JP2004004446A - ハロゲン化銀乳剤、該乳剤の製造方法、ハロゲン化銀写真感光材料及び該感光材料の画像形成方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】式(1) 〜(4) で表される化合物の少なくとも1種と、Au(III) 化合物とにより増感されたハロゲン化銀乳剤。
式中、ChはS,Se又はTeを;M は水素原子又はカチオンを;AはO,S 又はNR4を;R1 〜R4は水素原子又は置換基を表す。R3はR1又はR2と共に5〜7員環を形成してもよい。X はO,S 又はNR5を; YはH、R5と同義の基、OR6、SR7、N(R8)R9を;R5 〜R9はH、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基又はヘテロ環基を表す。XとYは結合し環を形成しうる。R10,R11 及びR12 は水素原子又は置換基を表すが、R10 及びR11 のうち少なくとも一方、及びWは電子求引性基を表し、R13 〜R15 は水素原子又は置換基を表す。W とR13 は互いに結合して環状構造を形成してもよい。
【選択図】なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ハロゲン化銀乳剤に関し、詳しくは高感度、硬調で、かつ露光時の温度・湿度条件の違いによる感度変動が小さく、高照度での相反則特性に優れるハロゲン化銀乳剤、及びその安定な製造方法及びこれを用いたハロゲン化銀カラー写真感光材料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、カラー印画紙においては、高感度化、高画質化、処理時のタフネス等の性能に対する要求が強まっており、高感度で硬調な乳剤、露光時の温度及び湿度条件の違いによる写真性変動の少ない乳剤が望まれている。一方で、最近ではレーザー走査露光装置の普及により、短時間かつ高照度露光適性も重要な性能の1つに挙げられる。レーザー走査露光では、露光の高速化及び解像度の向上が図れることが大きな特徴である。しかしながら、これをカラー印画紙に用いれば、今までにない非常に短時間(具体的には10−6秒)かつ高照度での露光適性が要求される。
高感度化を達成するために金増感法が有効な手段となる。金増感に用いる金化合物としてメソイオン配位子を含む金(I)化合物(以下メソイオン金(I)化合物と記す)が知られており、特開平4−267249号[特許文献1]には高感度、硬調な乳剤製造に有用であることが開示されている。しかし、特開平11−218870号[特許文献2]に開示されている様にメソイオン金(I)化合物は、溶液中での安定性に問題があることが知られている。この他、特開平8−69075号[特許文献3]にもメルカプト化合物の金塩が記載されているが、同様に安定性の問題がある。溶液中での安定性は、品質の一定な乳剤の安定製造に欠かせない条件であるから、改善が望まれていた。 この問題に対する解決策の一つとして、特開平11−218870号[特許文献2]にはメルカプト化合物の金(I)錯体を利用する方法が提案されている。この金増感剤は溶液安定性の点で改良されているものの、依然として分解は起こる化合物であり、十分な解決策とはなっていない。
上記の様な金(I)化合物の利用の他に、塩化金酸等のAu(III)化合物を用いることも知られている。塩化金酸は水溶液中で十分に安定であることから、これを用いることにより上記の金(I)錯体の持つ不安定性に起因する製造適性の問題が改善される。しかしその反面、感度、階調、高照度露光適性、露光時の温湿度環境に対するタフネス等の点で不十分な写真性であり、改良が望まれている。
従って、上記種々の写真性を満足し、かつ乳剤を一定品質に安定して製造する手段が知られておらず、解決策が望まれていた。
【0003】
【特許文献1】
特開平4−267249号公報
【特許文献2】
特開平11−218870号公報
【特許文献3】
特開平8−69075号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、高感度、硬調で、かつ露光時の温度・湿度条件の違いによる感度変動が小さく、高照度での相反則特性に優れるハロゲン化銀乳剤とその安定製造方法及びこれを用いたハロゲン化銀カラー写真感光材料並びに画像形成方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者が鋭意検討を重ねた結果、上記目的は、下記の手段により効果的に達成した。すなわち、
[1]下記一般式(1)、(2)、(3)または(4)で表される化合物のうち少なくとも1種類を含有し、Au(III)化合物により増感されたことを特徴とするハロゲン化銀乳剤。
一般式(1)
【0006】
【化5】
【0007】
一般式(2)
【0008】
【化6】
【0009】
一般式(3)
【0010】
【化7】
【0011】
一般式(4)
【0012】
【化8】
【0013】
式中、ChはS原子、Se原子またはTe原子を表し、Mは水素原子またはカチオン(但し、銀イオン及び金イオンを除く)を表す。AはO、S、Se、TeまたはNR4を表し、R1〜R4はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。R3はR1またはR2と共に5〜7員環を形成してもよい。XはO、SまたはNR5を表す。YはH、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、OR6、SR7、またはN(R8)R9を表す。R5〜R9はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基またはヘテロ環基を表す。XとYは互いに結合し環を形成してもよい。R10、R11およびR12はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表すが、R10およびR11のうち少なくとも一方は電子求引性基を表す。Wは電子求引性基を表し、R13〜R15はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。WとR13は互いに結合して環状構造を形成してもよい。
[2]上記一般式(1)、(2)、(3)または(4)で表される化合物のうち少なくとも1種類とAu(III)化合物とをあらかじめ混合した後にハロゲン化銀乳剤に添加することを特徴とするハロゲン化銀乳剤の製造方法。
[3]ハロゲン化銀乳剤の塩化銀含有率が90モル%以上であることを特徴とする[1]に記載のハロゲン化銀乳剤。
[4]塩化銀含有率が90モル%以上のハロゲン化銀乳剤を製造する工程において、上記一般式(1)、(2)、(3)または(4)で表される化合物のうち少なくとも1種類とAu(III)化合物とをあらかじめ混合した後にハロゲン化銀乳剤に添加することを特徴とするハロゲン化銀乳剤の製造方法。
[5]支持体上にそれぞれ少なくとも一層の青感性ハロゲン化銀乳剤層、緑感性ハロゲン化銀乳剤層、及び赤感性ハロゲン化銀乳剤層を有するハロゲン化銀カラー写真感光材料において、前記青感性ハロゲン化銀乳剤層、緑感性ハロゲン化銀乳剤層、及び赤感性ハロゲン化銀乳剤層の少なくとも一層が、上記一般式(1)、(2)、(3)または(4)で表される化合物のうち少なくとも1種類とAu(III)化合物とにより増感された、塩化銀含有率90モル%以上のハロゲン化銀乳剤を含有することを特徴とする、ハロゲン化銀カラー写真感光材料。
[6][5]に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料を画像情報に基づいて変調したレーザー光ビームにより、1画素あたりの露光時間が10−4秒よりも短い走査露光をした後に現像処理することを特徴とする画像形成方法。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下に本発明に用いられる一般式(1)〜(4)で表される化合物について詳細に説明する。
【0015】
式(1)〜(4)において、ChはS原子、Se原子またはTe原子を表す。本発明においてChは硫黄原子またはセレン原子である場合が好ましく、更に硫黄原子である場合がより好ましい。
【0016】
式(1)〜(4)において、Mは水素原子または化合物の電荷を中和する対カチオンを表す。ここでいうカチオンとはLi、Na、K、Rb、Csなどのアルカリ金属、Mg、Ca、Baなどのアルカリ土類金属などの無機の陽イオンや、置換または無置換のアンモニウムイオン、ホスホニウムイオンなど有機の陽イオンなどを表すが、本発明においてはMが銀イオンおよび金イオンを表す事はない。本発明においてMは水素原子もしくはアルカリ金属の陽イオン、アルカリ土類金属の陽イオン、置換もしくは無置換のアンモニウムイオンが好ましく、水素原子もしくはアルカリ金属の陽イオン、置換もしくは無置換のアンモニウムイオンがより好ましく、アルカリ金属の陽イオンまたは置換もしくは無置換のアンモニウムイオンが更に好ましい。
【0017】
式(1)において、AはO、S、Se、TeまたはNR4を表し、R1〜R4は水素原子または置換基を表す。本発明においてAはO、S、またはNR4である場合が好ましく、より好ましくはOまたはSであり、更に好ましくはOである場合である。
【0018】
R1〜R4は各々水素原子または置換基を表すが、ここでいう置換基とは例えばハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、アルキル基(直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルキル基で、ビシクロアルキル基やトリシクロ構造、活性メチン基なども包含する)、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基(N原子、O原子、S原子のうち少なくとも一つを含む5〜7員環の、置換もしくは無置換の、飽和もしくは不飽和のヘテロ環であり、単環であっても良いし、更に他のアリール環もしくはヘテロ環と共に縮合環を形成しても良い。例えばピロリル基、ピロリジニル基、ピリジル基、ピペリジル基、ピペラジニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、トリアジニル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、キノリル基、イソキノリル基、インドリル基、インダゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラニル基、クロメニル基、チエニル基、オキサゾリル基、オキサジアゾリル基、チアゾリル基、チアジアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、モルホリノ基、モルホリニル基など。置換する位置は問わない)、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ヘテロ環オキシカルボニル基、カルバモイル基、N−ヒドロキシカルバモイル基、N−アシルカルバモイル基、N−スルホニルカルバモイル基、N−カルバモイルカルバモイル基、チオカルバモイル基、N−スルファモイルカルバモイル基、カルバゾイル基、カルボキシ基(及びその塩を含む)、オキサリル基、オキサモイル基、シアノ基、ホルミル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基(エチレンオキシ基もしくはプロピレンオキシ基単位を繰り返し含む基を含む)、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、カルバモイルオキシ基、スルホニルオキシ基、シリルオキシ基、ニトロ基、アミノ基、(アルキル、アリール、またはヘテロ環)アミノ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、ウレイド基、チオウレイド基、N−ヒドロキシウレイド基、イミド基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、セミカルバジド基、チオセミカルバジド基、ヒドラジノ基、アンモニオ基、オキサモイルアミノ基、N−(アルキルまたはアリール)スルホニルウレイド基、N−アシルウレイド基、N−アシルスルファモイルアミノ基、ヒドロキシアミノ基、4級化された窒素原子を含むヘテロ環基(例えばピリジニオ基、イミダゾリオ基、キノリニオ基、イソキノリニオ基)、イソシアノ基、イミノ基、メルカプト基(及びその塩を含む)、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、(アルキル、アリール、またはヘテロ環)ジチオ基、(アルキルまたはアリール)スルホニル基、(アルキルまたはアリール)スルフィニル基、スルホ基(及びその塩を含む)、スルファモイル基、N−アシルスルファモイル基、N−スルホニルスルファモイル基(及びその塩を含む)、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、シリル基などを意味する。なおここで塩とはアルカリ金属、アルカリ土類金属、重金属などの陽イオンやアンモニウムイオン、ホスホニウムイオンなどの有機の陽イオンとの塩を意味する。
【0019】
上記の官能基の中で、水素原子を有するものは、これを取り去り更に上記の基で置換されていても良い。
【0020】
式(1)においてR1、R2は好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アミノ基、メルカプト基(及びその塩)、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基などであり、更に好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基などであり、最も好ましくは水素原子またはアルキル基である。
【0021】
式(1)においてR3は好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基などであり、更に好ましくはアルキル基、アリール基、またはヘテロ環基であり、最も好ましくはアルキル基またはアリール基である。式(1)においてR4は好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、アミノ基、アシルアミノ基、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基、アルキル及びアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基などであり、更に好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基などである。
