JP4019621B2 - 内燃機関のアイドル回転制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、ガソリンエンジンなどの内燃機関のアイドル回転を制御するための装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、内燃機関のアイドル回転数は、エンジン水温などに基づいて目標回転数を設定し、その目標回転数と実回転数との偏差に応じて吸入空気量をフィードバック制御することにより制御し、また、空調機などの補機の負荷変動があった場合には、アイドル回転数の変動を抑制するために、その負荷変動に基づいた空気量のフィードフォワード制御をおこなっている。例えば特開平11−44241号公報には、パワーステアリングポンプの負荷が操舵量に応じて増加するものの、その負荷を直接検出できないために、パワーステアリングポンプの負荷に応じた吸入空気量の補正量を固定値として用意しておき、パワーステアリングポンプの負荷変化に応じてその固定値に基づく吸入空気量の増量制御をおこなう装置が記載されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
内燃機関のアイドル制御は、これを搭載している車両が停止している状態であっても内燃機関の自律回転を維持し、応答遅れのない発進を可能にするための制御である。したがってアイドル制御は、第1にエンジンストールを回避することを主眼として実行することになる。そのため、上述した公報に記載されているように、パワーステアリングポンプによる負荷が増大した場合、その負荷の大小に拘わらず確実にエンジンストールを防止するためには、前記補正量としての固定値を、パワーステアリングポンプによる負荷が最大の場合に適合する値に設定することによる。そのため、車両がアイドリング状態で停止している場合に僅かに操舵した場合、発生する負荷がいわゆる軽負荷であっても、吸入空気量の補正量は最大になる。
【0004】
このように上記の公報に記載された発明では、アイドリング時にパワーステアリングポンプによって生じる負荷と、アイドル回転数を維持するための吸入空気量の補正量とが適合せずに、負荷補正が過剰におこなわれるため、アイドル回転数が増大するいわゆるオーバーシュートが生じる可能性があった。このような不都合を解消するために前記の補正量としての固定値を小さい値に設定した場合には、アイドリング状態で急激かつ大きく操舵されてパワーステアリングポンプによる負荷が急激に大きくなった場合には、吸入空気量の補正量が不足してアイドル回転数が低下し、極端な場合にはエンジンストールに到る可能性がある。このように従来の装置では、パワーステアリングポンプによって油圧を発生させることに伴う負荷補正が必ずしも適正におこなわれないので、アイドル回転数の安定性に欠ける不都合があった。
【0005】
この発明は、上記の技術的課題に着目してなされたものであり、補機による負荷変動があってもアイドル回転数を安定的に維持でき、ひいてはアイドル回転数を低下させて燃費を向上させることのできる制御装置を提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段およびその作用】
この発明は、上記の課題を解決するために、アイドル回転数の制御量の補正を、パワーステアリングポンプによる負荷に応じておこない、かつその補正量を油圧の高低に応じて設定するように構成したことを特徴とするものである。より具体的には、請求項1の発明は、内燃機関のアイドル回転数を目標回転数に維持する内燃機関のアイドル回転制御装置において、前記内燃機関によって駆動される補機としてのパワーステアリングポンプによる油圧を検出する油圧センサと、前記アイドル回転数を前記目標回転数に維持するための制御量についての補正量を、前記油圧センサで検出された油圧が高い場合に該油圧が低い場合に比較して大きい値に設定する補正量設定手段とを備え、前記補正量設定手段は、前記パワーステアリングポンプで発生させる油圧ごとに予め設定した変化量と実際の油圧の変化量との比に基づいて前記補正量を設定する手段を含むことを特徴とする制御装置である。
【0007】
したがって請求項1の発明では、内燃機関で駆動されるパワーステアリングポンプによる負荷が発生した場合、これが油圧センサで検出される。その検出された油圧に応じて補正量設定手段が、アイドル回転を維持するための制御量についての補正量を設定する。そのため、油圧が高くなるほどその変化が大きくなる特性がアイドル回転数を維持する制御によりよく反映され、その結果、アイドル回転の制御が、過不足なく、かつ応答遅れを生じることなく実行され、内燃機関のアイドル回転数が安定した状態に制御される。
