JP4022418B2 - ハロゲン化銀カラー写真感光材料 - Google Patents

ハロゲン化銀カラー写真感光材料 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ハロゲン化銀写真カラー感光材料に関し、詳しくは低コストで高感度かつ超迅速処理に適したハロゲン化銀写真カラー感光材料に関し、特にカラープリントに適したハロゲン化銀写真カラー感光材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、カラー印画紙を用いたカラープリント分野においてもデジタル化の浸透は目覚しく、例えばレーザー走査露光によるデジタル露光方式は、従来から行われている処理済のカラーネガフィルムからカラープリンターで直接焼付けを行うアナログ露光方式に比べ、飛躍的な普及率の伸びを示している。このようなデジタル露光方式は、画像処理を行うことで高画質が得られる特徴があり、カラー印画紙を用いたカラープリントの品質向上に果たす役割は極めて大きい。また、デジタルカメラの急速な普及に伴って、これらの電子記録媒体から簡易に高画質なカラープリントが得られることも重要な要素であり、これらが更に飛躍的な普及をもたらすと考えられる。
【0003】
一方、カラープリント方式としては、インクジェット方式、昇華型方式、カラーゼログラフィー等の技術がそれぞれ進歩し、写真画質を謳うなど、カラープリント方式として認知されつつある。これらの中でカラー印画紙を用いたデジタル露光方式の特徴は、高画質、高生産性、そして画像の高堅牢性にあり、これらの特徴を更に伸ばし、より高品質の写真をより簡単にしかもより安価に提供することが望まれている。特に、店頭でデジタルカメラの記録媒体を受け取り、数分程度の短時間内に高画質プリントを仕上げ、その場で返却できるようになれば、カラー印画紙を用いたカラープリントの優位性は益々高まる。これらの点から、カラー印画紙は、低コストで従来以上に高生産性や迅速処理適性を有していることが極めて重要である。
【0004】
カラー印画紙に低コストで高生産性や超迅速処理適性を付与する検討は、使用するカプラーやハロゲン化銀乳剤に工夫を入れた様々な観点からの検討がなされている。イエローカプラーとしては、従来からアシル酢酸アニリド系化合物が使用されている。しかし、これらのカプラーは、低活性で発色色素の分子吸光係数が小さく、所望の発色濃度を得るために多量のカプラーやハロゲン化銀乳剤を必要としていた。
【0005】
ところで、カラー印画紙に用いられるハロゲン化銀乳剤は、迅速処理性の要請から、塩化銀含有率の高いハロゲン化銀乳剤が用いられている。高塩化銀乳剤は、現像進行が早く、現像処理時にBrイオンやIイオンのような現像抑制物質を出さず、現像液中に蓄積しないために処理要因変動に対しても安定であった。ハロゲン化銀乳剤中に特定の態様でBrやIを含有させることで安定性が向上することは予想できなかった。
【0006】
特開昭58−95736号、同58−108533号、同60−222844号、同60−222845号、同62−253143号、同62−253144号、同62−253166号、同62−254139号、同63−46440号、同63−46441号、同63−89840号、米国特許第4,820,624号、同第4,865,962号、同第5,399,475号、同第5,284,743号等には、塩化銀含有率の高いハロゲン化銀粒子からなる乳剤に様々な形態で臭化銀含有率の高いハロゲン化銀粒子からなる相を局在含有させることで高感度が得られることが開示されている。
【0007】
米国特許第5,726,005号および同第5,736,310号には、高塩化銀乳剤の亜表面に濃度極大を有するIを含有したハロゲン化銀粒子からなる乳剤によって、高感度で高照度不軌の少ない乳剤が得られることが開示されている。欧州特許EP0,928,988A号の実施例には、粒子形成の93%時点でIバンドを形成した辺長0.218μm、つまり球相当径約0.27μmの粒子に特定の化合物を含有させることで、相反則不軌、露光時の温度依存性や圧力性に優れた乳剤が得られることが開示されている。
【0008】
塩化銀乳剤の高照度不軌を改良し、高照度でも硬調な階調を得るためにイリジウムをドープすることが知られている。例えば特公平7−34103号には臭化銀含有率の高い局在相を設けて、そこにイリジウムをドープすることで、潜像増感の問題は解決することが開示されている。米国特許第5,691,119号には、臭化銀含有率の高い局在相を有する乳剤の調製法で、高照度階調を硬調化する方法が開示されている。
【0009】
しかしながら、これらのいずれからも、特定のイエロー色素形成カプラーを用いたカラー写真感光材料を、超迅速処理した場合に起こる処理要因変動に伴うイエロー濃度変化を改良できることは教示されない。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、低コストで高感度かつ超迅速処理に適し、超迅速処理を行なった場合にも常に安定した写真性能が得られる、特にカラープリントに適したハロゲン化銀カラー写真感光材料を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、高活性かつ高発色のカプラーの検討を行い、少ないカプラーやハロゲン化銀乳剤の塗布量で必要な発色濃度を得られないか検討した。その結果、一般式(I)で表されるイエロー色素形成カプラーが極めて高活性で、高い発色濃度を有していることを見出した。
【0012】
【化4】
Figure 0004022418
【0013】
式中、Qは−N=C−N(R1)−とともに5〜7員環を形成する非金属原子群を表す。R1は置換基を表す。R2は置換基を表す。mは0以上5以下の整数を表す。mが2以上のとき複数のR2はそれぞれ同じでも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。Xは水素原子または現像主薬酸化体とのカップリング反応により離脱可能な基を表す。
【0014】
このイエロー色素形成カプラーを用いれば、従来の約半分のカプラーやハロゲン化銀乳剤の塗布量で必要な発色濃度が得られ、高感度ゆえに高生産性が得られ、高活性ゆえに超迅速処理が可能であることが分かった。しかしながら、このイエロー色素形成カプラーを用いたカラー印画紙を超迅速処理した場合、現像時間の僅かな変動等の処理要因変動に伴う、特に中濃度部でのイエロー濃度変化が起こりやすく、プリント仕上がりの安定性の上で満足すべきものではなかった。
【0015】
本発明者らは更に鋭意検討を重ねた結果、以下の手段により超迅速処理を行なった場合にも常に安定した写真性能が得られるという前記課題を解決できることを見出した。本発明はこの知見に基づきなされたものである。すなわち、
<1> 支持体上にイエロー発色青感光性ハロゲン化銀乳剤層、マゼンタ発色緑感光性ハロゲン化銀乳剤層、シアン発色赤感光性ハロゲン化銀乳剤層の少なくとも一層ずつを有するハロゲン化銀カラー写真感光材料において、該イエロー発色青感光性ハロゲン化銀乳剤層中に下記一般式(I)で表されるイエロー色素形成カプラーおよび塩化銀含有率が90モル%以上で臭化銀含有率が0.1モル%以上7モル%以下のハロゲン化銀粒子からなる青感光性ハロゲン化銀乳剤を含み、該青感光性ハロゲン化銀乳剤のハロゲン化銀粒子が層状に形成された臭化銀含有相を有するハロゲン化銀乳剤であることを特徴とするハロゲン化銀カラー写真感光材料である。
【0016】
【化5】
Figure 0004022418
【0017】
式中、Qは−C(−R11)=C(−R12)−SO −で表される基(R11、R12は互いに結合して−C=C−とともに5〜7員環を形成する基、もしくはそれぞれ独立に水素原子または置換基)を表す。R1は置換基を表す。R2は置換基を表す。mは0以上5以下の整数を表す。mが2以上のとき複数のR2はそれぞれ同じでも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。Xは水素原子または現像主薬酸化体とのカップリング反応により離脱可能な基を表す。
<2> 支持体上にイエロー発色青感光性ハロゲン化銀乳剤層、マゼンタ発色緑感光性ハロゲン化銀乳剤層、シアン発色赤感光性ハロゲン化銀乳剤層の少なくとも一層ずつを有するハロゲン化銀カラー写真感光材料において、該イエロー発色青感光性ハロゲン化銀乳剤層中に下記一般式(I)で表されるイエロー色素形成カプラーおよび塩化銀含有率が90モル%以上で沃化銀含有率が0.02モル%以上1モル%以下のハロゲン化銀粒子からなる青感光性ハロゲン化銀乳剤を含み、該青感光性ハロゲン化銀乳剤のハロゲン化銀粒子が層状に形成された沃化銀含有相を有するハロゲン化銀乳剤であることを特徴とするハロゲン化銀カラー写真感光材料である。
【0018】
【化6】
Figure 0004022418
【0019】
式中、Qは−C(−R11)=C(−R12)−SO −で表される基(R11、R12は互いに結合して−C=C−とともに5〜7員環を形成する基、もしくはそれぞれ独立に水素原子または置換基)を表す。R1は置換基を表す。R2は置換基を表す。mは0以上5以下の整数を表す。mが2以上のとき複数のR2はそれぞれ同じでも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。Xは水素原子または現像主薬酸化体とのカップリング反応により離脱可能な基を表す。
<3> 支持体上にイエロー発色青感光性ハロゲン化銀乳剤層、マゼンタ発色緑感光性ハロゲン化銀乳剤層、シアン発色赤感光性ハロゲン化銀乳剤層の少なくとも一層ずつを有するハロゲン化銀カラー写真感光材料において、該イエロー発色青感光性ハロゲン化銀乳剤層中に下記一般式(I)で表されるイエロー色素形成カプラーおよび塩化銀含有率が90モル%以上のハロゲン化銀粒子からなる青感光性ハロゲン化銀乳剤を含み、該青感光性ハロゲン化銀乳剤のハロゲン化銀粒子がIrを中心金属とする6配位錯体を含有するハロゲン化銀乳剤であることを特徴とするハロゲン化銀カラー写真感光材料である。
【0020】
【化7】
Figure 0004022418
【0021】
式中、Qは−C(−R11)=C(−R12)−SO −で表される基(R11、R12は互いに結合して−C=C−とともに5〜7員環を形成する基、もしくはそれぞれ独立に水素原子または置換基)を表す。mは0以上5以下の整数を表す。mが2以上のとき複数のR2はそれぞれ同じでも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。Xは水素原子または現像主薬酸化体とのカップリング反応により離脱可能な基を表す。
<4> 該青感光性ハロゲン化銀乳剤が、塩化銀含有率が90モル%以上で臭化銀含有率が0.1モル%以上7モル%以下かつ沃化銀含有率が0.02モル%以上1モル%以下のハロゲン化銀粒子からなる青感光性ハロゲン化銀乳剤であり、該青感光性ハロゲン化銀乳剤のハロゲン化銀粒子がそれぞれ層状に形成された臭化銀含有相および沃化銀含有相を有するハロゲン化銀乳剤であることを特徴とする前記<1>〜<3>のいずれか1項に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料である。
<5> 該青感光性ハロゲン化銀乳剤のハロゲン化銀粒子の臭化銀局在相が沃化銀含有相よりも粒子の内側に形成されていることを特徴とする前記<4>に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料である。
【0022】
<6> 該青感光性ハロゲン化銀乳剤のハロゲン化銀粒子が立方体あるいは14面体粒子であることを特徴とする前記<1>〜<5>のいずれか1項に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料である。
<7> 該青感光性ハロゲン化銀乳剤のハロゲン化銀粒子が平均アスペクト比3以上の平板状粒子であることを特徴とする前記<1>〜<5>のいずれか1項に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料である。
<8> 該青感光性ハロゲン化銀乳剤のハロゲン化銀粒子がCl、BrまたはIをリガンドとして有するIrを中心金属とする6配位錯体を含むことを特徴とする前記<1>〜<7>のいずれか1項に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料である。
<9> 該青感光性ハロゲン化銀乳剤のハロゲン化銀粒子がハロゲンまたはシアン以外のリガンドを少なくとも1個有するIrを中心金属とする6配位錯体を含むことを特徴とする<1>〜<8>のいずれか1項に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料である。
<10> 該青感光性ハロゲン化銀乳剤がコロイド状硫化金あるいは金の錯安定度定数logβ2が21以上かつ35以下の金増感剤で金増感されていることを特徴とする<1>〜<9>のいずれか1項に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料である。
【0023】
> 前記一般式(I)で表されるイエロー色素形成カプラーが一般式(II)で表されるイエロー色素形成カプラーであることを特徴とする<1>〜<1>のいずれか1項に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料である。
【0024】
【化8】
Figure 0004022418
【0025】
式中、R1は置換基を表す。R2は置換基を表す。mは0以上5以下の整数を表す。mが2以上のとき複数のR2はそれぞれ同じでも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。R3は置換基を表す。nは0以上4以下の整数を表す。nが2以上のとき複数のR3はそれぞれ同じでも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。Xは水素原子または現像主薬酸化体とのカップリング反応により離脱可能な基を表す。
<1> 前記一般式(II)で表される色素形成カプラーにおいて、R1が置換または無置換のアルキル基であることを特徴とする<1>に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料である。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明について詳細に説明する。
最初に、本発明に用いられる一般式(I)で表される化合物(本明細書では色素形成カプラーとも称す)を詳細に説明する。
【0027】
【化9】
Figure 0004022418
【0028】
式中、R1は水素原子以外の置換基を表す。この置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アルキル基(シクロアルキル基、ビシクロアルキル基を含む)、アルケニル基(シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基を含む)、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ、アミノ基(アルキルアミノ基、アニリノ基を含む)、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキルまたはアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキルまたはアリールスルフィニル基、アルキルまたはアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリールまたはヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、シリル基が挙げられる。
【0029】
なお、上述の置換基はさらに置換基で置換されていてもよく、該置換基としては上述の基が挙げられる。
【0030】
好ましくはR1は、置換もしくは無置換のアルキル基である。R1の総炭素数は1以上60以下が好ましく、6以上50以下がより好ましく、11以上40以下がさらに好ましく16以上30以下が最も好ましい。R1が置換アルキル基である場合の置換基としては前述のR1の置換基として挙げた例が上げられる。
また、R1のアルキル基自身の炭素数は1〜40が好ましく、3〜36がより好ましく、さらに好ましくは8〜30である
【0031】
好ましくはR1は、炭素数11以上の無置換アルキル基、もしくは2位、3位あるいは4位にアルコキシ基またはアリールオキシ基が置換したアルキル基であり、さらに好ましくは、炭素数16以上の無置換アルキル基、もしくは3位にアルコキシ基またはアリールオキシ基が置換したアルキル基であり、最も好ましくはC1633基、C1837基、3−ラウリルオキシプロピル基、もしくは3−(2,4−ジ−t−アミルフェノキシ)プロピル基である
【0032】
一般式(I)においてQは−C(−R11)=C(−R12)−SO2 −で表される基を表す(本発明においてこの基の表記はこの基で表される基の結合の向きを制限するものではない)。R11、R12は互いに結合して−C=C−とともに5〜7員環を形成する基、もしくはそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。形成される5員〜7員の環は飽和または不飽和環であり、該環は脂環、芳香環、ヘテロ環であってもよく、例えば、ベンゼン環、フラン環、チオフェン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環が挙げられる
【0033】
これらの各置換基や複数の置換基が互いに結合して形成した環は、更に置換基(前述のR1の置換基として例示した基が挙げられる)で置換されてもよい。
【0034】
一般式(I)において、R2は水素原子以外の置換基を表す。この置換基の例としては前述のR1の置換基の例として挙げたものが挙げられる。好ましくはR2はハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子)、アルキル基(例えばメチル、イソプロピル)、アリール基(たとえばフェニル、ナフチル)、アルコキシ基(例えばメトキシ、イソプロピルオキシ)、アリールオキシ基(例えばフェノキシ)、アシルオキシ基(例えばアセチルオキシ)、アミノ基(例えばジメチルアミノ、モルホリノ)、アシルアミノ基(例えばアセトアミド)、スルホンアミド基(例えばメタンスルホンアミド、ベンゼンスルホンアミド)、アルコキシカルボニル基(例えばメトキシカルボニル)、アリールオキシカルボニル基(例えばフェノキシカルボニル)、カルバモイル基(例えば、N−メチルカルバモイル、N,N−ジエチルカルバモイル)、スルファモイル基(例えばN−メチルスルファモイル、N,N−ジエチルスルファモイル)、アルキルスルホニル基(例えばメタンスルホニル)、アリールスルホニル基(例えばベンゼンスルホニル)、シアノ基、カルボキシル基、スルホ基である。なおR2が−CONH−基に対してオルト位にある場合、好ましくはハロゲン原子、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキル基である。