【0022】
式(1)において、R3はR1もしくはR2と共に5〜7員の環状構造を形成してもよい。この時形成される環状構造は非芳香族の含酸素、含硫黄、含窒素もしくは含セレンのヘテロ環となる。またこの環状構造は芳香族もしくは非芳香族の炭素環、あるいは芳香族もしくは非芳香族のヘテロ環と縮合環構造を形成していてもよい。本発明においてはR3がR1もしくはR2と共に5〜7員の環状構造を形成するのが好ましい。
【0023】
本発明において、式(1)で表される化合物のうち、好ましいものはChがS原子もしくはSe原子であり、Mが水素原子もしくはアルカリ金属の陽イオン、アルカリ土類金属の陽イオンまたは置換もしくは無置換のアンモニウムイオンであり、AがOまたはSであり、R1、R2が各々水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、またはヘテロ環チオ基であり、R3が水素原子、アルキル基、アリール基、またはヘテロ環基であり、R4が水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アミノ基、アシルアミノ基、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基、アルキル及びアリールスルホニル基、またはアシル基である。更に好ましくはChがS原子またはSe原子であり、Mが水素原子もしくはアルカリ金属の陽イオンまたは置換もしくは無置換のアンモニウムイオンであり、AがOまたはSであり、R1、R2が各々水素原子、アルキル基、アリール基、またはヘテロ環基であり、R3がアルキル基、アリール基、またはヘテロ環基であり、R4が水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、またはアシル基である。最も好ましくはChが硫黄原子であり、Mが水素原子もしくはアルカリ金属の陽イオンまたは置換もしくは無置換のアンモニウムイオンであり、AがOまたはSであり、R1、R2が各々水素原子、アルキル基、またはアリール基であり、R3がアルキル基、またはアリール基であり、R4が水素原子、アルキル基、アリール基、またはヘテロ環基である。特に好ましくはR3がR1またはR2と共に形成した環状構造がグルコース、マンノース、ガラクトース、グロース、キシロース、リキソース、アラビノース、リボース、フコース、イドース、タロース、アロース、アルトロース、ラムノース、ソルボース、ディジトキソース、2−デオキシグルコース、2−デオキシガラクトース、フルクトース、グルコサミン、ガラクトサミン、グルクロン酸などとその糖誘導体(式(1)におけるAがOの場合)及びその硫黄類似体(式(1)におけるAがSの場合)の場合である。ここで糖誘導体とは糖構造におけるヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシ基がアルコキシ基(エチレンオキシ基もしくはプロピレンオキシ基単位を繰り返し含む基を含む)、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、カルバモイルオキシ基、スルホニルオキシ基、シリルオキシ基、(アルキル、アリール、またはヘテロ環)アミノ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、ウレイド基、チオウレイド基、N−ヒドロキシウレイド基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、セミカルバジド基、チオセミカルバジド基、オキサモイルアミノ基、N−(アルキルまたはアリール)スルホニルウレイド基、N−アシルウレイド基、N−アシルスルファモイルアミノ基、ヒドロキシアミノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ヘテロ環オキシカルボニル基、カルバモイル基、N−ヒドロキシカルバモイル基、N−アシルカルバモイル基、N−スルホニルカルバモイル基、N−カルバモイルカルバモイル基、N−スルファモイルカルバモイル基などに置換された化合物を表す。また、これら糖構造においては1位の立体構造が異なるα異性体とβ異性体、および鏡像異性体の関係にあるD体とL体が存在するが、本発明においてはこれら異性体を区別することはないが、より好ましいのはα型である。本発明において好ましい糖母核はグルコース、マンノース、ガラクトース、キシロース、リキソース、アラビノース、リボース、ラムノース、2−デオキシグルコース、2−デオキシガラクトース、グルコサミン、ガラクトサミンなどであり、より好ましくはグルコース、マンノース、ガラクトース、キシロース、リキソース、グルコサミン、ガラクトサミンなどであり、更に好ましくはグルコース、マンノース、ガラクトース、キシロース、グルコサミンなどであり、最も好ましくはグルコースである。
【0024】
式(2)において、XはO、SまたはNR5を表す。Xは好ましくはOまたはSであり、より好ましくはOである。YはH、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、OR6、SR7、またはN(R8)R9を表すが、好ましくはアルキル基、アリール基、ヘテロ環基、OR6、SR7、またはN(R8)R9であり、より好ましくはアルキル基、アリール基、ヘテロ環基、またはN(R8)R9であり、更に好ましくはアルキル基、アリール基またはヘテロ環基である。R5〜R9は各々水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基またはヘテロ環基を表し、好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基またはヘテロ環基であり、より好ましくはアルキル基またはアリール基である。
【0025】
式(2)において、XとYは互いに結合して環を形成してもよい。この場合に形成される環は3〜7員の含窒素ヘテロ環であり、例えばピロール類、インドール類、イミダゾール類、ベンズイミダゾール類、チアゾール類、ベンゾチアゾール類、イソオキサゾール類、オキサゾール類、ベンゾオキサゾール類、インダゾール類、プリン類、ピリジン類、ピラジン類、ピリミジン類、キノリン類、キナゾリン類が挙げられる。
【0026】
式(2)で表される化合物のうち、好ましくはChがSまたはSeであり、Mが水素原子もしくはアルカリ金属の陽イオン、アルカリ土類金属の陽イオンまたは置換もしくは無置換のアンモニウムイオンであり、XがOまたはSであり、Yがアルキル基、アリール基、ヘテロ環基、OR6、SR7、またはN(R8)R9であり、R6〜R9が各々アルキル基、アリール基またはヘテロ環基である。より好ましくはChがSまたはSeであり、Mが水素原子もしくはアルカリ金属の陽イオンまたは置換もしくは無置換のアンモニウムイオンであり、XがOであり、Yがアルキル基、アリール基、またはヘテロ環基である。
【0027】
式(3)において、R10、R11およびR12はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表すが、R10およびR11のうち少なくとも一方は電子求引性基を表す。ここでいう電子求引性基とは、ハメットの置換基定数σp値が0以上の値である置換基であり、好ましくはσp値が0.2以上であり、上限としては1.0以下の置換基を表す。σp値が0.2以上の電子求引性基の具体例としてはアシル基、ホルミル基、アシルオキシ基、アシルチオ基、カルバモイル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基、ジアルキルホスホノ基、ジアリールホスホノ基、ジアルキルホスフィニル基、ジアリールホスフィニル基、ホスホリル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルホニルオキシ基、アシルチオ基、スルファモイル基、チオシアネート基、チオカルボニル基、イミノ基、N原子で置換したイミノ基、カルボキシ基(またはその塩)、少なくとも2つ以上のハロゲン原子で置換されたアルキル基、少なくとも2つ以上のハロゲン原子で置換されたアルコキシ基、少なくとも2つ以上のハロゲン原子で置換されたアリールオキシ基、アシルアミノ基、少なくとも2つ以上のハロゲン原子で置換されたアルキルアミノ基、少なくとも2つ以上のハロゲン原子で置換されたアルキルチオ基、σp値が0.2以上の他の電子求引性基で置換されたアリール基、ヘテロ環基、ハロゲン原子、アゾ基、セレノシアネート基などが挙げられる。本発明において、好ましい電子求引性基はアシル基、ホルミル基、カルバモイル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、シアノ基、ジアルキルホスホノ基、ジアリールホスホノ基、ジアルキルホスフィニル基、ジアリールホスフィニル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルファモイル基、チオカルボニル基、イミノ基、N原子で置換したイミノ基、ホスホリル基、カルボキシ基(またはその塩)、少なくとも2つ以上のハロゲン原子で置換されたアルキル基、σp値が0.2以上の他の電子求引性基で置換されたアリール基、ヘテロ環基またはハロゲン原子であり、より好ましくはアシル基、カルバモイル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、シアノ基、カルボキシ基、少なくとも2つ以上のハロゲン原子で置換されたアルキル基、σp値が0.2以上の他の電子求引性基で置換されたアリール基、またはヘテロ環基である。
【0028】
式(3)において、R10およびR11の両方とも電子求引性基を表すのが好ましい。R12として好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アミノ基、アシルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、アルキル及びアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、またはカルバモイル基であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アミノ基、またはアシルアミノ基が挙げられる。
【0029】
式(3)において、R10とR11とが異なり化合物の立体構造に幾何異性体(シス体、トランス体)が存在する場合、本発明においてはこれら異性体を区別することはない。
【0030】
式(3)において、R10、R11、R12は互いに結合して環形成する場合も好ましい。形成される環は、非芳香族の炭素環もしくはヘテロ環であり、5〜7員環が好ましい。環を形成するR10はアシル基、カルバモイル基、オキシカルボニル基、チオカルボニル基、またはスルホニル基が好ましく、R11はアシル基、カルバモイル基、オキシカルボニル基、チオカルボニル基、スルホニル基、イミノ基、N原子で置換したイミノ基、アシルアミノ基、またはカルボニルチオ基が好ましい。
【0031】
式(3)で表される化合物のうち、好ましくはChがSまたはSeであり、Mが水素原子もしくはアルカリ金属の陽イオン、アルカリ土類金属の陽イオンまたは置換もしくは無置換のアンモニウムイオンであり、R10及びR11が各々電子求引性基であり、R12が水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アミノ基、またはアシルアミノ基である。より好ましくはChがSまたはSeであり、Mが水素原子もしくはアルカリ金属の陽イオンまたは置換もしくは無置換のアンモニウムイオンであり、R10及びR11が各々電子求引性基であり、R12が水素原子、アルキル基、アリール基、またはヘテロ環基である。最も好ましくはChがSであり、Mが水素原子もしくはアルカリ金属の陽イオンまたはは置換もしくは無置換のアンモニウムイオンであり、R10及びR11が各々電子求引性基であり、R12が水素原子、アルキル基、アリール基、またはヘテロ環基である。
【0032】
また、式(3)で表される化合物のうち、R10とR11が非芳香族の5〜7員の環を形成しているものも好ましく、この時ChがSまたはSeであり、Mが水素原子もしくはアルカリ金属の陽イオンまたは置換もしくは無置換のアンモニウムイオンであり、R11が水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アミノ基、またはアシルアミノ基であるものが好ましい。更に好ましくはR10とR11とが非芳香族の5〜7員の環を形成し、ChがSまたはSeを表し、Mが水素原子もしくはアルカリ金属の陽イオンまたは置換もしくは無置換のアンモニウムイオンであり、R12が水素原子、アルキル基、アリール基、またはヘテロ環基である。最も好ましくはChがSであり、Mが水素原子もしくはアルカリ金属の陽イオンまたは置換もしくは無置換のアンモニウムイオンであり、R10とR11とが非芳香族の5〜7員の環を形成し、R12が水素原子、アルキル基、アリール基、またはヘテロ環基である。
【0033】
式(4)において、Wは電子求引性基を表し、R13〜R15はそれぞれ水素原子または置換基を表す。WとR13は互いに結合して環状構造を形成してもよい。式(4)において、Wが表す電子求引性基は前述の電子求引性基と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0034】
式(4)において、R13〜R15は好ましくは水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、ヒドロキシル基、カルボキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、アミノ基、アシルアミノ基、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキル及びアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、またはイミド基であり、より好ましくは水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、ヒドロキシル基、カルボキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、アミノ基、アシルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルホ基、アルキル及びアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、またはカルバモイル基である。
【0035】
