を複数箇所に設けたので、変位拡大室130からの高圧燃料のリークが防止される。それ故、変位拡大室130の圧力が不意に低下し、結果として小径ニードル128のリフト量が変化してしまうといった不都合が回避される。
【0098】
なお本発明は、上記以外に次の形態にて具体化できる。
例えば図1の構成において、変位拡大室130を挟む駆動ピストン126と小径ニードル128のうち、小径ニードル128に環状溝128aを形成すると共に同ニードル128の外周クリアランスを通じて高圧燃料を変位拡大室130に導入したが、それとは逆に、駆動ピストン126に環状溝を形成すると共に同ピストン126の外周クリアランスを通じて高圧燃料を変位拡大室130に導入する構成としても良い。
【0099】
また、図7の構成において、駆動ピストン126の環状溝126aにコモンレール圧相当の高圧燃料を導入すると共に、小径ニードル128の環状溝128aにそれよりも僅かに低い高圧燃料を導入する、という構成にしても良い。
【0100】
但し、仮に変位拡大室130内に気体(エア等)が混入した場合を想定すると、該混入したエアが高圧燃料と共に変位拡大室130から排出される構成であるのが望ましく、図1や図7の構成では、駆動ピストン126の外周クリアランスを通って高圧燃料が上方へ流出するので、エアが抜け易いと言える。
【0101】
上記実施の形態では、前記図1において、上側シート面134におけるボール133のシート面積(直径)と、下側シート面135におけるボール133のシート面積(直径)と、小径ニードル128の断面積(直径)とをほぼ一致させたが、このうち少なくとも、上側シート面134におけるボール133のシート面積(直径)と、小径ニードル128の断面積(直径)とだけをほぼ一致させる構成としても良い。かかる構成においても、既存の構成と比べて電歪アクチュエータの小型化が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】インジェクタの断面構造とコモンレール式燃料噴射装置の概要を示す構成図。
【図2】インジェクタの構成を拡大して示す断面図。
【図3】インジェクタの構成を拡大して示す断面図。
【図4】インジェクタの閉弁時及び開弁時における力のバランス状態を説明するための図。
【図5】インジェクタの動作を示すタイムチャート。
【図6】二方弁インジェクタと三方弁インジェクタとの違いを示す説明図。
【図7】第2の実施の形態においてインジェクタの構成を示す断面図。
【図8】第2の実施の形態においてインジェクタの要部を拡大して示す断面図。
【図9】第3の実施の形態においてインジェクタの要部を拡大して示す断面図。
【図10】チェック弁の構成を詳しく示す断面図。
【符号の説明】
10…コモンレール、100…インジェクタ、101〜103…第1〜第3ボディ、121…電歪アクチュエータ、126…駆動ピストン、128…小径ニードル、128a…環状溝、132…ボール室、133…ボール、134…上側シート面、135…下側シート面、136…小径ピン、138…オリフィス、142…押圧ピン、143…圧縮コイルバネ、147…オリフィス、151…コマンドピストン、152…制御室、161…ノズルニードル、200…インジェクタ、201…上側ボディ、202…下側ボディ、204…リリーフ弁、218…小径ピン、215…ボール、216…上側シート面、217…下側シート面、223…オリフィス、306…チェック弁、311,312…高圧孔。
Claims (9)
- 電歪アクチュエータの伸長動作に伴い、インジェクタボディに摺動可能に配設されたピストン部材を介して弁体を移動させ、その弁体の移動により、コマンドピストンの背後に設けられた制御室の圧力を一時的に減圧してノズルニードルを開位置に移動させ、高圧燃料をエンジンに噴射供給するインジェクタであって、
制御室に高圧燃料を導入すべく、制御室と低圧リーク側との間を遮断する第1のシート面に少なくとも高圧燃料により弁体を押圧する一方、制御室の圧力を減圧すべく、弁体を第1のシート面から離間させる方向に同じく高圧燃料によりピストン部材を押圧する構成とし、第1のシート面で弁体がシートされる部位の径とピストン部材の径とをほぼ一致させ、且つ、ピストン部材よりも径の大きな大径ピストンを当該ピストン部材に対向して設けると共に、その両部材の間に高圧燃料を導入するための燃料導入室を設け、電歪アクチュエータの伸長に伴い大径ピストンを変位させてその変位量を燃料導入室を介してピストン部材に伝える構成としたことを特徴とするインジェクタ。 - 電歪アクチュエータの伸長に伴い弁体が移動した時に当該弁体を第2のシート面に当接させ、制御室への高圧燃料の導入を停止させるインジェクタであり、第2のシート面で弁体がシートされる部位の径とピストン部材の径とをほぼ一致させた請求項1に記載のインジェクタ。
- 電歪アクチュエータの伸長方向とは逆向きに弁体又はピストン部材を付勢する付勢手段を備える請求項1又は2に記載のインジェクタ。
- 電歪アクチュエータとピストン部材との間においてインジェクタボディに摺動可能に別のピストンを配設し、該別のピストンとピストン部材との間に、高圧燃料を導入する燃料導入室を設けると共にピストン部材又は別のピストンの何れか一方の外周面に高圧燃料の導入溝を設け、燃料導入室から導入溝までの間におけるピストン部材又は別のピストンの外周摺動面のクリアランスを、他側の外周摺動面のクリアランスよりも大きくした請求項1〜3の何れかに記載のインジェクタ。
- 電歪アクチュエータとピストン部材との間においてインジェクタボディに摺動可能に別のピストンを配設し、該別のピストンとピストン部材との間に、高圧燃料を導入する燃料導入室を設けると共にピストン部材及び別のピストンの各々の外周面に高圧燃料の導入溝を設け、ピストン部材又は別のピストンの何れかの導入溝の燃料圧を、前記高圧燃料の圧力よりも僅かに低くした請求項1〜3の何れかに記載のインジェクタ。
- 弁体とは逆側のピストン部材の端面に、高圧燃料を導入する燃料導入室を設けると共に、該燃料導入室への高圧燃料の導入通路の途中に、当該燃料導入室の内外の圧力差に応じて開閉するチェック弁を設けた請求項1〜3の何れかに記載のインジェクタ。
- 請求項4〜6の何れかに記載のインジェクタにおいて、
燃料導入室を囲むようにして、高圧燃料を導入する高圧導入路を複数箇所に設けたインジェクタ。 - 制御室に通じる通路の途中に第1の流量制御オリフィスを設けると共に、弁体が第1のシート面から離れて制御室から高圧燃料がリークする通路の途中に第2の流量制御オリフィスを設けた請求項1〜7の何れかに記載のインジェクタ。
- 高圧燃料を蓄えるためのコモンレールを備えるコモンレール式燃料噴射装置に適用され、コモンレールから前記制御室に高圧燃料を導入し、コモンレール圧相当の高圧燃料によりノズルニードルの開閉を行い、先端部に設けた噴孔から高圧燃料を噴射する請求項1〜8の何れかに記載のインジェクタ。
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1999
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