JP4022909B2 - 銅含有水の処理方法 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は、銅含有水の処理方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、多量の硫酸イオンが共存する銅含有水を処理して、汚泥の発生量が少なく、かつ銅を容易に再利用し得る酸化銅として回収することができる銅含有水の処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
銅は有価金属であるため、銅を含む廃水から得られる汚泥は、銅原料として回収利用される。回収する銅を酸化銅の形にすれば、汚泥の脱水性が改善されるとともに、酸化銅は顔料、ガラス・陶器の着色剤、フェライト原料などとして直接用途があり、回収価値が向上する。
しかし、硫酸イオンを多量に含む銅含有廃水を水酸化カルシウムで中和すると、銅は [Cu(OH)2]x [CaSO4]yの形の複塩として沈殿するため加熱しても酸化銅を得ることができず、また、アルカリ汚泥循環法を用いても酸化銅を得ることができない。
また、硫酸イオンを多量に含む銅含有廃水を水酸化ナトリウムにより中和し、かつアルカリ汚泥循環法を採用すれば、水中の銅を酸化銅として回収することができるが、水酸化ナトリウムは水酸化カルシウムより高価であるので、この方法は経済的に有利に実施することができない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、硫酸イオンを多量に含む銅含有廃水を処理して、汚泥の発生量が少なく、汚泥の脱水性が良好であり、かつ銅を再利用が容易な酸化銅として回収することができる銅含有水の処理方法を提供することを目的としてなされたものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、銅及び多量の硫酸イオンを含有する廃水を、水酸化カルシウム及び他のアルカリ剤を併用して中和すれば、水中の銅を酸化銅として回収し得ることを見いだし、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1)中和槽において、銅に対して硫酸イオンが5重量倍以上存在する銅含有水に、所定の添加量の水酸化カルシウムを添加した被処理水に、水酸化カルシウム以外の他のアルカリ剤を添加した返送汚泥を混合することによって、被処理水をpH8以上として酸化銅を含む汚泥を析出させ、次いで、該酸化銅を含む汚泥を上澄み水と分離して取り出し、取り出された汚泥の一部を前記中和槽に返送する銅含有水の処理方法であって、前記水酸化カルシウムの所定の添加量を、式[1]で表される[Ca(OH)2]の添加量以下とすることを特徴とする銅含有水の処理方法、及び、
[Ca(OH)2]=−0.8[T−SO4]+7[Cu] …[1]
(ただし、式中、[T−SO4]は、水中の全硫酸根の濃度(mg/リットル)であり、[Cu]は水中の銅の濃度(mg/リットル)であり、[Ca(OH)2]は水酸化カルシウムの添加量(mg/リットル)である。)
(2)水酸化カルシウム以外の他のアルカリ剤が水酸化ナトリウムである第(1)項記載の銅含有水の処理方法、
を提供するものである。
さらに、本発明の好ましい態様として、
(3)汚泥を50〜100℃に加熱する第(1)〜(2)項のいずれかに記載の銅含有水の処理方法、
を挙げることができる。
【0005】
本発明方法は、銅及び多量の硫酸イオンを含有する廃水に適用することができる。銅を含有する廃水は、電気めっき工場、銅鉱山、金属加工工場、合成繊維工場、化学工場などにおいて発生する。銅が排水中に存在すると、終末処理場において微生物に毒性を示して浄化機能を阻害し、また活性汚泥中に容易に蓄積するので、発生源において完全に除去する必要がある。また、銅は高価な金属であるので、廃水中に高濃度に存在する場合は、回収することにより大きな経済的価値をもたらす。銅を含有する廃水は、同時に硫酸イオンが共存する場合が多いが、本発明方法は銅に対して硫酸イオンが5重量倍以上存在する銅含有水に特に好適に適用することができる。