WとR13は互いに結合して環を形成してもよい。形成される環は、非芳香族の炭素環もしくはヘテロ環であり、好ましくは5〜7員環である。環を形成するWはアシル基、カルバモイル基、オキシカルボニル基、チオカルボニル基、またはスルホニル基が好ましく、R13はアルキル基、アルケニル基、アリール基、またはヘテロ環基が好ましい。
【0036】
式(4)で表される化合物のうち、好ましくはChがSまたはSeであり、Mが水素原子もしくはアルカリ金属の陽イオン、アルカリ土類金属の陽イオンまたは置換もしくは無置換のアンモニウムイオンであり、Wが電子求引性基であり、R13〜R15が各々水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、ヒドロキシル基、カルボキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、アミノ基、アシルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルホ基、アルキル及びアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、またはカルバモイル基である。より好ましくはChがSまたはSeであり、Mが水素原子もしくはアルカリ金属の陽イオンまたは置換もしくは無置換のアンモニウムイオンであり、Wが電子求引性基であり、R13〜R15が各々水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、ヒドロキシル基、カルボキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、アミノ基、アシルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルホ基、アルキル及びアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、またはカルバモイル基である。最も好ましくはChがSまたはSeであり、Mが水素原子もしくはアルカリ金属の陽イオンまたは置換もしくは無置換のアンモニウムイオンであり、Wが電子求引性基であり、R13〜R15が各々水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、ヒドロキシル基、カルボキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、アミノ基、アシルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルホ基、アルキル及びアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、またはカルバモイル基である。
【0037】
また、式(4)で表される化合物のうち、WとR13とが互いに結合して非芳香族の5〜7員の環を形成しているものも好ましく、この時ChがSまたはSeを表し、Mが水素原子もしくはアルカリ金属の陽イオン、アルカリ土類金属の陽イオンまたは置換もしくは無置換のアンモニウムイオンであり、R13がアルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基などであり、R14およびR15は水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、ヒドロキシル基、カルボキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、アミノ基、アシルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルホ基、アルキル及びアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基などであるものが好ましい。更に好ましくはChがSまたはSeを表し、Mが水素原子もしくはアルカリ金属の陽イオンまたは置換もしくは無置換のアンモニウムイオンであり、WとR13とが互いに結合して非芳香族の5〜7員の環を形成し、R14およびR15が各々水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、ヒドロキシル基、カルボキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、アミノ基、アシルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルホ基、アルキル及びアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、またはカルバモイル基であり、最も好ましくはChがSを表し、Mが水素原子もしくはアルカリ金属の陽イオンまたは置換もしくは無置換のアンモニウムイオンであり、WとR13とが互いに結合して非芳香族の5〜7員の環を形成し、R14およびR15は各々水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、ヒドロキシル基、カルボキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、アミノ基、アシルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルホ基、アルキル及びアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、またはカルバモイル基である。
【0038】
一般式(1)〜(4)で表される化合物のうち、本発明において好ましい化合物は一般式(1)、(2)及び(4)で表される化合物であり、より好ましくは一般式(1)及び(4)で表される化合物であり、最も好ましくは一般式(1)で表される化合物である。
【0039】
次に一般式(1)〜(4)で表される化合物の具体例を以下に示す。但し本発明はこれらに限定されるものではない。また、立体異性体が複数存在しうる化合物については、その立体構造を限定するものではない。
【0040】
【化9】
【0041】
【化10】
【0042】
【化11】
【0043】
【化12】
【0044】
【化13】
【0045】
【化14】
【0046】
【化15】
【0047】
【化16】
【0048】
【化17】
【0049】
【化18】
【0050】
【化19】
【0051】
【化20】
【0052】
本発明の一般式(1)〜(4)で表される化合物は、公知の種々の方法により合成することができる。個々の化合物によってその合成法は最適なものが選ばれるため、一般的となりうる合成法を挙げることができないが、その中でも有用な合成ルートを説明する。
【0053】
(例示化合物1−1の合成)
例示化合物1−1はスキーム1に従い合成した。
スキーム1
【0054】
【化21】
【0055】
(合成中間体1の合成)
ペンタアセチル−β−D−グルコース156.1gに臭化水素25%酢酸溶液200mLを加えた。室温で3時間かくはんした後、酢酸エチル800mLと氷水800mLを加えて分液した。有機層は飽和炭酸水素ナトリウム水溶液200mL、次いで氷水200mLで洗浄した後、硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下濃縮することで合成中間体1を164g得た。
(合成中間体2の合成)
アセトン400mLに合成中間体1 164gとチオ尿素30gを加え、窒素雰囲気下で加熱還流を2時間行った。反応溶液に酢酸エチル100mLを加えた後に氷冷し、析出した結晶をろ取することで合成中間体2を125g得た。
(例示化合物1−1の合成)
メタノール250mLに合成中間体2 124gを加え、ナトリウムメトキシド28%メタノール溶液を滴下した。室温で3時間かくはんした後、析出した結晶をろ取することで、例示化合物1−1を57g得た。
【0056】
(例示化合物1−2の合成)
例示化合物1−2は例示化合物1−1の合成において、ナトリウムメトキシド28%メタノール溶液の代わりに二亜硫酸カリウム10%水溶液を用いる他は全て同様の操作を行うことにより得ることができた。
【0057】
(例示化合物1−42の合成)
例示化合物1−42は例示化合物1−2の合成において、チオ尿素の代わりにセレノ尿素を用いる他は全て同様の操作を行うことにより得ることができた。
【0058】
(例示化合物1−49の合成)
J.Chem.Soc.Chem.Commun.,第11号、693ページ(1985年)に記載の方法により合成可能なビス(テトラ−O−アセチル−β−D−グルコピラノシル)ジテルリド1.0gをメタノール10mLに溶解し、0℃に冷却しながら水素化ホウ素ナトリウム110mgをゆっくり加える。0℃で30分かくはんした後、エタノール100mLを加え、析出した結晶をろ取することで例示化合物1−49を得ることが可能である。
【0059】
本発明の一般式(1)〜(4)で表される化合物の添加量は場合に応じて広範囲に変わり得るがハロゲン化銀1モルあたり1×10−7〜5×10−3モル、好ましくは5×10−7〜5×10−4モルである。
【0060】
本発明の一般式(1)〜(4)で表される化合物は、水、或いはアルコール類(メタノール、エタノールなど)、ケトン類(アセトンなど)、アミド類(ジメチルホルムアミドなど)、グリコール類(メチルプロピレングリコールなど)、及びエステル類(酢酸エチルなど)などの溶媒の溶液として添加しても良い。
【0061】
次に本発明に用いるAu(III)化合物について説明する。本発明においては種々のAu(III)化合物を用いることができ、例えば塩化金酸、ポタシウム テトラクロロオーレート、アンモニウム テトラクロロオーレート、ポタシウム テトラブロモオーレート、塩化第二金、臭化第二金、沃化第二金、沃化第二金カリウム、ゴールド(III)ヒドロキシド等を用いることができる。本発明において、金増感剤として用いるAu(III)化合物は、一般式(1)〜(4)で表される化合物と別々にハロゲン化銀乳剤に添加しても、同時に添加してもよい。また、従来の金化合物を用いた化学増感においては金増感剤の溶液安定性が問題となっていたが、本発明では安定なAu(III)化合物と、安定な式(1)〜(4)で表される化合物を用いることができる点で優れている。
【0062】
本発明において一般式(1)〜(4)で表される化合物及びAu(III)化合物は、粒子形成終了後から、化学増感終了後までの間に乳剤に添加することができ、好ましくは、化学増感時または後熟の際に添加することが好ましい。
一般式(1)〜(4)で表される化合物とAu(III)化合物の添加量比(モル比)は、20/1〜0.5/1とすることができるが、15/1〜1/1が好ましく、より好ましくは、10/1〜2/1であり、最も好ましくは、8/1〜3/1である。
【0063】
また、本発明においては一般式(1)〜(4)で表される化合物とAu(III)化合物とを溶媒中で混合した後にハロゲン化銀乳剤に添加してもよい。これらを混合する際の溶媒は水及びアルコール等が挙げられるが、水が好ましく、溶媒には酸やアルカリを加えてpH調整を行うことができ、本発明で用いられるpHは13以下であれば良く、好ましいpHは2〜11であり、より好ましいpHは3〜8である。両者を混合後、添加までの時間は、混合溶液の安定性の観点から3日以内が好ましく、1日以内が更に好ましく、6時間以内が最も好ましい。
【0064】
本発明において一般式(1)〜(4)で表される化合物とAu(III)化合物との添加法としては、あらかじめ溶媒中で両者を混合した後に、乳剤に添加する方法が最も好ましい。
【0065】
これらのAu(III)化合物の添加量は場合に応じて広範囲に変わり得るがハロゲン化銀1モルあたり5×10−7〜5×10−3モル、好ましくは5×10−6〜5×10−4モルである。
【0066】
本発明においては、金増感を更に他の増感法、例えば硫黄増感、セレン増感、テルル増感、還元増感あるいは金化合物以外を用いた貴金属増感等と組み合わせてもよい。本発明において、好ましくは金増感と硫黄増感の併用である。
【0067】
本発明のハロゲン化銀乳剤は、特定のハロゲン化銀粒子を含む。この粒子の粒子形状は特に制限はないが、実質的に{100}面を持つ立方体、14面体の結晶粒子(これらは粒子頂点が丸みを帯び、さらに高次の面を有していてもよい)、8面体の結晶粒子、主表面が{100}面または{111}面からなるアスペクト比3以上の平板状粒子からなることが好ましい。アスペクト比とは、投影面積に相当する円の直径を粒子の厚さで割った値である。
【0068】
本発明のハロゲン化銀乳剤としては、特定のハロゲン化銀粒子を含む乳剤が用いられる。塩化銀含有率は90モル%以上であることが好ましく、迅速処理性の観点からは、塩化銀含有率は93モル%以上が好ましく、95モル%以上が更に好ましい。臭化銀含有率は硬調で潜像安定性に優れることから0.1〜7モル%であることが好ましく、0.5〜5モル%であることが更に好ましい。沃化銀含有率は高照度露光で高感度かつ硬調であることから0.02〜1モル%であることが好ましく、0.05〜0.50モル%が更に好ましく、0.07〜0.40モル%が最も好ましい。
本発明の特定のハロゲン化銀粒子は、沃臭塩化銀粒子が好ましく、上記のハロゲン組成の沃臭塩化銀粒子が更に好ましい。
また、上記の塩化銀を主体とする乳剤の他に、臭化銀を主体とするハロゲン化銀乳剤も利用でき、例えば沃臭化銀乳剤が利用できる。
【0069】
本発明のハロゲン化銀乳剤における特定のハロゲン化銀粒子は、臭化銀含有相および/または沃化銀含有相を有する。ここで、臭化銀あるいは沃化銀含有相とは他の部分よりも臭化銀あるいは沃化銀の濃度が高い部位を意味する。臭化銀含有相あるいは沃化銀含有相とその周囲とのハロゲン組成は連続的に変化してもよく、また急峻に変化してもよい。このような臭化銀あるいは沃化銀含有相は、粒子内のある部分で濃度がほぼ一定の幅をもった層を形成してもよく、広がりをもたない極大点であってもよい。臭化銀含有相の局所的臭化銀含有率は、5モル%以上であることが好ましく、10〜80モル%であることが更に好ましく、15〜50モル%であることが最も好ましい。沃化銀含有相の局所的沃化銀含有率は、0.3モル%以上であることが好ましく、0.5〜8モル%であることが更に好ましく、1〜5モル%であることが最も好ましい。また、このような臭化銀あるいは沃化銀含有相は、それぞれ粒子内に層状に複数個あってもよく、それぞれの臭化銀あるいは沃化銀含有率が異なってよいが、それぞれ最低1個の含有相を有することが好ましい。
【0070】
