JP4020378B2 - 油圧緩衝器における取付部の溶接方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車等の車両のサスペンション装置に使用される油圧緩衝器における油圧緩衝器本体下端部又はピストンロッド先端部に溶接固定される取付部の溶接方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車等の車両のサスペンション装置に用いられる油圧緩衝器は、その油圧緩衝器本体下端部又は、ピストンロッド先端部に車体又は車軸等の他部材への取付手段としての取付部を備えている。
【0003】
この取付部は、環状の取付アイと、この取付アイの内側に配置された内筒と、これらの間に嵌入されたゴム製のブッシュとから構成され、油圧緩衝器本体下端部又は、ピストンロッド先端部に対して溶接固定されるとともに、前記内筒内に連結シャフト等の連結部材を挿入することによって油圧緩衝器を他部材に対して取付けるようになっている。
【0004】
取付部を構成する取付アイは、▲1▼長尺パイプを所定巾に切削加工して形成する方法と、▲2▼板材の端部同士をロール加工で継ぎ合わせて形成する方法のいずれかで形成されるのが一般的である。
【0005】
ところが、▲1▼を採用する場合には長尺パイプを切削加工する工数が嵩むという問題があり、▲2▼を採用する場合には溶接時の継目合わせ作業が面倒で自動溶接が難しいという問題がある。
【0006】
そこで、これらの問題点を改善したものとして特許文献1に示すものを例示することができる。
【0007】
即ち、取付アイを板材の端部同士をロール加工で継ぎ合わせて環状に形成するとともに、油圧緩衝器に取付アイを溶接する装置に対し、前記ロール加工時に発生する板材間の継目部を検出するセンサを設け、このセンサからの検出信号によって溶接時の継目合わせを自動化したものである。
【0008】
【特許文献1】
実公昭60−25342号公報(第1頁、図2)
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特許文献1の構成では次のような問題点がある。
【0010】
即ち、前記センサでは取付アイの継目部を検出し、この継目部を油圧緩衝器本体下端部の接合部位に位置させ、電気抵抗溶接を用いて両者を溶接固定する。
【0011】
このとき、センサは、取付アイの外周の磁気抵抗を測定し、その値の変化のピーク値を継目部として検出しているので、例えば、外周に傷とか凹み等があった場合にはこの部分を変化のピーク値と誤認識することが考えられる。
【0012】
この場合には、取付アイの継目部ではない上記の傷とか凹み部分が油圧緩衝器本体下端部の接合位置に配置され、この状態で両者が溶接固定されるといった不具合が発生する。
【0013】
そこで、本発明の目的は、油圧緩衝器本体下端部又はピストンロッド先端部に対して取付アイの継目部が正確に配置可能となる取付アイを備えた油圧緩衝器の取付部を提供することである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明は、 板材の端部同士をロール加工で継ぎ合わせてなる環状の取付アイと、この取付アイの内側に配置される同じく環状の内筒と、これらの間に嵌入されたゴム製のブッシュとから取付部を構成し、上記板材の端部同士の継目部をセンサで検出しながらこの継目部を油圧緩衝器本体下端部又は、ピストンロッド先端部に対して位置合わせして溶接させる油圧緩衝器における取付部の溶接方法において、上記板材の端部同士の継目部を上記取付アイの外側に向かって広がる断面V字状の溝に形成させ、また、取付アイの外周全体又は側面全体にショットブラスト加工により微小な凹凸部を設け、前記センサで前記V字状の溝と前記凹凸部に対応する前記取付アイの外周又は側面を測定した時前記V字状の溝以外の部分では一定の測定値を出力させることにより上記V字状の溝のみを継目部として検出して溶接させることを特徴とするものである。
【0015】
この場合、前記ショットブラスト加工はロール加工で継ぎ合わされた取付アイの状態で施されているのが好ましい。
【0016】
