JP4023462B2 - 能動型流体封入式防振装置 - Google Patents

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Description

本発明は、例えば自動車用のエンジンマウントやボデーマウント或いは制振装置等に採用されて、防振すべき振動に対して積極的乃至は相殺的な防振効果を発揮し得る能動型防振装置に係り、特に非圧縮性流体が封入された振動作用室の壁部の一部を加振部材で構成し、該加振部材をアクチュエータで加振駆動せしめて振動作用室の圧力を制御することによって能動的な防振効果を得るようにした能動型流体封入式防振装置に関するものである。
振動伝達系を構成する部材間に介装される防振連結体や防振支持体としての防振装置の一種として、第一の取付部材と第二の取付部材を本体ゴム弾性体で連結すると共に、本体ゴム弾性体で壁部の一部が構成されて振動が入力される振動作用室を形成し、該振動作用室に非圧縮性流体を封入する一方、該振動作用室の壁部の別の一部を加振部材で構成し、該加振部材を加振駆動するアクチュエータを設けて、該加振部材を加振することにより該振動作用室を圧力制御するようにした流体封入式の能動型防振装置が知られている。例えば、特許文献1や特許文献2などに記載の防振装置が、それである。このような能動型流体封入式防振装置は、例えば、防振連結される部材に対して、防振すべき振動に対応した加振力を及ぼすことにより振動を相殺的に抑制したり、マウントのばね特性を入力振動に応じて積極的に変更して低動ばね化等させることにより、振動に対して積極的な防振効果を得ることが出来るのであり、例えば自動車用エンジンマウント等への適用が考えられている。
ところで、このような能動型流体封入式防振装置では、防振すべき振動に対応した周波数や位相で加振部材を高度に加振制御する必要があることから、アクチュエータとしては、例えば、前記特許文献等に記載されているようにコイルへの通電によって生ぜしめられる磁力や電磁力を利用して出力部材を駆動するようにした加振手段が好適に採用される。また、このようなアクチュエータは、一般に、防振装置の製造工程上等の理由から、第一の取付部材と第二の取付部材を本体ゴム弾性体で連結せしめて、該本体ゴム弾性体と加振部材によって壁部の一部が構成された振動作用室を形成してなる防振装置本体とは別に形成されることとなり、別体形成したアクチュエータの本体を第二の取付部材に対して固定的に取り付ける一方、その出力部材を防振装置本体の加振部材に対して、駆動ロッドを介して、後から連結固定する構造とされている。
しかしながら、加振部材は、その変位を許容するために、支持ゴム弾性体を介して第二の取付部材に弾性連結されていることから、支持ゴム弾性体の加硫成形時の収縮量のばらつきや、支持ゴム弾性体を第二の取付部材に対してかしめ固定等で固定する際の組付位置のばらつき等に起因して、第二の取付部材に対する加振部材の位置を高精度に設定することが難しい。特に、アクチュエータのコイルは、第二の取付部材を防振対象部材に取りつけるための別体ブラケットを介して第二の取付部材に固定されることが多く、そのような別体ブラケットが介在すると別体ブラケットの部品寸法誤差や第二の取付部材に対する組付位置のバラツキも重畳することとなって、第二の取付部材に対するアクチュエータの取付位置の精度確保が一層難しくなる。
そのために、第二の取付部材に対する加振部材の位置誤差と、第二の取付部材に対するアクチュエータのコイルの位置誤差とが、相加的に重なって、相互に連結されるべき加振部材とアクチュエータとの相対位置に大きなバラツキが発生し易く、加振部材とアクチュエータの出力部材を駆動ロッドで連結することが難しくなるおそれがある。
なお、このような問題に対して、例えば特許文献3乃至5に示されるように、加振部材と出力部材を連結する駆動ロッドを、加振部材に対して非固定的な当接状態に保持せしめて、加振部材と駆動ロッドの軸直角方向における相対的な位置ずれを許容しつつ、出力部材の駆動力を加振部材に伝達することも考えられる。ところが、特許文献3乃至5に示された構造では、加振部材と駆動ロッドの当接部位において、作動に際しての摩擦抵抗が大きくなり、滑らかな作動特性を長期間に亘って安定して得ることが難しく、異音の発生するおそれもあった。また、摩擦抵抗が大きいことによって、加振部材と駆動ロッドとの擦れによる磨耗が生じ易く、かかる磨耗によって加振部材や駆動ロッドの形状が変化することにより、アクチュエータの駆動力の加振部材への伝達が不安定となるおそれもあった。
さらに、加振部材と駆動ロッドの当接部位がアクチュエータと同じ配設空間内で、アクチュエータの上方に位置していることから、加振部材と駆動ロッドとの擦れによって生ずる粉塵がアクチュエータにおける出力部材の滑動部位に入り込んで、アクチュエータの作動に悪影響を及ぼすおそれがあった。なお、粉塵がアクチュエータの滑動部位に入り込むのを防止するために、特許文献4及び5に示されるように、アクチュエータの滑動部位を覆うように広がるシール部材を設けることも考えられるが、このようなシール部材を設けることは、部品点数の増加を招き、必ずしも有効な解決策では無かったのである。
特開平10−47426号公報 特開平11−351313号公報 特開2001−3981号公報 特開2001−3980号公報 特開2001−1764号公報
ここにおいて、本発明は上述の如き事情を背景として為されたものであって、その解決課題とするところは、アクチュエータによる加振駆動力を、出力部材から加振部材に対して、長期に亘って安定して及ぼすことの出来る、改良された構造の能動型流体封入式防振装置を提供することにある。
以下、前述の如き課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意の組み合わせで採用可能である。また、本発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記載のものに限定されることなく、明細書全体および図面の記載、或いはそれらの記載から当業者が把握することの出来る発明思想に基づいて認識されるものであることが理解されるべきである。
(本発明の態様1)
