JP4024089B2 - 法枠用型枠及びそれを用いた格子状法枠 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、斜面安定化用の法枠を形成するための法枠用型枠とそれを用いた格子状法枠に関する。
【0002】
【従来の技術】
斜面を安定化するために法枠工が用いられている。これは、地山斜面に格子状の法枠用型枠を設置し、この型枠内にコンクリート(又はモルタル)を現場で打設するものである。このような法枠工においては、法面の安定性を確保するとともに、できる限り周辺の環境との調和を図ることが要求される。このため格子内を植生工による緑化が図られている。
【0003】
法枠用型枠は、左右一対の網状側枠と、これらを連結するスペーサから構成される。網状側枠は例えば縦線と横線を織り込んだクリンプ金網等からなる。スペーサは上下の縦棒と横棒を結合して井桁状やX状に形成され、網状側枠の長手方向に沿って所定間隔ごとに複数個設けられる。スペーサは網状側枠に対し回動可能に取付けられる。これにより、網状側枠を重ねて折り畳み可能となり、運搬作業を容易としている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の法枠は矩形断面形状であり、したがって、その法枠用型枠も矩形断面形状であり、井桁状スペーサの場合は、上下の各横棒が同じ長さで、また、X状スペーサの場合は、2本の交差する棒が等しい長さで網状側枠を平行に連結していた。このような法枠用型枠を用いて形成した断面が矩形の法枠は、以下のような問題が生じていた。
【0005】
図25は従来の法枠が施工された地山斜面の概略図である。格子状の法枠51は縦枠52及び横枠53がともに矩形断面形状であり、その側面が法面から直角に設置される。このため、日中斜め上から例えば矢印S方向から日光が照射されると、図示したように、横枠53の下側及び縦枠52の左右一方の側に影54(斜線)が生じる。この影54が生じると法枠全体として見栄えが悪くなり、景観者に対し違和感を与え、斜面を含む周囲全体の景観を低下させていた。この場合、特に横枠の影は一日中常にその下側に生じるため(縦枠は日光の移動で影が左右に移る)、以下のような問題がさらに生じる。
【0006】
図26は従来の法枠が施工された地山斜面の断面図である。図示したように、法枠の格子内は緑化促進のため養分の富んだ客土55が盛られ、植栽56が植え込まれる。上述したように矢印S方向から日光が照射されると、格子内に横枠53による影54が生じるため、この影54が生じる客土55に植えられた植栽56の成長が阻害され、格子内での緑化が不均一になる。このような植栽56の成長の違いから法枠全体としての景観が損なわれ、見栄えが悪かった。また、周辺の環境との調和がとれなかった。さらに以下のような問題もあった。
【0007】
図27は従来の法枠が施工された地山斜面の断面図である。図示したように、従来は、横枠53を挿通する塩ビ管等からなる連通孔57を設けることにより、格子内の余剰水を矢印方向に流して排水し、客土の腐敗を防止していた。このため、連通孔57の設置のための作業工程が必要となり、面倒であった。また、配筋のために塩ビ管を地山表面よりある程度の高さの位置に設けなければならないため、格子内の余剰水を完全に排水することが困難であった。したがって格子内の客土が腐敗し、格子内の健全な植生を図れないおそれがあった。
【0008】
このような連通孔による排水手段の他に、横枠の上側(山側)にコンクリート(又はモルタル)等により余剰水が流れるような水切り台を設けて格子内の余剰水を排水を確保する方法がある。しかしこの方法は法枠施工とは別にコンクリート吹付け作業を行わなければならず、作業が面倒であった。
【0009】