本発明方法においては、銅含有水に水酸化カルシウム及び他のアルカリ剤を添加する。使用する水酸化カルシウムには特に制限はなく、例えば、工業用石灰のほかにカーバイド滓などを使用することができる。使用する他のアルカリ剤には特に制限はなく、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化バリウム、酸化マグネシウム、酸化バリウムなどを挙げることができる。これらのアルカリ剤の中で、水酸化ナトリウム、水酸化マグネシウム及び酸化マグネシウムを特に好適に使用することができる。
本発明方法においては、添加する水酸化カルシウムの量を式[1]で示される量以下とする。
[Ca(OH)2]=−0.8[T−SO4]+7[Cu] …[1]
ただし、式中、[T−SO4]は水中の全硫酸根の濃度(mg/リットル)であり、[Cu]は水中の銅の濃度(mg/リットル)であり、[Ca(OH)2]は水酸化カルシウムの添加量(mg/リットル)である。添加する水酸化カルシウムの量が式[1]で示される量を超えると、得られる汚泥の濃度が低く、ろ過性が不良で含水率の高い脱水ケーキを与える汚泥となり、しかも加熱によって有用な酸化銅に変化しない汚泥となるおそれがある。水酸化カルシウムの添加量が多いと汚泥の性状が不良となる機構は明らかでないが、銅が水酸化銅Cu(OH)2としてではなく、硫酸カルシウムとの複塩 [Cu(OH)2]x [CaSO4]yとして沈殿するためであると考えられる。被処理水中で生成する硫酸カルシウムの量が、硫酸カルシウムの溶解度以下の量である場合にも、複塩 [Cu(OH)2]x [CaSO4]yの沈殿は生成する。
【0006】
本発明方法においては、原水へのアルカリ剤の添加順序には特に制限はなく、水酸化カルシウムと他のアルカリ剤のいずれを先に添加してもよいが、水酸化カルシウムをあらかじめ所定量添加したのち他のアルカリ剤を添加して所定のpHまで中和することにより、原水の水質のpH変動があっても銅含有水の処理を安定して行うことができる。
本発明方法においては、水酸化カルシウム及び他のアルカリ剤の添加により被処理水のpHを8〜9とすることが好ましい。被処理水のpHが8未満であると、水中の銅の水酸化銅としての沈殿が不十分となるおそれがある。被処理水のpHが9を超えても水酸化銅として沈殿する銅の量は増えず、処理水を排出する前の中和のための酸の使用量がいたずらに増加するおそれがある。
本発明方法の実施の態様には特に制限はなく、バッチ処理、連続処理など任意の廃水処理方法を採用することができるが、アルカリ汚泥循環法を特に好適に使用することができる。アルカリ汚泥循環法は、沈殿槽で得られる汚泥の一部を返送し、返送汚泥にアルカリ剤を添加して混合したのち被処理水と混合する方法である。本発明方法においては、原水に所定量の水酸化カルシウムを添加したのち、他のアルカリ剤を用いてアルカリ汚泥循環法による処理を行うことが特に好ましい。このようなアルカリ汚泥循環法によれば、水酸化カルシウム及び他のアルカリ剤の使用量を低減し、汚泥の発生量を減少し、汚泥のろ過性を改善し、しかも汚泥を有用な酸化銅の形で得ることができる。
【0007】
