JP4024576B2 - 容器兼用注射器 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、薬液を収容する容器を備えると共に、容器内の薬液を注射する注射器として使用可能な容器兼用注射器に関する。
【0002】
【従来の技術】
アンプルなどの容器から注射器に薬液を吸引する際の誤操作や異物の混入汚染の防止等を目的として、近年、プレフィルドシリンジなどのように、薬液を収容する容器を備え、容器内の薬液を注射する注射器として使用可能な容器兼用注射器が各種開発され、医療機関などで使用されている(例えば特開平11−19212号公報等参照)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
この種の従来の容器兼用注射器は、一般にガラス製の注射筒を使用し、その注射筒内に薬液を充填しているが、ガラス製の注射筒はその寸法精度が比較的低く、内径等のばらつきが大きいため、筒内密閉のためにゴム栓やプランジャのシール用にゴムシール材を使用している。ゴム材料は一般に薬液に対し不純物の溶出が生じる場合があり、また、薬液中の有効成分がゴム材料に付着して薬液を変質させる恐れがあることから、ゴム栓などの表面には、耐薬剤膜を付着させる処理を行っている。
【0004】
このため、従来のガラス製注射筒とゴム栓を使用した容器兼用注射器は、構造が複雑化し、製造工程も多くなるなどの問題があった。また、プランジャに嵌着されたゴムシール材には、その摺動シール用にシリコンオイルが塗布されるが、このシリコンオイルが薬液中に溶出する問題があった。さらに、ゴム栓を設けた容器兼用注射器の滅菌処理を行う場合、通常の加熱処理やガス滅菌などの方法によっては、ゴム栓の表面の耐薬剤膜の劣化などがあって、ゴム栓から不純物が溶出する恐れがあり、このために、ゴム栓を使用した容器兼用注射器には特殊な滅菌処理が必要となり、製造コストが増大する問題があった。
【0005】
本発明は上記の点に鑑みなされたもので、構造が簡単で、比較的少ない製造工程で安価に製造することができ容器兼用注射器を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の容器兼用注射器は、注射器用の薬液を封入し且つ注射器として使用する容器兼用注射器において、薬液を充填する内容器の外側を蛇腹型外容器で覆った形状の容器本体と、容器本体の口部に嵌入されて口部を封止する栓部材と、栓部材上に設けられた針取付部と、を備え、容器本体の蛇腹型外容器には内容器と蛇腹型外容器との間に外気を導入するための通気孔が穿設され、内容器の胴部の厚さは容器本体内の圧力の低下によって収縮可能に薄く形成され、内容器の口部近傍の厚さは胴部の厚さより厚く形成され、内容器の密着により通気孔が閉鎖され、内容器の収縮により密着が解除されて通気孔が開放されることを特徴とする。
【0007】
ここで通気孔は容器本体の蛇腹型外容器の口部近傍に形成することができる。
【0008】
さらに、栓部材には、栓部材を容器本体の口部の中間位置に嵌め込んだ際に口部をシールするシール部を設け、使用時に栓部材を口部内に押し込むことによって、シール部のシールを解除して、容器本体内の薬液を栓部材の薬液通路内に導入するように構成することができる。
【0009】
さらに、栓部材と容器本体の口部を覆って、キャップを押し込み可能に被せ、キャップの押し込みにより、栓部材を口部内に押し込み、シール部のシールを解除するように構成することができる。また、栓部材上の針取付部に、薬液通路に連通する連通孔を設け、注射針を針取付部に嵌着して使用することができる。
【0010】
さらに、蛇腹型外容器には末端側に蛇腹部を設けると共に、先端側に円筒部を設け、円筒部内に内容器を配設することができる。また、蛇腹型外容器全体に蛇腹部を設け、その全体に内容器を配設してもよい。
【0011】
【作用】
上記構成の容器兼用注射器は、蛇腹型外容器と内容器を有する容器本体の内容器内に薬液が充填され、その容器本体の口部に栓部材を嵌着し、口部を封止する。そして、その栓部材と容器本体の口部にキャップを被せる。注射針を栓部材の針取付部に嵌着した状態でキャップを被せる場合は、注射針を収容可能に長さの長いキャップを被せ、注射針を嵌着しない状態で商品とする場合は、長さの短い小型のキャップを被せる。