同じく、油圧緩衝器本体下端部にロアキャップが溶接され、このロアキャップに形成した突起にV字状の溝を当接させて取付アイとロアキャップとを溶接してもよい。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明を自動車のサスペンション装置に用いられる復筒型の油圧緩衝器における取付部の溶接方法に具体化した実施の形態を図に基づいて説明する。
本発明の油圧緩衝器における取付部の溶接方法は、従来と同じく、 板材の端部同士をロール加工で継ぎ合わせてなる環状の取付アイ5と、この取付アイ5の内側に配置される同じく環状の内筒6と、これらの間に嵌入されたゴム製のブッシュ7とから取付部4を構成し、上記板材の端部同士の継目部をセンサで検出しながらこの継目部を油圧緩衝器本体下端部又は、ピストンロッド先端部に対して位置合わせして溶接させるものである。
そして、本発明では、上記板材の端部同士の継目部を上記取付アイの外側に向かって広がる断面V字状の溝8bに形成させ、また、取付アイ5の外周全体又は側面全体にショットブラスト加工により微小な凹凸部11を設け、前記センサで前記V字状の溝8bと前記凹凸部11に対応する前記取付アイ5の外周又は側面を測定した時前記V字状の溝以外の部分では一定の測定値を出力させることにより上記V字状の溝8bのみを継目部として検出して溶接させることを特徴とする。
以下詳しく説明する。
【0018】
図1は、油圧緩衝器における本体下部を示すもので、油圧緩衝器本体1を構成するアウターシェル2の下端部にはロアキャップ3が嵌着され、シーム溶接によって両者を液密的に結合している。
【0019】
ロアキャップ3の下面には全体がリング状をなす取付部4が溶接固定されており、この取付部4と油圧緩衝器本体1から延びるピストンロッド(図示しない)の先端とを介して油圧緩衝器を自動車のサスペンション装置として車体と車軸側に取り付けるようになっている。
【0020】
前記取付部4は、環状の取付アイ5と、この取付アイ5の内側に配置された内筒6と、これらの間に嵌入された天然又は合成ゴム製のブッシュ7とから構成され、内筒6内に上記サスペンション装置の連結シャフト等が挿入されるようになっている。
【0021】
図2に示すように、取付アイ5は、板材の端部同士をロール加工で継ぎ合わせることによって環状に形成され、この端部同士の継目部においては板材の内側端部8a同士が接触し、外側端部8c同士が離間するように継ぎ合わされており、これらの間には取付アイ5の外側に向かって広がる断面略V字状の溝8bが形成されている。
【0022】
前記V字状溝8bは、溶接作業時における光センサ、磁気センサ等による位置検出用として用いられるとともに、このV字状溝8bをロアキャップ3に形成した椀状の突起(プロジェクション)9に当接させ、電気抵抗溶接によって取付アイ5とロアキャップ3とを溶接固定している。
【0023】
又、取付アイ5の外周全体にはロール加工後に行われたショットブラスト加工によって微小な凹凸部11が形成されている。
【0024】
この凹凸部11は、取付アイ5の外周に付いた傷や部分的な凹みを前記各センサが例えば、ピーク値として検出しないようにV字状溝8b以外の部分では常に一定の値が出力されるようになっている。
【0025】
従って、取付アイ5の外周に傷等が付いていても、このショットブラスト加工によって形成された凹凸部11により、センサによるV字状溝8b検出の際に上記傷等が継目部として誤検出されないようになっている。
【0026】
尚、この状態で、ロアキャップ3と取付アイ5との間に補強溶接として二酸化炭素ガス又はメタルアルゴンガス等のシールドガス雰囲気中で行う、所謂ガスシールド溶接を施しても良い。
【0027】
図2,図3に示すように、取付アイ5のV字状溝8bと180度反対側となる外周面には半球状をなす凹部10が形成されている。
【0028】
この凹部10は、取付アイ5が油圧緩衝器本体1下端の所定位置に正確に溶接固定されたかを外観から容易に判断できるようにするためのものである。
【0029】
即ち、上記の位置検出用として用いられるV字状溝8bは、ロアキャップ3と対向する部分に配置されるので、ロアキャップ3に対して取付アイ5が溶接固定された状態ではその外観からはこのV字状溝8bは見難くなるために、取付アイ5のV字状溝8bと180度反対側となる外周面に上記凹部10を設けることにしたものである。