本発明は上記従来技術を考慮したものであって、日光が法枠によって遮られ、格子内に局部的に影が生じることを防止し、格子の隅々まで均一に日光を照射して格子内全体で植生をムラなく成長させ斜面全体での均一な植生の繁茂を図ること、さらに別途面倒な作業を行わずに格子内の余剰水の排水を実現することができ、しかも型枠の折畳み作業が容易で使い勝手の良好な法枠用型枠の提供を目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するため、請求項1の発明では、縦線と横線が交差する側枠の一対を対向状態でスペーサの上下各2ヶ所により回動可能に連結し、地山斜面に対して縦枠と横枠を形成すべく格子状に設置される法枠用型枠において、前記横枠を構成する一対の側枠は、少なくとも谷側の側枠が設置状態で地山斜面に対して直角よりも山側に傾斜するように前記スペーサと連結されるとともに、前記スペーサと側枠との連結部のうち、上部の1ヶ所が未連結の状態で、残りの3ヶ所を回動可能に連結することにより側枠の長手方向に折畳み可能にしたことを特徴とする。
【0011】
請求項1の発明によれば、少なくとも、日光の影響を最も大きく受ける格子状法枠の横枠を形成するための谷側の側枠を、地山斜面に対し、直角より山側に傾斜して設置可能としたので、法枠による影の発生が少なくなり、格子内に日光が照射される量が増え、局部的な影による違和感も少なくなるとともに、植生への影響も少なくなるので、法枠全体としての見栄えも良くなり、優れた景観を得ることができる。また、前記スペーサと側枠との連結部のうち、上部の1ヶ所が未連結の状態で、残りの3ヶ所を回動可能に連結するように構成したので、その1ヶ所が未連結の状態において両側枠を平行な状態にして側枠の長手方向に折畳むことにより、両側枠からスペーサがはみ出さない状態に容易に折畳むことができる。しかも、未連結の状態の連結部は1ヶ所で、他の3ヶ所の連結部は側枠と回動可能に連結された状態にあり、一方の側枠とスペーサとは上下2ヶ所において連結された状態にあることから、型枠の折畳み時や組立て時において側枠の長手方向への移動が容易であるとともに、両側枠を広げて1ヶ所の未連結状態の連結部を連結することにより容易に組立てることができる。
【0012】
請求項2の発明では、縦線と横線が交差する側枠の一対を対向状態でスペーサの上下各2ヶ所により回動可能に連結し、地山斜面に対して縦枠と横枠を形成すべく格子状に設置される法枠用型枠において、前記横枠を構成する一対の側枠は、少なくとも谷側の側枠が設置状態で地山斜面に対して直角よりも山側に傾斜するように前記スペーサと連結されるとともに、前記スペーサの側枠との連結部の少なくともいずれか1ヶ所を長孔状のリング形状として両側枠を広げた状態と平行な状態との間を移動可能に構成することにより側枠の長手方向に折畳み可能にしたことを特徴とする。本発明によれば、スペーサの側枠との連結部を長孔状のリング形状として両側枠を広げた状態と平行な状態との間を移動可能に構成したので、折畳み時にスペーサを側枠から外したり組立て時に取付け直したりする必要がなく、長孔リング内で移動させるだけで分離することなく対応可能なことから、前記請求項1の発明の場合に加えて、折畳み時や組立て時における作業性を更に向上できるという効果を得ることができる。
【0013】
さらに、前記横枠を形成する一対の側枠は、山側の側枠が地山斜面に対し直角よりも谷側に傾斜して設置できるように構成してもよい(請求項3)。この構成によれば、横枠谷側の側面を傾斜させるとともに、横枠の山側の側面を地山斜面に対し直角から谷側に傾斜させて両側が傾斜した台形の形状となるため、横枠山側の側面が水平に近くなり、景観向上の効果とともにさらに余剰水が円滑に排水されるという効果が得られる。
【0014】
また、前記横枠を構成する一対の側枠は、その両側端部を前記縦枠を構成する一対の側枠に係止可能な形状に形成することができる(請求項4)。この構成によれば、縦枠が矩形断面及び台形断面のいずれであっても、その形状に合わせて横枠の側枠端部を係止可能とするため、縦枠と横枠の交差部で縦と横の側枠同士が隙間なく確実に連結される。
【0015】
また、前記一対の側枠として網状側枠を用い、前記横枠における山側の網状側枠の網目を谷側の網状側枠の網目より粗くしてもよい(請求項5)。この構成によれば、横枠の山側の網状側枠の縦線と横線による網目の大きさをコンクリート(又はモルタル)が入り込むくらいの粗さとし、谷側の網状側枠の網目をコンクリートが漏れない程度の大きさとすることにより、山側の網状側枠の外側から型枠内にコンクリートを打設可能であるので、法枠用型枠内に確実にコンクリートを充填することができる。すなわち、下側が広がった台形状の横枠の場合、上側の型枠開口部から型枠内にコンクリートを充填しようとすれば、型枠内の山側の隅部にコンクリートが充分行き届かず、巣が発生するおそれがあるが、本発明によれば、山側の網状側枠の外側からこの側枠の網目を通して型枠内にコンクリートを打設することができるので、型枠内の山側の隅部にコンクリートを確実に充填できる。