【0012】
注射器を使用する際には、容器本体のキャップをさらに押し込むようにして、栓部材のシール部のシール位置をずらす。これにより、シール部のシールを外して、容器本体の内容器内の薬液を栓部材の薬液通路に導入可能とする。そして、容器本体の口部からキャップを外し、注射針が装着されてない場合には注射針を栓部材上の針取付部に装着する。
【0013】
薬液を注射する際には、容器本体の蛇腹型外容器の後端部を押す。このとき、容器本体内の内容器は、外容器に押されて、或いは外容器内の圧力上昇によって収縮し、内容器内の薬液は、注射針を通して注射される。蛇腹型外容器にはばね弾性があって、その後端部を押す力を緩めると、蛇腹型外容器は元の形状に戻る力が作用するが、このとき、蛇腹型外容器の通気孔が開いて、外気が外容器と内容器の間に進入するから、外容器内や内容器内に負圧がかからず、薬液が逆流することはない。また、再度、蛇腹型外容器の後端部を押せば、内容器を収縮させる力が生じ、薬液を容易に押し出すことができる。
【0014】
本容器兼用注射器は、プラスチックにより全体を簡単に成形することができ、且つ従来のようなゴム栓を使用せずに形成することができる。また、蛇腹型外容器を使用してプランジャを使用しないために、プランジャ用のゴム製シール材を使用せずに形成することができる。このため、ゴム栓を使用する従来の注射器に施していた、ゴム栓などの表面の耐薬剤膜付着処理が不要となり、また、ゴムシール材に塗布していたシリコンオイルの影響を受けることがない。さらに、ゴム材料を使用しないため、器具を滅菌処理する際の処理方法の選択枝が広がり、より簡単な滅菌処理を行って、製造コストを削減することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は容器兼用注射器の正面図を、図2はその分解図を示し、図3はその断面図を示している。この容器兼用注射器は、薬液を充填する内容器3の外側を蛇腹型外容器2で覆った形状の容器本体1と、容器本体1の口部7に嵌入されて口部7を封止する栓部材4と、栓部材4上に設けられた針取付部44と、栓部材4及び口部7を覆って被せられたキャップ6と、を備えて構成される。
【0016】
容器本体1の蛇腹型外容器2は、その胴部の末端側略半分が蛇腹部20として蛇腹形状に形成され、胴部の先端側略半分が円筒部24として形成され、末端部を押すことにより、胴部をその長さ方向に収縮可能である。蛇腹型外容器2の口部7の肉厚は胴部より厚く形成され、口部7の少し下に内容器3と外容器2との間に外気を導入するための通気孔23が穿設され、通気孔23の下にフランジ25が形成されている。フランジ25は注射をする際の容器側の把持部として使用される。
【0017】
内容器3は、このような蛇腹型外容器2内の円筒部24内側を覆うように形成されるが、特に内容器3の口部は、胴部に比べ肉厚に形成され、さらに、内容器3の口部内周面には、環状突部31が形成され、外容器2の口部が内容器3の口部外側に密着している。通気孔23の内側に内容器3の口部が密着することにより、通気孔23を閉鎖しているが、内容器3の収縮時には内容器3の密着が解消され、外容器2と内容器3の間に通気孔23を通して外気が導入される。
【0018】
容器本体1の口部7に嵌入されて口部7を封止する栓部材4は、図4に示すように、円板状基部40の上に針取付部44を突設し、円板状基部40の下側に支持部を介して環状ガイド部42を水平に設け、その下に支持部を介して円板状シール部41を設けて構成されている。円板状基部40の中央に縦に設けられた円筒状の支持部内には薬液通路45が設けられ、環状ガイド部42と円板状シール部41間の支持部には開口部45aが設けられる。環状ガイド部42の外周面には、凹条が形成され、口部7の内周面に設けられた凸条に嵌合可能である。
【0019】