本発明においては少なくとも1つのR2が−CONH−基に対してオルト位にある場合が好ましい。
【0035】
一般式(I)において、mは0以上5以下の整数を表す。mが2以上のとき複数のR2はそれぞれ同じでも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。
mは好ましくは0〜3であり、0〜2がより好ましく、1〜2がさらに好ましく、2である場合が最も好ましい。
【0036】
一般式(I)においてXは水素原子または現像主薬酸化体とのカップリング反応により離脱可能な基を表す。
Xが現像主薬酸化体とのカップリング反応により離脱可能な基である場合の例としては窒素原子で離脱する基、酸素原子で離脱する基、イオウ原子で離脱する基、ハロゲン原子(例えば塩素原子、臭素原子)などが挙げられる。
窒素原子で離脱する基としては、ヘテロ環基(好ましくは5〜7員の置換もしくは無置換、飽和もしくは不飽和、芳香族(本明細書では4n+2個の環状共役電子を有するものを意味する)もしくは非芳香族、単環もしくは縮合環のヘテロ環基であり、より好ましくは、環構成原子が炭素原子、窒素原子および硫黄原子から選択され、かつ窒素原子、酸素原子および硫黄原子のいずれかのヘテロ原子を少なくとも一個有する5もしくは6員のヘテロ環基であり、例えばスクシンイミド、マレインイミド、フタルイミド、ジグリコールイミド、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、1,2,4−トリアゾール、テトラゾール、インドール、ベンゾピラゾール、ベンツイミダゾール、ベンゾトリアゾール、イミダゾリン−2,4−ジオン、オキサゾリジン−2,4−ジオン、チアゾリジン−2−オン、ベンツイミダゾリン−2−オン、ベンゾオキサゾリン−2−オン、ベンゾチアゾリン−2−オン、2−ピロリン−5−オン、2−イミダゾリン−5−オン、インドリン−2,3−ジオン、2,6−ジオキシプリンパラバン酸、1,2,4−トリアゾリジン−3,5−ジオン、2−ピリドン、4−ピリドン、2−ピリミドン、6−ピリダゾン、2−ピラゾン、2−アミノ−1,3,4−チアゾリジン−4−オン)、カルボナミド基(例えばアセタミド、トリフルオロアセタミド)、スルホンアミド基(例えばメタンスルホンアミド、ベンゼンスルホンアミド)、アリールアゾ基(例えばフェニルアゾ、ナフチルアゾ)、カルバモイルアミノ基(例えばN−メチルカルバモイルアミノ)などが挙げられる。
【0037】
窒素原子で離脱する基のうち、好ましいものはヘテロ環基であり、さらに好ましいものは、環構成原子として窒素原子を1、2、3または4個有する芳香族ヘテロ環基、または下記一般式(L)で表されるヘテロ環基である。
【0038】
【化10】
Figure 0004022418
【0039】
式中、Lは−NC(=O)−と共に5〜6員環の含窒素ヘテロ環を形成する残基を表す。
これらの例示は上記ヘテロ環基の説明の中で挙げており、これらが更に好ましい。
なかでも、Lは5員環の含窒素ヘテロ環を形成する残基が好ましい。
【0040】
酸素原子で離脱する基としては、アリールオキシ基(例えばフェノキシ、1−ナフトキシ)、ヘテロ環オキシ基(例えばピリジルオキシ、ピラゾリルオキシ)、アシルオキシ基(例えばアセトキシ、ベンゾイルオキシ)、アルコキシ基(例えばメトキシ、ドデシルオキシ)、カルバモイルオキシ基(例えばN,N−ジエチルカルバモイルオキシ、モルホリノカルバモイルオキシ)、アリールオキシカルボニルオキシ基(例えばフェノキシカルボニルオキシ)、アルコキシカルボニルオキシ基(例えばメトキシカルボニルオキシ、エトキシカルボニルオキシ)、アルキルスルホニルオキシ基(例えばメタンスルホニルオキシ)、アリールスルホニルオキシ基(例えばベンゼンスルホニルオキシ、トルエンスルホニルオキシ)などが挙げられる。
酸素原子で離脱する基のうち、好ましいものはアリールオキシ基、アシルオキシ基、ヘテロ環オキシ基である。
【0041】
イオウ原子で離脱する基としては、アリールチオ基(例えばフェニルチオ、ナフチルチオ)、ヘテロ環チオ基(例えばテトラゾリルチオ、1,3,4−チアジアゾリルチオ、1,3,4−オキサゾリルチオ、ベンツイミダゾリルチオ)、アルキルチオ基(例えばメチルチオ、オクチルチオ、ヘキサデシルチオ)、アルキルスルフィニル基(例えばメタンスルフィニル)、アリールスルフィニル基(例えばベンゼンスルフィニル)、アリールスルホニル基(例えばベンゼンスルホニル)、アルキルスルホニル基(例えばメタンスルホニル)などが挙げられる。
イオウ原子で離脱する基のうち、好ましいものはアリールチオ基、ヘテロ環チオ基であり、ヘテロ環チオ基がより好ましい。
【0042】
Xは置換基により置換されていてもよく、Xを置換する置換基の例としては前述のR1の置換基の例として挙げたものが挙げられる。
Xは、現像主薬の酸化体とのカップリング反応により離脱する基が好ましく、このような離脱基の中でも、好ましくは窒素原子で離脱する基、酸素原子で離脱する基、イオウ原子で離脱する基であり、より好ましくは窒素原子で離脱する基であり、更に好ましくは、窒素原子で離脱する基で述べた好ましい基の順に好ましい。
Xの好ましい基をさらに説明すると、窒素原子で離脱する基が好ましいが、窒素原子を少なくとも2個(好ましくは2個)有する芳香族ヘテロ環基(好ましくは5員環の芳香族ヘテロ環基で、置換基を有してもよいピラゾール基など)または前記一般式(L)で表される基が特に好ましい。
【0043】
またXは写真性有用基であってもよい。この写真性有用基としては、現像抑制剤、脱銀促進剤、レドックス化合物、色素、カプラー等、あるいはこれらの前駆体が挙げられる。
なお、本発明においては、好ましくは上記のような写真性有用基でない方が好ましい。
【0044】
カプラーを感光材料中で不動化するために、Q、R1、X、あるいはR2の少なくとも1つは置換基を含めた総炭素数が8以上50以下であることが好ましく、より好ましくは総炭素数が10以上40以下である。
【0045】
本発明に用いられる一般式(I)で表される化合物のうち、好ましい化合物を下記一般式(II)で表すことができる。
以下に本発明に用いられる一般式(II)で表される化合物(本明細書では色素形成カプラーとも称す)を詳細に説明する。
【0046】
【化11】
Figure 0004022418
【0047】
一般式(II)において、R1、R2、m、Xは一般式(I)において述べたものと同じものを表し、好ましい範囲も同様である。
【0048】
一般式(II)において、R3は置換基を表す。この置換基の例としては前述のR1の置換基の例として挙げたものが挙げられる。好ましくはR3はハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子)、アルキル基(例えばメチル、イソプロピル)、アリール基(例えばフェニル、ナフチル)、アルコキシ基(例えばメトキシ、イソプロピルオキシ)、アリールオキシ基(例えばフェノキシ)、アシルオキシ基(例えばアセチルオキシ)、アミノ基(例えばジメチルアミノ、モルホリノ)、アシルアミノ基(例えばアセトアミド)、スルホンアミド基(例えばメタンスルホンアミド、ベンゼンスルホンアミド)、アルコキシカルボニル基(例えばメトキシカルボニル)、アリールオキシカルボニル基(例えばフェノキシカルボニル)、カルバモイル基(例えば、N−メチルカルバモイル、N,N−ジエチルカルバモイル)、スルファモイル基(例えばN−メチルスルファモイル、N,N−ジエチルスルファモイル)、アルキルスルホニル基(例えばメタンスルホニル)、アリールスルホニル基(例えばベンゼンスルホニル)、シアノ基、カルボキシル基、スルホ基である。
nは0以上4以下の整数を表す。nが2以上のとき複数のR3はそれぞれ同じでも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。
【0049】
本発明において一般式(I)もしくは一般式(II)で表されるカプラーのうち、好ましい具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。なおカップリング位の水素原子(Xが置換する炭素原子上の水素原子)が、カップリング位に結合したC=N部によって環を形成している窒素(環構成している、R1が結合していない窒素原子)上に移動した互変異性体も本発明に含まれることとする。
【0050】
【化12】
Figure 0004022418
【0051】
【化13】
Figure 0004022418
【0052】
【化14】
Figure 0004022418
【0053】
【化15】
Figure 0004022418
【0054】
【化16】
Figure 0004022418
【0055】
【化17】
Figure 0004022418
【0056】
【化18】
Figure 0004022418
【0057】
【化19】
Figure 0004022418
【0058】
【化20】
Figure 0004022418
【0061】
【化23】
Figure 0004022418
【0062】
【化24】
Figure 0004022418
【0063】
【化25】
Figure 0004022418
【0064】
【化26】
Figure 0004022418
【0065】
【化27】
Figure 0004022418
【0066】
【化28】
Figure 0004022418
【0067】
なお、以降の説明において、以上に示された例示化合物(色素形成カプラーとも称す)を引用する場合、それぞれの例示化合物に付された括弧書きの番号(x)を用いて、「カプラー(x)」と表示することとする。
【0068】
以下に上記一般式(I)もしくは一般式(II)で表される化合物の具体的な合成例を示す。
【0069】
合成例1:カプラー(1)の合成
カプラー(1)は、下記に示すルートにより合成した。
【0070】
【化29】
Figure 0004022418
【0071】
40%メチルアミン水溶液38.8gとアセトニトリル200mlの溶液に、氷冷下、オルトニトロベンゼンスルホニルクロライド44.3gを少量ずつ撹拌しながら添加した。系の温度を室温まで昇温させ、さらに1時間撹拌した。酢酸エチル、水を加えて分液し、有機層を希塩酸水、飽和食塩水で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し、酢酸エチル、ヘキサン混合溶媒から晶析して28.6gの化合物(A−1)を得た。
【0072】
還元鉄44.8g、塩化アンモニウム4.5gをイソプロパノール270ml、水45mlに分散し、1時間加熱還流した。これに化合物(A−1)25.9gを少量ずつ撹拌しながら添加した。さらに1時間加熱還流した後、セライトを通して吸引ろ過した。濾液に酢酸エチル、水を加えて分液し、有機層を飽和食塩水で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し、化合物(A−2)の油状物21.5gを得た。
【0073】
化合物(A−2)18.9g、イミノエーテル(A−0)の塩酸塩39.1g、エチルアルコール200mlの溶液を加熱還流下1日撹拌した。更にイミノエーテルの塩酸塩19.2gを加え加熱還流下さらに1日撹拌した。酢酸エチル、水を加えて分液し、有機層を希塩酸水、飽和食塩水で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し、酢酸エチル、ヘキサン混合溶媒から晶析して21.0gの化合物(A−3)を得た。
【0074】
化合物(A−3)5.6g、2−メトキシ−5−テトラデシルオキシカルボニルアニリン7.2g、m−ジクロルベンゼン20mlの溶液を加熱還流下6時間撹拌した。冷却後ヘキサンを加えて晶析して8.8gの化合物(A−4)を得た。
【0075】
化合物(A−4)5.4gの塩化メチレン110mlの溶液に、氷冷下、臭素0.45mlの塩化メチレン溶液10mlを滴下した。室温にて30分撹拌した後、塩化メチレン、水を加えて分液し、有機層を飽和食塩水で洗浄した。無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し、化合物(A−5)の粗製物を得た。
【0076】
5,5−ジメチルオキサゾリジン−2,4−ジオン3.5g、トリエチルアミン3.8mlをN,N−ジメチルアセトアミド110mlに溶解し、これに室温下、先に合成した化合物(A−5)の粗製物すべてをアセトニトリル25mlに溶解したものを10分間で滴下し、室温にて2時間撹拌した。酢酸エチル、水を加えて分液し、有機層を0.1規定水酸化カリウム水溶液、希塩酸水、飽和食塩水で洗浄した。無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去した。残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより、アセトン、ヘキサン混合溶媒を溶離液として用いて精製し、酢酸エチル、ヘキサン混合溶媒から晶析してカプラー(1)4.7gを得た。
【0077】
合成例2:カプラー(3)の合成
カプラー(3)は、下記に示すルートにより合成した。
【0078】
【化30】
Figure 0004022418
【0079】
3−(2,4−ジ−t−アミルフェノキシ)プロピルアミン438g、トリエチルアミン210ml、アセトニトリル1lの溶液に、氷冷下、オルトニトロベンゼンスルホニルクロライド333gを少量ずつ撹拌しながら添加した。系の温度を室温まで昇温させ、さらに1時間撹拌した。酢酸エチル、水を加えて分液し、有機層を希塩酸水、飽和食塩水で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し、酢酸エチル、ヘキサン混合溶媒から晶析して588gの化合物(B−1)を得た。
【0080】
還元鉄84.0g、塩化アンモニウム8.4gをイソプロパノール540ml、水90mlに分散し、1時間加熱還流した。これに化合物(B−1)119gを少量ずつ撹拌しながら添加した。さらに2時間加熱還流した後、セライトを通して吸引ろ過した。濾液に酢酸エチル、水を加えて分液し、有機層を飽和食塩水で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し、化合物(B−2)の油状物111gを得た。
【0081】
化合物(B−2)111g、イミノエーテル(A−0)の塩酸塩68.4g、エチルアルコール150mlの溶液を加熱還流下1時間撹拌した。更にイミノエーテルの塩酸塩4.9gを加え加熱還流下さらに30分撹拌した。冷却後吸引濾過し、濾液にp−キシレン100mlを加え、エタノールを留去しながら4時間加熱還流した。反応液をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより、酢酸エチル、ヘキサン混合溶媒を溶離液として用いて精製し、メタノールから晶析して93.1gの化合物(B−3)を得た。
【0082】
化合物(B−3)40.7g、2−メトキシアニリン18.5g、p−キシレン10mlの溶液を加熱還流下6時間撹拌した。酢酸エチル、水を加えて分液し、有機層を希塩酸水、飽和食塩水で洗浄した。無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去した。残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより、酢酸エチル、ヘキサン混合溶媒を溶離液として用いて精製し、油状の化合物(B−4)37.7gを得た。
【0083】
化合物(B−4)24.8gの塩化メチレン400mlの溶液に、氷冷下、臭素2.1mlの塩化メチレン溶液35mlを滴下した。氷冷下30分撹拌した後、塩化メチレン、水を加えて分液し、有機層を飽和食塩水で洗浄した。無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し、化合物(B−5)の粗製物を得た。
【0084】
5,5−ジメチルオキサゾリジン−2,4−ジオン15.5g、トリエチルアミン16.8mlをN,N−ジメチルアセトアミド200mlに溶解し、これに室温下、先に合成した化合物(B−5)の粗製物すべてをアセトニトリル40mlに溶解したものを10分間で滴下し、40℃まで昇温して30分撹拌した。酢酸エチル、水を加えて分液し、有機層を0.1規定水酸化カリウム水溶液、希塩酸水、飽和食塩水で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去した。残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより、アセトン、ヘキサン混合溶媒を溶離液として用いて精製し、酢酸エチル、ヘキサン混合溶媒から晶析してカプラー(3)23.4gを得た。
【0085】
合成例3:カプラー(6)の合成
カプラー(6)は、下記に示すルートにより合成した。
【0086】
【化31】
Figure 0004022418
【0087】
ベンジルアミン21.4gとアセトニトリル200mlの溶液に、氷冷下、オルトニトロベンゼンスルホニルクロライド39.9gを少量ずつ撹拌しながら添加した。系の温度を室温まで昇温させ、さらにトリエチルアミン30mlを滴下し1時間撹拌した。酢酸エチル、水を加えて分液し、有機層を希塩酸水、飽和食塩水で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し、酢酸エチル、ヘキサン混合溶媒から晶析して31.2gの化合物(C−1)を得た。
【0088】
還元鉄44.8g、塩化アンモニウム4.5gをイソプロパノール270ml、水45mlに分散し、1時間加熱還流した。これに化合物(C−1)29.2gを少量ずつ撹拌しながら添加した。さらに1時間加熱還流した後、セライトを通して吸引ろ過した。濾液に酢酸エチル、水を加えて分液し、有機層を飽和食塩水で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し、化合物(C−2)の油状物25.5gを得た。
【0089】
