JP4021080B2 - 研磨液組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、研磨液組成物及び研磨方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ハードディスクの高密度化が進み、ハードディスク基板の研磨工程で、研磨速度の向上及び表面粗さの低減が求められ、また、半導体分野においても、高集積化、高速化が進むに伴って半導体装置のデザインルームの微細化が進み、デバイス製造プロセスでの焦点深度が浅くなり、パターン形成面の平坦化がより一層求められ、キレート性化合物又はその塩を用いた研磨液組成物や研磨方法が検討されている(特公平7-81132 号公報等)。
【0003】
しかしながら、キレート性化合物又はその塩のみでは、ハードディスク基板及び半導体のパターン形成面の高平坦化、表面粗さやスクラッチ、ピット等の表面欠陥の低減効果が充分ではなく、また被研磨物によっては表面欠陥を増大させることがあり、研磨液組成物としては満足するものとはいえなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、被研磨物の表面に表面欠陥を生じさせること無く、研磨速度が向上し、且つ、表面粗さを低減し得る研磨液組成物及び被研磨基板の研磨方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明の要旨は、
〔1〕キレート性化合物又はその塩と、多価アルコール化合物の部分エステル化物及び/又は部分エーテル化物と、水とを含有してなる研磨液組成物(以下、第1研磨液組成物という)、
〔2〕さらに研磨材を含有してなる前記〔1〕記載の研磨液組成物( 以下、第2研磨液組成物という) 、
〔3〕前記〔1〕又は〔2〕に記載の研磨液組成物を用いて被研磨基板を研磨する被研磨基板の研磨方法、
に関する。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明で用いられるキレート性化合物は、金属イオンと結合して錯体を形成し得る多座配位子をもつ化合物である。例えば、酒石酸、リンゴ酸等のヒドロキシカルボン酸類、ニトロトリ酢酸、エチレンジアミンテトラ酢酸、ジエチレントリアミンペンタ酢酸等のアミノカルボン酸類、これらのアミノカルボン酸類が導入された高分子化合物、(メタ)アクリル酸重合体、(メタ)アクリル酸と他の単量体との共重合体、等が挙げられる。キレート性化合物の中では、研磨速度向上の面から2個以上のカルボキシル基を有するものが好ましく、さらにアミノ基を有するアミノカルボン酸類がより好ましく、さらにアミノ基を2個以上有するポリアミノカルボン酸類が特に好ましい。
【0007】
これらのキレート性化合物の塩は、キレート性化合物と塩を形成し得る物質との塩であれば特に限定はされない。具体的には、金属、アンモニウム、アルキルアンモニウム、有機アミン等との塩が挙げられる。金属の具体例としては、周期律表(長周期型)1A、1B、2A、2B、3A、3B、4A、6A、7A及び8 族に属する金属が挙げられる。これらの金属の中でも、研磨速度を向上させる観点から、1A、3A、3B、7A及び8 族が好ましく、1A、3A、3B、7A、8 族が更に好ましく、3A族に属するセリウム、3B族に属するアルミニウム、7A族に属するマンガン、8 族に属する鉄及びコバルトが特に好ましく、3B族に属するアルミニウムが最も好ましい。なお、これらのキレート性化合物の塩については、あらかじめ必要とされる金属と塩を形成させても良いし、これらの金属を含む硝酸塩、硫酸塩、燐酸塩等の無機酸塩、酢酸塩等の有機酸塩とキレート性化合物を混合して、研磨液組成物中でキレート交換を行って目的とする塩を得ても良い。
【0008】
アルキルアンモニウムの具体例としては、ジメチルアンモニウム、トリメチルアンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム等が挙げられる。
有機アミンの具体例としてはアルカノールアミン等が挙げられる。
【0009】
キレート性化合物の塩は、キレート性化合物と塩を形成し得る物質の2種以上との塩であってもよい。特にアルミニウムとその他の物質との塩が好ましい。