図3に示すように、栓部材4は容器本体1の口部7に所定位置まで嵌め込まれるが、このとき、環状ガイド部42の凹条と口部内周面側の凸条が嵌合して、栓部材4は定位置に嵌着され、円板状シール部41が内容器3の口部の環状突部31に当接してその間を封止する位置に嵌め込まれる。このとき、円板状基部40と容器本体口部の上面間に隙間が生じ、キャップ6の押し込み操作により、栓部材4はさらに容器本体1の口部7に押し込まれ、口部7の上面を円板状基部40の下面でシールすることが可能である。円板状基部40の下面にはシール面が形成され、環状ガイド部42の外周面にもシール面が形成され、内容器3の口部内周面に当接するシール部としても機能する。
【0020】
栓部材4は、薬液の充填時に、容器本体1の口部7内に図3の位置まで押し込むように装着されるが、その際、その押し込み用治具が容器本体1の口部近傍を把持する際に位置決めを行うために、外容器2の通気孔23の上に段差部22が形成されている。また、栓部材4を口部7に押し込んだとき、環状ガイド部42の外周面が内容器3の口部内周面の最上部に正確に位置決めされて停止するように、その外周面と内周面に凹凸部が形成される。栓部材4を定位置まで押し込んだ際、その円板状シール部41が内容器3の口部内の環状突部31に当接して口部をシールする状態で停止する。
【0021】
図3のように、栓部材4を嵌め込んだ容器本体1の口部7には、キャップ6が栓部材4と口部7を覆うように被せられ、キャップ6の下部内周面は、溶着部61において、外容器2の外面に溶着される。溶着としては、熱溶着や超音波溶着を用いることができる。また、図3に示すように、キャップ6の内側に環状押圧部62が設けられ、薬液の使用時にキャップ6の押し込みによって、栓部材4を押し込み、容器の口部を開封する際、環状押圧部62が栓部材4の円板状基部40の上面を均等に押圧可能とされる。
【0022】
なお、図示は省略されているが、使用時にキャップ6を所定位置まで押し込んで、図5のように、栓部材4を口部7の奥まで進入させ際、クリック感触によってその押し込み端が使用者に容易に認識できるように、凹部又は凸部を内周面に設けるとよい。
【0023】
上記容器本体1は、射出成形ブロー成形法、ダイレクトブロー成形法などの成形方法を用いて、その内容器3と蛇腹型外容器2を成形することができる。また、例えば、内容器の内層プリフォームと外容器の外層プリフォームとを別個に成形し、内層パリソンを外層パリソンの内側に挿入したパリソンをブロー成形して容器本体1を成形することもできる。この場合、容器本体1はその口部とそれに続く円筒部が内容器3と外容器2とから形成され、口部は胴部よりその肉厚を厚くして、剛性を持たせ、内容器3の胴部においては、フィルム状に形成することにより、容易に収縮可能とする。蛇腹型外容器2の円筒部24は、容易に変形しない程度の形状保持性を有して成形され、蛇腹部20はその後端部を押さえた際長手方向に収縮し、押圧力を外すと、適度の弾性力で元の形状に復元するように成形される。
【0024】
内容器3は、蛇腹型外容器2の円筒部内で容易に剥離可能に積層形成されているが、内容器3の口部上端は、外容器2の口部上端に係止され取着される。また、外容器2の口部内周面の軸方向にローレットを設け、内容器3の周方向へのずれを防止することもできる。
【0025】
容器本体1の内容器3の材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂を使用することができる。また、蛇腹型外容器2の材料としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどの飽和ポリエステル系樹脂、或いはEVOH(エチレンービニルアルコール共重合体)を使用することができる。また、容器本体1の材料としては、透明性が高く、ガスバリア性に優れ、水分透過性が低い材料を選定することになるが、内容器3では、薬液に直接接するために、耐薬品性の高い材料、例えばポリエチレン等を用いることが好ましい。また、外容器と内容器を共にポリオレフィン系樹脂で作ることもでき、外容器をポリエチレンで、内容器をポリプロピレンで作ることもできる。
【0026】