【0016】
本発明では、さらに以上に説明した本発明に係る法枠用型枠を用いてモルタル又はコンクリートを打設して形成した縦枠と横枠からなる格子状法枠を提供する(請求項6)。こ の格子状法枠によれば、少なくとも、日光の影響を最も大きく受ける格子状法枠の横枠の谷側の側面を、地山斜面に対し、直角より山側に傾斜して形成したので、法枠による影の発生が少なくなり、格子内に日光が照射される量が増え、局部的な影による違和感も少なくなるとともに、植生への影響も少なくなるので、法枠全体としての見栄えも良くなり、優れた景観を得ることができる。
【0017】
さらに、本発明の構成を具体的に説明すると、前記スペーサとしては、左右の縦棒と上下の横棒で略井桁状に形成され、下側の横棒の長さが上側の横棒より長い形態のスペーサの使用が可能である。このスペーサの場合には、スペーサの下側の横棒が上側の横棒より長いため、両側の網状側枠は下方が広がったハ字形状の状態で連結される。このため、この法枠用型枠を使用した法枠の断面が台形となる。このように法枠を台形断面形状とすることにより、法枠の影の発生がなくなり、格子内が万遍なく日光で照射され局部的な影による違和感がなくなる。これにより、法枠全体としての見栄えがよくなり、優れた景観を得ることができる。また、これにより格子内の植栽の成長を充分にかつ均一に促進することができる。また、法枠は下辺側が長い台形形状であるため、格子面積(格子区画内に露出する地山の面積)が減少する。このため、必要な客土の量や植栽数も減少し、コストを抑えることができる。さらに、横枠の上側(山側)の側面が水平に近くなるので、格子内の余剰水が速やかに横枠上を通って排水される。これにより、格子内の土壌腐敗を防ぐことができ、充分な植栽の成長を確保することができる。
【0018】
また、前記網状側枠の上縁の横線の長さを下縁の横線の長さより長くすれば、法枠用型枠の縦枠と横枠がともに台形断面形状の場合、縦枠と横枠の交差部でこれらを連結する際のつなぎめに隙間が生じることなく、確実に連結することができる。
【0019】
因みに、前記スペーサの上側の横棒が両側の網状側枠間を連結して組立てられる前の、下側の横棒のみにより連結された状態では、一対の網状側枠を1本の横棒で保持することになるので、両側の網状側枠を重ねて折畳むことが可能となる。これにより、搬送や保管のための省スペース化を図ることができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1は本発明に係る法枠用型枠を用いて形成された法枠の概略図であり、図2は図1の拡大図であり、図3、図4は図2のA−A断面図である。
【0021】
図1、図2に示すように、法枠1は縦枠2と横枠3が交差して格子状に形成される。この法枠1は断面が台形形状であるため、縦枠2、横枠3の側面は根元が広がるようなテーパー形状を有している。これにより、例えば日光が矢印S方向から照射されたとしても従来影が発生していた位置(図25の斜線部)を法枠1の側面がカバーすることになる。したがって格子内に局部的に影が生じることを防止することができ、法枠全体として見栄えがよくなり、優れた景観を得ることができる。
【0022】
なお、横枠3の断面形状について、図2に示すような台形に限らず、(1)山側の側枠も谷側の側枠と同様に斜面直角より山側に(上向に)傾斜させて平行四辺形又は菱形の形状としたり、(2)山側の側枠の面積を小さくして(すなわち、山側の斜辺の長さを短くして)、この山側の側枠を斜面直角より山側(上向き)に傾斜させた不等辺四辺形の形状としたり、(3)上記(2)と同様に山側の側枠を谷側の側枠より面積を小さくし、斜面直角より谷側(下向き)に傾斜させた台形に近い不等辺四辺形の形状であってもよい。