【0010】
これらのキレート性化合物又はその塩については、単独で用いても良いし、2種以上を混合して用いても良い。
【0011】
キレート性化合物又はその塩の第1研磨液組成物中における含有量は、研磨速度を向上させる観点から、好ましくは0.05〜20重量%、より好ましくは0.1 〜15重量%、さらに好ましくは0.5 〜10重量%である。
【0012】
多価アルコール化合物としては、環状多価アルコール化合物及び鎖状多価アルコール化合物が挙げられる。環状多価アルコールとしては、ピラノース骨格及び/又はフラノース骨格を有する多価アルコール、環状多価アルコールに水酸基以外の官能基を有する多価アルコール化合物及びこれらのアルキレンオキシド付加物が挙げられる。その具体例としては、D-リボース、D-アラビノース、D-キシロース、D-リキソース、D-アロース、D-アルトロース、D-グルコース、D-マンノース、D-グロース、D-イドース、D-ガラクトース、D-タロース、 D- フルクトース、D −エリトロース、D-トレオース、トレハロース、マルトース、セロビオース、ゲンチオビオース、ラクトース、ラフィノース、ゲンチアノース、メレチトース、マルトトリオース、セロトリオース、マンニノトリオース、澱粉、セルロース、マンナン、スクロース(ショ糖) 、スタキオース、イヌリン、D-グルクロン酸、D-ガラクツロン酸、D-マンヌロン酸、L-イズロン酸、L-グルロン酸、D-グルコサミン、D-ガラクトサミン、ペクチン酸、アルギン酸、キトサン等が挙げられる。
【0013】
鎖状多価アルコール化合物としては、鎖状多価アルコール、鎖状多価アルコールに水酸基以外の官能基を有する鎖状多価アルコール化合物及びこれらのアルキレンオキシド付加物が挙げられる。その具体例としては、グリセリン、エリトリトール、リビトール、p-アラビニトール、キシリトール、アリトール、ソルビトール、マンニトール、p-イジトール、ガラクチトール、D-タリトール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、1,2,4-ブタントリオール、1,2,6-ヘキサントリオール、1,1,1-ヘキサントリオール、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、ジペンタエリトリトール、ポリビニルアルコール、ジグリセリン、ポリグリセリン、グルコン酸等及びこれらのアルキレンオキシド付加物、等が挙げられる。
【0014】
多価アルコール化合物の分子量は、水への溶解性向上及び研磨粉の排出性向上の観点から、100〜10000、好ましくは200〜8000、さらに好ましくは300〜5000である。多価アルコール化合物の種類によっては数十万程度の分子量を持つものがあるが、これらは水溶性及び粘性の観点から、加水分解等の処理を行って目的とする分子量の多価アルコール化合物を得た後、誘導体とすればよい。
【0015】
多価アルコール化合物のアルキレンオキシド付加物のアルキレンオキシドの炭素数は、多価アルコール化合物の水溶性を向上させる観点から2〜4であることが好ましい。好適なアルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等が挙げられ、これらは単独で又は併用することができる。これらの中では、エチレンオキシドが特に好ましい。なお、2 種以上のアルキレンオキシドを使用する場合、該アルキレンオキシドはランダム付加であってもよく、ブロック付加であってもよい。多価アルコール化合物におけるアルキレンオキシドの付加モル数は、付加された化合物の水への溶解性、増粘性を考慮して決定する。アルキレンオキシドの付加モル数は、多価アルコール化合物の水酸基1つあたり、50モル以下が好ましく、30モル以下がより好ましい。
【0016】
多価アルコール化合物の部分エステル化物及び/又は部分エーテル化物(以下、多価アルコール化合物の誘導体という)は、通常のエステル化反応やエーテル化反応により得られる。例えば、部分エステル化物は、多価アルコール化合物の水酸基をカルボン酸類と反応させることにより得られ、またカルボキシル基をもつ多価アルコール化合物は、アルコラート等を使用してカルボキシル部分をエステル化してもよい。また、部分エーテル化物は、多価アルコール化合物の水酸基をアルカリ金属等によりアルコキシドにかえ、アルキルハライド等と反応させることにより得られる。