化合物(C−2)19.7g、イミノエーテル(A−0)の塩酸塩22.0g、エチルアルコール200mlの溶液を加熱還流下4時間撹拌した。更にイミノエーテルの塩酸塩19.7gを加え、加熱還流下4時間撹拌した。更にp−トルエンスルホン酸一水和物13gを加え、加熱還流下1時間撹拌した。酢酸エチル、水を加えて分液し、有機層を希塩酸水、飽和食塩水で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し、酢酸エチル、ヘキサン混合溶媒から晶析して3.2gの化合物(C−3)を得た。
【0090】
化合物(C−3)2.9g、2−メトキシ−5−テトラデシルオキシカルボニルアニリン2.9g、o−ジクロルベンゼン20mlの溶液を加熱還流下6時間撹拌した。酢酸エチル、水を加えて分液し、有機層を希塩酸水、飽和食塩水で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去した。残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより、酢酸エチル、ヘキサン混合溶媒を溶離液として用いて精製し、酢酸エチル、ヘキサン混合溶媒から晶析して3.8gの化合物(C−4)を得た。
【0091】
化合物(C−4)3.4gの塩化メチレン100mlの溶液に、氷冷下、臭素0.26mlの塩化メチレン溶液10mlを滴下した。室温にて30分撹拌した後、塩化メチレン、水を加えて分液し、有機層を飽和食塩水で洗浄した。無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し、化合物(C−5)の粗製物を得た。
【0092】
1−ベンジル−5−エトキシヒダントイン3.5g、トリエチルアミン2.1mlをN,N−ジメチルアセトアミド100mlに溶解し、これに室温下、先に合成した化合物(C−5)の粗製物すべてをアセトニトリル20mlに溶解したものを30分間で滴下し、40℃にて2時間撹拌した。酢酸エチル、水を加えて分液し、有機層を0.1規定水酸化カリウム水溶液、希塩酸水、飽和食塩水で洗浄した。無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去した。残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより、酢酸エチル、ヘキサン混合溶媒を溶離液として用いて精製し、酢酸エチル、ヘキサン混合溶媒から晶析してカプラー(6)3.0gを得た。
【0093】
合成例4:カプラー(31)の合成
カプラー(31)は、下記に示すルートにより合成した。
【0094】
【化32】
Figure 0004022418
化合物(D−0)(米国特許第3,841,880号に記載のカプラーI)26.8g、炭酸カリウム16.6g、アセトン300mlの溶液にジメチル硫酸13.9gを滴下し加熱還流下2時間撹拌した。酢酸エチル、水を加えて分液し、有機層を希塩酸水、飽和食塩水で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去した。残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより、アセトン、ヘキサン混合溶媒を溶離液として用いて精製し、酢酸エチル、ヘキサン混合溶媒から晶析して5.6gの化合物(D−1)を得た。このとき副生成物として10.9gの化合物(A−3)が得られた。
このようにして合成した化合物(A−3)を用いてカプラー(1)を合成しても良い。
【0095】
化合物(D−1)5.4g、2−メトキシ−5−テトラデシルオキシカルボニルアニリン7.3g、o−ジクロルベンゼン50mlの溶液を加熱還流下6時間撹拌した。酢酸エチル、水を加えて分液し、有機層を希塩酸水、飽和食塩水で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去した。酢酸エチル、メタノール混合溶媒から晶析し化合物(D−2)9.1gを得た。
【0096】
化合物(D−2)4.8gの塩化メチレン100mlの溶液に、氷冷下、臭素0.4mlの塩化メチレン溶液10mlを滴下した。氷冷下30分撹拌した後、塩化メチレン、水を加えて分液し、有機層を飽和食塩水で洗浄した。無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し、化合物(D−3)の粗製物を得た。
【0097】
5−ブチルオキサゾリジン−2,4−ジオン3.8g、トリエチルアミン3.4mlをN,N−ジメチルアセトアミド100mlに溶解し、これに室温下、先に合成した化合物(D−3)の粗製物すべてをN,N−ジメチルアセトアミド50mlに溶解したものを30分間で滴下し、室温にて1時間撹拌した。酢酸エチル、水を加えて分液し、有機層を0.1規定水酸化カリウム水溶液、希塩酸水、飽和食塩水で洗浄した。無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去した。残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより、アセトン、テトラヒドロフラン、ヘキサン混合溶媒を溶離液として用いて精製し、酢酸エチル、ヘキサン混合溶媒から晶析してカプラー(31)2.1gを得た。
【0105】
本発明のハロゲン化銀写真感光材料において、前記カプラーは、ハロゲン化銀1モル当たり1×10-3〜1モル添加するのが好ましく、2×10-3〜3×10-1モル添加するのがより好ましい。
【0106】
次に、本発明に用いられるハロゲン化銀乳剤について、詳細に説明する。
本発明に用いられるハロゲン化銀乳剤は、特定のハロゲン化銀粒子を含む。この粒子の粒子形状は特に制限はないが、実質的に{100}面を持つ立方体、14面体の結晶粒子(これらは粒子頂点が丸みを帯び、さらに高次の面を有していてもよい)、8面体の結晶粒子、主表面が{100}面または{111}面からなるアスペクト比3以上の平板状粒子からなることが好ましい。アスペクト比とは、投影面積に相当する円の直径を粒子の厚さで割った値である。
【0107】
本発明に用いられるハロゲン化銀乳剤としては、特定のハロゲン化銀粒子を含む乳剤が用いられる。ハロゲン化銀粒子の塩化銀含有率は90モル%以上である必要があり、迅速処理性の観点からは、塩化銀含有率は93モル%以上が好ましく、95モル%以上が更に好ましい。臭化銀含有率は硬調で潜像安定性に優れることから0.1〜7モル%であることが好ましく、0.5〜5モル%であることが更に好ましい。沃化銀含有率は高照度露光で高感度かつ硬調であることから0.02〜1モル%であることが好ましく、0.05〜0.50モル%が更に好ましく、0.07〜0.40モル%が最も好ましい。
本発明に用いられる特定のハロゲン化銀粒子は、沃臭塩化銀粒子が好ましく、上記のハロゲン組成の沃臭塩化銀粒子が更に好ましい。
【0108】
本発明に用いられるハロゲン化銀乳剤における特定のハロゲン化銀粒子は、臭化銀含有相および/または沃化銀含有相を有する。ここで、臭化銀あるいは沃化銀含有相とは周囲よりも臭化銀あるいは沃化銀の濃度が高い部位を意味する。臭化銀含有相あるいは沃化銀含有相とその周囲とのハロゲン組成は連続的に変化してもよく、また急峻に変化してもよい。このような臭化銀あるいは沃化銀含有相は、粒子内のある部分で濃度がほぼ一定の幅をもった層を形成してもよく、広がりをもたない極大点であってもよい。臭化銀含有相の局所的臭化銀含有率は、5モル%以上であることが好ましく、10〜80モル%であることが更に好ましく、15〜50モル%であることが最も好ましい。沃化銀含有相の局所的沃化銀含有率は、0.3モル%以上であることが好ましく、0.5〜8モル%であることが更に好ましく、1〜5モル%であることが最も好ましい。また、このような臭化銀あるいは沃化銀含有相は、それぞれ粒子内に層状に複数個あってもよく、それぞれの臭化銀あるいは沃化銀含有率が異なってよいが、それぞれ最低1個の含有相を有する必要がある。
【0109】
本発明に用いられるハロゲン化銀粒子の臭化銀含有相あるいは沃化銀含有相は、それぞれ粒子を取り囲むように層状にあることが重要である。粒子を取り囲むように層状に形成された臭化銀含有相あるいは沃化銀含有相は、それぞれの相の中で粒子の周回方向に均一な濃度分布を有することが1つの好ましい態様である。しかし、粒子を取り囲むように層状にある臭化銀含有相あるいは沃化銀含有相の中は、臭化銀あるいは沃化銀濃度の極大点または極小点が粒子の周回方向に存在し、濃度分布を有していてもよい。例えば、粒子表面近傍に粒子を取り囲むように層状に臭化銀含有相あるいは沃化銀含有相を有する場合、粒子コーナーまたはエッジの臭化銀あるいは沃化銀濃度は、主表面と異なる濃度になる場合がある。また、粒子を取り囲むように層状にある臭化銀含有相と沃化銀含有相とは別に、粒子の表面の特定部に完全に孤立して存在し、粒子を取り囲んでいない臭化銀含有相あるいは沃化銀含有相があってもよい。
【0110】
本発明に用いられるハロゲン化銀粒子が臭化銀含有相を含有する場合、その臭化銀含有相は粒子の内部に臭化銀濃度極大を有するように層状に形成されていることが好ましい。また、本発明に用いられるハロゲン化銀粒子が沃化銀含有相を含有する場合、その沃化銀含有相は粒子の表面に沃化銀濃度極大を有するように層状に形成されていることが好ましい。このような臭化銀含有相あるいは沃化銀含有相は、より少ない臭化銀あるいは沃化銀含有量で局所濃度を上げる意味から、粒子体積の3%以上30%以下の銀量で構成されていることが好ましく、3%以上15%以下の銀量で構成されていることが更に好ましい。
【0111】
本発明に用いられるハロゲン化銀粒子は、臭化銀含有相および沃化銀含有相を両方含むことが好ましい。その場合、臭化銀含有相と沃化銀含有相は粒子の同一個所にあっても、異なる場所にあってもよいが、異なる場所にあるほうが粒子形成の制御を容易にする点で好ましい。また、臭化銀含有相に沃化銀を含有していてもよく、逆に沃化銀含有相に臭化銀を含有していてもよい。一般に、高塩化銀粒子形成中に添加する沃化物は臭化物よりも粒子表面にしみだしやすいために沃化銀含有相は粒子表面の近傍に形成されやすい。従って、臭化銀含有相と沃化銀含有相が粒子内の異なる場所にある場合、臭化銀含有相は沃化銀含有相より内側に形成することが好ましい。このような場合、粒子表面近傍の沃化銀含有相よりも更に外側に、別の臭化銀含有相を設けてもよい。
【0112】
高感度化や硬調化などの本発明の効果を発現させるために必要な臭化銀含有量あるいは沃化銀含有量は、臭化銀含有相あるいは沃化銀含有相を粒子内部に形成するほど増加してしまい、必要以上に塩化銀含有量を落として迅速処理性を損なってしまう恐れがある。従って、写真作用を制御するこれらの機能を粒子内の表面近くに集約するために、臭化銀含有相と沃化銀含有相は隣接していることが好ましい。これらの点から、臭化銀含有相は内側から測って粒子体積の50〜100%の位置のいずれかに形成し、沃化銀含有相は粒子体積の85〜100%の位置のいずれかに形成することが好ましい。また、臭化銀含有相は粒子体積の70〜95%の位置のいずれかに形成し、沃化銀含有相は粒子体積の90〜100%の位置のいずれかに形成することが更に好ましい。
【0113】
本発明に用いられるハロゲン化銀粒子に臭化銀あるいは沃化銀を含有させるための臭化物あるいは沃化物イオンの導入は、臭化物塩あるいは沃化物塩の溶液を単独で添加させるか、或いは銀塩溶液と高塩化物塩溶液の添加と併せて臭化物塩あるいは沃化物塩溶液を添加してもよい。後者の場合は、臭化物塩あるいは沃化物塩溶液と高塩化物塩溶液を別々に、または臭化物塩あるいは沃化物塩と高塩化物塩の混合溶液として添加してもよい。臭化物塩あるいは沃化物塩は、アルカリもしくはアルカリ土類臭化物塩あるいは沃化物塩のような溶解性塩の形で添加する。或いは米国特許第5,389,508号明細書に記載される有機分子から臭化物イオンあるいは沃化物イオンを開裂させることで導入することもできる。また別の臭化物あるいは沃化物イオン源として、微小臭化銀粒子あるいは微小沃化銀粒子を用いることもできる。
【0114】
臭化物塩あるいは沃化物塩溶液の添加は、粒子形成の一時期に集中して行ってもよく、またある一定期間かけて行ってもよい。高塩化物乳剤への沃化物イオンの導入位置は、高感度で低被りな乳剤を得る上で制限される。沃化物イオンの導入は、乳剤粒子のより内部に行うほど感度の増加が小さい。故に沃化物塩溶液の添加は、粒子体積の50%より外側が好ましく、より好ましくは70%より外側から、最も好ましくは85%より外側から行うのがよい。また沃化物塩溶液の添加は、好ましくは粒子体積の98%より内側で、最も好ましくは96%より内側で終了するのがよい。沃化物塩溶液の添加は、粒子表面から少し内側で終了することで、より高感度で低被りな乳剤を得ることができる。
一方、臭化物塩溶液の添加は、粒子体積の50%より外側が好ましく、より好ましくは70%より外側から行うのがよい。
【0115】
粒子内の深さ方向への臭化物あるいは沃化物イオン濃度の分布は、エッチング/TOF−SIMS(Time of Flight − Secondary Ion Mass Spectrometry)法により、例えばPhi Evans社製TRIFT II型TOF−SIMSを用いて測定できる。TOF−SIMS法については、具体的には日本表面科学会編「表面分析技術選書二次イオン質量分析法」丸善株式会社(1999年発行)に記載されている。エッチング/TOF−SIMS法で乳剤粒子を解析すると、沃化物塩溶液の添加を粒子の内側で終了しても、粒子表面に向けて沃化物イオンがしみ出していることが分析できる。本発明に用いられる乳剤は、エッチング/TOF−SIMS法による分析で、沃化物イオンは粒子表面で濃度極大を有し、内側に向けて沃化物イオン濃度が減衰していることが好ましく、臭化物イオンは粒子内部で濃度極大を有することが好ましい。臭化銀の局所濃度は、臭化銀含有量がある程度高ければX線回折法でも測定することができる。
【0116】
本明細書において球相当径は、個々の粒子の体積と等しい体積を有する球の直径で表される。本発明に用いられる乳剤は粒子サイズ分布が単分散な粒子からなることが好ましい。本発明に用いられる全粒子の球相当径の変動係数は20%以下であることが好ましく、15%以下であることがより好ましく、10%以下であることが更に好ましい。球相当径の変動係数とは、個々の粒子の球相当径の標準偏差の、球相当径の平均に対する百分率で表される。このとき、広いラチチュードを得る目的で上記の単分散乳剤を同一層にブレンドして使用することや、重層塗布することも好ましく行われる。
【0117】
本発明に用いられるハロゲン化銀乳剤に含まれるハロゲン化銀粒子の球相当径は、0.3μm以上1.2μm以下であることが好ましく、0.4μm以上0.8μm以下であることが更に好ましく、0.4μm以上0.6μm以下であることが最も好ましい。本発明に用いられるハロゲン化銀乳剤には、本発明で定義されるハロゲン化銀乳剤に含まれるハロゲン化銀粒子(即ち、特定のハロゲン化銀粒子)以外のハロゲン化銀粒子を含んでよい。しかしながら、本発明で定義されるハロゲン化銀乳剤は、全粒子の全投影面積の50%以上が本発明で定義されるハロゲン化銀粒子であることが好ましく、80%以上であることが更に好ましく、90%以上であることが最も好ましい。
【0118】
本発明に用いられるハロゲン化銀乳剤の電子徐放時間は、10-5秒〜10秒の間であることが好ましい。ここで、電子徐放時間とは、ハロゲン化銀乳剤に露光を与えた場合、ハロゲン化銀結晶中に発生した光電子が結晶中にある電子トラップに捕らえられ、再び放出されるまでの時間である。電子徐放時間が10-5秒より短いと高照度露光で高感度で硬調な階調が得られにくく、10秒より長いと露光後短時間で処理するまでの間に潜像増感の問題を生じる。電子徐放時間は、10-4秒〜10秒の間が更に好ましく、10-3秒〜1秒の間が最も好ましい。
【0119】
電子徐放時間は、ダブルパルス光伝導法で測定することができる。マイクロ波光伝導法あるいはラジオ波光伝導法を用い、1発目の短時間露光を与えその後ある一定時間の後2発目の短時間露光を与える。1発目の露光でハロゲン化銀結晶中の電子トラップに電子が捕らえられ、その直後に2発目の露光を与えると電子トラップが詰まっているため、2発目の光伝導シグナルは大きくなる。2回の露光間隔を十分置き、1発目の露光で電子トラップに捕らえられた電子が既に放出されている場合は、2発目の光伝導シグナルはほぼ元の大きさに戻っている。2回の露光間隔を変え2発目の光伝導シグナル強度の露光間隔依存性を取ると、露光間隔と共に2発目の光伝導シグナル強度が減少してゆく様子が測定できる。これが光電子の電子トラップからの徐放時間を表している。電子徐放は、露光後ある一定時間の間連続的に起こり続ける場合があるが、10-5秒〜10秒の間に徐放が観測されることが好ましい。10-4秒〜10秒の間に徐放が観測されることがより好ましく、10-3秒〜1秒の間に徐放が観測されることが更に好ましい。
【0120】
本発明に用いられるハロゲン化銀乳剤における特定のハロゲン化銀粒子は、イリジウムを含有することが好ましい。イリジウム化合物としては、6個のリガンドを有しイリジウムを中心金属とする6配位錯体が、ハロゲン化銀結晶中に均一に取り込ませるために好ましい。本発明で用いられるイリジウムの一つの好ましい態様として、Cl、BrまたはIをリガンドとして有するIrを中心金属とする6配位錯体が好ましく、6個全てのリガンドがCl、BrまたはIからなるIrを中心金属とする6配位錯体が更に好ましい。この場合、6配位錯体中にCl、BrまたはIが混在していてもよい。Cl、BrまたはIをリガンドとして有するIrを中心金属とする6配位錯体は、臭化銀含有相に含まれることが、高照度露光で硬調な階調を得るために特に好ましい。
【0121】
以下に、6個全てのリガンドがCl、BrまたはIからなるIrを中心金属とする6配位錯体の具体例を挙げるが、本発明におけるイリジウムはこれらに限定されない。
[IrCl6]2-
[IrCl6]3-
[IrBr6]2-
[IrBr6]3-
[IrI6]3-
【0122】
本発明で用いられるイリジウムの異なる好ましい態様として、ハロゲンまたはシアン以外のリガンドを少なくとも1個有するIrを中心金属とする6配位錯体が好ましく、H2O、OH、O、OCN、N(CN)2、チアゾール、置換チアゾール、チアジアゾール、置換チアジアゾール、チアトリアゾールまたは置換チアトリアゾールをリガンドとして有するIrを中心金属とする6配位錯体が好ましく、少なくとも1個のH2O、OH、O、OCN、N(CN)2、チアゾール、置換チアゾール、チアジアゾール、置換チアジアゾール、チアトリアゾールまたは置換チアトリアゾールをリガンドとして有し残りのリガンドがCl、BrまたはIからなるIrを中心金属とする6配位錯体が更に好ましい。更に、1個もしくは2個の5−メチルチアゾールをリガンドとして有し残りのリガンドがCl、BrまたはIからなるIrを中心金属とする6配位錯体が最も好ましい。