すなわち、本発明の第1の態様は、防振連結される一方の部材に取り付けられる第一の取付部材を他方の部材に取り付けられる筒状の第二の取付部材の一方の開口部側に離隔配置せしめて、該第一の取付部材と該第二の取付部材を本体ゴム弾性体で連結することにより、該第二の取付部材の一方の開口部を該本体ゴム弾性体で覆蓋せしめて、該第二の取付部材の他方の開口部を変形容易な可撓性膜で覆蓋することによって、それら本体ゴム弾性体と可撓性膜の対向面間に非圧縮性流体の封入領域を形成すると共に、該第二の取付部材に対して支持ゴム弾性体で弾性的に支持された加振部材を該封入領域を仕切るようにして配設することによって、壁部の一部が該本体ゴム弾性体で構成された振動作用室と、壁部の一部が該可撓性膜で構成された平衡室を形成する一方、該封入領域の外方に電磁式アクチュエータを配設して、該電磁式アクチュエータの出力部材を該加振部材に連結せしめて該加振部材に加振力を及ぼすことにより該振動作用室の圧力を能動的に制御するようにした能動型流体封入式防振装置において、前記出力部材から前記加振部材に向かって突出する駆動ロッドの突出先端面を前記平衡室内に位置せしめて該突出先端面に当接受部を設けると共に、該加振部材から該駆動ロッド側に向かって突出する当接突部を設けて、該当接突部を該当接受部に対して該平衡室内で屈曲可能に当接せしめたことを、特徴とする。
本態様に従う構造とされた能動型流体封入式防振装置においては、加振部材と駆動ロッドとの当接部位を非圧縮性流体の封入領域内に設けたことによって、非圧縮性流体が潤滑剤として機能し得て、加振部材と駆動ロッドとの磨耗が軽減されて、良好な駆動力伝達効率を長期に亘って得ることが出来る。更に、当接部位を密閉された封入領域内に設けたことによって、加振部材と駆動ロッドの擦れによる粉塵が発生したとしても、かかる粉塵が封入領域から外部へ漏れ出すことが防止されて、アクチュエータに侵入することが無いことから、アクチュエータの作動安定性と耐久性を向上せしめることが出来る。更にまた、加振部材と駆動ロッドとの当接部位が非圧縮性流体中に配設されていることから、加振部材と駆動ロッドとの擦れによって発生する異音や振動を軽減することも出来る。
そして、加振部材が駆動ロッドに対して屈曲可能に当接されていることによって、加振部材と駆動ロッドとの相対的な軸ずれ(軸直角方向での相対位置のずれ)などがかかる屈曲部位で吸収されて、加振部材乃至は駆動ロッドの寸法や組付位置の誤差や傾きが駆動力の伝達系に及ぼす悪影響を低減することが出来、安定した駆動力伝達効率を得ることが出来る。
(本発明の態様2)
本発明の第2の態様は、前記態様1に係る能動型流体封入式防振装置において、前記当接突部を、前記当接受部に対して軸直角方向の相対的な位置ずれが許容される状態で当接せしめたことを、特徴とする。本態様に従う構造とされた能動型流体封入式防振装置においては、製造誤差や組付誤差等に起因して加振部材と電磁式アクチュエータの間に軸直角方向の相対的な偏倚が発生した場合でも、当接突部の当接受部に対する軸直角方向での相対的な位置ずれによって加振部材と電磁式アクチュエータの軸直角方向での偏倚を許容した状態で、加振部材や電磁式アクチュエータ等の各部材を容易に組み付けることが出来る。そして、加振部材の当接受部に対する当接部位における軸直角方向での相対的な位置ずれが許容されていることから、組み付けられた加振部材と出力部材の間における軸直角方向の応力の残留も一層効果的に軽減され得ることとなり、電磁式アクチュエータの出力部材もより円滑に軸方向作動可能となって、加振部材の安定した駆動変位が実現され得る。
(本発明の態様3)
本発明の第3の態様は、前記態様1又は2に係る能動型流体封入式防振装置において、前記当接突部を略球面形状の先端面を有する球状突部とすると共に、前記当接受部において該球状突部より大きい曲率半径で略球面形状で窪んだ球状凹面を形成して、該球状凹面に対して該球状突部を当接せしめたことを、特徴とする。本態様に従う構造とされた能動型流体封入式防振装置においては、当接突部が当接受部の球状凹面によって当接受部の中心へ向かうように案内されて、これら加振部材と駆動ロッドの軸合わせを行なうことが出来る。これにより、アクチュエータの組付けの際には、加振部材に対して駆動ロッドを当接せしめることによって、加振部材の当接突部が球状凹面の形状に沿って球状凹面の中心に案内されて、加振部材と駆動ロッドとの軸合わせを半ば自動的に行なうことが出来る。
即ち、前記特許文献3乃至5に示された構造のように、加振部材に対して駆動ロッドが非固定的に当接せしめられた構造においては、出力部材から駆動ロッドを通して加振部材に及ぼされる加振力の作用点が偏心してしまって、加振駆動時に加振部材が傾斜して振動し易く、加振部材を安定して加振制御することが難しいという問題を内在していた。そして、加振部材の傾斜方向の振動が共振現象によって大きくなると防振装置の防振性能に悪影響を及ぼすおそれがあった。しかし、本態様においては、当接突部と当接受部の当接部位が球状面とされていることによって、アクチュエータの作動時において、加振部材と駆動ロッドとの軸直角方向の相対位置が一時的に偏倚したとしても、かかる球状突部と球状凹面の案内作用によって、加振部材が駆動ロッドに対して軸合わせされて、駆動ロッドの駆動力を安定して加振部材に及ぼすことが出来る。
(本発明の態様4)
本発明の第4の態様は、前記態様1乃至3の何れかに係る能動型流体封入式防振装置において、前記駆動ロッドを前記出力部材から別体形成して前記可撓性膜の中央部分を実質的に貫通するように該可撓性膜に固着すると共に、該駆動ロッドの該出力部材側の先端面を該出力部材に設けた当接面に対して軸直角方向の相対的な位置ずれが許容される状態で当接せしめたことを、特徴とする。本態様に従う構造とされた能動型流体封入式防振装置においては、駆動ロッドが、加振部材及び出力部材の何れの部材からも別体とされて、当接せしめられていることによって、加振部材乃至は出力部材の傾きが駆動ロッドを介して他方の部材に及ぼされることが無く、加振部材及び出力部材の軸方向の安定した駆動を行なうことが出来る。また、駆動ロッドの出力部材に対する軸直角方向の相対変位が許容されていることから、アクチュエータの組付け時の、出力部材と加振部材との軸直角方向の位置ずれをより有効に吸収することが出来、これら出力部材と加振部材との間に軸直角方向の位置ずれが生じている場合でも、かかる位置ずれが加振部材と駆動ロッドの当接部位と、駆動ロッドと出力部材の当接部位で吸収されることによって、加振部材や出力部材が傾いた状態で配設されるようなことも無く、軸方向の安定駆動が実現され得る。
なお、本態様において、駆動ロッドの突出先端面の形状は、当接面に当接せしめられる先端面を平坦面とすると共に、その平坦面の外周部分は湾曲形状をもって軸方向に立ち上がる形状とされるのが望ましい。蓋し、このような形状によれば、駆動ロッド先端面に形成された平坦面によって、当接面に対して適度な面積をもって当接することで、駆動ロッドと当接面の間で駆動力を安定して伝達することが出来ると共に、外周部分の湾曲形状によって、駆動ロッドの傾きとその回復が容易とされて、且つ当接面に対して適度な接触面積を保ったまま滑らかに傾くことが出来ることにより、傾きの際の当接面との磨耗やカジリ音の発生なども軽減することが出来るからである。