【0017】
部分エステル化又は部分エーテル化されたアシル基又は炭化水素基の炭素数は、水への溶解性及び溶解した際の増粘性の観点及び研磨表面の表面粗さを低減させる観点から、好ましくは1〜24、より好ましくは2〜22、さらに好ましくは3〜20、最も好ましくは4〜20である。これらのアシル基又は炭化水素基は、脂肪族でも芳香族でも構わない。また、一分子中に2種以上のアシル基を持っても良く、2種以上の炭化水素基を持っても良く、1種以上のアシル基と1種以上の炭化水素基を同時に持っても良い。研摩表面の表面粗さを低減させる観点から脂肪族が特に好ましい。なお、脂肪族においては、飽和、不飽和のいずれの基でも良く、直鎖、分岐のいずれの基でも良い。
【0018】
多価アルコール化合物の誘導体は、単独で、又は2種以上を併用して用いてもよい。
【0019】
多価アルコール化合物の誘導体のエステル化率又はエーテル化率は、水への溶解性向上、表面粗さ及び表面欠陥の低減の観点から、3〜95%、好ましくは5〜70%、さらに好ましくは10〜50%がエステル化又はエーテル化されるのが望ましい。なお、エステル化率又はエーテル化率は、多価アルコール化合物の全水酸基及び全カルボキシル基の総数に対するエステル化又はエーテル化された平均の割合(化合物によりエステル化又はエーテル化された割合にそれぞれ分布がある場合の平均)をいう。
【0020】
多価アルコール化合物の誘導体の中でも、表面粗さ低減の観点から、環状多価アルコール化合物の誘導体が好ましく、ショ糖の部分エステル化物が特に好ましい。
【0021】
キレート性化合物又はその塩と多価アルコール化合物の誘導体の組み合わせによる相乗的な効果としては、キレート性化合物については、研磨材、研磨粉、被研磨基板等に何らか作用し分散性向上、又は研磨排液の排出性の向上等の働きにより研磨速度を向上させているものと推定される。しかしながら、キレート性化合物又はその塩単独では、固定砥石又は第2研磨液組成物中に含まれる粗大研磨材等が主原因と考えられる表面欠陥を抑制するには不充分であり、また、水を媒体とした研磨液組成物であるために、固定砥石又は研磨材と被研磨基板間の摩擦抵抗が大きくなり、生じた摩擦熱等によって被研磨基板の表面粗さを改善できないと考えられる。一方、キレート性化合物又はその塩に多価アルコール化合物の誘導体を組み合わせた場合、多価アルコール化合物の誘導体中の水酸基等の官能基部分が被研磨基板の表面に吸着して、部分エステル化又は部分エーテル化されたアシル基又は炭化水素基部分が粗大研磨材等の被研磨基板への衝撃を緩和し、多価アルコール化合物の誘導体が研磨中の摩擦抵抗を低減させることで、キレート性化合物の前記機能が発現され、研磨速度を向上させながら表面欠陥の発生が抑制され、表面粗さを従来より低くしながら高速で研磨できるものと考えられる。
【0022】
多価アルコール化合物の誘導体の第1研磨液組成物中における含有量は、研磨表面の表面粗さ及び表面欠損を低減させる観点から、好ましくは0.01〜20重量%、より好ましくは0.03〜15重量%、さらに好ましくは0.05〜10重量%である。
【0023】
また、研磨速度の向上、及び表面粗さや表面欠損を低減させる効果を十分に発現させる観点から、キレート性化合物又はその塩と多価アルコール化合物の誘導体の含有量比[キレート性化合物又はその塩の含有量(重量%)/多価アルコール化合物の誘導体の含有量(重量%)]は、0.002 〜2000、好ましくは0.01〜300 、より好ましくは0.05〜50となるように配合するのが望ましい。特にNi-Pメッキされたアルミニウム合金からなる基板等の精密部品用基板の研磨においては、0.01〜100 、好ましくは0.03〜50、より好ましくは0.05〜30となるように配合すると、研磨速度を向上させながら表面欠陥の発生が抑制され、表面粗さを従来より低くしながら高速で研磨できるので特に好ましい。
【0024】
本発明の研磨液組成物中の水は、媒体として用いられるものであり、その含有量は、被研磨物を効率よく研磨することができるようにする観点から、好ましくは50〜99.9重量%、より好ましくは70〜99.5重量%、更に好ましくは90〜99重量%が望ましい。