【0123】
以下に、少なくとも1個のH2O、OH、O、OCN、チアゾールまたは置換チアゾールをリガンドとして有し残りのリガンドがCl、BrまたはIからなるIrを中心金属とする6配位錯体の具体例を挙げるが、本発明におけるイリジウムはこれらに限定されない。
【0124】
[Ir(H2O)Cl5]2-
[Ir(H2O)2Cl4]-
[Ir(H2O)Br5]2-
[Ir(H2O)2Br4]-
[Ir(OH)Cl5]3-
[Ir(OH)2Cl4]3-
[Ir(OH)Br5]3-
[Ir(OH)2Br4]3-
[Ir(O)Cl5]4-
[Ir(O)2Cl4]5-
[Ir(O)Br5]4-
[Ir(O)2Br4]5-
[Ir(OCN)Cl5]3-
[Ir(OCN)Br5]3-
[Ir(thiazole)Cl5]2-
[Ir(thiazole)2Cl4]-
[Ir(thiazole)Br5]2-
[Ir(thiazole)2Br4]-
[Ir(5−methylthiazole)Cl5]2-
[Ir(5−methylthiazole)2Cl4]-
[Ir(5−methylthiazole)Br5]2-
[Ir(5−methylthiazole)2Br4]-
【0125】
本発明の課題は、6個全てのリガンドがCl、BrまたはIからなるIrを中心金属とする6配位錯体、あるいはハロゲンまたはシアン以外のリガンドを少なくとも1個有するIrを中心金属とする6配位錯体の、いずれか一方を単独で使用することで好ましく達成される。しかしながら、本発明の効果を一層高めるためには、6個全てのリガンドがCl、BrまたはIからなるIrを中心金属とする6配位錯体、およびハロゲンまたはシアン以外のリガンドを少なくとも1個有するIrを中心金属とする6配位錯体を併用することが好ましい。また更に、少なくとも1個のH2O、OH、O、OCN、N(CN)2、チアゾール、置換チアゾール、チアジアゾール、置換チアジアゾール、チアトリアゾールまたは置換チアトリアゾールをリガンドとして有し残りのリガンドがCl、BrまたはIからなるIrを中心金属とする6配位錯体の中から、2種類を併用して用いることが最も好ましい。
【0126】
以上に挙げた金属錯体は陰イオンであり、陽イオンと塩を形成した時にはその対陽イオンとして水に溶解しやすいものが好ましい。具体的には、ナトリウムイオン、カリウムイオン、ルビジウムイオン、セシウムイオンおよびリチウムイオン等のアルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、アルキルアンモニウムイオンが好ましい。これらの金属錯体は、水のほかに水と混合し得る適当な有機溶媒(例えば、アルコール類、エーテル類、グリコール類、ケトン類、エステル類、アミド類等)との混合溶媒に溶かして使うことができる。これらのイリジウム錯体は、粒子形成中に銀1モル当たり1×10-10モル〜1×10-3モル添加することが好ましく、1×10-8モル〜1×10-5モル添加することが最も好ましい。
【0127】
本発明において上記のイリジウム錯体は、ハロゲン化銀粒子形成時に反応溶液中に直接添加するか、ハロゲン化銀粒子を形成するためのハロゲン化物水溶液中、あるいはそれ以外の溶液中に添加し、粒子形成反応溶液に添加することにより、ハロゲン化銀粒子内に組み込むのが好ましい。また、あらかじめイリジウム錯体を粒子内に組み込んだ微粒子で物理熟成してハロゲン化銀粒子に組み込むことも好ましい。さらにこれらの方法を組み合わせてハロゲン化銀粒子内へ含有させることもできる。
【0128】
これらの錯体をハロゲン化銀粒子に組み込む場合、粒子内部に均一に存在させることも行われるが、特開平4−208936号、同2−125245号、同3−188437号各公報に開示されている様に、粒子表面層のみに存在させることも好ましく、粒子内部のみに錯体を存在させ粒子表面には錯体を含有しない層を付加することも好ましい。また、米国特許第5,252,451号および同第5,256,530号明細書に開示されているように、錯体を粒子内に組み込んだ微粒子で物理熟成して粒子表面相を改質することも好ましい。さらに、これらの方法を組み合わせて用いることもでき、複数種の錯体を1つのハロゲン化銀粒子内に組み込んでもよい。上記の錯体を含有させる位置のハロゲン組成には特に制限はないが、6個全てのリガンドがCl、BrまたはIからなるIrを中心金属とする6配位錯体は、臭化銀濃度極大部に含有させることが好ましい。
【0129】
本発明においては、イリジウム以外に他の金属イオンをハロゲン化銀粒子の内部及び/または表面にドープするがことができる。用いる金属イオンとしては遷移金属イオンが好ましく、なかでも、鉄、ルテニウム、オスミウム、鉛、カドミウム、または、亜鉛であることが好ましい。さらにこれらの金属イオンは配位子を伴い6配位八面体型錯体として用いることがより好ましい。無機化合物を配位子として用いる場合には、シアン化物イオン、ハロゲン化物イオン、チオシアン、水酸化物イオン、過酸化物イオン、アジ化物イオン、亜硝酸イオン、水、アンモニア、ニトロシルイオン、または、チオニトロシルイオンを用いることが好ましく、上記の鉄、ルテニウム、オスミウム、鉛、カドミウム、または、亜鉛のいずれの金属イオンに配位させて用いることも好ましく、複数種の配位子を1つの錯体分子中に用いることも好ましい。また、配位子として有機化合物を用いることも出来、好ましい有機化合物としては主鎖の炭素数が5以下の鎖状化合物および/または5員環あるいは6員環の複素環化合物を挙げることが出来る。さらに好ましい有機化合物は分子内に窒素原子、リン原子、酸素原子、または、硫黄原子を金属への配位原子として有する化合物であり、特に好ましくはフラン、チオフェン、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、フラザン、ピラン、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジンであり、さらにこれらの化合物を基本骨格としそれらに置換基を導入した化合物もまた好ましい。
【0130】
金属イオンと配位子の組み合わせとして好ましくは、鉄イオン及びルテニウムイオンとシアン化物イオンの組み合わせである。本発明においては、イリジウムとこれらの化合物を併用することが好ましい。これらの化合物においてシアン化物イオンは、中心金属である鉄またはルテニウムへの配位数のうち過半数を占めることが好ましく、残りの配位部位はチオシアン、アンモニア、水、ニトロシルイオン、ジメチルスルホキシド、ピリジン、ピラジン、または、4,4'−ビピリジンで占められることが好ましい。最も好ましくは中心金属の6つの配位部位が全てシアン化物イオンで占められ、ヘキサシアノ鉄錯体またはヘキサシアノルテニウム錯体を形成することである。これらシアン化物イオンを配位子とする錯体は、粒子形成中に銀1モル当たり1×10-8モル〜1×10-2モル添加することが好ましく、1×10-6モル〜5×10-4モル添加することが最も好ましい。ルテニウムおよびオスミウムを中心金属とした場合にはニトロシルイオン、チオニトロシルイオン、または水分子と塩化物イオンとを配位子として共に用いることも好ましい。より好ましくはペンタクロロニトロシル錯体、ペンタクロロチオニトロシル錯体、または、ペンタクロロアクア錯体を形成することであり、ヘキサクロロ錯体を形成することも好ましい。これらの錯体は、粒子形成中に銀1モル当たり1×10-10モル〜1×10-6モル添加することが好ましく、より好ましくは1×10-9モル〜1×10-6モル添加することである。
【0131】
本発明に用いられるハロゲン化銀乳剤の潜像の酸化電位は70mVよりも貴であることが好ましく、100mVよりも貴であることが更に好ましい。潜像の酸化電位が70mVよりも貴であるということは、潜像の耐酸化性が比較的強いことを意味する。潜像の酸化電位は、フォトグラフィック・センシティヴィティー(Photographic Sensitivity, Oxford University Press, Tadaaki Tani 1995)103頁等の公知の資料に記載された方法で測定することができる。具体的には、ハロゲン化銀乳剤の塗布物に0.1秒の階調露光を与え、現像前に様々な電位の酸化還元浴に浸漬して、潜像が漂白される電位を調べるものである。
【0132】
本発明に用いられるハロゲン化銀乳剤は、通常化学増感を施される。化学増感法については、不安定硫黄化合物の添加に代表される硫黄増感、金増感に代表される貴金属増感、あるいは還元増感等を単独もしくは併用して用いることができる。化学増感に用いられる化合物については、特開昭62−215272号の第18頁右下欄〜第22頁右上欄に記載のものが好ましく用いられる。このうち、特に、金増感を施したものであることが好ましい。金増感を施すことにより、レーザー光等によって走査露光したときの写真性能の変動を更に小さくすることができるからである。
【0133】
本発明に用いられるハロゲン化銀乳剤に金増感を施すには、種々の無機金化合物や無機配位子を有する金(I)錯体及び有機配位子を有する金(I)化合物を利用することができる。無機金化合物としては、例えば塩化金酸もしくはその塩、無機配位子を有する金(I)錯体としては、例えばジチオシアン酸金(I)カリウム等のジチオシアン酸金化合物やジチオ硫酸金(I)3ナトリウム等のジチオ硫酸金化合物等の化合物を用いることができる。
【0134】
本発明に用いられるハロゲン化銀乳剤は、コロイド状硫化金あるいは金の錯安定度定数logβ2が21以上かつ35以下の金増感剤で金増感されていることが好ましい。コロイド状硫化金の製造方法はリサーチ・ディスクロージャー(Research Disclosure, 37154)、ソリッド ステート イオニクス(Solid State Ionics)第79巻、60〜66頁、1995年刊、Compt. Rend. Hebt. Seances Acad. Sci. Sect. B第263巻、1328頁、1966年刊等に記載されている。コロイド状硫化金として様々なサイズのものを利用でき、粒径50nm以下のものも用いることができる。添加量は場合に応じて広範囲に変わり得るが、ハロゲン化銀1モルあたり金原子として5×10-7〜5×10-3モル、好ましくは5×10-6〜5×10-4モルである。本発明においては、金増感を更に他の増感法、例えば硫黄増感、セレン増感、テルル増感、還元増感あるいは金化合物以外を用いた貴金属増感等と組み合わせてもよい。
【0135】
以下に、金の錯安定度定数logβ2が21以上かつ35以下の金増感剤について説明する。
金の錯安定度定数logβ2の測定は、コンプリヘンシブ・コオーディネーション・ケミストリー(Comprehensive Coordination Chemistry、第55章、864頁、1987年)、エンサイクロペディア・オブ・エレクトロケミストリー・オブ・ザ・エレメンツ(Encyclopedia of Electrochemistry of The Elements、第IV−3章、1975年)、ジャーナル・オブ・ザ・ロイヤル・ネザーランド・ケミカル・ソサイエティー(Journal of The Royal Netherlands Chemical Society、101巻、164頁、1982年)、及び、それらの参考文献等に記載の測定方法を応用し、測定温度は25℃、pHはリン酸二水素カリウム/リン酸水素二ナトリウム緩衝液で6.0に調整し、イオン強度は0.1M(KBr)の条件下での金電位の値からlogβ2の値を計算により求められる。本測定方法における、チオシアン酸イオンのlogβ2の値は、20.5であり、文献(コンプリヘンシブ・コオーディネーション・ケミストリー(Comprehensive Coordination Chemistry、1987年、第55章、864頁、表2))記載の値、20と近い値が得られる。
【0136】
本発明における金の錯安定度定数logβ2が21以上かつ35以下の金増感剤は、好ましくは下記の一般式(S)で表される。
一般式(S) {(L1)x(Au)y(L2)z・Qqp
【0137】
一般式(S)中、L1およびL2は、logβ2の値が21ないし35の間に含まれる化合物を表す。好ましくは、22ないし31の間に含まれる化合物であり、より好ましくは24ないし28に含まれる化合物である。
【0138】
1およびL2は、例えば、ハロゲン化銀と反応して硫化銀を生成することができる不安定硫黄基を少なくとも1つ含有する化合物、ヒダントイン化合物、チオエーテル化合物、メソイオン化合物、−SR'基、ヘテロ環化合物、ホスフィン化合物、アミノ酸誘導体、糖誘導体、チオシアノ基を表し、それらは、互いに同じであっても、異なっていてもよい。ここで、R'は、肪族炭化水素基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、カルバモイル基、チオカルバモイル基、または、スルホニル基を表す。
Qは化合物の電荷を中性にするのに必要な対アニオンまたは対カチオンを表し、xおよびzは各々独立に0〜4の整数を表し、yおよびpは各々独立に1または2を表し、qは小数を含む0〜1の値を表す。ただし、xとzがいずれも0であることはない。
【0139】
一般式(S)で表される化合物として好ましくは、L1およびL2が、ハロゲン化銀と反応して硫化銀を生成することができる不安定硫黄基を少なくとも1つ含有する化合物、ヒダントイン化合物、チオエーテル化合物、メソイオン化合物、−SR'基、ヘテロ環化合物、またはフォスフィン化合物を表し、x、yおよびzがそれぞれ1を表す。
【0140】
一般式(S)で表される化合物としてより好ましくは、L1およびL2が、ハロゲン化銀と反応して硫化銀を生成することができる不安定硫黄基を少なくとも1つ含有する化合物、メソイオン化合物、または−SR'基を表し、x、y、zおよびpがそれぞれ1を表す。
【0141】
以下に、一般式(S)で表される金化合物について更に詳細に説明する。
一般式(S)中、L1およびL2で表されるハロゲン化銀と反応して硫化銀を生成することができる不安定硫黄基を有する化合物としては、チオケトン類(例えば、チオ尿素類、チオアミド類、または、ローダニン類等)、チオホスフェート類、チオ硫酸類を表す。
【0142】
ハロゲン化銀と反応して硫化銀を生成することができる不安定硫黄基を少なくとも1つ含有する化合物として好ましくは、チオケトン類(好ましくは、チオ尿素類、チオアミド類等)、チオ硫酸類を表す。
【0143】
次に、一般式(S)中、L1およびL2で表されるヒダントイン化合物としては、例えば、無置換のヒダントイン、N−メチルヒダントイン等が挙げられ、チオエーテル化合物としては、チオ基を1〜8個含有し、それらが置換もしくは無置換の直鎖もしくは分岐のアルキレン基(例えばエチレン、トリエチレン等)、または、フェニレン基で連結された鎖状もしくは環状のチオエーテル(例えばビスヒドロキシエチルチオエーテル、3,6−ジチア−1,8−オクタンジオール、1,4,8,11−テトラチアシクロテトラデカン等)等が挙げられ、メソイオン化合物としては、メソイオニック−3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール類(例えば、メソイオニック−1,4,5−トリメチル−3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール等)等が挙げられる。
【0144】
次に、一般式(S)中、L1およびL2が−SR'基を表す場合、R'で表される脂肪族炭化水素基としては、炭素数1〜30の置換もしくは無置換の直鎖もしくは分岐のアルキル基(例えばメチル、エチル、イソプロピル、n−プロピル、n−ブチル、t−ブチル、2−ペンチル、n−ヘキシル、n−オクチル、t−オクチル、2−エチルヘキシル、1,5−ジメチルヘキシル、n−デシル、n−ドデシル、n−テトラデシル、n−ヘキサデシル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、2,3−ジヒドロキシプロピル、カルボキシメチル、カルボキシエチル、ナトリウムスルホエチル、ジエチルアミノエチル、ジエチルアミノプロピル、ブトキシプロピル、エトキシエトキシエチル、n−ヘキシルオキシプロピル等)、炭素数3〜18の置換もしくは無置換の環状アルキル基(例えばシクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロオクチル、アダマンチル、シクロドデシル等)、炭素数2〜16のアルケニル基(例えば、アリル、2−ブテニル、3−ペンテニル等)、炭素数2〜10のアルキニル基(例えば、プロパルギル、3−ペンチニル等)、炭素数6〜16のアラルキル基(例えば、ベンジル等)等が挙げられ、アリール基としては、炭素数6〜20の置換もしくは無置換のフェニル基およびナフチル基(例えば無置換フェニル、無置換ナフチル、3,5−ジメチルフェニル、4−ブトキシフェニル、4−ジメチルアミノフェニル、2−カルボキシフェニル等)等が挙げられ、ヘテロ環基としては例えば、置換もしくは無置換の含窒素ヘテロ5員環(例えば、イミダゾリル、1,2,4−トリアゾリル、テトラゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、ベンゾイミダゾリル、プリニル等)、置換もしくは無置換の含窒素ヘテロ6員環(例えば、ピリジル、ピペリジル、1,3,5−トリアジノ、4,6−ジメルカプト−1,3,5−トリアジノ等)、フリル基、または、チエニル基等が挙げられ、アシル基としては例えばアセチル、ベンゾイル等が挙げられ、カルバモイル基としては例えばジメチルカルバモイル等が挙げられ、チオカルバモイル基としては例えばジエチルチオカルバモイル等が挙げられ、スルホニル基としては、炭素数1〜10の置換もしくは無置換のアルキルスルホニル基(例えば、メタンスルホニル、エタンスルホニル等)、炭素数6〜16の置換もしくは無置換のフェニルスルホニル基(例えば、フェニルスルホニル等)が挙げられる。
【0145】
また、L1およびL2で表される−SR'基として好ましくは、R'がアリール基またはヘテロ環基であり、より好ましくはヘテロ環基であり、更に好ましくは5員または6員の含窒素ヘテロ環基であり、最も好ましくは、水溶性基(例えば、スルホ、カルボキシ、ヒドロキシ、アミノ等)が置換した含窒素ヘテロ環基である。
【0146】