(本発明の態様5)
本発明の第5の態様は、前記態様4に係る能動型流体封入式防振装置において、前記出力部材において、前記駆動ロッドに向かって開口する凹所を形成し、該凹所の底面により該駆動ロッドの先端面が当接せしめられる前記当接面を構成したことを、特徴とする。本態様に従う構造とされた能動型流体封入式防振装置においては、かかる凹所によって、駆動ロッドの当接面に対する軸直角方向の変位量が規制されて、加振部材と出力部材の相対的な過大変位を防止することが出来る。これにより、出力部材の駆動力を加振部材に対して安定して及ぼすことができる。
(本発明の態様6)
本発明の第6の態様は、前記態様1乃至5の何れかに係る能動型流体封入式防振装置において、前記振動作用室内において前記加振部材を前記出力部材に向けて付勢する第一の付勢手段を設けると共に、該出力部材を該加振部材に向けて付勢する第二の付勢手段を設けて、それら第一の付勢手段と第二の付勢手段により該加振部材の前記当接突部を前記駆動ロッドの前記当接受部に対して当接状態に保持せしめたことを、特徴とする。
本態様に従う構造とされた能動型流体封入式防振装置においては、第一及び第二の付勢手段によって、加振部材と出力部材を互いに接近方向に付勢することによって、駆動ロッドの作動に対する加振部材の追従性を向上せしめることが出来る。そして、加振部材を中立位置に復帰せしめる復元力として、支持ゴム弾性体の復元力でなく、第一及び第二の付勢手段の釣り合い力を積極的に利用することによって、支持ゴム弾性体に対して必要以上の負荷をかけることも無く、支持ゴム弾性体の耐久性も向上される。ここにおいて、加振部材の当接突部と駆動ロッドの当接受部との当接状態は、中立状態においてのみならず、加振状態でも、加振のために及ぼされる駆動力の変動に抗して当接状態が維持されるように、要するに、駆動力の伝達時に変化する当接圧が零よりも大きな値に安定して維持されるように、第一及び第二の付勢手段の付勢力が設定されることが望ましい。
さらに、第一の付勢手段は、振動作用室内に配設されていることによって、第一の付勢手段が当接する部材との間で相対変位せしめられるような場合でも、振動作用室に封入された非圧縮性流体が潤滑剤として作用することになる。それ故、例えば第一の付勢手段の加振板に対する擦れ等による磨耗が軽減されて耐久性が向上されると共に、擦れによって生じる異音や振動の発生および伝達が軽減されて、防振性能の向上が図られ得る。更に、第一の付勢手段が振動作用室内部に配設されていることから、擦れによって粉塵が発生しても、かかる粉塵が外部に漏れ出すことが防止されて、粉塵が出力部材の滑動隙間に入り込んで、アクチュエータの作動を阻害するようなことも無い。
(本発明の態様7)
本発明の第7の態様は、前記態様6に係る能動型流体封入式防振装置において、前記第二の取付部材によって支持された仕切部材を前記振動作用室内に配設して該振動作用室を該仕切部材で仕切ることにより、壁部の一部が前記本体ゴム弾性体で構成された受圧室と、壁部の一部が前記加振部材で構成された加振室を形成すると共に、それら受圧室と加振室を相互に連通する第一のオリフィス通路を形成する一方、該加振室に対して前記第一の付勢手段を収容配置せしめて、該第一の付勢手段により該仕切部材と該加振部材との間に離隔方向の付勢力が及ぼされるようにしたことを、特徴とする。
本態様に従う構造とされた能動型流体封入式防振装置においては、加振板の変位によって加振室に生ぜしめられる圧力変化を、第一のオリフィス通路を流動せしめられる流体の流動作用を利用することにより、受圧室に効率的に伝達することが出来る。これにより、加振板に対する小さな加振力で大きな受圧室の内圧制御、延いては能動的防振効果を効率的に得ることが可能となる。また、仕切部材を第一の付勢手段の支持部材として用いることによって、部品点数を増加することなく、第一の付勢手段を加振室に対して収容配置することが出来る。
上述の説明から明らかなように、本発明に従う構造とされた能動型流体封入式防振装置においては、アクチュエータの出力部材から加振部材に向かって突出する駆動ロッドの突出先端面に当接受部を設けると共に、加振部材に駆動ロッドに向かって突出する当接突部を設けて、当接突部を当接受部に対して非圧縮性流体の封入領域内で当接せしめたことによって、非圧縮性流体が潤滑剤とされて、これら加振部材と駆動ロッドの擦れによる磨耗が軽減される。更に、加振部材と駆動ロッドとの摩擦による粉塵が発生しても、粉塵が外部に漏れ出すことが無く、部品点数を増加すること無しに、アクチュエータの滑動部位への粉塵の侵入を防止することが可能となる。また、当接部位が非圧縮性流体中に配設されていることから、加振部材と駆動ロッドの擦れによって発生する異音や振動を軽減することが出来る。
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
先ず、図1には、本発明の第一の実施形態としての自動車用エンジンマウント10が示されている。このエンジンマウント10は、第一の取付部材としての第一の取付金具12と第二の取付部材としての第二の取付金具14が、互いに離隔して対向配置されていると共に、それらの間に介装された本体ゴム弾性体16によって弾性的に連結されたマウント本体18が、ストッパ金具20に嵌め込まれて構成されている。そして、エンジンマウント10は、第一の取付金具12が図示しないパワーユニットに取り付けられる一方、第二の取付金具14が図示しない自動車ボデーに取り付けられることにより、パワーユニットをボデーに対して防振支持せしめるようになっている。また、そのような装着状態下、かかるエンジンマウント10には、図1中の上下方向となるマウント中心軸方向で第一の取付金具12と第二の取付金具14の間にパワーユニットの分担荷重が及ぼされることにより、第一の取付金具12と第二の取付金具14が相互に接近する方向に本体ゴム弾性体16が弾性変形せしめられるようになっている。更に、それら第一の取付金具12と第二の取付金具14の間には、両取付金具12,14が相互に接近/離隔する方向に、防振すべき主たる振動が入力されるようになっている。なお、以下の説明中、上下方向とは、原則として図1中の上下方向を言うものとする。