【0025】
かかる組成を有する本発明の第1研磨液組成物は、固定砥石等を用いる研磨方式において有効である。例えば、固定砥石による研磨方式の研磨中に本発明の第1研磨液組成物を使用することにより被研磨基板にスクラッチやピット等の表面欠損を生じさせずに、研磨速度の向上及び表面粗さの低減を図ることができる。
【0026】
本発明の第2研磨液組成物は、第1研磨液組成物に研磨材をさらに含有させたものである。
【0027】
本発明の第2研磨液組成物で用いられる研磨材は、研磨用に一般に使用されている砥粒を使用することができる。該砥粒の例としては、金属、金属又は半金属の炭化物、金属又は半金属の窒化物、金属又は半金属の酸化物、金属又は半金属のホウ化物、ダイヤモンド等が挙げられる。なお、金属又は半金属元素は、周期律表(長周期型)の2A、2B、3A、3B、4A、4B、5A、6A、7A又は8 族由来のものである。砥粒の具体例として、アルミナ粒子、炭化ケイ素粒子、ダイヤモンド粒子、酸化マグネシウム粒子、酸化亜鉛粒子、酸化セリウム粒子、酸化ジルコニウム粒子、コロイダルシリカ粒子、ヒュームドシリカ粒子等が挙げられ、これらを1種以上使用することは、研磨速度を向上させる観点から好ましい。特に、アルミナ粒子、酸化セリウム粒子、酸化ジルコニウム粒子、コロイダルシリカ粒子及びヒュームドシリカ粒子は、半導体ウェハや半導体素子、磁気記録媒体用基板等の精密部品用基板の研磨に適しており、特にアルミナ粒子及びコロイダルシリカ粒子は磁気記録媒体用基板の研磨に適している。アルミナ粒子の中では、中間アルミナ粒子は、被研磨物の表面粗さを極めて低くし得るので好ましい。なお、本明細書にいう中間アルミナ粒子とは、α―アルミナ粒子以外のアルミナ粒子の総称であり、具体的には、γ―アルミナ粒子、δ―アルミナ粒子、θ―アルミナ粒子、η―アルミナ粒子、無定型アルミナ粒子等が挙げられる。アルミナ粒子は、本発明の研磨液組成物を機械的に攪拌したり、研磨する際に、二次粒子が一次粒子に再分散するアルミナ系粒子を好適に用いることができる。
【0028】
研磨材の一次粒子の平均粒径は、研磨速度を向上させる観点から、好ましくは0.002 〜3 μm 、より好ましくは0.01〜1 μm 、さらに好ましくは0.02〜0.8 μm 、特に好ましくは0.05〜0.5 μm である。特に研磨材としてアルミナ系粒子を用いた場合には、被研磨物の表面粗さを低減させる観点から、好ましくは0.01〜1 μm 、さらに好ましくは0.02〜0.8 μm 、特に好ましくは0.05〜0.5 μm である。さらに、一次粒子が凝集して二次粒子を形成している場合は、同様に研磨速度を向上させる観点及び被研磨物の表面粗さを低減させる観点から、その二次粒子の平均粒径は、好ましくは0.05〜2 μm 、さらに好ましくは0.1 〜1.5 μm 、特に好ましくは0.3 〜1.2 μm である。研磨材の一次粒子の平均粒径は、走査型電子顕微鏡で観察(好適には3000〜10000 倍)して画像解析を行い、2軸平均径を測定することにより求めることができる。また、二次粒子の平均粒径は、レーザー光回折法を用いて体積平均粒径として測定することができる。
【0029】
研磨材のヌープ硬度(JIS Z-2251)は、充分な研磨速度を得るという観点と被研磨物の表面欠陥を発生させない観点から、700 〜9000であることが好ましく、1000〜5000がさらに好ましく、1500〜3000であることがより一層好ましい。
【0030】
研磨材の比重は、分散性及び研磨装置への供給性や回収再利用性の観点から、その比重は2 〜6 であることが好ましく、2 〜4 であることがより好ましい。
【0031】
本発明の第2研磨液組成物において、研磨材とキレート性化合物又はその塩と多価アルコール化合物の誘導体を添加することによる研磨速度の向上と表面欠陥の発生防止との相乗効果が向上する観点から、特に好ましく用いられる研磨材は、ヌープ硬度が1500〜3000、純度が98重量%以上、好ましくは99重量%以上、特に好ましくは99.9重量%以上のα−アルミナ粒子又はγ−アルミナ粒子である。これらの研磨材は、高純度アルミニウム塩を用いた結晶成長法(ベルヌーイ法等)により製造することができる。なお、この研磨材の純度は、研磨材1〜3gを酸又はアルカリ水溶液に溶かし、プラズマ発光分析測定法を用いてアルミニウムイオンを定量することによって測定できる。