一般式(S)中、L1およびL2で表されるヘテロ環化合物としては、置換もしくは無置換の含窒素ヘテロ5員環類(例えば、ピロール類、イミダゾール類、ピラゾール類、1,2,3−トリアゾール類、1,2,4−トリアゾール類、テトラゾール類、オキサゾール類、イソオキサゾール類、イソチアゾール類、オキサジアゾール類、チアジアゾール類、ピロリジン類、ピロリン類、イミダゾリジン類、イミダゾリン類、ピラゾリジン類、ピラゾリン類、ヒダントイン類等)、および該5員環を含有するヘテロ環類(インドール類、イソインドール類、インドリジン類、インダゾール類、ベンゾイミダゾール類、プリン類、ベンゾトリアゾール類、カルバゾール類、テトラアザインデン類、ベンゾチアゾール類、インドリン類等)、置換もしくは無置換の含窒素ヘテロ6員環類(例えば、ピリジン類、ピラジン類、ピリミジン類、ピリダジン類、トリアジン類、チアジアジン類、ピペリジン類、ピペラジン類、モルホリン類等)、および該6員環を含有するヘテロ環類(例えば、キノリン類、イソキノリン類、フタラジン類、ナフチリジン類、キノキサリン類、キナゾリン類、プテリジン類、フェナチリジン類、アクリジン類、フェナントロリン類、フェナジン類等)、置換もしくは無置換のフラン類、置換もしくは無置換のチオフェン類、ベンゾチアゾリウム類等が挙げられる。
【0147】
1およびL2で表されるヘテロ環化合物として好ましくは、不飽和の含窒素ヘテロ5員または6員環類、もしくは、それを含有するヘテロ環類であり、例えば、ピロール類、イミダゾール類、ピラゾール類、1,2,4−トリアゾール類、オキサジアゾール類、チアジアゾール類、イミダゾリン類、インドール類、インドリジン類、インダゾール類、ベンゾイミダゾール類、プリン類、ベンゾトリアゾール類、カルバゾール類、テトラアザインデン類、ベンゾチアゾール類、ピリジン類、ピラジン類、ピリミジン類、ピリダジン類、トリアジン類、キノリン類、イソキノリン類、フタラジン類等が挙げられ、更には、当業界でカブリ防止剤として公知であるヘテロ環化合物(例えば、インダゾール類、ベンゾイミダゾール類、ベンゾトリアゾール類、テトラアザインデン類等)が好ましい。
【0148】
一般式(S)中、L1およびL2で表されるホスフィン化合物としては、炭素数1〜30の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜20のアリール基、ヘテロ環基(例えばピリジル等)、置換もしくは無置換のアミノ基(例えば、ジメチルアミノ等)、および/または、アルキルオキシ基(例えば、メチルオキシ、エチルオキシ等)が置換したホスフィン類を表し、好ましくは、炭素数1〜10のアルキル基、もしくは、炭素数6〜12のアリール基が置換したホスフィン類(例えば、トリフェニルホスフィン、トリエチルホスフィン等)等が挙げられる。
【0149】
更に、上記、L1およびL2で表されるメソイオン化合物、−SR'基、および、ヘテロ環化合物には、ハロゲン化銀と反応して硫化銀を生成することができる不安定硫黄基(例えば、チオウレイド基等)が置換していることが好ましい。
【0150】
また、上記一般式(S)中のL1、L2で表される化合物には、更に可能な限りの置換基を有してもよく、置換基としては例えば、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、脂肪族炭化水素基(例えばメチル、エチル、イソプロピル、n−プロピル、t−ブチル、n−オクチル、シクロペンチル、シクロヘキシル等)、アルケニル基(例えばアリル、2−ブテニル、3−ペンテニル等)、アルキニル基(例えばプロパギル、3−ペンチニル等)、アラルキル基(例えばベンジル、フェネチル等)、アリール基(例えばフェニル、ナフチル、4−メチルフェニル等)、ヘテロ環基(例えばピリジル、フリル、イミダゾリル、ピペリジニル、モルホリル等)、アルキルオキシ基(例えばメトキシ、エトキシ、ブトキシ、2−エチルヘキシルオキシ、エトキシエトキシ、メトキシエトキシ等)、アリールオキシ基(例えばフェノキシ、2−ナフチルオキシ等)、アミノ基(例えば無置換アミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジプロピルアミノ、ジブチルアミノ、エチルアミノ、ジベンジルアミノ、アニリノ等)、アシルアミノ基(例えばアセチルアミノ、ベンゾイルアミノ等)、ウレイド基(例えば無置換ウレイド、N−メチルウレイド、N−フェニルウレイド等)、チオウレイド基(例えば無置換チオウレイド、N−メチルチオウレイド、N−フェニルチオウレイド等)、セレノウレイド基(例えば、無置換セレノウレイド等)、ホスフィンセレニド基(ジフェニルホスフィンセレニド等)、テルロウレイド基(例えば無置換テルロウレイド等)、ウレタン基(例えばメトキシカルボニルアミノ、フェノキシカルボニルアミノ等)、スルホンアミド基(例えばメチルスルホンアミド、フェニルスルホンアミド等)、スルファモイル基(例えば無置換スルファモイル基、N,N−ジメチルスルファモイル、N−フェニルスルファモイル等)、カルバモイル基(例えば無置換カルバモイル、N,N−ジエチルカルバモイル、N−フェニルカルバモイル等)、スルホニル基(例えばメタンスルホニル、p−トルエンスルホニル等)、スルフィニル基(例えばメチルスルフィニル、フェニルスルフィニル等)、アルキルオキシカルボニル基(例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニル等)、アリールオキシカルボニル基(例えばフェノキシカルボニル等)、アシル基(例えばアセチル、ベンゾイル、ホルミル、ピバロイル等)、アシルオキシ基(例えばアセトキシ、ベンゾイルオキシ等)、リン酸アミド基(例えばN,N−ジエチルリン酸アミド等)、アルキルチオ基(例えばメチルチオ、エチルチオ等)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ等)、シアノ基、スルホ基、チオスルホン酸基、スルフィン酸基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ホスホノ基、ニトロ基、スルフィノ基、アンモニオ基(例えばトリメチルアンモニオ等)、ホスホニオ基、ヒドラジノ基、チアゾリノ基、シリルオキシ基(t−ブチルジメチルシリルオキシ、t−ブチルジフェニルシリルオキシ)等が挙げられる。また置換基が二つ以上あるときは同じでも異なっていてもよい。
【0151】
次に一般式(S)中の、Qおよびqについて説明する。
一般式(S)中、Qで表される対アニオンとしては、ハロゲニウムイオン(例えばF-、Cl-、Br-、I-)、テトラフルオロボレートイオン(BF4 -)、ヘキサフルオロホスフェートイオン(PF6 -)、硫酸イオン(SO4 2-)、アリールスルホネートイオン(例えば、p−トルエンスルホネートイオン、ナフタレン−2,5−ジスルホネートイオン等)、カルボキシイオン(例えば酢酸イオン、トリフロロ酢酸イオン、しゅう酸イオン、安息香酸イオン等)等が挙げられ、Qで表される対カチオンとしては、アルカリ金属イオン(例えば、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、ルビジウムイオン、セシウムイオン等)、アルカリ土類金属イオン(例えば、マグネシウムイオン、カルシウムイオン等)、置換もしくは無置換のアンモニウムイオン(例えば、無置換アンモニウムイオン、トリエチルアンモニウム、テトラメチルアンモニウム等)、置換もしくは無置換のピリジニウムイオン(例えば、無置換ピリジニウムイオン、4−フェニルピリジニウムイオン等)等、更に、プロトンが挙げられる。また、qは化合物の電荷を中性にする為のQの数であって、0〜1の値を表し、その値は小数であってもよい。
【0152】
Qで表される対アニオンとして好ましくは、ハロゲニウムイオン(例えばCl-、Br-)、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、硫酸イオンであり、Qで表される対カチオンとして好ましくは、アルカリ金属イオン(例えば、ナトリウムイオン、カリウムイオン、ルビジウムイオン、セシウムイオン等)、置換もしくは無置換のアンモニウムイオン(例えば、無置換アンモニウムイオン、トリエチルアンモニウム、テトラメチルアンモニウム等)、またはプロトンである。
【0153】
以下に、L1またはL2で表される化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。なお、括弧内の数値はlogβ2値を示す。
【0154】
【化34】
Figure 0004022418
【0155】
【化35】
Figure 0004022418
【0156】
一般式(S)で表される化合物は、公知の方法、例えば、インオーガニック・アンド・ニュークリア・ケミストリー・レターズ(INORG. NUCL. Chem. LETTERS VOL.10、641頁、1974年)、トランジションメタル・ケミストリー(Transition Met. Chem. 1,248頁、1976年)、アクタ・クリスタログラフィカ(Acta. Cryst. B32、3321頁、1976年)、特開平8−69075号、特公昭45−8831号、欧州特許915371A1号、特開平6−11788号、同6−501789号、同4−267249号、及び、同9−118685号等を参考にして合成できる。
【0157】
次に、一般式(S)で表される化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0158】
【化36】
Figure 0004022418
【0159】
【化37】
Figure 0004022418
【0160】
【化38】
Figure 0004022418
【0161】
本発明における金増感は、通常、金増感剤を添加し、高温(好ましくは、40℃以上)で乳剤を一定時間攪拌する事により行われる。金増感剤の添加量は、種々の条件により異なるが、目安としてはハロゲン化銀1モル当たり1×10-7モル以上1×10-4モル以下が好ましい。
【0162】
本発明において金増感剤としては、以上の化合物以外に、通常用いられる金化合物(例えば、塩化金酸塩、カリウムクロロオーレート、オーリックトリクロライド、カリウムオーリックチオシアネート、カリウムヨードオーレート、テトラシアノオーリックアシッド、アンモニウムオーロチオシアネート、ピリジルトリクロロゴールド等)を併用することができる。
【0163】
本発明に用いられるハロゲン化銀乳剤は、金増感以外に他の化学増感を併用することができる。併用しうる化学増感法としては、硫黄増感、セレン増感、テルル増感、金以外の貴金属増感、あるいは還元増感等を用いることができる。化学増感に用いられる化合物については、特開昭62−215272号の第18頁右下欄〜第22頁右上欄に記載のものが好ましく用いられる。
【0164】
本発明に用いられるハロゲン化銀乳剤には、感光材料の製造工程、保存中あるいは写真処理中のかぶりを防止する、あるいは写真性能を安定化させる目的で種々の化合物あるいはそれ等の前駆体を添加することができる。これらの化合物の具体例は、特開昭62−215272号公報明細書の第39頁〜第72頁に記載のものが好ましく用いられる。更にEP0447647号に記載された5−アリールアミノ−1,2,3,4−チアトリアゾール化合物(該アリール残基には少なくとも一つの電子吸引性基を持つ)も好ましく用いられる。
【0165】
また、本発明において、ハロゲン化銀乳剤の保存性を高めるため、特開平11−109576号公報に記載のヒドロキサム酸誘導体、特開平11−327094号公報に記載のカルボニル基に隣接して、両端がアミノ基もしくはヒドロキシル基が置換した二重結合を有す環状ケトン類(特に一般式(S1)で表されるもので、段落番号0036〜0071は本明細書に取り込むことができる。)、特開平11−143011号公報に記載のスルホ置換のカテコールやハイドロキノン類(例えば、4,5−ジヒドロキシ−1,3−ベンゼンジスルホン酸、2,5−ジヒドロキシ−1,4−ベンゼンジスルホン酸、3,4−ジヒドロキシベンゼンスルホン酸、2,3−ジヒドロキシベンゼンスルホン酸、2,5−ジヒドロキシベンゼンスルホン酸、3,4,5−トリヒドロキシベンゼンスルホン酸及びこれらの塩など)、米国特許第5,556,741号明細書の一般式(A)で表されるヒドロキシルアミン類(米国特許第5,556,741号の第4欄の第56行〜第11欄の第22行の記載は本発明においても好ましく適用され、本明細書の一部として取り込まれる)、特開平11−102045号公報の一般式(I)〜(III)で表される水溶性還元剤は本発明においても好ましく使用される。
【0166】
また、本発明に用いられるハロゲン化銀乳剤には、所望の光波長域に感光性を示す、いわゆる分光感度を付与する目的で、分光増感色素を含有させることができる。青、緑、赤領域の分光増感に用いられる分光増感色素としては例えば、F. M. Harmer著 Heterocyclic compounds-Cyanine dyes and related compounds (John Wiley & Sons [New York, London]社刊1964年)に記載されているものを挙げることができる。具体的な化合物の例ならびに分光増感法は、前出の特開昭62−215272号公報の第22頁右上欄〜第38頁に記載のものが好ましく用いられる。また、特に塩化銀含有率の高いハロゲン化銀乳剤粒子の赤感光性分光増感色素としては特開平3−123340号公報に記載された分光増感色素が安定性、吸着の強さ、露光の温度依存性等の観点から非常に好ましい。
【0167】
これらの分光増感色素の添加量は場合に応じて広範囲にわたり、ハロゲン化銀1モル当り、0.5×10-6モル〜1.0×10-2モルの範囲が好ましい。更に好ましくは、1.0×10-6モル〜5.0×0-3モルの範囲である。
【0168】
次に、本発明のハロゲン化銀写真感光材料について説明する。
上述したハロゲン化銀乳剤が好ましく用いられるハロゲン化銀カラー写真感光材料(以下、単に「感光材料」という場合がある)は、支持体上に、イエロー色素形成カプラーを含有するハロゲン化銀乳剤層と、マゼンタ色素形成カプラーを含有するハロゲン化銀乳剤層と、シアン色素形成カプラーを含有するハロゲン化銀乳剤層とをそれぞれ少なくとも一層有するハロゲン化銀カラー写真感光材料において、前記ハロゲン化銀乳剤層のうち少なくとも一層が、上述のハロゲン化銀乳剤を含有することを特徴とする。本発明において、前記イエロー色素形成カプラーを含有するハロゲン化銀乳剤層はイエロー発色層として、前記マゼンタ色素形成カプラーを含有するハロゲン化銀乳剤層はマゼンタ発色層として、及び前記シアン色素形成カプラーを含有するハロゲン化銀乳剤層はシアン発色層として機能する。該イエロー発色層、マゼンタ発色層及びシアン発色層に各々含有されるハロゲン化銀乳剤は、相互に異なる波長領域の光(例えば、青色領域、緑色領域及び赤色領域の光)に対して、感光性を有しているのが好ましい。
【0169】
本発明の感光材料は、前記イエロー発色層、マゼンタ発色層及びシアン発色層以外にも、所望により後述する親水性コロイド層、アンチハレーション層、中間層及び着色層を有していてもよい。
【0170】
本発明の感光材料には、従来公知の写真用素材や添加剤を使用できる。
例えば写真用支持体としては、透過型支持体や反射型支持体を用いることができる。透過型支持体としては、セルロースナイトレートフィルムやポリエチレンテレフタレートなどの透明フィルム、更には2,6−ナフタレンジカルボン酸(NDCA)とエチレングリコール(EG)とのポリエステルやNDCAとテレフタル酸とEGとのポリエステル等に磁性層などの情報記録層を設けたものが好ましく用いられる。本発明においては反射支持体(反射型支持体)が好ましく、反射型支持体としては特に複数のポリエチレン層やポリエステル層でラミネートされ、このような耐水性樹脂層(ラミネート層)の少なくとも一層に酸化チタン等の白色顔料を含有する反射支持体が好ましい。
【0171】
本発明においてさらに好ましい反射支持体としては、ハロゲン化銀乳剤層を設ける側の紙基体上に微小空孔を有するポリオレフィン層を有しているものが挙げられる。ポリオレフィン層は多層から成っていてもよく、その場合、好ましくはハロゲン化銀乳剤層側のゼラチン層に隣接するポリオレフィン層は微小空孔を有さず(例えばポリプロピレン、ポリエチレン)、紙基体上に近い側に微小空孔を有するポリオレフィン(例えばポリプロピレン、ポリエチレン)から成るものがより好ましい。紙基体及び写真構成層の間に位置するこれら多層もしくは一層のポリオレフィン層の密度は0.40〜1.0g/mlであることが好ましく、0.50〜0.70g/mlがより好ましい。また、紙基体及び写真構成層の間に位置するこれら多層もしくは一層のポリオレフィン層の厚さは10〜100μmが好ましく、15〜70μmがさらに好ましい。また、ポリオレフィン層と紙基体の厚さの比は0.05〜0.2が好ましく、0.1〜0.15がさらに好ましい。
【0172】
また、上記紙基体の写真構成層とは逆側(裏面)にポリオレフィン層を設けることも、反射支持体の剛性を高める点から好ましく、この場合、裏面のポリオレフィン層は表面が艶消しされたポリエチレン又はポリプロピレンが好ましく、ポリプロピレンがより好ましい。裏面のポリオレフィン層は5〜50μmが好ましく、10〜30μmがより好ましく、さらに密度が0.7〜1.1g/mlであることが好ましい。本発明における反射支持体において、紙基体上に設けるポリオレフィン層に関する好ましい態様については、特開平10−333277号、同10−333278号、同11−52513号、同11−65024号、EP0880065号、及びEP0880066号に記載されている例が挙げられる。
【0173】
更に前記の耐水性樹脂層中には蛍光増白剤を含有するのが好ましい。また、前記蛍光増白剤を分散含有する親水性コロイド層を、別途形成してもよい。前記蛍光増白剤として、好ましくは、ベンゾオキサゾール系、クマリン系、ピラゾリン系を用いることができ、更に好ましくは、ベンゾオキサゾリルナフタレン系及びベンゾオキサゾリルスチルベン系の蛍光増白剤である。使用量は、特に限定されていないが、好ましくは1〜100mg/m2である。耐水性樹脂に混合する場合の混合比は、好ましくは樹脂に対して0.0005〜3質量%であり、更に好ましくは0.001〜0.5質量%である。
【0174】
反射型支持体としては、透過型支持体、又は上記のような反射型支持体上に、白色顔料を含有する親水性コロイド層を塗設したものでもよい。また、反射型支持体は、鏡面反射性又は第2種拡散反射性の金属表面をもつ支持体であってもよい。
【0175】
また、本発明の感光材料に用いられる支持体としては、ディスプレイ用に白色ポリエステル系支持体又は白色顔料を含む層がハロゲン化銀乳剤層を有する側の支持体上に設けられた支持体を用いてもよい。更に鮮鋭性を改良するために、アンチハレーション層を支持体のハロゲン化銀乳剤層塗布側又は裏面に塗設するのが好ましい。特に反射光でも透過光でもディスプレイが観賞できるように、支持体の透過濃度を0.35〜0.8の範囲に設定するのが好ましい。