本発明のハロゲン化銀乳剤の臭化銀含有相あるいは沃化銀含有相は、それぞれ粒子を取り囲むように層状にあることが重要である。粒子を取り囲むように層状に形成された臭化銀含有相あるいは沃化銀含有相は、それぞれの相の中で粒子の周回方向に均一な濃度分布を有することがひとつの好ましい態様である。しかし、粒子を取り囲むように層状にある臭化銀含有相あるいは沃化銀含有相の中は、臭化銀あるいは沃化銀濃度の極大点または極小点が粒子の周回方向に存在し、濃度分布を有していてもよい。例えば、粒子表面近傍に粒子を取り囲むように層状に臭化銀含有相あるいは沃化銀含有相を有する場合、粒子コーナーまたはエッジの臭化銀あるいは沃化銀濃度は、主表面と異なる濃度になる場合がある。また、粒子を取り囲むように層状にある臭化銀含有相と沃化銀含有相とは別に、粒子の表面の特定部に完全に孤立して存在し、粒子を取り囲んでいない臭化銀含有相あるいは沃化銀含有相があってもよい。
【0071】
本発明のハロゲン化銀乳剤が臭化銀含有相を含有する場合、その臭化銀含有相は粒子の内部に臭化銀濃度極大を有するように層状に形成されていることが好ましい。また、本発明のハロゲン化銀乳剤が沃化銀含有相を含有する場合、その沃化銀含有相は粒子の表面に沃化銀濃度極大を有するように層状に形成されていることが好ましい。このような臭化銀含有相あるいは沃化銀含有相は、より少ない臭化銀あるいは沃化銀含有量で局所濃度を上げる意味から、粒子体積の3%以上30%以下の銀量で構成されていることが好ましく、3%以上15%以下の銀量で構成されていることが更に好ましい。
【0072】
本発明のハロゲン化銀乳剤は、臭化銀含有相および沃化銀含有相を両方含むことが好ましい。その場合、臭化銀含有相と沃化銀含有相は粒子の同一個所にあっても、異なる場所にあってもよいが、異なる場所にあるほうが粒子形成の制御を容易にする点で好ましい。また、臭化銀含有相に沃化銀を含有していてもよく、逆に沃化銀含有相に臭化銀を含有していてもよい。一般に、高塩化銀粒子形成中に添加する沃化物は臭化物よりも粒子表面にしみだしやすいために沃化銀含有相は粒子表面の近傍に形成されやすい。従って、臭化銀含有相と沃化銀含有相が粒子内の異なる場所にある場合、臭化銀含有相は沃化銀含有相より内側に形成することが好ましい。このような場合、粒子表面近傍の沃化銀含有相よりも更に外側に、別の臭化銀含有相を設けてもよい。
【0073】
高感度化や硬調化などの本発明の効果を発現させるために必要な臭化銀含有量あるいは沃化銀含有量は、臭化銀含有相あるいは沃化銀含有相を粒子内部に形成するほど増加してしまい、必要以上に塩化銀含有量を落として迅速処理性を損なってしまう恐れがある。従って、写真作用を制御するこれらの機能を粒子内の表面近くに集約するために、臭化銀含有相と沃化銀含有相は隣接していることが好ましい。これらの点から、臭化銀含有相は内側から測って粒子体積の50%から100%の位置のいずれかに形成し、沃化銀含有相は粒子体積の85%から100%の位置のいずれかに形成することが好ましい。また、臭化銀含有相は粒子体積の70%から95%の位置のいずれかに形成し、沃化銀含有相は粒子体積の90%から100%の位置のいずれかに形成することが更に好ましい。
【0074】
本発明のハロゲン化銀乳剤に臭化銀あるいは沃化銀を含有させるための臭化物あるいは沃化物イオンの導入は、臭化物塩あるいは沃化物塩の溶液を単独で添加させるか、或いは銀塩溶液と高塩化物塩溶液の添加と併せて臭化物塩あるいは沃化物塩溶液を添加してもよい。後者の場合は、臭化物塩あるいは沃化物塩溶液と高塩化物塩溶液を別々に、または臭化物塩あるいは沃化物塩と高塩化物塩の混合溶液として添加してもよい。臭化物塩あるいは沃化物塩は、アルカリもしくはアルカリ土類臭化物塩あるいは沃化物塩のような溶解性塩の形で添加する。或いは米国特許第5,389,508号明細書に記載される有機分子から臭化物イオンあるいは沃化物イオンを開裂させることで導入することもできる。また別の臭化物あるいは沃化物イオン源として、微小臭化銀粒子あるいは微小沃化銀粒子を用いることもできる。
【0075】
臭化物塩あるいは沃化物塩溶液の添加は、粒子形成の一時期に集中して行ってもよく、またある一定期間かけて行ってもよい。高塩化物乳剤への沃化物イオンの導入位置は、高感度で低被りな乳剤を得る上で制限される。沃化物イオンの導入は、乳剤粒子のより内部に行うほど感度の増加が小さい。故に沃化物塩溶液の添加は、粒子体積の50%より外側が好ましく、より好ましくは70%より外側から、最も好ましくは85%より外側から行うのがよい。また沃化物塩溶液の添加は、好ましくは粒子体積の98%より内側で、最も好ましくは96%より内側で終了するのがよい。沃化物塩溶液の添加は、粒子表面から少し内側で終了することで、より高感度で低被りな乳剤を得ることができる。
一方、臭化物塩溶液の添加は、粒子体積の50%より外側が好ましく、より好ましくは70%より外側から行うのがよい。
【0076】
粒子内の深さ方向への臭化物あるいは沃化物イオン濃度の分布は、エッチング/TOF−SIMS(Time of Flight − Secondary Ion Mass Spectrometry)法により、例えばPhi Evans社製TRIFTII型TOF−SIMSを用いて測定できる。TOF−SIMS法については、具体的には日本表面科学会編「表面分析技術選書二次イオン質量分析法」丸善株式会社(1999年発行)に記載されている。エッチング/TOF−SIMS法で乳剤粒子を解析すると、沃化物塩溶液の添加を粒子の内側で終了しても、粒子表面に向けて沃化物イオンがしみ出していることが分析できる。本発明の乳剤は、エッチング/TOF−SIMS法による分析で、沃化物イオンは粒子表面で濃度極大を有し、内側に向けて沃化物イオン濃度が減衰していることが好ましく、臭化物イオンは粒子内部で濃度極大を有することが好ましい。臭化銀の局所濃度は、臭化銀含有量がある程度高ければX線回折法でも測定することができる。
【0077】
本明細書において球相当径は、個々の粒子の体積と等しい体積を有する球の直径で表される。本発明の乳剤は粒子サイズ分布が単分散な粒子からなることが好ましい。本発明の全粒子の球相当径の変動系数は20%以下であることが好ましく、15%以下であることがより好ましく、10%以下であることが更に好ましい。
球相当径の変動係数とは、個々の粒子の球相当径の標準偏差の、球相当径の平均に対する百分率で表される。このとき、広いラチチュードを得る目的で上記の単分散乳剤を同一層にブレンドして使用することや、重層塗布することも好ましく行われる。
【0078】
イエロー色素形成カプラー含有ハロゲン化銀乳剤層のハロゲン化銀乳剤の球相当径は、0.7μm以下であることが好ましく、0.6μm以下であることが更に好ましく、0.5μm以下であることが最も好ましい。マゼンタ色素形成カプラー含有ハロゲン化銀乳剤層およびシアン色素形成カプラー含有ハロゲン化銀乳剤層のハロゲン化銀乳剤の球相当径は、0.5μm以下であることが好ましく、0.4μm以下であることが更に好ましく、0.3μm以下であることが最も好ましい。本明細書において球相当径は、個々の粒子の体積と等しい体積を有する球の直径で表される。球相当径0.6μmの粒子は辺長約0.48μmの立方体粒子に相当し、球相当径0.5μmの粒子は辺長約0.40μmの立方体粒子に相当し、球相当径0.4μmの粒子は辺長約0.32μmの立方体粒子に相当し、球相当径0.3μmの粒子は辺長約0.24μmの立方体粒子に相当する。本発明のハロゲン化銀乳剤には、本発明で定義されるハロゲン化銀乳剤に含まれるハロゲン化銀粒子(即ち、特定のハロゲン化銀粒子)以外のハロゲン化銀粒子を含んでよい。しかしながら、本発明で定義されるハロゲン化銀乳剤は、全粒子の全投影面積の50%以上が本発明で定義されるハロゲン化銀粒子であることが好ましく、80%以上であることが好ましく、90%以上であることが更に好ましい。
【0079】
本発明のハロゲン化銀乳剤の電子徐放時間は、10−5秒から10秒の間であることが好ましい。ここで、電子徐放時間とは、ハロゲン化銀乳剤に露光を与えた場合、ハロゲン化銀結晶中に発生した光電子が結晶中にある電子トラップに捕らえられ、再び放出されるまでの時間である。電子徐放時間が10−5秒より短いと高照度露光で高感度で硬調な階調が得られにくく、10秒より長いと露光後短時間で処理するまでの間に潜像増感の問題を生じる。電子徐放時間は、10−4秒から10秒の間が更に好ましく、10−3秒から1秒の間が最も好ましい。
【0080】
電子徐放時間は、ダブルパルス光伝導法で測定することができる。マイクロ波光伝導法あるいはラジオ波光伝導法を用い、1発目の短時間露光を与えその後ある一定時間の後2発目の短時間露光を与える。1発目の露光でハロゲン化銀結晶中の電子トラップに電子が捕らえられ、その直後に2発目の露光を与えると電子トラップが詰まっているため、2発目の光伝導シグナルは大きくなる。2回の露光間隔を十分置き、1発目の露光で電子トラップに捕らえられた電子が既に放出されている場合は、2発目の光伝導シグナルはほぼ元の大きさに戻っている。2回の露光間隔を変え2発目の光伝導シグナル強度の露光間隔依存性を取ると、露光間隔と共に2発目の光伝導シグナル強度が減少してゆく様子が測定できる。これが光電子の電子トラップからの徐放時間を表している。電子徐放は、露光後ある一定時間の間連続的に起こり続ける場合があるが、10−5秒から10秒の間に徐放が観測されることが好ましい。10−4秒から10秒の間に徐放が観測されることがより好ましく、10−3秒から1秒の間に徐放が観測されることが更に好ましい。
【0081】
本発明のハロゲン化銀乳剤における特定のハロゲン化銀粒子は、イリジウムを含有することが好ましい。イリジウム化合物としては、6個のリガンドを有しイリジウムを中心金属とする6配位錯体が、ハロゲン化銀結晶中に均一に取り込ませるために好ましい。本発明で用いられるイリジウムの一つの好ましい態様として、Cl、BrまたはIをリガンドとして有するIrを中心金属とする6配位錯体が好ましく、6個全てのリガンドがCl、BrまたはIからなるIrを中心金属とする6配位錯体が更に好ましい。この場合、6配位錯体中にCl、BrまたはIが混在していてもよい。Cl、BrまたはIをリガンドとして有するIrを中心金属とする6配位錯体は、臭化銀含有相に含まれることが、高照度露光で硬調な階調を得るために特に好ましい。
【0082】
以下に、6個全てのリガンドがCl、BrまたはIからなるIrを中心金属とする6配位錯体の具体例を挙げるが、本発明におけるイリジウムはこれらに限定されない。
[IrCl6]2−
[IrCl6]3−
[IrBr6]2−
[IrBr6]3−
[IrI6]3−
【0083】
本発明で用いられるイリジウムの異なる好ましい態様として、ハロゲンまたはシアン以外のリガンドを少なくとも1個有するIrを中心金属とする6配位錯体が好ましく、H2O、OH、O、OCN、チアゾールまたは置換チアゾールをリガンドとして有するIrを中心金属とする6配位錯体が好ましく、少なくとも1個のH2O、OH、O、OCN、チアゾールまたは置換チアゾールをリガンドとして有し残りのリガンドがCl、BrまたはIからなるIrを中心金属とする6配位錯体が更に好ましい。更に、1個もしくは2個の5−メチルチアゾールをリガンドとして有し残りのリガンドがCl、BrまたはIからなるIrを中心金属とする6配位錯体が最も好ましい。
【0084】
以下に、少なくとも1個のH2O、OH、O、OCN、チアゾールまたは置換チアゾールをリガンドとして有し残りのリガンドがCl、BrまたはIからなるIrを中心金属とする6配位錯体の具体例を挙げるが、本発明におけるイリジウムはこれらに限定されない。
【0085】
[Ir(H2O)Cl5]2−
[Ir(H2O)2Cl4]−
[Ir(H2O)Br5]2−
[Ir(H2O)2Br4]−
[Ir(OH)Cl5]3−
[Ir(OH)2Cl4]3−
[Ir(OH)Br5]3−
[Ir(OH)2Br4]3−
[Ir(O)Cl5]4−
[Ir(O)2Cl4]5−
[Ir(O)Br5]4−
[Ir(O)2Br4]5−
[Ir(OCN)Cl5]3−
[Ir(OCN)Br5]3−
[Ir(thiazole)Cl5]2−
[Ir(thiazole)2Cl4]−
[Ir(thiazole)Br5]2−
[Ir(thiazole)2Br4]−
[Ir(5−methylthiazole)Cl5]2−
[Ir(5−methylthiazole)2Cl4]−
[Ir(5−methylthiazole)Br5]2−
[Ir(5−methylthiazole)2Br4]−
【0086】
本発明において、6個全てのリガンドがCl、BrまたはIからなるIrを中心金属とする6配位錯体、あるいはハロゲンまたはシアン以外のリガンドを少なくとも1個有するIrを中心金属とする6配位錯体の、いずれか一方を単独で使用することで好ましく用いられる。しかしながら、本発明の効果を一層高めるためには、6個全てのリガンドがCl、BrまたはIからなるIrを中心金属とする6配位錯体、およびハロゲンまたはシアン以外のリガンドを少なくとも1個有するIrを中心金属とする6配位錯体を併用することが好ましい。更に、少なくとも1個のH2O、OH、O、OCN、チアゾールまたは置換チアゾールをリガンドとして有し残りのリガンドがCl、BrまたはIからなるIrを中心金属とする6配位錯体は、この中から2種類のリガンド(H2O、OH、O、OCN、チアゾールまたは置換チアゾールから1種とCl、BrまたはIから1種)で構成されている錯体を用いることが好ましい。
【0087】
以上に挙げた金属錯体は陰イオンであり、陽イオンと塩を形成した時にはその対陽イオンとして水に溶解しやすいものが好ましい。具体的には、ナトリウムイオン、カリウムイオン、ルビジウムイオン、セシウムイオンおよびリチウムイオン等のアルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、アルキルアンモニウムイオンが好ましい。これらの金属錯体は、水のほかに水と混合し得る適当な有機溶媒(例えば、アルコール類、エーテル類、グリコール類、ケトン類、エステル類、アミド類等)との混合溶媒に溶かして使うことができる。これらのイリジウム錯体は、粒子形成中に銀1モル当たり1×10−10モルから1×10−3モル添加することが好ましく、1×10−8モルから1×10−5モル添加することが最も好ましい。
【0088】
本発明において上記のイリジウム錯体は、ハロゲン化銀粒子形成時に反応溶液中に直接添加するか、ハロゲン化銀粒子を形成するためのハロゲン化物水溶液中、あるいはそれ以外の溶液中に添加し、粒子形成反応溶液に添加することにより、ハロゲン化銀粒子内に組み込むのが好ましい。また、あらかじめイリジウム錯体を粒子内に組み込んだ微粒子で物理熟成してハロゲン化銀粒子に組み込むことも好ましい。さらにこれらの方法を組み合わせてハロゲン化銀粒子内へ含有させることもできる。
【0089】
これらの錯体をハロゲン化銀粒子に組み込む場合、粒子内部に均一に存在させることも行われるが、特開平4−208936号、特開平2−125245号、特開平3−188437号各公報に開示されている様に、粒子表面層のみに存在させることも好ましく、子内部のみに錯体を存在させ粒子表面には錯体を含有しない層を付加することも好ましい。また、米国特許第5,252,451号および同第5,256,530号明細書に開示されているように、錯体を粒子内に組み込んだ微粒子で物理熟成して粒子表面相を改質することも好ましい。さらに、これらの方法を組み合わせて用いることもでき、複数種の錯体を1つのハロゲン化銀粒子内に組み込んでもよい。上記の錯体を含有させる位置のハロゲン組成には特に制限はないが、6個全てのリガンドがCl、BrまたはIからなるIrを中心金属とする6配位錯体は、臭化銀濃度極大部に含有させることが好ましい。