【0024】
【発明の実施の形態】
つぎにこの発明を図に示す具体例に基づいて説明する。先ず、この発明で対象とする内燃機関の一例を図2に示してあり、ここに示す例は、ガソリンエンジン(以下、単にエンジンと記す)1である。すなわち、ピストン2を収容してあるシリンダ3の頂部に、吸気バルブ4によって開閉される吸気ポート5と、排気バルブ6によって開閉される排気ポート7とが形成されており、さらにそのシリンダ3の頂部に点火プラグ8が設けられている。この点火プラグ8は、従来一般のガソリンエンジンと同様に、コイル9の電流をイグナイタ10によって制御することにより、所定の進角量もしくは遅角量をもって火花を飛ばすようになっている。
【0025】
前記吸気ポート5に連通させた吸気管路11は、その先端開口部に設けたエアークリーナ12から電子スロットルバルブ13およびサージタンク14を経て吸気ポート5に到る管路として構成されている。そして、吸気ポート5の近傍には、電気的に制御されて所定のタイミングで所定量の燃料を噴射するインジェクター15が設けられている。また、エアークリーナ12の下流側に吸入空気量を検出するエアーフローメータ16が設けられている。
【0026】
前記電子スロットルバルブ13はその開度を調整するスロットルモータ17とその開度を電気的に検出するスロットルポジションセンサ18とを備えており、アクセルペダル(図示せず)の踏み込み量(アクセル開度)を検出するアクセルポジションセンサ19の検出信号や車速を設定車速に維持するクルーズコントロールシステム(図示せず)からの出力要求信号に基づいてスロットルモータ17を駆動して、所定のスロットル開度に設定するように構成されている。
【0027】
上記のエンジン1に補機が連結されている。その補機は、パワーステアリング装置(油圧式操舵装置:図示せず)の油圧ポンプ(パワーステアリングポンプ)20および空調機(図示せず)のコンプレッサー21ならびにオルターネータ22などであって、エンジン1によって駆動されるように構成されている。
【0028】
上記の点火プラグ8による点火時期や電子スロットルバルブ13の開度、インジェクター15による燃料噴射量(燃料供給量)およびそのタイミングなどを制御するための電子制御装置(E−ECU)23が設けられている。この電子制御装置23はマイクロコンピュータを主体として構成され、エンジン出力が要求出力となるように、またアイドル回転数が目標回転数となるように、各種の入力データに基づいて点火時期や吸入空気量あるいは燃料噴射量を制御するように構成されている。そして、その制御のためにこの電子制御装置23には、前記パワーステアリング20の吐出圧を検出する油圧センサ24の検出信号、前記コンプレッサー21の入出力圧の差を検出する油圧センサ25の検出信号、前記オルターネータ22の電流を検出する電流センサ26の検出信号、操舵装置による操舵角を検出する舵角センサ27の検出信号、エンジン回転数センサ28の検出信号、前記エアーフローメータ16の検出信号、スロットルポジションセンサ18の検出信号、アクセルポジションセンサ19の検出信号などが入力されている。
【0029】
上記のエンジン1のアイドル回転数の制御は、通常のエンジンと同様に、エンジン水温などに応じて目標回転数を設定し、実際のエンジン回転数がその目標回転数に一致するように吸入空気量すなわちスロットル開度を制御し、あるいはこれと併せて燃料噴射量を制御することによりおこなわれる。また、上記のエンジン1には各種の補機が連結されているので、アイドリング状態でそれらの補機のいずれかが動作した場合、エンジン1に掛かる負荷が増大するので、その分、出力トルクを増大してアイドル回転数を維持する必要がある。具体的には、アイドル回転数を維持するためのフィードフォワード制御の制御量を補正する必要がある。この発明に係る制御装置は、その補正制御を、吸入空気量の補正あるいは点火時期の補正もしくは燃料供給量の補正によっておこなうように構成されている。その一例として、パワーステアリングポンプ20による負荷が増大し、それに伴って吸入空気量を補正する例を以下に説明する。
【0030】