【0176】
本発明の感光材料には、画像のシャープネス等を向上させる目的で親水性コロイド層に、欧州特許EP0,337,490A2号の第27〜76頁に記載の、処理により脱色可能な染料(なかでもオキソノール系染料)を感光材料の680nmに於ける光学反射濃度が0.70以上になるように添加したり、支持体の耐水性樹脂層中に2〜4価のアルコール類(例えばトリメチロールエタン)等で表面処理された酸化チタンを12質量%以上(より好ましくは14質量%以上)含有させるのが好ましい。
【0177】
本発明の感光材料には、イラジエーションやハレーションを防止したり、セーフライト安全性等を向上させる目的で親水性コロイド層に、欧州特許EP0337490A2号明細書の第27〜76頁に記載の、処理により脱色可能な染料(中でもオキソノール染料、シアニン染料)を添加することが好ましい。さらに、欧州特許EP0819977号明細書に記載の染料も本発明に好ましく添加される。これらの水溶性染料の中には使用量を増やすと色分離やセーフライト安全性を悪化するものもある。色分離を悪化させないで使用できる染料としては、特開平5−127324号、同5−127325号、同5−216185号に記載された水溶性染料が好ましい。
【0178】
本発明においては、水溶性染料の代わり、あるいは水溶性染料と併用しての処理で脱色可能な着色層が用いられる。用いられる処理で脱色可能な着色層は、乳剤層に直かに接してもよく、ゼラチンやハイドロキノンなどの処理混色防止剤を含む中間層を介して接するように配置されていてもよい。この着色層は、着色された色と同種の原色に発色する乳剤層の下層(支持体側)に設置されることが好ましい。各原色毎に対応する着色層を全て個々に設置することも、このうちに一部のみを任意に選んで設置することも可能である。また複数の原色域に対応する着色を行った着色層を設置することも可能である。着色層の光学反射濃度は、露光に使用する波長域(通常のプリンター露光においては400nm〜700nmの可視光領域、走査露光の場合には使用する走査露光光源の波長)において最も光学濃度の高い波長における光学濃度値が0.2以上3.0以下であることが好ましい。さらに好ましくは0.5以上2.5以下、特に0.8以上2.0以下が好ましい。
【0179】
着色層を形成するためには、従来公知の方法が適用できる。例えば、特開平2−282244号3頁右上欄〜8頁に記載された染料や、特開平3−7931号3頁右上欄〜11頁左下欄に記載された染料のように固体微粒子分散体の状態で親水性コロイド層に含有させる方法、アニオン性色素をカチオンポリマーに媒染する方法、色素をハロゲン化銀等の微粒子に吸着させて層中に固定する方法、特開平1−239544号に記載されているようなコロイド銀を使用する方法などである。色素の微粉末を固体状で分散する方法としては、例えば、少なくともpH6以下では実質的に水不溶性であるが、少なくともpH8以上では実質的に水溶性である微粉末染料を含有させる方法が特開平2−308244号の第4〜13頁に記載されている。また、例えば、アニオン性色素をカチオンポリマーに媒染する方法としては、特開平2−84637号の第18〜26頁に記載されている。光吸収剤としてのコロイド銀の調製法については米国特許第2,688,601号、同3,459,563号に示されている。これらの方法のなかで微粉末染料を含有させる方法、コロイド銀を使用する方法などが好ましい。
【0180】
本発明のハロゲン化銀写真感光材料は、カラーネガフィルム、カラーポジフィルム、カラー反転フィルム、カラー反転印画紙、カラー印画紙等に用いられるが、中でもカラー印画紙として用いるのが好ましい。本発明をカラー印画紙に適用する場合は、イエロー発色性ハロゲン化銀乳剤層、マゼンタ発色性ハロゲン化銀乳剤層及びシアン発色性ハロゲン化銀乳剤層をそれぞれ少なくとも1層ずつ有してなることが好ましく、一般には、これらのハロゲン化銀乳剤層は支持体から近い順にイエロー発色性ハロゲン化銀乳剤層、マゼンタ発色性ハロゲン化銀乳剤層、シアン発色性ハロゲン化銀乳剤層である。
【0181】
しかしながら、これとは異なった層構成を取っても構わない。
本発明の感光材料において、イエローカプラーを含有するハロゲン化銀乳剤層は支持体上のいずれの位置に配置されても構わないが、該イエローカプラー含有層にハロゲン化銀平板粒子を含有する場合は、マゼンタカプラー含有ハロゲン化銀乳剤層又はシアンカプラー含有ハロゲン化銀乳剤層の少なくとも一層よりも支持体から離れた位置に塗設されていることが好ましい。また、発色現像促進、脱銀促進、増感色素による残色の低減の観点からは、イエローカプラー含有ハロゲン化銀乳剤層は他のハロゲン化銀乳剤層より、支持体から最も離れた位置に塗設されていることが好ましい。更に、Blix退色の低減の観点からはシアンカプラー含有ハロゲン化銀乳剤層は他のハロゲン化銀乳剤層の中央の層が好ましく、光退色の低減の観点からはシアンカプラー含有ハロゲン化銀乳剤層は最下層が好ましい。また、イエロー、マゼンタ及びシアンのそれぞれの発色性層は2層又は3層からなってもよい。例えば、特開平4−75055号、同9−114035号、同10−246940号、米国特許第5,576,159号等に記載のように、ハロゲン化銀乳剤を含有しないカプラー層をハロゲン化銀乳剤層に隣接して設け、発色層とすることも好ましい。
【0182】
本発明において適用されるハロゲン化銀乳剤やその他の素材(添加剤など)及び写真構成層(層配置など)、並びにこの感光材料を処理するために適用される処理法や処理用添加剤としては、特開昭62−215272号、特開平2−33144号、欧州特許EP0,355,660A2号に記載されているもの、特に欧州特許EP0,355,660A2号に記載されているものが好ましく用いられる。更には、特開平5−34889号、同4−359249号、同4−313753号、同4−270344号、同5−66527号、同4−34548号、同4−145433号、同2−854号、同1−158431号、同2−90145号、同3−194539号、同2−93641号、欧州特許公開第0520457A2号等に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料やその処理方法も好ましい。
【0183】
特に、本発明においては、前記の反射型支持体やハロゲン化銀乳剤、更にはハロゲン化銀粒子中にドープされる異種金属イオン種、ハロゲン化銀乳剤の保存安定剤又はカブリ防止剤、化学増感法(増感剤)、分光増感法(分光増感剤)、シアン、マゼンタ、イエローカプラー及びその乳化分散法、色像保存性改良剤(ステイン防止剤や褪色防止剤)、染料(着色層)、ゼラチン種、感光材料の層構成や感光材料の被膜pHなどについては、下記表1に示す公報の各箇所に記載のものが特に好ましく適用できる。
【0184】
【表1】
Figure 0004022418
【0185】
本発明において用いられるシアン、マゼンタ及びイエローカプラーとしては、その他、特開昭62−215272号の第91頁右上欄4行目〜121頁左上欄6行目、特開平2−33144号の第3頁右上欄14行目〜18頁左上欄末行目と第30頁右上欄6行目〜35頁右下欄11行目やEP0355,660A2号の第4頁15行目〜27行目、5頁30行目〜28頁末行目、45頁29行目〜31行目、47頁23行目〜63頁50行目に記載のカプラーも有用である。
また、本発明は国際公開WO98/33760号の一般式(II)及び(III)、特開平10−221825号の一般式(D)で表される化合物を添加してもよく、好ましい。
【0186】
本発明に使用可能なシアン色素形成カプラー(単に、「シアンカプラー」という場合がある)としては、ピロロトリアゾール系カプラーが好ましく用いられ、特開平5−313324号の一般式(I)又は(II)で表されるカプラー及び特開平6−347960号の一般式(I)で表されるカプラー並びにこれらの公報に記載されている例示カプラーが特に好ましい。また、フェノール系、ナフトール系のシアンカプラーも好ましく、例えば、特開平10−333297号に記載の一般式(ADF)で表されるシアンカプラーが好ましい。上記以外のシアンカプラーとしては、欧州特許EP0488248号明細書及びEP0491197A1号明細書に記載のピロロアゾール型シアンカプラー、米国特許第5,888,716号に記載の2,5−ジアシルアミノフェノールカプラー、米国特許第4,873,183号、同第4,916,051号に記載の6位に電子吸引性基、水素結合基を有するピラゾロアゾール型シアンカプラー、特に、特開平8−171185号、同8−311360号、同8−339060号に記載の6位にカルバモイル基を有するピラゾロアゾール型シアンカプラーも好ましい。
【0187】
また、特開平2−33144号公報に記載のジフェニルイミダゾール系シアンカプラーの他に、欧州特許EP0333185A2号明細書に記載の3−ヒドロキシピリジン系シアンカプラー(なかでも具体例として列挙されたカプラー(42)の4当量カプラーに塩素離脱基をもたせて2当量化したものや、カプラー(6)や(9)が特に好ましい)や特開昭64−32260号公報に記載された環状活性メチレン系シアンカプラー(なかでも具体例として列挙されたカプラー例3、8、34が特に好ましい)、欧州特許EP0456226A1号明細書に記載のピロロピラゾール型シアンカプラー、欧州特許EP0484909号に記載のピロロイミダゾール型シアンカプラーを使用することもできる。
【0188】
尚、これらのシアンカプラーのうち、特開平11−282138号公報に記載の一般式(I)で表されるピロロアゾール系シアンカプラーが特に好ましく、該特許の段落番号0012〜0059の記載は例示シアンカプラー(1)〜(47)を含め、本発明にそのまま適用され、本明細書の一部として好ましく取り込まれる。
【0189】
本発明に用いられるマゼンタ色素形成カプラー(単に、「マゼンタカプラー」という場合がある)としては、前記の表の公知文献に記載されたような5−ピラゾロン系マゼンタカプラーやピラゾロアゾール系マゼンタカプラーが用いられるが、中でも色相や画像安定性、発色性等の点で特開昭61−65245号に記載されたような2級又は3級アルキル基がピラゾロトリアゾール環の2、3又は6位に直結したピラゾロトリアゾールカプラー、特開昭61−65246号に記載されたような分子内にスルホンアミド基を含んだピラゾロアゾールカプラー、特開昭61−147254号に記載されたようなアルコキシフェニルスルホンアミドバラスト基を持つピラゾロアゾールカプラーや欧州特許第226,849A号や同第294,785A号に記載されたような6位にアルコキシ基やアリールオキシ基をもつピラゾロアゾールカプラーの使用が好ましい。特に、マゼンタカプラーとしては特開平8−122984号に記載の一般式(M−I)で表されるピラゾロアゾールカプラーが好ましく、該公報の段落番号0009〜0026はそのまま本発明に適用され、本明細書の一部として取り込まれる。これに加えて、欧州特許第854384号、同第884640号に記載の3位と6位の両方に立体障害基を有するピラゾロアゾールカプラーも好ましく用いられる。
【0190】
また、本発明に用いられる一般式(I)または(II)で表される化合物は単独で用いても併用してもよく、併用してもよいイエロー色素形成カプラー(単に、「イエローカプラー」という場合がある)としては、前記表中に記載の化合物の他に、欧州特許EP0447969A1号明細書に記載のアシル基に3〜5員の環状構造を有するアシルアセトアミド型イエローカプラー、欧州特許EP0482552A1号明細書に記載の環状構造を有するマロンジアニリド型イエローカプラー、欧州公開特許第953870A1号、同第953871A1号、同第953872A1号、同第953873A1号、同第953874A1号、同第953875A1号等に記載のピロール−2又は3−イルもしくはインドール−2又は3−イルカルボニル酢酸アニリド系カプラー、米国特許第5,118,599号明細書に記載されたジオキサン構造を有するアシルアセトアミド型イエローカプラーが好ましく用いられる。その中でも、アシル基が1−アルキルシクロプロパン−1−カルボニル基であるアシルアセトアミド型イエローカプラー、アニリドの一方がインドリン環を構成するマロンジアニリド型イエローカプラーとの併用が特に好ましい。
【0191】
本発明に使用するカプラーは、前出表中記載の高沸点有機溶媒の存在下で(又は不存在下で)ローダブルラテックスポリマー(例えば米国特許第4,203,716号)に含浸させて、又は水不溶性かつ有機溶媒可溶性のポリマーとともに溶かして親水性コロイド水溶液に乳化分散させることが好ましい。好ましく用いることのできる水不溶性かつ有機溶媒可溶性のポリマーは、米国特許第4,857,449号明細書の第7欄〜15欄及び国際公開WO88/00723号明細書の第12頁〜30頁に記載の単独重合体又は共重合体が挙げられる。より好ましくはメタクリレート系あるいはアクリルアミド系ポリマー、特にアクリルアミド系ポリマーの使用が色像安定性等の上で好ましい。
【0192】
本発明においては公知の混色防止剤を用いることができるが、その中でも以下に挙げる公報に記載のものが好ましい。
例えば、特開平5−333501号に記載の高分子量のレドックス化合物、国際公開WO98/33760号、米国特許第4,923,787号等に記載のフェニドンやヒドラジン系化合物、特開平5−249637号、同10−282615号及び独国特許第19629142A1号等に記載のホワイトカプラーを用いることができる。また、特に現像液のpHを上げ、現像の迅速化を行う場合には独国特許第19618786A1号、同第19806846A1号、欧州特許第839623A1号、同第842975A1号及び仏国特許第2760460A1号等に記載のレドックス化合物を用いることも好ましい。
【0193】
本発明においては紫外線吸収剤としてモル吸光係数の高いトリアジン骨核を有する化合物を用いることが好ましく、例えば、以下の公報に記載の化合物を用いることができる。これらは、感光性層又は/及び非感光性に好ましく添加される。例えば、特開昭46−3335号、同55−152776号、特開平5−197074号、同5−232630号、同5−307232号、同6−211813号、同8−53427号、同8−234364号、同8−239368号、同9−31067号、同10−115898号、同10−147577号、同10−182621号、独国特許第19739797A号、欧州特許第711804A号及び特表平8−501291号等に記載されている化合物を使用できる。
【0194】
本発明の感光材料に用いることのできる結合剤又は保護コロイドとしては、ゼラチンを用いることが有利であるが、それ以外の親水性コロイドを単独であるいはゼラチンとともに用いることができる。好ましいゼラチンとしては、鉄、銅、亜鉛、マンガン等の不純物として含有される重金属は、好ましくは5ppm以下、更に好ましくは3ppm以下である。また、感光材料中に含まれるカルシウム量は、好ましくは20mg/m2以下、更に好ましくは10mg/m2以下、最も好ましくは5mg/m2以下である。
【0195】
本発明においては、親水性コロイド層中に繁殖して画像を劣化させる各種の黴や細菌を防ぐために、特開昭63−271247号公報に記載のような防菌・防黴剤を添加するのが好ましい。さらに、感光材料の被膜pHは4.0〜7.0が好ましく、より好ましくは4.0〜6.5である。
【0196】
本発明においては、感光材料の塗布安定性向上、静電気発生防止、帯電量調節等の点から界面活性剤を感光材料に添加することができる。界面活性剤としてはアニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、ベタイン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤があり、例えば特開平5−333492号に記載のものが挙げられる。本発明に用いる界面活性剤としてはフッ素原子含有の界面活性剤が好ましい。特に、フッ素原子含有界面活性剤を好ましく用いることができる。これらのフッ素原子含有界面活性剤は単独で用いても、従来公知の他の界面活性剤と併用しても構わないが、好ましくは従来公知の他の界面活性剤との併用である。これらの界面活性剤の感光材料への添加量は特に限定されるものではないが、一般的には、1×10-5〜1g/m2、好ましくは1×10-4〜1×10-1g/m2、更に好ましくは1×10-3〜1×10-2g/m2である。
【0197】
本発明の感光材料は、画像情報に応じて光を照射される露光工程と、前記光照射された感光材料を現像する現像工程とにより、画像を形成することができる。本発明の感光材料は、通常のネガプリンターを用いたプリントシステムに使用される以外に、陰極線(CRT)を用いた走査露光方式にも適している。陰極線管露光装置は、レーザーを用いた装置に比べて、簡便でかつコンパクトであり、低コストになる。また、光軸や色の調整も容易である。画像露光に用いる陰極線管には、必要に応じてスペクトル領域に発光を示す各種発光体が用いられる。例えば赤色発光体、緑色発光体、青色発光体のいずれか1種、あるいは2種以上が混合されて用いられる。スペクトル領域は、上記の赤、緑、青に限定されず、黄色、橙色、紫色或いは赤外領域に発光する蛍光体も用いられる。特に、これらの発光体を混合して白色に発光する陰極線管がしばしば用いられる。
【0198】
感光材料が異なる分光感度分布を有する複数の感光性層を持ち、陰極性管も複数のスペクトル領域の発光を示す蛍光体を有する場合には、複数の色を一度に露光、即ち陰極線管に複数の色の画像信号を入力して管面から発光させてもよい。各色ごとの画像信号を順次入力して各色の発光を順次行わせ、その色以外の色をカットするフィルムを通して露光する方法(面順次露光)を採ってもよく、一般には、面順次露光の方が、高解像度の陰極線管を用いることができるため、高画質化のためには好ましい。
【0199】
本発明の感光材料は、ガスレーザー、発光ダイオード、半導体レーザー、半導体レーザーあるいは半導体レーザーを励起光源に用いた固体レーザーと非線形光学結晶を組合わせた第二高調波発光光源(SHG)等の単色高密度光を用いたデジタル走査露光方式が好ましく使用される。システムをコンパクトで、安価なものにするために半導体レーザー、半導体レーザーあるいは固体レーザーと非線形光学結晶を組合わせた第二高調波発生光源(SHG)を使用することが好ましい。特にコンパクトで、安価、更に寿命が長く安定性が高い装置を設計するためには半導体レーザーの使用が好ましく、露光光源の少なくとも一つは半導体レーザーを使用することが好ましい。