【0023】
図3に示すように、日光は例えば矢印S方向から格子内に盛られた客土4全体に照射される。したがって、客土4に植え込まれた植栽5の全てに対して均等に日光が照射されることになり、格子内の植栽5が充分に均等に成長するので法枠全体としての優れた景観を得ることができる。また、台形法枠の下辺側が長くなって底面が従来よりも広がった分、格子内面積が減少するので、格子内に必要な客土の量や、植栽数も減少し、コストの低減を図ることができる。
【0024】
図4に示すように、横枠3の断面の山側も谷側に傾斜させて台形形状を有するので、法面に設置した場合に横枠3の山側の側面は水平に近くなる。このため、格子内に溜まった余剰水は矢印に示すように横枠3上を流れる。これにより、格子内の余剰水を十分に排水することが可能となり、客土4の腐敗を防止し、健全な植生の成長を図ることができる。
【0025】
図5は本発明に係る横枠の法枠用型枠の断面図であり、図6は縦枠の法枠用型枠の断面図、図7は横枠山側の網状側枠を示した側面図であり、図8は横枠谷側の網状側枠及び縦枠の網状側枠を示した側面図である。この図5〜図8の実施形態の法枠は、前述の図1、図2に示したように縦枠及び横枠がともに台形断面でその断面積が比較的小さい形態の法枠である。
【0026】
本発明に係る法枠用型枠は、左右一対の網状側枠6と、これらを連結するスペーサ7から構成される。各網状側枠6は、この例では縦線8及び横線9を格子状に織り込んだクリンプ金網からなる。なお、この網状側枠6はエキスパンドメタル、パンチングメタル等の有孔板を用いてもよい。スペーサ7は、上下の横棒10a、10b及び左右の縦棒11を結合して略井桁状に形成したものであり、網状側枠6の長手方向に沿って所定間隔ごとに複数個設けられる。なお、スペーサ7は、X状に形成したものを用いてもよい。
【0027】
本実施形態の法枠は、比較的小型の台形断面形状の法枠であり、例えば図5で台形の上辺aが150mm、下辺bが250mm、高さcが150mmである。上記下辺b寸法は、同じ設計強度の矩形断面の法枠に比べ長い。また、鉄筋は1本の上鉄筋14と2本の下鉄筋13の合計3本である。これらの鉄筋は十分なコンクリートのかぶり厚が得られる位置に配筋されスペーサ7に結束される。
【0028】
スペーサ7は、上記台形を形成する左右の網状側枠6a、6b同士がコンクリート充填時に押し開かれないような位置に横棒10a、10bを設ける。下側の横棒10bは、所定の設定強度断面積を有する下広がりの台形に合わせて上側の横棒10aより長く形成される。スペーサ7の縦棒11は、左右の網状側枠6に合わせて下広がりのハ字状に配置され上下各横棒10a、10bに溶接接合される。
【0029】
格子状法枠の縦枠及び横枠がともに台形断面であるため、その交差部で縦枠及び横枠の網状側枠の端部同士を隙間なく整合して結合するために各縦枠及び横枠の網状側枠の両端部は図7、図8に示すように下が狭くなる逆台形形状となるように傾斜している。このため、両端部近傍の縦線8が短くなって横線9から脱落しやすくなる。これを防止するために両端部に斜め縦線15を設け適当な位置で数ヶ所横線9に溶接する。これにより、網状側枠の端部が補強されるとともに端部近傍の短い縦線が抜け落ちなくなる。
【0030】
図5、図6に示すように、スペーサ7の上の横棒10aの一方の端部はフック形状に形成される。このフック12は網状側枠が組立てられる前は外されている。横棒10aの他方の端部と下の横棒10bの両端部は網状側枠6に対し回動可能に取り付けられる。したがって、組立て前の両方の網状側枠6は横棒10bのみによって連結されているので、重ねて折り畳むことができる。これにより、法枠用型枠の保管や運搬のための省スペース化を図ることができる。また、現場において網状側枠6をスペーサ7により連結する時はフック12を網状側枠6に引掛けるだけなので容易に組立てることができる。
【0031】
図7、図8に示すように、横枠の山側(上側)に使用される網状側枠6aの縦線8と横線9による網目は、横枠の谷側(下側)に使用される網状側枠6bの網目より粗い。すなわち、山側の網状側枠6aの網目はコンクリート(又はモルタル)が入り込むくらいのメッシュ間隔とし、谷側の網状側枠6bの網目はコンクリートが漏れない程度のメッシュ間隔とする。これにより、網状側枠6aの外側からコンクリートを法枠用型枠内に充填できるので、横枠内の山側の隅部まで密実なコンクリートの打設を実現できる。