より詳細には、第一の取付金具12は、逆向きの円錐台形状を有している。また、第一の取付金具12の大径側端部には、外周面上に突出する円環板状のストッパ部22が一体形成されている。更に、大径側端部から軸方向上方に向かって固定軸24が一体的に突設されており、この固定軸24には、上端面に開口する固定用ねじ穴26が形成されている。そして、この固定用ねじ穴26に螺着される図示しない固定ボルトによって、第一の取付金具12が、図示しない自動車のパワーユニットに取り付けられるようになっている。
また一方、第二の取付金具14は、大径の略円筒形状を有している。また、第二の取付金具14の軸方向中間部分には、段部28が形成されており、この段部28を挟んで軸方向上側が大径部30とされていると共に、軸方向下側が小径部32とされている。なお、大径部30の内周面には、薄肉のシールゴム層34が被着形成されている。更に、小径部32の下側開口端部付近には、可撓性膜としての薄肉のゴム膜からなるダイヤフラム36が配設されており、かかるダイヤフラム36の外周縁部が第二の取付金具14の小径部32の内周面に加硫接着されることで、第二の取付金具14の軸方向下側開口部が流体密に覆蓋されている。また、ダイヤフラム36の中央部分には、駆動ロッドとしての連結軸金具38が加硫接着されている。
そして、第二の取付金具14の軸方向上方に離隔して、第一の取付金具12が位置せしめられており、これら第一の取付金具12と第二の取付金具14が、本体ゴム弾性体16で弾性的に連結されている。
本体ゴム弾性体16は、全体として略円錐台形状を有しており、大径側端面にはすり鉢状の凹状面40が形成されている。また、本体ゴム弾性体16の小径側端面には、第一の取付金具12が、軸方向に差し入れられた状態で加硫接着されている。なお、第一の取付金具12のストッパ部22は、本体ゴム弾性体16の小径側端面に重ね合わされて、本体ゴム弾性体16に覆われるようにして加硫接着されていると共に、ストッパ部22から上方に突出する当接ゴム42が、本体ゴム弾性体16と一体的に形成されて、当接ゴム42の内方には凹溝44が形成されている。また、本体ゴム弾性体16の大径側外周面には、連結スリーブ46が加硫接着されている。
かかる本体ゴム弾性体16の大径側外周面に加硫接着された連結スリーブ46が、第二の取付金具14の大径部30に嵌め込まれて、大径部30が縮径加工されることにより、本体ゴム弾性体16が第二の取付金具14に対して流体密に嵌着固定される。これにより、第二の取付金具14の軸方向上側開口部が、本体ゴム弾性体16によって流体密に覆蓋されることとなり、以て、第二の取付金具14の内部には、本体ゴム弾性体16とダイヤフラム36との対向面間において、外部空間から流体密に遮断された封入領域としての液室48が形成されて、その液室48に非圧縮性流体が封入されている。
なお、封入される非圧縮性流体としては、例えば、水やアルキレングリコール、ポリアルキレングリコール、シリコーン油等が何れも採用可能であり、特に、流体の共振作用に基づく防振効果を有効に得るために、粘度が0.1Pa.s以下の低粘性流体が好適に採用される。
さらに、第二の取付金具14には、仕切部材50とオリフィス部材52が組み込まれており、本体ゴム弾性体16とダイヤフラム36との対向面間に配設されている。
仕切部材50は、所定厚さをもって広がる支持ゴム弾性体54を有しており、この支持ゴム弾性体54の中央部分に加振部材としての加振板56が加硫接着されている。加振板56は外周壁57を有する略カップ形状を有しており、その外周壁57の上端縁部からは、軸方向下方に延び出すリム部58が形成されていると共に、リム部58の外周縁部が支持ゴム弾性体54の内周縁部に加硫接着されている。一方、加振板56の中央部分には、加振板56の外方に球面形状に突出する当接突部としての球状突部60が形成されている。なお、リム部58の上部には、支持ゴム弾性体54が回り込んで肉厚とされた緩衝部62が形成されている。
また、支持ゴム弾性体54の外周縁部には、円環形状の外周金具64が加硫接着されており、かかる外周金具64には、周方向に所定長さで延びる周溝66が形成されている。そして、この外周金具64の軸方向上側開口部が、径方向外方に広がるフランジ状部68とされて、フランジ状部68が第二の取付金具14の段部28に重ね合わされて、段部28と連結スリーブ46の間で挟圧固定されている。これにより、仕切部材50は、本体ゴム弾性体16とダイヤフラム36の対向面間の中間部分で軸直角方向に広がって配設されており、第二の取付金具14の内部を軸方向両側に二分せしめている。以て、仕切部材50を挟んで、上側には、壁部の一部が本体ゴム弾性体16で構成されて振動入力時に本体ゴム弾性体16の弾性変形に基づく圧力変動が生ぜしめられる振動作用室としての作用流体室70が形成されている。一方、仕切部材50の下側には、壁部の一部がダイヤフラム36で構成されて容積変化が容易に許容される平衡室72が形成されている。
また、オリフィス部材52は、上下の薄肉プレート53a,53bが互いに重ね合わされることによって構成されており、その外周縁部が、外周金具64のフランジ状部68に重ね合わされて、フランジ状部68と本体ゴム弾性体16の大径側端部内周縁部との間で挟持されることにより、外周金具64を介して第二の取付金具14によって固定的に支持されている。これにより、オリフィス部材52は、本体ゴム弾性体16と仕切部材50との対向面間の中間部分で軸直角方向に広がって配設されており、作用流体室70を軸方向両側に二分せしめている。以て、オリフィス部材52を挟んで、上側には、壁部の一部が本体ゴム弾性体16で構成された受圧室74が形成されている。一方、オリフィス部材52の下側には、壁部の一部が加振板56で構成された加振室76が形成されている。
そして、オリフィス部材52の中央部分からやや外方には、受圧室74と加振室76を直接に連通せしめる透孔形態の第一のオリフィス通路78が貫設されており、50〜150Hz程度のこもり音等の高周波数域にチューニングされている。
また、オリフィス部材52の外周縁部には、上下の薄肉プレート53a,53bの重ね合わせ面間を周方向に所定長さで延びる周方向通路80が形成されている。かかる周方向通路80は、仕切部材50の周溝66に重ね合わされていることによって、周溝66がオリフィス部材52によって覆蓋されている。そして、周方向通路80の周方向一方の端部と周溝66の周方向一方の端部が接続される一方、周方向通路80の周方向他方の端部が受圧室74に接続されて、周溝66の周方向他方の端部が平衡室72に接続されている。これにより、周方向通路80と周溝66で協働して、受圧室74と平衡室72を相互に連通せしめる第二のオリフィス通路82が形成されている。なお、第二のオリフィス通路82は、例えば10Hz前後のエンジンシェイク等の低周波数域にチューニングされる。但し、上述の第一及び第二のオリフィス通路78、82の具体的形態やチューニングはあくまでも例示であり、要求される防振特性や防振装置の基本的構造等によって当業者の判断において適宜に変更されるものであって、何等限定されるものではない。