蛇腹型外容器2をポリエチレンテレフタレート、内容器3をポリエチレンとした場合、容器本体1はEO(エチレンオキシド)滅菌を良好に実施することができる。容器をEO殺菌する際の最大の問題は、EOガスが成形樹脂内に残留する点と、EOガスの薬液中への溶出と化学反応であるが、ポリエチレンやポリエチレンテレフタレートはEOガスの残留が少なく、離脱も早いため、EOの薬液中への溶出を低減し、しかも薬液の蒸発を防止してその成分の濃縮を防止することができる。栓部材4は、例えばポリエチレンにより一体成形することができる。
【0027】
このように、内容器3として耐薬品性の高い材料を選択する一方、蛇腹型外容器2には内容器に対する剥離性が高く、高い形状保持性や小さい水分透過性を持った材料を選択するなど、内層と外層とで、異なる物性の材料を使用し、機能性の高い容器兼用注射器を構成することができる。
【0028】
実際に容器本体1内に薬液を注入し、栓部材4をその口部に嵌めて封止する場合、まず、容器本体1や栓部材4のEO滅菌処理を行った後、容器本体1の内容器3内に薬液を注入し、栓部材4を嵌めて口部7を密閉する。このとき、図3に示すように、栓部材4の円板状シール部41が内容器3の環状突部31に当接してシールする位置に、栓部材4をはめ込む。
【0029】
容器本体1は、その蛇腹型外容器2を例えばポリエチレンテレフタレートなどの硬質合成樹脂で成形する。ポリエチレンテレフタレートは、高い弾性強度を有すると共に良好な透明性を有し、低い水分透過性を持った材料であるから、蛇腹型外容器2として適当であり、容器兼用注射器の搬送時や取り扱い時において、外力が印加された場合でも、破損することはない。また、内容器3と栓部材4をポリエチレン等の、耐薬品性が高くEO滅菌処理の残留分や溶出分の少ない材料で成形することにより、薬液を容器本体1内で良好に保存することができる。
【0030】
上記構成の容器兼用注射器を使用する場合、まず、図3に示すように、キャップ6を容器本体1に対し押し込み、栓部材4の薬液通路45内に薬液を導入する。キャップ6をその溶着部61を破って、口部7に対しその押し込み端まで押し込むと、栓部材4が押されて口部7内に進入し、栓部材4の円板状シール部41が内容器3の口部内の環状突部31から外れ、内容器3内の薬液がその間を通過して栓部材4内の薬液通路45に流入する。この状態でも、栓部材4の円板状基部40が口部7の上面に当接してその面をシールし、環状ガイド部42が内容器口部の内周面に当接してその面をシールし、容器本体1の口部7のシール状態は確実に保持される。
【0031】
次に、キャップ6を外し、図5に示すように、注射針5を針取付部44に嵌め込む。そして、フランジ25を把持しながら蛇腹型外容器2の末端部を押して、内容器3内の薬液を注射する。このとき、図6に示すように、蛇腹型外容器2の蛇腹部20の末端を押すと、外容器2内の容積が減少してその内圧が上昇し、内圧の上昇により内容器3が押されて収縮し、内容器3内の薬液が開口部45aから栓部材4内の薬液通路45を通り、針取付部44から注射針5に送られ、注射される。
【0032】
蛇腹部20を押す力を緩めると、蛇腹部20はそのばね弾性によって元の形状に戻り、外容器2内が負圧になるが、このとき、外容器2の口部の通気孔23が、内容器3の内側への剥離によって開き、外気が外容器2内に入るため、すぐに大気圧となり、内容器3内に負圧を生じさせたり、内容器3が収縮前の形状に戻ることはない。したがって、蛇腹部20を押す力を緩めると、薬液の射出は止まり、内容器3内や薬液通路45内に外気が浸入したり、薬液の逆流を生じさせることはなく、安全に且つ衛生的に注射を行うことができる。
【0033】
上記実施例では、注射器に注射針は付属せず、使用者が注射器を使用する際、別に購入した注射針5を容器兼用注射器の栓部材4の針取付部44に装着したが、図7のように、予め注射針5を装着した容器兼用注射器とすることもできる。この場合には、注射針5を覆うことが可能な程度の長いキャップ26を口部7と栓部材4に被せるようにすればよい。この長いキャップ26には、上記と同様に、環状押圧部62を設けて、栓部材4の円板状基部40の上面を均等に押圧可能とし、キャップ26の下端内周面は外容器2に対し溶着される。