本発明方法においては、凝集槽において、高分子凝集剤を添加することが好ましい。使用する高分子凝集剤には特に制限はなく、例えば、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキシド、尿素−ホルマリン樹脂などのノニオン性高分子凝集剤、ポリアミノアルキルメタクリレート、ポリエチレンイミン、ハロゲン化ポリジアリルアンモニウム、キトサンなどのカチオン性高分子凝集剤、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリルアミド部分加水分解物、部分スルホメチル化ポリアクリルアミド、ポリ(2−アクリルアミド)−2−メチルプロパン硫酸塩などのアニオン性高分子凝集剤を使用することができる。これらの高分子凝集剤の中で、ノニオン性高分子凝集剤及びアニオン性高分子凝集剤は凝集効果に優れているので、特に好適に使用することができる。
本発明方法においては、凝集槽で析出物を凝集せしめた被処理水は沈殿槽に導き、凝集した汚泥を沈殿させることが好ましい。沈殿槽の形状には特に制限はなく、例えば、中央駆動型シックナー、周辺駆動型クラリファイヤー、水平流型沈殿装置などを使用することができる。アルカリ汚泥循環法を用いるときは、沈殿槽において沈降した汚泥の一部を返送汚泥として混合槽に返送し、残余の汚泥はさらにろ過などの処理を行う。混合槽へ送る返送汚泥の量は、原水量に対し0.01〜0.4容量倍であることが好ましく、0.02〜0.3容量倍であることがより好ましく、0.03〜0.2容量倍であることがさらに好ましい。本発明方法においては、析出物の分離には、沈殿槽のほかに、膜分離、遠心分離など他の固液分離手段を使用することができる。
【0008】
本発明方法において、アルカリ汚泥循環法を用いる場合は、沈殿槽において分離した汚泥は有用な黒色の酸化銅よりなる。アルカリ汚泥循環法を用いない場合は、得られる汚泥は青色の水酸化銅であることが多い。その場合は、得られた汚泥を50〜100℃に加熱することにより、有用な酸化銅に変化せしめることができる。加熱温度が50℃未満であると、水酸化銅の脱水による酸化銅への変化に長時間を要するおそれがある。加熱温度が100℃を超えると、加圧容器が必要となる。通常は60℃、2時間程度の処理により青色の水酸化銅は、黒色の酸化銅に変化する。汚泥の加熱は、凝集槽で加熱することができ、あるいは、沈殿槽より抜き取った汚泥の状態で加熱することができる。凝集槽には多量の水が存在し、水の加熱のためにエネルギーを必要とするので、分離した汚泥として加熱することが好ましい。
本発明方法により生成した有用な黒色の酸化銅は、さらに容量を減少するために脱水処理を行うことができる。脱水に用いる脱水機には特に制限はなく、通常の汚泥処理に使用される機器を使用することができる。このような脱水機としては、例えば、ベルトプレス脱水機、遠心脱水機、フィルタープレス脱水機、スクリュープレス脱水機、真空脱水機などを挙げることができる。
【0009】
図1は、本発明方法の工程系統図の一態様である。予備中和槽1において、原水に所定量の水酸化カルシウムを添加する。所定量の水酸化カルシウムを添加した被処理水は、予備中和槽より中和槽2へ送られる。中和槽にはpH計3が備えられ、pH計より送られる信号により開閉するバルブ4より他のアルカリ剤を汚泥混合槽5において返送汚泥に添加する。返送汚泥は、所定の速度で中和槽に送られるので、中和槽内の被処理水のpHを所定の値に保つことができる。黒色の酸化銅が析出した被処理水は、凝集槽6に送られ、必要に応じて凝集剤を添加する。被処理水は、凝集槽において析出物を凝集せしめたのち沈殿槽7へ送られ、汚泥と上澄み水に分離する。汚泥は一部を返送汚泥として汚泥混合槽に返送し、残りの汚泥はろ過などにより脱水ケーキとする。上澄み水は、必要があれば適当な最終処理をしたのち排出される。