図1はその制御例を説明するためのフローチャートであって、ここに示すルーチンは、所定の短い時間ごとに繰り返し実行される。先ず、パワーステアリングポンプ20の油圧(吐出圧)PPSが判定値KPPSONより高圧か否かが判断される(ステップS1)。その油圧PPSは、前述した油圧センサ24によって検出される。また、この判定値KPPSONは、エンジン1がアイドリング状態であって、かつ操舵されていない状態(操舵角度がゼロの状態)におけるパワーステアリングポンプ20の油圧値である。したがってこのステップS1では、アイドリング状態で操舵されたか否かが判断される。
【0031】
このステップS1で肯定的に判断された場合には、前記油圧PPSに基づく吸入空気の1次補正量QPS1が求められる(ステップS2)。パワーステアリングポンプ20の油圧PPSは、操舵角に応じて高くなり、またそのパワーステアリングポンプ20はエンジン1によって駆動されるから、その油圧PPSを発生させるために必要な動力がエンジン1に対して負荷として作用する。したがって操舵角に応じてエンジン1に対する負荷が大きくなる。吸入空気量の1次補正量は、このような負荷の増大があってもアイドル回転数を維持するために必要なトルクを発生させる吸入空気量の増量分である。したがってこの1次補正量QPS1は、図1に併せて記載してある油圧PPSと1次補正量QPS1との二次元マップに基づいて求めることができる。
【0032】
ついで、負荷の変化の程度に基づく2次補正量QPS2が求められる。すなわち今回の走査過程で検出された油圧PPSが前回の走査過程で検出された油圧PPS0以上か否かが判断される(ステップS3)。前述したようにパワーステアリングポンプ20の油圧PPSは、操舵角に応じて高くなるから、ハンドルをいわゆる切り増して操舵角を更に増大させている場合あるいは所定の舵角に操作してその舵角を維持している場合には、ステップS3で肯定的に判断される。
【0033】
このステップS3で肯定的に判断された場合には、基本空気量GA0と前記1次補正量QPS1とを加えた空気量が、前記エアーフローメータ16で検出されている現在の吸入空気量GA以上か否かが判断される(ステップS4)。ここで基本空気量GA0は、暖機が終了した後の通常状態におけるアイドリング状態でかつ前記パワーステアリングポンプ20が駆動されていない状態での吸入空気量であり、エンジン1ごとに予め求められている値である。したがってファーストアイドリング時のように吸入空気量を増大させている場合などの特別な状態ではステップS4で否定的に判断されることがあるが、定常的なアイドリング状態でであれば、ステップS4で肯定的に判断される。
【0034】
負荷が増大傾向にあり、かつ実際の吸入空気量が1次補正量で補正した量に対して不足している場合には、吸入空気量の増大に対するエンジントルクの増大の応答遅れを是正するために、吸入空気量の2次補正をおこなう。具体的には、前記油圧PPSに基づいた2次補正量QPS2を求める(ステップS5)。図1に示す例では、油圧PPSとエンジン負荷に相当する1次補正された吸入空気量(GA+QPS1:負荷)とに対する2次補正量を定めた三次元マップに基づいて求めるように構成されている。
【0035】
なお、図1に示す例では、補機負荷である油圧PPSが低圧であるほど、また吸入空気量が多いほど、2次補正量QPS2が大きくなるように設定されている。これは以下の理由による。すなわち補機による負荷が小さい場合には、1次補正によって増量される空気量が少ないので、1次補正によって増量した空気は、サージタンク14を含む吸気管路11の内圧を高くすることに消費され、シリンダ3の内部に実際に供給される空気量は、直ちには多くならず、時間的な遅れが生じる。これに対して1次補正量が多い場合には、吸気管路11の内圧が迅速に上昇し、それに伴ってシリンダ3の内部に供給される空気量も迅速に増大する。このように吸入空気量を1次補正してもその量によってはエンジントルクの増大に遅れが生じるので、これを是正するために、補機負荷の程度に応じて2次補正量を定めるようになっている。
【0036】
また、吸入空気が吸気管路11を通ってシリンダ3の内部に到るまでには、不可避的な流動抵抗があり、また空気の圧縮や膨張がある。このような要因による吸入空気量の実質的な補正の遅れを回避するために、上記の2次補正量を更に補正する。そのための係数KPPSDが算出される(ステップS6)。この係数KPPSDは、一例として前記油圧PPSの変化量(変化率)ΔPPS(=PPS−PPS0)に応じた値とすることができ、したがって予めマップとして用意しておき、検出された油圧PPSの変化量ΔPPSに対応する係数KPPSDをそのマップから求めることができる。なお、図1に示す例では、その係数KPPSDを1以下の値に設定してある。