【0034】
さらに、図8は他の実施例の容器兼用注射器を示し、この例では、容器の口部7に栓部材34を嵌着または溶着して固定するように構成される。この栓部材34は、図9に示すように、円筒状基部35の上におねじを形成した螺合部37を立設し、螺合部37の上に針取付部38を設けて形成される。螺合部37から針取付部38にかけて連通する薬液通路39が形成され、薬液通路39は孔を通して内容器3内に連通する。
【0035】
円筒状基部35の下側には、容器本体の口部7と嵌合する環状凹部35aが設けられ、その環状凹部35a内に口部7を密にはめ込む構造である。栓部材34の上にはキャップ36が被せられ、ねじ締めされる。キャップ36の内側には、環状押圧部36aが設けられ、環状押圧部36aは栓部材34の上面を均等に押圧可能である。
【0036】
このような構成の容器兼用注射器では、内容器3内に薬液を充填し、その口部7に栓部材34の低部の円筒状基部35の環状凹部35aを嵌め込み、その接合部を熱溶着又は超音波溶着する。この容器兼用注射器を使用する場合、上記と同様に、キャップ36を外して、注射針を針取付部38に装着し、蛇腹型外容器2の蛇腹部20の後端部を押して注射を行う。
【0037】
このとき、上記と同様に、蛇腹型外容器2の蛇腹部20の末端を押すと、外容器2内の容積が減少してその内圧が上昇し、内圧の上昇により内容器3が押されて収縮し、内容器3内の薬液が栓部材34内の薬液通路39を通り、針取付部38から注射針5に送られ、注射される。この容器兼用注射器においても、上記と同様に、蛇腹部20を押す力を緩めると、薬液の射出は止まり、内容器3内や薬液通路45内に外気が浸入したり、薬液の逆流を生じさせることはなく、安全に且つ衛生的に注射を行うことができる。
【0038】
図10〜図13はさらに他の実施例の容器兼用注射器を示している。この例では、容器本体51のほぼ全体が蛇腹状に形成されている。栓部材4とキャップ6は上記実施例と同じ構造である。すなわち、容器本体51の蛇腹型外容器52は、その胴部全体が蛇腹形状に形成され、末端部を押すことにより、胴部をその長さ方向に収縮可能である。蛇腹型外容器52の口部の肉厚は上記と同様に、胴部より厚く形成され、口部の下方に内容器53と外容器52との間に外気を導入するための通気孔58が穿設されその下にフランジ56が形成される。また、口部の内側に環状突部57が設けられる。フランジ56は注射を行う際の容器の把持部として使用される。
【0039】
内容器53は、このような蛇腹型外容器52の内側に沿って形成されるが、特に内容器53の口部は、胴部に比べ肉厚に形成され、外容器52の口部に密着している。また、内容器53の口部内側に環状凸部が形成される。通気孔58の内側に内容器53の口部が密着することにより、通気孔58を閉鎖しているが、内容器53の収縮時には内容器53が外容器52から剥離し、外容器52と内容器53の間に通気孔58を通して外気が導入される。キャップ6は、上記と同様に、栓部材4を覆うように外容器の口部に被せされ、その下端内周面において溶着される。
【0040】
上記と同様に、図12のごとく、栓部材4は容器本体51の口部に所定位置まで嵌め込まれるが、このとき、円板状シール部41が内容器3の口部の環状突部57に当接してその間を封止する位置に嵌め込まれる。このとき、円板状基部40と容器本体口部の上面間に隙間が生じ、キャップ6の押し込み操作により、栓部材4はさらに容器本体51の口部に押し込まれ、口部の上面を円板状基部40の下面でシールする。円板状基部40の下面にはシール面が形成され、環状ガイド部42の外周面にもシール面が形成され、内容器53の口部内周面に当接するシール部としても機能する。
【0041】
実際に容器本体51内に薬液を注入し、栓部材4をその口部に嵌めて封止する場合、上記と同様に、まず、容器本体51や栓部材4のEO滅菌処理を行った後、容器本体51の内容器53内に薬液を注入し、栓部材4を嵌めてその口部を密閉する。このとき、図12に示すように、栓部材4の円板状シール部41が内容器53の環状突部57に当接してシールする位置に、栓部材4をはめ込む。
【0042】