図2は、本発明方法の工程系統図の他の一態様である。予備中和槽8において、原水に所定量の水酸化カルシウムを添加する。所定量の水酸化カルシウムを添加した被処理水は、予備中和槽より中和槽9へ送られる。中和槽にはpH計10が備えられ、pH計より送られる信号により開閉するバルブ11より他のアルカリ剤を添加し中和槽内の被処理水のpHを所定の値に保つ。青色の水酸化銅が析出した被処理水は、凝集槽12に送られ、必要に応じて凝集剤を添加する。被処理水は、凝集槽において析出物を凝集せしめたのち沈殿槽13へ送られ、汚泥と上澄み水に分離する。汚泥は汚泥加熱槽14へ送り、加熱により黒色の酸化銅としたのちろ過などにより脱水ケーキとする。上澄み水は、必要があれば適当な最終処理をしたのち排出される。
【0010】
【実施例】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。
参考例
酸化銅の生成条件を、ビーカー試験により検討した。
[試験a] 300mlビーカーに、脱イオン水200gを入れ、水中の銅濃度が1,000mg/リットルになるよう硫酸銅を加え、さらに水中の全硫酸イオン濃度が2,500mg/リットルになるよう硫酸を添加した。この水溶液に、水酸化カルシウムを濃度が1,900mg/リットルになるよう加えて中和した。液中の全硫酸根と銅の重量比([T−SO4]/[Cu])は2.5であり、式[1]で表される[Ca(OH)2]は5,000mg/リットルである。生成した青色の汚泥を含む水を60℃で2時間加熱したところ、汚泥は黒色に変色し、酸化銅に変化したことが確かめられた。
[試験b] 水中の全硫酸イオン濃度が4,500mg/リットルになるよう硫酸を添加し、水酸化カルシウムを濃度が3,500mg/リットルになるよう加えた以外は、試験aと全く同じ操作を繰り返した。汚泥は黒色に変色し、酸化銅に変化したことが確かめられた。
[試験c] 水中の全硫酸イオン濃度が6,500mg/リットルになるよう硫酸を添加し、水酸化カルシウムを濃度が5,000mg/リットルになるよう加えた以外は、試験aと全く同じ操作を繰り返した。60℃で2時間加熱したのちも、汚泥は青色のままであり、酸化銅に変化しなかった。
[試験d〜g] 300mlビーカーに、脱イオン水200gを入れ、水中の銅濃度が500mg/リットルになるよう硫酸銅を加え、水中の全硫酸イオン濃度が第1表に示す値になるよう硫酸を添加し、さらに、水酸化カルシウムを濃度が第1表に示す値になるよう加えて中和した。生成した青色の汚泥を含む水を60℃で2時間加熱し、汚泥が黒色に変色した場合は酸化銅に変化したと判定し、汚泥が青色のままの場合は酸化銅に変化しないと判定した。結果を第1表にあわせて示す。
[試験h] 300mlビーカーに、脱イオン水200gを入れ、水中の銅濃度が500mg/リットルになるよう硫酸銅を加え、さらに水中の全硫酸イオン濃度が3,250mg/リットルになるよう硫酸を添加した。この水溶液に、水酸化カルシウムを濃度が400mg/リットルになるよう加え、さらにpHが8になるまで水酸化ナトリウムを加えて中和した。液中の全硫酸根と銅の重量比([T−SO4]/[Cu])は6.5であり、式[1]で表される[Ca(OH)2]は900mg/リットルである。生成した青色の汚泥を含む水を60℃で2時間加熱したところ、汚泥は黒色に変色し、酸化銅に変化したことが確かめられた。
[試験i〜j] 300mlビーカーに、脱イオン水200gを入れ、水中の銅濃度が500mg/リットルになるよう硫酸銅を加え、水中の全硫酸イオン濃度が第1表に示す値になるよう硫酸を添加し、水酸化カルシウムを濃度が第1表に示す値になるよう加え、さらにpHが8になるまで水酸化ナトリウムを加えて中和した。生成した青色の汚泥を含む水を60℃で2時間加熱し、汚泥が黒色に変色した場合は酸化銅に変化したと判定し、汚泥が青色のままの場合は酸化銅に変化しないと判定した。結果を第1表にあわせて示す。