【0090】
本発明においては、イリジウム以外に他の金属イオンをハロゲン化銀粒子の内部及び/または表面にドープするがことができる。用いる金属イオンとしては遷移金属イオンが好ましく、なかでも、鉄、ルテニウム、オスミウム、鉛、カドミウム、または、亜鉛であることが好ましい。さらにこれらの金属イオンは配位子を伴い6配位八面体型錯体として用いることがより好ましい。無機化合物を配位子として用いる場合には、シアン化物イオン、ハロゲン化物イオン、チオシアン、水酸化物イオン、過酸化物イオン、アジ化物イオン、亜硝酸イオン、水、アンモニア、ニトロシルイオン、または、チオニトロシルイオンを用いることが好ましく、上記の鉄、ルテニウム、オスミウム、鉛、カドミウム、または、亜鉛のいずれの金属イオンに配位させて用いることも好ましく、複数種の配位子を1つの錯体分子中に用いることも好ましい。また、配位子として有機化合物を用いることも出来、好ましい有機化合物としては主鎖の炭素数が5以下の鎖状化合物および/または5員環あるいは6員環の複素環化合物を挙げることが出来る。さらに好ましい有機化合物は分子内に窒素原子、リン原子、酸素原子、または、硫黄原子を金属への配位原子として有する化合物であり、特に好ましくはフラン、チオフェン、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、フラザン、ピラン、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジンであり、さらにこれらの化合物を基本骨格としそれらに置換基を導入した化合物もまた好ましい。
【0091】
金属イオンと配位子の組み合わせとして好ましくは、鉄イオン及びルテニウムイオンとシアン化物イオンの組み合わせである。本発明においては、イリジウムとこれらの化合物を併用することが好ましい。これらの化合物においてシアン化物イオンは、中心金属である鉄またはルテニウムへの配位数のうち過半数を占めることが好ましく、残りの配位部位はチオシアン、アンモニア、水、ニトロシルイオン、ジメチルスルホキシド、ピリジン、ピラジン、または、4,4’−ビピリジンで占められることが好ましい。最も好ましくは中心金属の6つの配位部位が全てシアン化物イオンで占められ、ヘキサシアノ鉄錯体またはヘキサシアノルテニウム錯体を形成することである。これらシアン化物イオンを配位子とする錯体は、粒子形成中に銀1モル当たり1×10−8モルから1×10−2モル添加することが好ましく、1×10−6モルから5×10−4モル添加することが最も好ましい。ルテニウムおよびオスミウムを中心金属とした場合にはニトロシルイオン、チオニトロシルイオン、または水分子と塩化物イオンとを配位子として共に用いることも好ましい。より好ましくはペンタクロロニトロシル錯体、ペンタクロロチオニトロシル錯体、または、ペンタクロロアクア錯体を形成することであり、ヘキサクロロ錯体を形成することも好ましい。これらの錯体は、粒子形成中に銀1モル当たり1×10−10モルから1×10−6モル添加することが好ましく、より好ましくは1×10−9モルから1×10−6モル添加することである。
【0092】
本発明に用いるハロゲン化銀乳剤には、感光材料の製造工程、保存中あるいは写真処理中のかぶりを防止する、あるいは写真性能を安定化させる目的で種々の化合物あるいはそれ等の前駆体を添加することができる。これらの化合物の具体例は前出の特開昭62−215272号公報明細書の第39頁〜第72頁に記載のものが好ましく用いられる。更にEP0447647号に記載された5−アリールアミノ−1,2,3,4−チアトリアゾール化合物(該アリール残基には少なくとも一つの電子吸引性基を持つ)も好ましく用いられる。
【0093】
また、本発明において、ハロゲン化銀乳剤の保存性を高めるため、特開平11−109576号に記載のヒドロキサム酸誘導体、特開平11−327094号に記載のカルボニル基に隣接して、両端がアミノ基もしくはヒドロキシル基が置換した二重結合を有す環状ケトン類(特に一般式(S1)で表されるもので、段落番号0036〜0071は本願の明細書に取り込むことができる。)、特開平11−143011号に記載のスルホ置換のカテコールやハイドロキノン類(例えば、4,5−ジヒドロキシ−1,3−ベンゼンジスルホン酸、2,5−ジヒドロキシ−1,4−ベンゼンジスルホン酸、3,4−ジヒドロキシベンゼンスルホン酸、2,3−ジヒドロキシベンゼンスルホン酸、2,5−ジヒドロキシベンゼンスルホン酸、3,4,5−トリヒドロキシベンゼンスルホン酸およびこれらの塩など)、米国特許第5,556,741号の一般式(A)で表されるヒドロキシルアミン類(米国特許第5,556,741号の第4欄の第56行〜第11欄の第22行の記載は本願においても好ましく適用され、本願の明細書の一部として取り込まれる)、特開平11−102045号の一般式(I)〜(III)で表される水溶性還元剤は本発明においても好ましく使用される。
【0094】
分光増感は、本発明の感光材料における各層の乳剤に対して所望の光波長域に分光感度を付与する目的で行われる。
本発明の感光材料において、青、緑、赤領域の分光増感に用いられる分光増感色素としては例えば、F.M.Harmer著 Heterocyclic compounds−Cyanine dyes andrelated compounds (John Wiley & Sons [New York,London] 社刊1964年)に記載されているものを挙げることができる。具体的な化合物の例ならびに分光増感法は、前出の特開昭62−215272号公報の第22頁右上欄〜第38頁に記載のものが好ましく用いられる。また、特に塩化銀含有率の高いハロゲン化銀乳剤粒子の赤感光性分光増感色素としては特開平3−123340号に記載された分光増感色素が安定性、吸着の強さ、露光の温度依存性等の観点から非常に好ましい。
【0095】
これらの分光増感色素の添加量は場合に応じて広範囲にわたり、ハロゲン化銀1モルあたり0.5×10−6モル〜1.0×10−2モルの範囲が好ましい。更に好ましくは、1.0×10−6モル〜5.0×10−3モルの範囲である。
【0096】
本発明に用いられるハロゲン化銀乳剤は、当業界に知られる金増感を施したものである。金増感を施すことにより、乳剤を高感度化でき、レーザー光等によって走査露光したときの写真性能の変動を小さくすることができるからである。本発明の金増感法は、既に述べたが、従来知られている金増感法を併用することも可能である。
従来知られている金増感を施すには、種々の無機金化合物や無機配位子を有する金(I)錯体及び有機配位子を有する金(I)化合物を利用することができる。無機金化合物としては、例えば塩化金酸もしくはその塩、無機配位子を有する金(I)錯体としては、例えばジチオシアン酸金(I)カリウム等のジチオシアン酸金化合物やジチオ硫酸金(I)3ナトリウム等のジチオ硫酸金化合物等の化合物を用いることができる。
【0097】
有機配位子(有機化合物)を有する金(I)化合物としては、特開平4−267249号に記載のビス金(I)メソイオン複素環類、例えばビス(1,4,5−トリメチル−1,2,4−トリアゾリウム−3−チオラート)オーレート(I)テトラフルオロボレート、特開平11−218870号に記載の有機メルカプト金(I)錯体、例えばカリウム ビス(1−[3−(2−スルホナートベンズアミド)フェニル]−5−メルカプトテトラゾールカリウム塩)オーレート(I)5水和物、特開平4−268550号に記載の窒素化合物アニオンが配位した金(I)化合物、例えば、ビス(1−メチルヒダントイナート)金(I)ナトリウム塩四水和物、を用いることができる。これらの有機配位子を有する金(I)化合物は、あらかじめ合成して単離したものを使用する他に、有機配位子とAu化合物(例えば塩化金酸やその塩)とを混合することにより、発生させて単離することなく、乳剤に添加することができる。更には、乳剤に有機配位子とAu化合物(例えば塩化金酸やその塩)とを別々に添加し、乳剤中で有機配位子を有する金(I)化合物を発生させてもよい。
また、米国特許第3、503、749号に記載されている金(I)チオレート化合物、特開平8−69074号、特開平8−69075号、特開平9−269554号に記載の金化合物、米国特許第5620841号、同5912112号、同5620841号、同5939245号、同5912111号に記載の化合物も用いることができる。
これらの化合物の添加量は場合に応じて広範囲に変わり得るがハロゲン化銀1モルあたり5×10−7〜5×10−3モル、好ましくは5×10−6〜5×10−4モルである。
【0098】
また、コロイド状硫化金を用いることも可能であり、その製造方法はリサーチ・ディスクロージャー(Reserch Disclosure,37154)、ソリッド ステート
イオニクス(Solid State Ionics )第79巻、60〜66頁、1995年刊、Compt.Rend.Hebt.Seances Acad.Sci.Sect.B第263巻、1328頁、1966年刊等に記載されている。上記Reserch Disclosureには、コロイド状硫化金の製造の際、チオシアナートイオンを用いる方法が記載されているが、代わりにメチオニンやチオジエタノールなどのチオエーテル化合物を用いることができる。
コロイド状硫化金としてさまざまなサイズのものを利用でき、平均粒径50nm以下のものを用いることが好ましく、平均粒径10nm以下がより好ましく、平均粒径3nm以下が更に好ましい。この粒径はTEM写真から測定できる。また、コロイド状硫化金の組成は、Au2S1 でもよく、Au2S1 〜Au2S2 の様な硫黄過剰な組成のものであってもよく、硫黄過剰な組成が好ましい。Au2S1.1 〜Au2S1.8 が更に好ましい。
このコロイド状硫化金の組成分析は、例えば、硫化金粒子を取り出して金の含有量と硫黄の含有量をそれぞれICP やヨードメトリーなどの分析法を利用して求めることができる。液相に溶解している金イオン 、イオウイオン(硫化水素やその塩を含む)が硫化金コロイド中に存在すると硫化金コロイド粒子の組成分析に影響する為、限外ろ過などにより硫化金粒子を分離した上で分析は行われる。硫化金コロイドの添加量は場合に応じて広範囲に変わり得るがハロゲン化銀1モルあたり金原子として5×10−7〜5×10−3モル、好ましくは5×10−6〜5×10−4モルである。
【0099】
本発明においては、金増感を更に他の増感法、例えば硫黄増感、セレン増感、テルル増感、還元増感あるいは金化合物以外を用いた貴金属増感等と組み合わせてもよい。
【0100】
本発明のハロゲン化銀写真感光材料には、従来公知の写真用素材や添加剤を使用できる。
例えば写真用支持体としては、透過型支持体や反射型支持体を用いることができる。透過型支持体としては、セルロースナイトレートフィルムやポリエチレンテレフタレートなどの透明フィルム、更には2,6−ナフタレンジカルボン酸(NDCA)とエチレングリコール(EG)とのポリエステルやNDCAとテレフタル酸とEGとのポリエステル等に磁性層などの情報記録層を設けたものが好ましく用いられる。反射型支持体としては特に複数のポリエチレン層やポリエステル層でラミネートされ、このような耐水性樹脂層(ラミネート層)の少なくとも一層に酸化チタン等の白色顔料を含有する反射支持体が好ましい。
【0101】
本発明においてさらに好ましい反射支持体としては、ハロゲン化銀乳剤層を設ける側の紙基体上に微小空孔を有するポリオレフィン層を有しているものが挙げられる。ポリオレフィン層は多層から成っていてもよく、その場合、好ましくはハロゲン化銀乳剤層側のゼラチン層に隣接するポリオレフィン層は微小空孔を有さず(例えばポリプロピレン、ポリエチレン)、紙基体上に近い側に微小空孔を有するポリオレフィン(例えばポリプロピレン、ポリエチレン)から成るものがより好ましい。紙基体および写真構成層の間に位置するこれら多層もしくは一層のポリオレフィン層の密度は0.40〜1.0g/ mlであることが好ましく、0.50〜0.70g/ mlがより好ましい。また、紙基体および写真構成層の間に位置するこれら多層もしくは一層のポリオレフィン層の厚さは10〜100μmが好ましく、15〜70μmがさらに好ましい。また、ポリオレフィン層と紙基体の厚さの比は0.05〜0.2が好ましく、0.1〜0.5がさらに好ましい。
【0102】
また、上記紙基体の写真構成層とは逆側(裏面)にポリオレフィン層を設けることも、反射支持体の剛性を高める点から好ましく、この場合、裏面のポリオレフィン層は表面が艶消しされたポリエチレンまたはポリプロピレンが好ましく、ポリプロピレンがより好ましい。裏面のポリオレフィン層は5〜50μmが好ましく、10〜30μmがより好ましく、さらに密度が0.7〜1.1g/mlであることが好ましい。本発明の反射支持体において、紙基体上に設けるポリオレフィン層に関する好ましい態様については、特開平10−333277号、同10−333278号、同11−52513号、同11−65024号、EP0880065号、およびEP0880066号に記載されている例が挙げられる。
【0103】
更に前記の耐水性樹脂層中には蛍光増白剤を含有するのが好ましい。また、蛍光増白剤は感光材料の親水性コロイド層中に分散してもよい。蛍光増白剤として、好ましくは、ベンゾオキサゾール系、クマリン系、ピラゾリン系が用いることができ、更に好ましくは、ベンゾオキサゾリルナフタレン系及びベンゾオキサゾリルスチルベン系の蛍光増白剤である。使用量は、特に限定されていが、好ましくは1〜100mg/m2である。耐水性樹脂に混合する場合の混合比は、好ましくは樹脂に対して0.0005〜3質量%であり、更に好ましくは0.001〜0.5質量%である。
反射型支持体としては、透過型支持体、または上記のような反射型支持体上に、白色顔料を含有する親水性コロイド層を塗設したものでもよい。
また、反射型支持体は、鏡面反射性または第2種拡散反射性の金属表面をもつ支持体であってもよい。
【0104】
また、本発明に係わる感光材料に用いられる支持体としては、ディスプレイ用に白色ポリエステル系支持体又は白色顔料を含む層がハロゲン化銀乳剤層を有する側の支持体上に設けられた支持体を用いてもよい。更に鮮鋭性を改良するために、アンチハレーション層を支持体のハロゲン化銀乳剤層塗布側又は裏面に塗設するのが好ましい。特に反射光でも透過光でもディスプレイが観賞できるように、支持体の透過濃度を0.35〜0.8の範囲に設定するのが好ましい。
【0105】