上記構成の容器兼用注射器を使用する場合、上記と同様に、キャップ6を容器本体51に対し押し込み、栓部材4の薬液通路45内に薬液を導入する。キャップ6を口部に対し、溶着部61を破って、その押し込み端まで押し込むと、図13のように、栓部材4が押されて口部内に進入し、栓部材4の円板状シール部41が内容器53の口部内の環状突部58から外れ、内容器3内の薬液がその間を通過して栓部材4内の薬液通路45に流入する。この状態で、栓部材4の円板状基部40が口部の上面に当接してその面をシールし、環状ガイド部42が内容器口部の内周面に当接してその面をシールし、容器本体1の口部のシール状態は確実に保持される。
【0043】
次に、キャップ6を外し、図13に示すように、注射針5を針取付部44に嵌め込む。そして、フランジ56を把持しながら蛇腹型外容器52の末端部を押して、内容器53内の薬液を注射する。このとき、蛇腹型外容器52の末端を押すと、その末端部に押されて、或いはその内圧の上昇により、内容器53が押されて収縮し、内容器53内の薬液が開口部45aから栓部材4内の薬液通路45を通り、針取付部44から注射針5に送られ、注射される。
【0044】
この容器兼用注射器においても、上記実施例と同様に、蛇腹型外容器52を押す力を緩めると、薬液の射出は止まり、内容器53内や薬液通路45内に外気が浸入したり、薬液の逆流を生じさせることはなく、安全に且つ衛生的に注射を行うことができる。
【0045】
なお、この図10〜図13の実施例においても、図8の例と同様に、栓部材を容器本体51の口部に溶着・固定することもできる。この栓部材は、上記と同様に、円筒状基部の上におねじを形成した螺合部を立設し、螺合部の上に針取付部を設けて形成される。螺合部から針取付部にかけて連通する薬液通路が形成され、薬液通路は孔を通して内容器内に連通する。円筒状基部の下側には、容器本体の口部と嵌合する環状凹部が設けられ、その環状凹部内に容器本体51の口部を密にはめ込み、その接合部を溶着(例えば熱溶着又は超音波溶着)する。さらに、図7の実施例と同様に、上記キャップ6の代わりに、長さの長いキャップ26を容器本体51の口部に螺合させる構成とし、注射針5をキャップ26内に収容するように構成することもできる。
【0046】
図14はさらに別の実施形態の容器兼用注射器を示し、この例では、容器本体の口部に、内容器3内に薬液を充填した状態で、略容器状を呈した薄膜蓋体75が口部の周縁に嵌着され且つ熱溶着などによりシール溶着される。容器本体の口部の薄膜蓋体75の上方には、底部に尖鋭部73を持った栓部材70が装着される。栓部材70は、円板状基部71の上に針取付部74を突設し、円板状基部71の下側に支持部を介して環状ガイド部72を水平に設け、その環状ガイド部72の底部中央に尖鋭部73が下方に向けて尖鋭形状で設けられる。
【0047】
環状ガイド部72の外周部と薄膜蓋体75の内周面に凹凸部が設けられ、環状ガイド部72は、未使用の初期状態で、容器状を呈した薄膜蓋体75の内側上部に嵌合される。栓部材70内の中央縦方向に、針取付部74から尖鋭部3の下端まで、薬液通路が設けられ、栓部材70が押し込まれて尖鋭部73が薄膜蓋体75を破ったとき、その尖鋭部73に開口した孔から薬液通路を通して、薬液を針取付部74から注射針に送るように構成される。
【0048】
上記と同様に、外容器2の口部の下方には、通気孔23が穿設され、その通気孔の下方にフランジ25が形成される。さらに、上記と同様な構造のキャップ6が栓部材70と口部に被せられ、その下端部内周面と外容器2の外周面が熱溶着などにより溶着され、装着される。
【0049】
この容器兼用注射器を使用する場合、まず、キャップ6を容器本体に対し押し込み、栓部材70の底部の尖鋭部73を薄膜蓋体75に突き刺して、口部をシールしている薄膜蓋体75を破り、薬液通路の開口する尖鋭部73を容器本体の内容器3内に進入させる。このとき、キャップ6の下端はフランジ25近傍まで押し込まれ、栓部材70はその環状ガイド部72が薄膜蓋体75の凹部内を下部まで進入し、円板状基部71が容器本体の口部に当たって停止する。これにより、内容器3内の薬液が栓部材70内の薬液通路内に流入する。