さらに、上述の如き構造とされたマウント本体18は、第二の取付金具14がストッパ金具20に嵌め込まれており、このストッパ金具20を介して、図示しない自動車のボデーに取り付けられるようになっている。
ストッパ金具20は大径の段付円筒形状とされて、その下側の方が上側よりも大径とされており、マウント本体18が下側開口部から挿し入れられて、係止段差部84で係止されて圧入固定されている。一方、上側開口部には内方に延び出す当接部86が形成されており、かかる当接部86に第一の取付金具12のストッパ部22が当接ゴム42を介して当接することで、リバウンド方向のストッパ機能が発揮される。なお、当接部86には挿通孔88が貫設されて、第一の取付金具12の固定軸24との間に適当な間隙が保たれており、第一の取付金具12の軸直角方向の相対変位が許容されている。また、第一の取付金具12の固定軸24には、ストッパ金具20の挿通孔88を覆うように広がる傘上の庇部材90が装着せしめられている。
そして、ストッパ金具20に嵌め込まれた第二の取付金具14は、ストッパ金具20の係止段差部84で係止されて圧入固定されることで、抜け出し不能に固定されている。また、ストッパ金具20には、外周面上に突出して下方に延び出す複数の脚部92が固着されており、これら脚部92が図示しない自動車のボデーに載置され、固定ボルトで固定されることによってエンジンマウント10が自動車のボデーに装着される。
また、マウント本体18においては、仕切部材50に設けられた加振板56がダイヤフラム36の中央部分に設けられた連結軸金具38に対して当接状態で重ね合わされている。より詳細には、連結軸金具38の上端部は、加振板56の径寸法より僅かに大きな径寸法をもって広がる当接受部94とされており、当接受部94の外周縁部は上方に延び出す外周壁98とされて、ダイヤフラム36との接着面積が確保されている一方、当接受部94の中央部分は加振板56の球状突部60より僅かに大きい曲率半径で略球面形状で窪んだ球状凹面96とされている。そして、球状凹面96に加振板56の球状突部60が重ね合わされて、互いの球面形状による案内作用によって、これら加振板56と連結軸金具38が軸合わせされた状態で当接せしめられている。
そして、連結軸金具38には、その中央部分において軸方向下方にロッド状に延び出す駆動ロッドとしての連結ロッド100が一体形成されている。連結ロッド100の突出先端面は、その中央部分が円形の平坦な先端当接面102とされていると共に、先端当接面102の外周部分は、湾曲形状を持って軸方向に立ち上がる外周当接面104とされている。
一方、マウント本体18における作用流体室70を構成する加振室76の内部には、第一の付勢手段としての第一コイルスプリング106が、オリフィス部材52と加振板56との対向面間に圧縮状態で配設されており、これによって、加振板56が作用流体室70から離隔する方向(本実施形態においては軸方向下方)に付勢されている。なお、ここにおいて、加振板56はその外周縁部に立ち上がる外周壁57が形成されていると共に、オリフィス部材52には、第一コイルスプリング106の外周に突出する縦壁108が突出形成されており、これら外周壁57及び縦壁108が第一コイルスプリング106を係止することによって、第一コイルスプリング106の軸直角方向の過大変位が防止されている。
さらに、連結ロッド100が突出せしめられた第二の取付金具14の軸方向下方、即ち、加振板56と連結軸金具38を挟んで作用流体室70と反対側には、電磁式アクチュエータとしての電磁加振器110が配設されている。
電磁加振器110は、コイル112と、コイル112の周りを取り囲むようにしてコイル112に対して固定的に組付けられたハウジング114から構成されている。ハウジング114は、その中央部分に透孔116が貫設されると共に、コイル112の外周面と下端面を囲むようにしてL字状断面で全周に亘って延びる外側ヨーク部118が形成されている。そして、コイル112の内周面には、コイル112の内周面を軸方向全体に亘って覆うように延びる略円筒形状の内側ヨーク120が組み付けられている。これらコイル112と内側ヨーク120は、それぞれの上端部が互いに略等しい軸方向高さとなるように組み付けられており、外側ヨーク部118の上端部より僅かに低い位置に設定されている。これら外側ヨーク部118及び内側ヨーク120はそれぞれ強磁性体で形成されており、それぞれの上端縁部において、コイル通電時に磁極が形成されるようになっている。
一方、ハウジング114の外周縁部には、係合溝122が刻設されており、係合溝122に対して第二の取付金具14の下端縁部に形成された係止片124が嵌め入れられて係止されることで、電磁加振器110が第二の取付金具14の下端開口部を覆蓋するようにして取り付けられている。このように、本実施形態においては、電磁加振器110は、ブラケットなどの別体を介することなく、第二の取付金具14に直接に固定されていることから、加振板56とコイル112の中心軸との組付け時の位置ずれが軽減されている。なお、電磁加振器110のハウジング114と第二の取付金具14との間には、ダイヤフラム36が下方に延び出して形成された挟圧ゴム126が挟圧されていることで、電磁加振器110のガタツキが防止されている。これにより、コイル112の中心軸が、マウント本体18の中心軸と略一致せしめられて、第二の取付金具14や加振板56の中心軸と位置合わせされる。また、ハウジング114の下方には蓋部材128がボルト固定されており、ハウジング114の透孔116に粉塵等が侵入するのを防止している。
そして、コイル112が組み付けられたハウジング114の透孔116内には、出力部材としてのアーマチャ130が組み付けられている。アーマチャ130は全体として円形ブロック形状の強磁性体によって形成されており、内側ヨーク120の内径寸法よりも僅かに小さい外径寸法とされて、コイル112と同一中心軸上で、内側ヨーク120に嵌め込まれて、軸方向に相対変位可能に組み付けられている。更にアーマチャ130は、コイル112よりやや大きい軸方向長さ寸法を持つと共に、その上端部は、外径寸法が外側ヨーク部118の内周縁部近くにまで広げられた径方向突出部132とされている。かかる径方向突出部132によって、外側ヨーク部118及び内側ヨーク120との間に有効な磁気吸引力が作用せしめられる磁気ギャップが位置調節されて形成されるようになっている。例えば、図示されている如き、径方向突出部132と外側ヨーク部118の上端縁部の間、及び径方向突出部132と内側ヨーク120の上端縁部の間において、それぞれ有効な磁気吸引力が作用せしめられるようになっている。