【0037】
上記の1次補正量QPS1と、2次補正量QPS2に係数KPPSDを掛けた値とを加算することにより、補機負荷に基づく吸入吸気量の最終的な補正量QPSが求められる(ステップS7)。そして、その補正量QPSの算定の基礎となった油圧PPSが、前回の油圧PPS0として記憶される(ステップS8)。
【0038】
一方、負荷が減少傾向にある場合、すなわち補機負荷となる前記油圧PPSが低下する傾向にある場合、前記ステップS3で否定的に判断される。その場合には、基本空気量GA0に1次補正量QPS1を加えた空気量が、その時点の実際の吸入空気量GAより少ないか否かが判断される(ステップS9)。すなわち実際の吸入空気量が過剰か否かが判断される。このステップS9で肯定的に判断された場合には、吸入空気量を減少させる必要があるので、そのための2次補正量QPS2を算出する(ステップS10)。この2次補正量QPS2は、応答遅れを回避するように吸入空気量を減少させるためのものであるから、負の値を持った量であり、図1に示す例では、補機負荷である油圧PPSが低いほど、2次補正量が大きい値(負の大きい値)に設定されている。なお、この2次補正量QPS2も、吸入空気量を増大させる場合と同様に、油圧PPSとエンジン負荷に相当する1次補正された吸入空気量(GA+QPS1:負荷)とに対する2次補正量を定めた三次元マップに基づいて求めることができる。
【0039】
このステップS10で2次補正量QPS2を算出した後、ステップS6ないしステップS8に進んで、1次補正量QPS1と2次補正量QPS2とに基づいて吸入空気量の補正量QPSが求められる。
【0040】
またさらに、エンジン1がアイドリング状態であって、かつパワーステアリングポンプ20の油圧PPSが判定値KPPSON以下であることにより、すなわち操舵されていないことにより、ステップS1で否定的に判断された場合には、その時点の吸入空気量GAが基本空気量GA0として記憶される(ステップS11)。また、吸入空気量の補正をおこなう必要がないので、1次補正量QPS1および2次補正量QPS2の値がそれぞれ“0”に設定され(ステップS12、ステップS13)、その後、ステップS7に進む。
【0041】
そしてまた、補機負荷である油圧PPSが増大傾向にあるるものの、実際の吸入空気量GAが1次補正した空気量より多いことによりステップS4で否定的に判断された場合、および補機負荷である油圧PPSが低下傾向にあるものの、実際の吸入空気量GAが1次補正した空気量より少ないことによりステップS9で否定的に判断された場合、吸入空気量の2次補正が不要であるから、ステップS13に進み、2次補正量QPS2を“0”に設定する。
【0042】
以上説明した図1に示す制御をおこなった場合における吸入空気量の補正量QPSおよびエンジン回転数NEの変化を、従来の装置による変化と併せて図3に示してある。図3に示す例は、当初、小さく操舵し、その直後に大きく操舵した場合の例であり、したがってパワーステアリングポンプ20の油圧PPSが当初、小さく上昇し、所定の油圧に維持された後、操舵量に応じて急激に増大している。この発明の装置による図3の(A)に示す例では、油圧PPSの当初の上昇が小さいので、すなわち軽負荷状態なので、吸入空気量の補正量QPSが相対的に小さい値に設定される。したがって、負荷PPSに対する補正量QPSが過剰になることがないので、エンジン回転数NEが過剰に増大するいわゆるオーバーシュートが生じることが回避される。なおその場合、負荷が小さいことによって1次補正量が小さくても、2次補正量が相対的に大きい値に設定されるので、補機負荷の発生に対してエンジントルクが遅れを生じることなく増大する。その結果、エンジン回転数NEの低下が防止される。
【0043】
その後、補機負荷として現れる油圧PPSが急激かつ大きく増大すると、それに応じて吸入空気量の補正量QPSが大きく増大する。その場合、油圧PPSが高いことにより前述した1次補正量が大きくなり、これに対して2次補正量が相対的に小さくなるが、補正量QPSの全体としては油圧PPSに応じた量になるので、負荷に応じてエンジントルクを発生させ、エンジン回転数NEが低下することが回避される。また、その場合、油圧PPSが高いことにより2次補正量QPS2が相対的に小さい値となるが、補正量QPSが全体として大きい量なので、吸気管路11の容積に起因する応答遅れが抑制もしくは防止され、その結果、補機負荷の発生に対してエンジントルクが遅れを生じることなく増大し、エンジン回転数NEの低下が防止される。したがって燃費を向上させるためにアイドル回転数を低下させてもエンジンストールが生じにくく、いわゆる耐エンジンストール性が良好になる。