【0032】
図9〜図12は本発明の法枠用型枠の別の形状例を示す。図9は横枠用型枠の断面図であり、図10は縦枠用型枠の断面図であり、図11は横枠に使用する山側の網状側枠を示した側面図であり、図12は横枠に使用する谷側の網状側枠及び縦枠の網状側枠を示した側面図である。
【0033】
本実施形態の法枠は、比較的大型の台形断面形状の法枠であり、例えば図9で台形の上辺aが250mm、下辺bが350mm、高さcが250mmである。上記下辺b寸法は、同じ設計強度の矩形断面の法枠に比べ長い。また、鉄筋は2本の上鉄筋14と2本の下鉄筋13の合計4本である。これらの鉄筋は十分なコンクリートのかぶり厚が得られる位置に配筋されスペーサ7に結束される。その他の構成及び作用効果は上述の図5〜8と同様である。
【0034】
図13は横枠のみが台形断面で縦枠は矩形断面の格子状法枠の概略図である。図示したように、横枠3に上述した断面台形状の型枠を用い、縦枠16は断面矩形の法枠用型枠を用いて、法枠1を形成する。この場合、縦枠16による影が格子内に発生することが懸念されるが、縦枠16による影は太陽の移動とともに横方向に移動するため、格子内の植栽の成長に対する影響が少ない。したがって、このような構成としても、上述した効果が期待できる。
【0035】
この場合、台形横枠3に関し、谷側の側面のみを地山斜面に対し直角から山側に傾斜させ、山側の側面は地山斜面に対し直角とした片側台形の形状としてもよい。このような片側台形の横枠であっても、上からの太陽光による影の発生を防止して景観を向上させる効果が得られる。このように横枠の谷側の側枠を地山斜面に対し直角よりも山側に傾斜させるとともに、横枠3の山側の側面を地山斜面に対し直角から谷側に傾斜させて図13のように両側台形の形状とすれば、景観向上の効果とともにさらに余剰水が円滑に排水されるという効果(図4参照)が得られる。
【0036】
図14は上記図13における法枠の横枠用型枠の断面図であり、図15は横枠に使用する山側の網状側枠を示した側面図であり、図16は横枠に使用する谷側の網状側枠及び縦枠の網状側枠を示した側面図である。
【0037】
本実施例は、前述の図5と同様に比較的小断面積の台形法枠の形状例を示す。図15、16に示すように、横枠に使用する両方の網状側枠6a、6bの横線9は全て同じ長さで両端が縦に真直ぐに形成される。これは、縦枠16(図13)が断面矩形であるため、横枠との交差部では縦枠及び横枠ともに縦に真直ぐな端部として両者を隙間なく整合させて結合するためである。これにより、縦枠と横枠を確実に連結することができる。その他の構成及び作用効果は前述の図5の実施形態と同様である。
【0038】
図17は前述の図13における別の横枠用型枠の断面図であり、図18は横枠に使用する山側の網状側枠を示した側面図であり、図19は横枠に使用する谷側の網状側枠及び縦枠の網状側枠を示した側面図である。
【0039】
本実施例は、前述の図9と同様に比較的断面積の大きい台形法枠の形状例を示す。その他の構成及び作用効果は上述した図14〜図16の例と同様である。
【0040】
図20は本発明のさらに別の実施形態の型枠断面図である。この例はスペーサ7の上の横棒10aの途中(この例では中央部)に開口17を設けたものである。これにより、型枠設置の時に、下鉄筋13を開口17を通して上から配筋できる。上側の横棒10aの一端部を前述の実施例と同様にフック状にし、網状側枠6aに対し係止離脱可能とすることにより折畳み可能な型枠を構成している。その他の構成及び作用効果は前記実施形態と同様である。
【0041】
