JP4019828B2 - 転動体転動溝の転造加工方法および転造加工装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、リニアガイド装置の直動案内レールを製造するときに用いられる転動体転動溝の転造加工方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
工作機械の可動テーブル等を一軸方向に案内する手段として用いられるリニアガイド装置は、直動案内レールと、この直動案内レールの両側に袖部を有するスライダとを備えており、直動案内レールの長手方向にスライダが相対移動するとスライダに組み込まれた多数の転動体が直動案内レールの左右側面およびスライダの袖部内側面に相対向して形成された転動体転動溝上を転動するようになっている。
【0003】
このようなリニアガイド装置の直動案内レールは、一般に、鉄鋼材料からなる案内レール素材で形成されており、案内レール素材の左右側面に転動体転動溝を転造加工して直動案内レールを製造する場合、従来は案内レール素材の左右側面に少なくとも二つのロールダイスを押し当て、この状態で案内レール素材をロールダイス間から一定速度で引き抜いて案内レール素材の左右側面に転動体転動溝を転造加工している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような方法で転動体転動溝の転造加工を多数の案内レール素材に対して連続して行うと加工回数が増えるに従ってロールダイスの温度が上昇し、これに伴ってロールダイスの外径が大きくなる。このため、転動体転動溝の深さが次第に深くなり、許容範囲を超えてしまうことがあった。そして、転動体転動溝の深さが許容範囲を超えた場合には、ロールダイスの温度が下がるまで転動体転動溝の加工を停止するか或はロールダイスの切込み量を変更しなければならないため、加工効率が低いという問題があった。
【0005】
本発明は上述した問題点に着目してなされたものであり、その目的とするところは、案内レール素材の左右側面にほぼ一定深さの転動体転動溝をロールダイスの温度に影響されることなく転造加工することのできる転動体転動溝の転造加工方法を提供しようとするものである。また、本発明の第2の目的は、案内レール素材の左右側面にほぼ一定深さの転動体転動溝をロールダイスの温度に影響されることなく転造加工することのできる転動体転動溝の転造加工装置を提供しようとするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明に係る転動体転動溝の転造加工方法は、リニアガイド装置の直動案内レールを形成する案内レール素材の左右側面にそれぞれロールダイスを押し当てた後、前記ロールダイスを所定方向に回転させて前記案内レール素材の左右側面に転動体転動溝を転造加工するに際して、前記案内レール素材の引抜速度を小さくすると転動体転動溝の深さが深くなり、前記案内レール素材の引抜速度を大きくすると転動体転動溝の深さが浅くなるという関係に基づいて、前記ロールダイスの温度が低いときにはロールダイスの回転速度が小さくなり、前記ロールダイスの温度が高いときにはロールダイスの回転速度が大きくなるように前記案内レール素材の引抜速度を制御して前記案内レール素材の左右側面に転動体転動溝を転造加工することを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る転動体転動溝の転造加工装置は、リニアガイド装置の直動案内レールを形成する案内レール素材の左右側面にそれぞれロールダイスを押し当てた後、前記ロールダイスを所定方向に回転させて前記案内レール素材の左右側面に転動体転動溝を転造加工する転動体転動溝の転造加工装置において、前記案内レール素材の引抜速度を小さくすると転動体転動溝の深さが深くなり、前記案内レール素材の引抜速度を大きくすると転動体転動溝の深さが浅くなるという関係に基づいて、前記ロールダイスの温度が低いときにはロールダイスの回転速度が小さくなり、前記ロールダイスの温度が高いときにはロールダイスの回転速度が大きくなるように前記案内レール素材の引抜速度を制御する制御手段を有することを特徴とする。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1は案内レール素材の左右側面に転動体転動溝を転造加工する場合に用いられる転造加工装置の正面図で、図2はその平面図である。図1及び図2に示されるように、転造加工装置10は案内レール素材Wを挟んで相対向する二つの可動ブラケット11,12と、これらの可動ブラケット11,12を図2中二点鎖線で示す待機位置から図2中実線で示す加工位置に進退駆動するブラケット駆動機構13,14とを備えており、可動ブラケット11,12間には、案内レール素材Wを支持する上下一対のローラサポート15が相対向して設けられている。