かかるアーマチャ130には、連結ロッド100に向かって開口する凹所134が形成されており、凹所134の底面が軸直角方向に広がる平坦な当接面136とされている一方、凹所134の反対側には、軸方向下方に開口する収容空所138が形成されている。そして、収容空所138と蓋部材128との対向面間に、第二の付勢手段としての第二コイルスプリング140が収容されており、かかる第二コイルスプリング140によってアーマチャ130が加振板56側に向けて付勢されている。ここにおいて、収容空所138が形成されていることによって、第二コイルスプリング140の軸直角方向の位置決めが容易に行なわれると共に、第二コイルスプリング140の自由長さやアーマチャ130の軸方向寸法を確保しつつ、収容スペースを有効に確保できて、全体サイズのコンパクト化が図られている。なお、当接面136には、複数の連通孔139、139が貫設されており、アーマチャ130の上下空間を連通せしめることによって、アーマチャ130の上下空間が密閉された空気ばねとして作用するのを回避している。また、蓋部材128のアーマチャ130の下端面との対向部位には、緩衝ゴム142が接着されており、アーマチャ130が蓋部材128と緩衝的に当接することで、打ち当たり音が軽減されると共に、耐久性が向上せしめられている。更に、第二コイルスプリング140の軸方向両端部には、カラー部材144,144が冠着されて、他部材との擦れによる磨耗を軽減している。
そして、アーマチャ130の凹所134には、連結ロッド100が遊挿状態で挿し入れられており、連結ロッド100の先端当接面102が、アーマチャ130の当接面136に当接せしめられている。ここにおいて、加振板56は第一コイルスプリング106によってアーマチャ130へ向かう方向に付勢されると共に、アーマチャ130は第二コイルスプリング140によって加振板56へ向かう方向に付勢されていることから、これら加振板56とアーマチャ100は互いに接近する方向に付勢されており、連結軸金具38の当接受部94と加振板56の球状突部60、及び連結ロッド100の先端当接面102とアーマチャ130の当接面136がそれぞれ当接した状態で保持されることとなる。なお、かかる加振板56、連結軸金具38、及びアーマチャ130の当接状態は、アーマチャ130に駆動力が及ぼされていない中立状態のみにおいて維持されているのではなく、アーマチャ130に駆動力が及ぼされる加振状態でも、当接状態が維持されるように、要するに駆動力の伝達時に変化する当接圧が零よりも大きな値に安定して維持されるように、第一及び第二コイルスプリング106,140の付勢力が設定されているのであり、より好ましくは、第一及び第二コイルスプリング106,140が互いに同じばね定数に設定される。
ここにおいて、加振板56と連結軸金具38は、非固定状態で当接せしめられているのみであって、加振板56とアーマチャ130の間に相対的な軸直角方向の位置ずれが発生した状態であっても、加振板56と連結軸金具38が屈曲可能に当接せしめられていることによって、かかる位置ずれが有利に吸収される。そして、加振板56の球状突部60と連結軸金具38の球状凹面96との案内作用によって、互いの部材の軸合わせが行なわれて、アーマチャ130の軸方向の駆動力を可及的に安定して加振板56に及ぼしめることが出来る。
さらに、本実施形態においては、連結軸金具38の連結ロッド100がアーマチャ130から別体とされて、アーマチャ130との間で相対変位可能とされていることによって、加振板56とアーマチャ130との軸直角方向の相対的な位置ずれがより有効に吸収可能とされている。なお、ここにおいて、連結ロッド100が凹所134の内周面に当接することで、連結ロッド100の軸直角方向での過大な変位が制限されており、アーマチャ130の駆動力を加振板56に対して安定して及ぼすことが出来るのである。
また、このような組付状態下において、アーマチャ130は、第一及び第二コイルスプリング106、144の釣り合いによって弾性的に位置決め保持されている。かかる状態下において、支持ゴム弾性体54に支持された加振板56と、アーマチャ130は固定的に連結されていないことから、アーマチャ130の中立状態において、支持ゴム弾性体54がアーマチャ130を支持する必要が無く、支持ゴム弾性体54の耐久性が向上せしめられる。
さらに、このようなアーマチャ130が位置決めされた中立状態は、軸方向で互いに反対向きの付勢力を及ぼす第一コイルスプリング106と第二コイルスプリング140に対して支持ゴム弾性体54の付勢力が軸方向一方に付加された釣合条件によって保たれており、支持ゴム弾性体54によってアーマチャ130に及ぼされる軸方向の弾性力に比して、第一コイルスプリング106や第二コイルスプリング140によってアーマチャ130に及ぼされる軸方向の弾性力が何れも十分に大きく設定されている。これにより、中立状態下で支持ゴム弾性体54に惹起される弾性変形量を抑えつつ、第一コイルスプリング106や第二コイルスプリング140によってアーマチャ130に及ぼされる軸方向の弾性力を十分に大きく設定して、支持ゴム弾性体54のへたりに起因する特性変化を抑えつつ、中立状態でアーマチャ130を高精度に安定して軸方向で位置決めすることが出来ると共に、アーマチャ130の軸方向駆動力を、第一コイルスプリング106や第二コイルスプリング140に設定された大きなばね剛性に基づいて、優れた伝達効率と応答性で加振板56に伝達することが可能となる。即ち、第一及び第二コイルスプリング106,140によって、アーマチャ130と連結ロッド100との当接状態が強固に維持されていることから、アーマチャ130の駆動力が加振板56に対して有効に伝達されるのである。
なお上述のように、第一及び第二コイルスプリング106,140の釣り合い力を調節設定することによって、アーマチャ130の中立状態において、支持ゴム弾性体54に対して及ぼされる初期荷重を解消せしめて、支持ゴム弾性体54の耐久性を向上することが出来るのであるが、これら第一及び第二コイルスプリング106,140の付勢力は、コイル112への通電が行なわれていないアーマチャ130の中立状態下で、支持ゴム弾性体54への弾性変形が惹起されない釣り合い力が設定されることが望ましく、より好適には、防振装置の組付け状態下である、防振装置に対して初期荷重が及ぼされた状態下において、支持ゴム弾性体54への弾性変形が惹起されない釣り合い力が設定されることが望ましい。