図21は本発明のさらに別の実施形態の型枠断面図である。(A)は型枠設置時、(B)は搬送時の折畳み前の状態を示す。この実施形態の型枠は、一対の網状側枠18a,18bを井桁状のスペーサ19で連結したものである。スペーサ19は、上下2本の横棒20a,20bと2本の縦棒21とにより構成される。上の横棒20aの両端部には、リング22が形成され、各網状側枠18a,18bの縦線に回動自在に連結される。下の横棒20bの両端部には、長孔リング23が形成され各網状側枠18a,18bの縦線が長孔に沿って横にスライド可能に挿通する。なお、リング22は、網状側枠の縦線を囲むようにスペーサの横棒端部を曲げて形成することができ、網状側枠の縦線に対し外れないように且つ遊びをもって回動自在に連結される。長孔リング23についても同様に下の横棒を折り返すように曲げて、網状側枠の縦線が外れないように囲んで形成することができる。
【0042】
型枠設置時には、(A)に示すように、両方の網状側枠18a,18bを長孔リング23に沿って外側端部まで一杯に移動させてハ字状に広げ、台形の型枠を形成する。これにより、コンクリートを打設して台形の法枠が形成される。現場までの運搬時には、(B)に示すように、両方の網状側枠18a,18bを長孔リング23に沿って内側に移動させて網状側枠18a,18b同士を平行状態にする。これにより、両網状側枠18a,18b同士を重ね合せて型枠を折畳むことができる。
【0043】
図22は本発明のさらに別の実施形態の型枠断面図である。(A)は型枠設置時、(B)は搬送時の折畳み前の状態を示す。この実施形態の型枠は、井桁状スペーサ19の下の横棒20bの一端部のみに長孔リング23を形成し、他の連結部は回動可能な小さいリング22を形成したものである。
【0044】
型枠設置時には、(A)に示すように、網状側枠18bを長孔リング23に沿って外側端部まで一杯に移動させてハ字状に広げ、台形の型枠を形成する。これにより、コンクリートを打設して台形の法枠が形成される。
【0045】
現場までの運搬時には、(B)に示すように、網状側枠18bを長孔リング23に沿って内側に移動させて網状側枠18a,18b同士を平行状態にする。これにより、両網状側枠18a,18b同士を重ね合せて型枠を折畳むことができる。
【0046】
図23は本発明のさらに別の実施形態の型枠断面図である。(A)は型枠設置時、(B)は搬送時の折畳み前の状態を示す。この実施形態の型枠は、一対の網状側枠18a,18bをX状のスペーサ24で連結したものである。スペーサ24は2本の棒材25を相互にX状に固定したものであり、上側の端部はリング22を介し、下側の端部は長孔リング23を介して各網状側枠18a,18bの縦線に回動可能に連結される。
【0047】
型枠設置時には、(A)に示すように、両方の網状側枠18a,18bを長孔リング23に沿って外側端部まで一杯に移動させてハ字状に広げ、台形の型枠を形成する。これにより、コンクリートを打設して台形の法枠が形成される。
【0048】
現場までの運搬時には、(B)に示すように、両方の網状側枠18a,18bを長孔リング23に沿って内側に移動させて網状側枠18a,18b同士を平行状態にする。これにより、両網状側枠18a,18b同士を重ね合せて型枠を折畳むことができる。
【0049】
図24は本発明のさらに別の実施形態の型枠断面図である。(A)は型枠設置時、(B)は搬送時の折畳み前の状態を示す。この実施形態の型枠は、X状スペーサ24の一方の棒材25の一端部のみに長孔リング23を形成し、他の連結部は回動可能な小さいリング22を形成したものである。
【0050】
型枠設置時には、(A)に示すように、網状側枠18bを長孔リング23に沿って外側端部まで一杯に移動させてハ字状に広げ、台形の型枠を形成する。これにより、コンクリートを打設して台形の法枠が形成される。
【0051】
現場までの運搬時には、(B)に示すように、網状側枠18bを長孔リング23に沿って内側に移動させて網状側枠18a,18b同士を平行状態にする。これにより、両網状側枠18a,18b同士を重ね合せて型枠を折畳むことができる。
【0052】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1〜5の各発明では、少なくとも、日光の影響を最も大きく受ける格子状法枠の横枠を形成するための谷側の側枠を、地山斜面に対し、直角より山側に傾斜して設置可能としたので、法枠による影の発生が少なくなり、格子内に日光が照射される量が増え、局部的な影による違和感も少なくなるとともに、植生への影響も少なくなるので、法枠全体としての見栄えも良くなり、優れた景観を得ることができる。