【0044】
これに対して補機負荷の発生に対して固定値で補正をおこなう従来の装置では、図3の(B)に示すように、パワーステアリングポンプ20の油圧PPSが当初、小さく増大した時点で、予め定められた固定値によって吸入空気量の補正がおこなわれるので、負荷に対するエンジントルクが過剰となってエンジン回転数NEが一時的に増大する。また、操舵角が増大してその油圧PPSが更に増大した場合、負荷の変更に応じた制御をおこなっていないことにより、吸入空気量の補正がおこなわれず、そのためにエンジントルクが相対的に不足してエンジン回転数NEが一時的に低下してしまう。このように、従来の固定値での制御では、エンジン1のアイドル回転数が不安定になり、燃費を向上させるためにアイドル回転数を低回転数に設定すると、エンジンストールに到る可能性が高くなる。言い換えれば、アイドル回転数を低下させて燃費を向上させることは困難である。
【0045】
上記の図1に示す例では、そのルーチンを1回実行する間の油圧PPSの変化量、すなわち油圧PPSの変化率に基づいて2次補正量QPS2を設定するように構成したが、これに替えて、パワーステアリングポンプ20の油圧PPSが所定の圧力に達するまでの経過時間およびその圧力に基づいて2次補正量を設定することとしてもよい。その例を図4に示してあり、これは、図1に示すステップS5からステップS7に置き換えられる部分的なフローチャートである。
【0046】
図4において、基本空気量GA0に1次補正量QPS1を加算した空気量がその時点の実際の吸入空気量以上であることによりステップS4で肯定的に判断されると、前記油圧PPSが第1判定値K0に等しいか否かが判断される(ステップS401)。その第1判定値K0は、油圧PPSの最大値を第5判定値K4として5段階に区分した場合の最も低圧側の判定値であり、その一例を図5に模式的に示してある。
【0047】
このステップS401で肯定的に判断された場合には、第1のカウンタC0をゼロリセットし、時間のカウントを開始する(ステップS402)。ついで、1次補正量QPS1と2次補正量QPS2とを加算して、吸入空気量の最終的な補正量QPSを求めるステップS403に進む。なお、この時点では、2次補正量QPS2が求められていないので、1次補正量QPS1がそのまま補正量QPSとされる。
【0048】
これに対して前記油圧PPSが第1判定値K0と異なっていることによりステップS401で否定的に判断された場合には、その油圧PPSが第1判定値K0より大きいか否かが判断される(ステップS404)。このステップS404で否定的に判断された場合には、油圧PPSが上昇していないので、すなわち補機負荷が増大していないので、ステップS402に戻り、第1カウンタC0をゼロリセットする。これとは反対にステップS404で肯定的に判断された場合には、負荷すなわち油圧PPSが増大しているので、第1判定値K0からの経過時間を検出するために第1カウンタC0をインクリメント(INC)する(ステップS405)。
【0049】
ついで、油圧PPSが第2判定値K1に一致したか否かが判断される(ステップS406)。このステップS406で肯定的に判断された場合には、第1カウンタC0のカウント値が経過時間CPSとして記憶され(ステップS407)、かつ第2カウンタC1がゼロリセットされて時間のカウントを開始する(ステップS408)。すなわち、油圧PPSが第1判定値K0から第2判定値K1に上昇するまでに要した時間が検出される。
【0050】
そして、その経過時間CPSに基づいて、吸入空気量の2次補正量QPS2が求められる(ステップS409)。その2次補正量QPS2は、経過時間CPSとの関係を定めたマップに基づいて求めることができ、経過時間CPSの値が小さければ、油圧PPSが急激に増大したことになるので、2次補正量QPS2として大きい値が設定される。これとは反対に経過時間CPSの値が大きければ、油圧PPSがゆっくり増大したことになるので、2次補正量QPS2として相対的に小さい値が採用される。すなわち、負荷の増大に応じて吸入空気量を増大させる必要があるからである。
【0051】