特に、本実施形態では、アーマチャ130の駆動力を加振板56に伝達するための当接状態を維持する第一及び第二コイルスプリング106,140が金属ばねによって形成されていることから、アーマチャ130から加振板56への駆動力の伝達が一層優れた伝達効率と応答性をもって実現され得る。一方、支持ゴム弾性体54がゴム弾性体で形成されており、そのばね定数は任意に設定可能であることから、加振板56の変位に対して支持ゴム弾性体54の弾性変形に伴う減衰力が有利に発揮されて、加振板56における不必要なばたつきや不規則な変位、傾斜方向やこじり方向の変位などが効果的に抑えられることとなり、加振板56の安定した変位によって加振室76において目的とする圧力制御がより安定して実現可能となる。また、支持ゴム弾性体54で構成された加振室76の壁部の壁ばね剛性も大きく設定することが出来ることから、加振室76において、圧力変動を一層効率的に生ぜしめることが可能となり、第一のオリフィス通路78を通じての流体流動量が有利に確保され得て、かかる流体の流動作用に基づく防振効果の向上も図られ得るのである。
上述の如き構造とされたエンジンマウント10は、図示はされていないが、コイル112への通電を制御することが可能であり、例えば、パワーユニットのエンジン点火信号を参照信号とすると共に、防振すべき部材の振動検出信号をエラー信号として、適応制御等のフィードバック制御を行なうことによって、或いは予め設定された制御データに基づくマップ制御を利用すること等によって通電制御することが出来る。これにより、アーマチャ130に磁力を作用せしめて軸方向に加振駆動せしめることで、加振板56に対して、防振すべき振動に対応した駆動力を作用せしめ、以て作用流体室70の内圧制御による能動的防振効果を得ることが出来るのである。
そこにおいて、本実施形態のエンジンマウント10では、加振板56がアーマチャ130に対して固定的に接続されておらず、アーマチャ130と連結する連結軸金具38に対して屈曲可能な当接状態に保持されていることによって、加振板56とアーマチャ130との相対的な位置ずれや、アクチュエータ作動時における一時的な位置ずれが有利に吸収されるのであるが、それに加えて、加振板56と連結軸金具38との当接部位を非圧縮性流体中に設けたことによって、非圧縮性流体が潤滑剤とされて、これら加振板56と連結軸金具38との擦れによる磨耗を軽減して、有効な駆動力を長期に亘って安定して得ることが出来る。更に、もし擦れによる粉塵が発生したとしても、粉塵が液室48の外部に漏れ出すことが無いので、粉塵が電磁加振器110の滑動部位に入り込んで、作動を阻害するようなことも無いのである。また、加振板56と連結軸金具38との当接部位を液室48内に設けたことによって、加振板56と連結軸金具38との擦れによる異音や振動も軽減されている。
そしてまた、本実施形態においては、加振板56の球状突部60と連結軸金具38の球状凹面96による案内作用と、第一及び第二コイルスプリング106、140による付勢力によって、アーマチャ130の加振板56への駆動力伝達効率をより向上せしめることが可能とされている。
すなわち、電磁加振器110の駆動時において、連結ロッド100の運動方向は上下方向で交互に変化することから、第一及び第二コイルスプリング106,140によって比較的に大きな付勢力が加振板56と連結ロッド100の間に及ぼされていても、運動方向が反転する時点では、慣性力の作用で瞬間的に付勢力が低下する。その瞬間に支持ゴム弾性体54の軸直角方向の弾性力を利用して、加振板56と連結軸金具38が軸直角方向に相対変位せしめられて、加振板56と連結軸金具38との位置合わせが自動的に行われ得るのである。更に、ここにおいて、加振板56の球状突部60と、連結軸金具38の球状凹面96との案内作用によって、加振板56と連結軸金具38との軸合わせがより有効に行なわれることとなる。
また、支持ゴム弾性体54の不規則な弾性変形等によって一時的に位置ずれが発生した場合は、加振板56の当接突部と連結軸金具38の当接受部が屈曲可能に当接されていることによって、加振板56の傾きが駆動ロッド100に及ぼされることが無く、アーマチャ130と内側ヨーク120との間でのこじり荷重の作用を軽減乃至は回避することが出来、アーマチャ130の作動の安定性と耐久性が有利に維持され得る。特に本実施形態においては、連結ロッド100がアーマチャ130からも別体とされていることによって、加振板56及びアーマチャ130の何れの傾きも他方の部材に及ぼされることが回避されており、より安定した軸方向加振駆動が可能とされている。
一方、コイル112への通電停止時における、アーマチャ130の中立位置への復帰は、第一及び第二コイルスプリング106,140、支持ゴム弾性体54の各付勢力などに基づいて自動的に行われることとなるが、前述の如く、第一及び第二コイルスプリング106,140の付勢力を大きく設定してもそれら両コイルスプリング106,140間で相殺させることが出来ることから、支持ゴム弾性体54に対して過大な外力や変形が及ぼされることを回避せしめて、その耐久性を有利に確保することが可能となるのである。
また、本実施形態においては、第一コイルスプリング106は加振室76の非圧縮性流体内に配設されている。これにより、第一コイルスプリング106と加振板56及びオリフィス部材52との当接面間に非圧縮性流体が入り込むことで、非圧縮性流体が潤滑剤として作用して、これらの部材の擦れによる磨耗が軽減されると共に、擦れによる異音や振動の発生が軽減されて、防振性能の向上が図られ得る。更に、第一コイルスプリング106と他部材との擦れによる粉塵が液室48の外部に漏れ出すことが無いので、粉塵がアーマチャ130の滑動部位に入り込むようなことも無く、耐久性の向上が図られるのである。
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、これはあくまでも例示であって、本発明は、かかる実施形態における具体的な記載によって、何等、限定的に解釈されるものでない。
例えば、加振板56や連結軸金具38の具体的形状は何等限定されるものではないのであって、連結軸金具38における当接受部94に形成した球状凹面96は必ずしも必要ではないし、駆動ロッド100は必ずしもアーマチャ130と別体とされる必要は無く、アーマチャ130に一体形成された態様についても、本発明の範囲内に含まれるものである。
また、第一及び第二の付勢手段としては、例示の如きコイルスプリングの他、板ばねなどその他の金属ばねや、ゴム弾性体等の弾性部材を採用することも可能である。