【0010】
また、転造加工装置10は可動ブラケット11,12に回転自在に支持されたロールダイス16,17を備えており、これらロールダイス16,17の外周面には、転動体転動溝gを転造加工するための凸条部16a,17aが形成されている。さらに、転造加工装置10はロールダイス16,17を夫々プーリ18,ベルト19,プーリ20を介して図中矢印方向に回転駆動するモータ21,22を備えており、可動ブラケット11,12のうち一方の可動ブラケットには、案内レール素材Wを光学的に検出するレール素材検出器23(図1参照)が取り付けられているとともに、ロールダイス16又は17の温度を検出する温度センサ24が取り付けられている。
【0011】
また、転造加工装置10はブラケット駆動機構13,14およびモータ21,22を制御するコントローラ25(図2参照)を備えており、このコントローラ25には、前述したレール素材検出器23および温度センサ24の出力信号が供給されるようになっている。
図3はコントローラ25の制御動作を説明するためのフローチャートであり、同図に示されるように、コントローラ25は図示しない電源スイッチが投入されるとレール素材検出器23がオンであるか否かをステップS1で判断する。ここでレール素材検出器23がオンである場合には、コントローラ25はステップS2でブラケット駆動機構13,14を作動させ、可動ブラケット11,12を図2中二点鎖線で示す待機位置から図2中実線で示す加工位置に移動させる。そうすると、ロールダイス16,17の凸条部16a,17aが案内レール素材Wの左右側面に当接し、これにより案内レール素材Wの左右側面にロールダイス16,17の凸条部16a,17aが転写される。
【0012】
ブラケット駆動機構13,14の作動により可動ブラケット11,12が待機位置から加工位置に移動すると、コントローラ25はブラケット駆動機構13,14の作動を停止した後、ステップS3で温度センサ24の出力を取り込み、ロールダイス16,17の温度を測定する。そして、ステップS3で得られたロールダイス16,17の温度データから案内レール素材Wの最適引抜速度BSをステップS4で演算した後、ステップS5でモータ21,22を作動させてロールダイス16,17を図2中矢印方向に回転させる。このとき、コントローラ25は、ロールダイス16,17間から引き抜かれる案内レール素材Wの引抜速度がステップS4で得られた最適引抜速度BSとなるように、ロールダイス16,17の回転速度つまりモータ21,22の回転速度をステップS6で制御する。
【0013】
また、モータ21,22の作動によりロールダイス16,17が所定方向に回転すると、コントローラ25はレール素材検出器23がオフであるか否かをステップS7で判断する。ここで、レール素材検出器23がオフである場合には、コントローラ25は転造加工終了と判定し、ステップS8でモータ21,22の作動を停止させ、さらにステップS9でブラケット駆動機構13,14を作動させ、可動ブラケット11,12を加工位置から待機位置に後退させる。
【0014】
図4は案内レール素材Wの左右側面に転造加工される転動体転動溝gの深さと案内レール素材Wの引抜速度との関係を示す図であり、この図から明らかなように、案内レール素材Wの引抜速度を小さくすると転動体転動溝gの深さが深くなり、案内レール素材Wの引抜速度を大きくすると転動体転動溝gの深さが浅くなることがわかる。
【0015】
したがって、上述した実施形態のように、案内レール素材Wの左右側面にロールダイス16,17を押し当てて転動体転動溝gを転動加工するときにロールダイス16,17の温度を基に案内レール素材Wの最適引抜速度BSを求め、ロールダイス16,17間から引き抜かれる案内レール素材Wの引抜速度が最適引抜速度BSとなるようにロールダイス16,17の回転速度を制御すると、ロールダイス16,17の回転速度がロールダイス16,17の温度に応じて変化し、ロールダイス16,17の温度が低いときにはロールダイス16,17の回転速度が小さくなり、ロールダイス16,17の温度が高いときにはロールダイス16,17の回転速度が大きくなるので、案内レール素材Wの左右側面にほぼ一定深さの転動体転動溝gをロールダイス16,17の温度に影響されることなく転造加工することができる。
【0016】
図5は案内レール素材Wの引抜速度を一定とした場合における転動体転動溝gの深さと転動体転動溝の連続加工回数との関係を示す図で、図6は案内レール素材Wの引抜速度をロールダイスの温度に応じて可変した場合における転動体転動溝gの深さと転動体転動溝の連続加工回数との関係を示す図である。
図5から明らかなように、案内レール素材の引抜速度を一定とした場合には、転動体転動溝の連続加工回数が多くなるに従って転動体転動溝の深さが深くなることがわかる。これは、前述したように、転動体転動溝の連続加工回数が増えるとロールダイスの温度が上昇し、これに伴ってロールダイスの外径が熱膨張により大きくなるためである。一方、案内レール素材の引抜速度をロールダイスの温度に応じて変化させた場合には、図6に示されるように、転動体転動溝の連続加工回数が多くなっても転動体転動溝の深さがほぼ一定となることがわかる。