本発明に係わる感光材料には、画像のシャープネス等を向上させる目的で親水性コロイド層に、欧州特許EP0,337,490A2号の第27〜76頁に記載の、処理により脱色可能な染料(なかでもオキソノール系染料)を感光材料の680nmに於ける光学反射濃度が0.70以上になるように添加したり、支持体の耐水性樹脂層中に2〜4価のアルコール類(例えばトリメチロールエタン)等で表面処理された酸化チタンを12質量%以上(より好ましくは14質量%以上)含有させるのが好ましい。
【0106】
本発明に係わる感光材料には、イラジエーションやハレーションを防止したり、セーフライト安全性等を向上させる目的で親水性コロイド層に、欧州特許EP0337490A2号明細書の第27〜76頁に記載の、処理により脱色可能な染料(中でもオキソノール染料、シアニン染料)を添加することが好ましい。さらに、欧州特許EP0819977号明細書に記載の染料も本発明に好ましく添加される。
これらの水溶性染料の中には使用量を増やすと色分離やセーフライト安全性を悪化するものもある。色分離を悪化させないで使用できる染料としては、特開平5−127324号、同5−127325号、同5−216185号に記載された水溶性染料が好ましい。
【0107】
本発明においては、水溶性染料の代わり、あるいは水溶性染料と併用しての処理で脱色可能な着色層が用いられる。用いられる処理で脱色可能な着色層は、乳剤層に直かに接してもよく、ゼラチンやハイドロキノンなどの処理混色防止剤を含む中間層を介して接するように配置されていても良い。この着色層は、着色された色と同種の原色に発色する乳剤層の下層(支持体側)に設置されることが好ましい。各原色毎に対応する着色層を全て個々に設置することも、このうちに一部のみを任意に選んで設置することも可能である。また複数の原色域に対応する着色を行った着色層を設置することも可能である。着色層の光学反射濃度は、露光に使用する波長域(通常のプリンター露光においては400nm〜700nmの可視光領域、走査露光の場合には使用する走査露光光源の波長)において最も光学濃度の高い波長における光学濃度値が0.2以上3.0以下であることが好ましい。さらに好ましくは0.5以上2.5以下、特に0.8以上2.0以下が好ましい。
【0108】
着色層を形成するためには、従来公知の方法が適用できる。例えば、特開平2−282244号3頁右上欄から8頁に記載された染料や、特開平3−7931号3頁右上欄から11頁左下欄に記載された染料のように固体微粒子分散体の状態で親水性コロイド層に含有させる方法、アニオン性色素をカチオンポリマーに媒染する方法、色素をハロゲン化銀等の微粒子に吸着させて層中に固定する方法、特開平1−239544号に記載されているようなコロイド銀を使用する方法などである。色素の微粉末を固体状で分散する方法としては、たとえば、少なくともpH6以下では実質的に水不溶性であるが、少なくともpH8以上では実質的に水溶性である微粉末染料を含有させる方法が特開平2−308244号の第4〜13頁に記載されている。また、例えば、アニオン性色素をカチオンポリマーに媒染する方法としては、特開平2−84637号の第18〜26頁に記載されている。光吸収剤としてのコロイド銀の調製法については米国特許第2,688,601号、同3,459,563号に示されている。これらの方法のなかで微粉末染料を含有させる方法、コロイド銀を使用する方法などが好ましい。
【0109】
本発明のハロゲン化銀写真感光材料は、カラーネガフィルム、カラーポジフィルム、カラー反転フィルム、カラー反転印画紙、カラー印画紙等に用いられるが、中でもカラー印画紙として用いるのが好ましい。
カラー印画紙は、イエロー発色性ハロゲン化銀乳剤層、マゼンタ発色性ハロゲン化銀乳剤層およびシアン発色性ハロゲン化銀乳剤層をそれぞれ少なくとも1層ずつ有してなることが好ましく、一般には、これらのハロゲン化銀乳剤層は支持体から近い順にイエロー発色性ハロゲン化銀乳剤層、マゼンタ発色性ハロゲン化銀乳剤層、シアン発色性ハロゲン化銀乳剤層である。
【0110】
しかしながら、これとは異なった層構成を取っても構わない。
イエロ−カプラーを含有するハロゲン化銀乳剤層は支持体上のいずれの位置に配置されてもかまわないが、該イエローカプラー含有層にハロゲン化銀平板粒子を含有する場合は、マゼンタカプラー含有ハロゲン化銀乳剤層またはシアンカプラー含有ハロゲン化銀乳剤層の少なくとも一層よりも支持体から離れた位置に塗設されていることが好ましい。また、発色現像促進、脱銀促進、増感色素による残色の低減の観点からは、イエロ−カプラー含有ハロゲン化銀乳剤層は他のハロゲン化銀乳剤層より、支持体から最も離れた位置に塗設されていることが好ましい。更に、Blix退色の低減の観点からはシアンカプラー含有ハロゲン化銀乳剤層は他のハロゲン化銀乳剤層の中央の層が好ましく、光退色の低減の観点からはシアンカプラー含有ハロゲン化銀乳剤層は最下層が好ましい。また、イエロー、マゼンタおよびシアンのそれぞれの発色性層は2層または3層からなってもよい。例えば、特開平4−75055号、同9−114035号、同10−246940号、米国特許第5,576,159号等に記載のように、ハロゲン化銀乳剤を含有しないカプラー層をハロゲン化銀乳剤層に隣接して設け、発色層とすることも好ましい。
【0111】
本発明において適用されるハロゲン化銀乳剤やその他の素材(添加剤など)および写真構成層(層配置など)、並びにこの感光材料を処理するために適用される処理法や処理用添加剤としては、特開昭62−215272号、特開平2−33144号、欧州特許EP0,355,660A2号に記載されているもの、特に欧州特許EP0,355,660A2号に記載されているものが好ましく用いられる。更には、特開平5−34889号、同4−359249号、同4−313753号、同4−270344号、同5−66527号、同4−34548号、同4−145433号、同2−854号、同1−158431号、同2−90145号、同3−194539号、同2−93641号、欧州特許公開第0520457A2号等に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料やその処理方法も好ましい。
【0112】
特に、本発明においては、前記の反射型支持体やハロゲン化銀乳剤、更にはハロゲン化銀粒子中にドープされる異種金属イオン種、ハロゲン化銀乳剤の保存安定剤又はカブリ防止剤、化学増感法(増感剤)、分光増感法(分光増感剤)、シアン、マゼンタ、イエローカプラー及びその乳化分散法、色像保存性改良剤(ステイン防止剤や褪色防止剤)、染料(着色層)、ゼラチン種、感光材料の層構成や感光材料の被膜pHなどについては、下記表1に示す特許の各箇所に記載のものが特に好ましく適用できる。
【0113】
【表1】
【0114】
本発明において用いられるシアン、マゼンタ及びイエローカプラーとしては、その他、特開昭62−215272号公報の第91頁右上欄4行目〜121頁左上欄6行目、特開平2−33144号公報の第3頁右上欄14行目〜18頁左上欄末行目と第30頁右上欄6行目〜35頁右下欄11行目やEP0355,660A2号明細書の第4頁15行目〜27行目、5頁30行目〜28頁末行目、45頁29行目〜31行目、47頁23行目〜63頁50行目に記載のカプラーも有用である。
また、本発明はWO−98/33760号の一般式(II)及び(III)、特開平10−221825号公報の一般式(D)で表される化合物を添加してもよく、好ましい。
【0115】
本発明に使用可能なシアン色素形成カプラー(単に、「シアンカプラー」という場合がある)としては、ピロロトリアゾール系カプラーが好ましく用いられ、特開平5−313324号公報の一般式(I)又は(II)で表されるカプラー及び特開平6−347960号公報の一般式(I)で表されるカプラー並びにこれらの特許に記載されている例示カプラーが特に好ましい。また、フェノール系、ナフトール系のシアンカプラーも好ましく、例えば、特開平10−333297号公報に記載の一般式(ADF)で表されるシアンカプラーが好ましい。上記以外のシアンカプラーとしては、欧州特許EP0488248号明細書及びEP0491197A1号明細書に記載のピロロアゾール型シアンカプラー、米国特許第5,888,716号に記載の2,5−ジアシルアミノフェノールカプラー、米国特許第4,873,183号明細書、同第4,916,051号明細書に記載の6位に電子吸引性基、水素結合基を有するピラゾロアゾール型シアンカプラー、特に、特開平8−171185号公報、同8−311360号公報、同8−339060号公報に記載の6位にカルバモイル基を有するピラゾロアゾール型シアンカプラーも好ましい。
【0116】
また、特開平2−33144号公報に記載のジフェニルイミダゾール系シアンカプラーの他に、欧州特許EP0333185A2号明細書に記載の3−ヒドロキシピリジン系シアンカプラー(中でも具体例として列挙されたカプラー(42)の4当量カプラーに塩素離脱基をもたせて2当量化したものや、カプラー(6)や(9)が特に好ましい)や特開昭64−32260号公報に記載された環状活性メチレン系シアンカプラー(中でも具体例として列挙されたカプラー例3、8、34が特に好ましい)、欧州特許EP0456226A1号明細書に記載のピロロピラゾール型シアンカプラー、欧州特許EP0484909号明細書に記載のピロロイミダゾール型シアンカプラーを使用することもできる。
【0117】
なお、これらのシアンカプラーのうち、特開平11−282138号公報に記載の一般式(I)で表されるピロロアゾール系シアンカプラーが特に好ましく、該特許の段落番号0012〜0059の記載は例示シアンカプラー(1)〜(47)を含め、本願にそのまま適用され、本願の明細書の一部として好ましく取り込まれる。
【0118】
本発明に用いられるマゼンタ色素形成カプラー(単に、「マゼンタカプラー」という場合がある)としては、前記の表の公知文献に記載されたような5−ピラゾロン系マゼンタカプラーやピラゾロアゾール系マゼンタカプラーが用いられるが、中でも色相や画像安定性、発色性等の点で特開昭61−65245号公報に記載されたような2級又は3級アルキル基がピラゾロトリアゾール環の2、3又は6位に直結したピラゾロトリアゾールカプラー、特開昭61−65246号公報に記載されたような分子内にスルホンアミド基を含んだピラゾロアゾールカプラー、特開昭61−147254号公報に記載されたようなアルコキシフェニルスルホンアミドバラスト基を持つピラゾロアゾールカプラーや欧州特許第226,849A号明細書や同第294,785A号明細書に記載されたような6位にアルコキシ基やアリールオキシ基をもつピラゾロアゾールカプラーの使用が好ましい。特に、マゼンタカプラーとしては特開平8−122984号公報に記載の一般式(M−I)で表されるピラゾロアゾールカプラーが好ましく、該特許の段落番号0009〜0026はそのまま本願に適用され、本願の明細書の一部として取り込まれる。これに加えて、欧州特許第854384号明細書、同第884640号明細書に記載の3位と6位の両方に立体障害基を有するピラゾロアゾールカプラーも好ましく用いられる。
【0119】
また、イエロー色素形成カプラー(単に、「イエローカプラー」という場合がある)としては、前記表中に記載の化合物の他に、欧州特許EP0447969A1号明細書に記載のアシル基に3〜5員の環状構造を有するアシルアセトアミド型イエローカプラー、欧州特許EP0482552A1号明細書に記載の環状構造を有するマロンジアニリド型イエローカプラー、欧州公開特許第953870A1号明細書、同第953871A1号明細書、同第953872A1号明細書、同第953873A1号明細書、同第953874A1号明細書、同第953875A1号明細書等に記載のピロール−2又は3−イル若しくはインドール−2又は3−イルカルボニル酢酸アニリド系カプラー、米国特許第5,118,599号明細書に記載されたジオキサン構造を有するアシルアセトアミド型イエローカプラーが好ましく用いられる。その中でも、アシル基が1−アルキルシクロプロパン−1−カルボニル基であるアシルアセトアミド型イエローカプラー、アニリドの一方がインドリン環を構成するマロンジアニリド型イエローカプラーの使用が特に好ましい。これらのカプラーは、単独あるいは併用することができる。
【0120】
本発明に使用するカプラーは、前出表中記載の高沸点有機溶媒の存在下で(又は不存在下で)ローダブルラテックスポリマー(例えば米国特許第4,203,716号明細書)に含浸させて、又は水不溶性かつ有機溶媒可溶性のポリマーとともに溶かして親水性コロイド水溶液に乳化分散させることが好ましい。好ましく用いることのできる水不溶性かつ有機溶媒可溶性のポリマーは、米国特許第4,857,449号明細書の第7欄〜15欄及び国際公開WO88/00723号明細書の第12頁〜30頁に記載の単独重合体又は共重合体が挙げられる。より好ましくはメタクリレート系あるいはアクリルアミド系ポリマー、特にアクリルアミド系ポリマーの使用が色像安定性等の上で好ましい。
【0121】
本発明においては公知の混色防止剤を用いることができるが、その中でも以下に挙げる特許に記載のものが好ましい。
例えば、特開平5−333501号に記載の高分子量のレドックス化合物、WO98/33760号、米国特許第4,923,787号等に記載のフェニドンやヒドラジン系化合物、特開平5−249637号、特開平10−282615号および独国特許第19629142A1号等に記載のホワイトカプラーを用いることができる。また、特に現像液のpHを上げ、現像の迅速化を行う場合には独国特許第19618786A1号、欧州特許第839623A1号、欧州特許第842975A1号、独国特許19806846A1号および仏国特許第2760460A1号等に記載のレドックス化合物を用いることも好ましい。
【0122】
本発明においては紫外線吸収剤としてモル吸光係数の高いトリアジン骨核を有する化合物を用いることが好ましく、例えば、以下の特許に記載の化合物を用いることができる。これらは、感光性層または/および非感光性に好ましく添加される。
特開昭46−3335号、同55−152776号、特開平5−197074号、同5−232630号、同5−307232号、同6−211813号、同8−53427号、同8−234364号、同8−239368号、同9−31067号、同10−115898号、同10−147577号、同10−182621号、独国特許第19739797A号、欧州特許第711804A号および特表平8−501291号等に記載されている化合物である。
【0123】
本発明に係わる感光材料に用いることのできる結合剤又は保護コロイドとしては、ゼラチンを用いることが有利であるが、それ以外の親水性コロイドを単独であるいはゼラチンとともに用いることができる。好ましいゼラチンとしては、鉄、銅、亜鉛、マンガン等の不純物として含有される重金属は、好ましくは5ppm以下、更に好ましくは3ppm以下である。