【0030】
尚、この凹部10は、予め板材に設けられてもロール加工後に設けられても良い。
【0031】
以上、本実施の形態によれば、取付アイ5の外周全体にロール加工後に行われるショットブラスト加工によって微小な凹凸部11を形成したので、この凹凸部11によって取付アイ5の外周に付いた傷や部分的な凹みを前記各センサが例えば、ピーク値として検出しないようにV字状溝8b以外の部分では常に一定の値のみが出力される。
【0032】
従って、取付アイ5のV字状溝8b以外の部分が前記ロアキャップ3に形成した椀状の突起9に当接され、電気抵抗溶接によって取付アイ5とロアキャップ3とが溶接固定されると言った不具合を確実に防止することができる。
【0033】
特に、この凹凸部11は、光センサを用いたV字状溝8bの検出作業において、光センサからの光を散乱させるので、センサの誤検出防止効果が高い。
【0034】
更には、本実施の形態では、継目部となる取付アイ5のV字状溝8bと180度反対側となる外周面に半球状をなす凹部10が形成されているので、この凹部10を誤検出しないようにできる本実施の形態の凹凸部11は大変有効である。
【0035】
又、ショットブラスト加工法を用いることにより、均一な凹凸部11を備えた取付アイ5を一度に多数製造することができるので、凹凸部11の形成単価を低減させ、ひいては取付アイ5自体を安価に製造可能とする。
【0036】
又、ロール加工で環状に継ぎ合わせた後の取付アイ5にショットブラスト加工を施すようにしたので、ロール加工工程等の前工程で付いた傷や凹み等による影響を最小限に留めることができる。
【0037】
又、取付アイ5の継目部を、その内側が接触し、外側が離間するよう板材の端部同士を継ぎ合わせることによって形成したので、この継目部を油圧緩衝器本体1下端部の接合部位に位置させ、電気抵抗溶接を用いて両者を溶接固定する際、溶接により発生するスパッタが取付アイ5の内周面に付着することを確実に防止できる。
【0038】
従って、油圧緩衝器本体1に取付アイ5を溶接固定した後、内筒6が装着されたブッシュ7を嵌入すると言った製造工程を採用する場合、前記スパッタが取付アイ5の内周面に付着することを防止できるので、例えば、ブッシュのスムーズな嵌入作業が出来ず、嵌入工程に時間を要したり、ブッシュを傷つけて所期の性能が発揮出来なかったりする不具合を確実に防止できる。
【0039】
又、取付アイ5の継目部に外側に向って開口するV字状溝8bを設けたので、開口巾が大きくなってセンサ等を用いた場合の継目部の検出精度を上げることができる。
【0040】
又、取付アイ5のV字状溝8bと180度反対側となる外周面に半球状をなす凹部10を形成したので、この凹部10の位置を目視により確認すれば、取付アイ5が油圧緩衝器本体1下端の所定位置に正確に溶接固定されたかを外観から容易に判断できる。
【0041】
従って、ロアキャップ3に対する取付アイ5の溶接時や、製品完成時に容易に良品、不良品の識別を行うことができる。
【0042】
又、凹部10の位置をV字状溝と180度反対側となる外周面とすると、この部位はちょうどピストンロッド及び油圧緩衝器本体1の軸芯上になるので、感覚的にも取付アイ5のずれを認識し易い。
【0043】
又、半球状をなす凹部10としたので、目視だけでなく、手で触っても容易に位置の確認を行うことができる。
【0044】
又、目視による位置の確認作業の際に、治具等を用いればさらに正確な判断を行うことができる。
【0045】
尚、本発明は、前記実施の形態に限定されるものではなく、例えば、次のように変更して具体化することもできる。
【0046】
1)前記実施の形態では凹凸部11をショットブラスト加工によって形成したがこの加工法に限定されるものではなく、微小な凹凸部11が形成される方法であれば、どんな方法を採用しても良い。
【0047】
2)前記実施の形態では凹凸部11を取付アイ5の外周に形成したが、取付アイ5の側面を検出する装置に対応させるためには、凹凸部11を取付アイ5の側面に形成しても良い。
【0048】