なお、上記の経過時間CPSは、パワーステアリングポンプ20の油圧PPSが判定値KPPSONより高圧になった時点からの時間のカウント値であって、図4に併記してあるタイマールーチンによって、そのルーチンが繰り返し実行される都度、所定時間ずつカウント値をインクリメント(INC)される(ステップS1000)。また、この経過時間CPSの値は、後述するように他のカウント値に読み替えられる。したがって油圧PPSが第2判定値K1に到達するまでは、その間の時間の経過と共に前記経過時間CPSのカウント値が大きくなり、それに伴って2次補正量QPS2が次第に低下し、過度な補正が防止される。
【0052】
ステップS409で求められた2次補正量QPS2と前述した1次補正量QPS1とが加算されて、吸入空気量の補正量QPSが求められる(ステップS403)。
【0053】
一方、前記油圧PPSが第2判定値K1と異なっていることによりステップS406で否定的に判断された場合には、その油圧PPSが第2判定値K1より大きいか否かが判断される(ステップS410)。このステップS410で否定的に判断された場合には、油圧PPSが上昇していないので、すなわち補機負荷が増大していないので、ステップS408に戻り、第2カウンタC1をゼロリセットする。これとは反対にステップS410で肯定的に判断された場合には、負荷すなわち油圧PPSが増大しているので、第2判定値K1からの経過時間を検出するために第2カウンタC1をインクリメント(INC)する(ステップS411)。
【0054】
ついで、油圧PPSが第3判定値K2に一致したか否かが判断される(ステップS412)。このステップS412で肯定的に判断された場合には、第2カウンタC1のカウント値が経過時間CPSとして記憶され(ステップS413)、かつ第3カウンタC2がゼロリセットされて時間のカウントを開始する(ステップS414)。すなわち、油圧PPSが第2判定値K1から第3判定値K2に上昇するまでに要した時間が検出される。
【0055】
そして、その経過時間CPSに基づいて、吸入空気量の2次補正量QPS2が求められる(ステップS415)。その2次補正量QPS2は、経過時間CPSとの関係を定めたマップに基づいて求めることができ、経過時間CPSの値が小さければ、油圧PPSが急激に増大したことになるので、2次補正量QPS2として大きい値が設定され、これとは反対に経過時間CPSの値が大きければ、油圧PPSがゆっくり増大したことになるので、2次補正量QPS2として相対的に小さい値が採用される。すなわち、負荷の増大に応じて吸入空気量を増大させる必要があるからである。なお、この場合のマップとしては、油圧PPSが既にある程度上昇しているので、上記のステップS409で使用されるマップにおける2次補正量QPS2に対して相対的に小さい2次補正量QPS2を設定するマップが使用される。
【0056】
ステップS415で求められた2次補正量QPS2と前述した1次補正量QPS1とが加算されて、吸入空気量の補正量QPSが求められる(ステップS403)。
【0057】
以降、同様にして第3判定値K2から第4判定値K3に到達するまでの時間CPSが検出されるとともに、それに基づいた2次補正量QPS2が求められ(ステップS416ないしステップS421)、さらに第4判定値K3から第5判定値K4に到達するまでの時間CPSが検出されるとともに、それに基づいた2次補正量QPS2が求められる(ステップS422ないしステップS427)。なお、2次補正量QPS2を求めるマップは、油圧PPSが高い場合に採用されるものほど、2次補正量QPS2を相対的に小さい値に設定するようになっている。
【0058】
上記の図4に示すルーチンを含む制御を実行した場合の補正量QPSの変化を、負荷として現れる油圧PPSの変化が大きい場合と小さい場合とについて示せば、図5の(A)、(B)のとおりである。図5の(A)に示すように、油圧PPSが急激に増大する場合には、吸入空気量の補正量QPSは 当初、大きく、油圧PPSが増大するに従って次第に低下する。そのため、負荷の発生に対して遅れを生じることなく実質的な吸入空気量すなわちエンジントルクを増大させることができるので、エンジン回転数の一時的な低下が生じることがなく、また反対に油圧PPSがある程度上昇した後は、補正量QPSが低下するので、エンジン回転数が過剰に増大するいわゆるオーバーシュートが生じることが回避される。また、図5の(B)に示すように、負荷すなわち油圧PPSがゆっくり増大する場合には、負荷の変化に併せて補正量QPSが設定されるので、エンジン回転数が過剰に増大するいわゆるオーバーシュートが生じることが回避される。
【0059】