【0032】
研磨材は、水を媒体としたスラリー状態で使用される。本発明の第2研磨液組成物中における研磨材の含有量は、研磨液組成物の粘度や被研磨物の要求品質等に応じて適宜決定することが好ましい。本発明の第2研磨液組成物における研磨材の含有量は、経済性の観点及び表面粗さを小さくし、効率よく研磨することができるようにする観点から、第1研磨液組成物100 重量部に対して0.01〜40重量部、好ましくは0.1 〜25重量部、さらに好ましくは1〜15重量部とすることが望ましい。
【0033】
また、研磨速度を向上させ、表面粗さを低減させる効果を十分に発現させる観点から、本発明の第2研磨液組成物中における研磨材とキレート性化合物又はその塩及び多価アルコール化合物の誘導体との含有量比[研磨材の含有量(重量%)/キレート性化合物又はその塩及び多価アルコール化合物の誘導体の含有量(重量%)]は、0.001 〜200 、好ましくは0.01〜100 、より好ましくは0.1 〜50、特に好ましくは1〜25となるように配合することが望ましい。
【0034】
本発明の第1及び第2研磨剤組成物は、必要に応じて他の成分を配合することができる。該他の成分としては、単量体型の酸化合物の金属塩・アンモニウム塩や過酸化物、増粘剤、分散剤、防錆剤、塩基性物質、界面活性剤等である。単量体型の酸化合物の金属塩・アンモニウム塩や過酸化物、増粘剤、分散剤の具体的な例としては、特開昭62-25187号公報2 頁右上覧3行目〜右上覧11行目、特開昭63-251163 号公報2頁左上覧6行目〜3頁左上覧8行目、特開平1-205973号公報2頁左上覧5行目〜3頁右上覧2行目、特開平4-275387号公報2頁左覧27行目〜3頁左覧12行目、特開平5-59351 号公報2頁右覧23行目〜3頁左覧37行目、特開平2-158683号公報2頁左下欄15行目〜右下覧10行目、特開平7-216345号公報3頁左覧4行目〜左覧25行目に記載されているものが挙げられる。
【0035】
これらの成分の本発明の研磨液組成物中における含有量は、特に限定されないが、それぞれ0.1 〜10重量%程度であることが好ましい。
【0036】
本発明の第1及び第2研磨液組成物のpHは、被研磨物の種類や要求品質等に応じて適宜決定することが好ましい。例えば、本発明の第1及び第2研磨液組成物のpHは、被研磨基板の洗浄性及び加工機械の腐食防止性の観点から、2〜12がより好ましい。また、被研磨物がNi-Pメッキされたアルミニウム基板等の金属を主対象とした精密部品用基板においては、研磨速度の向上と表面品質の向上の観点から2〜8が特に好ましい。さらに、半導体ウェハや半導体素子等の研磨、特にシリコンウェハの研磨に用いる場合は、研磨速度の向上と表面品質の向上の観点から、7〜12が好ましく、8〜12がより好ましく、9〜11が特に好ましい。該pHは、必要により、硝酸、硫酸等の無機酸、前記の単量体型の酸化合物の金属塩、アンモニウム塩、過酸化物、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、アンモニア、アルキルアンモニウム、アミン等の塩基性物質を適宜、所望量配合することで調整することができる。
【0037】
本発明の被研磨基板の研磨方法は、本発明の第1及び第2研磨液組成物を用いて被研磨基板を研磨する工程を有し、特に本発明の第2研磨液組成物を用いると精密部品用基板を好適に製造することができる。
【0038】
また、本発明の被研磨基板の製造方法は、本発明の第1及び第2研磨液組成物を用いて被研磨基板を研磨する工程を有する。
【0039】
被研磨基板に代表される被研磨物の材質は、例えば、シリコン、アルミニウム、ニッケル、タングステン、銅等の金属又は半金属、これらの金属を主成分とした合金、ガラス、ガラス状カーボン、アモルファスカーボン等のようなガラス状物質、アルミナ、炭化チタン、二酸化ケイ素等のセラミック材料、ポリイミド樹脂等の樹脂、等が挙げられる。これらの中では、アルミニウム、ニッケル、タングステン、銅等の金属及びこれらの金属を主成分とする合金又はそれらの金属を含んだ半導体素子等の半導体基板が好ましい。特にNi-Pメッキされたアルミニウム合金からなる被研磨基板を研磨する際に、本発明の研磨液組成物を用いた場合、スクラッチやピット等の表面欠陥の発生が抑制され、表面粗さを従来技術より低減しながら高速で研磨できるので好ましい。