3)前記V字状溝8bは、継目部となる板材の端部外側縁を面取りすることによって形成しても良い。こうすれば、V字状溝の開口巾を容易に大きくできるので、センサ等を用いた場合の継目部の検出精度を更に上げることができる。
【0049】
4)前記半球状をなす凹部10の代わりに、凸部や、十字溝、シール状のマークにしても良い。
【0050】
5)前記凹部10を、例えば、V字状溝8bと90度反対側となる部位等に設けても良い。
【0051】
6)前記凹部10を2個以上の複数個としても良い。
【0052】
7)本実施の形態では、復筒型の油圧緩衝器に具体化したが、これに限定されるものではなく、単筒型の油圧緩衝器に具体化しても良い。
【0053】
8)本実施の形態では、油圧緩衝器本体下端部1に取付アイ5を溶接固定したが、これに限定されるものではなく、ピストンロッド先端部に取付アイ5を溶接するものに具体化しても良い。
【0054】
【発明の効果】
本発明によれば次の効果がある。
【0055】
1)請求項1の発明によれば、取付アイの外周全体に微小な凹凸部を形成し
たので、この凹凸部によって取付アイの外周に出来た傷や部分的な凹みを継目部として誤検出することを防止できる。
従って、取付アイのV字状の溝からなる継目部以外の部分が油圧緩衝器本体下端部又は、ピストンロッド先端部当接され、両者が溶接固定されると言った不具合を確実に防止することができる。
又、取付アイの継目部が外側に向って開口するV字状の溝に形成されているので、開口巾が大きくなってセンサ等を用いた場合の継目部の検出精度を上げることができる。
しかも、例えば、この継目部を油圧緩衝器本体下端部の接合部位に位置させ、電気抵抗溶接を用いて両者を溶接固定する際、溶接により発生するスパッタが取付アイの内周面に付着することを確実に防止できる。
また、ショットブラスト加工法を用いることにより、均一な凹凸部を備えた取付アイを一度に多数製造することができるので、凹凸部の形成単価を低減させ、ひいては取付アイ自体を安価に製造することができる。
【0056】
従って、取付アイの継目部以外の部分が油圧緩衝器本体下端部又は、ピストンロッド先端部当接され、両者が溶接固定されると言った不具合を確実に防止することができる。
【0057】
2)請求項2の発明によれば、ロール加工で環状に継ぎ合わせた後の取付アイにショットブラスト加工を施すようにしたので、ロール加工工程等の前工程で付いた傷や凹み等による影響を最小限に留めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態を示す油圧緩衝器の取付部を示す正面図である。
【図2】第1図において、内筒及びブッシュを除いた状態を示す拡大側面図である。
【図3】第2図の縦断正面図である。
【符号の説明】
1 油圧緩衝器本体
4 取付部
5 取付アイ
6 内筒
7 ブッシュ
11 凹凸部
Claims (3)
- 板材の端部同士をロール加工で継ぎ合わせてなる環状の取付アイと、この取付アイの内側に配置される同じく環状の内筒と、これらの間に嵌入されたゴム製のブッシュとから取付部を構成し、上記板材の端部同士の継目部を
センサで検出しながらこの継目部を油圧緩衝器本体下端部又は、ピストンロッド先端部に対して位置合わせして溶接させる油圧緩衝器における取付部の溶接方法において、上記板材の端部同士の継目部を上記取付アイの外側に向かって広がる断面V字状の溝に形成させ、また、取付アイの外周全体又は側面全体にショットブラスト加工により微小な凹凸部を設け、前記センサで前記V字状の溝と前記凹凸部に対応する前記取付アイの外周又は側面を測定した時前記V字状の溝以外の部分では一定の測定値を出力させることにより上記V字状の溝のみを継目部として検出して溶接させることを特徴とする油圧緩衝器における取付部の溶接方法。 - 前記ショットブラスト加工はロール加工で継ぎ合わされた取付アイの状態で施されている請求項1記載の油圧緩衝器における取付部の溶接方法。
- 油圧緩衝器本体下端部にロアキャップが溶接され、このロアキャップに形成した突起にV字状の溝を当接させて取付アイとロアキャップとを溶接している請求項1又は2に記載の油圧緩衝器における取付部の溶接方法。
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