【0200】
このような走査露光光源を使用する場合、本発明の感光材料の分光感度極大波長は、使用する走査露光用光源の波長により任意に設定することができる。半導体レーザーを励起光源に用いた固体レーザーあるいは半導体レーザーと非線形光学結晶を組合わせて得られるSHG光源では、レーザーの発振波長を半分にできるので、青色光、緑色光が得られる。従って、感光材料の分光感度極大は通常の青、緑、赤の3つの波長領域に持たせることが可能である。このような走査露光における露光時間は、画素密度を400dpiとした場合の画素サイズを露光する時間として定義すると、好ましい露光時間としては10-4秒以下、更に好ましくは10-6秒以下である。
【0201】
本発明のハロゲン化銀カラー写真感光材料は、以下の公知資料に記載の露光、現像システムと組み合わせることで好ましく用いることができる。前記現像システムとしては、特開平10−333253号に記載の自動プリント並びに現像システム、特開2000−10206に記載の感光材料搬送装置、特開平11−215312号に記載の画像読取装置を含む記録システム、特開平11−88619号並びに特開平10−202950号に記載のカラー画像記録方式からなる露光システム、特開平10−210206号に記載の遠隔診断方式を含むデジタルフォトプリントシステム、及び特願平10−159187号に記載の画像記録装置を含むフォトプリントシステムが挙げられる。
【0202】
本発明に適用できる好ましい走査露光方式については、前記の表に掲示した公報に詳しく記載されている。
【0203】
本発明の感光材料をプリンター露光する際、米国特許第4,880,726号に記載のバンドストップフィルターを用いることが好ましい。これによって光混色が取り除かれ、色再現性が著しく向上する。
本発明においては、欧州特許EP0789270A1号や同EP0789480A1号に記載のように、画像情報を付与する前に、予め、黄色のマイクロドットパターンを前露光し、複写規制を施しても構わない。
【0204】
本発明の感光材料の処理には、特開平2−207250号の第26頁右下欄1行目〜34頁右上欄9行目、及び特開平4−97355号の第5頁左上欄17行目〜18頁右下欄20行目に記載の処理素材や処理方法が好ましく適用できる。また、この現像液に使用する保恒剤としては、前記の表に掲示した公報に記載の化合物が好ましく用いられる。
【0205】
本発明は迅速処理適性を有する感光材料にも好ましく適用される。迅速処理を行う場合には、発色現像時間は好ましくは60秒以下、更に好ましくは50秒以下6秒以上、より好ましくは30秒以下6秒以上である。同様に、漂白定着時間は好ましくは60秒以下、更に好ましくは50秒以下6秒以上、より好ましくは30秒以下6秒以上である。また、水洗又は安定化時間は、好ましくは150秒以下、更に好ましくは130秒以下6秒以上である。
尚、発色現像時間とは、感光材料が発色現像液中に入ってから次の処理工程の漂白定着液に入るまでの時間をいう。例えば、自動現像機などで処理される場合には、感光材料が発色現像液中に浸漬されている時間(いわゆる液中時間)と、感光材料が発色現像液を離れ、次の処理工程の漂白定着浴に向けて空気中を搬送されている時間(いわゆる空中時間)との両者の合計を発色現像時間という。同様に、漂白定着時間とは、感光材料が漂白定着液中に入ってから次の水洗又は安定浴に入るまでの時間をいう。また、水洗又は安定化時間とは、感光材料が水洗又は安定化液中に入ってから乾燥工程に向けて液中にある時間(いわゆる液中時間)をいう。
【0206】
本発明の感光材料を露光後、現像する方法としては、従来のアルカリ剤と現像主薬を含む現像液で現像する方法、現像主薬を感光材料に内蔵し、現像主薬を含まないアルカリ液などのアクチベーター液で現像する方法などの湿式方式のほか、処理液を用いない熱現像方式などを用いることができる。特に、アクチベーター方法は、現像主薬を処理液に含まないため、処理液の管理や取扱いが容易であり、また廃液処理時の負荷が少なく環境保全上の点からも好ましい方法である。アクチベーター方法において、感光材料中に内蔵される現像主薬又はその前駆体としては、例えば、特開平8−234388号、同9−152686号、同9−152693号、同9−211814号、同9−160193号に記載されたヒドラジン型化合物が好ましい。
【0207】
また、感光材料の塗布銀量を低減し、過酸化水素を用いた画像増幅処理(補力処理)する現像方法も好ましく用いられる。特に、この方法をアクチベーター方法に用いることは好ましい。具体的には、特開平8−297354号、同9−152695号に記載された過酸化水素を含むアクチベーター液を用いた画像形成方法が好ましく用いられる。前記アクチベーター方法において、アクチベーター液で処理後、通常脱銀処理されるが、低銀量の感光材料を用いた画像増幅処理方法では、脱銀処理を省略し、水洗又は安定化処理といった簡易な方法を行うことができる。また、感光材料から画像情報をスキャナー等で読み取る方式では、撮影用感光材料などの様に高銀量の感光材料を用いた場合でも、脱銀処理を不要とする処理形態を採用することができる。
【0208】
本発明で用いられるアクチベーター液、脱銀液(漂白/定着液)、水洗及び安定化液の処理素材や処理方法は公知のものを用いることができる。好ましくは、リサーチ・ディスクロージャーItem 36544(1994年9月)第536頁〜第541頁、特開平8−234388号に記載されたものを用いることができる。
【0209】
【実施例】
以下に、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0210】
実施例1
(乳剤B−1の調製)
石灰処理ゼラチン3%水溶液1000mlをpH 5.5、pCl 1.7に調整し、硝酸銀を2.12モル含む水溶液と塩化ナトリウムを2.2モル含む水溶液を激しく攪拌しながら55℃で同時に添加混合した。硝酸銀の添加が80%の時点から90%の時点にかけて、K4[Ru(CN)6]水溶液を出来上がりのハロゲン化銀1モルあたりRu量が3×10-5モルになる量を添加した。40℃で脱塩処理を施した後、石灰処理ゼラチン168gを加え、pH 5.5、pCl 1.8に調整した。得られた粒子は球相当径0.55μm、変動係数11%の立方体塩化銀乳剤であった。
この乳剤を40℃で溶解し、チオスルフォン酸ナトリウムをハロゲン化銀1モルあたり2×10-5モル添加し、硫黄増感剤としてチオ硫酸ナトリウム5水和物と金増感剤として(S−2)を用い60℃にて最適になるように熟成した。40℃に降温後、増感色素Aをハロゲン化銀1モルあたり2.7×10-4モル、増感色素Bをハロゲン化銀1モルあたり1.4×10-4モル、1−フェニル−5−メルカプトテトラゾールをハロゲン化銀1モルあたり2.7×10-4モル、1−(5−メチルウレイドフェニル)−5−メルカプトテトラゾールをハロゲン化銀1モルあたり2.7×10-4モル、臭化カリウムをハロゲン化銀1モルあたり2.7×10-3モル添加した。このようにして得られた乳剤を、乳剤B−1とした。
【0211】
【化39】
Figure 0004022418
【0212】
(乳剤B−2の調製)
硝酸銀の添加が80%の時点から90%の時点にかけて臭化カリウムを、出来上がりのハロゲン化銀1モルあたり3モル%になるように添加したこと以外は乳剤B−1と同様に乳剤を調製し、これを乳剤B−2とした。
【0213】
(乳剤B−3の調製)
硝酸銀の添加が90%終了した時点で沃化カリウム水溶液を、出来上がりのハロゲン化銀1モルあたりI量が0.3モル%になるように添加したこと以外は乳剤B−1と同様に乳剤を調製し、これを乳剤B−3とした。
【0214】
(乳剤B−4の調製)
硝酸銀の添加が80%の時点から90%の時点にかけて臭化カリウムを、出来上がりのハロゲン化銀1モルあたり3モル%になるように添加し、更に硝酸銀の添加が90%終了した時点で沃化カリウム水溶液を、出来上がりのハロゲン化銀1モルあたりI量が0.3モル%になるように添加したこと以外は乳剤B−1と同様に乳剤を調製し、これを乳剤B−4とした。
【0215】
(乳剤B−5の調製)
硝酸銀の添加が92%の時点から98%の時点にかけて、K2[Ir(5−methylthiazole)Cl5]水溶液を出来上がりのハロゲン化銀1モルあたりIr量が1.0×10-6モルになる量を添加したこと以外は乳剤B−1と同様に乳剤を調製し、これを乳剤B−5とした。
【0216】
(乳剤B−6の調製)
硝酸銀の添加が82%の時点から88%の時点にかけて、K2[IrCl6]水溶液を出来上がりのハロゲン化銀1モルあたりIr量が5.3×10-8モルになる量を添加したことを加えた以外は乳剤B−4と同様に乳剤を調製し、これを乳剤B−6とした。
【0217】
(乳剤B−7の調製)
硝酸銀の添加が92%の時点から98%の時点にかけて、K2[Ir(5−methylthiazole)Cl5]水溶液を出来上がりのハロゲン化銀1モルあたりIr量が1.0×10-6モルになる量を添加したことを加えた以外は乳剤B−4と同様に乳剤を調製し、これを乳剤B−7とした。
【0218】
(乳剤B−8の調製)
硝酸銀の添加が82%の時点から88%の時点にかけて、K2[IrCl6]水溶液を出来上がりのハロゲン化銀1モルあたりIr量が4.3×10-8モルになる量を添加し、更に硝酸銀の添加が92%の時点から98%の時点にかけて、K2[Ir(5−methylthiazole)Cl5]水溶液を出来上がりのハロゲン化銀1モルあたりIr量が8.0×10-7モルになる量、およびK2[Ir(H2O)Cl5]水溶液を出来上がりのハロゲン化銀1モルあたりIr量が1.6×10-6モルになる量を添加したことを加えた以外は乳剤B−4と同様に乳剤を調製し、これを乳剤B−8とした。
【0219】
(乳剤G−1の調製)
石灰処理ゼラチン3%水溶液1000mlをpH 5.5、pCl 1.7に調整し、硝酸銀を2.12モル含む水溶液と塩化ナトリウムを2.2モル含む水溶液を激しく攪拌しながら45℃で同時に添加混合した。硝酸銀の添加が80%の時点から100%の時点にかけて、臭化カリウムを出来上がりのハロゲン化銀1モルあたり4.3モル%になる量を激しく混合しながら添加した。硝酸銀の添加が80%の時点から90%の時点にかけて、K4[Ru(CN)6]水溶液を出来上がりのハロゲン化銀1モルあたりRu量が3×10-5モルになる量を添加した。硝酸銀の添加が83%の時点から88%の時点にかけて、K2[IrCl6]水溶液を出来上がりのハロゲン化銀1モルあたりIr量が5×10-8モルになる量を添加した。更に硝酸銀の添加が90%終了した時点で、沃化カリウム水溶液を出来上がりのハロゲン化銀1モルあたりI量が0.15モル%になる量を激しく混合しながら添加した。硝酸銀の添加が92%の時点から95%の時点にかけて、K2[Ir(5−methylthiazole)Cl5]水溶液を出来上がりのハロゲン化銀1モルあたりIr量5×10-7モルになる量を添加した。更に、硝酸銀の添加が95%の時点から98%の時点にかけて、K2[Ir(H2O)Cl5]水溶液を出来上がりのハロゲン化銀1モルあたりIr量5×10-7モルになる量を添加した。40℃で脱塩処理を施した後、石灰処理ゼラチン168gを加え、pH 5.5、pCl 1.8に調整した。得られた粒子は球相当径0.35μm、変動係数10%の立方体塩化銀乳剤であった。
この乳剤を40℃で溶解し、チオスルフォン酸ナトリウムをハロゲン化銀1モルあたり2×10-5モル添加し、硫黄増感剤としてチオ硫酸ナトリウム5水和物と金増感剤として(S−2)を用い60℃にて最適になるように熟成した。40℃に降温後、増感色素Dをハロゲン化銀1モルあたり6×10-4モル、1−フェニル−5−メルカプトテトラゾールをハロゲン化銀1モルあたり2×10-4モル、1−(5−メチルウレイドフェニル)−5−メルカプトテトラゾールをハロゲン化銀1モルあたり8×10-4モル、臭化カリウムをハロゲン化銀1モルあたり7×10-3モル添加した。このようにして得られた乳剤を、乳剤G−1とした。
【0220】
【化40】
Figure 0004022418
【0221】
(乳剤R−1の調製)
石灰処理ゼラチン3%水溶液1000mlをpH 5.5、pCl 1.7に調整し、硝酸銀を2.12モル含む水溶液と塩化ナトリウムを2.2モル含む水溶液を激しく攪拌しながら45℃で同時に添加混合した。硝酸銀の添加が80%の時点から100%の時点にかけて、臭化カリウムを出来上がりのハロゲン化銀1モルあたり4.3モル%になる量を激しく混合しながら添加した。硝酸銀の添加が80%の時点から90%の時点にかけて、K4[Ru(CN)6]水溶液を出来上がりのハロゲン化銀1モルあたりRu量が3×10-5モルになる量を添加した。硝酸銀の添加が83%の時点から88%の時点にかけて、K2[IrCl6]水溶液を出来上がりのハロゲン化銀1モルあたりIr量が5×10-8モルになる量を添加した。硝酸銀の添加が90%終了した時点で、沃化カリウム水溶液を出来上がりのハロゲン化銀1モルあたりI量が0.1モル%になる量を激しく混合しながら添加した。硝酸銀の添加が92%の時点から95%の時点にかけて、K2[Ir(5−methylthiazole)Cl5]水溶液を出来上がりのハロゲン化銀1モルあたりIr量5×10-7モルになる量を添加した。更に、硝酸銀の添加が95%の時点から98%の時点にかけて、K2[Ir(H2O)Cl5]水溶液を出来上がりのハロゲン化銀1モルあたりIr量5×10-7モルになる量を添加した。40℃で脱塩処理を施した後、石灰処理ゼラチン168gを加え、pH 5.5、pCl 1.8に調整した。得られた粒子は球相当径0.35μm、変動係数10%の立方体沃臭塩化銀乳剤であった。
この乳剤を40℃で溶解し、チオスルフォン酸ナトリウムをハロゲン化銀1モルあたり2×10-5モル添加し、硫黄増感剤としてチオ硫酸ナトリウム5水和物と金増感剤として(S−2)を用い60℃にて最適になるように熟成した。40℃に降温後、増感色素Hをハロゲン化銀1モルあたり2×10-4モル、1−フェニル−5−メルカプトテトラゾールをハロゲン化銀1モルあたり2×10-4モル、1−(5−メチルウレイドフェニル)−5−メルカプトテトラゾールをハロゲン化銀1モルあたり8×10-4モル、化合物Iをハロゲン化銀1モルあたり1×10-3モル、臭化カリウムをハロゲン化銀1モルあたり7×10-3モル添加した。このようにして得られた乳剤を、乳剤R−1とした。
【0222】
【化41】
Figure 0004022418
【0223】
【化42】
Figure 0004022418
【0224】
紙の両面をポリエチレン樹脂で被覆してなる支持体の表面に、コロナ放電処理を施した後、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを含むゼラチン下塗層を設け、さらに第一層〜第七層の写真構成層を順次塗設して、以下に示す層構成のハロゲン化銀カラー写真感光材料の試料を作製した。各写真構成層用の塗布液は、以下のようにして調製した。
【0225】
第一層塗布液調製
イエローカプラー(ExY)57g、色像安定剤(Cpd−1)7g、色像安定剤(Cpd−2)4g、色像安定剤(Cpd−3)7g、色像安定剤(Cpd−8)2gを溶媒(Solv−1)21g及び酢酸エチル80mlに溶解し、この液を4gのドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを含む23.5質量%ゼラチン水溶液220g中に高速攪拌乳化機(ディゾルバー)で乳化分散し、水を加えて900gの乳化分散物Aを調製した。
一方、前記乳化分散物Aと乳剤B−1を混合溶解し、後記組成となるように第一層塗布液を調製した。乳剤塗布量は、銀量換算塗布量を示す。
【0226】
第二層〜第七層用の塗布液も第一層塗布液と同様の方法で調製した。各層のゼラチン硬化剤としては、1−オキシ−3,5−ジクロロ−s−トリアジンナトリウム塩(H−1)、(H−2)、(H−3)を用いた。また、各層に(Ab−1)、(Ab−2)、(Ab−3)、及び(Ab−4)をそれぞれ全量が15.0mg/m2、60.0mg/m2、5.0mg/m2及び10.0mg/m2となるように添加した。
【0227】
【化43】
Figure 0004022418
【0228】
【化44】
Figure 0004022418
【0229】
また、緑感性乳剤層および赤感性乳剤層に対し、1−フェニル−5−メルカプトテトラゾールを、それぞれハロゲン化銀1モル当り1.0×10-3モルおよび5.9×10-4モル添加した。さらに、第二層、第四層および第六層にも1−フェニル−5−メルカプトテトラゾールを、それぞれ0.2mg/m2、0.2mg/m2および0.6mg/m2となるように添加した。
赤感性乳剤層にメタクリル酸とアクリル酸ブチルの共重合体ラテックス(質量比1:1、平均分子量200000〜400000)を0.05g/m2添加した。また、第二層、第四層および第六層にカテコール−3,5−ジスルホン酸二ナトリウムをそれぞれ6mg/m2、6mg/m2、18mg/m2となるように添加した。また、イラジエーション防止のために、以下の染料(カッコ内は塗布量を表す)を添加した。
【0230】
【化45】
Figure 0004022418
【0231】
(層構成)
以下に、各層の構成を示す。数字は塗布量(g/m2)を表す。ハロゲン化銀乳剤は、銀換算塗布量を表す。
支持体
ポリエチレン樹脂ラミネート紙
[第一層側のポリエチレン樹脂に白色顔料(TiO2;含有率16質量%、ZnO;含有率4質量%)と蛍光増白剤(4,4'−ビス(5−メチルベンゾオキサゾリル)スチルベン。含有率0.03質量%)、青味染料(群青)を含む]
第一層(青感性乳剤層)
乳剤B−1 0.24
ゼラチン 1.25
イエローカプラー(ExY) 0.57
色像安定剤(Cpd−1) 0.07
色像安定剤(Cpd−2) 0.04
色像安定剤(Cpd−3) 0.07
色像安定剤(Cpd−8) 0.02
溶媒(Solv−1) 0.21
【0232】
第二層(混色防止層)
ゼラチン 0.99
混色防止剤(Cpd−4) 0.09
色像安定剤(Cpd−5) 0.018
色像安定剤(Cpd−6) 0.13
色像安定剤(Cpd−7) 0.01
溶媒(Solv−1) 0.06
溶媒(Solv−2) 0.22
【0233】
第三層(緑感性乳剤層)
乳剤G−1 0.15
ゼラチン 1.36
マゼンタカプラー(ExM) 0.15
紫外線吸収剤(UV−A) 0.14
色像安定剤(Cpd−2) 0.02
色像安定剤(Cpd−4) 0.002
色像安定剤(Cpd−6) 0.09
色像安定剤(Cpd−8) 0.02
色像安定剤(Cpd−9) 0.03
色像安定剤(Cpd−10) 0.01
色像安定剤(Cpd−11) 0.0001