また、感光材料中に含まれるカルシウム量は、好ましくは20mg/m2 以下、更に好ましくは10mg/m2 以下、最も好ましくは5mg/m2 以下である。
本発明においては、親水性コロイド層中に繁殖して画像を劣化させる各種の黴や細菌を防ぐために、特開昭63−271247号公報に記載のような防菌・防黴剤を添加するのが好ましい。
さらに、感光材料の被膜pHは4.0〜7.0が好ましく、より好ましくは4.0〜6.5である。
【0124】
本発明における写真構成層構成層中の総塗設ゼラチン量は3g/m2以上6g/m2以下であることが好ましく、3g/m2以上5g/m2以下であることが更に好ましい。また、超迅速処理した場合でも、現像進行性、及び定着漂白性、残色を満足するために、写真構成層全体の膜厚が3μm 〜7.5μm であることが好ましく、更に3μm 〜6.5μm であることが好ましい。乾燥膜厚の評価方法は、乾燥膜剥離前後の膜厚の変化、あるいは断面の光学顕微鏡や電子顕微鏡での観察により測定することができる。本発明において、現像進行性と乾燥速度を上げることを両立するために、膨潤膜厚が8μm 〜19μm であることが好ましく、更に9μm 〜18μm であることが好ましい。膨潤膜厚の測定としては、35℃の水溶液中に乾燥した感光材料を浸し、膨潤して十分平衡に達した状態で打点方法にて測定することができる。本発明における塗布銀量は、0.2g/m2〜0.5g/m2であることが好ましく、0.2g/m2〜0.45g/m2であることが更に好ましく、0.2g/m2〜0.40g/m2であることが最も好ましい。
【0125】
本発明においては、感光材料の塗布安定性向上、静電気発生防止、帯電量調節等の点から界面活性剤を感光材料に添加することができる。界面活性剤としてはアニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、ベタイン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤があり、例えば特開平5−333492号公報に記載のものが挙げられる。本発明に用いる界面活性剤としては、フッ素原子含有の界面活性剤が好ましい。特に、フッ素原子含有界面活性剤を好ましく用いることができる。これらのフッ素原子含有界面活性剤は単独で用いても、従来公知の他の界面活性剤と併用しても構わないが、好ましくは従来公知の他の界面活性剤との併用である。これらの界面活性剤の感光材料への添加量は特に限定されるものではないが、一般的には、1×10−5〜1g/m2、好ましくは1×10−4〜1×10−1g/m2、更に好ましくは1×10−3〜1×10−2g/m2である。
【0126】
本発明の感光材料は、画像情報に応じて光を照射される露光工程と、前記光照射された感光材料を現像する現像工程とにより、画像を形成することができる。本発明の感光材料は、通常のネガプリンターを用いたプリントシステムに使用される以外に、陰極線(CRT)を用いた走査露光方式にも適している。陰極線管露光装置は、レーザーを用いた装置に比べて、簡便でかつコンパクトであり、低コストになる。また、光軸や色の調整も容易である。画像露光に用いる陰極線管には、必要に応じてスペクトル領域に発光を示す各種発光体が用いられる。例えば赤色発光体、緑色発光体、青色発光体のいずれか1種、あるいは2種以上が混合されて用いられる。スペクトル領域は、上記の赤、緑、青に限定されず、黄色、橙色、紫色或いは赤外領域に発光する蛍光体も用いられる。特に、これらの発光体を混合して白色に発光する陰極線管がしばしば用いられる。
【0127】
感光材料が異なる分光感度分布を有する複数の感光性層を持ち、陰極性管も複数のスペクトル領域の発光を示す蛍光体を有する場合には、複数の色を一度に露光、即ち陰極線管に複数の色の画像信号を入力して管面から発光させてもよい。各色ごとの画像信号を順次入力して各色の発光を順次行わせ、その色以外の色をカットするフィルムを通して露光する方法(面順次露光)を採ってもよく、一般には、面順次露光の方が、高解像度の陰極線管を用いることができるため、高画質化のためには好ましい。
【0128】
本発明の感光材料は、ガスレーザー、発光ダイオード、半導体レーザー、半導体レーザーあるいは半導体レーザーを励起光源に用いた固体レーザーと非線形光学結晶を組合わせた第二高調波発光光源(SHG)等の単色高密度光を用いたデジタル走査露光方式が好ましく使用される。システムをコンパクトで、安価なものにするために半導体レーザー、半導体レーザーあるいは固体レーザーと非線形光学結晶を組合わせた第二高調波発生光源(SHG)を使用することが好ましい。特にコンパクトで、安価、更に寿命が長く安定性が高い装置を設計するためには半導体レーザーの使用が好ましく、露光光源の少なくとも一つは半導体レーザーを使用することが好ましい。
【0129】
このような走査露光光源を使用する場合、本発明の感光材料の分光感度極大波長は、使用する走査露光用光源の波長により任意に設定することができる。半導体レーザーを励起光源に用いた固体レーザーあるいは半導体レーザーと非線形光学結晶を組合わせて得られるSHG光源では、レーザーの発振波長を半分にできるので、青色光、緑色光が得られる。従って、感光材料の分光感度極大は通常の青、緑、赤の3つの波長領域に持たせることが可能である。このような走査露光における露光時間は、画素密度を400dpiとした場合の画素サイズを露光する時間として定義すると、好ましい露光時間としては10−4秒以下、更に好ましくは10−6秒以下である。
【0130】
本発明のハロゲン化銀カラー写真感光材料は、発光波長420nm〜460nmの青色レーザーのコヒーレント光により像様露光する場合に効果を発現する。青色レーザーの中でも、青色半導体レーザーを用いることが特に好ましい。発行波長は430nm〜450nmであることが、本発明の効果を際立たせる意味で好ましい。
レーザー光源として具体的には、波長430〜460nmの青色半導体レーザー(2001年3月 第48回応用物理学関係連合講演会で日亜化学発表)、半導体レーザー(発振波長 約1060nm)を導波路状の反転ドメイン構造を有するLiNbO3のSHG結晶により波長変換して取り出した約530nmの緑色レーザー、波長約685nmの赤色半導体レーザー(日立タイプNo.HL6738MG)、波長約650nmの赤色半導体レーザー(日立タイプNo.HL6501MG)などが好ましく用いられる。
【0131】
上記のような露光を施してから、発色現像を開始するまでのいわゆる潜像時間は、9秒以内の短時間であってもよいし、露光装置と処理機が分離独立したシステムにおいて、潜像時間が数十分以上の長さでもよい。露光装置と処理機が合体したプリンターでは、トータルのプリント時間を迅速にできる点で好ましい。
【0132】
本発明のハロゲン化銀カラー写真感光材料は、以下の公知資料に記載の露光、現像システムと組み合わせることで好ましく用いることができる。前記現像システムとしては、特開平10−333253号公報に記載の自動プリント並びに現像システム、特開2000−10206号公報に記載の感光材料搬送装置、特開平11−215312号公報に記載の画像読取装置を含む記録システム、特開平11−88619号公報並びに特開平10−202950号公報に記載のカラー画像記録方式からなる露光システム、特開平10−210206号公報に記載の遠隔診断方式を含むデジタルフォトプリントシステム、及び特願平10−159187号公報に記載の画像記録装置を含むフォトプリントシステムが挙げられる。
【0133】
本発明に適用できる好ましい走査露光方式については、前記の表に掲示した特許に詳しく記載されている。
【0134】
本発明においては、欧州特許EP0789270A1明細書や同EP0789480A1号明細書に記載のように、画像情報を付与する前に、予め、黄色のマイクロドットパターンを前露光し、複写規制を施しても構わない。
【0135】
本発明の感光材料の処理には、特開平2−207250号公報の第26頁右下欄1行目〜34頁右上欄9行目、及び特開平4−97355号公報の第5頁左上欄17行目〜18頁右下欄20行目に記載の処理素材や処理方法が好ましく適用できる。また、この現像液に使用する保恒剤としては、前記の表に掲示した特許に記載の化合物が好ましく用いられる。
【0136】
本発明は迅速処理適性を有する感光材料として適用される。発色現像時間は28秒以下、好ましくは25秒以下6秒以上、より好ましくは20秒以下6秒以上である。同様に、漂白定着時間は好ましくは30秒以下、更に好ましくは25秒以下6秒以上、より好ましくは20秒以下6秒以上である。また、水洗又は安定化時間は、好ましくは60秒以下、更に好ましくは40秒以下6秒以上である。なお、発色現像時間とは、感光材料が発色現像液中に入ってから次の処理工程の漂白定着液に入るまでの時間をいう。例えば、自動現像機などで処理される場合には、感光材料が発色現像液中に浸漬されている時間(いわゆる液中時間)と、感光材料が発色現像液を離れ次の処理工程の漂白定着浴に向けて空気中を搬送されている時間(いわゆる空中時間)との両者の合計を発色現像時間という。同様に、漂白定着時間とは、感光材料が漂白定着液中に入ってから次の水洗又は安定浴に入るまでの時間をいう。また、水洗又は安定化時間とは、感光材料が水洗又は安定化液中に入ってから乾燥工程に向けて液中にある時間(いわゆる液中時間)をいう。
【0137】
本発明の感光材料を露光後、現像する方法としては、従来のアルカリ剤と現像主薬を含む現像液で現像する方法、現像主薬を感光材料に内蔵し、現像主薬を含まないアルカリ液などのアクチベーター液で現像する方法などの湿式方式のほか、処理液を用いない熱現像方式などを用いることができる。特に、アクチベーター方法は、現像主薬を処理液に含まないため、処理液の管理や取扱いが容易であり、また廃液処理時の負荷が少なく環境保全上の点からも好ましい方法である。アクチベーター方法において、感光材料中に内蔵される現像主薬又はその前駆体としては、例えば、特開平8−234388号公報、同9−152686号公報、同9−152693号公報、同9−211814号公報、同9−160193号公報に記載されたヒドラジン型化合物が好ましい。
【0138】
また、感光材料の塗布銀量を低減し、過酸化水素を用いた画像増幅処理(補力処理)する現像方法も好ましく用いられる。特に、この方法をアクチベーター方法に用いることは好ましい。具体的には、特開平8−297354号公報、同9−152695号公報に記載された過酸化水素を含むアクチベーター液を用いた画像形成方法が好ましく用いられる。前記アクチベーター方法において、アクチベーター液で処理後、通常脱銀処理されるが、低銀量の感光材料を用いた画像増幅処理方法では、脱銀処理を省略し、水洗又は安定化処理といった簡易な方法を行うことができる。また、感光材料から画像情報をスキャナー等で読み取る方式では、撮影用感光材料などの様に高銀量の感光材料を用いた場合でも、脱銀処理を不要とする処理形態を採用することができる。
【0139】
本発明で用いられるアクチベーター液、脱銀液(漂白/定着液)、水洗及び安定化液の処理素材や処理方法は公知のものを用いることができる。好ましくは、リサーチ・ディスクロージャーItem 36544(1994年9月)第536頁〜第541頁、特開平8−234388号公報に記載されたものを用いることができる。
【0140】
【実施例】
実施例1
(乳剤B−Hの調製)
攪拌したゼラチン水溶液中に、硝酸銀と塩化ナトリウムを同時添加して混合する定法で、球相当径0.55μm、変動係数10%の立方体高塩化銀乳剤を調製した。但し、硝酸銀の添加が80%の時点から90%の時点にかけて、臭化カリウム(出来上がりのハロゲン化銀1モルあたり1モル%)およびK4[Ru(CN)6]を添加した。硝酸銀の添加が90%終了した時点で沃化カリウム(出来上がりのハロゲン化銀1モルあたり0.1モル%)を添加した。更に硝酸銀の添加が92%の時点から98%の時点にかけて、K2[Ir(5−methylthiazole)Cl5]およびK2[Ir(H2O)Cl5]を添加した。得られた乳剤に脱塩処理を施した後、ゼラチンを加え再分散した。この乳剤にベンゼンチオスルフォン酸ナトリウムと増感色素Aおよび増感色素Bを添加し、硫黄増感剤としてチオ硫酸ナトリウム5水和物と金増感剤としてビス(1,4,5−トリメチル−1,2,4−トリアゾリウム−3−チオラート)オーレート(I)テトラフルオロボレートを用い最適になるように熟成した。更に1−フェニル−5−メルカプトテトラゾールおよび1−(5−メチルウレイドフェニル)−5−メルカプトテトラゾールを添加した。このようにして得られた乳剤を、乳剤B−Hとした。
(乳剤B−Lの調製)
乳剤B−Hとは、硝酸銀と塩化ナトリウムの添加速度のみを変えて、球相当径0.45μm、変動係数10%の立方体高塩化銀乳剤を調製した。得られた乳剤を、乳剤B−Lとした。
【0141】
【化22】
【0142】
(乳剤G−Hの調製)
攪拌したゼラチン水溶液中に、硝酸銀と塩化ナトリウムを同時添加して混合する定法で、球相当径0.35μm、変動係数10%の立方体高塩化銀乳剤を調製した。但し、硝酸銀の添加が80%の時点から90%の時点にかけて、K4[Ru(CN)6]を添加した。硝酸銀の添加が80%の時点から100%の時点にかけて、臭化カリウム(出来上がりのハロゲン化銀1モルあたり1モル%)を添加した。硝酸銀の添加が90%終了した時点で沃化カリウム(出来上がりのハロゲン化銀1モルあたり0.1モル%)を添加した。硝酸銀の添加が92%の時点から95%の時点にかけて、K2[Ir(5−methylthiazole) Cl5]を添加した。更に硝酸銀の添加が92%の時点から98%の時点にかけて、K2[Ir(H2O)Cl5]を添加した。得られた乳剤に脱塩処理を施した後、ゼラチンを加え再分散した。この乳剤にベンゼンチオスルフォン酸ナトリウムを添加し、硫黄増感剤としてチオ硫酸ナトリウム5水和物と金増感剤としてビス(1,4,5−トリメチル−1,2,4−トリアゾリウム−3−チオラート)オーレート(I)テトラフルオロボレートを用い最適になるように熟成した。更に増感色素C、1−フェニル−5−メルカプトテトラゾール、1−(5−メチルウレイドフェニル)−5−メルカプトテトラゾールおよび臭化カリウムを添加した。このようにして得られた乳剤を、乳剤G−Hとした。
【0143】
【化23】
【0144】
(乳剤R−Hの調製)