【0053】
しかも、請求項1の発明では、一対の両側枠をスペーサにより上下各2ヶ所の4ヵ所で回動可能に連結するとともに、それらの連結部のうち、上部の1ヶ所が未連結の状態で、残りの3ヶ所を回動可能に連結するように構成したので、その1ヶ所が未連結の状態において両側枠を重ねることにより、前記谷側の側枠のように少なくとも一方が傾斜した状態に設置される法枠用型枠であっても、容易に折畳むことが可能である。また、各側枠の長手方向に沿って重ねるように折畳むことが可能なことから、スペーサが両側枠からはみ出さないように折畳むことができ、運搬や保管上きわめて有効である。さらに、未連結の状態の連結部は1ヶ所で、他の3ヶ所の連結部は側枠と回動可能に連結された状態にあり、一方の側枠とスペーサとは上下2ヶ所において連結された状態にあることから、型枠の折畳み時や組立て時において側枠の長手方向への移動が容易であるとともに、両側枠を広げて1ヶ所の未連結状態の連結部を連結することにより容易に組立てることができる。
【0054】
また、請求項2の発明では、一対の両側枠をスペーサにより上下各2ヶ所の4ヵ所で回動可能に連結するとともに、それらの連結部の少なくともいずれか1ヶ所を長孔状のリング形状として両側枠を広げた状態と平行な状態との間を移動可能に構成したので、その長孔状のリング形状からなる連結部を介して両側枠を平行な状態にして重ねることにより、前記谷側の側枠のように少なくとも一方が傾斜した状態に設置される法枠用型枠であっても、容易に折畳むことが可能である。また、各側枠の長手方向に沿って重ねるように折畳むことが可能なことから、スペーサが両側枠からはみ出さないように折畳むことができ、運搬や保管上きわめて有効である。さらに、本発明の場合には、長孔状のリング形状からなる連結部によって移動可能に連結したことから、側枠とスペーサとを外したり取付け直したりする必要がなく、長孔リング内で移動させるだけで平行状態から設置状態、及びその逆に移動させることができ、搬送時の折畳み作業や現場での設置時における組立て作業を容易に行うことができる。
【0055】
請求項3の発明では、前記横枠を形成するための山側の側枠を、地山斜面に対し直角より谷側に傾斜して設置可能に構成したので、横枠の谷側の側枠が地山斜面に対し直角よりも山側に傾斜するとともに、横枠の山側の側枠が地山斜面に対し直角から谷側に傾斜し、横枠の両側が傾斜した台形の形状となるため、横枠山側の側面が水平に近くなり、景観向上の効果とともにさらに余剰水が円滑に排水されるという効果が得られる。
【0056】
請求項4の発明では、前記格子状法枠の縦枠の形状に合わせて、横枠の側枠の端部を縦枠に係止可能な形状に構成したので、縦枠が矩形断面及び台形断面のいずれであっても、その形状に合わせて横枠の側枠端部を係止可能とするため、縦枠と横枠の交差部で縦と横の側枠同士が隙間なく確実に連結される。
【0057】
請求項5の発明では、前記横枠の山側の網状側枠の網目を谷側の網状側枠の網目より粗く構成したので、横枠の山側の網状側枠の縦線と横線による網目の大きさをコンクリート(又はモルタル)が入り込むくらいの粗さとし、谷側の網状側枠の網目をコンクリートが漏れない程度の大きさとすることにより、山側の網状側枠の外側からこの側枠の網目を通して型枠内にコンクリートを打設することができるので、型枠内の山側の隅部にコンクリートを確実に充填できる。
【0058】
請求項6の発明では、縦枠と横枠からなる格子状法枠を、請求項1〜5のいずれか一項に記載の法枠用型枠にモルタル又はコンクリートを打設して形成するように構成したので、少なくとも、日光の影響を最も大きく受ける格子状法枠の横枠の谷側の側面が地山斜面に対して直角より山側に傾斜した状態に形成され、法枠による影の発生が少なくなり、格子内に日光が照射される量が増え、局部的な影による違和感も少なくなるとともに、植生への影響も少なくなるので、法枠全体としての見栄えも良くなり、優れた景観を得ることができる。しかも、その格子状法枠の形成作業において上記の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る法枠用型枠を用いて形成された法枠の概略図。