[試験k〜m] 300mlビーカーに、pH1.9で、銅406mg/リットル、亜鉛20mg/リットル、硫酸イオン2,320mg/リットルを含有する廃水200gを入れた。この廃水に、水酸化カルシウムを濃度が第1表に示す値になるよう加え、さらにpHが8になるまで水酸化ナトリウムを加えて中和した。生成した青色の汚泥を含む水を60℃で2時間加熱し、汚泥が黒色に変色した場合は酸化銅に変化したと判定し、汚泥が青色のままの場合は酸化銅に変化しないと判定した。結果を第1表にあわせて示す。
【0011】
【表1】
【0012】
試験a、b、d及びeのように、硫酸イオンの量が銅に対して5重量倍未満であるときには、水酸化カルシウムのみを用いて中和しても、生成した汚泥を加熱すると黒色となり、酸化銅に変化する。これに対して、試験c、f及びgのように、硫酸イオンが銅に対して5重量倍以上存在する場合は、水酸化カルシウムのみを用いて中和したときに生成する汚泥は、加熱しても青色のままであり、酸化銅に変化しない。
試験h及びiは、銅に対して硫酸イオンが6.5重量倍存在する銅含有水を用いているが、中和に水酸化カルシウムと水酸化ナトリウムを併用し、かつ水酸化カルシウムの添加量が式[1]で表される[Ca(OH)2]の量900mg/リットル以下であるので、生成した汚泥は加熱により黒色となり、酸化銅に変化する。これに対して、試験jは、試験h及びiと同じく銅に対して硫酸イオンが6.5重量倍存在する銅含有水を用い、中和に水酸化カルシウムと水酸化ナトリウムを併用しているが、水酸化カルシウムの添加量が式[1]で表される[Ca(OH)2]の量900mg/リットルを超えているため、生成した汚泥は加熱しても青色のままであり、酸化銅に変化しない。
試験k及びlは、銅に対して硫酸イオンが5.7重量倍存在する銅含有水を用いているが、中和に水酸化カルシウムと水酸化ナトリウムを併用し、かつ水酸化カルシウムの添加量が式[1]で表される[Ca(OH)2]の量986mg/リットル以下であるので、生成した汚泥は加熱により黒色となり、酸化銅に変化する。これに対して、試験mは、試験k及びlと同じく銅に対して硫酸イオンが5.7重量倍存在する銅含有水を用い、中和に水酸化カルシウムと水酸化ナトリウムを併用しているが、水酸化カルシウムの添加量が式[1]で表される[Ca(OH)2]の量986mg/リットルを超えているため、生成した汚泥は加熱しても青色のままであり、酸化銅に変化しない。
[試験n] 硫酸銅2,010mg/リットルを含有する水溶液を調製し、この水溶液に水酸化カルシウムを加えてpH9とした。析出した沈殿を分析したところ、銅46.2重量%、カルシウム5.3重量%、硫酸根11.0重量%であった。
調製した硫酸銅水溶液中の銅の濃度は800mg/リットルであり、硫酸イオンの濃度は1,210mg/リットルである。硫酸イオンが水酸化カルシウムとの反応によりすべて硫酸カルシウムとなったとしても、硫酸カルシウムの濃度は1,710mg/リットルで、硫酸カルシウムの室温における溶解度2,080mg/リットルよりは低く、溶解度のみから考えると硫酸カルシウムの析出はあり得ない。しかし、上記の沈殿のカルシウムと硫酸根の量をモル比として比較するとほぼ1:1となることから、銅と硫酸イオンが共存する場合には、硫酸カルシウムの溶解度以下の濃度であっても [Cu(OH)2]x [CaSO4]yの形の複塩として析出することが分かった。
実施例1
図1の装置を用いて、銅含有廃水の処理を行った。
処理に供した廃水の水質は、pH1.9で、銅406mg/リットル、亜鉛20mg/リットル、硫酸イオン2,320mg/リットルを含有している。装置の各槽の容量は、予備中和槽500ml、中和槽500ml、凝集槽500ml、汚泥混合槽200ml、沈殿槽5,000mlである。通水量は3,000ml/hr、汚泥返送量は300ml/hrとし、凝集槽にポリアクリルアミド系ポリマー[栗田工業(株)、PA−331]を2mg/リットル添加した。