溶媒(Solv−3) 0.11
溶媒(Solv−4) 0.22
溶媒(Solv−5) 0.20
【0234】
第四層(混色防止層)
ゼラチン 0.71
混色防止剤(Cpd−4) 0.06
色像安定剤(Cpd−5) 0.013
色像安定剤(Cpd−6) 0.10
色像安定剤(Cpd−7) 0.007
溶媒(Solv−1) 0.04
溶媒(Solv−2) 0.16
【0235】
第五層(赤感性乳剤層)
乳剤R−1 0.13
ゼラチン 1.11
シアンカプラー(ExC−2) 0.13
シアンカプラー(ExC−3) 0.03
色像安定剤(Cpd−1) 0.05
色像安定剤(Cpd−6) 0.06
色像安定剤(Cpd−7) 0.02
色像安定剤(Cpd−9) 0.04
色像安定剤(Cpd−10) 0.01
色像安定剤(Cpd−14) 0.01
色像安定剤(Cpd−15) 0.12
色像安定剤(Cpd−16) 0.03
色像安定剤(Cpd−17) 0.09
色像安定剤(Cpd−18) 0.07
溶媒(Solv−5) 0.15
溶媒(Solv−8) 0.05
【0236】
第六層(紫外線吸収層)
ゼラチン 0.46
紫外線吸収剤(UV−B) 0.45
化合物(S1−4) 0.0015
溶媒(Solv−7) 0.25
第七層(保護層)
ゼラチン 1.00
ポリビニルアルコールのアクリル変性共重合体
(変性度17%) 0.04
流動パラフィン 0.02
界面活性剤(Cpd−13) 0.01
【0237】
【化46】
Figure 0004022418
【0238】
【化47】
Figure 0004022418
【0239】
【化48】
Figure 0004022418
【0240】
【化49】
Figure 0004022418
【0241】
【化50】
Figure 0004022418
【0242】
【化51】
Figure 0004022418
【0243】
【化52】
Figure 0004022418
【0244】
【化53】
Figure 0004022418
【0245】
【化54】
Figure 0004022418
【0246】
【化55】
Figure 0004022418
【0247】
以上のようにして得られた試料を、試料101とした。また、青感性乳剤層の乳剤をそれぞれ下記表2のように替えた以外は試料101と同様に作製し、試料102〜108とした。
【0248】
【表2】
Figure 0004022418
【0249】
第一層(青感性乳剤層)の組成を以下のように変更した以外は試料101と同様に作製し、試料111とした。
第一層(青感性乳剤層)
乳剤B−1 0.15
ゼラチン 1.25
イエローカプラー(例示カプラー(3)) 0.30
色像安定剤(Cpd−2) 0.06
色像安定剤(Cpd−3) 0.07
色像安定剤(Cpd−20) 0.11
溶媒(Solv−9) 0.36
【0250】
【化56】
Figure 0004022418
【0251】
青感性乳剤層の乳剤をそれぞれ上記表2のように替えた以外は試料111と同様に作製し、試料112〜118とした。
第一層(青感性乳剤層)のイエローカプラーを例示カプラー(62)に等モルになるように変更した以外は試料111と同様に作製し、試料121とした。また、青感性乳剤層の乳剤をB−8に替えた以外は試料121と同様に作製し、試料128とした。
第一層(青感性乳剤層)のイエローカプラーを例示カプラー(65)に等モルになるように変更した以外は試料111と同様に作製し、試料131とした。また、青感性乳剤層の乳剤をB−8に替えた以外は試料131と同様に作製し、試料138とした。
【0252】
これらの試料の写真特性を調べるために以下のような実験を行った。
各塗布試料に対して高照度露光用感光計(山下電装(株)製HIE型)を用いて、グレー発色のセンシトメトリー用の10-6秒高照度階調露光を与えた。
露光後は、以下に示す発色現像処理Aを行った。
【0253】
以下に処理工程を示す。
[処理A]
上記感光材料の試料を127mm巾のロール状に加工し、富士写真フイルム(株)製ミニラボプリンタープロセッサー PP1258AR(商品名)を用いて像様露光後、下記処理工程にてカラー現像タンク容量の2倍補充するまで、連続処理(ランニングテスト)を行った。このランニング液を用いた処理を処理Aとした。
処理工程 温 度 時 間 補充量*
カラー現像 38.5℃ 45秒 45ミリリットル
漂白定着 38.0℃ 45秒 35ミリリットル
リンス(1) 38.0℃ 20秒 −
リンス(2) 38.0℃ 20秒 −
リンス(3)** 38.0℃ 20秒 −
リンス(4)** 38.0℃ 30秒 121ミリリットル
*感光材料1m2当たりの補充量
**富士写真フイルム社製 リンスクリーニングシステムRC50D(商品名)をリンス(3)に装置し、リンス(3)からリンス液を取り出し、ポンプにより逆浸透膜モジュール(RC50D)へ送る。同槽で得られた透過水はリンス(4)に供給し、濃縮水はリンス(3)に戻す。逆浸透モジュールへの透過水量は50〜300ミリリットル/分を維持するようにポンプ圧を調整し、1日10時間温調循環させた。
(リンスは(1)から(4)へのタンク向流方式とした。)
【0254】
各処理液の組成は以下の通りである。
Figure 0004022418
【0255】
Figure 0004022418
【0256】
Figure 0004022418
【0257】
処理後の各試料のイエロー発色濃度を測定し、10-6秒高照度露光の特性曲線を得た。感度は、最低発色濃度より0.7高い発色濃度を与える露光量の逆数の真数で表し、試料101の感度を100とした相対値で表した。値が大きいほど高感度で好ましい。感度変化は、処理工程のカラー現像時間を30秒とした場合の最低発色濃度より0.7高い発色濃度を与える露光量と、カラー現像時間を60秒とした場合の最低発色濃度より0.7高い発色濃度を与える露光量の差を対数で表し、値が小さい程安定な写真性能が得られて好ましい。階調変化は、処理工程のカラー現像時間を30秒とした場合の濃度1.0と濃度2.0の点を結ぶ直線の傾きと、カラー現像時間を60秒とした場合の濃度1.0と濃度2.0の点を結ぶ直線の傾きの差を表し、やはり値が小さい程安定な写真性能が得られて好ましい。これらの結果を上記表2に示した。
【0258】
上記表2の結果から明らかなように、本発明の試料112〜118、128および138はいずれも高感度であることがわかった。特に、臭化銀含有率が0.1モル%以上7モル%以下で、かつ沃化銀含有率が0.02モル%以上1モル%以下であり、さらにIrを中心金属とする6配位錯体を含む青感光性ハロゲン化銀乳剤を含む試料116〜118、128および138はいずれも、カラー現像時間の変化による感度、階調の変化が少なく安定な写真性能が得られることがわかった。
【0259】
実施例2
実施例1の各試料のレーザー走査露光による写真特性を調べるために以下のような実験を行った。
レーザー光源としては、波長約440nmの青色半導体レーザー(2001年3月 第48回応用物理学関係連合講演会で日亜化学発表)、半導体レーザー(発振波長 約1060nm)を導波路状の反転ドメイン構造を有するLiNbO3のSHG結晶により波長変換して取り出した約530nmの緑色レーザーおよび波長約650nmの赤色半導体レーザー(日立タイプNo.HL6501MG)を用いた。3色のそれぞれのレーザー光はポリゴンミラーにより走査方向に対して垂直方向に移動し、試料上に、順次走査露光できるようにした。半導体レーザーの温度による光量変動は、ペルチェ素子を利用して温度が一定に保たれることで抑えられている。実効的なビーム径は、80μmで、走査ピッチは42.3μm(600dpi)であり、1画素あたりの平均露光時間は、1.7×10-7秒であった。この露光方式により、グレー発色のセンシトメトリー用の階調露光を与えた。
【0260】
露光された各試料に対し、発色現像処理は以下に示す現像処理に従い、超迅速処理を行った。
【0261】
[処理]
上記感光材料の試料を127mm幅のロール状に加工し、処理時間、処理温度を変えられるように富士写真フイルム(株)製ミニラボプリンタープロセッサーPP350(商品名)を改造した実験処理装置を用いて感光材料試料に平均濃度のネガティブフイルムから像様露光を行い、下記処理工程にて使用した発色現像補充液の容量が発色現像タンク容量の0.5倍となるまで連続処理(ランニングテスト)を行った。
【0262】
処理工程 温度 時間 補充量*
発色現像 45.0℃ 20秒 45mL
漂白定着 40.0℃ 20秒 35mL
リンス(1) 40.0℃ 10秒 −
リンス(2) 40.0℃ 10秒 −
リンス(3)** 40.0℃ 10秒 −
リンス(4) 38.0℃ 10秒 121mL
乾燥 80.0℃ 20秒
(注)*感光材料1m2あたりの補充量
**富士写真フイルム(株)製リンスクリーニングシステムRC50D(商品名)をリンス(3)に装着し、リンス(3)からリンス液を取り出してポンプにより逆浸透モジュール(RC50D)へ送る。同槽で送られた透過水はリンスに供給し、濃縮液はリンス(3)に戻す。逆浸透モジュールへの透過水量は50〜300mL/分を維持するようにポンプ圧を調整し、1日10時間温調循環させた。リンスは(1)から(4)への4タンク向流方式とした。
【0263】
各処理液の組成は以下の通りである。
Figure 0004022418
【0264】
Figure 0004022418
【0265】
Figure 0004022418
【0266】
【化57】
Figure 0004022418
【0267】
処理後の各試料のイエロー発色濃度を測定し、レーザー露光と超迅速処理の特性曲線を得た。感度は、最低発色濃度より0.7高い発色濃度を与える露光量の逆数の真数で表し、試料101の感度を100とした相対値で表した。値が大きいほど高感度で好ましい。感度変化は、処理工程のカラー現像時間を15秒とした場合の最低発色濃度より0.7高い発色濃度を与える露光量と、カラー現像時間を25秒とした場合の最低発色濃度より0.7高い発色濃度を与える露光量の差を対数で表し、値が小さい程安定な写真性能が得られて好ましい。階調変化は、処理工程のカラー現像時間を15秒とした場合の濃度1.0と濃度2.0の点を結ぶ直線の傾きと、カラー現像時間を25秒とした場合の濃度1.0と濃度2.0の点を結ぶ直線の傾きの差を表し、やはり値が小さい程安定な写真性能が得られて好ましい。これらの結果を表3に示した。
【0268】
【表3】
Figure 0004022418
【0269】
表3の結果から明らかなように、本発明の試料115、118、128および138は、いずれもレーザー露光と超迅速処理の場合にも高感度であることがわかった。特に、臭化銀含有率が0.1モル%以上7モル%以下で、かつ沃化銀含有率が0.02モル%以上1モル%以下であり、さらにIrを中心金属とする6配位錯体を含む青感光性ハロゲン化銀乳剤を含む試料118、128および138はいずれも、カラー現像時間の変化による感度、階調の変化が少なく安定な写真性能が得られることがわかった。
【0270】
【発明の効果】
本発明によれば、高感度かつ超迅速処理に適し、超迅速処理を行なった場合にも常に安定した写真性能が得られるハロゲン化銀カラー写真感光材料を低コストで得ることができる。特に、本発明のハロゲン化銀カラー写真感光材料はカラー印画紙を用いたカラープリントに好適である。

Claims (12)

  1. 支持体上にイエロー発色青感光性ハロゲン化銀乳剤層、マゼンタ発色緑感光性ハロゲン化銀乳剤層、シアン発色赤感光性ハロゲン化銀乳剤層の少なくとも一層ずつを有するハロゲン化銀カラー写真感光材料において、該イエロー発色青感光性ハロゲン化銀乳剤層中に下記一般式(I)で表されるイエロー色素形成カプラーおよび塩化銀含有率が90モル%以上で臭化銀含有率が0.1モル%以上7モル%以下のハロゲン化銀粒子からなる青感光性ハロゲン化銀乳剤を含み、該青感光性ハロゲン化銀乳剤のハロゲン化銀粒子が層状に形成された臭化銀含有相を有するハロゲン化銀乳剤であることを特徴とするハロゲン化銀カラー写真感光材料。
    Figure 0004022418
    式中、Qは−C(−R11)=C(−R12)−SO −で表される基(R11、R12は互いに結合して−C=C−とともに5〜7員環を形成する基、もしくはそれぞれ独立に水素原子または置換基)を表す。R1は置換基を表す。R2は置換基を表す。mは0以上5以下の整数を表す。mが2以上のとき複数のR2はそれぞれ同じでも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。Xは水素原子または現像主薬酸化体とのカップリング反応により離脱可能な基を表す。
  2. 支持体上にイエロー発色青感光性ハロゲン化銀乳剤層、マゼンタ発色緑感光性ハロゲン化銀乳剤層、シアン発色赤感光性ハロゲン化銀乳剤層の少なくとも一層ずつを有するハロゲン化銀カラー写真感光材料において、該イエロー発色青感光性ハロゲン化銀乳剤層中に下記一般式(I)で表されるイエロー色素形成カプラーおよび塩化銀含有率が90モル%以上で沃化銀含有率が0.02モル%以上1モル%以下のハロゲン化銀粒子からなる青感光性ハロゲン化銀乳剤を含み、該青感光性ハロゲン化銀乳剤のハロゲン化銀粒子が層状に形成された沃化銀含有相を有するハロゲン化銀乳剤であることを特徴とするハロゲン化銀カラー写真感光材料。
    Figure 0004022418
    式中、Qは−C(−R11)=C(−R12)−SO −で表される基(R11、R12は互いに結合して−C=C−とともに5〜7員環を形成する基、もしくはそれぞれ独立に水素原子または置換基)を表す。R1は置換基を表す。R2は置換基を表す。mは0以上5以下の整数を表す。mが2以上のとき複数のR2はそれぞれ同じでも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。Xは水素原子または現像主薬酸化体とのカップリング反応により離脱可能な基を表す。
  3. 支持体上にイエロー発色青感光性ハロゲン化銀乳剤層、マゼンタ発色緑感光性ハロゲン化銀乳剤層、シアン発色赤感光性ハロゲン化銀乳剤層の少なくとも一層ずつを有するハロゲン化銀カラー写真感光材料において、該イエロー発色青感光性ハロゲン化銀乳剤層中に下記一般式(I)で表されるイエロー色素形成カプラーおよび塩化銀含有率が90モル%以上のハロゲン化銀粒子からなる青感光性ハロゲン化銀乳剤を含み、該青感光性ハロゲン化銀乳剤のハロゲン化銀粒子がIrを中心金属とする6配位錯体を含有するハロゲン化銀乳剤であることを特徴とするハロゲン化銀カラー写真感光材料。
    Figure 0004022418
    式中、Qは−C(−R11)=C(−R12)−SO −で表される基(R11、R12は互いに結合して−C=C−とともに5〜7員環を形成する基、もしくはそれぞれ独立に水素原子または置換基)を表す。R1は置換基を表す。R2は置換基を表す。mは0以上5以下の整数を表す。mが2以上のとき複数のR2はそれぞれ同じでも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。Xは水素原子または現像主薬酸化体とのカップリング反応により離脱可能な基を表す。
  4. 前記青感光性ハロゲン化銀乳剤が、塩化銀含有率が90モル%以上で臭化銀含有率が0.1モル%以上7モル%以下かつ沃化銀含有率が0.02モル%以上1モル%以下のハロゲン化銀粒子からなる青感光性ハロゲン化銀乳剤であり、該青感光性ハロゲン化銀乳剤のハロゲン化銀粒子がそれぞれ層状に形成された臭化銀含有相および沃化銀含有相を有するハロゲン化銀乳剤であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料。
  5. 前記青感光性ハロゲン化銀乳剤のハロゲン化銀粒子の臭化銀局在相が沃化銀含有相よりも粒子の内側に形成されていることを特徴とする請求項4に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料。
  6. 前記青感光性ハロゲン化銀乳剤のハロゲン化銀粒子が立方体あるいは14面体粒子であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料。
  7. 前記青感光性ハロゲン化銀乳剤のハロゲン化銀粒子が平均アスペクト比3以上の平板状粒子であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料。
  8. 前記青感光性ハロゲン化銀乳剤のハロゲン化銀粒子がCl、BrまたはIをリガンドとして有するIrを中心金属とする6配位錯体を含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料。
  9. 前記青感光性ハロゲン化銀乳剤のハロゲン化銀粒子がハロゲンまたはシアン以外のリガンドを少なくとも1個有するIrを中心金属とする6配位錯体を含むことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料。
  10. 前記青感光性ハロゲン化銀乳剤がコロイド状硫化金あるいは金の錯安定度定数logβ2が21以上かつ35以下の金増感剤で金増感されていることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料
  11. 前記一般式(I)で表されるイエロー色素形成カプラーが一般式(II)で表されるイエロー色素形成カプラーであることを特徴とする請求項1〜1のいずれか1項に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料。
    Figure 0004022418
    式中、R1は置換基を表す。R2は置換基を表す。mは0以上5以下の整数を表す。mが2以上のとき複数のR2はそれぞれ同じでも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。R3は置換基を表す。nは0以上4以下の整数を表す。nが2以上のとき複数のR3はそれぞれ同じでも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。Xは水素原子または現像主薬酸化体とのカップリング反応により離脱可能な基を表す。
  12. 前記一般式(II)で表される色素形成カプラーにおいて、R1が置換または無置換のアルキル基であることを特徴とする請求項1に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料。
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