上記のように図4に示す制御であってもエンジン1のアイドル回転数を安定させることができ、ひいては耐エンジンストール性を損なうことなく、アイドル回転数を低い回転数として燃費を向上させることができる。また特に、上記の図4に示す制御によれば、2次補正量QPSを設定する油圧PPSの値を固定することができるので、吸入空気量の補正を安定しておこなうことができ、それに伴いアイドル回転数をより安定させることができる。
【0060】
ところで、パワーステアリング装置における油圧PPSは、配管経路やバルブなどの制御機器にオイルが充満し、かつクリアランスが詰まった後に上昇し始める。そのため操舵した直後では、油圧PPSの変化が小さく、その変化の絶対値のみをもって単純に負荷の変化を判定したのでは、判定の遅れが生じることがある。また、油圧PPSが高くなった状態では、低圧時に比較して油圧PPSの変化が大きくなる。このような状況を図に示せば、図6のとおりである。
【0061】
検出される油圧PPSのこのような変化特性を、アイドル回転数を維持するための吸入空気量の補正に反映させることが好ましく、そのための制御は、例えば以下に説明するように実行すればよい。図7は、前述した図1に示すルーチンのうちステップS6およびステップS7を変更したものであり、前述したステップS5に続けて、2次補正量QPS2の積算量QPS2Tが上限値KPS2T未満か否かが判断される(ステップS61)。この上限値KPS2Tは、2次補正による吸入空気量が、サージタンク14もしくはこれを含む吸気管路11の容積に達する値である。
【0062】
このステップS61で肯定的に判断された場合には、油圧変化基準値KΔPPSが算出される(ステップS62)。この油圧変化基準値KΔPPSは、アイドリング状態で急激に操舵した場合の油圧PPSの変化特性に合わせた値であって、図8に示すように、油圧PPSが高いほど、その変化ΔPPSが大きくなることに合わせて、油圧PPSが高い程、大きい値に設定されている。したがってこの油圧変化基準値KΔPPSは、マップ値として予め用意しておき、検出された油圧PPSに適合する値をマップから求めればよい。
【0063】
ついで、その油圧変化基準値KΔPPSと油圧PPSの変化量ΔPPSとの比(ΔPPS/KΔPPS)を、2次補正量QPS2に掛け合わせる。すなわち、油圧PPSに基づいて求まる2次補正量QPS2を、油圧PPSの変化特性に応じてなました値を求め、これを1次補正量に加算して、吸入空気量の補正量QPSを求める(ステップS63)。その結果、応答遅れを是正する2次補正量QPS2が、油圧PPSの変化特性を反映したものとなり、それに伴って吸入空気量の補正量QPSが、パワーステアリングポンプ20が動作することによる負荷に適合した量となるので、エンジン1のアイドル回転数をより安定させることが可能になる。
【0064】
なお、ステップS64では、前記の比を2次補正量QPS2に掛け合わせた値を、それまでの積算量QPS2Tn-1 に加算するとともに、シリンダ3に吸入された空気量KQPS2Dを減算して、2次補正量の積算をおこなう。また、2次補正量QPS2の積算量QPS2Tが上限値KPS2Tに達していることによりステップS61で否定的に判断された場合には、ステップS13に進み2次補正量QPS2をゼロリセットする。このように吸気管路11もしくはサージタンク14の容量を限度として吸入空気の2次補正をおこなうので、応答遅れを回避できると同時に、補正量が過剰になったり、それに伴ってエンジン回転数が一時的に増大するなどの事態を未然に防止することができる。
【0065】
ここで、上述した具体例とこの発明の関係を簡単に説明すると、図7に示すステップS61〜S64の機能的手段がこの発明における補正量設定手段に相当する。
【0066】
なお、上記の具体例では、補機負荷が増大した場合に吸入空気量を増大させてアイドル回転数を維持するように構成したが、補機負荷に見合うようにエンジントルクを増大させれば、アイドル回転数を維持できるので、吸入空気量を増大させることに替えて、点火時期を変更することによりエンジントルクを増大させてアイドル回転数を維持し、あるいは燃料供給量(燃料噴射量)を増大させることによりエンジントルクを増大させてアイドル回転数を維持するように構成してもよい。その場合、点火時期の変更量あるいは燃料供給量の変更量を設定する手段がこの発明における補正量設定手段に相当する。
【0068】
上述した具体例として開示されている発明は、特許請求の範囲に記載されているように表現できるが、これ以外に下記のように表現することができる。