【0017】
したがって、案内レール素材をロールダイス間から引き抜くときに案内レール素材の最適引抜速度をロールダイスの温度から演算し、その演算結果に基づいてロールダイスの回転速度を制御して案内レール素材の左右側面に転動体転動溝を転造加工することにより、案内レール素材の左右側面にほぼ一定深さの転動体転動溝をロールダイスの温度に影響されることなく転造加工することができる。
【0018】
なお、本発明は上述した実施の形態に限定されるものではない。たとえば、上述した実施の形態では案内レール素材の左右側面に二つのロールダイスを押し当てて転動体転動溝を転造加工するようにしたが、案内レール素材の左右側面に四つ又は六つのロールダイスを押し当てて転動体転動溝を転造加工するようにしてもよい。
【0019】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1及び2の発明によれば、ロールダイス間から引き抜かれる案内レール素材の速度がロールダイスの温度に応じて変化し、ロールダイスの温度が高いときには案内レール素材の引抜速度が大きくなるので、案内レール素材の左右側面にほぼ一定深さの転動体転動溝をロールダイスの温度に影響されることなく転造加工することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】案内レール素材の左右側面に転動体転動溝を転造加工する場合に用いられる転造加工装置の正面図である。
【図2】図1に示す転造加工装置の平面図である。
【図3】図1に示すコントローラの制御動作を説明するためのフローチャートである。
【図4】転動体転動溝の深さと案内レール素材の引抜速度との関係を示す図である。
【図5】案内レール素材の引抜速度を一定とした場合における転動体転動溝の深さと転動体転動溝の連続加工回数との関係を示す図である。
【図6】案内レール素材の引抜速度をロールダイスの温度に応じて可変した場合における転動体転動溝の深さと転動体転動溝の連続加工回数との関係を示す図である。
【符号の説明】
11,12 可動ブラケット
13,14 ブラケット駆動機構
15 ローラサポート
16,17 ロールダイス
18,20 プーリ
19 ベルト
21,22 モータ
23 レール素材検出器
24 温度センサ
25 コントローラ
Claims (2)
- リニアガイド装置の直動案内レールを形成する案内レール素材の左右側面にそれぞれロールダイスを押し当てた後、前記ロールダイスを所定方向に回転させて前記案内レール素材の左右側面に転動体転動溝を転造加工するに際して、前記案内レール素材の引抜速度を小さくすると転動体転動溝の深さが深くなり、前記案内レール素材の引抜速度を大きくすると転動体転動溝の深さが浅くなるという関係に基づいて、前記ロールダイスの温度が低いときにはロールダイスの回転速度が小さくなり、前記ロールダイスの温度が高いときにはロールダイスの回転速度が大きくなるように前記案内レール素材の引抜速度を制御して前記案内レール素材の左右側面に転動体転動溝を転造加工することを特徴とする転動体転動溝の転造加工方法。
- リニアガイド装置の直動案内レールを形成する案内レール素材の左右側面にそれぞれロールダイスを押し当てた後、前記ロールダイスを所定方向に回転させて前記案内レール素材の左右側面に転動体転動溝を転造加工する転動体転動溝の転造加工装置において、
前記案内レール素材の引抜速度を小さくすると転動体転動溝の深さが深くなり、前記案内レール素材の引抜速度を大きくすると転動体転動溝の深さが浅くなるという関係に基づいて、前記ロールダイスの温度が低いときにはロールダイスの回転速度が小さくなり、前記ロールダイスの温度が高いときにはロールダイスの回転速度が大きくなるように前記案内レール素材の引抜速度を制御する制御手段を有することを特徴とする転動体転動溝の転造加工装置。
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JP2002200815A JP4019828B2 (ja) | 2002-07-10 | 2002-07-10 | 転動体転動溝の転造加工方法および転造加工装置 |
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-
2002
- 2002-07-10 JP JP2002200815A patent/JP4019828B2/ja not_active Expired - Lifetime
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