【0040】
これらの被研磨物の形状には、特に制限が無く、例えば、ディスク状、プレート状、スラブ状、プリズム状等の平面部を有する形状や、レンズ等の曲面部を有する形状が本発明の研磨液組成物を用いた研磨の対象となる。その中でも、ディスク状の被研磨物の研磨に特に優れている。
【0041】
本発明の第1研磨液組成物は、特に精密部品の平面、局面、円筒内面等の高精度の研磨に好適に用いられる。例えば、光学レンズ、光学ミラー、ハーフミラー、光学プリズム等の高精度の平面や局面を必要とする研磨に適している。
【0042】
本発明の第2研磨液組成物は、特に精密部品基板の研磨に好適に用いられる。例えば、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク等の磁気記録媒体の基板や半導体ウェハ、半導体素子等の半導体基板、光学レンズ、光学ミラー、ハーフミラー、光学プリズム等の研磨に適している。これらの中でも、磁気記録媒体の基板や半導体基板、特に、ハードディスク基板の研磨に適している。なお、半導体素子の研磨には、例えば、層間絶縁膜の平坦化工程、埋め込み金属配線の形成工程、埋め込み素子分離膜の形成工程、埋め込みキャパシタ形成工程等において行われる研磨がある。
【0043】
以上のようにして被研磨基板を研磨することにより、精密部品用基板等を製造することができる。
【0044】
本発明の研磨液組成物は、ポリッシング工程において特に効果があるが、これ以外の研磨工程、例えば、ラッピング工程等にも同様に適用することができる。
【0045】
【実施例】
実施例1〜23及び比較例1〜10
表1に示すキレート性化合物又はその塩と、表2に示す多価アルコール化合物の誘導体と、イオン交換水とを混合・撹拌して、表3〜4に示す組成を有する第1研磨液組成物を得た。
【0046】
【表1】
【0047】
【表2】
【0048】
この第1研磨液組成物100 重量部に対して、ヌープ硬度2000、一次平均粒径0.29μm 、二次平均粒径0.75μm のα−アルミナ(純度約99.9%)10重量部を添加・混合・攪拌して第2研磨液組成物を得た。
得られた第2研磨液組成物を用い、下記の方法によって測定した中心線平均粗さRaが0.1 μm 、厚さ0.9mm 、直径2.5 インチのNi-Pメッキされたアルミニウム合金基板の表面を両面加工機により、以下の両面加工機の設定条件でポリッシングし、磁気記録媒体用基板として用いられるNi-Pメッキされたアルミニウム合金基板の研磨物を得た。
【0049】
両面加工機の設定条件を下記に示す。
使用両面加工機:共立精機(株)製、6B型両面加工機
加工圧力:9.8 kPa
研磨パッド:ポリテックスDG(ロデールニッタ社製)
定盤回転数:40r/min
研磨液組成物供給流量:30mL/min
研磨時間:7min
【0050】
研磨後のアルミニウム合金基板の厚さを測定し、研磨前後のアルミニウム合金基板の厚さの変化から厚さの減少速度を求め、比較例1を基準として相対値(相対速度)を求めた。
【0051】
また、研磨後の各基板の表面の中心線粗さRa及び表面欠陥(スクラッチ)を以下の方法に従って測定した。なお、中心線粗さRaは比較例1を基準として相対値(相対粗さ)を求めた。その結果を表3に示す。
【0052】
[中心線平均粗さRa(相対粗さ)]
ランク・テーラーホブソン社製のタリーステップを用いて以下の条件で測定した。
触針先端サイズ :25μm ×25μm
ハイパスフィルター:80μm
測定長さ :0.64mm
【0053】
[表面欠陥( スクラッチ) ]
光学顕微鏡観察(微分干渉顕微鏡)を用いて倍率×50倍で各基板の表面を60度おきに6ヵ所測定した。スクラッチの深さはザイゴ(Zygo社製)により測定した。評価基準は下記の通りである。
【0054】
−評価基準−
S: 深さ50nmを越えるスクラッチが0本/1視野
A: 深さ50nmを越えるスクラッチが平均0.5 本未満/1視野
B: 深さ50nmを越えるスクラッチが平均0.5 本以上1本未満/1視野