▲1▼ 内燃機関のアイドル回転数を目標回転数に維持する内燃機関のアイドル回転制御装置において、前記内燃機関によって駆動される補機の負荷を検出する負荷検出手段と、前記アイドル回転数を前記目標回転数に維持するための制御量についての補正量として、前記負荷検出手段で検出された前記負荷に応じた1次補正量を設定する1次補正量設定手段と、前記1次補正量を増減する2次補正量を、前記負荷検出手段で検出された負荷の程度に応じた応答遅れの程度に基づいて設定する2次補正量設定手段とを備えていることを特徴とする内燃機関のアイドル回転制御装置。
▲2▼ 前記2次補正量設定手段は、前記負荷検出手段で検出された負荷が小さいほど、前記2次補正量を大きい値に設定する手段を含むことを特徴とする上記▲1▼に記載の内燃機関のアイドル回転制御装置。
▲3▼ 前記2次補正量設定手段は、前記負荷検出手段で検出された負荷の変化量が大きいほど、前記2次補正量を大きい値に設定する手段を含むことを特徴とする上記▲1▼に記載の内燃機関のアイドル回転制御装置。
▲4▼ 前記2次補正量設定手段は、前記内燃機関の負荷が大きいほど、前記2次補正量を大きい値に設定する手段を含むことを特徴とする上記▲1▼に記載の内燃機関のアイドル回転制御装置。
▲5▼ 前記補機は、油圧式操舵装置の油圧ポンプを含み、かつ前記2次補正量設定手段は、前記油圧ポンプで発生させる油圧ごとに予め設定した変化量と実際の油圧の変化量との比に基づいて前記2次補正量を設定する手段を含むことを特徴とする上記▲1▼に記載の内燃機関のアイドル回転制御装置。
【0069】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1の発明によれば、内燃機関で駆動されるパワーステアリングポンプによる負荷が発生した場合、これが油圧センサで検出され、その検出された油圧に応じて、アイドル回転を維持するための制御量についての補正量が設定されるので、パワーステアリングポンプによる負荷に応じたアイドル回転の制御が、過不足なく、かつ応答遅れを生じることなく実行され、その結果、内燃機関のアイドル回転数を安定させることができ、それに伴いいわゆる耐エンジンストール性を良好に維持してアイドル回転数を低下させることができるため、燃費を向上させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の制御装置で実行される制御の一例を説明するためのフローチャートである。
【図2】 この発明で対象とする内燃機関およびその制御系統を簡略化して示す模式図である。
【図3】 図1に示す制御をおこなった場合のアイドリング時のエンジン回転数の変化と、比較例として従来の装置による制御をおこなった場合のアイドリング時のエンジン回転数の変化とを示す図である。
【図4】 図1に示すステップS5ないしステップS7に置換して実行される2次補正量を算出するためのルーチンの一例を示す部分的なフローチャートである。
【図5】 図4に示す制御をおこなった場合の補正量の変化を、油圧の変化が大きい場合と小さい場合とについて示す図である。
【図6】 パワーステアリングポンプの油圧とその変化量との関係を模式的に示す図である。
【図7】 この発明の制御装置で実行される制御の他の例を説明するためのフローチャートである。
【図8】 図7に制御例で使用される油圧変化基準値と油圧の変化率との関係を説明するための図である。
【符号の説明】
1…内燃機関(エンジン)、 11…吸気管路、 13…電子スロットルバルブ、 14…サージタンク、 20…パワーステアリングポンプ、 21…コンプレッサー、 22…オルターネータ、 23…電子制御装置、 24…油圧センサ、 27…舵角センサ。
Claims (1)
- 内燃機関のアイドル回転数を目標回転数に維持する内燃機関のアイドル回転制御装置において、
前記内燃機関によって駆動される補機としてのパワーステアリングポンプによる油圧を検出する油圧センサと、
前記アイドル回転数を前記目標回転数に維持するための制御量についての補正量を、前記油圧センサで検出された油圧が高い場合に該油圧が低い場合に比較して大きい値に設定する補正量設定手段と
を備え、
前記補正量設定手段は、前記パワーステアリングポンプで発生させる油圧ごとに予め設定した変化量と実際の油圧の変化量との比に基づいて前記補正量を設定する手段を含むこと
を特徴とする内燃機関のアイドル回転制御装置。
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