攪拌したゼラチン水溶液中に、硝酸銀と塩化ナトリウムを同時添加して混合する定法で、球相当径0.35μm、変動係数10%の立方体高塩化銀乳剤を調製した。但し、硝酸銀の添加が80%の時点から90%の時点にかけて、K4[Ru(CN)6]を添加した。硝酸銀の添加が80%の時点から100%の時点にかけて、臭化カリウム(出来上がりのハロゲン化銀1モルあたり1モル%)を添加した。硝酸銀の添加が90%終了した時点で沃化カリウム(出来上がりのハロゲン化銀1モルあたり0.1モル%)を添加した。硝酸銀の添加が92%の時点から95%の時点にかけて、K2[Ir(5−methylthiazole)Cl5]を添加した。更に硝酸銀の添加が92%の時点から98%の時点にかけて、K2[Ir(H2O)Cl5]を添加した。得られた乳剤に脱塩処理を施した後、ゼラチンを加え再分散した。この乳剤にベンゼンチオスルフォン酸ナトリウムを添加し、硫黄増感剤としてチオ硫酸ナトリウム5水和物と金増感剤としてビス(1,4,5−トリメチル−1,2,4−トリアゾリウム−3−チオラート)オーレート(I)テトラフルオロボレートを用い最適になるように熟成した。更に増感色素H、1−フェニル−5−メルカプトテトラゾール、1−(5−メチルウレイドフェニル)−5−メルカプトテトラゾール、化合物Iおよび臭化カリウムを添加した。このようにして得られた乳剤を、乳剤R−Hとした。
(乳剤R−Lの調製)
乳剤R−Hとは、硝酸銀と塩化ナトリウムの添加速度のみを変えて、球相当径0.28μm、変動係数10%の立方体高塩化銀乳剤を調製した。得られた乳剤を、乳剤R−Lとした。
【0145】
【化24】
【0146】
(カラー写真感光材料、塗布サンプルの調整)
【0147】
紙の両面をポリエチレン樹脂で被覆してなる支持体の表面に、コロナ放電処理を施した後、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを含むゼラチン下塗層を設け、さらに第一層〜第七層の写真構成層を順次塗設して、以下に示す層構成のハロゲン化銀カラー写真感光材料の試料を作製した。各写真構成層用の塗布液は、以下のようにして調製した。
【0148】
第一層塗布液調製
イエローカプラー(ExY)57g、色像安定剤(Cpd−1)7g、色像安定剤(Cpd−2)4g、色像安定剤(Cpd−3)7g、色像安定剤(Cpd−8)2gを溶媒(Solv−1)21g及び酢酸エチル80mlに溶解し、この液を4gのドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを含む23.5質量%ゼラチン水溶液220g中に高速攪拌乳化機(ディゾルバー)で乳化分散し、水を加えて900gの乳化分散物Aを調製した。
一方、前記乳化分散物Aと乳剤B−H、B−Lを混合溶解し、後記組成となるように第一層塗布液を調製した。乳剤塗布量は、銀量換算塗布量を示す。
【0149】
第二層〜第七層用の塗布液も第一層塗布液と同様の方法で調製した。各層のゼラチン硬化剤としては、1−オキシ−3,5−ジクロロ−s−トリアジンナトリウム塩(H−1)、(H−2)、(H−3)を用いた。また、各層にAb−1、Ab−2、Ab−3、及びAb−4をそれぞれ全量が15.0mg/m2、60.0mg/m2、5.0mg/m2及び10.0mg/m2となるように添加した。
【0150】
【化25】
【0151】
【化26】
【0152】
また、緑感性乳剤層および赤感性乳剤層に対し、1−フェニル−5−メルカプトテトラゾールを、それぞれハロゲン化銀1モル当り1.0×10−3モルおよび5.9×10−4モル添加した。さらに、第二層、第四層および第六層にも1−フェニル−5−メルカプトテトラゾールを、それぞれ0.2mg/m2 、0.2mg/m2 および0.6mg/m2 となるように添加した。
赤感性乳剤層にメタクリル酸とアクリル酸ブチルの共重合体ラテックス(質量比1:1、平均分子量200000〜400000)を0.05g/m2 添加した。また、第二層、第四層および第六層にカテコール−3,5−ジスルホン酸二ナトリウムをそれぞれ6mg/m2 、6mg/m2 、18mg/m2 となるように添加した。また、イラジエーション防止のために、以下の染料(カッコ内は塗布量を表す)を添加した。
【0153】
【化27】
【0154】
(層構成)
以下に、各層の構成を示す。数字は塗布量(g/m2)を表す。ハロゲン化銀乳剤は、銀換算塗布量を表す。
支持体
ポリエチレン樹脂ラミネート紙
[第一層側のポリエチレン樹脂に白色顔料(TiO2;含有率16質量%、ZnO;含有率4質量%)と蛍光増白剤(4,4’−ビス(5−メチルベンゾオキサゾリル)スチルベン。含有率0.03質量%)、青味染料(群青)を含む]
第一層(青感性乳剤層)
乳剤B−H 0.095
乳剤B−L 0.095
ゼラチン 1.00
イエローカプラー(ExY) 0.46
色像安定剤(Cpd−1) 0.06
色像安定剤(Cpd−2) 0.03
色像安定剤(Cpd−3) 0.06
色像安定剤(Cpd−8) 0.02
溶媒(Solv−1) 0.17
【0155】
第二層(混色防止層)
ゼラチン 0.50
混色防止剤(Cpd−4) 0.05
色像安定剤(Cpd−5) 0.01
色像安定剤(Cpd−6) 0.06
色像安定剤(Cpd−7) 0.01
溶媒(Solv−1) 0.03
溶媒(Solv−2) 0.11
【0156】
第三層(緑感性乳剤層)
乳剤G−H 0.12
ゼラチン 1.36
マゼンタカプラー(ExM) 0.15
紫外線吸収剤(UV−A) 0.14
色像安定剤(Cpd−2) 0.02
色像安定剤(Cpd−4) 0.002
色像安定剤(Cpd−6) 0.09
色像安定剤(Cpd−8) 0.02
色像安定剤(Cpd−9) 0.03
色像安定剤(Cpd−10) 0.01
色像安定剤(Cpd−11) 0.0001
溶媒(Solv−3) 0.11
溶媒(Solv−4) 0.22
溶媒(Solv−5) 0.20
【0157】
第四層(混色防止層)
ゼラチン 0.36
混色防止層(Cpd−4) 0.03
色像安定剤(Cpd−5) 0.006
色像安定剤(Cpd−6) 0.05
色像安定剤(Cpd−7) 0.004
溶媒(Solv−1) 0.02
溶媒(Solv−2) 0.08
【0158】
第五層(赤感性乳剤層)
乳剤R−H 0.05
乳剤R−L 0.05
ゼラチン 1.11
シアンカプラー(ExC−2) 0.13
シアンカプラー(ExC−3) 0.03
色像安定剤(Cpd−1) 0.05
色像安定剤(Cpd−6) 0.06
色像安定剤(Cpd−7) 0.02
色像安定剤(Cpd−9) 0.04
色像安定剤(Cpd−10) 0.01
色像安定剤(Cpd−14) 0.01
色像安定剤(Cpd−15) 0.12
色像安定剤(Cpd−16) 0.03
色像安定剤(Cpd−17) 0.09
色像安定剤(Cpd−18) 0.07
溶媒(Solv−5) 0.15
溶媒(Solv−8) 0.05
【0159】
第六層(紫外線吸収層)
ゼラチン 0.46
紫外線吸収剤(UV−B) 0.45
化合物(S1−4) 0.0015
溶媒(Solv−7) 0.25
第七層(保護層)
ゼラチン 1.00
ポリビニルアルコールのアクリル変性共重合体
(変性度17%) 0.04
流動パラフィン 0.02
界面活性剤(Cpd−13) 0.01
【0160】
【化28】
【0161】
【化29】
【0162】
【化30】
【0163】
【化31】
【0164】
【化32】
【0165】
【化33】
【0166】
【化34】
【0167】
【化35】
【0168】
【化36】
【0169】
【化37】
【0170】
以下に処理工程を示す。
[処理]
下記処理工程にて使用した発色現像補充液の容量が発色現像タンク容量の0.5倍となるまで試料101を用いて連続処理を行った。
【0171】
処理工程 温度 時間 補充量*
発色現像 45.0℃ 16秒 45mL
漂白定着 40.0℃ 16秒 35mL
リンス1 40.0℃ 8秒 −
リンス2 40.0℃ 8秒 −
リンス3 ** 40.0℃ 8秒 −
リンス4 ** 38.0℃ 8秒 121mL
乾燥 80.0℃ 16秒
(注)*感光材料1m2あたりの補充量
**富士写真フイルム(株)製リンスクリーニングシステムRC50Dをリンス(3)に装着し、リンス(3)からリンス液を取り出してポンプにより逆浸透モジュール(RC50D)へ送る。同槽で送られた透過水はリンスに供給し、濃縮液はリンス(3)に戻す。逆浸透モジュールへの透過水量は50〜300mL/分を維持するようにポンプ圧を調整し、1日10時間温調循環させた。リンスは(1)から(4)への4タンク向流方式とした。
【0172】
各処理液の組成は以下の通りである。
【0173】
【0174】
【0175】
【化38】
【0176】
以上のようにして得られた試料を試料101とした。試料101の緑感性乳剤層の乳剤G−Hの代わりに、化学増感工程で後述の表2に示す化合物を用いた表2に記載の乳剤に変更し、試料101と同様にして残りの試料を作製した。
【0177】
【表2】
【0178】
これらの試料の写真特性を調べるために以下のような実験を行った。
実験1 センシトメトリー(低照度および高照度)
各塗布試料に対して感光計(富士写真フイルム(株)製FWH型)を用いて、センシトメトリー用の階調露光を与えた。SP−2フィルターを装着し、露光量200lx・sec(ルックス・秒)で、低照度10秒間露光した。
また、高照度露光用感光計(山下電装(株)製HIE型)を用いて、センシトメトリー用の階調露光を与えた。SP−2フィルターを装着し、高照度10−4秒間露光した。
露光後は、後述する発色現像処理Aを行った。
【0179】
処理後の各試料のマゼンタ発色濃度を測定し、10秒露光低照度感度、10−4秒露光高照度感度をそれぞれ求めた。感度は、最低発色濃度より1.7高い発色濃度を与える露光量の逆数をもって規定し、試料101の現像処理した感度を100としたときの相対値で表した。
【0180】
実験2 感度の露光湿度依存性
各試料に露光を与える際の相対湿度(RH)を55%及び80%に設定した。前記1/10秒間露光後に処理Aを行い、各試料のマゼンタ発色濃度を測定した。感度は、最低発色濃度より0.5高い発色濃度を与える露光量の逆数をもって規定し、試料101の感度を100としたときの相対値を相対感度とした。湿度55%で露光した場合の相対感度から湿度80%で露光した場合の相対感度を差し引いた差(以後dSと示す)を求めた。
露光時の湿度条件に影響を受けないことが切望されており、dSが小さいハロゲン化銀乳剤・感光材料が望まれている。
【0181】
実験3 露光温度依存性
各試料に露光を与える際の温度を10℃及び35℃に設定した。1/10秒間露光後に現像処理を行い、各試料のマゼンタ発色濃度を測定した。感度は、最低発色濃度より0.5高い発色濃度を与える露光量の逆数をもって規定した。10℃で露光した場合の相対感度から35℃で露光した場合の相対感度を差し引いた差(以後dS(温度)と示す)を求めた。
dS(温度)が負の値の場合、低温で露光すると、低感度となることを示しており、dS(温度)をゼロにする技術が切望されている。
【0182】
実験1、実験2及び実験3の結果をまとめて、表2に示した。
【0183】
表2から、以下のことが判る。
本発明の化学増感剤を用いた乳剤は、従来利用されている金増感剤と硫黄増感剤(即ち塩化金酸及びチオ硫酸ナトリウム)を用いた乳剤(試料No102)、最近提案されている金増感剤と硫黄増感とを組み合わせた乳剤(試料No101)よりも高感度であった。特に10−4秒露光(高照度露光)時に高感度であり相反則特性に優れており、レーザー走査露光適正に優れていることが判った。更にまた、従来の増感法では露光時の湿度変動によって感度変化し易い問題があったのに対し、本発明の乳剤は、感度変動が極めて小さい利点を有することが判った。加えて従来の増感法では露光時の温度変動によって感度変化し易い問題があったのに対し、本発明の乳剤は、感度変動が極めて小さい利点を有することが判った。
【0184】
実施例2
実施例1で作成した試料を用いて、レーザー走査露光によって画像形成を行った。
レーザー光源としては、半導体レーザーGaAlAs(発振波長 808.5nm)を励起光源としたYAG固体レーザー(発振波長 946nm)を反転ドメイン構造を有するLiNbO3のSHG結晶により波長変換して取り出した473nmと、半導体レーザーGaAlAs(発振波長 808.7nm)を励起光源としたYVO4固体レーザー(発振波長 1064nm)を反転ドメイン構造を有するLiNbO3のSHG結晶により波長変換して取り出した532nmと、AlGaInP(発振波長 約680nm:松下電産製タイプNo.LN9R20)とを用いた。3色のそれぞれのレーザー光はポリゴンミラーにより走査方向に対して垂直方向に移動し、試料上に、順次走査露光できるようにした。半導体レーザーの温度による光量変動は、ペルチェ素子を利用して温度が一定に保たれることで抑えられている。実効的なビーム径は、80μmで、走査ピッチは42.3μm(600dpi)であり、1画素あたりの平均露光時間は、1.7×10−7秒であった。
露光後、発色現像処理を行ったところ、実施例1と同様の結果が得られ、レーザー走査露光を用いた画像形成にも適していることが分かった。
【0185】
【発明の効果】
本発明の乳剤は、高感度で、かつ露光時の湿度条件の違いによる感度変動が小さく、高照度での相反則特性に優れるハロゲン化銀乳剤である。
Claims (6)
- 下記一般式(1)、(2)、(3)または(4)で表される化合物のうち少なくとも1種類と、Au(III)化合物とにより増感されたことを特徴とするハロゲン化銀乳剤。
一般式(1)
- 上記一般式(1)、(2)、(3)または(4)で表される化合物のうち少なくとも1種類とAu(III)化合物とをあらかじめ混合した後にハロゲン化銀乳剤に添加することを特徴とするハロゲン化銀乳剤の製造方法。
- ハロゲン化銀乳剤の塩化銀含有率が90モル%以上であることを特徴とする請求項1または2に記載のハロゲン化銀乳剤。
- 塩化銀含有率が90モル%以上のハロゲン化銀乳剤を製造する工程において、上記一般式(1)、(2)、(3)または(4)で表される化合物のうち少なくとも1種類とAu(III)化合物とをあらかじめ混合した後にハロゲン化銀乳剤に添加することを特徴とするハロゲン化銀乳剤の製造方法。
- 支持体上にそれぞれ少なくとも一層の青感性ハロゲン化銀乳剤層、緑感性ハロゲン化銀乳剤層、及び赤感性ハロゲン化銀乳剤層を有するハロゲン化銀カラー写真感光材料において、前記青感性ハロゲン化銀乳剤層、緑感性ハロゲン化銀乳剤層、及び赤感性ハロゲン化銀乳剤層の少なくとも一層が、上記一般式(1)、(2)、(3)または(4)で表される化合物のうち少なくとも1種類とAu(III)化合物とにより増感された、塩化銀含有率90モル%以上のハロゲン化銀乳剤を含有することを特徴とする、ハロゲン化銀カラー写真感光材料。
- 請求項5に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料を画像情報に基づいて変調したレーザー光ビームにより、1画素あたりの露光時間が10−4秒よりも短い走査露光をした後に現像処理することを特徴とする画像形成方法。
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2002
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