また、第一及び第二コイルスプリング106、140の支持位置や、連結ロッド100とアーマチャ130との当接位置を軸方向高さ調節可能とすることによって、コイル112に対するアーマチャ130の軸方向相対位置を調節設定可能としても良い。これによって、アーマチャ130をコイル112に対して軸方向で精度良く位置決めしたり、アーマチャ130に及ぼされる静的な力による支持ゴム弾性体54の初期変形を回避したりすることも可能となって、能動型流体封入式防振装置の防振特性を精度良く調節設定することが可能となるのである。或いは、エンジンマウント10の車両への装着状態下で、第一の取付金具12と第二の取付金具14の間に入力されるパワーユニットの分担支持荷重によって本体ゴム弾性体16が弾性変形せしめられる際に、作用流体室70に生ぜしめられる容積変化は平衡室72で吸収されるので、加振板56の位置ひいてはアーマチャ130の位置には殆ど影響はないが、ダイヤフラム36の特性等に起因してアーマチャ130の位置が多少変化する場合には、その変化を考慮して、装着状態下で、アーマチャ130のコイル112に対する軸方向相対位置を調節することによって、アーマチャ130に対して有効な駆動力が及ぼされるように位置調節することも可能となる。
また、電磁加振器110におけるアーマチャ130やヨーク118,120の具体的形状についても何等限定されるものではなく、例えば、前述の実施形態におけるヨーク118,120を上下逆の構造として、ヨーク118,120の下端部に磁極を形成すると共に、アーマチャ130の径方向突出部132を軸方向下端縁部に形成して、ヨーク118,120の下端部に磁気ギャップを形成する等しても良いし、外側ヨーク部118の下端部を更に内方に延び出させて、かかる内方突出部に磁極を形成して、アーマチャ130の下端部との間で磁気ギャップを形成する等しても良い。
加えて、本発明は、例示の如き形状の自動車用エンジンマウントに限らず、所謂筒形マウント等にも適用可能であるし、自動車用のボデーマウントやメンバマウント等、或いは自動車以外の各種装置におけるマウントや制振器などの防振装置等に対して同様に適用可能である。
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて種々なる変更,修正,改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもない。
本発明の第一の実施形態としてのエンジンマウントを示す縦断面図である。
符号の説明
10 エンジンマウント
12 第一の取付金具
14 第二の取付金具
16 本体ゴム弾性体
36 ダイヤフラム
38 連結軸金具
40 凹状面
48 液室
50 仕切部材
52 オリフィス部材
54 支持ゴム弾性体
56 加振板
60 球状突部
72 平衡室
74 受圧室
76 加振室
78 第一のオリフィス通路
82 第二のオリフィス通路
94 当接受部
96 球状凹面
100 連結ロッド
106 第一コイルスプリング
110 電磁加振器
118 外側ヨーク部
120 内側ヨーク
130 アーマチャ
136 当接面
140 第二コイルスプリング

Claims (7)

  1. 防振連結される一方の部材に取り付けられる第一の取付部材を他方の部材に取り付けられる筒状の第二の取付部材の一方の開口部側に離隔配置せしめて、該第一の取付部材と該第二の取付部材を本体ゴム弾性体で連結することにより、該第二の取付部材の一方の開口部を該本体ゴム弾性体で覆蓋せしめて、該第二の取付部材の他方の開口部を変形容易な可撓性膜で覆蓋することによって、それら本体ゴム弾性体と可撓性膜の対向面間に非圧縮性流体の封入領域を形成すると共に、該第二の取付部材に対して支持ゴム弾性体で弾性的に支持された加振部材を該封入領域を仕切るようにして配設することによって、壁部の一部が該本体ゴム弾性体で構成された振動作用室と、壁部の一部が該可撓性膜で構成された平衡室を形成する一方、該封入領域の外方に電磁式アクチュエータを配設して、該電磁式アクチュエータの出力部材を該加振部材に連結せしめて該加振部材に加振力を及ぼすことにより該振動作用室の圧力を能動的に制御するようにした能動型流体封入式防振装置において、
    前記出力部材から前記加振部材に向かって突出する駆動ロッドの突出先端面を前記平衡室内に位置せしめて該突出先端面に当接受部を設けると共に、該加振部材から該駆動ロッド側に向かって突出する当接突部を設けて、該当接突部を該当接受部に対して該平衡室内で屈曲可能に当接せしめたことを特徴とする能動型流体封入式防振装置。
  2. 前記当接突部を、前記当接受部に対して軸直角方向の相対的な位置ずれが許容される状態で当接せしめた請求項1に記載の能動型流体封入式防振装置。
  3. 前記当接突部を略球面形状の先端面を有する球状突部とすると共に、前記当接受部において該球状突部より大きい曲率半径で略球面形状で窪んだ球状凹面を形成して、該球状凹面に対して該球状突部を当接せしめた請求項1又は2に記載の能動型流体封入式防振装置。
  4. 前記駆動ロッドを前記出力部材から別体形成して前記可撓性膜の中央部分を実質的に貫通するように該可撓性膜に固着すると共に、該駆動ロッドの該出力部材側の先端面を該出力部材に設けた当接面に対して軸直角方向の相対的な位置ずれが許容される状態で当接せしめた請求項1乃至3の何れかに記載の能動型流体封入式防振装置。
  5. 前記出力部材において、前記駆動ロッドに向かって開口する凹所を形成し、該凹所の底面により該駆動ロッドの先端面が当接せしめられる前記当接面を構成した請求項4に記載の能動型流体封入式防振装置。
  6. 前記振動作用室内において前記加振部材を前記出力部材に向けて付勢する第一の付勢手段を設けると共に、該出力部材を該加振部材に向けて付勢する第二の付勢手段を設けて、それら第一の付勢手段と第二の付勢手段により該加振部材の前記当接突部を前記駆動ロッドの前記当接受部に対して当接状態に保持せしめた請求項1乃至5の何れかに記載の能動型流体封入式防振装置。
  7. 前記第二の取付部材によって支持された仕切部材を前記振動作用室内に配設して該振動作用室を該仕切部材で仕切ることにより、壁部の一部が前記本体ゴム弾性体で構成された受圧室と、壁部の一部が前記加振部材で構成された加振室を形成すると共に、それら受圧室と加振室を相互に連通する第一のオリフィス通路を形成する一方、該加振室に対して前記第一の付勢手段を収容配置せしめて、該第一の付勢手段により該仕切部材と該加振部材との間に離隔方向の付勢力が及ぼされるようにした請求項6に記載の能動型流体封入式防振装置。
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