【図2】図1の拡大図。
【図3】図2のA−A断面図。
【図4】図2のA−A断面図。
【図5】本発明に係る横枠の法枠用型枠の断面図。
【図6】本発明に係る縦枠の法枠用型枠の断面図。
【図7】横枠山側の網状側枠を示した側面図。
【図8】横枠谷側の網状側枠及び縦枠の網状側枠を示した側面図。
【図9】横枠用型枠の断面図。
【図10】縦枠用型枠の断面図。
【図11】横枠に使用する山側の網状側枠を示した側面図。
【図12】横枠に使用する谷側の網状側枠及び縦枠の網状側枠を示した側面図。
【図13】横枠のみが台形断面で縦枠は矩形断面の格子状法枠の概略図。
【図14】図13における法枠の横枠用型枠の断面図。
【図15】横枠に使用する山側の網状側枠を示した側面図。
【図16】横枠に使用する谷側の網状側枠及び縦枠の網状側枠を示した側面図。
【図17】図13における別の横枠用型枠の断面図。
【図18】横枠に使用する山側の網状側枠を示した側面図。
【図19】横枠に使用する谷側の網状側枠及び縦枠の網状側枠を示した側面図。
【図20】本発明のさらに別の実施形態の型枠断面図。
【図21】本発明のさらに別の実施形態の型枠断面図。
【図22】本発明のさらに別の実施形態の型枠断面図。
【図23】本発明のさらに別の実施形態の型枠断面図。
【図24】本発明のさらに別の実施形態の型枠断面図。
【図25】従来の法枠が施工された地山斜面の概略図。
【図26】従来の法枠が施工された地山斜面の断面図。
【図27】従来の法枠が施工された地山斜面の断面図。
【符号の説明】
1:法枠、2:縦枠、3:横枠、4:客土、5:植栽、6:網状側枠、7:スペーサ、8:縦線、9:横線、10a,10b:横棒、11:縦棒、12:フック、13:下鉄筋、14:上鉄筋、15:補強材、16:縦枠、17:開口、18a,18b:網状型枠、19:スペーサ、20a,20b:横棒、21:縦棒、22:リング、23:長孔リング、24:スペーサ、25:棒材
Claims (6)
- 縦線と横線が交差する側枠の一対を対向状態でスペーサの上下各2ヶ所により回動可能に連結し、地山斜面に対して縦枠と横枠を形成すべく格子状に設置される法枠用型枠において、前記横枠を構成する一対の側枠は、少なくとも谷側の側枠が設置状態で地山斜面に対して直角よりも山側に傾斜するように前記スペーサと連結されるとともに、前記スペーサと側枠との連結部のうち、上部の1ヶ所が未連結の状態で、残りの3ヶ所を回動可能に連結することにより側枠の長手方向に折畳み可能にしたことを特徴とする法枠用型枠。
- 縦線と横線が交差する側枠の一対を対向状態でスペーサの上下各2ヶ所により回動可能に連結し、地山斜面に対して縦枠と横枠を形成すべく格子状に設置される法枠用型枠において、前記横枠を構成する一対の側枠は、少なくとも谷側の側枠が設置状態で地山斜面に対して直角よりも山側に傾斜するように前記スペーサと連結されるとともに、前記スペーサの側枠との連結部の少なくともいずれか1ヶ所を長孔状のリング形状として両側枠を広げた状態と平行な状態との間を移動可能に構成することにより側枠の長手方向に折畳み可能にしたことを特徴とする法枠用型枠。
- 前記横枠を形成する一対の側枠は、山側の側枠が地山斜面に対して直角よりも谷側に傾斜して設置可能であることを特徴とする請求項1又は2に記載の法枠用型枠。
- 前記横枠を構成する一対の側枠は、その両側端部が前記縦枠を構成する一対の側枠に係止可能な形状としたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の法枠用型枠。
- 前記一対の側枠は網状側枠であって、前記横枠における山側の網状側枠の網目が谷側の網状側枠の網目より粗いことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の法枠用型枠。
- 縦枠と横枠からなる格子状法枠において、請求項1〜5のいずれか一項に記載の法枠用型枠にモルタル又はコンクリートを打設して形成したことを特徴とする格子状法枠。
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