【0050】
次に、キャップ6を外し、上記と同様に、注射針を針取付部74に嵌め込み、蛇腹型外容器2の末端部を押して、内容器3内の薬液を注射する。このとき、蛇腹型外容器2の蛇腹部の末端を押すと、外容器2内の容積が減少してその内圧が上昇し、内圧の上昇により内容器3が押されて収縮し、内容器3内の薬液が栓部材70内の薬液通路を通り、針取付部74から注射針に送られ、注射される。
【0051】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の容器兼用注射器によれば、従来の注射器に使用していたプランジャを不要とするため、構造が簡単で部品点数の少ない注射器とすることができる。また、従来のようなゴム栓やゴム製シール材を使用せずに、プラスチックにより全体を簡単に形成することができるから、従来の注射器に施していた、ゴム栓などの表面の耐薬剤膜付着処理が不要となり、さらに、器具を滅菌処理する際の処理方法の選択枝が広がり、より簡単な滅菌処理を採用して、製造コストを削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を示す容器兼用注射器の正面図である。
【図2】同容器兼用注射器の分解図である。
【図3】同容器兼用注射器の縦断面図である。
【図4】栓部材4の斜視図である。
【図5】使用時の縦断面図である。
【図6】蛇腹部を押した状態の縦断面図である。
【図7】他の実施例の容器兼用注射器の縦断面図である。
【図8】さらに他の実施例の容器兼用注射器の縦断面図である。
【図9】同注射器の栓部材34の斜視図である。
【図10】さらに別の実施例の容器兼用注射器の正面図である。
【図11】同容器兼用注射器の分解図である。
【図12】同容器兼用注射器の断面図である。
【図13】同容器兼用注射器の使用時の断面図である。
【図14】さらに別の実施例の容器兼用注射器の断面図である。
【符号の説明】
1‐容器本体
2‐蛇腹型外容器
3‐内容器
4‐栓部材
5‐注射針
6‐キャップ
7‐口部
23‐通気孔
44‐針取付部

Claims (7)

  1. 注射器用の薬液を封入し且つ注射器として使用する容器兼用注射器において、
    薬液を充填する内容器の外側を蛇腹型外容器で覆った形状の容器本体と、該容器本体の口部に嵌入されて該口部を封止する栓部材と、該栓部材上に設けられた針取付部と、を備え、
    該容器本体の該蛇腹型外容器には該内容器と該蛇腹型外容器との間に外気を導入するための通気孔が穿設され、該内容器の胴部の厚さは該容器本体内の圧力の低下によって収縮可能に薄く形成され、該内容器の口部近傍の厚さは該胴部の厚さより厚く形成され、該内容器の密着により該通気孔が閉鎖され、該内容器の収縮により密着が解除されて該通気孔が開放されることを特徴とする容器兼用注射器。
  2. 前記通気孔は前記容器本体の前記蛇腹型外容器の口部近傍に形成されている請求項1記載の容器兼用注射器。
  3. 前記栓部材には該栓部材を容器本体の口部の中間位置に嵌め込んだ際に該口部をシールするシール部が設けられ、使用時に該栓部材を該口部内に押し込むことによって、該シール部のシールを解除して該容器本体内の薬液を該栓部材の薬液通路内に導入するように構成した請求項1記載の容器兼用注射器。
  4. 前記栓部材と前記容器本体の口部を覆ってキャップが押し込み可能に被せられ、該キャップの押し込みにより、該栓部材が該口部内に押し込まれ、前記シール部のシールが解除される請求項記載の容器兼用注射器。
  5. 前記栓部材上の針取付部には、前記薬液通路に連通する連通孔が設けられ、注射針が嵌着されている請求項記載の容器兼用注射器。
  6. 前記蛇腹型外容器には末端側に蛇腹部が設けられると共に、先端側に円筒部が設けられ、該円筒部内に前記内容器が配設されている請求項1記載の容器兼用注射器。
  7. 前記蛇腹型外容器には全体に蛇腹部が設けられ、該蛇腹型外容器内に全体に前記内容器が配設されている請求項1記載の容器兼用注射器。
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