C: 深さ50nmを越えるスクラッチが平均1本以上/1視野
【0055】
【表3】
【0056】
【表4】
【0057】
表3〜4に示された結果から、実施例1〜23で得られた第2研磨液組成物を用いた場合には、比較例1〜10で得られたものを用いた場合と対比して、研磨速度が高く、表面粗さが小さく、スクラッチも少なく、良好な研磨表面を有する被研磨基板を得ることができることがわかる。
また、第2研磨液組成物において、比較例2〜4に示したキレート性化合物又はその塩のみを用いた場合、研磨速度(相対速度)は向上するものの表面粗さ(相対粗さ)及び表面欠陥の改善効果は充分ではない。また、比較例5〜8に示した多価アルコール化合物の誘導体のみを用いた場合、表面粗さ(相対粗さ)及び表面欠陥の改善効果はあるものの研磨速度(相対速度)の向上はない。これらキレート性化合物又はその塩と多価アルコール化合物の誘導体を併用した場合、実施例1〜23に示したように研磨速度(相対速度)及び表面粗さ(相対粗さ)、表面欠陥の両性能を向上させることが可能である。
【0058】
【発明の効果】
本発明によれば、被研磨物の表面に表面欠陥を生じさせること無く、研磨速度を向上させ、表面粗さを低減させうる研磨液組成物を得ることができる。
また、本発明の研磨液組成物を用いれば、研磨速度を向上させ、被研磨物の表面にスクラッチやピット等の欠陥を生じさせることなく、表面粗さを低くすることができるという効果が奏される。
Claims (5)
- キレート性化合物又はその塩を 0.5 〜 10 重量%と、多価アルコール化合物の部分エステル化物及び/又は部分エーテル化物を 0.05 〜 10 重量%と、水とを含有してなる研磨液組成物であって、ここで、前記部分エステル化物及び部分エーテル化物において部分エステル化又は部分エーテル化されたアシル基又は炭化水素基の炭素数が 4 〜 20 で、エステル化率又はエーテル化率が 10 〜 37.0 %であり、前記多価アルコール化合物が、 (1)D- リボース、 D- アラビノース、 D- キシロース、 D- リキソース、 D- アロース、 D- アルトロース、 D- グルコース、 D- マンノース、 D- グロース、 D- イドース、 D- ガラクトース、 D- タロース、 D- フルクトース、 D −エリトロース、 D- トレオース、トレハロース、マルトース、セロビオース、ゲンチオビオース、ラクトース、ラフィノース、ゲンチアノース、メレチトース、マルトトリオース、セロトリオース、マンニノトリオース、澱粉、セルロース、マンナン、スクロース(ショ糖 ) 、スタキオース、イヌリン、 D- グルクロン酸、 D- ガラクツロン酸、 D- マンヌロン酸、 L- イズロン酸、 L- グルロン酸、 D- グルコサミン、 D- ガラクトサミン、ペクチン酸、アルギン酸、キトサン及びこれらのアルキレンオキシド付加物からなる群より選ばれる環状多価アルコール化合物、及び / 又は (2) グリセリン、エリトリトール、リビトール、 p- アラビニトール、キシリトール、アリトール、ソルビトール、マンニトール、 p- イジトール、ガラクチトール、 D- タリトール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、 1,2,4- ブタントリオール、 1,2,6- ヘキサントリオール、 1,1,1- ヘキサントリオール、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、ジペンタエリトリトール、ポリビニルアルコール、ジグリセリン、ポリグリセリン、グルコン酸及びこれらのアルキレンオキシド付加物からなる群より選ばれる鎖状多価アルコール化合物である、研磨液組成物。
- キレート性化合物がアミノカルボン酸類である請求項1記載の研磨液組成物。
- 多価アルコール化合物の部分エステル化物及び/又は部分エーテル化物がショ糖エステルである請求項1又は2記載の研磨液組成物。
- さらに研磨材を含有してなる請求項1〜3いずれか記載の研磨液組成物。
- 請求項1〜4いずれか記載の研磨液組成物を用いて被研磨基板を研磨する被研磨基板の研磨方法。
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