予備中和槽において水酸化カルシウムを濃度が600mg/リットルになるよう添加した。また、中和槽はpH8.5に制御しつつ、水酸化マグネシウムを汚泥混合槽に添加し、水酸化マグネシウムを返送汚泥と混合した状態で中和槽に添加した。添加した水酸化マグネシウムの量は原水に対して、900〜1,000mg/リットルであった。
沈殿槽において得られた汚泥は、黒色の酸化銅の汚泥であった。採取した汚泥を24時間静置すると、汚泥濃度は25〜30重量/容量%となった。また、採取した汚泥をフィルタープレスを用い、圧力15kg/cm2、ろ過時間2分、圧搾時間15分の条件でろ過すると、脱水速度は25〜30kg/m2・hrであり、含水率35〜40重量%の脱水ケーキが得られた。
比較例1
予備中和槽へアルカリ剤を添加することなく、返送汚泥へ添加するアルカリ剤として水酸化カルシウムを用いた以外は、実施例1と同じ操作を繰り返した。中和槽のpHを8.5に制御するために添加した水酸化カルシウムの量は原水に対して、1,700〜1,800mg/リットルであった。
沈殿槽において得られた汚泥は、青色であった。採取した汚泥を24時間静置すると、汚泥濃度は7〜9重量/容量%となった。また、採取した汚泥をフィルタープレスを用い、圧力15kg/cm2、ろ過時間2分、圧搾時間15分の条件でろ過すると、脱水速度は5〜8kg/m2・hrであり、含水率62〜66重量%の脱水ケーキが得られた。この汚泥を60℃で2時間加熱したが青色のままであり、酸化銅に変化しなかった。
実施例1及び比較例1の結果を第2表に示す。
【0013】
【表2】
【0014】
予備中和槽に式[1]で表される[Ca(OH)2]の量以下の水酸化カルシウムを添加したのち、中和槽で水酸化マグネシウムを添加する実施例1の本発明の方法によれば、黒色の有用な酸化銅の汚泥が得られ、しかもこの汚泥は濃度が高く、ろ過性が良好で含水率の低い脱水ケーキとなる。
一方、中和に水酸化カルシウムのみを用いた比較例1の方法では、汚泥濃度が低く、ろ過性が不良で含水率の高い脱水ケーキしか得られず、しかもこの汚泥を加熱しても酸化銅に変化しない。
【0015】
【発明の効果】
本発明方法によれば、多量の硫酸イオンが共存する銅含有水を処理して、汚泥の発生量が少なく、汚泥の脱水性が良好であり、かつ銅を再利用が容易な酸化銅として回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明方法の工程系統図の一態様である。
【図2】図2は、本発明方法の工程系統図の他の一態様である。
【符号の説明】
1 予備中和槽
2 中和槽
3 pH計
4 バルブ
5 汚泥混合槽
6 凝集槽
7 沈殿槽
8 予備中和槽
9 中和槽
10 pH計
11 バルブ
12 凝集槽
13 沈殿槽
14 汚泥加熱槽
Claims (2)
- 中和槽において、銅に対して硫酸イオンが5重量倍以上存在する銅含有水に、所定の添加量の水酸化カルシウムを添加した被処理水に、水酸化カルシウム以外の他のアルカリ剤を添加した返送汚泥を混合することによって、被処理水をpH8以上として酸化銅を含む汚泥を析出させ、次いで、該酸化銅を含む汚泥を上澄み水と分離して取り出し、取り出された汚泥の一部を前記中和槽に返送する銅含有水の処理方法であって、前記水酸化カルシウムの所定の添加量を、式[1]で表される[Ca(OH)2]の添加量以下とすることを特徴とする銅含有水の処理方法。
[Ca(OH)2]=−0.8[T−SO4]+7[Cu] …[1]
(ただし、式中、[T−SO4]は、水中の全硫酸根の濃度(mg/リットル)であり、[Cu]は水中の銅の濃度(mg/リットル)であり、[Ca(OH)2]は水酸化カルシウムの添加量(mg/リットル)である。) - 水酸化カルシウム以外の他のアルカリ剤が水酸化ナトリウムである請求項1記載の銅含有水の処理方法。
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